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2026年06月03日
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山梨への長期間の出張が通達されてすぐに、奥州三十三観音霊場は意地でも結願してやろうと思い立ち、約2回に分けて長期の巡礼を行いました。一度目は7月で、主に三陸地域の札所と気になる寺院・他の巡礼の札所などを巡り、二度目は8月初旬の数日間、主に岩手南部~宮城北部の札所を巡り、これにて奥州三十三観音霊場を無事に結願できたのです。
僕が東北出身という事もあり、奥州三十三観音霊場や東北三十六不動尊霊場にはかなりの思い入れがあります。関東周辺に本拠を遷した今であっても、坂東札所よりもそれら巡礼の札所の方が良いなと思うこともしばしば。観光寺院化されていない、昔からの厳かな雰囲気を良く残した古刹がそこかしこに散らばっているからでしょうか。とにかくひいき目で見てしまいます。

今回紹介する札所も陸前高田のシンボル 氷上山の中腹~麓辺りに境内を構える古刹です。当ブログで繰り返し書いていますが、夏の三陸地方はあまりに美しく、強い日差しに照らされた波間から、潮騒と共に星屑の様な煌めきが生まれ、常に海を飾っています。
ひとつに混じり合ったような蒼天と蒼海を臨み、八戸から三陸道を上ると3時間ほどで陸前高田に到着です。

境内の入口には2本の杉が門の様に並立しております。開山の頃から生えているかの様な趣が有りますが、詳細は不明です。この木の間を進んでいくと、普門寺の境内へと至ります。



2025.7.13
奥州三十三観音霊場二十九番札所:海岸山 普門寺 観音堂


うーむ、いったい樹齢は何年なんでしょうか?かなりの太さです。この寺院に楼門は有りませんが、それよりも遥かに高い古木が門の代わりを務めていました。



古木の間には関門風の門が置かれ、参道の起点となっています。



植え込みに飾られた参道を進むと、実質の山門である薬医門が見えてきます。楼門の様に大きくは有りませんが、不思議と存在感のある門で、装飾なども優れているんです。







苔と杉並木にかって落ち着いた雰囲気が漂っています。この参道の両端には、寺門の所に書かれていた通り、五百羅漢が置かれています。



五百羅漢と謂えども、この様にころころと小さな石像によって構成されております。



何だか独特の雰囲気ですよね。人間らしい表情やしぐさをしている五百羅漢。好みの一体を探してみてください



これら五百羅漢は、平成25年(2013年)から5年かけて作成され、東日本大震災の被災者供養の為に建立されました。



仲睦まじくくっついた像もあれば・・・。



西方の芸術神にも見える造詣のものも・・・。いろいろあります。



おまけでもう1枚。



五百羅漢を楽しんだ後は、いよいよ本堂と向かいあいます。
古刹であることを実感させる、かなり立派な佇まいですね一部現代風に改修されてはいるものの、全体的に古い外観が良く見られる御堂です。そこかしこに気仙大工達の技が光り、建築好きの方も大満足できそうです。



ご由緒です。
海岸山 普門寺

曹洞宗 萬疊山大興寺末寺
開山:記外和尚
開基:金石馬助、安倍定俊
中興開山:如幻充察大和尚
中興開基:千葉中務太輔宗綱(奥州千葉氏一門 葛西氏流浜田氏宗綱)
本尊:聖観音

 気仙大工の粋を集めた三重塔や露天青銅大仏、山門の再建を待つ仁王像など、目を見張る仏門絵巻。
 岩手の湘南といわれるくらい気候が温暖な陸前高田。JR大船渡線陸前高田駅から東北3㎞にある町はずれの小高い丘に二十九番札所普門寺がある。入口の標柱から門前までは1.5㎞の舗装された緩やかな坂道、そこから少し入ると参道入口がある。再興開山 如幻充察大和尚手植えと伝えられる樹齢500年、周囲9m余の巨大な2本の杉が左右に聳えている。すぐ近くに享保10年(1725年)に建立された代門があり、本堂前庭までおよそ100mの参道が延びている。樹齢400年という杉並木の途中数カ所に延べ30数段の石段があり、本堂はかなり高い所にある。

