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鑑賞日:2024年11月10日(日)14:00開演入場料:12,000円(S席:1階I列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]NISSAY OPERA 2024オペラ「連隊の娘」ドニゼッティ作曲全2幕(フランス語上演・日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :原田慶太楼演 出 :粟國 淳(日生劇場芸術参与)美 術 :イタロ・グラッシ照 明 :稲葉直人(A.S.G)衣 裳 :武田久美子ヘアメイク:橘 房図振 付 :伊藤範子音 響 :山中洋一(サウンドわいわい)字 幕 :本谷麻子特殊衣裳・小物イラスト:山田博之対訳・台本作成協力:石川裕美演出助手:生田みゆき、橋本英志振付助手:宮城 文舞台監督:山田ゆか(ザ・スタッフ)合唱指揮:三澤洋史副指揮 :根本卓也、湯川紘惠、平石章人コレペティトゥア:平塚洋子、三澤志保原語指導:大庭 パスカル、根本卓也宣伝美術:秋澤一彰宣伝イラスト:サイトウユウスケ管弦楽 :読売日本交響楽団合 唱 :C.ヴィレッジシンガーズ出演マリー :熊木夕茉トニオ :小堀勇介ベルケンフィールド侯爵夫人:鳥木弥生シュルピス:町 英和オルテンシウス:森 翔梧伍 長 :市川宥一郎農 民 :工藤翔陽クラッケントルプ公爵夫人:金子あい公証人 :阿瀬見貴光従 者 :大木太郎感想 日生劇場でドニゼッティ「連隊の娘」公演があるとのことで、少し寒くなった曇り空の下、日比谷へ向かった。 パリのオペラ=コミック座の依頼で作曲されたオペラ・コミックのためフランス語上演。客席は満席。 5分押しで客席暗転。指揮者登場で序曲が始まる。明るい旋律でワクワクさせる。第1幕はチロル地方の村の場面、背景はジグゾウパズルにアルプスの山並みが描かれ、一部ピースが抜けている。上手には木製の小屋と大きな熊、下手には大きな本。 兵士たちは、おもちゃの衣装と動きで、大きな本から登場。公爵婦人、召使は、絵に書いた2次元の衣装で着せ替え人形。積み木で出来た汽車。 トニオも軍隊に入隊すると、筋肉隆々のヒーローの様な被り物で登場。 第2幕のパリの伯爵夫人の館は左右奥の布製の壁に家具や絵が書かれており、兵士たちは布をめくって登場。貴族たちの衣装も2次元の着せ替えで。 天井から吊るされたシャンデリアは金色の気球と端々まで子供のおもちゃの世界で表されていた。 音楽は楽しく、オケがどんどん引っ張って行く印象。 歌手はトニオ役の小堀勇介がハイCを連発。1幕「ああ!友よ、何とめでたい日々だろう」ではアンコールまであり。 タイトルロールの熊木夕茉は今回がオペラデビューとのことだが、堂々とした演技と素晴らしい歌声で、オケや合唱の大音量の中でも美しい高音が聞かれた。 二人の二重唱や、シュルピス役の町英和との三重唱もバランス良く響いていた。 オペラ・コミックでフランス語のセリフが多く入り、貴族らしい言い回しなど工夫されていたものの、ここまでメルヘン的な演出であれば、日本語の方がより楽しめた様に思えた。 来年の日生オペラは11月に、マスネの「サンドリヨン」が予定されており、オーディションを経て山下裕賀などが出演予定で、今から楽しみに。End
2024.11.10
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鑑賞日:2024年10月27日(日)14:00開演入場料:¥6,000(5階R列)主催:(財)東京二期会ボン歌劇場との共同制作<東京二期会オペラ劇場>オペラ「影のない女」〈ワールドプレミエ〉オペラ全3幕 op.65(ドイツ語上演/日本語および英語字幕付)台本:フーゴ・フォン・ホフマンスタール作曲:リヒャルト・シュトラウス会場:東京文化会館 大ホール<スタッフ>指 揮 :アレホ・ペレス演 出 :ペーター・コンヴィチュニー舞台美術:ヨハネス・ライアカー照 明 :グイド・ペツォルトドラマトゥルク:ベッティーナ・バルツ合唱指揮:大島義彰演出助手:太田麻衣子、森川太郎舞台監督:幸泉浩司公演監督:佐々木典子公演監督補:大野徹也合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :東京交響楽団<出演>皇帝:樋口達哉皇后:渡邊仁美乳母:橋爪ゆか伝令使:友清 崇、髙田智士、宮城島 康若い男の声:下村将太鷹の声:種谷典子バラク:清水勇磨→河野鉄平バラクの妻:田崎尚美バラクの兄弟:岸浪愛学、的場正剛、狩野賢一感想 2022年に予定された公演が新型コロナ感染症の影響で中止となり、その後クラウドファンティング等も行い、東京二期会公演として上演されるとのことで、ようやく夏日にとどかない気温下の中、上野へ出掛けた。 上野周辺では「Tokyo Opera Days 2024」と称してオペラ関係の演奏会や展示が行われているらしく、東京文化会館のロビーにも「世界的日本人デザイナーによるオペラ衣裳展~森英恵、コシノジュンコ、髙田賢三~」の展示があった。 今回大幅な読み替えの演出となっているらしく、事前のあらすじ紹介がされ、それに関する批判意見が既にネットで多く見られる。 客席は1階両サイドと奥、3階席両サイドに多くの空席が見られ、6~7割程度の入りか。 時間となり客席暗転、指揮者登場。幕が開くと、赤く染まった地下駐車場に黒い大きな車(キャデラック)が止まっている。いきなり銃の撃ち合いがあり、その後オーケストラが入る。 あらすじでは皇帝がマフィアのボスで皇后は敵対する「霊界の王」の娘、バラクは人間界の遺伝子操作研究所の所長。1年以内に皇妃に影が出来ないと(=妊娠しないと)、皇帝は石(=コンクリート詰め)にされる。バラクの研究所で皇帝と皇后が、影(=妊娠→赤ん坊)を手に入れようとするストーリーらしい。 今回所要があり第1部(第1幕と第2幕途中)しか鑑賞出来なかったので、演出全体をどうこうと言うことは出来ないが、第1部観た所では、歌詞は原作通りで、設定や曲順を入れ替えているので、矛盾だらけで意味不明に感じた。 まあ細かい所は気にせず、全体的に映画やドラマを観ているように楽しめば良いのでしょうが。 途中ラジカセのスイッチOnで音楽を鳴らし、Offで音楽を止め日本語のセリフを言うのは面白い反面、音楽自体を台無しにしているのは確か。 歌手は皇帝役の樋口達哉、皇后役の渡邊仁美、乳母役の橋爪ゆか、鷹の声役の種谷典子、バラク役の河野鉄平はしっかり歌えていた。中でもバラクの妻役の田崎尚美はオケの大音量の中でも声がしっかり聞こえて来て、流石でした。 エンディングも大幅に読み替え、曲順入れ替えで、原作とは全く違っていたようで。 日本の場合は、読み替えは余り歓迎されず、毎回カーテンコールではブーイングが出たとのこと。 東京二期会の25-26年シーズンラインナップの発表あり。『さまよえるオランダ人』『こうもり』『ファウストの劫罰』『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』『ルル』とバロック、イタリアベルカントが無いのが残念。 End
2024.10.27
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鑑賞日:2024年10月18日(金)18:30開演入場料:¥12,000 1階30列【主催】TOKYO FM/キョードー横浜山下達郎PERFORMANCE 2024 Supported by Rakuten Card会場:神奈川県民ホール 大ホール 演奏ボーカル、ギター、キーボード:山下達郎ギター :鳥山雄司ベース :伊藤広規キーボード:難波弘之、柴田俊文サックス :宮里陽太ドラム :小笠原拓海コーラス :ハルナ、ENA、三谷泰弘感想 今年も神奈川県民ホールで山下達郎のコンサートがあるとのことでファンクラブ枠でチケットを確保し、山の神と山下公園まで出かけた。 昨年も9/24に同ホールで聴いており、オリンピックやサッカーWCより開催頻度が少なかった過去を経験しているファンからすればほぼ毎年聞ける状況に感謝するばかり。客席も若いファンが年毎に増えている。 7月から始まった今年のツアーも8月名古屋公演2日分が体調不良で取りやめ延期になった以外は問題なく進行中。 18:30開演予定だったが、ホール最寄り駅を走る横浜みなとみらい線の信号機故障があり、10分押しでスタート。客席暗転となったが、ホール内の非常口の表示は消えず、1階席後方のライトも少し点いていたのは立ち見席があったからか。少しでも観客を入れて上げたい意向なのでしょう。 いつものオープニング曲から3曲続いてMC。今回ツアーの選曲は「殺伐とした世の中で少しでも癒やしや慰めになるように明るめの曲を新旧で選んだ」とのこと。 殺伐の一つとしてSNSを使った個人攻撃、炎上が一方的で言った者勝ち、一時的でも受けた方の影響の酷さの発言があった。 そう言えば昨年ジャニー喜多川問題で山下達郎にイチャモンを付けて来た松尾潔は、最近はマスコミに取り上げられることがなくなり、NHK-FMの番組も打切りになったようで。「おふたりの音楽から遠ざかっている長年のファンのみなさん」とか言ってたけど、今年のツアーも全てソールドアウト、昨年の「クリスマス・イブ」のオリコン週間シングルランキングも9位で38年連続トップ100入りとギネス記録も更新しファンは遠ざかるより増える一方で。 デビュー曲から最新アルバム(2022年発売だけど)まで多彩で、途中「夏」テーマの曲コーナーなどあり、リズムギターカッティング演奏、キーボード、ギターの一人弾き語り、いつもの一人多重アカペラは珍しくBigWeveから等取り入れ飽きさせない。禁酒の効果もあり、最後まで絶好調。いつものマイク無し生歌は1階席奥だったがよく聞こえた。 アンコールもギター弾き語りで1曲追加あったようで。 一昨年から参加の鳥山雄司は、メンバー紹介ではフュージョン・ジャズ演奏家らしい地味目のアドリブ演奏だったけど、全体的には結構目立った演奏になって来て、途中のフリー演奏でのサックスとのツイン演奏は、迫力十分でカッコいい! 舞台上の装置も海外の街を切り取った風景を再現し(遠くに高層ビル群が見えたので、ブルックリン辺りのイメージか)。流行りのCGを使わず、照明だけで昼夜、季節を表現して、今回も安心して観ることが出来た。「SQUARE THE CIRCLE」の看板が有ったりと、小物まで手が込んでて面白い。 後半のMCで「神奈川県民ホール取り壊し」について苦言あり。メトロポリタン、スカラ座はじめ、ブロードウェイのホールは修繕、改装しながら使っている。カーネギーホールはエレベータ、エスカレータ無く5階席まで階段で登っている。潰して立て直すのは、ゼネコンの利権行使、一部の人達の利益になるだけ。中野サンプラザもどんどん建設費が膨らみ計画が頓挫し、そのままの状態。舞台は演奏者、演技者の血を吸っている。ホールそのものが文化であり、修繕、改装しながら活かしていくべきと。 神奈川県で2,000人規模でコンサートが出来るホールはここだけ。アリーナばかり建てるけど、そこでは同じ質の音楽が出来ないとのこと。 アンコールMCで「竹内まりや」の新譜紹介あり。当方も開場前に来て新譜CDの予約をしサイン入り色紙をもらった(1枚ずつ手書きらしい)。 来年竹内まりやの11年振りのアリーナツアーがあり、2021年に『souvenir2021 mariya takeuchi live』BDを購入し封入先行申込をしたものの新型コロナでツアー中止となったのだが、今回その先行申込者限定でチケット受付があり、申込んだ所、何と当選。3年前のことを忘れずに優先してくれたことが嬉しい。 次回の山下達郎はツアーは、来年末から再来年になりそうだが、ぜひ改装された神奈川県民ホールで聞きたい! 改装が間に合わなければ、みなとみらいホールでオーケストラをバックに、または関内ホール辺りでアコースティックコンサートでも良いけど。End
2024.10.18
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鑑賞日:2024年10月14日(月・祝)13:00開演入場料:9,900円(C席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇2024/2025シーズンオペラ「夢遊病の女」ベッリーニ作曲全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉会場:新国立劇場オペラパレス共同制作:テアトロ・レアル、リセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場スタッフ指 揮 :マウリツィオ・ベニーニ演 出 :バルバラ・リュック美 術 :クリストフ・ヘッツァー衣 裳 :クララ・ペルッフォ照 明 :ウルス・シェーネバウム振 付 :イラッツェ・アンサ、イガール・バコヴィッチ演出補 :アンナ・ポンセ舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演ロドルフォ伯爵:妻屋秀和テレーザ :谷口睦美アミーナ :クローザ・フェオラ→ラウディア・ムスキオエルヴィーノ :アントニーノ・シラグーザリーザ :伊藤 晴アレッシオ :近藤 圭公証人 :渡辺正親感想 新国立劇場の今シーズンは新作が増えており、オープニングはベッリーニ作品を初めて取り上げるとのことで、ようやく気温が真夏日から下がり始めた下、初台まで出掛けた。 オペラシティーでランチを食べ、開場時間を確かめるためチケットを確認した所、なんと開演時間が「13:00」。時計はジャスト「13:00」。 新国立劇場のマチネはこれまでほとんど全てが「14:00」だったので、今回も同じと勘違いしていたことに気づく。そう言えば、チケットを購入した際に「いつもと時間が違うので気をつけないと」と思っていたことをようやく思い出す。 今から走っても間に合う訳はなく1幕はあきらめるしかないかと、取り敢えず5分遅れで新国立劇場のオペラパレス入口に行った所、「しばらくお待ち頂けると、1幕途中からご案内します」との優しいお言葉。6人程で大型モニターの前で15分程待っていると、案内係に従って3階席ドア前へ移動し、アリアが終わった所で正面の最後列空席へ。買っていた席よりも良席で、1幕のほとんどを鑑賞することが出来た。同じように遅れて来る人も多く、1幕途中の場面転換では20人程が3階席壁際で立見となっていた。 休憩時間に係員に13:00開演の理由を聞いた所、今回演出、舞台装置が欧州からの借用であり、そのバラシと運搬で1時間早めたのではとのこと。借用期間を1日でも短くするためなのでしょう。 その演出は1幕は舞台中央に上まで届く大きな木が植えられ、その大木から左右手前奥の4方向へロープが張られている。そのロープに掛けられた白い布の枚数、位置を変えることで、広場や宿屋の室内の設定に変えられる。 2幕1場はロドルフォ伯爵の城館のはずだか、大きな歯車とその横に大きな釜があり蒸気機関か? 2幕2場は大きな小屋が中央に置かれ、その入口上に1m幅の張り出しがあり、そこへ夢遊状態のアミーナが登場(原作は水車小屋にかかった1本橋)。3階以上の高さがあり、安全装置は付けられていると思われるが、ここで歌うのは確かに怖い。前役のクローザ・フェオラが「芸術上の理由により出演できなくなりました。」の理由はこの高さにあったとの噂も。 合唱の村人達とは別に10人のダンサーがアミーナの周囲を取り囲み、アミーナの心情にあわせた動きを見せる。アミーナの歌と動きで十分に伝わって来たので、必要だったのかは? 歌手はエルヴィーノ役アントニーノ・シラグーザが相変わらずの素晴らしいピンと張った歌声。以前より高音で少々力を入れているように感じられたが、本公演中に還暦を迎えたとのことで、歌声を聞けて良かった。 なんと言ってもアミーナ役ラウディア・ムスキオの美しい高音が稀有な歌声。声質としてはメゾ的で明るくはないのだが、コロラトゥーラやアジリタが正確で、高音に行くに従ってより頭声に持っていき弱音で響かせる所が素晴らしく、4階席奥まで十分に届く。アカペラ部分が最高に良い。 日本人歌手の力と勢いで高音を歌うのとは正反対。 また目鼻立ちがはっきりとした彫りの深い顔立ち、バレエをやっていたとのことでスタイルも良く、28歳とのことで今後が楽しみなベルカント・ソプラノと言えるでしょう。 オケも、ダイナミズムが大きく、クレッシェンドに向かってテンポを上げ盛り上げる所は、イタリア人指揮者のマウリツィオ・ベニーニの功績でしょう。 来シーズンはぜひベッリーニの「ノルマ」「清教徒」を聞きたい。 今シーズンはこの後、ロッシーニ「ギヨーム・テル」、細川俊夫新作「ナターシャ」の新作品があり、楽しみに。 End
2024.10.14
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鑑賞日:2024年10月6日(日)14:00開演入場料:5,000円(開館50周年記念割引席 1階11列)【主催】神奈川県民ホール [(財)神奈川芸術文化財団]神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.2サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』(日本初演/日本語訳上演 *一部原語上演)会場:神奈川県民ホール 大ホール【プログラム】<第1部>『瓦礫のある風景』(2022年)[日本初演]作曲:サルヴァトーレ・シャリーノ指揮:杉山 洋一<第2部>『ローエングリン』原作:ジュール・ラフォルグ音楽・台本:サルヴァトーレ・シャリーノ修辞:大崎 清夏演出・美術:吉開 菜央・山崎 阿弥作品構成:プロローグ、第1~4場、エピローグ指揮:杉山 洋一出演 エルザ役:橋本 愛【演奏】●ローエングリン ◆瓦礫のある風景成田 達輝 ●◆(ヴァイオリン/コンサートマスター)、百留 敬雄 ●(ヴァイオリン)東条 慧 ●(ヴィオラ)笹沼 樹 ●◆(チェロ)加藤 雄太 ●◆(コントラバス)齋藤 志野 ●◆(フルート)山本 英 ●(フルート)鷹栖 美恵子 ●◆(オーボエ)田中 香織 ●◆(クラリネット)、マルコス・ペレス・ミランダ ●(クラリネット)鈴木 一成 ●(ファゴット)岡野 公孝 ●(ファゴット)福川 伸陽 ●(ホルン)守岡 未央 ●(トランペット)古賀 光 ●(トロンボーン)新野 将之 ●◆(打楽器)金沢 青児 ●(テノール)松平 敬 ●(バリトン)新見 準平 ●(バス)山田 剛史 ◆(ピアノ)藤元 高輝 ◆(ギター) スタッフ振 付 :柿崎 麻莉子照 明 :高田 政義音 響 :菊地 徹衣 裳 :幾左田 千佳副指揮 :矢野 雄太音楽アシスタント:小松 桃、市橋 杏子、眞壁 謙太郎演出助手:田丸 一宏スタイリング:清水 奈緒美ヘアメイク :石川 ひろ子舞台監督 :山貫 理恵ステージマネージャー: 杉浦 友彦制 作 :神奈川県民ホール、山根 悟郎、坂元 恵海感想 神奈川県民ホールは先日発表があり、2025年4月1日から施設老朽化に伴う休館が発表され「休館期間は未定」となっている。 1975年に建てられ1991年頃の大規模耐震工事の後、2013年11月~2014年9月まで耐震補強工事、2017年7月~2018年5月まで電気設備・舞台機構の改修工事実施の休館があり、このまましばらくは運営継続と思っていたが、昨年6月に急に再開未定で休館とのアナウンスがあった。 20年間以上に渡り神奈川芸術文化財団・理事、芸術総監督を務めた一柳慧氏が2022年10月に亡くなり、それを待っていたかのように翌年直ぐの発表となっているのは偶然ではないでしょう。 山下埠頭のIR計画が頓挫したため、黒岩神奈川県知事は中野サンプラザのように民間資本で商業複合施設を建てたい様だが、中野サンプラザも費用面で止まっており、方針が決まるにはまだまだ時間が掛かりそう。 神奈川県には横浜MMホールやミューザ川崎などクラシック音楽専用ホールは増えているが、2000人以上収容でオケピットがあり、本格的なオペラを上演出来るのは神奈川県民ホールだけであり、現ホールの改修か、同規模のホールを早く建ててほしい。 東京文化会館も大規模改修工事で2026年5月~2028年度中まで休館とのことで、このままでは首都圏で2000人規模で本格的なオペラ上演できるホールが新国立劇場しかなくなる状況に(音響の悪いNHKホールやオーチャードホールでは観たくない)。 また一柳慧氏が芸術監督に就任してから、芸術財団(ホール)主催のクラシック公演が多く実施され、オペラではびわ湖ホール他の地方のホールと共同での大掛かりな公演が毎年開催され、東京二期会、藤原歌劇団他から役に最適な歌手が選ばれ、他では観られない自主公演になっていた。 その主催オペラ公演の最後がサルヴァトーレ・シャリーノ作曲「ローエングリン」と現代オペラの日本初演(ある意味故一柳慧氏の遺言か?)があるため、残暑の中、中華街ランチ(杜記で刀削麺)のあと、山下公園まで出かけた。 今回マイナーな作品のため、チケットは1階席と2階席一部しか販売されず。そのため1階中央の前方列を開館50周年記念割引席(5,000円)が設けられたため、かながわメンバーズ(KAme)発売日にゲット。その後主演の橋本愛の人気もあり、3階席の一部も追加販売となった様。また、ホールから「花束、花輪お断り」の珍しい事前告知も出たようで。 幕が開き舞台後ろ半分は黒いカーテンが引かれた状態。5分押しで客電が落とされ、舞台上に演奏者、指揮者が登場。 第1部は『瓦礫のある風景』は、プログラムによると2022年にロシアのウクライナ侵攻に対し作曲され、3楽章構成でショパンのマズルカが引用されていると書かれている。ピアノ演奏者は立ったまま直接弦を弾いて演奏、弦楽器も弦を擦るような音で不協和音を途切れ途切れに奏でる。1、2楽章ではほとんどメロディーらしきものが聞こえず、3楽章でようやく管楽器からメロディーらしいものが聞こえてきたが、パーカッション奏者が前に出てきてラチェットでネジを巻くような音を鳴らし続けていた。やはり現代前衛作曲家の作品は難しい。 25分の休憩を挟んで、第2部は『ローエングリン』。指揮者、オケ、合唱はオーケストラピットに入っての演奏。 幕が開くと、薄暗い中に舞台上にはエルザ役の橋本愛が白い衣装を着て一人で立っている。 舞台奥には全面に白い幕が引かれ、そこへベッドの影や水の波紋が映し出される。橋本愛はセリフ、叫び、舌打ち等をオケの音楽に合わせ発し、ほぼ直立状態で手を動かすだけの演技が続く。 舞台前方中央に黒い箱がありプロンプターと思われるが、約1時間、楽譜に指定された音楽に合わせ発声し続けることは、多くの練習期間と本番での集中力、演技力が必要だったでしょう。 プログラムには「プロローグ、第1~4場、エピローグ」と書かれているが、連続で演奏され、エピローグと思われる所で白い幕が上がり、3段程の山台の上に実物のベッドが置かれている。そこで初めてエルザが山台を登ってベッドの上の枕を取り上げ、歌らしきものを歌う。枕が舞台上に上がって行き、代わりにピンク色の羽のようなものが降りて来る所で暗転。 これをオペラと言えるのかは良くわからないが、楽譜を元に演奏、演技されているので単なる演劇でないのは確か。 舞台が明るくなりカーテンコール。1階席前方はスタンディングオベーション。 これ位の規模であれば、神奈川県ホールの大ホールでなく、神奈川県立音楽堂や神奈川芸術劇場の方が良かったように思うが。このような現代前衛オペラを国内で同規模で観ることは今後ないでしょう。 とにもかくにも神奈川県民ホールの主催公演オペラはこれで終了。 何年先になるか変わらないが、ここで再びオペラ公演を見ることが出来るだろうか? 今回の公演が最後にならないことを祈るばかり。 End
2024.10.06
