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2018/07/18
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 欧米には、芸術作品コレクターの富豪(パトロン)が数多くいます。そして欧米の有名美術館には、そうしたコレクターからの寄贈で所蔵作品を充実させてきたところが少なくありません。ニューヨークのメトロポリタン美術館のコレクションなどその典型的なケースでしょう。

 さてオランダには、ゴッホ美術館に次ぐゴッホ・コレクションを誇る美術館があります。それが「クレラー・ミュラー美術館(Kröller-Müller Museum) 」です。その名からも分かるように、ある富豪夫婦のコレクションが基になっています。

 オランダ生まれのアントン・クレラー(Anton kröller 1862~1941)と、ドイツ出身の妻、ヘレン・ミュラー(Helene Müller 1869~1939)=写真下((C)https://www.hogeveluwe.nl)。クレラーは造船業で財をなし、ミュラー家は鉱業を営む富豪でした。美術館は2人のコレクションを基にして、1938年に開設されました。とくに、ゴッホが大好きだった妻のヘレンは生涯に油絵約90点、素描175点を購入しました。他にも夫妻が集めた19~20世紀の絵画や彫刻作品が多数、常設展示されています。

 この美術館の特異性はその立地です。アムステルダムから東南東へ約100km、電車とバスを乗り継いで約2時間、森林におおわれた約6000ha(東京ディズニーランド100個分!)もの広さのデ・ホーヘ・フェルウェ(De Hoge Veluwe)国立公園の中にあるということです。しかも、驚くなかれ、この国立公園の敷地も元々クレラー・ミュラー夫妻の私有地だったのです。

 1930年代前半、夫妻の会社は世界恐慌のあおりで経営難に陥ります。長年集めたコレクションの散逸をおそれた夫妻は1935年、全コレクションと私有地をオランダ政府に寄付します。そして政府はその3年後、美術館を開設したのです。


 オランダ3日目の26日(火)、僕らは、ゴッホ・ファンのもう一つの聖地、クレラー・ミュラー美術館に向かいます。今回の旅は個人旅行で、原則、ガイド(添乗員)はありません。
 しかし、事前にネットでこのクレラー・ミュラー美術館を訪れた人の体験記をいくつか読むと、その不便な立地が故、いずれも「交通機関(手段)がややこしくて、大変だった」「初めての場合、個人で行くのはかなり苦労します」というものでした(写真は、毎度お馴染みのアムステルダム中央駅。オランダ国内どこへ行くにも、この駅が起点になるみたいです)。


 なので、海外の旅では時間は有効に使いたい。そのためには必要な費用は惜しまないことにしました。日本での申し込み時に、クレラー・ミューラー美術館への往復の行程だけ、ガイドさんをお願いしました(ガイド料は往復の交通費や入場券代も込みですが、とてもリーズナブルだと思いました)。

   ガイドさんはアムス在住約20年のWさんという40代半ばくらいの日本人の男性で、この日は僕ら以外には客はなかったので、早速出発です(写真は、朝9時15分、ガイドさんとの待ち合わせ場所に指定された中央駅・駅前のツーリスト・オフィス)。


 アムステルダムから行く場合には、列車でアペルドールン(Apeldoorn)またはエーデ・ワーゲニンゲン (Ede-Wageningen) まで行き、そこからバスに乗り換えます。僕らはアペルドールン経由のルートを選びました(写真は、アペルドールン駅のホーム)。


 アぺルドールンの駅前になぜか風車がありました。近くで見るのはオランダに来てから初めてです(オランダ国内の風車も昔に比べるとだいぶ減ったそうです。しかし観光立国には欠かせない文化財なので、今は維持管理に補助金も出ているそうです)。




 とりあえず駅前のバス停で、オッテルロー(Otterlo)方面行きの「108」番の路線バスを待ちます。アペルドールンの駅前は、のどかな田舎のような、のんびりした雰囲気です。バス停ではすでに何人かの乗客がいました。


 美術館(国立公園)に行くには、まずはバスでロテンド(Rotendo)まで向かいます。乗客は最終的に、僕らも含め15人ほどでしょうか。


 約20分ほど走って、ロテンドまで来ました。ここで一回り小さい、国立公園行きの「106」番のバス(後ろの緑色のバス)に乗り換えます。別方面からの乗客も含めて、人数はさらに増えてきました。


 「106」番のバスは15分ほど走り、国立公園の入り口に到着。ここで降りて、公園の入場券を買います(美術館に行くだけでも、公園の入場券がいちおう必要。美術館のチケットはガイドさんが事前に用意してくれてますが、公園の入場券はここでしか売っていないそうです)。
 この公園入り口には無料のレンタサイクルがあるので、自転車に乗れる人はここから美術館や公園内に自転車で行けます。しかし、バスでそのまま美術館へ行くには、公園入場券を買った後、再び同じバスに乗らなければなりません。バスの運転手は5~10分ほど待ってくれますが、最後の1人までは待ちません。入場券を買う列が長ければ、このバスには乗れません。次のバスはなんと1時間後です。