 普門寺の草創は仁治2年(1241年)。臨済宗の開祖 栄西禅師の高弟 記外和尚が気仙沼郡司・金石馬助・安倍定俊の助力を得てこの地の海岸に近い新山に堂宇を建立し、尊像を奉安したことに始まる。
 記外和尚は法を求めて宋の国に渡ること3度、最後の帰国の際に宋の皇帝より聖観世音菩薩、愛染明王の掛け軸、紺紙金泥梵字十三仏の掛け軸、青磁の香炉、堆朱の香合など5種の宝物を賜った。それらは寺宝として今に伝えられ、聖観世音菩薩と愛染明王の掛け軸は県の文化財に指定されている。
 そのうち 聖観世音菩薩が寺の御本尊として本堂裏手の観音堂に安置されている。 像高55㎝の木彫り寄せ木造り玉眼入りで、木肌の上に麻布を張り、色彩が施されている。御開帳の期日は特に指定されていない。
 開山以来260余年の寺歴は明らかではない。ある時期に寺運が衰退したものの、永正元年(1504年)に浜田城主 千葉中務太輔宗綱が、石鳥谷の大興寺十世 如幻充察大和尚に請い、現在の地に再興開山したとある。天正19年(1591年)と慶応3年(1867年)の2度火災に遭い、堂宇・古文書などほとんどを焼失したが、幸い宋の皇帝より拝領の5種の宝物をはじめ一部の寺宝が焼失を免れた。
 本堂は明治10年(1877年)、庫裏はそれより早い明治5年(1872年)に再建され、現在は広い境内に山門を除く七堂伽藍すべてが整備されている。昭和28年には二十八世和尚が衆寮を新築し、昭和38年には本山管長を受戒会にお迎えするために不老閣を新築した。ただ、山門だけがまだ再建されず、本来は山門に立って寺を守護するはずの仁王像は宝物庫に仮安置されている。
 本堂の裏手には、観音堂と三重塔、露天青銅大仏があり、参詣者の目を引く美しい庭園となっている。特に、文化6年(1809年)建立の三重塔は九輪の先端まで12.5m、三層とも軒の意匠に工夫が凝らされ、当時の気仙大工の粋を集めた岩手県唯一の塔婆建築で、県の文化財に指定されている。また、大仏は高さ約5m、文政元年(1818年)の建立と伝えられており、県内はもとより東北にも例をみないという。
 さらに、本堂前、衆寮脇にあるサルスベリの大木は樹齢300年と推定されており、県の天然記念物。
河北新報出版センター 「岩手・宮城・福島 奥州三十三観音の旅 改訂新版」 128~131ページ より引用

白華山 補陀寺 ​と似ており、三陸沿岸に曹洞宗布教の波があったことが伺えるのではないでしょうか。

寺宝などは​ 気仙三十三観音霊場の記事 ​で詳しく見ていきたいと思います。

観音堂の前には幾つかの石碑と石仏。



その隣に天然記念物のサルスベリが植えてあります。参拝時には咲き終わった後という事で、キレイな花を見ることは出来ませんでした。


岩手県指定天然記念物  普門寺のサルスベリ

指定年月日:昭和56年12月4日
測定値(昭和56年6月測定)
・根元周:1.90m
・目通周:1.75m
・枝張:12.70m
・樹高:6.0m
・樹齢:約300年

 このサルスベリは、延宝年間(1680年頃)普門寺第八世 壹翁寒易和尚が中国の天童山から入清求法のさいに持帰り植付けたものと伝えられている。
 昭和56年6月、岩手県文化財審議会委員、村井三郎先生がこれを調査し、岩手県指定の天然記念物として指定されたものである。
昭和62年3月 陸前高田市教育委員会





庫裏の脇に建つ鐘楼も、本堂同様の装飾具合です。



では本堂を詳しく見ていきましょう。
これは向拝部分。龍や花鳥などの装飾が美しく、なんとも見ごたえが有ります。特に上部の松葉なんて、非常に細かく再現されているのです。



装飾の中で特に目を惹くのは、やはりこの飾り窓でしょうか。周辺地域を見てみても、このような飾り窓はまず見られません。彫り込みにも力が入っており、見ていると自然と感嘆のため息が出ます。気仙大工の技術はホントにすんごいですね・・・。