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鑑賞日:2024年7月14日(日)14:00開演入場料:6,930円(C席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇2023/2024シーズンオペラ「トスカ」プッチーニ作曲全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :マウリツィオ・ベニーニ演 出 :アントネッロ・マダウ=ディアツ美 術 :川口直次衣 裳 :ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ照 明 :奥畑康夫再演演出:田口道子舞台監督:菅原多敢弘合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団児童合唱:TOKYO FM少年合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演トスカ :ジョイス・エル=コーリーカヴァラドッシ :テオドール・イリンカイスカルピア :ニカラズ・ラグヴィラーヴァ→青山 貴アンジェロッティ:妻屋秀和スポレッタ :糸賀修平シャルローネ :大塚博章堂 守 :志村文彦看 守 :龍進一郎羊飼い :前川依子感想 新国立劇場の今シーズンは、お金が掛からない近年の演目の再演ばかりで興味が湧かず、昨年10月オープニングの「修道女アンジェリカ/子どもと魔法」観て以来の訪問。「トスカ」の歌手と指揮者に期待して、猛暑の中、初台まで出掛けた。 人気演目の日曜日公演のため客席は満席。時間となり指揮者登場、オケのいきなりの大音量とともに幕が開く。 音楽はどんどん進んで行く印象だが、ダイナミズムの幅が大きく、プッチーニの音楽を感じることが出来て、イタリア人指揮者の功績でしょう。 歌手は、カヴァラドッシ役のテオドール・イリンカイが期待通りで、1幕「妙なる調べ」は素晴らしい。トスカとの重唱も良かった。 トスカ役ジョイス・エル=コーリーは新国立初登場でプロフィールにマリア・カラス賞受賞等書かれており期待したが、高音は十分届いているもののビブラートが多いリリコの声質で、トスカとしては迫力不足。それでも2幕「歌に生き恋に生き」は良かった。 スカルピア役は、当初予定ニカラズ・ラグヴィラーヴァが来日するも体調不良らしく、カバーの青山貴が出演。安定した歌声、演技で役をこなしていたが、スカルピアの悪役的表現は不足。1幕フィナーレのテ・デウムでもオケに消され気味だったのは残念。 合唱は、1幕フィナーレのテ・デウムの大音量、2幕の影歌は安定した歌声で、児童合唱も演技含め良かった。 演出は今シーズンで9回目とのことで(その内4回は観ているか)、余分な部分は切り取られ、舞台装置含め完成度の高い演出になっている。 所要があり2幕までの鑑賞となったが、料金分は楽しめた印象。 新国立劇場の来シーズンは打って変わって、初登場ベッリーニの「夢遊病の女」、ロッシーニ「ギヨーム・テル」、細川俊夫新作「ナターシャ」の新作品の他、脇園彩ロッジーナの「セビリアの理髪師」、サマンサ・ハンキー「カルメン」もあり、今から楽しみに。End
2024.07.14
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鑑賞日:2024年5月26日(日)14:00開演入場料:6,000円(B席/2階 11列)【主催】(財)東京二期会【共催】(財)目黒区芸術文化振興財団二期会ニューウェーブ・オペラ劇場オペラ「デイダミーア」台本:パオロ・アントニオ・ロッリ作曲:ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付会場:めぐろパーシモンホール大ホールスタッフ指 揮 :鈴木秀美演 出 :中村 蓉装 置 :原田 愛衣 裳 :田村香織照 明 :喜多村 貴合唱指揮:根本卓也声楽アドバイザー、原語指導:櫻田 亮ドラマトゥルク:萩原里香演出助手:根岸 幸舞台監督:幸泉浩司公演監督:大島幾雄公演監督補:永井和子合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :ニューウェーブ・バロック ・オーケストラ・トウキョウ(NBO)出演:デイダミーア:清水理沙ネレーア :田中沙友里アキッレ :渡辺智美ウリッセ :武藤あゆみフェニーチェ:室岡大輝リコメーデ :水島正樹ダンサー:北川 結、田花 遥、中川友里江、安永ひより、長谷川 暢、望月寛斗感想 二期会ニューウェーブ・オペラ劇場と称して若手を集めたバロック・オペラ公演を数年おきに行っており、今年はヘンデル最後のオペラ作品「デイダミーア」の公演があるとのことで、初夏を思わせる晴天の下、目黒まで出掛けた。 めぐろパーシモンホールは1,200席のキャパで、今回オケピットと舞台側2階席左右に合唱を入れたため、実質的に1,000人程度。 バロックオペラ公演に合っている大きさと言える。 オケピットの指揮台前にはチェンバロ2台が並べて置かれ、その奥に大きなテオルボ、その周りをバイオリン、チェロで囲み、上手にナチュラルホルン、下手にリコーダーの配置。古楽器でまとめられており、NBOのピリオド奏法の音楽を楽しむことが出来た。 全3幕の作品だが、1幕と2幕途中まで続けて演奏、休憩挟み2幕「狩り」の場面から3幕フィナーレまで連続演奏され2部構成になっている。曲数も全36曲→24曲までカットされ、休憩入れ2時間強に収まっていた。 第1部は舞台上に正面と左右を囲むコの字の壁が設置され、奥と左右に出入り口が設けられている。小道具は人がまたがる凹型の造形物が3台、場面に合わせ色々な位置に動かされる。またコの字壁の上部は2階の位置づけて、場面によっては隠れて下を覗く位置にもなっていた。第2部はその左右の壁に階段が付けられ、上下の移動が加わる。 その壁や床へ照明が当てられ、次々と色が変化して行く。床面も白黒のチェックになったり、2階から大きな赤玉が落とされると床面にヒビが入ったりと、工夫されて面白い。 歌手がアリアを歌う場面では、ダンサーが舞台に広がり、歌手たちも加わって、音楽に合わせて踊りが繰り広げられる。アリアの繰り返しの単調な面をじゃませず補っていたと感じた。 あと演出ではフィナーレの所で、出兵したアキッレ(アキレウス)がその後トロイ戦争で撃たれてしまう場面を付け加えていたが、音楽は明るい曲調のため、少々蛇足か。 合唱は16人(各パート4人ずつか)で第2部オケピット内の舞台側に黒い衣装で1列に並び、「狩り」の場面では黒い左右に角が出たものを被り歌う。途中でオケピットから退出し、フィナーレでは左右2階席の舞台側に各8人ずつ並び歌い、盛り上げていた。 今回歌手はアキッレ役はソプラノ設定通りで、ウリッセ役はカストラード/カウンターテナー設定をソプラノに割り当てており、3年前の「セルセ」のようにテノールに割り当てオクターブ下で歌わせるような無謀な変更はなく、バロック・オペラとしてそれなりに聴くことが出来た。 ただ登場人物がほとんどソプラノとなり、同じような声質の歌声の方々であったため、変化に乏しく、歌い方もただ歌っているように単調に聞こえて来たのが残念。もう少し場面や役の心情が伝わるような歌い方であれば、もっと楽しめたのだが。周囲の客席も途中、夢の中の人が多かった。 その中でリコメーデ王役の水島正樹は、バスの深い歌声で王の威厳とアキッレやデイダミーアを気遣う心遣いが伝わって来た。 コンパクトにまとめられたことで、バロック・オペラを最後まで、それなりに楽しむことが出来た公演だった。End
2024.05.26
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LFJ-TOKYO2024運営委員会から正式な開催報告が出たので、これまでの一覧へ追加。年回期間テーマ来場者数フォーラム全体チケット販売数有料/無料公演数2005年第1回4/29-5/1ベートーヴェンと仲間たち306千人324千人109千枚120/2092006年第2回5/3-5/6モーツァルトと仲間たち490千人695千人160千枚145/3772007年第3回5/2-5/6民族のハーモニー660千人1,060千人200千枚181/4732008年第4回5/2-5/6シューベルトとウィーン640千人1,004千人182千枚221/5292009年第5回5/3-5/5バッハとヨーロッパ411千人711千人137千枚168/4192010年第6回5/2-5/4ショパンの宇宙420千人808千人141千枚175/3582011年第7回5/3-5/5とどけ!音楽の力広がれ!音楽の輪タイタンたち146千人・・・・人45千枚90/1752012年第8回5/3-5/5サクル・リュスロシアの祭典360千人460千人123千枚159/1922013年第9回5/3-5/5パリ、至福の時414千人516千人138千枚135/2092014年第10回5/3-5/510回記念祝祭の日431千人612千人151千枚147/3662015年第11回5/2-5/4PASSIONSパシオン367千人427千人122千枚135/3952016年第12回5/3-5/5ナチュール自然と音楽366千人429千人114千枚126/3402017年第13回5/4-5/6ラ・ダンス舞曲の祭典356千人422千人116千枚122/3262018年第14回5/3-5/5モンド・ヌーヴォー新しい世界へ308千人432千人119千枚125/4512019年第15回5/3-5/5ボヤージュ旅から生まれた音楽366千人425千人121千枚124/2982023年第16回5/4-5/6Beethovenベートーヴェン150千人180千人87千枚65/1842023年第17回5/3-5/5ORIGINESすべてはここからはじまった157千人200千人91千枚90/242 昨年より来場者、チケット販売数は増えているが、有料公演数が65→90に増えているものの来場者数150→157千人、チケット販売が87→91千枚の微増なのは、増えた公演会場がG409でキャパが小さいため。B5,B7,D5を増やしても大幅な増員は出来ず、東京国際フォーラム以外に広げる必要があるが、中身が伴わないと。 ホールE復活で、来場者が地上広場と分散して、ベンチへ座れる余裕が出来たのは良かった。 有料公演の国内アーティスト735人に対し海外アーティスト46人と極端に少ないのは、オーケストラや合唱等の多人数団体を呼んでいないため。円安の影響が大きいのでしょう。 国内アーティストなら、わざわざLFJに出掛けなくても聞くことが出来るので、LFJとしては普段聞けない海外アーティストの公演を増やせるかが、音楽祭としての存在意義、存続に関わってくると思われる。End
2024.05.08
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鑑賞日:2024年5月3日(金・祝)ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024ORIGINES(オリジン) ――すべてはここからはじまった【主催】ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024 運営委員会 (三菱地所株式会社/株式会社東京国際フォーラム/株式会社KAJIMOTO) LFJ-TOKYOは昨年再開し、今年もGWに行うとのことで、山の神と有楽町へ出掛けた。 今年はコンサート会場にG409、マスタークラスにB5が加わり、更に地下ホールEのキオスクステージも再開したことで見所が増えている。ホールEでは、楽器メーカーの制作デモや楽器体験コーナー、帝国ホテルの出店、グッズ売り場もあり。ホールEの復活で地上広場の混雑も緩和されていた。 公式CDは20周年記念の過去の寄せ集めで、今年の出演者のナントでの録音CDは無し。ガラス棟の吊り下げポスターは1枚のみ。 今回も海外からのオーケストラや合唱の公演はなく、天羽明惠の公演とア・カペラ トリオのレ・イティネラントが面白そうなので、時間の合った「ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール」を選択。 ホールEでの洗足学園音楽大学サクソフォーン・オーケストラによる「ダッタン人の踊り」を聞いて、ガラス棟のG409へ。 ホールEのステージが壁側に変更されたことで、客席広くなり、客席側の移動もスムーズになったのは良かった。公演番号:143/すべてはモーツァルトから始まった! 日時:2024年5月3日(金・祝) 13:30~14:15 会場:東京国際フォーラム ホールG409 入場料:¥2,700(指定席2列目)出演ソプラノ:天羽明惠ピアノ :村上寿昭曲目モーツァルト:すみれ K.476、ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いたとき K.520シェーンベルク:4つの歌曲 op.2 から 1.期待、2.僕に君の金の櫛を贈ってくれーイエスの懇願ベルク:7つの初期の歌 から 葦の歌、夜うぐいすツェムリンスキー:バラのイルメリン op.7-4、民謡 op.22-5ウェーベルン:4つの歌曲 op.12 から 1.日は暮れて、4.似た者同士ウルマン:5つの愛の歌 op.26 から 1.お前はどこからその全ての美を受けたのだ、2.ピアノを弾きながら、5.おお、美しい手よ 感想 客席は満席、入口壁付近の2列目で聴く。昨年はベートーヴェンの歌曲だったが、今回はモーツァルトから始まり、その後はドイツ近代作曲家の歌曲。 シェーンベルクは合唱曲「グレの歌」、ベルクはオペラ「ヴォツェック」「ルル」、ツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」を聞いたことあるが、ウェーベルン、ウルマンになると初めて聞く作曲家。だんだんと12音階や無調性に進んでいく。 G409は天井が低く、下が絨毯で、全く反響しないため声楽には不向きな会場だが、天羽明惠さんは、正確な音程と美しいドイツ語の歌声で、心地よく聞くことが出来る。入口で配られた歌詞カードを見ながら聞くと、更に曲の内容が伝わって来る。 アンコールでモーツアルト歌曲を1曲歌われて、ほぼ時間通りに終了。 公演終了後、ホールEに移動し、帝国ホテルのキーマカレー・ナン付で遅めのランチを済まし、展示ブースやグッズ売り場、DJブースを覗いて、ホールCへ。ホールEはこの後公演のカルメンの場当たり中。楽器ブースではコントラバスの削り出し実演あり。 公演番号:124/ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール ~ハート直撃コンサート~ 日時:2024年5月3日(金・祝) 16:10~16:55 会場:東京国際フォーラム ホールC 入場料:¥3,000(S席5列目)出演イリス・シャロム (ヴァイオリン)クシシュトフ・ミハルスキ (チェロ)アントナン・ホ゛ネ (ピアノ) 曲目:ラヴェル/ピアノ三重奏曲 イ短調から第1,2楽章ヴァランティーヌ・ミショー (サクソフォーン)ガブリエル・ミショー (パーカッション) 曲目:ピアソラ/失われた小鳥たち、ビートルズ/ブラックバードレ・イティネラント (ア・カペラ トリオ)ティエリー・ゴマール (パーカッション) 曲目:伝統曲/ウォーキング・ソング、アデス・キリイ、ボン/水の月、 ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女エリプソス四重奏団 (サックス四重奏) 曲目:ディ・バッコ/パリの4本のサックス感想 客席は満席。ルネ・マルタンが選出した、LFJ初参加の若手注目の演奏家を集めたコンサート。 最初にルネ・マルタンが登壇し、4組の演奏家のプロフィールを紹介。 1組目は比較的オーソドックスだったが、2組目以降は、曲をグループに合うようアレンジしての演奏で面白い。 3組目のレ・イティネラントは、民族曲風のアレンジで途中「荒城の月」のメロディーも聞こえてきた。女声3人の声にそれぞれ特徴があり、重なった時の倍音の響きが美しい。パーカッションは、目立たず、コーラスを補うように演奏され、心地よい。 4組目のエリプソス四重奏団はサックス4重奏。ラプソイン・ブルーのメロディーも聞こえ、途中サックス演奏を止めて急にコーラスが始まった所が斬新で楽しい。 レ・イティネラント単独の演奏を聞きたかったが、5/3,5の夜だったため時間合わず残念。 去年復活し、今年はホールも増えて選択肢が増えたことは喜ばしい。新型コロナの影響は無くなったものの、円高の影響で海外からのオケや合唱は呼びにくい状況だと思われるが、ぜひ来年はナントと同じ演奏家の公演が増えることを期待。End
2024.05.03
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鑑賞日:2024年4月27日(土)14:00開演入場料:4,000円(C席/3階 4列)【主催】(財)日本オペラ振興会藤原歌劇団創立90周年記念公演歌劇「ラ・チェネレントラ」ロッシーニ作曲全2幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワスタッフ指 揮 :鈴木恵里奈演 出 :フランチェスコ ベッロット演出補 :ピエーラ ラヴァージオ合唱指揮:山舘冬樹美 術 :アンジェロ サーラ衣 裳 :アルフレード コルノ照 明 :クラウディオ シュミット舞台監督:菅原多敢弘副指揮 :小松拓人、森田真喜総監督 :折江忠道 合 唱 :藤原歌劇団合唱部 管弦楽 :テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ 出演アンジェリーナ :但馬由香ドン・ラミーロ :小堀勇介ドン・マニーフィコ:押川浩士ダンディーニ :岡昭 宏クロリンダ :楠野麻衣ティーズベ :米谷朋子アリドーロ :久保田真澄感想 王子役で小堀勇介が出演するとのことで、GW初日の夏日の中、久しぶりに新百合ヶ丘まで出掛けた。 今回の演出は2018年の再演とのことだが当方は観ておらず初見。 舞台中央に大きな童話の本が置かれ、その周囲にネズミたちがチーズを取り合っている。序曲の後にネズミたちが本を開きその中から、出演者が次々と登場して、童話の世界として演技し、歌う演出。 哲学者・教育係のアリドーロが魔法使いになり、ガラスでは無いもののハイヒールの忘れ物も登場。馬車がスポーツカーになっている等、分かりやすい演出で楽しめた。 歌手はラミーロ王子役の小堀勇介が期待通りで良かった。明るく明瞭な歌声で低音から高音まで歌い、アジリタの音程も完璧でかつ滑らか。 見せ場のアリア「誓って彼女を見つけ出す」ではハイCを超えて、E位まで出ていて素晴らしい。拍手は続いたがアンコールは無し。 アンジェリーナ役の但馬由香もアジリタ含め良く歌えていたが、中域以下の歌声が少々暗めだった。最後のアリアは短く感じ、一部カットされたか。 オケは安定した演奏で、ロッシーニ・クレッシェンドも盛り上がって良かった。 全体としてまとまっている公演で、演出含め楽しむことが出来た。 End
2024.04.27
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鑑賞日:2024年4月21日(日)15:00開演入場料:10,500円(D席/3階 L4列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】読売日本交響楽団東京・春・音楽祭2024歌劇「エレクトラ」op.58<演奏会形式>リヒャルト・シュトラウス作曲全1幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :セバスティアン・ヴァイグレ管弦楽 :読売日本交響楽団コンサートマスター:長原幸太合 唱 :新国立劇場合唱団合唱指揮:冨平恭平出演エレクトラ :エレーナ・パンクラトヴァクリテムネストラ:藤村実穂子クリソテミス :アリソン・オークスエギスト :シュテファン・リューガマーオレスト :ルネ・パーペ第1の侍女 :中島郁子第2の侍女 :小泉詠子第3の侍女 :清水華澄第4の侍女/裾持ちの侍女:竹多倫子第5の侍女/側仕えの侍女:木下美穂子侍女の頭 :北原瑠美オレストの養育者/年老いた従者:加藤宏隆若い従者 :糸賀修平召使:(新国立劇場合唱団)前川依子、岩本麻里、小酒部晶子、野田千恵子、立川かずさ、村山舞感想 東京春祭の千秋楽にR.シュトラウス「エレクトラ」の公演があるとのことで、すっかり葉桜となった上野へ出掛けた。 ヴァイグレ指揮読響の「エレクトラ」は2022年読響定演に企画されたが、新型コロナ感染の影響で中止になった公演を企画時のキャストを揃えて行うもの。 本公演チケットも発売初日WebアクセスしたがE席が取れず、D席となり1万円を超えてしまった。 なお「東京・春・音楽祭」の前身である「東京オペラの森」2005年第1回公演のオープニングが「エレクトラ」であり、その指揮が先日亡くなった小澤征爾であったのも繋がりを感じる。 客席は空席少なくほぼ満席。舞台は反響板で囲まれ、張り出しが出されいるが、照明等含み演出は一切なし。 舞台上にはオケの一部が既に座って楽器の音出しをしている。開演時間のブザーと共に、コンマス含め残りのオーケストラメンバーが舞台へ登場し、チューニング。8プルト4管編成で約100名で壮大。 指揮者登場し、演奏が始まるとその大音量の音楽に圧倒される。その中で歌う歌手は大変であるが、皆さん素晴らしい。 まずは侍女5人が黒いドレスで登場し、エレクトラの噂を歌い始める。日本では主役を歌う方々で、しっかり聞こえる。会話の演技も上手い。 タイトルロールのエレーナ・パンクラトヴァはほぼ出ずっぱりで歌い続けるが、強靭ではないもののよく響く歌声で最後まで歌いきった。 エレクトラの妹クリソテミス役のアリソン・オークスは、圧倒的な声量でかつ輝くような歌声でオケがfでも十分に聞こえて来て素晴らしい。 クリテムネストラ役の藤村実穂子は、落ち着いた中にも不気味さを感じさせ、役に成り切った歌声で流石です。 出番は少ないが、エギスト役シュテファン・リューガマー、オレスト役ルネ・パーペもよく響く歌声で素晴らしい。 ルネ・パーペだけが譜面を見ていたが、その他の皆さんは暗譜で身振りの演技もあって良かった。 合唱は、召使で女声6人が少し舞台に登場したのみで、あとは裏歌。カーテンコールで登場し、男女各8人位。裏歌ではPAが使われていた。 一番良かったのはオーケストラ。大人数、大音量でありながらも、細部までバランスの良い演奏で、複雑で分厚いR.シュトラウスの音楽を表現していた。 特に指揮者セバスティアン・ヴァイグレは体を上下左右めいっぱい使って指示を出し、オケもそれに合わせた演奏で、エンディングの盛り上がりには圧倒された。途中ヴィオラからヴァイオリンへの持ち替えを直接見られるもの演奏会形式ならでは。 R.シュトラウス「エレクトラ」はMETライブビューイングで見たことあるものの、生演奏は初めて。演奏時間は約100分。飽きること無く、緊張感が持続した演奏を楽しむことが出来た。 これで今年の東京・春・音楽祭は終了。来年の音楽祭ではキャスト・オーディション募集で東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.16「パルジファル」(演奏会形式/字幕・映像付)のアナウンスが既に出ている。今回同様にR.シュトラウス作品も取り上げてほしいく、来年もレベルの高いオペラ公演をぜひ聞きたい。End
2024.04.21
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鑑賞日:2024年4月14日(日)10:00開演入場料:1,300円(シニア料金/K列)ブルックリンでオペラを/She Came To Me劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町・シアター1上映時間:102分 / 製作:2023年(米) / 配給:松竹監督・脚本・プロデューサー:レベッカ・ミラー音楽:ブライス・デスナー主な出演者:スティーブン(作曲家):ピーター・ディンクレイジパトリシア(スティーブンの妻、精神科医) :アン・ハサウェイカトリーナ(タグボートの船長) :マリサ・トメイ マグダレナ(パトリシアの家政婦) :ヨアンナ・クリークトレィ(マグダレナの夫、裁判所速記者) :ブライアン・ダーシー・ジェームズジュリアン(パトリシアの息子):エヴァン・エリソンテレサ(マグダレナの娘、ジュリアンの恋人) :ハーロウ・ジェーン感想 アン・ハサウェイが主役扱いで宣伝・紹介されているが、本作品の主役はあくまで作曲家スティーブン役のピーター・ディンクレイジであり、アン・ハサウェイは一切歌わない。 5年程スランプでオペラ作曲出来ず、脚本家にも見放され、パトリシアから無理に犬の散歩に出掛けさせられたことで、女船長に会い、翻弄され、それを機会にオペラをつくり、大絶賛。その後は、子供達の恋愛事件で救世主となり・・・・。身長132cmでいい味出してる。 オペラ場面は少ないのだが、細部へのこだわりが凄い。 冒頭パーティー場面で、MET他多くのオペラ作品に出演しているカウンターテナーのアンソニー・ロス・コスタンツォがオペラ「カルメン」の“ハバネラ”を歌う。 カウンターテナーに歌わせることで、本作品が通常のラブストーリーとは違うことを暗示させる。 そしてタグボート船長のカトリーナからヒントを得て5年振りに作曲した「She Came To Me」の演出指導シーンでメゾソプラノのイザベラ・レナード登場。素晴らしい歌声と容姿だが、同席しているスティーブンの細かい注文に切れて追い出してしまう演技も上手い。 そしてラストのオペラ「Hurry, Hurry」はスペース・オペラ風でMET出演のデビット・サンチェスやジャズやブロードウェイで活躍のアリシア・ホール・モラン他の出演で本格的。 音楽のブライス・デスナーは、ロックミュージシャンでありながら、クラシック作曲、映画音楽も作り多才。BAMのあるブルックリンで演奏されそうな聞きやすい現代オペラ音楽に聞こえた。 予告編や宣伝とは大きなギャップを感じたが、そこが面白く、現代アメリカ社会の問題とともに、アメリカオペラ世界を少し感じられる作品でもあった。End
