Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2018/12/09
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 93. 横 浜 (Yokohama)

【現代の標準的なレシピ】
(液量単位はml)ジン(30)、ウオッカ(15)、オレンジ・ジュース(15)、グレナディン・シロップ(10)、アニス酒(アブサン、パスティス、ぺルノーなど)1~2dash  【スタイル】 シェイク

 明治の開国後、日本は欧米諸国との関係を深めていきます。そして1896年(明治29年)には、日本郵船が欧州との間に初めて客船「土佐丸」で定期航路を開きます。

1902(明治35)年には、同社は欧州極東往航同盟への正式に加入。最盛期には、他社も含めて20隻近い大型客船が日本(横浜や神戸など)と欧州を結ぶ航路で定期運航されていたということです(欧州まではスエズ運河経由で約50日も!かかりました。客船での欧米との定期航路は戦後、航空機の発達で姿を消します)。

 このカクテル「Yokohama」は1910年代前半以前に、横浜(居留地?)のホテルバー、あるいは横浜を母港に運航された外洋大型客船内のバーで生まれたという説が一般的です。欧州にもほぼ同じ時期に伝わっています。しかし残念ながら、根拠のある資料や考案者などの詳細は一切伝わっていません。

 欧州航路の拠点港・横浜の名を冠したカクテルが考案されたことは何ら不思議ではありませんが、その誕生の場所としては、個人的には、日本船籍の大型客船内のバーの可能性が高いのではないかと推察しています(当時、外国の船会社の大型客船が遠い日本にまで就航していたという話は、調べた限りは確認できませんでしたので、おそらくは日本船籍の大型客船でしょう)。

 濃いオレンジの色合いは「横浜港の沖合いから昇る朝陽をイメージした」とも言われていますが、「ジンやウオッカ、アブサンという複数の国の酒をベースにしていることからも、豪華客船内のバーが”国際航路”をイメージして創作し、Yokohamaと名付けたのでは」という見解もあります。ちなみに日本の都市名が付いたカクテルはいくつかありますが、国際的にも知られているのは、このYokohamaだけです。

 活字となったYokohamaが初めて確認できるのは、世界初の実用的カクテルブックとも言われるハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「ABC of Mixing Cocktails」(1919年刊)です。1910年代の欧州で、このカクテルがすでに認知されていたことがうかがえます。
 マッケルホーン本でのレシピは「ジン3分の1、ウオッカ6分の1、オレンジ・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、アブサン1dash(シェイク)」となっています。

 ご参考までに、1930~40年代の欧米のカクテルブックでYokohamaがどのように紹介されているのかを、ざっと見ておきましょう。

・The Savoy Cocktail Book(Harry Craddock著、1930年刊)英
 ドライ・ジン3分の1、ウオッカ6分の1、オレンジ・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、アブサン1dash(シェイク)

・World Drinks and How To Mix Them(William Boothby著、1934年刊)米
 ジン3分の1jigger、ウオッカ、オレンジ・ジュース、グレナディン・シロップ各1Spoon(※このSpoonのサイズは不明)、アブサン1dash(シェイク)

・The Official Mixer's Manual(Patrick Gavin Duffy著、1948年刊)米
 ドライ・ジン3分の1、ウオッカ6分の1、オレンジ・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、ペルノー1dash(シェイク)

 最後に、近年のカクテルブック(掲載例は意外に少ないです)ではどのようなレシピになっているか、一例を紹介しておきましょう。
・Complete World Bartender Guide(Bob Sennett編、2007年刊)米
 ジン4分の3oz(オンス)、ウオッカ2分の1oz、オレンジ・ジュース2分の1oz、グレナディン・シロップ2分の1oz、ペルノー1dash(シェイク)

 なお、Yokohamaは日本生まれのカクテルですが、なぜか国内のカクテルブックで紹介されるのは1930年代に入ってからです。バー業界でも知名度のあるカクテルですが、残念ながら、カウンターで注文されるシーンはあまり見かけません(唯一、横浜のバーではご当地カクテルとしてそれなりに飲まれているようですが…)。

【確認できる日本初出資料】 「スタンダード・カクテルブック」(村井洋著、NBA編 1936年刊)。レシピは「ドライ・ジン3分の1、ウオトカ6分の1、オレンジ汁3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、アブサント1滴。以上をよく振蕩(シェイク)してコクテール・グラスに注いで供す」と、サヴォイ・カクテルブックと同じです。


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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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