 公園入口で降りた乗客の3分の2くらいは、再び乗ってきませんでした。みんな自転車を借りて美術館や公園内のサイクリングに向かったのでしょう。
 ガイドさんは「この国立公園入口の関門がいつも綱渡りで、ヒヤヒヤなんですよ。ただ、公園入場券を買ったかどうかは美術館ではいちいちチェックしないので、最悪の場合、買わずに乗って(美術館に)行っても何とかなるんですが…」とも。
 幸い、僕らは列の最初の方で入場券が買えたので、無事、同じバスで美術館まで行けました(写真は、美術館前バス停付近。ここから森の中を5分ほど歩いたら、美術館です)。


 「バスの車内で公園の入場券も売ればいいのに」と僕が言うと、ガイドさんは「それはバス会社の仕事ではないということで、やってくれないんです」と。合理主義のオランダと言いながら、この非合理的なシステム。なんとかならないんでしょうかねぇ。せめてネットで販売してくれたら、事前に購入できるのに…。
 そんな話をしながら5分ほど歩いて、気が付けば、美術館の門(入り口)に到着です。ここから展示している建物まではさらに数分歩きます。


 美術館の周辺には、いろんな現代アートが数多く、屋外展示されています。所蔵作品には意外と彫刻が多いのです(夫妻が亡くなったあとの第二次大戦後に、コレクションとして購入された作品も結構あります)。もっとも、クレラー・ミュラー夫妻にとっては当時、ゴッホも「現代アート」だったのかもしれませんが…。


 これが美術館の本体建物。シンプルで、モダンなデザインです。周囲は木々がいっぱいで、とても素晴らしい環境です。


 美術館は平屋の建物ですが、中はきれいで、ゆったりとした空間です。ロビーのネオンサインが、意外と館内の雰囲気にマッチしています。
   絵が展示されている部屋は、天井から磨りガラス越しに柔らかい自然光が差し込み、とても明るくて絵が見やすいです(前日に訪れた国立美術館やゴッホ美術館は電気の光がメインだったので、照明はやや暗い感じでしたが…)。




 さて、いよいよ珠玉のゴッホ作品の鑑賞です。なかでも「夜のカフェテラス」(1888年)は、この一枚の絵のために僕はここに来たと言ってもいい、大好きな作品です。南仏アルル時代に描かれたゴッホの最高傑作の一つ。長年、本物が観たいと恋い焦がれ続けました。
   館内はフラッシュをたかなければ撮影OKです。絵の具の厚塗りや筆のタッチも生々しく、情念がこもった絵です。僕は、細部の筆づかいももっと見たいと、絵の部分アップ=下の写真(絵の右下部分の拡大)=も何枚か撮りました。


 せっかくなので、クレラー・ミュラー美術館が誇るゴッホ・コレクションの中から少し、誌上展覧会を開催いたしましょう。これは言わずと知れた名作「アルルの跳ね橋」(1888年)。


 ゴッホは、「ひまわり」以外にも、花の絵の傑作をたくさん残しました。「草原の花とバラのある静物」(1886~1887年)と題されたこの絵は、公式ガイドブックに収録されていませんでしたが、結構好きです。


 「ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット」(1886年)。パリのモンマルトルにある、「ギャレット(ガレット)の風車」の名を持つダンスホールを描いた一枚。ゴッホにしては珍しく、落ち着いた色合いです(セザンヌやモネの影響もあるような、ないような…)。


 「星月夜と糸杉の道」(1890年)。ゴッホの苦悩がにじむ、亡くなる直前の作品。


 「自画像」(1887年)。ゴッホは自画像をたくさん残していますが、僕はこのパリ時代の自画像が一番ゴッホらしくて、好きです。ちなみに、ガイドのWさんは、ゴッホ関連のことに実に造詣が深く、絵の解説も当を得たものでした。


 クレラー・ミュラー美術館では約3時間の鑑賞時間を予定していましたが、意外と早く見終わってしまいました。とりあえずガイドさんと一緒に、外国人見学客がいっぱいの隣接の屋外レストランでお昼ご飯にすることにしました。団体バスツアーでやって来た日本人客の皆さんは、屋内レストランで集まって食事をしています。
 バスでの団体ツアーは、この美術館のようにアクセスが悪い場合、とても便利ですが、鑑賞時間が制限されるうえに、個人行動はあまり出来ません。海外の個人旅行に付き物の「予定外のハプニング」もまず起こり得ず、現地の人たちとの触れ合う機会もほとんどありません。だから、僕らはやはり、個人(少人数)旅行の方が有意義に思います。


 昼ご飯を終えた後、ガイドさんと今後の予定を話し合いました。ガイドさんからは「私の拘束時間は夕方5時までありますから、もしアムスで行きたい場所があるなら、早めに戻ってご案内しますよ」との提案がありました。
 きょうは元々、アムスに帰ってから、ジュネヴァ(オランダ・ジン)酒場に行こうと思っていたので、願ったり叶ったりです。そういう訳で、食事の後、僕らは再びバスと電車でアムスへ引き返すことにしました(写真は、美術館の公式ガイドブック。英語版を買ったつもりが、帰国後に見ると、オランダ語版でした(笑)。絵はともかく、中の文章は皆目わかりませーん)。

<7回目に続く>

※過去の「旅報告」連載は、トップページ中ほどのリンク 「旅は楽しい」 からお読みになれます。


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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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