2024.04.14
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鑑賞日:2024年3月30日(土)15:00開演入場料:11,500円(D席/3階 L4列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】NHK交響楽団東京・春・音楽祭2024東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.15楽劇「トリスタンとイゾルデ」<演奏会形式>ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :マレク・ヤノフスキ管弦楽 :NHK交響楽団ゲストコンサートマスター:ベンジャミン・ボウマン合 唱 :東京オペラシンガーズ合唱指揮 :エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩音楽コーチ:トーマス・ラウスマン出演トリスタン :スチュアート・スケルトンマルケ王 :フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒイゾルデ :ビルギッテ・クリステンセンクルヴェナール:マルクス・アイヒェメロート :甲斐栄次郎ブランゲーネ):ルクサンドラ・ドノーセ牧童 :大槻孝志舵取り :高橋洋介若い水夫の声 :金山京介感想 東京春祭ワーグナー・シリーズの公演があるとのことで、桜がまだほとんど咲いてないが花見客で混雑する上野へ出掛けた。 東京春祭での「トリスタンとイゾルデ」公演は2020年に予定されていたが、新型コロナの影響で中止となり、4年ぶりの公演。 これでワーグナー楽劇の主要10作品が全て演奏されることになる。 本シリーズの入場料料金は、昨年より更に500円アップ。発売初日WebアクセスしたがE席が取れず(座席範囲が減った?)、D席となり1万円を超えてしまった。 客席は空席少なくほぼ満席。舞台は張り出しが出され、後部は反響板あり。昨年同様映像がく、色付き照明の演出のみ。 開演時間となり、男声合唱約40人が入場し、続いてオケ入場、最後にMETコンマスのベンジャミン・ボウマンが舞台上に登場しチューニング。6プルト3管編成で約80名。指揮者登場し、前奏曲が大音量で奏でられ分厚い音楽に圧倒される。更に2幕では、裏からバンダの管楽が加わる。 合唱は1幕のみだが、人数の割に存在感在り。 タイトルロールの歌手2人は、少々パワー不足。2幕の延々と続く二重唱はオケの音が小さくなったこともあり少し良くなったが。トリスタン役スチュアート・スケルトンは歌声は聞こえて来るものの、声に輝きがなく勇ましく聞こえない。イゾルデ役ビルギッテ・クリステンセンは譜面台の楽譜に釘付け状態でただ歌っている様に聞こえた。 マルケ王のフランツ=ヨゼフ・ゼーリヒは、いかにも王様風で迫力十分だった。 ワーグナー楽劇を演奏会形式で演奏するのは、歌手に取っては大変でしょう。 所要があり残念ながら2幕終了時点で帰宅。 春祭千秋楽の「エレクトラ」も聞きに行く予定。End
2024.03.30
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鑑賞日:2024年3月3日(日)14:00開演入場料:2,000円(E席/ 5階L2列)【主催】(財)東京二期会、(社)日本演奏連盟2024都民芸術フェスティバル 参加公演フランス国立ラン歌劇場との提携公演東京二期会オペラ劇場楽劇「タンホイザー」台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場: 東京文化会館 大ホールスタッフ指 揮 :アクセル・コーバー演 出 :キース・ウォーナー演出補 :カタリーナ・カステニング装 置 :ボリス・クドルチカ衣 裳 :カスパー・グラーナー照 明 :ジョン・ビショップ振 付 :カール・アルフレッド・シュライナー映 像 :ミコワイ・モレンダ合唱指揮:三澤洋史音楽アシスタント:石坂 宏演出助手:彌六舞台監督:幸泉浩司公演監督:佐々木典子公演監督補:大野徹也合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :読売日本交響楽団キャストヘルマン :狩野賢一タンホイザー:片寄純也ヴォルフラム:友清 崇ヴァルター :前川健生ビーテロルフ:菅原洋平ハインリヒ :伊藤 潤ラインマル :倉本晋児→水島正樹エリーザベト:梶田真未ヴェーヌス :土屋優子牧 童 :七澤 結4人の小姓 :本田ゆりこ、黒田詩織、実川裕紀、本多 都感想 2021年と同じ演出の「タンホイザー」が再演されるとのことで、安価席が取れたこともあり、上野のインバウンドの人混みを抜けて東京文化会館へ。 客席は1階左右と後部、2、3階にも空席多く、7割程度の入りか。 3年前は新型コロナの影響で色々と制約があり、影響がなくなった状況での公演をとの希望も再演された理由の一つと思われる。 指揮者は前回来日できなかったアクセル・コーバーが登場。バイロイト音楽祭でも振っているようで、オーソドックスなダイナミックスとテンポで安心して聞くことが出来た。 オケピット内の人数制限もなくなり、安定した演奏。読響はセバスティアン・ヴァイグレが常任指揮者になってから、ドイツ物は演奏機会も増え、ホルン始め異音もほとんど無くワーグナーの音楽を楽しめた。 合唱の方は、歌としては良かったが演出が? 舞台上の制約も無くなったとは言え2幕の大行進曲「歌の殿堂をたたえよう」の歌が始まる前に女性たちが置かれた椅子の周囲を早足でひたすら回ったり、途中男性兵士たちが椅子を頭上に掲げて歌ったりとやたら意味不明な動きを加えられていた。 行進曲だからと言って無理に動かせる必要はなく、観客側も落ち着いて聞くことが出来ない。 あと演出の方は、前回同様ヴェーヌスと一緒に子供が出てくるが、意味不明なのは前回と同じ。 タンホイザー役は本日の片寄純也とダブルキャスト側がしばらく未定となっていたが、二期会会員ではなく海外からサイモン・オニールを招聘。 片寄純也は前回も同役を歌っており、前回のもう一人のキャストよりは歌えていたが如何にも大変そう。ヘルデンテノールは日本人には難しいのでしょう。 ヴェーヌス役の土屋優子、ヘルマン役の狩野賢一は良かった。 それなりにワーグナーの音楽を楽しめた公演だった。 4月に東京春音楽祭でヴァイグレ指揮の読響で「エレクトラ」(演奏会形式)が予定されており、今から楽しみに。End
2024.03.03
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鑑賞日:2024年1月24(水)19:00開演入場料:¥24,000 S席1塁側1階スタンド16列【主催】J-WAVE/TOKYO FMONE NIGHAT ONLY IN JAPANビリー・ジョエルIN CONCERT会場:東京ドーム 演奏ボーカル、ピアノ、ハーモニカ:ビリー・ジョエルキーボード、オルガン、ミュージカルディレクター:デヴィッド・ローゼンタールサックス、フルート、ハーモニカ、パーカッション、ボーカル:マーク・リヴェラパーカッション、サックス、ハーモニカ、ボーカル:クリスタル・タリエフェロギター、ボーカル:トミー・バーンズベース、ボーカル:アンディ・シションドラムス:チャック・バーギトランペット、トロンボーン、サックス:カール・フィッシャーボーカル、ギター:マイク・デルジュディス曲目01. MY LIFE マイ・ライフ(冒頭にベートーヴェン「交響曲第9番・歓喜の歌」の一節)02. MOVIN’OUT ムーヴィン・アウト03. THE ENTERTAINER エンターテイナー04. HONESTY オネスティ05. ZANZIBAR ザンジバル(冒頭に「さくらさくら」の一節)06. INNOCENT MAN イノセント・マン(冒頭にザ・ローリングストーンズ「Start Me Up」をビリーがモノマネ歌唱)07. THE LONGEST TIME ロンゲスト・タイム(冒頭にトーケンズ「ライオンは寝ている」のコーラス)08. DON’T ASK ME WHY ドント・アスク・ミー・ホワイ(冒頭にベートーヴェン「交響曲第7番第2楽章」のピアノ独奏)09. VIENNA ウィーン10. KEEPING THE FAITH キーピン・ザ・フェイス11. ALLENTOWN アレンタウン12. NEW YORK STATE OF MIND ニューヨークの想い13. THE STRANGER ストレンジャー14. SAY GOODBYE TO HOLLYWOOD さよならハリウッド15. SOMETIMES A FANTASY 真夜中のラブコール16. ONLY THE GOOD DIE YOUNG 若死にするのは善人だけ17. THE RIVER OF DREAMS リヴァー・オブ・ドリームス(ブレイクにバンド・メンバーのクリスタル・ タリエフェロがアイク&ティナ・ターナーの「River Deep, Mountain High」を歌唱)18. NESSUN DORMA 誰も寝てはならぬ(バンド・メンバーのマイク・デルジュディスが歌唱)19. SCENES FROM AN ITALIAN RESTAURANT イタリアン・レストランで20. PIANO MAN ピアノ・マンアンコール21. WE DIDN’T START THE FIRE ハートにファイア22. UPTOWN GIRL アップタウン・ガール23. IT’S STILL ROCK N ROLL TO ME ロックンロールが最高さ24. BIG SHOT ビッグ・ショット25. YOU MAY BE RIGHT ガラスのニューヨーク感想 16年振りにビリー・ジョエルが来日公演を行うとのことで、先行販売でチケット入手し、仕事を早めに切り上げて、東京ドームへ向かった。 高校から大学時代は、TVでなくラジオ聞く機会が多く、ビリー・ジョエルは1日に数回は聞こえて来た位に流行っていた。熱烈なファンでは無かったが、生活の中に染み付いているミュージシャンの一人。 アリーナ席でずっと立っているのはつらいので、S席のスタンドを選択。1階の16列目のホーム側に近いので、舞台は遠いものの、正面に近く見やすい。幸い当方座ったブロックは立つ人がほとんどおらず、最後まで座って聞くことが出来た。 主催者発表で4万4千人。当方と近い年齢層-がほとんどで、男女比は半々位。女性だけのグループも沢山見られた。 5分押しで会場内が暗くなり、スタート。いきなり第九「歓喜の歌」のメロディーから1曲目「マイ・ライフ」が演奏される。 マイクを通してだが、74歳とは思えない声量。 途中のMCはほとんど無く、アンコール含め25曲歌い上げ、時計は9時半近くに。 ただヒット曲を並べるのでなく、冒頭に違う曲を入れてつなげたり、自身はピアノ伴奏に徹してバンド・メンバーに歌わせたり。 はたまた、ミック・ジャガーに成り切って、「Start Me Up」を歌い、ハイトーンが大変と「INNOCENT MAN」を完璧に歌う。 ドゥーワップはトーケンズ「ライオンは寝ている」をワンコーラス歌った後にTVCMに使われた「ロンゲスト・タイム」が歌われ、そのハーモニーが素晴らしい。 「ストレンジャー」の口笛もマーク・リヴェラが生で吹いて完璧。音楽をバンドメンバー含めて楽しんで演奏し、観客も楽しませる。 ステージ後ろの巨大スクリーンには、舞台上の映像だけでなく、曲に合わせ彼が生まれ育ったニューヨーク下町ブルックリン、ロングアイランドの当時の風景写真、アニメーション等を映写している。 ネットで調べると、2014年から約10年間、マディソン・スクエア・ガーデン(2万人収容)で毎月コンサートを行い、150回目となる今年7月に終了するらしい。今回のバンドメンバーも、その定例コンサートのメンバーであり、レベルの高さと音楽の完成度に納得。今アメリカ、ニューヨークを代表するエンターテイメントだった。 そして本編のラストは自らハーモニカを吹いて歌う「ピアノ・マン」は正しく彼自身。 学生時代にタイムスリップして、楽しめたハイレベルのコンサートだった。 End
2024.01.24
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鑑賞日:2024年1月3日(水)19:00開演入場料:無料(申込抽選)(2階12列)【主催】日本放送協会(NHK)第66回 2024NHKニューイヤーオペラコンサート会場:NHKホール出演:ソプラノ:砂川涼子、田崎尚美、船越亜弥、 森麻季、森谷真理メゾ・ソプラノ :谷口睦美カウンターテナー:藤木大地テノール:笛田博昭、福井敬バリトン:青山貴、大西宇宙、黒田博、須藤慎吾バ ス :斉木健詞、ジョン・ハオ、妻屋秀和合 唱 :新国立劇場合唱団、二期会合唱団、 びわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団指 揮 :沼尻竜典舞 踊 :上山榛名、水城卓哉、宮本萌チェロ :遠藤真理ピアノ :松田華音司 会 :礒野佑子(NHKアナウンサー)曲目:1.「メサイア・ファンタジー」 ヘンデル作曲 吉松隆・上田素生 編曲 ※世界初演 大西宇宙、合唱2.歌劇「アイーダ」から「清きアイーダ」 ヴェルディ作曲 笛田博昭3.歌劇「ジュリアス・シーザー」から「この胸に命ある限り」 ヘンデル作曲 森 麻季4.歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」から「なんとつらい時間 残酷な運命」 ~「エウリディーチェを失って」 グルック作曲 藤木大地、砂川涼子 5.歌劇「タンホイザー」から「私の歌は君のためのもの」~「裏切り者よ 出ていけ」 ワーグナー作曲 福井 敬、谷口睦美6.歌劇「オテロ」から「無慈悲な神の命ずるままに」 ヴェルディ作曲 黒田 博7.歌劇「トスカ」から「テ・デウム」 プッチーニ作曲 須藤慎吾、合唱幕間 「鏡の中の鏡」アルヴォ・ペルト作曲 / 大石裕香 振付 ※世界初演 【上山榛名、水城卓哉、宮本 萌{貞松・浜田バレエ団}】(舞踊) 遠藤真理、松田華音8.歌劇「ボリス・ゴドノフ」から「戴冠式の場」~「私は最高の権力を手に入れた」 ムソルグスキー作曲 妻屋秀和、合唱9.歌劇「ドン・カルロ」から「ひとり寂しく眠ろう」 ヴェルディ作曲 ジョン・ハオ10。楽劇「サロメ」から「どうして私を見てくれないの?」 リヒャルト・シュトラウス作曲 森谷真理11.楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「優しくかすかな彼のほほえみ」ワーグナー作曲 田崎尚美 12.歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から「食事のしたくができた」モーツァルト作曲 大西宇宙、斉木健詞、青山 貴、船越亜弥、黒澤明子、山際きみ佳、 清水徹太郎、迎 肇聡、男声合唱 13.オラトリオ「メサイア」から「ハレルヤコーラス」ヘンデル作曲 ソリストおよび合唱全員 NHKニューイヤーオペラコンサートは、毎年1月3日に有料で行われて来たが、昨年NHKホールの改装が終わってから無料抽選方式に変更。 珍しく抽選に当たって山の神とインバウンドで賑わう渋谷駅からNHKホールへ向かった。 今回オーケストラはオケピットに入り、舞台上には階段状のセットが置かれ、曲に合わせて、セットの変更や照明が加わりオペラの場面を再現する。衣装、メイキャップも、各オペラに合わせたものになっている。 今回テーマが「対の歌声、終わらない世界」となっており、1つのオペラから2人で続けて歌うか全く異なるオペラを2人で続けて歌う構成になっており、始まる前にスタッフから2曲終わってから拍手をするよう注意のアナウンスもあり。 全体的な印象としては、とにかく暗い。選曲や構成はウクライナ戦争やガザ地区戦闘を受けて制作されたと思うが、元旦早々の能登半島地震、羽田空港事故もあり、より暗い気持ちになった。終演後の観客からも晴れやかな顔や楽しそうなおしゃべり声は聞こえず。 多くのアリアが死や死を連想させる曲になっており、ラスト「ハレルヤ」の前の「ドン・ジョヴァンニ」は地獄堕ちの場面を再現する徹底さ。 コンサート名に「ガラ」はなく、全体として1つのテーマ性は感じられたが、新年早々の公演であるのに今年への希望、救いの面は聞こえてこなかった。 ただ個々のアリアとしては日本で今歌ったら一番であろう歌手たちを出演させており、いずれも素晴らしい。 森麻季のクレオパトラのアリアは細部まで完璧で、昨年のBCJ公演を思い出した。森谷真理のサロメ、田崎尚美のイゾルテも役に成り切った歌いっぷりでもっと聞きたいと思わせる。砂川涼子エウリディーチェと藤木大地オルフェオもオペラの場面に引き込まれるような歌唱だった。 オケは多種多様な曲を歌手と完璧に合わせ、全体のバランスも素晴らしく、指揮者ドラゴン沼尻の功績でしょう。 合唱もプロ4団体からで迫力もあり良かった。エンディングの「ハレルヤ」は、最後の歌詞が英語でなくドイツ語?だったのはなぜか。 ニューイヤーとしての選曲、構成には疑問あるものの、個々のオペラアリアとしては楽しめた公演だった。End
2024.01.03
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鑑賞日:2023年11月26日(日)14:00開演入場料:6,000円(S席 1階8列)【主催】(財)藤沢市みらい創造財団 芸術文化事業課藤沢市民オペラ50周年記念オペラ「オテッロ」G.ロッシーニ作曲全3幕(演奏会形式・イタリア語上演・日本語字幕付)会場:藤沢市民会館スタッフ指 揮 :園田隆一郎合唱指揮:浅野深雪管弦楽 :藤沢市民交響楽団合 唱 :藤沢市合唱連盟副指揮 :松川智哉/柴田慎平出演オテッロ :宮里直樹デズデーモナ:砂川涼子エルミーロ :妻屋秀和ロドリーゴ :小堀勇介イアーゴ :山本康寛エミーリア :中島郁子ルーチョ/ゴンドラ漕ぎ:石井基幾総 督 :平尾啓ナビゲーター:朝岡聡感想 藤沢市民オペラでロッシーニの「オテッロ」を取り上げ、今売出し中テノールの宮里直樹、小堀勇介が出演とのことで気温10℃以下の寒空の下、藤沢に向かった。 客席は空席が見られず本当の満席。座席は8列の中央だが、舞台張り出しと前2列は空席にしてあるので、実質3列目。歌手の表情がよく見える。 演奏会形式なので、指揮者の左右に譜面台が3台ずつ置かれ、歌う場面で歌手が登場し、譜面台に楽譜を置いて歌う。 3幕は指揮台の横に椅子が置かれ、デズデーモナが殺されるとそこへ静かに座る演出になっていた。 ヴェルディの「オテロ」は、オテッロ、ロドリーゴがテノールで、悪役イアーゴがバリトンだが、本作品はいづれもテノールで配役されている。小堀勇介と山本康寛はロッシーニ作品を多く歌っており、アジリタ含め完璧。特に小堀勇介は、第2幕のアリアではハイC以上の高音のアドリブも入って絶好調。そこへヴェルディやプッチーニ作品を多く歌う少し重めの宮里直樹の迫力あるテノールの歌声が絡んでいく。 第1幕フィナーレの3重唱は、合わせるというより正にバトル。音楽の作りの巧みさを満喫できる演奏だった。 デズデーモナ役の砂川涼子も絶叫部分もあるものの素晴らしい歌声で、3幕「柳の歌」はハープとの重唱で、その悲しみが十分に伝わる。 エミーリア役の中島郁子、エルミーロ役の妻屋秀和はいつも通りの安定した歌声で、支える。 オーケストラは、前回聞いたよりも弦のばらつきが少なく、管楽器のミスも気にならない程度で上手くなっている。ロッシーニ・クレッシェンドも安定して表現されて良かった。合唱も男声が多く、迫力があった。 歌手の配役含め、これだけロッシーニの音楽の素晴らしさを表現出来たのは、指揮者の功績でしょう。ロッシーニ歌手とヴェルディ歌手を融合させて、より豊かな音楽を醸し出した、あっと言う間の4時間弱(15分程度の休憩2回含む)の演奏だった。 そして演奏会形式を補い、よりオペラ音楽を楽しむことが出来たのも、的を得た朝岡聡のナレーションの力も大きいと感じた演奏会だった。 来年11月に藤沢市民オペラによるモーツアルト「魔笛」の4日間公演が予定されており、今から楽しみに。End
2023.11.26
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鑑賞日:2023年11月12日(土)14:00開演入場料:10,800円(S席:セット券 1階M列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]日生劇場開場60周年記念公演NISSAY OPERA 2023オペラ「マクベス」ヴェルディ作曲全4幕(イタリア語上演・日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :沼尻 竜典演 出 :粟國 淳美術・衣装:アレッサンドロ・チャンマルーギ照 明 :大島 祐夫(A.S.G)振付・ステージング:広崎 うらん合唱指揮:須藤 桂司演出助手:上原 真希舞台監督:幸泉 浩司(アートクリエイション)副指揮 :喜古 恵理香・ 松村 優吾コレペティトゥア:平塚 洋子・経種 美和子管弦楽 :読売日本交響楽団合 唱 :C.ヴィレッジシンガーズ出演マクベス :大沼 徹マクベス夫人:岡田 昌子バンクォー :妻屋 秀和マクダフ :大槻 孝志マルコム :髙畠 伸吾侍 女 :藤井 麻美マクベスの従者・第⼀の幻影:後藤 春馬マクベスの従者・第⼀の幻影:金子 慧⼀第二の幻影 :田浦彩夏第三の幻影 :大木美枝ダンサー :西田 健二、吉﨑 裕哉、中村 駿、鈴木 遼太、 永森 祐人、高橋 佑紀、小川 莉伯感想 日生劇場で「マクベス」公演があるとのことで、急に寒くなった曇り空の下、日比谷へ向かった。 今年6月公演の「メデア」とのS席セット券を購入したもの。客席は満席。 時間となり客席暗転。指揮者登場で前奏曲が始まる。前面の赤幕が開くと黒幕となり、前奏曲が終わる頃に黒幕が上がり森の場面となる。枯れた大きな木が横たわっており、この後の室内の場面でも枯れ木を吊り上げ壁面にしたり、空中に浮かせたりする。 室内の場面では机や椅子、ベッドが並べられているのみで、壁などはなく暗い状態で、出演者にスポットが当てられ、浮かび上がらせる演出。魔女の森の場面では数mある大きな人形を3体登場させ、動きが入ることでより不気味さを表し,ダンサー達の踊りも効果あり。 歌手は皆さん役に合った歌声で良かった。特にマクベス夫人役の岡田昌子が迫力ある歌声と4幕の夢遊状態での殺人を恐れる様子を表していた。合唱も場面に合わせ魔女の森では少しユーモアを入れたり、フィナーレはしっかり締まった歌声で良かった。 オケは、全体的にテンポ良く、ラストへ向かっての盛り上げも大きく、退屈しない演奏だった。指揮者の功績でしょう。 来年の日生オペラは11月に、ドニゼッティ作曲の「連隊の娘」と「ピーア・デ・トロメイ」のベルカントオペラが予定されており、今から楽しみに。End
2023.11.12