堂内です。
須弥壇中央には丸窓の祭壇があり、その中に本尊の聖観音が鎮座しています。釈迦如来では無く聖観音を本尊としているのは、元が天台宗寺院だからでしょうか。



札所本尊も聖観音なんですが、今では観音堂に収められており、本殿には代わりの聖観音が置かれているのです。こちらも相当に古そうで、像様は本尊と同じです。



堂内右手にはかなり大きな吊るし飾りが懸かっており、小さな桜の縫物が幾つも集め繋がっています。これは陸前高田商工会の女性部の方々による作品で、東北大震災の犠牲者を想い作成したそうです。



堂内には他にも三十三観音像や・・・。



千手観音像なども。



更に堂内の梁の部分。ここにも迫力満点の龍の木彫が施されています。



反対側は閉口しているので、阿吽の龍ということになるでしょうか。こうした意匠が本当に素晴らしい本堂でした。



次にいよいよ観音堂に向かいます。本堂左手の通路から観音堂へと向かうことができます。



途中には蓮池の庭園。中尊寺蓮を植えているとか書かれていた気がしましたが、もう記憶が定かではありません。



観音堂に向かうまでの道すがらに、文政元年(1818年)に建立されたと伝わる青銅大仏が座しています。像容から察するに薬師如来でしょうか。鋳造仏像でこの規模のものは、東北でも相当珍しいと思われます。



大仏の傍らには、南無釈迦佛陀と刻まれた経塚?や・・・。



おやこ地蔵を収めた地蔵堂などが置かれています。



内部には新しい地蔵尊と脇侍の小地蔵2体が仲良く連れ立っています。
この地蔵尊も東日本大震災と関連したもので、被災した高田松原の木材を使用して造像されました。↓に説明書きを載せたいと思います。




曹洞宗海岸山普門寺  本造地蔵菩薩立像(おやこ地蔵尊)及び地蔵堂

一. 造像及び造立の経緯
 平成23年3月11日、陸前高田市は東日本大震災に伴う津波で壊滅的な被害に遭い、ガレキの山と化した。その状況は筆舌に尽くしがたいものであり、国指定名勝地であった高田松原の松も、津波でほとんどなぎ倒されました。ガレキとなってしまった松でしたが、地元有志の手によって回収され、平成23年11月に、長野県・信州善光寺の立案により、仏像造像による供養を行う運びとなりました。そこで仏像製作を東京芸術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室に依頼し、被災した松材による地蔵菩薩立像4躰を作成することになりました。
 制作過程では、平成24年1月4日、陸前高田市サビレッジ高田にて、善光寺のご住職方と陸前高田市民の皆さんで、造仏の儀式である「鑿入れ式」(儀礼的に鑿を木材に入れ、縁を深める儀式)を行いました。
 平成24年3月7日には、長野県善光寺本堂内陣において開眼法要、11日には同寺で東日本大震災被災者一周忌法要が、それぞれ執り行われました。その後地蔵菩薩立像は「おやこ地蔵尊」と命名され、平成24年4月23日には、曹洞宗 海岸山 普門寺にて開眼法要が執り行われ、同寺に3軀、善光寺に1躰を安置することになりました。
 そして、「おやこ地蔵尊」の普門寺安置にあたり、新たに地蔵堂を計画しました。設計は、同大学院文化財保存学専攻保存修復建造物研究室が行い、地元村上製材所が施行、平成24年9月1日に落慶を迎えました。地蔵堂制作にあたり善光寺のご勧進や池田木材株式会社、JX日鉱日石金属株式会社の厚いご寄進により完成に至りました。


二. 木造地蔵菩薩立像(おやこ地蔵尊)3躰
東京藝術大学大学院文化財保存学教授 藪内佐斗司

 このたびの地蔵建立事業は、ふだん、仏像の研究や修復に携わっている研究室の若いスタッフと学生にとって、自分たちの先祖がなぜ仏像を造りつづけ、それを守り伝えてきたのか、そして現代に生きる自分たちがなぜ仏像を修復し新たに制作するのかという根本的な問いかけの機会とさせてもらえました。数百年にわたってこの町を守り続け、3.1.1の津波で浚われた無慮数万本の松の一部を材料に彼らが制作したお地蔵さまに対して、被災地のみなさんが涙を流し、万感の思いで手を合わせ、そして微笑んで下さる姿に触れたとき、仏像が、文化財や美術品であるまえに、手を合わせる対象であり、人を救う存在であることを、これほどはっきりと教えてもらえたことはありませんでした。たくさんの人の思いと、仏に姿を変えた松の木に、こころより感謝を申しあげたいと思います。


