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2011/11/08
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カテゴリ: 禁酒法時代の米国
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 ◆(3)禁酒法がもたらした暗黒面

 禁酒法の施行後には、当然予想されたことですが、非合法なアルコール製造・販売が横行し、都市部ではギャングの経営する「もぐり酒場(Speakeasy)」 【注】 が急増しました。都市部の治安は悪化し、ギャング同士の勢力争いに伴う抗争・殺人事件も相次ぎました。

 禁酒法時代末期のニューヨーク市では、法施行前に正規営業していたバーの数(約1万5千軒)の約2倍以上、約3万2千軒ものもぐり酒場が存在(1929年時のデータ)し、禁酒法廃止前年の1932年には、全米でのもぐり酒場の総数は約21万9千軒に達していました(A、B、C)。Al Capone2.jpg

 とくにシカゴは、禁酒法をごまかすための「避難所(Shelter)」として有名で(WK)、アル・カポネ(Alphonse Capone)= 写真左 =に代表されるようなマフィア、ギャングは、違法な酒類の取引(密造・密輸入)やもぐり酒場経営で巨万の利益を得ていました。

 カポネ自身はシカゴで約160カ所のもぐり酒場も経営し、もぐり酒場のほか、とばく場や売春宿の経営等も含めて、1925~30年頃、少なくとも年間約2000万ドル(貨幣価値が現在とは違いますが、当時平均的米国民の年収の約7700倍)の稼ぎを得ていたと言われています( ( C )Spartacus schoolnet )。

 なお、映画「アンタッチャブル」(1987年)では、ロバート・デ・ニーロがカポネを演じ、中年のような雰囲気でしたが、実際のカポネは、1925年にシカゴの犯罪組織のボスに登りつめた時はなんと、まだ26歳(!)=1899年生まれ=の若さでした。イタリア系移民の子だったカポネは、年齢や人種に関係なく、ある意味、才覚だけで暗黒街のトップにのし上がり、彼の「アメリカン・ドリーム」をつかんだとも言えます。

 ちなみに、カポネを脱税で追いつめ、訴追した財務省禁酒局特別捜査チームのリーダー、エリオット・ネス(Eliot Ness)= 写真右 =も、映画ではケビン・コスナーが演じて、30代半ばという感じの設定でしたが、驚くべきことに、1927年の捜査チーム・リーダー就任時は、なんと24歳(!)=1903年生まれ=でした。Eliott Ness.jpg

 20代半ばにして、大きな犯罪組織のボスとなったカポネ、政府の期待を一身に背負った捜査当局の責任者となったネス。いい悪いは別にして、歴史に名を残す人物は、やはり若くして大きな仕事をするのかもしれません。

 ギャングは、主にカナダ経由で密輸した正規品だけでなく、メチル・アルコール等の混ぜ物をした質の悪い酒も市場に流通させました。ギャングだけでなく、一部の市民の間では、パスタブを使ってこっそり粗悪なジンを醸造するのが流行(はや)りました。そうしたジンは市場にも出回り、「バスタブ・ジン」とも呼ばれました(A、B)。

 しかし「バスタブ・ジン」は当然、味もおいしくないどころか、なかには健康に害を及ぼす製品も多かったのです。一般市民の間では健康被害(最悪、失明に至るなど)が相次ぎ、一説には、禁酒法が廃止されるまでの13年間に、全米で1万人以上の死者が出たと言われています(A、C)。

 非合法のアルコール製造や密輸や販売、もぐり酒場の取り締まりに当たる米財務省禁酒局の捜査官は全米で1500人足らず(当時の米国の人口と比べれば7万人に1人という割合)で、全米でくまなく取り締まることなどとても不可能でした(A、B)。

 また、州警察・検察当局や各市警では積極的な取り締まりを行わないどころか、「袖の下(賄賂)」を取って違法営業を見逃す検事や警官の数も目に余る程だったと伝わっています。なかには、自ら「もぐり酒場」の経営に参加したりする悪徳警官もいました(A)。

【注】 「Speak easy」とは元来は「小声でささやく」「こっそり注文する」の意。禁酒法時代の「もぐり酒場」は原則、顔なじみの人間か、誰かの紹介がなければ入店できませんでした。店の扉(ドア)には小窓があり、店側はその小窓を開けて客を名前(顔)や会員証で確認します。その際、客は自分の名前や合言葉をささやくように伝えたといいます。そして同様に、店内で酒を注文する際も小声でささやきました。いつしか、こういう「もぐり酒場」のことは「Speakeasy」と呼ばれるようになりました。

【禁酒法時代の米国<4>に続く】

【主な参考資料・文献】
「WK」→「Wikipedia(ウィキペディア)」(Internet上の百科事典):アメリカ合衆国における禁酒法
「A」 →「禁酒法――『酒のない社会』の実験」:岡本勝著(講談社新書、1996年刊)
「B」 →「禁酒法のアメリカ――アル・カポネを英雄にしたアメリカン・ドリーム」:小田基著(PHP新書 1984年刊)
「C」 →「酒場の時代―1920年代のアメリカ風俗」:常盤新平著(サントリー博物館文庫 1981年刊)

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うらんかんろ

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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