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鑑賞日:2023年10月15日(日)14:00開演入場料:6,000円(D席/5階 R1列)【主催】(財)東京二期会《二期会創立70周年記念公演》シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演東京二期会オペラ劇場歌劇「ドン・カルロ」ヴェルディ作曲全5幕(イタリア語上演/日本語および英語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :レオナルド・シーニ演 出 :ロッテ・デ・ベア演出補 :カルメン・クルーゼ舞台美術:クリストフ・ヘッツァー照 明 :アレックス・ブロック振 付 :ラン・アーサー・ブラウン合唱指揮:佐藤 宏演出助手:太田麻衣子舞台監督:村田健輔公演監督:大野徹也公演監督補:永井和子合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演フィリッポII世:ジョン ハオドン・カルロ :樋口達哉ロドリーゴ :小林啓倫宗教裁判長 :狩野賢一修道士 :畠山 茂エリザベッタ :竹多倫子エボリ公女 :清水華澄テバルド :中野亜維里レルマ伯爵&王室の布告者:前川健生天よりの声 :七澤 結6人の代議士 :岸本 大、寺西一真、外崎広弥、宮城島 康、宮下嘉彦、目黒知史感想 余り上演機会が多くないヴェルディ「ドン・カルロ」の公演があるとのことで、小雨降る中、上野まで出掛けた。 東京二期会主催で東京文化会館周辺で「Tokyo Opera Days」10月9日〜15日開催されているらしく、大ホールホワイエでは、「マリア・カラス生誕100年記念展」として、当時のポスター、衣装や、レコードが展示されていた。 客席は1階S席の中央は埋まっているが、左右両側と後ろはほとんど空席。2~3階も空席が多く、6割程度の入りで日曜日としては寂しい。 チューニングの後、客席暗転、指揮者登場で直ぐに始まる。幕が開くと、灰色の大きな壁が舞台前に表れ、壁が回転することで次の場面が舞台上に表れる。舞台上は、机、椅子が置かれれる程度でミニマムな演出。 1,2幕が連続して上演されたが、歌手は取り敢えず大きな声で歌っているようにしか聞こえてこず、オケも単調に感じ、演出もミニマムで観る所無く、当方の体調も今一で、2幕終わった所で帰ることに。 ヴェルディ作品は、歌手が上手いか、特徴あるオケの演奏や演出が入らないと、つまらなくなる典型的な上演に思った。End
2023.10.15
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鑑賞日:2023年10月16(土)15:00開演入場料:11,000円(12列)【主催】神奈川県立音楽堂((財)神奈川芸術文化財団)音楽堂室内オペラ・プロジェクト第6弾鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン歌劇「ジュリオ・チェーザレ」(セミ・ステージ形式)ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)会場:神奈川県立音楽堂スタッフ:指揮・チェンバロ:鈴木優人管弦楽 :バッハ・コレギウム・ジャパン演 出 :佐藤美晴衣 装 :臼井梨恵照 明 :稲葉直人出演:クレオパトラ:森 麻季セスト :松井亜希チェーザレ :ティム・ミードトロメーオ :アレクサンダー・チャンスコーネリア :マリアンネ・ベアーテ・キーラントニレーノ :藤木大地クーリオ :加藤宏隆アキッラ :大西宇宙感想: 神奈川県立音楽堂の室内オペラ・プロジェクト第6弾はBCJによるヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」の公演があるとのことで、ようやく少し涼しくなった秋空の下、紅葉坂を登って音楽堂へ。 開演30分前に、指揮者の鈴木優人と演出家の佐藤美晴によるプレトークが有り。2020年10月のBCJ「リナルド」は、新型コロナの影響で海外歌手が来日できなかったが、今回はすべて予定通りの配役となり、本オペラは先の2公演(10/7兵庫芸術文化センター、10/10東京オペラシティー)は素晴らしい歌手の出来とのことで、本日の最終公演が更に楽しみに。チケットはSould-Outで当日券無し。 今回セミ・ステージ形式で舞台は張り出しで幕は無し。オケの周りを囲むように四方に山台を配置。舞台左右は直接舞台裏が見えないよう衝立が置かれている。山台側面には赤色のギリシャ象形文字が貼られ、公演前や休憩時間は舞台袖の字幕装置にも表示されていた。 舞台左右には松明の明かりが4つのみ。その他ナイフや剣などの小道具以外に装置は使わず、照明を使って、影絵の様に庭や牢屋、海岸を表し場面転換を行っていた。瞬時に次の場面に移り、音楽が途切れること無く、大変良かった。 衣装は、ローマ側は白色を基調に、エジプト側は金色や青色などカラフルな色を使いそれらしい形状。クーリオとアキッラの二人は、ヤンキー的な危なっかしいもので面白い。 歌手は海外、日本の方含め全て良かった。特にタイトルロールのティム・ミードは素晴らしいカウンターテナーの歌声。場面や心情に合わせ、戦いの場面では見栄を切った様な切れのある強い歌声で、アジリタも完璧に、消え入るような弱音も最後まで聞こえて来る。クレオパトラとの重唱も実に美しい。昨年の新国立も歌ってほしかった。 トロメーオ役のアレクサンダー・チャンスもカウンターテナーで、柔らかな歌声の中にも、姉への恨みやチェーザレへの敵対心など強い声もあり、悪役としての演技も良い。 昨年の新国立でタイトルロールを歌ったマリアンネ・ベアーテ・キーラントがコーネリアの女性役。落ち着いたコントラルトの歌声で、低音も十分に聞こえ、夫を殺された妻の悲しみが伝わってくる。 日本人歌手ではクレオパトラ役の森麻季が美貌と抜群のスタイルを強調する衣装で正しく女王の容姿。2幕冒頭の美徳の女神の姿でチェーザレを誘惑する「優しい眼差しよ」の場面では、下手山台奥からハープ他の4名が後部山台に上がったバンダと共に歌い、チェーザレを虜に。 3幕「この胸に息のある限り」もその愛と悲しみが歌から伝わり素晴らしかった。 セスト役の松井亜希も多くのアリアを丁寧に歌えて良かった。今回ほとんどカット無しとのことで、前回の新国立ではカットが多かったと思われる。 低音のアキッラ役の大西宇宙、クーリオ役の加藤宏隆も、演技含め迫力のある歌声だった。 一番驚いたのは、ニレーノ役の藤木大地で、2幕始まる前のシューニング時に登場してチェンバロを鳴らし笑いを誘い、歌う以外の場面でも登場して演技を加え、舞台の盛り上げに一役買っていた。歌はいつものように明るく素晴らしい。このような端役に使うとは贅沢な布陣。 あと3幕フィナーレの合唱は、出演者全てが舞台上に登場して歌っていた。プログラムにも合唱の表記ないことから、1幕他の影歌の合唱も出演者皆さんで歌っていたと思われる。 オケはチェンバロ3台が中央と左右に置かれ、鈴木優人が中央のチェンバロでレチタティーヴォ部分の多くを演奏。デオルボ、リュートなど古楽器もあり、バロックの響きを楽しめた。途中歌手の旋律とエコーになる所では、その楽器演奏者が立ち上がって演奏し臨場感が生まれた。 冒頭や戦いの部分では4本(2調性x2本)のナチュラルホルンが加わり、力強い響きに。視覚含め端々まで考えられた演奏で流石BCJ。 そして、全てバランス良く聞こえて来るのは、1,000人規模、1階席のみで木製の神奈川県立音楽堂ホールの音響のためであり、入場料も高く感じられない。これが新国立劇場のような規模のホールだと音量不足等で音楽のバランスが崩れるだろう。 休憩2回入れて4時間30分越えの演奏だったが、全く退屈せず。 ぜひ、今後も当ホールでバロックオペラの公演を続けて欲しい。End
2023.10.14
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鑑賞日:2023年10月1日(日)14:00開演入場料:6,930円(C席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場令和5年度(第78回)文化庁芸術祭オープニング・オペラ新国立劇2023/2024シーズンオペラ「修道女アンジェリカ」プッチーニ作曲全1幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉オペラ「子どもと魔法」ラヴェル作曲全2部〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :沼尻竜典演 出 :粟國 淳美 術 :横田あつみ衣 裳 :増田恵美照 明 :大島祐夫振 付 :伊藤範子舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団児童合唱:世田谷ジュニア合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演『修道女アンジェリカ』 アンジェリカ:キアーラ・イゾットン 公爵夫人 :齊藤純子 修道院長 :塩崎めぐみ 修道女長 :郷家暁子 修練女長 :小林由佳 ジェノヴィエッファ:中村真紀 オスミーナ :伊藤 晴 ドルチーナ :今野沙知恵 看護係修道女:鈴木涼子 托鉢係修道女1:前川依子 托鉢係修道女2:岩本麻里 修練女 :和田しほり 労働修道女1 :福留なぎさ 労働修道女2 :小酒部晶子『子どもと魔法』 子ども :クロエ・ブリオ お母さん :齊藤純子 肘掛椅子/木 :田中大揮 安楽椅子/羊飼いの娘/ふくろう/こうもり:盛田麻央 柱時計/雄猫 :河野鉄平 中国茶碗/とんぼ :十合翔子 火/お姫様/夜鳴き鶯:三宅理恵 羊飼いの少年/牝猫/りす:杉山由紀 ティーポット :濱松孝行 小さな老人/雨蛙 :青地英幸感想 新国立劇場の2023/2024シーズン開幕でダブルビルの新制作公演があるとのことで、夏日の中、初台まで出掛けた。 いきなり入り口で手荷物検査がるとの表記があり、階段に赤絨毯は無く、誰が来られるかと思っていたら、秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご来場とのアナウンスあり。2階席は、客席に入る廊下の両サイドに机が出され、チケットの再チェックをしていた。 開演時間になると、文化庁長官の都倉俊一氏による文化庁芸術祭オープニングの挨拶があり、ようやく「修道女アンジェリカ」の公演スタート。 幕が開くと修道院の室内や庭の設定で、白や黒を基調とした壁や床はあるが天井は設けられておらず、その装置と人々が左右に動くことで、瞬時に次の部屋に転換されていく。衣装も白と黒を基調。 最後の演出は黒い十字が描かれた奥の壁が斜めに手前倒れて来て、その中央から赤い光がアンジェリカに注ぐことで、天に召されたことを表していた。 長めの休憩の後の「子どもと魔法」は打って変わって、誇張された衣装を着た登場人物達の周りを色取り取りの大小の造形が動き、映像と組合せてメルヘンの世界を表現している。 劇場の装置を上手く使って、瞬時に場面が変わるので、途中で幕は降りず、音楽が途切れない。 演出に費用と時間が掛かっていると思われる。 通常ダブルビル公演は、歌手も両作品に出演することが多いが、今回は齊藤純子が公爵夫人とお母さん役で出ている以外、全て別な歌手になっている。 両作品とも主役は海外の歌手を呼んで来ている。アンジェリカ役のキアーラ・イゾットンは、修道女たちとの重唱では、声が異質に感じたが、後半の独唱では生き別れた子どもを思う心境をドラマチックに歌い良かった。子ども役のクロエ・ブリオはお得意の役らしく、子どものわがままや不安な心境を演技と歌声で上手く表現出来ていた。 その他の日本人歌手の皆さんも、日本のオペラでは主役や重要な役を歌う方も多く、これだけ揃えられたのは新国立劇場の力(財力、補助金)でしょう。 音楽もプッチーニとラヴェルでは随分違うが、それぞれの良さを聴けたように思う。 ダブルビルのオペラ公演は、同じ作曲家の作品であったり、同じ国(言語)の作品であったり、「道化師」と「カヴァレリア・ルスティカーナ」のように同時代でストーリーが近い作品を並べることが多いが、今回はストーリーに母親と子どもが出てくる共通点はあるものの、それ以外は関連性が無い。 関連性の無い作品を歌手、演出もあえて関連性を持たぜず別物として上演することで、オペラの多様性を楽しめる贅沢な公演だったと言えるでしょう。 End
2023.10.01
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鑑賞日:2023年9月29(木)18:30開演入場料:¥11,000 1階15列【主催】TOKYO FM/キョードー横浜山下達郎PERFORMANCE 2023会場:神奈川県民ホール 大ホール 演奏ボーカル、ギター、キーボード:山下達郎ギター :佐橋佳幸→鳥山雄司ベース :伊藤広規キーボード:難波弘之、柴田俊文サックス :宮里陽太ドラム :小笠原拓海コーラス :ハルナ、ENA、三谷泰弘感想 今年も神奈川県民ホールで山下達郎のコンサーツがあるとのことでファンクラブ枠でチケットを確保し、山の神と山下公園まで出かけた。昨年は10/14に同ホールで聴いており、ほぼ一年振り。客席には若いファンも増えている。 昨年ツアーの後、今年5~9月にRCA/AIR時代(1976-1982年)のアルバム8枚をリマスターしアナログLPとカセットで再発(全てオリコン・アルバムチャートTop10入り)したこともあり、前半はその中からの選曲で久々に聞く曲もあり、懐かしい。 40年以上前の曲にも関わらず、全く古臭く感じないのは、曲自身が素晴らしいからで、正しく「Oldies But Goodies」。 全て打ち込みでなく、生バンド演奏として作られているので、コンサートでよりその良さがわかる。 昨年ツアーから、ギターリストがロック・バリバリの佐橋佳幸から、フュージョン系の鳥山雄司に変わっており、始めは少々物足りなさを感じたが、段々とはまって来て、「これもありかも」とまた違った良さを感じることが出来た。 何と言っても70才になった山下達郎は、最初から最後まで素晴らしい歌声。昨年までは、多少勢いで出していた様な所もあったが、今年は曲の端々まで安定した歌声で、3時間後越えても全く衰えてこない。サンソンでも言っていたが、禁酒の効果が出ているのでしょう。 MCは少なめで音楽中心のコンサートだったが、そこは山下達郎らしく音楽の中に「70」を入れたり、たっぷりのリズムギターカッティング演奏、キーボード、ギターの一人弾き語り、いつもの一人アカペラもあり最後まで楽しむことが出来た。 アンコールも1曲多かったようで。例のネットネタの皮肉も少々入っていたような・・・。 舞台上の装置も海外の街を切り取った風景を再現し、流行りのCGを使わず、照明だけで昼夜、季節を表現して、安心して観ることが出来た。 先日神奈川県よりこの神奈川県民ホールは、2025年3月で一旦休館となり、今の所その後は未定との発表があり。 回り舞台やオケピットもあり、オペラ、バレエも上演できる貴重なホール。 MCにもあったように、ぜひ残して頂き、山下達郎のコンサートをまた聞きたい。End
2023.09.28
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鑑賞日:2023年9月10日(日)14:00開演入場料:3,000円(E席/4階 4列)【主催】(財)日本オペラ振興会藤原歌劇団公演共催:新国立劇場・東京二期会歌劇「二人のフォスカリ」ヴェルディ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :田中祐子 演 出 :伊香修吾美 術 :二村周作照 明 :齋藤茂男衣裳コーディネーター:小野寺佐恵振 付 :伊藤範子舞台監督:菅原多敢弘副指揮 :山舘冬樹、大森大輝演出助手:手塚優子 合唱指揮:安部克彦合 唱 :藤原歌劇団合唱部/新国立劇場合唱団 /二期会合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演フランチェスコ・フォスカリ:上江隼人→押川浩士ヤコポ・フォスカリ :海道弘昭ルクレツィア・コンタリーニ:西本真子ヤコポ・ロレダーノ :杉尾真吾バルバリーゴ :黄木 透ピザーナ :加藤美帆感想 藤原歌劇団の2023-24シーズンの初演公演、ヴェルディの初期作品とのことで台風一過の真夏日の下、初台まで出かけた。 初めて観る演目のため事前にストーリーを読んでいったが、動きの少ない台本。 ヴェネツィア総督の息子ヤコボが無実の罪で再審され、流刑が結審し、クレタ島へ送られ、そこで死を迎える。それを聞いた十人委員会により総督フランチェスコが辞職させられ、死を迎える。 舞台は壁がない、奥に向かって高くなっていく台上で演じられ、照明や中央に降ろされた幕と、椅子等の最小限の小道具により、宮殿の大広間、牢獄、サンマルコ広場、総督の部屋に転換されるので時代は不詳。 衣装は、男女とも現代的な黒のスーツ、スカート、シャツ。総督が唯一赤いマントを羽織り、3幕のサンマルコ広場でのゴンドラレースの場面のみ、民衆が白を基調にしたシャツやスボン、スカートを履いている。 総督フランチェスコ、息子ヤコボ、その妻コンタリーニの3人が中心で、それぞれの心境を歌い上げる。 総督フランチェスコ役の押川浩士は、その立場から息子の流刑を認めざるを得ない苦悩、最後は辞職させられてしまう無念をコントロールされた歌声で歌い、想いが伝わって来て良かった。 息子ヤコボ役の海道弘昭は、高音部で一部届かない部分もあったが、中音域はよく響く柔らかい声で歌えていた。 妻コンタリーニ役の西本真子は強目の歌声で高音域まで歌えているものの、ビブラートが多く余り美しく聞こえてこない。 幕終わりのフィナーレ含め合唱場面が多く、3団体の合同で迫力があり良かった。 全体的にテンポを落とさずにきびきびした演奏で、イル・トロヴァトーレのような前奏や美しい旋律のアリアなどヴェルディらしい音楽が聞こえて来て、フィナーレに向かって盛り上げた所は、オケと指揮者の功績でしょう。 台本的に息子ヤコブの冤罪や総督が周囲から恨まれている原因などは舞台上で一切演じられず、観客としては最後の悲劇に共感まで至らない。そこが演奏される機会が少ない理由なのでしょう。End
2023.09.10
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鑑賞日:2023年5月28日(日)14:00開演入場料:7,920円(C席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2023シーズンオペラ「リゴレット」ヴェルディ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :マウリツィオ・ベニーニ演 出 :エミリオ・サージ美 術 :リカルド・サンチェス・クエルダ衣 裳 :ミゲル・クレスピ照 明 :エドゥアルド・ブラーボ振 付 :ヌリア・カステホン舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演リゴレット :ジョルジュ・ペテアン →ロベルト・フロンターリジルダ :ハスミック・トロシャンマントヴァ公爵 :イヴァン・アヨン・リヴァススパラフチーレ :妻屋秀和マッダレーナ :清水華澄モンテローネ伯爵:須藤慎吾ジョヴァンナ :森山京子マルッロ :友清 崇ボルサ :升島唯博チェプラーノ伯爵:吉川健一チェプラーノ伯爵夫人:佐藤路子小 姓 :前川依子牢 番 :高橋正尚感想 新国立劇場で新制作の「リゴレット」が上演されるとのことで、梅雨が近づき少々蒸し暑い曇天の下、初台まで出掛けた。 新制作となっているが、スペインのビルバオ・オペラとリスボン・サン・カルロス歌劇場の共同制作で初演された演出をそのまま持って来てるもの。 舞台の左右と奥に囲むように壁を配置し、中央部の台・装置を入れ替えて、マントヴァ公爵邸の大広間、リゴレットの住居・街並み、河畔の居酒屋を表す。抽象的だが、時代設定は変えず、音楽を邪魔するものではない。2幕と3幕は休憩を入れず、幕を開けたまま暗転の状態で場面転換を行い、オペラの連続性を維持出来ていた。 歌手は主役3人がそれなりに歌えていたが、感動するまでには至らず。客席からは盛んに「ブラボー」等の掛け声が出ていたが、それほどとは思えず。 タイトルロールのロベルト・フロンターリは役にあった歌声だが、せむし男の道化師的な動きには見えず、マントヴァ公爵への復讐する恨みやジルダを失った時の嘆きなど十分には伝わって来ず。有名作品のため過去の名演と比べてしまうのは致し方なし。当初発表のジョルジュ・ペテアンではどうだったか。 ジルダ役のハスミック・トロシャンは、リリコのソプラノで、アカペラのコロラトゥーラは美しく響いていた。 マントヴァ公爵のイヴァン・アヨン・リヴァスは、高音は出るもののアタック気味、中音域は少々こもるため、心地よく聞こえて来ない。 オケは歌わせる所はゆっくりと歌手にピッタリと合わせ、音楽を盛り上げる所は、テンポ、音量を上げて、ダレさせない。 スカラ座やMETでも振っているイタリア人マエストロ、マウリツィオ・ベニーニの功績でしょう。 新国立劇場の今シーズン鑑賞は「ラ・ボエーム」をパスで、本日で終了。来シーズンは新制作少なく、シーズンオフの「スーパーエンジェル」等の実験的公演もなく寂しい。 End
2023.05.28
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鑑賞日:2023年6月27日(土)14:00開演入場料:10,800円(S席:セット券 1階M列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]日生劇場開場60周年記念公演NISSAY OPERA 2023オペラ「メデア」ケルビーニ作曲全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :園田隆一郎演 出 :栗山民也美 術 :二村周作衣 裳 :前田文子振 付 :田井中智子字幕・翻訳:本谷麻子舞台監督 :大澤 裕副指揮 :大川修司、粟辻 聡、矢野雄太照 明 :勝柴次朗ヘアメイク:鎌田直樹音 響 :佐藤日出夫演出助手 :橋詰陽子合唱指揮 :キハラ良尚コレペティトゥア:平塚洋子、星 和代、髙田絢子管弦楽 :新日本フィルハーモニー交響楽団合 唱 :C.ヴィレッジシンガーズ出演メデア :岡田昌子ジャゾーネ:清水徹太郎グラウチェ:小川栞奈ネリス :中島郁子クレオンテ:伊藤貴之第一の侍女:相原里美第二の侍女:金澤桃子衛兵隊長 :山田大智感想 日生劇場で「メデア」日本初演公演があるとのことで、コロナ制限が無くなり人出が増えた中、日比谷へ向かった。 今回11月公演とのS席セット券が先行発売され、岡田昌子さん期待で「マクベス」とのセット券を購入。東京二期会「午後の曳航」は演出が宮本亜門なのでパス。 「メデア」はマリカ・カラスが復活させたオペラらしいとは知っていたが、今回日本初演で当方も初見となる。METラーブビューイングでも今シーズン上演されたが、メトロポリタン歌劇場としても初演とのこと。タイトルロールが高音が連続しドラマティコが要求される難役であることと、ギリシャ悲劇で最後に自らの子供をその手で殺してしまう残酷なストーリーのため上演機会が少ないのでしょう。 5分押しでオケ・チューニング、指揮者登場し、序曲を演奏。プログラムに記載あるように、作曲家ルイージ・ケルビーニ(1970~1842年)は、ハイドンやベートーヴェンと同時代で、確かに序曲もベートーヴェンの交響曲を感じられる。 序曲中は紗幕に子供二人の影を遠近を使って、遊んでいる情景を映す。 幕が開くと舞台は暗い灰色の壁に囲まれ、中央は階段状になっている。左の壁から斜めに廊下が降りてきて、宮殿内の設定。次に階段上部の壁が上に上がり、アルゴー号が港に着いて、宝物が運ばれる場面になる。その後も階段の前を壁が塞ぎ、宮殿の内部に戻る。右側の壁は半透明の幕で、明るくなるとメデアの影を写し苦悩を表す。大きな装置転換はないが、照明を上手く使い、場面や登場人物の心境を表している。3幕最後、舞台上部右側の壁が動き、火災を表す赤い照明の中、血の付いた子供の亡骸を前に掲げメデアが降りてくる場面は、思わずこちらもゾッとして、鳥肌が立った。 歌手は、タイトルロールの岡田昌子が圧巻。圧倒的な歌声で、最後まで歌いきった。特に3幕の子供たちへの愛情から、ジャゾーネへの恨みが上回り、呪うために遂に子供たちを自らの手で殺そうと決心をするまでの心の変化を歌声と演技、張り詰めた緊張感で最後まで表現していた。ジャゾーネ役の清水徹太郎はメデアへの仕打ちの後悔と恐れを、グラウチェ役の小川栞奈はジャゾーネへの愛情を、侍女ネリス役の中島郁子はメデアをどうにか止めようとする苦悩を、クレオンテ王役の伊藤貴之は王の威厳と娘への心配を歌えていた。 合唱も少ないながらも、演技含め十分に歌えていた。とくに結婚式での裏歌が美しい。 一番の功績は園田隆一郎マエストロでしょう。3幕のバンダや裏歌はまったくズレがなく完璧。全体を通して、全てを統率していることが伝わる。3幕エンディングのテンポアップと盛り上げも素晴らしかった。 これだけのハイレベルの公演を出来るのは、日生劇場がオーディションで歌手を選び、自主運営で十分な準備が出来ているからでしょう。11月の「マクベス」も楽しみに。 End