三. 地蔵堂 一棟
東京藝術大学大学院文化財保存学教授 上野勝久


 全体の高さを低平にしたのは、おやこ地蔵と子供の目線をほぼ同じくらいに合わせたことに寄ります。内部は板床ですが、仏像の安置部分は保存を考慮して二重床としました。屋根頂部には鎮魂の意味を表すため、宝珠を載せました。



参道をそのまま進むと、裏手の墓地に繋がります。その手前で左に逸れると観音堂と三重塔が建っています。この観音堂に本尊の聖観音菩薩が安置されているのです。



三重塔は特に二層目の軒の装飾がすんごいです。見上げた時にアッと驚く仕組みになっておりました。木彫もさることながら、各所の組木も美しいです。



説明書きです。




岩手県指定有形文化財  三重の塔

 普門寺の開山は仁治2年(1241年)で永正元年(1504年)浜田城主 千葉中務太輔宗綱の再興と伝えられます。天正19年(1591年)、慶応3年(1867年)の2回火災により堂宇・古文書などを焼失したが幸いにも三重の塔は類焼を免れました。
 この三重の塔は文化6年(1809年)に建築されたもので塔の高さは九輪先端まで約12.5m。初層は二軒繁垂木・二手先、二層は軒裏に垂木を設けず全面に彫刻を施し、二手先。三層は二軒扇垂木を用い、各層軒の意匠を異にし、小塔ではあるが総体に繊細優美な意匠で統一されています。建築当時は柿葺きであったが、昭和37年に銅板葺きに修復されました。
 この建築物は本県においては塔婆建築として他にもその実例がなく、唯一の遺構として貴重であり、社寺建築史上、その文化的、資料的価値が高く、昭和50年3月岩手県指定有形文化財に指定されました。
 平成11年3月には、大規模改修が行われました。
平成13年1月 陸前高田市教育委員会



岩手県には塔婆建築(三重塔・五重塔など)が少なく、 遠野の福泉寺 ​に五重塔が建立されるまでは岩手県唯一の塔婆建築だったものと思われます。建立年代も19世紀と古く、それが数度の火災を乗り越えて現存しているのは、本当に幸運なことなんじゃないでしょうか。

次に観音堂の内部を見てみましょう。
中央扉の両脇に格子戸があり、そこにはそれぞれ仁王像が収められています。
こちらは阿形!



吽形!
元は山門に安置されていたようです。境内入り口の寺門辺り(大杉が生えているところ)にあったようなんですが、おそらく火災や風雨によって倒壊したものと思われます。山門が揃えば、三陸地方随一の伽藍が整った寺院となる事でしょう。



中央扉のさらに奥、大きな厨子が置かれてます。この奥に本尊の聖観音が安置されているんですね。静かに延命十句観音経を唱え、御堂を後にしました。



境内の説明書きに、一応像容が載っていますよ。



斜めから。
岩手県の南端、陸前高田の地に開かれた禅寺でした。境内の伽藍がとにかく充実していましたし、それらに施された気仙大工の職人技はまさに絶品見る者の心を奪い、釘付けにしてしまいます。陸奥国への仏教伝播や宗派の切り替わりなどを探るうえでも、当寺院の果たす役割は大きいと思います。
是非美しの境内に足を運んでみてください



御詠歌
漏れ出つる くわたのかとを松の声 波の響きも 御法なるらん
もれいづる くわたのかどをまつのこえ なみのひびきも みのりなるらん

本尊:聖観音 आर्यावलोकितेश्वर

今回貰った御朱印です。



以上です。

次の記事
・三十番札所:白華山 補陀寺 観音堂 落ち着いた境内に建つ六角形の観音堂

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最終更新日  2026年07月24日 23時01分18秒
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