2023.05.27
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既に公式HPに開催報告が掲載されているので、これまで15回の比較表に追加。年回期間テーマ来場者数フォーラム全体チケット販売数有料/無料公演数2005年第1回4/29-5/1ベートーヴェンと仲間たち306千人324千人109千枚120/2092006年第2回5/3-5/6モーツァルトと仲間たち490千人695千人160千枚145/3772007年第3回5/2-5/6民族のハーモニー660千人1,060千人200千枚181/4732008年第4回5/2-5/6シューベルトとウィーン640千人1,004千人182千枚221/5292009年第5回5/3-5/5バッハとヨーロッパ411千人711千人137千枚168/4192010年第6回5/2-5/4ショパンの宇宙420千人808千人141千枚175/3582011年第7回5/3-5/5とどけ!音楽の力広がれ!音楽の輪タイタンたち146千人・・・・人45千枚90/1752012年第8回5/3-5/5サクル・リュスロシアの祭典360千人460千人123千枚159/1922013年第9回5/3-5/5パリ、至福の時414千人516千人138千枚135/2092014年第10回5/3-5/510回記念祝祭の日431千人612千人151千枚147/3662015年第11回5/2-5/4PASSIONSパシオン367千人427千人122千枚135/3952016年第12回5/3-5/5ナチュール自然と音楽366千人429千人114千枚126/3402017年第13回5/4-5/6ラ・ダンス舞曲の祭典356千人422千人116千枚122/3262018年第14回5/3-5/5モンド・ヌーヴォー新しい世界へ308千人432千人119千枚125/4512019年第15回5/3-5/5ボヤージュ旅から生まれた音楽366千人425千人121千枚124/2982023年第16回5/4-5/6Beethovenベートーヴェン150千人180千人87千枚65/184 ここ5回ほどと比較して来場者数が半数以下、公演数が半数近くに減っている割に、チケット販売数が7割あるのは、大キャパのホールA公演数をキープし、売れたからでしょう。 新型コロナの影響で日本人の演奏家中心となり、これまでのLFJの面白味なし。 ぜひ来年はナントと関連したプログラム、来日演奏公演を期待。 End
2023.05.14
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鑑賞日:2023年5月5日(金・祝)ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2023Beethoven ―― ベートーヴェン 【主催】ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2023 運営委員会 (三菱地所株式会社/株式会社東京国際フォーラム/株式会社KAJIMOTO)新型コロナにより2020年が直前に中止となり、4年振りに再開されるとのことで、山の神と有楽町へ出掛けた。今回ぐっと小規模になり、有料公演はホールA、B5、C、D7のみ。地下Eホールは締め切ったままで、フォーラム内の無料コンサートは、地上広場キオスクのみ。ガラス棟の吊り下げポスターも小さなものが1枚のみ。LFJ2023公式CDはなく、グッズ売り場もガラス棟内の小さなスペースのみの販売と寂しい。これまでフランス・ナントと同じテーマで、その出演者の多くがLFJに来日したので、ナントでの録音が公式CDとして発売されて来た訳だが、今回の出演者はほとんど日本で調達のため公式CDが発売出来ないのでしょう。2020年も同じ「ベートーヴェン」がテーマで、オペラ「フィデリオ」、「VOCESS8」、「みんなで第九」のチケットを購入し、楽しみしていたが中止・払い戻しとなった。今回は声楽、コーラスの演奏家は、第九のソリスト、合唱を除くと天羽明惠のみ。結局、5/4の天羽明恵の歌曲とオケ交響曲のコンサートを選択。まずはホールD7へ公演番号:232/ ベートーヴェン、憧れと愛を歌う日時:2023年5月5日(金・祝) 11:15~12:00会場:東京国際フォーラム ホールD7入場料:¥2,500(指定席X1列目)出演ソプラノ:天羽明惠ピアノ :村上寿昭曲目ベートーヴェン:五月の歌op.52-4ベートーヴェン:思い出 WoO136ベートーヴェン:口づけop.128ベートーヴェン:「4つのアリエッタとデュエット」op.82 より1~4ベートーヴェン:6つの歌 「ミニヨン」op.75-1ベートーヴェン:憧れ WoO146ベートーヴェン:希望に寄すop.32ベートーヴェン:アデライーデop.46 感想 客席は満席、最前列で聴く。天羽明惠は初めて聞く方だが、普段はドイツを拠点に活動されており、毎年数回日本で公演されているとのこと。 良くコントロールされた歌声でドイツ語の歌詞が心地よく聞こえてくる。「憧れと愛を歌う」をテーマに年代に関係なく選曲されたとのこと。 今回、プログラムに加え訳詞カードが入口にあり、訳詞カードを見ながら聞くと曲の内容が解りやすい。 途中、ピアノのみで「月光」と変奏曲の演奏あり。変奏曲は転調が続く曲で、天羽さんが調性記号を描いた紙を曲に合わせてめくって行くパフォーマンスもあり、 あっと言う間に時間が過ぎて、予定時間を10分程超過して終演。 公演終了後、丸の内エリアを散歩して、レストランの屋外テラスでカレーランチ。途中「KITTE 1階 アトリウム」での無料コンサートを聞こうとしたが、吹き抜けのロビーのため音が聞こえづらく、早々に移動。 東京国際フォーラムに戻ると、地上広場キオスクでバイオリンの演奏があり、その音色が美しい。当初スケジュールには記載なく、掲示も「島村楽器」だけで演奏者は不明。 公演番号:213/巨匠は田舎の素朴な自然を歩いた日時:2023年5月5日(金・祝) 15:15~16:15会場:東京国際フォーラム ホールA入場料:¥3,000(S席19列目)出演指揮者:三ツ橋敬子オーケストラ:東京交響楽団曲目ベートーヴェン:騎士バレエのための音楽 WoO1ベートーヴェン:交響曲第6番 へ長調 op.68 「田園」感想 客席は満席。オーソドックスに安定した演奏でゆったりとした気分で聞くことが出来た。1曲目はホルンが角笛の音で、2曲目は落雷の音が上手く、楽章毎の音楽の変化をそれなりに楽しめた。 とにかくLFJ復活したとのことで何より。人出も思ったより多く、ぜひ来年はナントと同じ演奏家の公演を期待。End
2023.05.05
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鑑賞日:2022年4月16日(日)15:00開演入場料:10,000円(D席/3階 R4列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】読売日本交響楽団東京・春・音楽祭2023東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.4歌劇「トスカ」<演奏会形式>プッチーニ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :フレデリック・シャスラン管弦楽 :読売日本交響楽団コンサート・マスター:長原幸太合 唱 :東京オペラシンガーズ児童合唱 :東京少年少女合唱隊合唱指揮 :仲田淳也児童合唱指揮 :長谷川久恵出演トスカ :クラッシミラ・ストヤノヴァカヴァラドッシ :ピエロ・プレッティ→イヴァン・マグリスカルピア :ブリン・ターフェルアンジェロッティ:甲斐栄次郎堂 守 :志村文彦スポレッタ :工藤翔陽シャルローネ :駒田敏章看 守 :小田川哲也羊飼い :東京少年少女合唱隊メンバー感想 昨年のトゥーランドットが良かったので、今年も東京・春・音楽祭のプッチーニ・シリーズを聞きに、突然の雷雨の中、上野まで出掛けた。 客席はB,C席に空きが多く見られ、全体では6~7割程度の入りか。新型コロナの高齢者外出控えの残像とチケット価格アップの影響もあるのでは。 今回最安値E席¥7,000が売切れで、しょうがなくD席¥10,000を購入。演奏会形式で1万円だと高額に感じる。 時間となり、オケ、合唱が登場。オケは舞台上7プルトの総勢約80人。合唱は奥の山台に70人。児童合唱は、1幕歌う場面近くに、オケと合唱山台の間に14人が白い衣装で登場し、横に並んで曲に合わせて動きを入れる。 冒頭から大迫力のオケで圧倒される。2幕スカルピアが殺された後の消え入りそうなP、3幕冒頭の揃ったホルンの音など素晴らしい演奏でイタリア人指揮者の功績とヴァイグレ指導の影響か。 3幕冒頭の鐘の音は、シンセで出していた。 合唱は1幕山台貼り付けで、大迫力のテ・デウムを歌唱。2幕はスカルピアの公邸室内で、屋外の祝賀会でトスカと合唱の歌声が窓から聞こえる設定のため、オペラでは裏歌で歌う場面だが、合唱は山台に張り付き。但し、楽譜を顔の前に立てP感を出している。トスカは裏歌。合唱は歌い終わると退場。 3幕は、途中男性が20人程山台に現れ、兵士達の「あ~。スカルピアが刺された」の台詞を言って退場。 3幕冒頭は東京少年少女合唱隊から一人の少女が制服を着て合唱の山台中央に登場し羊飼いを歌い、らしく聞こえて来た。 歌手はタイトルロールのクラッシミラ・ストヤノヴァが少々ご年配でビブラートは多いものの、終始コントロールされた歌声でトスカの心情を歌う。見せ場の2幕アリア「歌に生き恋に生き」は指揮台に座り、手すりに掴まりながら、その想いを歌い素晴らしい。 カヴァラドッシ代役のイヴァン・マグリは、チラシやプログラムの長髪と異なり、オールバックに眼鏡を掛けて登場し、唯一楽譜を見ての歌唱。大音量のオケの前でも歌声は聞こえ、トスカとの重唱も良い。アリア「妙なる調和」「星は光りぬ」の最高音も問題なく、歌唱後はオケが止まり、ブラボーの掛け声が掛かっていた。 何と言ってもスカルピア役ブリン・ターフェルが圧巻。1幕終わりのテ・デウムでの歌唱は、大音量のオケや合唱の中でも十分に聞こえ、その歌声は正にスマートでかつ策略家の悪役スカルピアそのものに思えた。2幕トスカに迫る所の歌声と小芝居もぞっとさせて上手い。 演出は、舞台壁への照明のみで、3幕は城壁ような映像の照明あり。2幕殺された後のスカルピア、3幕カヴァラドッシは、指揮台の横に後ろ向きに立っていることで死んでいることを表していた。3幕飛び降りるトスカは、右手を上げていた。 先日の「マイスタージンガー」はがっかりしたが、本日の「トスカ」は演奏会形式ながらも十分にオペラの情景を表現出来ており、やはり主役歌手のレベルが重要。 来年の東京春祭は、インタビュー記事で、マレク・ヤノフスキ指揮「トリスタンとイゾルデ」、セバスティアン・ヴァイグレ&読響「エレクトラ」、プッチーニ・シリーズ「ラ・ボエーム」、リッカルド・ムーティの演奏会やアカデミー公演が予定されているとのことで、楽しみに。End
2023.04.16
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鑑賞日:2022年4月9日(日)15:00開演入場料:8,000円(E席/5階 R2列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】NHK交響楽団東京・春・音楽祭2023東京春祭ワーグナー・シリーズvol.14楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」<演奏会形式>ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :マレク・ヤノフスキ管弦楽 :NHK交響楽団ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル合 唱 :東京オペラシンガーズ合唱指揮 :エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩音楽コーチ:トーマス・ラウスマン出演ハンス・ザックス :エギルス・シリンスファイト・ポークナー :アンドレアス・バウアー・カナバスクンツ・フォーゲルゲザング:木下紀章コンラート・ナハティガル :小林啓倫ジクストゥス・ベックメッサー:アドリアン・エレートフリッツ・コートナー :ヨーゼフ・ワーグナーバルタザール・ツォルン :大槻孝志ウルリヒ・アイスリンガー :下村将太アウグスティン・モーザー :髙梨英次郎ヘルマン・オルテル :山田大智ハンス・シュヴァルツ :金子慧一ハンス・フォルツ :後藤春馬ヴァルター・フォン・シュトルツィング:デイヴィッド・バット・フィリップダフィト :ダニエル・ベーレエファ :ヨハンニ・フォン・オオストラムマグダレーネ :カトリン・ヴンドザム夜 警 :アンドレアス・バウアー・カナバス感想 昨年に引続き東京春祭ワーグナー・シリーズの公演があるとのことで、すっかり花が散って緑の葉に覆われた桜の木が並ぶ上野へ出掛けた。 東京・春・音楽祭も今年から入場料が上がり、演奏会形式ワーグナー・シリーズは昨年23,000~5,000円が今年26,000~8,000円に。 客席は1階左右後方に一部空きがあるもののほぼ満席。舞台は張り出しが出され、昨年同様映像がないため後部は反響板あり。 映像が無い代わりに場面毎に照明で色が付けられ、これでも十分効果あり。 開演時間となり、コンマスのキュッヒル氏初めオケが舞台上に登場しチューニング。7プルト3管編成で約80名。指揮者登場し、前奏曲が大音量で奏でられ分厚い音楽に圧倒される。 合唱は1幕は裏歌、2幕は舞台上手に集まり歌唱、2幕最後に舞台奥の山台に並び約70人。オケ含め出演者のマスクは無し。 歌手は、ザック役エギルス・シリンスはじめ安定した歌声で、特にベックメッサー役のアドリアン・エレートはコミカルな部分含め表現豊かな歌声で楽しめた。 ところが、ヴァルター役デイヴィッド・バット・フィリップの歌声が響きに乏しく埋もれてしまう。1幕のマイスターの資格試験で、従来形式ではないがザックスが感じたような新しい芸術はとても感じられず、試験に落ちてもしょうがないように聞こえる。これでは、ザックスがエファへの想いを諦め、ヴァルターに託すことが出来ない。 プロフィールを見てもワーグナー作品は昨シーズンのローエングリンだけで、人選ミスと思えてしまう。 演奏会形式の場合、主役の歌唱力が落ちると段々と不満が募り、聞いて居られなくなる。結局3幕を聞かず、2幕終了時点で帰ることに。 来週の「トスカ」も聞きに行く予定だが、カヴァラドッシ役に変更があり、今から不安に。End
2023.04.09
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鑑賞日:2023年3月19日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2032シーズン歌劇「ホフマン物語」オッフェンバック曲全5幕(フランス語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :マルコ・レトーニャ演出・美術・照明:フィリップ・アルロー衣 裳 :アンドレア・ウーマン振 付 :上田 遙再演演出 :澤田康子舞台監督 :須藤清香合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京交響楽団出演ホフマン :レオナルド・カパルボニクラウス/ミューズ:小林由佳オランピア :安井陽子アントニア :木下美穂子ジュリエッタ :大隅智佳子リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:エギルス・シリンスアンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ :青地英幸ルーテル/クレスペル:伊藤貴之ヘルマン :安東玄人ナタナエル :村上敏明スパランツァーニ :晴 雅彦シュレーミル :須藤慎吾アントニアの母の声/ステッラ:谷口睦美感想 2020年4月公演が新型コロナにより中止となり、3年振りに演奏されるとのことで、桜が咲き始めた中、新宿初台まで出掛けた。 入場時のカメラによる体温測定、クローク閉鎖、客席前2列空席は残っているが、ドリンクサービスは復活し、客席はマスク無しの観客もチラホラ。 終演時の「ブラボー」も数人あり。 第1幕と2幕を連続して演奏し、休憩の後3幕、2回目の休憩が入った後に4,5幕が演奏される。 本演出は新国立で5シーズン目で、前回の2018年4月の公演を観ている。 その際の印象通りで、音楽に合わせた、おしゃれで解りやす演出で衣装、メイキャップが面白い。 オケは、可もなく不可もなしで、安全運転の演奏に感じられた。 歌手の方はタイトルロールのレオナルド・カパルボは声は高音まで出ているものの、ぎくしゃくした歌い方で、若干聞きづらい。 ソプラノ3人はそれぞれ役に合った歌声。オランピア役の安井陽子はお得意のコロラトゥーラで、アントニア役の木下美穂子は若干ビブラートはあるが美しい高音を響かせ、ジュリエッタ役の大隅智佳子はストレートな高音で合唱の中でも良く聞こえ、舟唄の二重唱はバランスを取った歌声で素晴らしかった。 全体的にバランスの良い公演で、ホフマン物語の世界を楽しむことが出来た。 先に2023/2024シーズンの公演予定が発表されたが、最近の再演が多く、プレミエは2公演のみ。大野芸術監督が続けてきた委嘱新作公演やバロックオペラもなく新鮮味に欠ける。 新型コロナによる赤字の影響も推測され、元々の補助金頼みの体制では仕方ないかと思われるが、自主運営で新型コロナ禍でも着々と準備を進め、再開すると次々に新作を繰り出すメトロポリタン歌劇場とは大きな差を感じる。End
2023.03.19
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鑑賞日:2023年3月5日(日)11:00開演入場料:¥3,700 (シアター2/J列)【配給】松竹株式会社METライブビューイング2022-2023シーズン歌劇「フェドーラ」作曲:ウンベルト・ジョルダーノ全3幕(イタリア語/字幕付)会場:横浜ブルグ13指 揮:マルコ・アルミリアート演 出:デイヴィッド・マクヴィカー美 術:チャールズ・エドワーズ衣 装:プリギッタ・ライフェンシュトゥール照 明:アダム・シルバーマン合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団出演:フェドーラ :ソニア・ヨンチェヴァロリス・イパノフ:ピョートル・ベチャワオルガ :ローザ・フェオラデ・シリエ :ルーカス・ミーチェム上映時間:2時間42分(休憩1回)MET上演日:2023年1月14日感想 テノール・アリアが有名だが、まだ観たことのないジョルダーノ作曲「フェドーラ」がMETライブビューイングで上演されるとのことで、「めぐりあう時間たち」に引続き、横浜みなとみらいの映画館まで出掛けた。 客席は98席のシアターに20人程度の入りで、珍しい演目のためか少な目。 METでは25年振りの公演とのこと。調べてみると前回公演は指揮がアバド、主役歌手はフレーニ、ドミンゴらしい。 今回もこれからの映画紹介、METスポンサーコマーシャルが続き、約15分後にようやく本編が開始。 中継車の中からMET「ワルキューレ」のブリュンヒルデ役クリスティーン・ガーキーにMET総裁ピーター・ゲルブ氏が加わり作品の紹介の後、指揮者登場ですぐに演奏が始まる。 第1幕サンクトペテルブルクの屋敷、第2幕パリの社交場、第3幕はスイスアルプスの別荘で衣装含め原作通りの舞台設定。第1幕と2幕は連続して演奏され、休憩時にインタビューやこれからの演目紹介が入って第3幕上演となった。 第1幕はロシア皇女フェドーラの婚約者が殺害され、その犯人がロリス伯爵と疑われ、必ず突き止めると決意する。幕が降りると舞台装置を手際よく入れ替え、第2幕のパリの社交場に。フェドーラは気がある振りをしてロリスに真相を聞き出し、告発する手紙をロシアに送ってしまう。その後にロリスから婚約者がロリスの妻と逢引きをしている所に乗り込んで、もみ合う内に正当防衛で銃を射ってしまったことを聞き、更に互いの愛を確かめ、追手から逃れるため二人してスイスのオルガ伯爵夫人の別荘へ。 第3幕は、幸せそうな二人へロシアからロリスへ手紙が届き、先の告発文からロリスの弟が捕まり監獄で死亡、更に母親まで亡くなったこと知り、告発者を見つけ出して復讐すると。フェドーラは服毒し、告発者が自分で有ることを告げて亡くなるところで幕。 幕毎に二人の立ち位置と感情が大きく変わるので、それを観客に納得させる歌声と演技が必要。 タイトルロールのヨンチェヴァの歌声は素晴らしく、中域から高音まで柔らかくもしっかりとした歌声で録音のスピーカー越しでも高音で鼓膜が震える。皇女の気品を保ちながらも、熱烈なキスシーン、3幕での幸せそうな笑顔から苦悩の表情への変化が映像から十分に伝わってくる。 相手役のベチャワも素晴らしく力強い高音で、2幕でのアリア「愛さずにはいられないこの思い」はゆっくりとしたテンポながらも、感情を入れながら最後まで歌いきった。インタビューでも、これまでの声のトレーニングで「制御できる全力」を心掛けているとのこと。 このアリアの旋律は、途中の間奏曲や終曲に用いられている。 3幕は正しく主役二人の歌声のバトル状態。 カーテンコールでは、1階客席はほぼスタンディングオベーションで、多くの観客が満足している様子が覗える。 第2幕では舞踏会上のピアノ演奏に合わせて歌が入ったり、バンダの演奏が加わったりとオペラとしては工夫されている作品。なかなか上演されないのは、主役二人へ高い技量が要求されるためかと思われた。 素晴らしい歌手、オーケストラ、舞台装置と演出、衣装と全てを揃えて、四半世紀振りに上演するMETの意気込み、底力を感じさせる公演だった。 End
2023.03.05
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鑑賞日:2023年2月26日(日)14:00開演入場料:2,000円(E席/5階 L1列)【主催】(財)東京二期会、(社)日本演奏連盟2023都民芸術フェスティバル 参加公演《二期会創立70周年記念公演》ジュネーヴ大劇場との共同制作東京二期会オペラ劇場歌劇「トゥーランドット」プッチーニ作曲(ルチアーノ・ベリオによる第3幕補作版)全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :ディエゴ・マテウス演 出 :ダニエル・クレーマーセノグラフィー、デジタル&ライトアート:チームラボステージデザイン:チームラボアーキテクツ衣 裳 :中野希美江照 明 :シモン・トロッテ振 付 :ティム・クレイドン演出補 :デレク・ウォーカー合唱指揮:佐藤 宏演出助手:島田彌六舞台監督:幸泉浩司公演監督:大島幾雄公演監督補:佐々木典子合 唱 :二期会合唱団児童合唱:NHK東京児童合唱団管弦楽 :新日本フィルハーモニー交響楽団出演トゥーランドット姫:土屋優子皇帝アルトゥム :川上洋司ティムール :河野鉄平王子カラフ :城 宏憲リュー :谷原めぐみ大臣ピン :大川 博大臣パン :大川信之大臣ポン :市川浩平役 人 :井上雅人感想 新春恒例の都民芸術フェスティバルは藤原「トスカ」に続いて、東京二期会「トゥーランドット」の公演があるとのことで上野まで出掛けた。 客席はS,A席に若干空きが見られものの、3階以上は、ほぼ満席状態。またホール空間は全体が少々煙っている状況。 今回の特徴はチーム・ラボのレーザー光他の光の演出とベリオによる第3幕補作版であること。 舞台幕が開くと、舞台上半分に白い半透明の横長の箱があり、女性が白い衣装を来て入っており、その中で合唱が歌われる。男性は箱の下、反対に暗転の中黒い衣装で歌う。 また中央の大きな三角形の装置が回転し、場面に合わせて、鮮やかな彩りに変化する。 更に舞台上下左右から空間や、客席に向かってレーザー光が照射され、空中やホール壁面、天井に図形を描く。これまでのオペラ公演では見たことがない、新しい演出。 チーム・ラボの特設Webサイトにジュネーブ劇場での映像がある。 きっとオペラのストーリーに合っていない、邪魔だとの批判は出るだろうが、これまでに無いエンターテイメント・ショーとして楽しめた。 個々の演出は、最初ティムールとカラフが喧嘩をしていたり、リューが白い箱に入って離れていたり、最後はティムールまで自害し、大臣が殺し合ったりと、?な所が結構有り。 通常のアルファーノ補作版では第3幕が短いために、第1幕で休憩が入り、第2幕と第3幕を連続して演奏されることがあるが、今回のベリオ版は1,2幕を連続で演奏した後に休憩が入り、3幕が単独に上演となった。 ベリオ補作版は初めて聴いたが、謎解の後、それまでの旋律を持って来てリューの死とトゥーランドットの心変わりの場面を長くしてPで終わるが、結局心変わりの所は解りづらく蛇足に感じた。一般的なアルファーノ版の大合唱のフィナーレで華々しく終わってほしかった。 歌手は、タイトルロールの土屋優子が、最後まで高音域を保ち歌えていた。王子カラフ役の城宏憲も一部オケに消される所があったが、「誰も寝てはならぬ」他、決める部分はしっかり聞こえてきた。リュー役の谷原めぐみ、ティムール役の河野鉄平も役に合った歌声だった。 何と言っても「トゥーランドット」は合唱のウエイトが大きく、二期会合唱団は、裏歌含めよく歌えており、オペラ全体を盛り上げていた。 やはりマスク無しでないと。 オケは可もなく不可もなし。但し、第1部の静かな場面で、大きな音が。オケピットで何か落とした? ワーグナーの指輪などで今回の光の演出が入ったら面白そうで、今後も、新しい演出・舞台技術を取り入れたオペラも観てみたい。End
2023.02.26
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鑑賞日:2023年2月11日(土)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階3列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2032シーズン楽劇『タンホイザー』ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :アレホ・ペレス演 出 :ハンス=ペーター・レーマン美術・衣裳:オラフ・ツォンベック照 明 :立田雄士振 付 :メメット・バルカン再演演出 :澤田康子舞台監督 :髙橋尚史合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団バレエ :東京シティ・バレエ団管弦楽 :東京交響楽団出演領主ヘルマン:妻屋秀和タンホイザー:ステファン・グールドヴォルフラム:デイヴィッド・スタウトヴァルター :鈴木 准ビーテロルフ:青山 貴ハインリヒ :今尾 滋ラインマル :後藤春馬エリーザベト:サビーナ・ツヴィラクヴェーヌス :エグレ・シドラウスカイテ牧 童 :前川依子4人の小姓 :和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希感想 本公演の千秋楽、本演出は2013年2月に観ているがタイトルロールの歌手が代役で今一だった記憶あり。今回は新国立指輪のジークムント、ジークフリート役を歌ったステファン・グールドがタイトルロールとのことで期待して冬晴れの下、初台まで出掛けた。 序曲の後に幕が上がりバレエが入る。体にピッタリの衣装だが、透けてはおらず、節度があって?日本的。 演出は、舞台上部まである半透明の複数本の柱の位置や照明で色を変え、舞台奥の映像と合わせて、ヴェーヌスベルク、ヴァルトブルク城、近くの谷の情景を表す。衣装も特異な物でなく、違和感なく観ることが出来た。 オケは、海外オペラ公演に比較すると若干のミス音、入りや切際のズレが気になったが、日本のオケではこんなものでしょうか。バンダはしっかり聞こえて来た。 歌手は、タイトルロールのステファン・グールドは、以前聞いた指輪の時よりも声量が落ちたように感じたが、舞台が進むに連れて声が出て来て、歌合戦、ローマ語りも満足する出来でした。 エリーザベト役のサビーナ・ツヴィラクは安定した歌声で特に3幕冒頭pの歌唱がエリーザベトの心情を表し素晴らしかった。ヴェーヌス役のエグレ・シドラウスカイテも歌声と容姿含め役に合っていた。日本人歌手の方も概ね良かった。牧童役の前川依子の歌声も美しく響いていた(1/28の藤原「トスカ」の牧童とは大違い)。 一番良かったのは合唱で「巡礼の合唱」、「大行進」他、裏歌も含めてバランス良く、大迫力で良かった。やはりマスク無しでないとオペラにはならない。 主役の歌手が揃うとワーグナーの音楽を楽しめる。4月の東京春祭「マイスタージンガー」も楽しみに。 End
2023.02.11
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鑑賞日:2023年2月4日(土)11:00開演入場料:¥3,700 (シアター2/J列)【配給】松竹株式会社METライブビューイング2022-2023シーズン歌劇「めぐりあう時間たち」(The Hours)作曲:ケヴィン・ブッツ台本:グレッグ・ピアス原作:マイケル・カニンガム 全2幕(英語/字幕付)会場:横浜ブルグ13指 揮 :ヤニック・ネゼ=セガン演 出 :フェリム・マクダーモット美術・衣装:トム・バイ照 明 :ブルーノ・ポエットプロジェクション:フィン・ロス振 付 :アニー=B・パーソンドラマツルギー:ポール・クリーモー出演:クラリッサ・ヴォーン:ルネ・フレミングローラ・ブラウン :ケリー・オハラヴァージニア・ウルフ:ジョイス・ディドナートリチャード :カイル・ケテルセンサリー :デニース・グレイブスバーバラ/ミセス・ラッチ:キャスリーン・キムアーチの下の男、ホテルの従業員:ジョン・ホリデー上映時間:3時間19分(休憩1回)MET上演日:2022年12月10日感想 メトロポリタン・ライブビューイングで3大ディーバが共演し、新作が上演されるとのことで、久しぶりの鑑賞のため横浜みなとみらいの映画館まで出掛けた。 客席は98席のシアターに30人程度の入りで、首都圏と言えども新作ものはこの程度の集客なのでしょう。 開演時間の11時になって最初の10分はこれから上映映画のPRが続き、ようやくMETのインサートが入ったが今度はMETスポンサーのコマーシャルが5分ほど続いて、やっと本編が始まった。 冒頭は女優のクリスティーン・バランスキーにMET総裁ピーター・ゲルブ氏が加わり作品紹介の後、柄の入ったシャツを着た指揮者ヤニック・ネゼ=セガン登場となり始まる。 原作はマイケル・カニンガムの小説で2002年に映画になり、アカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞しているもの。 3つの異なった時代、場所にいる女性3人(1923年イギリス・リッチモンド/作家ヴァージニア・ウルフ、1949年ロサンゼルス/妊婦ローラ・ブラウン、1999年ニューヨーク/編集者クラリッサ・ヴォーン)の苦悩をそれぞれ描き、最後にその3人の関連性が明かされる。 音楽は調が定まらず、ほぼセリフに音程が付いてどんどん変化していくが、不協和音にはならず、聞きやすい。ピアノ演奏に弦楽が付いたり、パーカッションがジャスになったりと色々な音楽が組み合わさって聞こえてくる。また途中に「魔笛」の夜の女王のアリアや「ばらの騎士」の旋律が聞こえてくる所が楽しめる。 主役3人の歌声は安定しており、更に感情が伝わってくる。作曲者、台本作家のインタビューの中でも、3人からフレーズや長さの変更の意見が出されて取り入れたとのことで、歌手たちも入って作り上げられた作品になっているのでしょう。 ダンサーや合唱は、一部街の人や花屋のお客等実在の人物になる所があるが、ほとんど背景の一部として舞台に入り込んで踊り、歌を加えている。 その中でもホテルのドアマン役他のジョン・ホリデーのカウンターテナーのヴォカリーズが美しく響いていた。 第1幕は、それぞれ3つの時代の舞台が暗転で転換され演じられていたが、第2幕からは各時代の舞台を小さくして、左右、上部からも表れその中で歌い、更に同時に2つの時代の舞台を並べ、主役たちがそれぞれの想いの言葉で重唱する。そして最後は3つの時代の舞台が出現し、舞台中央の椅子に3人が座り、「ばらの騎士」を彷彿とさせる3重唱となって幕。 時間、空間を飛び越えて、登場することは映画や演劇では非現実的(SF?)になるが、今回3重唱となっても違和感を感じないのは、オペラではこれまでも行われて来た技法だからでしょう。 本作品はルネ・フレミンが発案し、作曲家のケヴィン・ブッツと台本作家のグレッグ・ピアスとで作り上げられたとのこと。そのルネ・フレミングのインタビューで「新型コロナによって油の乗っている歌手たちが数年間歌う機会を失ったことが残念」との発言が印象的だった。 新作でエイズや同性愛等の現代のアメリカの苦悩をテーマに取り上げ、素晴らしい歌手だけでなく、新しい音楽や演出を取り入れながらも、オペラの伝統的な要素もあり、それら全体のバランスの良さは、さすがメトロポリタン歌劇場と言えるでしょう。 新国立劇場の次期シーズンはじめ、日本でも質の高い新作オペラを期待したい。End
2023.02.04
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鑑賞日:2023年1月28日(土)14:00開演入場料:2,500円(E席/4階 R3列)【主催】(財)日本オペラ振興会、(社)日本演奏連盟2023都民芸術フェスティバル参加公演藤原歌劇団公演歌劇「トスカ」プッチーニ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :鈴木恵里奈演 出 :松本重孝総監督 :折江忠道美 術 :大沢佐智子衣 裳 :前岡直子照 明 :成瀬一裕舞台監督:菅原多敢弘演出助手:手塚優子 合唱指揮:安部克彦 合 唱 :藤原歌劇団合唱部児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演トスカ :小林厚子カヴァラドッシ :澤﨑一了スカルピア :折江忠道アンジェロッティ:伊藤貴之堂 守 :押川浩士スポレッタ :松浦 健シャルローネ :龍 進一郎看 守 :坂本伸司牧 童 :網永悠里感想 新春恒例の都民芸術フェスティバルとして藤原歌劇団の「トスカ」の公演が開催されるとのことで上野まで出掛けた。 客席は1階席両サイドに少し空席が見られるが、ほぼ満席状態で、昨年の「トロヴァトーレ」の6~7割程度と比較すると、ようやく日常が戻った印象。但し、ロビーでのドリンクサービスは中止のまま。 今回新演出となっているが、基本的に原作通りで、何処かの公演で観たようなオーソドックスな舞台装置と衣装で違和感なし。 第1幕の教会は、舞台上斜めに設定され、遠近感で奥行きを感じさせる。客席側に祭壇がある設定で、第1幕フィナーレの「テ・デウム」の合唱が直接客席に向かうことになり、迫力を出せる演出。第3幕のサンタンジェロ城の屋上は舞台奥に城壁があり、左右から階段が設けられているが、天使像は無し。 演技もオーソドックスだったが、合唱、児童合唱、助演は全員マスク姿だったのは違和感あり。第1幕の「テ・デウム」も残念ながら迫力十分とは言えない演奏になってしまった。 歌手の方は、カヴァラドッシ役の澤﨑一了が期待通りの歌声。中低域から明る目の歌声で、高音域もそのままリリコの歌声で素晴らしい。第1幕「妙なる調和」は最高音部分で若干声が固くなったが、第3幕「星は光りぬ」は素晴らしかった。 タイトルロールの小林厚子は第2幕「歌に生き、愛に生き」は良かったものの、それ以外は中低音域は暗めの発声で、高音は少々金切り声気味になり、残念だった。 スカルピア役の折江忠道は、歌声が一本調子的で凄みや悪人的な所を感じることが出来なかった。 有名なオペラ作品のため、世界中で公演され、名演の記録も多く、比較される歌手の方は大変ではあるが。 オケは全体的に安全運転的だったが、第3幕の冒頭のP部分等しっかり抑え、第1、3幕のフィナーレのFが際立って、歌手との関係含めバランスの取れた演奏だった。 指揮者の功績でしょう。 藤原歌劇団の2023-2024シーズンは、ドニゼッティ作曲「劇場のわがままな歌手たち」、ヴェルディ作曲「二人のフォスカリ」、グノー作曲「ファウスト」等、珍しい演目が予定されており、楽しみに。End
2023.01.28
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鑑賞日:2022年11月17日(木)19:00開演入場料:12,000円(A席 K列)【主催】(財)水戸市芸術振興財団内田光子&マーク・パドモア リサイタル会場:水戸芸術館・コンサートホールATM出演:ピアノ:内田光子テノール:マーク・パドモア曲目:シューベルト:歌曲集《冬の旅》D911感想 昨年10月にその演奏に圧倒された内田光子さんのコンサートが今年も聴けるとのことで、寒くなって来た夜空の下、水戸芸術館まで出掛けた。 コロナ対策は、入り口での手の消毒とチケット確認前の検温のみ。ホールスタッフがチケット半券もぎりやプログラム配布を行い、座席は最前列まで、空席設けない通常の設定になっている。客席は左右の端席に少し空きがあったものの、ほとんど満席。 今回の来日は11/11、14にネルソンス指揮のボストン交響楽団来日公演でベートーヴェン「皇帝」を演奏したあと、11/19,24に東京オペラシティホールでマーク・パドモアとの歌曲公演になっており、その間に水戸芸術館でも演奏するもの。 チケット発売当初のプログラムはベートーヴェンの歌曲4作とシューベルトの歌曲集「白鳥の歌」となっていたが、10/20にシューベルト「冬の旅」への曲目変更のメールあり。11/19東京オペラシティーホールと同じプログラムとなった。ちなみに11/24は水戸芸術館当初発表のプログラムになっている。 開場は予定より10分程押して18:40となった。事前のリハが押したか。 開演も5分ほど押して、内田光子さんとマーク・パドモアさんが登場。お二人共、黒のシャツとズボンでシンプルな衣装。内田光子さんは腰回りに黒に白模様のスカーフを巻いている。 マーク・パドモアさんはホール中央のピアノの前に立ち暗譜で歌唱、内田光子さんは楽譜をおいて、譜めくり役と思われる女性もそばに着席。結局一度も譜めくりはしなかった様に思うが、連続して演奏する所もあったので、用心のためか。 今回全24曲を休憩入れずに約1時間20分、一気に演奏された。 とにかく驚くのはその完璧さ。1曲1曲が歌唱、ピアノとも1箇所もミスは感じられず、テンポのズレ等も全くなし。1曲毎に詩に合わせ歌い方、強弱、テンポが変わるが、連続して演奏されることで、一つの作品になって聞こえてくる印象。それだけ事前の準備が十分されて来た結果なのでしょう。 東京オペラシティーコンサートホールの約1/3、620席のよく響くホールで、演奏者の緊張感がそのまま客席まで伝わり、客席も緊張感に包まれる状況。 ドイツ語歌唱のためプログラムの訳詞を見ながら聞くことになるが、プログラムには「お願い:ページをめくる際、音が出ませんようにご配慮下さい。」の注意書きまで書かれている。 演奏が終わると3度のカーテンコール、最後は客席の一部でスタンディングオベーションとなった。 アンコールはなかったが、これだけ緊張感のある演奏だったので、かえって蛇足になってしまう。 昨年のピアノ演奏も素晴らしかったが、今回の歌曲公演もその完成度の高さに驚かされる。けしてCD等の録音では味わえない、緊張感のある音楽を楽しむことが出来たコンサートだった。End
2022.11.17
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新型コロナ感染の第7波が収まった?中で、東京近況のプロオケ「第九」演奏会をリストアップ。 指揮者 合唱団 予定日N響 井上道義 新国立劇場合唱団 12/21.22,24,25,27 東京オペラシンガーズ 東フィル 尾高忠明 新国立劇場合唱団 12/22,25, 東響 秋山和慶 東響コーラス 12/21, ジョナサン・ノット 東響コーラス 12/28,29 新日フィル 佐渡裕 二期会合唱団 12/17,18,20、23,24 栗友会合唱団 読響 鈴木優人 新国立劇場合唱団 12/16,17,18,20,21,22,25 日フィル 太田弦 東京音楽大学 12/17 日本フィルハーモニー協会合唱団 12/18, 小林研一郎 東京音楽大学 12/22,23, 武蔵野合唱団 12/24 日本フィルハーモニー協会合唱団 12/25,27都響 エリアフ・インバル 二期会合唱団 12/24,25,26 東京シティ 飯守泰次郎 東京シティ・フィル・コーア 12/28, 神奈川フィル 沼尻竜典 プロ歌手による神奈川フィル合唱団 12/23,24新国立合唱団は12/22,25がトリプル、12/21がダブルブッキング。そのためか、N響は東京オペラシンガーズもエントリー。二期会合唱団は12/24がダブルブッキングで新日フィルは栗友会合唱団もエントリー。東響コーラス、日本フィルハーモニー協会合唱団、東京シティ・フィル・コーア等の関連合唱団が復活でようやく新型コロナ感染前に戻ったが、マスクはどうなるのか?神奈川フィルは変わらずプロ歌手の寄せ集めで。ソリストはN響と読響以外はオール日本人で昨年の新型コロナ感染入国不可の対策か。また各地の市民公募合唱団「第九」も多く復活してますが、その中でも「千人の第九」は参加者2,000人に絞って、ネックファンが必須のようで、果たして効果は?End
2022.11.02
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鑑賞日:2022年10月30日(日)15:00開演入場料:10,000円(B席 30列)【主催】神奈川県立音楽堂(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)音楽堂室内オペラ・プロジェクト第5弾ファビオ・ビオンディ指揮 エウローパ・ガランテ歌劇「シッラ」(日本初演)ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:神奈川県立音楽堂スタッフ指揮・ヴァイオリン:ファビオ・ビオンディ管弦楽 :エウローパ・ガランテ演 出 :彌勒忠史美 術 :tamako☆衣 裳 :友好まり子照 明 :稲葉直人(ASG)立 師 :市川新十郎台本・字幕翻訳 :本谷麻子舞台監督 :大澤裕(ザ・スタッフ)出演ローマの執政官シッラ :ソニア・プリナローマの騎士クラウディオ:ヒラリー・サマーズシッラの妻メテッラ :スンヘ・イムローマの護民官レピド :ヴィヴィカ・ジュノーレピドの妻フラヴィア :ロベルタ・インヴェルニッツィシッラの副官の娘チェリア:フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ神 :ミヒャエル・ボルススカブロ :神谷真士(黙役)天使ほか(エアリアル) :桧山宏子/板津由佳兵士ほか(殺陣) :片岡千次郎/亀山敬佑感想 神奈川県立音楽堂主催のオペラ。2年前には出演者が来日、リハーサルまで行われたが、公演直前に新型コロナ感染で中止となった公演。同じメンバーで遂に日本初演されるとのことで、秋晴れの下、桜木町駅から紅葉坂を登って音楽堂へ向かった。 開演前の14:15分からファビオ・ビオンディと彌勒忠史によるプレトークがあり、本作品とその演出についての紹介があった。 ストーリーは音楽堂HPに記載あり。 神奈川県立音楽堂は戦後国内初めての音楽ホールとして1954年(昭和29年)に開館したこともあり、舞台裏にほとんどスペースなく、舞台上のバトンも少ない等の制約が多い中、色々工夫されていた。 舞台上は3段の黒い階段状になっており、各段に幅1m、高さ3m程の赤い枠が2つずつ置かれている。場面に応じて位置がかわり、宮殿の壁になったり、牢屋になったりする。更に白い布(スクリーン)が降りてきて、そこへ木々、動物、人影等の映像が映される。舞台前はオケピットで中央にチェンバロが置かれており、その下手側に張り出しの舞台も設けられ、海へ航海に出る場面での岸辺等に用いられていた。 今回歌舞伎の演出を取り入れたとのことで、衣装は、武将の鎧兜と着物、女性は鮮やかな色の着物で無国籍的。 2幕の神殿の場面は舞台奥の反響板に浮世絵的な富士山を大きく映し出し、山岳信仰との位置づけか。第3幕フィナーレの軍神マルス登場の場面は、舞台上部から2本の白い布が下がり、二人の女性によるシルク・ドゥ・ソレイユの様なエアリアルの演技が入り、まあ神様登場と言う事なのでしょう。 カーテンコールの演出者登場で満席の客席から一人だけ大きなブーイングを出していたが、他の観客は大きな拍手とスタンディングオベーションで満足出来た様。 管弦楽はバロック楽器が使われ、ファビオ・ビオンディがヴァイオリンを弾きながら指揮をする。最初は楽器毎の音程のバラツキを感じたが、段々と気にならなくなったのは、楽器が温まって来たためか、こちらの耳が慣れて来た影響か? 今回歌手は神役以外すべて女声だったが、タイトルロールのソニア・プリナとクラウディオ役ヒラリー・サマーズのコントラルト二人の低音がよく響いて聞こえて来た。日本人アルトでは、ほとんど聞こえて来ない音域でしょう。妻メテッラ役スンヘ・イムや娘チュリア役フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリのソプラノ二人のアリアもアジリタ含め美しい歌声だった。 また音楽堂のホールは1階席のみの1,000人収容規模で、壁、天井が木製のため音響も良く、バロックオペラの公演には合っていた影響もあり。 日本初演で初めて聞くオペラだったが、先日聞いた「ジュリオ・チェーザレ」や「リナルド」、「セルセ」等と比較しても、けして劣らない美しい旋律のアリアが盛り沢山。特に2幕のクラウディオとチェリア、レトピとフラヴィアの二重唱が、輪唱的な部分もあって美しい。同声で揃えた効果も出ていた。 また演奏時間としては2時間強のため、退屈することなく聞くことが出来た。機会があれば、またぜひ聞いてみたい作品。 音楽堂の室内オペラ・プロジェクトの次の演目は、もらったチラシの中に来年10月にBCJによる「ジュリオ・チェーザレ」公演が載っており、クレオパトラ役が森麻季とのことで、今から楽しみに。End
2022.10.30
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鑑賞日:2022年10月28日(金)19:00開演入場料:8,000円(S席 J列)【主催】(財)水戸市芸術振興財団水戸室内管弦楽団第110回定期演奏会会場:水戸芸術館コンサートホールATM出演:フルート独奏:セバスチャン・ジャコーピアノ独奏:藤田真央水戸室内管弦楽団 ヴァイオリン:安芸晶子、フェデリコ・アゴスティーニ 植村太郎 、大宮臨太郎、小栗まち絵 、 川崎洋介、佐份利恭子、島田真千子、 瀬川祥子、田中直子、豊嶋泰嗣、 猶井悠樹、中島慎子、中村静香 ヴィオラ :川崎雅夫、川本嘉子、鈴木 学、店村眞積 チェロ :荒 庸子、奥泉貴圭、原田禎夫、宮田 大 コントラバス:池松 宏、助川 龍 フルート :岩佐和弘、上野星矢、 セバスチャン・ジャコー オーボエ :副田真之介、南方総子 クラリネット:中 秀仁、山本正治 ファゴット :鹿野智子、吉田 將 ホルン :日橋辰朗、山岸リオ曲目:【第1部】モーツァルト: フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313(285c) フルート独奏:セバスチャン・ジャコーモーツァルト: ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 ピアノ独奏:藤田真央【第2部】モーツァルト:交響曲 第40番 ト短調 K.550 コンサートマスター:豊嶋泰嗣感想: 今話題の藤田真央くんのモーツァルトが聞けるとのことで、会社を定時に出て水戸芸術館へ向かった。水戸駅北口から伸びる国道50号線と水戸芸術館の間には来年7月開館予定の水戸新市民会館が建設中で、外装は既に出来上がっており、4階建て全面ガラス張りで中は大きな木材がふんだんに使った豪華なもの。 客席は満席、時間となりフルート独奏のセバスチャン・ジャコーもメンバーに混ざって登場。舞台中央に立って、フルートを吹かない部分では、指揮者のような身振りで、演奏を引っ張っている。早い音符や音が飛ぶ所も難なくこなし、楽しい演奏だった。 曲が終わると一度メンバーが舞台裏へ下がり、ピアノが中央へ運ばれ準備出来た所で再び登場。ピアノ独奏の藤田真央もメンバーの最後に登場し、ピアノ椅子に座る。藤田真央と言えば、映画「蜜蜂と遠雷」の中の欧州在中、天才ピアニストの風間塵役のピアノ演奏した所から気になり、まだ23歳で既に世界中のコンクールの入賞やオーケストラとの共演で引っ張り凧状態。 驚かされたのはそのタッチの柔らかさ。猫背で演奏し、腕は鍵盤とほぼ同じ高さで力を入れていない。それなのに、オケの音からも浮き出て聞こえてくる。早いパッセージも難なく弾いて、自然に聞こえて来る。どんどんピアノの音に耳が引き込まれて行く。カデンツァも洒落ていた。モーツアルトの美しい旋律を楽しむことが出来た演奏だった。 客席から拍手が鳴り止まず、カーテンコールは3度出てきたもののアンコールはなし。 休憩挟み第2部はモーツァルト交響曲第40番。指揮者無しでの演奏だが、出だし等ぴったりなのはさすが。ただ指揮者いない影響でか、テンポや強弱は一定で少し退屈に感じた。 なにはともあれ、藤田真央の素晴らしいモーツアルトを聞けた演奏会だった。 水戸新市民会館は、2000人収容の大ホール中心に、482席の中ホール、192席の小ホールまである大型施設。当初利用対象に「オペラ」が書かれていたが、いつの間にか記載されなくなり、「オーケストラコンサート」「ミュージカル」が書かれている。おそらく舞台裏の上手下手が狭いため舞台上と同じスペースが取れすオペラ用に次の幕・場面の舞台装置が置けないためかと思われるが、施設にはオーケストラピットやワグナーピットの名称もみられ、演出次第で上演も可能でしょう。 ぜひ来年は水戸室内交響楽団演奏でオペラの上演を観たい。End
2022.10.28
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鑑賞日:2022年10月14(金)18:30開演入場料:¥11,000 1階11列【主催】TOKYO FM / キョードー横浜山下達郎PERFORMANCE 2022会場:神奈川県民ホール 大ホール 演奏ボーカル、ギター、キーボード:山下達郎ギター :佐橋佳幸ベース :伊藤広規キーボード:難波弘之、柴田俊文サックス :宮里陽太ドラム :小笠原拓海コーラス :ハルナ、ENA、三谷泰弘感想 2019年から3年振りのツアー。全国24都市47公演で、前回2019年とほぼ同じ規模。6月から始まったツアーは7月下旬と8月中旬にご本人とメンバーの新型コロナ感染で6公演が延期となったが、無事回復され神奈川公演は予定通り開催となり一安心。 いつもコンサート前に食事をするイタリアンレストラン・ローマステーションは新型コロナ感染後も金曜休みが続いているため、山の神と神奈川県民ホール6階の英一番館で食事後、大ホールへ向かった。 開場予定時間17:30前の17:10頃に既に受付が始まっており、ホールロビー入り口で体温測定の後、同行者含め身分証明チェックを受け、大ホールロビーへ入場。開場時間前だったこともあり、並ばずスムーズに入場出来た。 本コンサートは開催毎にチケットが取りにくくなっており、一般抽選発売は尽く外れファンクラブ枠の1回のみ。今回座席は1階席の前方下手側で通路脇の席のためステージが良く見え、山の神も満足の様。 ステージ上は欧州風の街中の広場のセッテイングで、レストラン、バー等の建物に、曲に合わせ照明やプロジェクションマッピングで星空や雪が映し出される。レーザー光や派手なCGはなく、落ち着いて音楽を楽しめる。 今回の曲は前半は先日11年ぶりに発売された新譜「Softly」からの選曲が多く、後半はポピュラーな曲を一人弾き語り、多重録音アカペラ、提供曲等バラエティ豊かに演奏。最初のMCで「暗い世の中なので今回のツアーは明る目の曲を選曲」とコメントがあり、「The War Song」等社会性の強い曲は無かったが、曲の途中で「反戦歌」の別の曲の歌詞を入れるなど、社会への一言は忘れない所はいつも通り。(ツアーの途中なので、曲目等これ以上は記載せず) 今更ながら驚いたのは、コード付きマイクを持ってステージの端から端へ移動しながら歌うので、ケーブルさばきのスタッフまでいたこと。今時ギター含めワイヤレスを使うのが普通で、最近のステージでは見られなくなった光景。これもライブの音への拘りでしょう。 MCで客席に向かって「初めてコンサートに来た人は」と挙手させたが、3割程度おられ達郎本人も驚き、感激していた。 バックの演奏はいつもの固定メンバーなので、演奏に安定感あり。照明、音響も問題なし。 長いアンコールの後いつものように、観客席を見回し達郎が退場。時計を見ると21時半を過ぎており3時間の長丁場があっという間に過ぎてしまった。 来年古希と言っていたが、後半に行く程、声の調子が上がり、最後まで歌い切った所はさすが。 来年も全国ツアーを行い、ライブ・アルバム「JOY2」も出すとのことで、気長に待つことに。End
2022.10.14
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鑑賞日:2022年10月9日(日)13:30開演入場料:4,000円(C席 3階11列)【主催】神奈川県民ホール(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.1オペラ「浜辺のアインシュタイン」フィリップス・グラス作曲ロバート・ウィルソン初演演出全4幕(歌詞:原語、台詞:日本語上演)会場:神奈川県民ホール 大ホール原作音 楽 :フィリップス・グラス台 詞 :クリストファー・ノウルズ、サミュエル・ジョンソン、ルシンダ・チャイルズ翻 訳 :鴻巣友季子 スタッフ演出・振付:平原慎太郎指揮 :キハラ良尚演出補 :桐山知也空間デザイン:木津潤平衣 裳 :ミラ・エック(Mylla Ek)照 明 :櫛田晃代音響デザイナー:佐藤日出夫映 像 :栗山聡之ヘアスタイリスト:芝田貴之メイク :谷口ユリエプロダクション・マネージャー:横沢紅太郎舞台監督 :藤田有紀彦 山口英峰音響アソシエート・デザイナー:西田祐子衣装補助 :柿野彩電子オルガンアドバイザー:有馬純寿演出助手 :日置浩輔振付助手 :田﨑真菜コレペティトゥア:石野真穂 矢田信子副指揮 :森田真喜ステージマネージャー:根本孝史ライブラリアン:塚本由香出演メッセンジャー:松雪泰子トラベラー :田中要次プライド :中村祥子ヴァイオリン :辻󠄀彩奈電子オルガン :中野翔太、高橋ドレミフルート:(マグナムトリオ)多久潤一朗、神田勇哉、梶原一紘バスクラリネット:亀居優斗サクソフォン :本堂誠、西村魁合 唱 :東京混声合唱団ダンサー:Rion Watley、青柳潤、池上たっくん、市場俊生、大西彩瑛、 大森弥子、倉元奎哉、小松睦、佐藤琢哉、東海林靖志、 杉森仁胡、鈴木夢生、シュミッツ茂仁香、城俊彦、高岡沙綾、 高橋真帆、田中真夏、鳥羽絢美、浜田純平、林田海里、 町田妙子、村井玲美、山本悠貴、渡辺はるか感想 毎年行われる神奈川県民ホール主催のオペラが今年はミニマム音楽の作曲家フィリップス・グラスの「浜辺のアインシュタイン」を上演するとのことで、CSでごった返す横浜スタジアム周辺を抜けて、山下公園沿いの神奈川県民ホールへ出掛けた。 フィリップス・グラスと言えばメトロポリタン歌劇場のライブビューイングでオペラ「アクナーテン」が公開されたミニマル音楽の巨匠。本作品は4幕設定だが、今回2部構成で1,2幕と3、4幕は連続で演奏されその間に休憩が入いる。当初5時間予定と書かれていたが、一部繰り返しを省略し、休憩入れ4時間になっていた。 客席に着くと幕は上がっており、舞台上には上下一杯に階段が置かれ、数段毎に2~3m程の踊り場が設けられている。舞台前には上下に黒い張り出し舞台があり、挟まれる所に楽器、合唱が並ぶ。開演5分前に着席したが、すでに電子オルガンの低音の繰り返しが演奏され、舞台上にはダンサー2人が居てモップと台車で清掃中の状況。 開演時間となり客席暗転で指揮者登場。指揮者の前に液晶モニターが置かれ、そこに「#1」と表示され曲が進むとNoが増え♭が付いたりする。鏡の演出で同じNoが写っており、舞台上にもモニターが設置されていることが分かった。通常のオペラなら音楽を聞いて舞台の出入り、演技の入等が分かるが、ミニマム音楽は繰り返しばかりなので聞き分けることは困難で、予め音楽にNoを振って演奏者、演技者へ表示しているのでしょう。 舞台上は20人を超えるダンサーが、演技を行う。音楽に合わせて上手から下手、下手から上手へ踊りながら通り抜けたり、複数の集団を作りダンスを行う。1部では少女、少年と両親の家族が観ている情景があり、2部最後は、大友克洋氏作画のポスターの様に少年がヴァイオリンを持って舞台中央に後ろ向きに立ち、その後ろから少女が観ている情景で幕(暗転)。 メッセンジャー役の松雪泰子は黒の衣装で裁判官として舞台に登場し、大きな動きはなく、台詞を喋りながら稼働式のテーブルを押し舞台を左右に動く。トラベラー役の田中要次朗は大きなトランクを持ち帽子を被った旅行者の姿で舞台前下手の張り出し舞台の上ベンチに座り、時に立ち上がって語る。前半音響の関係で田中要次朗の台詞が聞き取りにくかった。 演奏は主に電子オルガン中心で、曲によって、他の楽器、混声合唱16人が加わる。合唱は一人ひとりマイクが設けられ、「ドレミ・・・」や「1,2,3・・・」や単語を歌い、通常オペラのようなアリアや歌詞は全くない。途中合唱のみのアカペラ部分ではエコーも加えられていた。2部後半にヴォカリーズがあり、下手張り出しの舞台上でソプラノ1人で歌われた。プログラムに個人プロフィール紹介は無かったが素晴らしい歌声だった。 ヴァイオリンの辻󠄀彩奈は1部では上手張り出し舞台でシルバーの衣装で演奏、2部では赤い鮮やかな衣装で舞台上でダンサーに囲まれて演奏。 ミニマム音楽なので繰り返しが重なるが、その中にも変拍子が入ったり、転調したりと変化があり、また電子オルガンはシンセサイザーの音も加わり、プログレッシブ・ロックにも聞こえ、眠る事なく最後まで楽しむことが出来た。本作品は1976年初演なので、プログレッシブ・ロックとの関係も頷ける。 題名の「浜辺のアインシュタイン」の意味は、原子爆弾にも関連した天才物理学者との関係らしい。1976年と言えばようやくベトナム戦争が終わり、東西冷戦時代に突入し、より核兵器が身近になっていた時代。現在ウクライナ侵略戦争で再び核兵器が身近になっている。残念ながらその意味合いを直接感じることは出来なかったが、ダンス、朗読、音楽の融合で楽しめれば良いかなと。 観客席は1階左右は空席多く、中央はほぼ満席、3階席はC席部分は満席で全体としては6~7割程度か。また通常のオペラと異なり、年配者は少なく、若者、女性が多く観られた。 神奈川県民ホールは、一柳慧氏が理事、芸術総監督を長らく務められ、他の地方ホールはもちろん、東京でも観られないような独自の音楽公演を主催されて来たが、先日逝去されたとのことで誠に残念。 本日のプログラムと同封のチラシにサルヴァトーレ・シャリーノ作曲「ローエングリン」の現代オペラ公演を2024年度開催とのこと。 ぜひ、ホール独自のオペラ公演を続けて頂くことに期待。End
2022.10.09
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鑑賞日:2022年10月2日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 3階L列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2032シーズンオペラ『ジュリオ・チェーザレ』ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :リナルド・アレッサンドリーニ演出・衣裳:ロラン・ペリー美 術 :シャンタル・トマ照 明 :ジョエル・アダムドラマトゥルク:アガテ・メリナン演出補 :ローリー・フェルドマン舞台監督 :髙橋尚史合唱指揮 :冨平恭平合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団通奏低音 :チェンバロ)桒形亜樹子 チェロ)懸田貴嗣 テオルボ)上田朝子、瀧井レオナルド出演ジュリオ・チェーザレ:マリアンネ・ベアーテ・キーランドクーリオ :駒田敏章コルネーリア:加納悦子セスト :金子美香クレオパトラ:森谷真理トロメーオ :藤木大地アキッラ :ヴィタリ・ユシュマノフニレーノ :村松稔之感想 2020年4月当時チケットを取り楽しみにしていた本公演、リハーサル直前まで行って新型コロナ感染の影響で中止となったバロック・オペラ「ジュリオ・チェーザレ」の公演があるとのことで、夏日の中、初台まで出掛けた。 客席は1階前2列の空席を除き満席。オケピットにはチェンバロ、テオルボ、リコーダ等のバロック楽器が入っている。 暗転、指揮者が楽譜を持って登場。指揮者のリナルド・アレッサンドリーニはコンチェルト・イタリアーノの主催者でチェンバロ奏者でもあり、歌手が歌った後の間のとり方も絶妙で音楽をどんどん進めていく。弦楽は現代楽器をピリオド奏法。3幕冒頭のホルンが危なそうだったが、大きな事故もなく、演奏されていた。 今回の演出はロラン・ペリーの2011年パリオペラ座初演のもので、現代の博物館の倉庫が舞台。博物館の職員達により大きな彫像が運びこまれ、動かされる中で歌手が登場し当時の衣装でアリアを歌う。大きなエジプト彫像が本物の様に見え、その彫像に絡んで歌うのでエジプトが思い浮かべて来て違和感なく聞こえる。博物館職員は衣装を変えずに、場面に合わせ宮廷の家来や兵士を演じる。 2幕では大きな絵画が運び込まれ、クレオパトラがその風景画の前でポーズを取る、更に額縁が前にずれて、額縁と絵画の間に入るので、そのまま絵画の中に描かれている様に見せる。 更に絵画の後ろから華やかなドレスを着た女性のバンダが登場し、バロック楽器を使って演奏をすると、中世宮廷の広間で演奏を聞いている気分にさせる。 2幕でオケピット内の人数が少々減ったと思っていたら、そのまま衣装に着替えてバンダで舞台に登場されたようで、皆さんお美しいのに驚かされた。 博物館の演出はユーモアが散りばめられており、1幕では机上の頭部の彫像の口が合唱に合わせて動いて歌っている様に見せる。ポンペーオの首が大きな頭部の彫像が木枠に吊るされ、その周囲でコルネーリアとセストが泣き悲しみ復讐を誓うアリアを歌う。 2幕の絵画の中にヘンデルの肖像画があったり、3幕クレオパトラ軍とトロメーオ軍との戦いは椅子に座った、クレオパトラとトロメーオを博物館職員が騎馬戦のように担ぎ、左右に動くことで戦闘を表す。トロメーオがセストに刺される場面ではあっけなく倒れ、更にフィナーレで全員で歌うところでは、運搬台車に載せられたトロメーオの死体も歌っていた。 場面転換も歌手がアリアを繰り返している最中に彫像や絵画を動かし、歌い終わったら直ぐに次の場面へ。METライブビューイングで本オペラを観たが、その際は舞台を2,3箇所に分けて、歌手が次々と移動することで場面転換を行い大変そうで、今回の演出の巧さを感じた。 同じ博物館設定で意味不明の演出だった先日の某オペラとは大きな違い。 歌手は皆さん良く歌えていた。タイトルロール役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドは、本来カストラート設定のため、1幕は音域低く聞こえづらかったが、2幕、3幕と進む程に良くなり、繰り返しの装飾技巧は素晴らしかった。また精悍な顔つきとスタイルでシーザー役に合っていた。クレオパトラ役の森谷真理は、顔立ち、スタイルがぴったり。METでもナタリー・デセイが演じており、やはり美人でないと。歌の方は、繰り返し部分で一部ベルカントの様に歌い上げてバロック的でなかったが、装飾部分なので良いのでしょう。一番良かったのはトロメーオ役の藤木大地で、素晴らしい歌声。やはり音域的にカウンターテナーが合う。同じくカウンタテナーのニレーノ役の村松稔之も良かった。 バロックオペラは歌手がレチタティーヴォの後にダ・カーポ・アリアを歌い、繰り返しが多く、時間も長い(今回休憩入れ約4時間半)ので退屈になりそうだが、演出が工夫され最後まで楽しんで聞くことが出来た。 月末には神奈川県立音楽堂でファビオ・ビオンディ指揮のエウローパ・ガランテで「シッラ」日本初演を聞く予定で今から楽しみに。End
2022.10.02
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鑑賞日:2022年9月6日(火)19:00開演入場料:12,000円(S席:1階12列)【主催】bayfm、【後援】tvk【企画・制作・招待】Live Nation JapanYES – Close to the Edge 50th Anniversary Tour in Japanイエス『危機』50周年記念ジャパンツアー会場:Bunkamuraオーチャードホール出演ギター :スティーヴ・ハウキーボード:ジェフ・ダウンズボーカル、ギター、パーカッション:ジョン・デイヴィソンベース :ビリー・シャーウッドドラム、パーカッション:ジェイ・シェレン曲目1.On The Silent Wings Of Freedom 2.Yours Is No Disgrace 3.Does It Really Happen? 4.To Be Over (ステーブ・ギターソロ) 5.Wonderous Stories 6.The Ice Bridge 7.Heart Of The Sunrise 8.Close To The Edge 9.And You And I10.Siberian Khatru <アンコール>11.Roundabout12.Starship Trooper感想 Yes来日公演があるとのことで、仕事をAM中に切り上げ渋谷へ向かった。ライブ鑑賞は2014年の来日公演以来なので8年振り。 ベースのクリス・スクワイアが8年前来日公演後直ぐに亡くなり、ドラムのアラン・ホワイト今回来日直前に逝去されたため、オリジナルメンバーはスティーブ・ハウのみとなった。なおスティーブ・ハウもサードアルバムからの加入で厳密にはオリジナル・メンバーとは言えないが。 5分押しでメンバー登場したが、冒頭は亡くなったアラン・ホワイトの追悼写真が映され、スティーブ・ハウの追悼スピーチの後にコンサートスタート。 中央奥の左にキーボード、右にドラム、その左前にギター、中央前ボーカル、右前にベースの配置。 舞台奥にはスクリーンが貼られ、前半はCG、後半はロジャー・ディーンのイラストが映し出された。 前半は新し目のアルバムからの曲が多く、後半にアルバム「Close to the Edge」から3曲全曲の演奏。 新しいメンバーはテクニックも申し分なく演奏していたが、スティーブ・ハウのギターが遅れ気味で若干ぎくしゃくするも、耳に馴染んだ懐かしい曲が再現されただけで十分満足。 あとは存命のジョン・アンダーソン、リック・ウェイクマンとスティーブ・ハウで、「こわれもの」「危機」のセッションが聴きたい!End
2022.09.06
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鑑賞日:2022年7月17日(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/4階R1列)【主催】(財)東京二期会【共催】(財)読売日本交響楽団《二期会創立70周年記念公演》フランス国立ラン歌劇場との共同制作公演東京二期会オペラ劇場楽劇「パルジファル」(全3幕、ドイツ語上演/日本語、英語字幕付)台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :セバスティアン・ヴァイグレ演 出 :宮本亞門装 置 :ボリス・クドルチカ衣 裳 :カスパー・グラーナー照 明 :フェリース・ロス映 像 :バルテック・マシス合唱指揮:三澤洋史演出助手:三浦安浩、澤田康子舞台監督:幸泉浩司公演監督:佐々木典子公演監督補:大野徹也合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :読売日本交響楽団出演アムフォルタス:清水勇磨ティトゥレル :長谷川 顯→清水宏樹グルネマンツ :山下浩司パルジファル :伊藤達人クリングゾル :友清 崇クンドリ :橋爪ゆか第1の聖杯の騎士:新海康仁第2の聖杯の騎士:狩野賢一4人の小姓 :宮地江奈、川合ひとみ、高柳 圭、相山潤平花の乙女たち :宮地江奈、松永知史、杉山由紀、雨笠佳奈、川合ひとみ、小林紗季子天上からの声 :小林紗季子感想 東京二期会の今シーズン最後のオペラ公演が東京文化会館であるとのことで、真夏日の中、上野まで出掛けた。 客席1階、2階席左右がほとんど空席で6~7割の入り。当方座った4階席後列は学生さんが多く、チケット販売は苦戦模様か。 オケボックス内は両端に空きスペースがあり、バイオリンが少ない。これは新型コロナ対策か歌手との音量バランスのためか? 5分押しで指揮者登場。譜面台上には楽譜無く、印刷物が1枚置かれ、演出の指示事項か? 前奏曲頭でホルン外れるも、その後安定しており、途中に緩むこと無く、指揮者がどんどん音楽を引っ張っていく印象。 舞台上は現代の美術館+博物館の設定。パルジファルの側に男の子、クンドリに女性(子供の母親?)の黙役が着いて進んでいく。 ティトゥレルが剥製orミイラ状態で聖杯でその血を飲んだり、兵士たちがゾンビの様に見えたりと意味不明。ナイトミュージーアムの世界か。 所要があり2幕で退席し3幕を見てないため演出を云々言うべきでないとは思うが、どこが聖杯伝説、舞台神聖祝典劇だったかが全く解らず。 本演出に関してプログラムの演出家インタビューに中に若干の記述がある程度、その他補足なく意味不明のまま。 歌手の方は主役二人がワーグナー音楽に聞こえず。2010年東京春祭の海外歌手とは大きな違い。やっぱり日本人には難しいのか。 裏歌の合唱はPAが入っていたように聞こえた。 オケが良かっただけに、歌手、演出が?で残念。会場に空席が多かった理由も分かる。 東京二期会来シーズン公演は、「蝶々夫人」「天国と地獄」「トゥーランドット」「椿姫」と超ベタ演目ばかりで興味湧かず、シーズンセット券は購入せず。 唯一、R.シュトラウス「平和の日」はまだ聞いたこと無く、観劇はこれだけになりそう。End
2022.07.17
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鑑賞日:2022年7月9日(土)14:00開演入場料:7,920円(C席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『ペレアスとメリザンド』ドビッシー作曲全5幕(フランス語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :大野和士演 出 :ケイティ・ミッチェル美 術 :リジー・クラッチャン衣 裳 :クロエ・ランフォード照 明 :ジェイムズ・ファーンコム振 付 :ジョセフ・アルフォード演出補 :ジル・リコ舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:冨平恭平合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演ペレアス :ベルナール・リヒターメリザンド:カレン・ヴルシュゴロー :ロラン・ナウリアルケル :妻屋秀和ジュヌヴィエーヴ:浜田理恵イニョルド:九嶋香奈枝医 師 :河野鉄平感想 新国立劇場2021/2022シーズンのラストは芸術監督の大野和士氏自ら指揮をしてフランスオペラ「ペレアスとメリザンド」の公演があるとのことで、蒸し暑い夏の曇天の下、初台まで出掛けた。 本公演から煩わしい来場者カードの記入が不要となり、ロビーの椅子間隔空けやクローク閉鎖は残るものの、ドリンクサービス等、平常に近づいて来た感あり。 本演出は新制作ではあるが、2016年エクサンプロヴァンス音楽祭のプロダクションを持って来たもの。 舞台を左右1/3と2/3に分け、更に上下に分けた4箇所を場面に応じて組合せて幕を開け、締めている間に転換設定される。 1~3幕を1部、4~5幕を2部として上演され、各部内では切れ目なく演奏された。 今回チケット購入に少し出遅れD席が取れずC席4階中央付近になったが、4箇所全て見通すことが出来て良かった。 時間となり場内暗転、指揮者登場の後、音楽が始まる前に舞台の一箇所の幕が開き、メリザンドがウエディングドレスを来て寝室に登場し、何故か鼻血を出して、それを止めながら眠りにつく所から音楽が始まる。つまりは、これから始まる物語は全てメリザンドの夢の中の出来事との設定で、原作で出演しない場面でも舞台に登場したままで見ており、さらに本人の分身(黙役)を俯瞰する場面(幽体離脱?)まである。時代設定は不明だがほぼ現代でしょう。 全て屋敷と庭との設定で「盲目の泉」は室内プール、城の塔の窓辺は寝室のベッド等に置き換わっている。 歌手はタイトルロール2人とゴローがフランス人、スイス人でお得意の役らしくいずれも素晴らしい。けして張り上げて歌うことはないが、4階席までよく聞こえて来て、ドビッシーの感覚的な音楽世界を歌っていた。メリザンド役カレン・ヴルシュの3幕「私は日曜の正午の生まれ」はアカペラで美しく、メリザンドの不安な気持ちが伝わる歌声だった。日本人歌手もバランスを崩すこと無く良かった。 合唱は舞台には登場せず、PA経由で歌声を流していたように思われる。 またオケも丁寧な演奏で良かった。 残念だったのは演出で、下着姿での抱擁が多々有り、セックスを直接表すよな演技が多く出てきた。メリザンドが最期に「愛したけれど、罪は犯していない」と答えたこととは相反しており、夢の世界の設定なので欧州劇場でよく観られるような直接的な演出にしたように思われる。 これではワーグナーと反対位置にあるドビッシーの「印象主義音楽」ではなく、下世話なワイドショー的不倫劇になってしまったように思えた。 新国立劇場の今シースンのオペラ公演は本作品で終了。来シーズンは2020年に取りやめになったバロックオペラ「ジュリオ・チェーザレ」が予定されており、今から楽しみに。End
2022.07.09
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鑑賞日:2022年6月13日(日)14:00開演入場料:10,000円(S席 1階F列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]NISSAY OPERA 2022オペラ「セビリアの理髪師」ロッシーニ作曲全2幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :沼尻 竜典演 出 :粟國 淳美 術 :横田 あつみ照 明 :大島 祐夫衣 裳 :増田 恵美振 付 :伊藤 範子舞台監督:幸泉 浩司演出助手:上原 真希、橋本 英志合唱指揮:及川 貢副指揮 :大川 修司、鈴木 恵理奈、石崎 真弥奈、 松川 智哉コレペティトゥア:平塚 洋子、星 和代、湯浅 加奈子管弦楽 :東京交響楽団ギター :黄 敬チェンバロ :平塚 洋子合 唱 : C.ヴィレッジシンガーズ出演アルマヴィーヴァ伯爵:小堀 勇介ロジーナ :山下 裕賀フィガロ :黒田 祐貴バルトロ :久保田 真澄ドン・バジリオ :斉木 健詞ベルタ :守谷 由香フィオレッロ :川野 貴之感想 日生劇場で「セビリアの理髪師」公演があるとのことで、楽譜購入で銀座に寄った後、霧雨の降る中、日比谷へ向かった。 ロッシーニ・テノールの小堀さんが伯爵を歌うとのことで、発売日にS席を確保。一列目は無観客で5列目となり、双眼鏡無しで細かい動きまでよく見える。 舞台上には赤い幕が描かれた大きな木板が円形の台の上に置かれている。舞台左右には手巻きの付いた高い木の柱が置かれ、民衆役の合唱人が手巻きを動かすことで、幕が開いたり、舞台が回転し、正しく芝居をしているとの設定。 違和感のない良い演出で、2016年に観たことを思い出した。 ただ、演技中、部屋に入るシーンで手をアルコールで消毒したり、魔笛の夜の女王のアリアを入れたりと、今回独自のアドリブが入り笑いを誘う。 この後、11月に滋賀びわ湖ホール、12月に大阪フェニーチェ堺、山形やまぎん県民ホールで公演予定となっている。 指揮者登場で序曲が始まる。オケは全体的にテンポは極端に早くなることがないが、強弱付けられ、安定した演奏。 レスタティーヴォはチェンバロで。2幕「嵐の場面」では雷板、ウインドマシーンが舞台上下に置かれ演奏されていた。 今回歌手の皆さんが総じて素晴らしい。 タイトルロール・フィガロ役の黒田祐貴は父親似の背の高い2枚目だが、「おいらは街の何でも屋」ではよく響く歌に加え、ミュージカルの様に動き回る演技でバッチリ決めて拍手喝采。 ロジーナ役の山下裕賀は安定した歌声でアジリタも軽々とこなす。演技含め勝ち気なロジーナを上手く表現していた。 バルトロ役の久保田真澄は早口の「わしのような医者に向かって」も難なく歌い、演技も良く、高齢で欲深な医者を演じていた。 ドン・バジリオ役の斉木健詞は超低音のバスの歌声で「中傷とはそよ風です」はコミカルさも加わり楽しい。 ベルタ役の守谷由香はよく通るソプラノの歌声でアリアに加え、男声ばかりのフィナーレでもよく聞こえた。 何と言っても素晴らしかったのはアルマヴィーヴァ伯爵役の小堀勇介。最初は少々抑え気味に聞こえたが、場面が進むに連れて声がどんどん出て来る。本作品は伯爵はほぼ出突っ張りで、歌う部分がやたら多いが、最後まで音程やテンポのズレも無い。1幕では自らギターを弾いて歌う。省略されることも多い2幕フィナーレ前の大アリア「もう逆らうのをやめろ」はハイCも決め、アジリタも遅れることなく自然に聞こえて最高!S席を購入した甲斐があった。 唯一残念だったのは、合唱団が全員マスク着けていたいたこと。せっかくの舞台上の芝居の演出も現実に戻された気分になり興ざめに。 逆に、歌手、指揮者、演出家皆さんで手を取り合ってのカーテンコールとなり、盛り上がった。こうでなくては。 やはり歌手が揃うと相乗効果で音楽がどんどん良くなり、作品本来の楽しさが倍増され、あっと言う間の3時間強。分かりやすい演出や安定したオケも加わり、久しぶりに満足出来たオペラ公演だった。End
2022.06.12
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鑑賞日:2022年5月22日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』グルック作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :鈴木優人演出・振付・美術・衣裳・照明:勅使川原三郎アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:冨平恭平合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団コルネット(ツィンク):上野訓子、得丸幸代シャリュモー:満江菜穂子チェンバロ :重岡麻衣出演オルフェオ :ローレンス・ザッゾエウリディーチェ:ヴァルダ・ウィルソンアモーレ :三宅理恵ダンス :佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、高橋慈生、佐藤静佳感想 新国立劇場でバロックオペラを公演するとのことで、初夏を思わせる天候の中、初台まで出掛けた。 GWも無事過ぎ新型コロナまん延防止も再発令されないなか、来場者カード記入、検温、手の消毒、チラシピックアップはこれまで通り。客席は舞台前2列除きZ席まで全て販売され、ほぼ満席の状況。屋内ホワイエでのドリンクサービス無いものの、1階屋外、2階屋外渡り廊下でアルコール含めたドリンクサービスあり。厚労大臣の屋外マスク不要発言や海外からの渡航者入国緩和で新型コロナ前の日常まであと少しか。 今回バロックオペラのため、オケボックス内人数は少な目。指揮者真向かいにチェンバロが置かれ、クラリネットは無く、ツィンク、シャリュモーが見られる。ホルン、オーボエ、トランペット、トロンボーンは現代楽器のよう。雷用の鉄板、ウィンドマシーンもあり。3幕になると、トランペット、トロンボーン、縦笛も居なくなり更に小規模に。 時間となり暗転、指揮者登場で序曲が始まる。ピリオド奏法なのだが、どうも金管楽器とのバランス悪く、上手く音が嵌らない様に聞こえる。 ホールの大きさのため、新型コロナのためオケピットが深いため、楽器の違い等の影響か。せっかくなら全部古楽器で舞台上でBCJが演奏した方が良かったか。 幕が開くと中央に大きな白い円形の舞台が置かれ中央やや下にあじさいの花が四角く置かれ、エウリディーチェの墓になっている。その前に濃いえんじ色のコートを着たオルフェオが立ち亡くなった妻への愛を歌い続ける。変形舞台の周りに黒い衣装、被り、目元マスクを付けた合唱が妖精や羊飼いとして歌う。その円形舞台の前にダンサーが登場し、曲に合わせて踊る。1人は白い衣装で3人は青い衣装。白い衣装の女性はエウリディーチェの位置付けか。 オルフェオが亡き妻を黄泉の国から連れ戻すと神々に言うと、アモーレが表れ手助けをする。 1幕終了で幕が降り、客席暗転のまま続けて2幕へ。 舞台奥に大きな黒っぽいユリの花が重なったものが2つ置かれ、そこが黄泉の国への洞窟の入り口になっている。復讐の女神とオルフェオのやり取り中に舞台奥下手側に6人のバンダが登場。バンダはバイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、バロックハープ各1の編成。 再び暗転となり、白い大きなユリの花が左右に並べられエリゼの園に。ここで青いドレスを着たエウリディーチェを見つけた所で幕。 25分の休憩を挟み第3幕へ。 3幕は再び大きな白い円形の舞台上で周囲を白いユリが囲む。オルフェオがエウリディーチェの手を、引き顔を合わせずさまよう。エウリディーチェの不安が募り、遂に互いに顔を見合わせ抱擁した所で、エウリディーチェが崩れ落ち息を引き取る。 ここでオルフェオがアリア「エウリディーチェを失って」(Che faro senza Euridice?)を歌い終わり、音楽が止まった所で、客席から唯一の拍手。再びアモーレが表れ、エウリディーチェが生き返り、羊飼いや妖精たちとアモーレに感謝しフィナーレ。 言葉で書いても解りづらいので、新国立劇場HPの画像で。 現代舞踊家の勅使川原三郎氏の演出だけあって、ダンスとオペラを複合した演出で、衣装、照明、舞台装置とも上手く整合が取れ、黄泉の国を表した作品になっていた。 歌手は、3人伴素晴らしい。オルフェオ役ローレンス・ザッゾはカウンターテナーながら、よく響く歌声で、音楽表現も豊か。広いオペラパレスの4階席まで十分に聞こえる歌声だった。エウリディーチェ役のヴァルダ・ウィルソンは、容姿含め役にピッタリの落ち着いた歌声。アモーレ役の三宅理恵も、役に合う明るいソプラノの歌声だった。 新国立劇場でバロックオペラを聞くのは始めて。オケとのバランスを考えると、もう少し小さな劇場の方が良いのではと思えた。記録を見ると2000年に小劇場で公演されている。 次シーズンには新型コロナで中止になった「ジュリオ・チェーザレ」が予定されており、楽しみに。End
2022.05.22
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鑑賞日:2022年4月24日(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/3階2列)【主催】(財)東京二期会、Bunkamura【後援】イタリア大使館、イタリア文化会館《二期会創立70周年記念公演》東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ オペラ「エドガール」(セミ・ステージ形式上演)全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)原作:アルフレッド・ド・ミュッセ『杯と唇』台本:フェルディナンド・フォンターナ作曲:ジャコモ・プッチーニ会場:Bunkamuraオーチャードホールスタッフ指 揮 :アンドレア・バッティストーニ舞台構成:飯塚励生映 像 :栗山聡之照 明 :八木麻紀舞台監督:幸泉浩司公演監督:大野徹也公演監督補:佐々木典子合唱指揮:粂原裕介合 唱 :二期会合唱団、TOKYO FM 少年合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演エドガール :樋口達哉グァルティエーロ:清水宏樹フランク :杉浦隆大フィデーリア :大山亜紀子ティグラーナ :成田伊美感想 東京二期会の演奏会形式のオペラ公演がオーチャードホールであるとのことで、小雨模様の中、渋谷まで出掛けた。 渋谷駅の若者達の密集をかき分け、Bunkamuraへ着くのに一苦労。更に3階席まで階段をひたすら登り大変。なお当ホールは来年春より隣の百貨店建替えと合わせて大規模修繕のため長期休館のとのことで、ぜひエレベータ、エスカレータ等のバリアフリー導入をお願いしたい。 入り口での体温測定、アルコール消毒、プログラムの自身ピックアップはあったものの、ロビー椅子の間空ける表示は無し。また2Fのビッフェも営業していた。客席は舞台張り出しの前まで空き席を設けてなかったが、1階席奥、2階席に空き席があり、7~8割程度の入り。 舞台張り出しの部分に黒い山台が7つ程置かれ、歌手はそこで多少の演技を加えて歌う。児童合唱20人もその都度舞台に登場しその山台で歌う。その後ろに管弦楽が位置し、紗幕を挟んで更に後ろに2階建てで合唱が1m間隔で1列に並ぶ。1階、2階とも男声、女声各9人で合計36名。紗幕で見えずらかったがマスクは着けてない。唯一3幕に入る前の暗転中に山台中央へ祭壇のような棺桶が置かれる。あと2幕の間だけ山台4箇所にモニタースピーカーが置かれていたが、これは指揮が見えない歌手へのサポート用だったのか。 オケと合唱の間の紗幕に場面に合わせた映像が映し出される。絵画調の絵が多く、花、街並み、教会等。火災の場面で炎、戦いに向かう場面で国旗がはためくCGが映され物語の理解に役立つが、直ぐに切り変わってしまう所がかえって目障りで、もう少し切り替えを減らしても良いと思われた。 舞台真ん中で指揮者バッティストーニが大きな身振りでオケを引っ張っていく。テンポや音量の差など、イタリア・オペラを盛り上げるのは上手い。オケはチェロの独奏等それなりに良かったが、バンダのトランペット等で所々コケるところが残念。 歌手は、男声陣は総じて良く、女声陣はビブラート、音程不安定、怒鳴るような発声があり残念。一番良かったのはフランク役の杉浦隆大の歌唱で、久しぶりに艶のあるバリトンの歌声を聞けた。タイトルロールの樋口達哉もよく届く歌声で良かった 本作品を聞くのは初めて。プッチーニ2作目に当たり、本作曲の後に『マノン・レスコー』、『ラ・ボエーム』、『トスカ』、『蝶々夫人』が続くことになる。 3幕ものだが、休憩は1幕後1回のみ、2幕が10分程度で短く3幕と続けて演奏され、演奏時間は全体で2時間弱と短め。 主人公エドガールは1幕でムーア人のティグラーナに対し民衆から蔑まれた言葉を掛けられたことに腹を立てて自宅に火を付け、駆け落ち。2幕ではいきなりティグラーナとの恋愛に飽きて戦場へ、3幕では自身が戦場で亡くなりその葬儀の設定で神父に成りすまし、ティグラーナを真珠の宝石で釣って「エドガールが裏切り者」と言わせて、その後正体を明かし民衆となじる。なんとも身勝手な主人公になっている。 ヒロインのフィデーリアとの恋愛感も余り感じられず、悪女ティグラーナの扱いもはっきりしない。 観客には共感が困難な台本なので、余り演奏機会が無いのでしょう。ただ音楽は美しく2幕冒頭のエドガールの故郷を想うアリアは、トスカの「妙なる調和」を思わせるメロディー。3幕のミサ曲も美しかった。 全体としては、オペラ「エドガール」を聞ける貴重な機会であり、その後の作品に続くプッチーニの音楽の美しさを感じることが出来た。東京二期会の今シーズン公演は7月「パルジファル」を残すのみで、ヴァイグレ指揮の読響を楽しみに。End
2022.04.24
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鑑賞日:2022年4月17日(日)15:00開演入場料:5,000円(E席/5階 L2列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】(財)東京都歴史文化財団 東京文化会館【後援】イタリア大使館東京・春・音楽祭2022東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.3歌劇「トゥーランドット」(演奏会形式/字幕付)全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :ピエール・ジョルジョ・モランディ管弦楽 :読売日本交響楽団合 唱 :東京オペラシンガーズ児童合唱:東京少年少女合唱隊合唱指揮:宮松重紀児童合唱指揮:長谷川久恵出演トゥーランドット:リカルダ・メルベートカラフ :ステファノ・ラ・コッラリュー :セレーネ・ザネッティティムール :シム・インスン皇帝アルトゥム :市川和彦ピン :萩原 潤パン :児玉和弘ポン :糸賀修平役人 :井出壮志朗感想 東京春祭プッチーニ・シリーズは、一昨年vol.1「三部作」、昨年vol.2「ラ・ボエーム」が新型コロナ感染症の影響で相次ぎ中止となり、今年は遂に「トゥーランドット」が公演されるとのことで、曇り空の中、人出多い上野まで出掛けた。 客席は1階奥、3、4階席に空き席多く、6~7割程度の入。舞台は張り出しが出され反響板あり。ローエングリンと同じく照明で色が付けられ、夜の場面では舞台上手壁面に丸スポットで月が表されていた。 オケは6プルト約80名、合唱は各パート13~18名で総勢約60名で女声が多少多く、衣装は上下黒。ローエングリンと同じく合唱は舞台奥の反響板前に5列、1.5m程間を空けた上で全員マスクなし、並びは通常の下手側からSATB配列。 (つい上野のカレーランチに並んで時間掛りギリギリに)開演2分前に客席に着いた時点で既に合唱、オケが舞台上に登場。指揮者登場し、まずはオケと合唱の音量、音圧に圧倒される。 今回舞台上には譜面台は置かれず、歌手は全て暗譜。来日歌手4名は何れも素晴らしい。 カラフ役ステファノ・ラ・コッラは突き抜けた声で最後まで歌い切り、有名アリア「誰も寝てはならぬ」も素晴らしい。場面に合わせ、合唱=民衆の方を向いたり、3幕最後はトゥーランドットと抱き合ったりと演技も加えていた。 リュー役セレーネ・ザネッティはリリコだが感情を込めた歌声。 ティムール役シム・インスンも役に合った存在感のある歌声。 そしてタイトルロールのリカルダ・メルベートはワーグナー、R.シュトラウス歌手だが、役に合わせ力を入れすぎず超高音を歌い続ける所はさすが。 日本人歌手の皆さんも大変良かった。 衣装は、男声人は黒の燕尾服、リューは黒のノースリーブドレス、トゥーランドットは2幕は水色のドレス、3幕はゴールドに近い茶色のドレスで如何にも王女らしい。 所々出てくる児童合唱は、ブレザー姿の20名程が舞台前に並んで歌う。 オーケストラは1幕目最初はゆっくりのテンポで入ったが、どんどんとテンポアップして盛り上げて行く。3幕アリア「誰も寝てはならぬ」では、一度音楽を止め客先からの拍手を受け、プッチーニが筆を止めた3幕リューが亡くなった所で音楽を止めて十数秒程間を空けた所は演奏会形式では違和感なく、歌手との呼吸もぴったり、大きな指揮で音楽の盛り上げ方が上手いのは経験豊富なイタリア人指揮者ならでは。 本オペラは合唱が歌う所が多く、それも高音、大音量が要求され難曲。東京オペラシンガーズは、静かな場面では座ったまま歌い、フォルテ部分では立ち上がり80人のオーケストラを圧倒する声量で、3幕フィナーレを盛り上げていた。 先日のワーグナー「ローエングリン」に続いて大満足の公演だったが、客先に空席が多かったのは残念。ぜひワーグナーだけでなく、プッチーニ・シリーズも続けてほしい。 本音楽祭は目玉の一つバス・バリトンのブリン・ターフェルが来日する直前のPCR検査で陽性となり来日取りやめとなったとのことだが、数々の困難を乗り越えて素晴らしい音楽祭を開催している関係者、スタッフの皆さんに重ねて感謝したい。End
2022.04.17
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鑑賞日:2022年4月9日(土)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『ばらの騎士』リヒャルト・シュトラウス作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :サッシャ・ゲッツェル演 出 :ジョナサン・ミラー美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター照 明 :磯野 睦再演演出 :三浦安浩舞台監督 :髙橋尚史合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団児童合唱 :多摩ファミリーシンガーズ管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演元帥夫人 :アンネッテ・ダッシュオックス男爵:クリスティン・ジクムントソン→妻屋秀和オクタヴィアン:マリア・カターエワ → 小林由佳ファーニナル :与那城 敬ゾフィー :安井陽子マリアンネ :森谷真理ヴァルツァッキ:内山信吾アンニーナ :加納悦子警 部 :妻屋秀和 → 大塚博章元帥夫人の執事:升島唯博ファーニナル家の執事:濱松孝行公証人 :晴 雅彦料理屋の主人 :青地英幸テノール歌手 :宮里直樹帽子屋 :佐藤路子動物商 :土崎 譲3人の孤児 :肥沼涼子、小酒部晶子、長澤美希感想 大好きな「ばらの騎士」の公演があるとのことで、20℃を超え初夏を思わせる天候の中、初台まで出掛けた。 ロビーに人も多く、テラスビッフェでは、ワインやシャンパンも飲める。ようやく日常が戻って来た印象。客席も1階前2列のみ空席のみで、Z席を含めほぼ満席の状況。 新国立劇場「ばらの騎士」の本演出は、過去に3シーズン観ており本日で4回目。1幕、2幕とも時代設定にあった舞台装置で3幕の居酒屋の仕掛けも奇をてらったものでなく、衣装含め、安心して観られる演出。2011年4月大震災後の公演は特に印象に残っている。 今回上手側の席だったため、1,2幕は上手の廊下部分がよく観え、1幕終わりにオクタヴィアンが駆けて出て行く所も見えたが、3幕は廊下が下手側になるので廊下は全く観えず。 時間となり指揮者登場で序曲が始まる。ホルンも無事に奏でられ幕が開き、伯爵夫人の寝室。ここでの伯爵夫人とオクタヴィアンのやり取りがぎこちなく恋仲に見えない。歌の方も独唱はそれなりに聞こえるものの重唱にバラバラ感あり綺麗に聞こえてこない。これは3幕終わりの3重唱まで全てに共通して感じた。 これまで観たシーズンの歌手との違い、代役日本人歌手の影響も大きいだろうが、演出変更の影響もあると思われる。 新型コロナ対策で歌っている時は距離を空ける演出になっているため、1幕のベッドの上で一緒に歌うことは出来ず、二人の恋愛感が伝わってこない。 2幕のオックス男爵はオクタヴィアンと剣で争い、過去シーズンでは足を怪我する設定だったが腕を怪我する設定に変更。これも従者を側に寄せないためと思われるが、ソファーに横になり大げさに痛がる設定と合わず、従者も周囲をウロウロしているだけで違和感あり。 オーケストラも新型コロナ対策でオケピットを浅くしているためか、少々迫力不足に感じてしまった。 ぜひ新型コロナの影響がない状態での再演を観たい。 End
2022.04.09
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