Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2023/04/16
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カテゴリ: カクテル
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 ◆プロなら知っておいて損はない「知られざるカクテル」 (序文)

◆「スタンダード」の8割以上は150~50年前に誕生
 以前私は、WEBマガジン「リカル(LIQUL)」での連載「カクテル・ヒストリア」で「日本と海外、人気カクテルはなぜ違う?」というテーマで執筆しました。→  記事はこちら。
 記事は、日本のバーでの人気カクテル・ランキングには、この40~50年ほど、ほとんど変化がないのに対して、欧米の人気ランキングは2000年以降、その顔ぶれがかなり変わってきていること、その理由・背景は何かを解説したものでした。

 現代のバーでよく飲まれているカクテルは、その8割以上が150~50年前に欧米で誕生したクラシック・カクテルです。こうしたクラシック・カクテルは今では「スタンダード・カクテル」とも言われます。

 いまでは「スタンダード」となったこうしたカクテルは当然、最初は誰かの創作カクテルでした。それが長い歳月の中で、世界中のバーで、たくさんのバーテンダーがお客様に提供してくれたおかげで、日本も含む幅広い国や地域で普及して、「スタンダード」になった訳です。100年以上経った今でも、私たちがバーのカウンターで気軽に楽しめるのは、数多くのバーテンダーたちの献身的な協力の賜物と言ってもいいと思います。

 しかし、創作カクテルが生き残っていくためには、バーテンダーだけが努力だけでは足りません。飲み手(お客様)に気に入ってもらい、支持されなければ、再び注文されることなく消えてしまいます。では、現代のバーで提供されている「スタンダード・カクテル」は、どのような背景があって受け継がれてきたのでしょうか? どういう理由で飲み手に支持されてきたのでしょうか?

◆「シンプルで、特徴や個性が明確」だったからこそ
 専門家は大きく2つの理由を挙げます。まずは、そのカクテルがどこの国や地域でも入手しやすい材料でつくれて、幅広い普及が可能だったこと、そして、多くても3~4種類程度の材料によるシンプルな味わいで、味の特徴や個性、方向性がはっきりしていたことです。

 もちろん「シンプルで、味の特徴・個性が明確だった」から、すべての創作カクテルが生き残れた訳ではありません。飲み手=お客様が「美味しい」「また飲んでみたい」と思って、「選ばれたものだけ」が長い歳月を経過した現在でもメニューに生き残っているのです。

 一方、日本人がつくり出す創作カクテルはどうだったかと言えば、過去、日本人が考案したもので現在、世界的な知名度を持つものは10数個くらいしかありません。日本生まれのカクテルとしては「バンブー」や「ミリオンダラー」が国際的にもとても有名ですが、残念ながら、明治期の来日外国人が考案したものだと言われています。

 日本人が考案した創作カクテルが世界的に普及しない理由はいろいろありますが、私は、国内のカクテルコンペでのトレンドや、審査基準の影響が大きいと考えています。国内のコンペでは、参加選手は数多くの材料を使って工夫したり(現在ではコンペで使用材料の種類=数が制限されていて難しいそうですが…)、入手が難しい珍しいスピリッツやリキュールや自家製のシロップなどを使ったり、デコレーション(飾り)を競い合ったりするのがトレンドでした。

◆数年で忘れ去られるコンペ優勝カクテル
 材料の数を追求した結果、味が複雑になりすぎ、個性や特徴がよく分からないという弊害を生むことになりました。入手が難しい材料を使えば、他のカクテルとの「差別化」は図れても、どこのバーでも再現することは難しくなり、幅広い国や地域での普及という点では高いハードルとなりました。言い方を換えれば、普通のバーで再現できない創作カクテルは普及することはなく、たとえコンペで優勝しても数年後には忘れ去られるのが通常でした。

 後者の「審査基準」について言えば、国内のコンペでは甘口系の創作カクテルの方が(審査員に)高く評価されやすい傾向があり、フレーバーは違っても、結果として同じような甘口系の方向性の作品ばかりが並ぶということが少なくありませんでした(実際のバーの現場では、甘口系のカクテルより辛口系のカクテルを好むお客様の方が多いのに、コンペの審査員をほとんど業界団体の人間で担っているので、こうした”逆転現象”が起きてしまいます)。

 結果、優勝してもそのカクテルは数年で忘れられ、生き残ることはありません。そして、残念ながら、日本人の創作カクテルの中で、発表後に長い歳月を経て国内の「スタンダード」として生き残ったものや、国際的知名度を持つまでに有名になったものは、1970年代以降、数えるほどしかありません。

 日本のバー業界の現状をみると、毎年星の数ほど生み出される創作カクテルは「コンペのための創作カクテル」であって、バーの現場で幅広い普及し、次世代へ受け継がれることを目指して考案される創作カクテルは、ほとんど見られません。

◆普通のバーで再現できなければ、生き残れない
 もちろん、日本のバーテンダーの中には「次世代へ受け継がれるというよりも、いま目の前のお客様を楽しませるカクテルがつくれたら、それでいい」というスタンスの方もいます。私はそれも一つの考え方で、それはそれで素晴らしいと思います(「スタンダード」としての普及・定着を目指すだけがバーテンダーの使命ではありません。お客様に「見て楽しい、飲んで美味しい」オリジナルを日々考案する方が意味があるという考え方も一理あると思います)。

 液体窒素や減圧蒸留器、遠心分離機など最新の道具を使い、斬新なカクテルを提供する勉強熱心なバーテンダーを、個人的にはとても尊敬しています。でも、残念ながら、そういう高度なテクニックを伴うカクテルは、どこのバーでも再現できるものではないため、どんなに素晴らしいカクテルを考案しても幅広く普及するのは難しく、「スタンダード」として生き残れないのです。

 2000年以降、海外のトレンドに影響されて、国内のコンペよりも海外のコンペに挑戦するバーテンダーも目立ってきました。海外のコンペでは、日本とは違った「審査基準」で競い合います。カクテルの個性が重視され、臨機応変の対応力やパフォーマンス、語学力も含めたプレゼンテーション力などが評価されます。日本のコンペにように、技術や所作の美しさ、分量の正確さ、デコレーションの派手さを競ったりすることはほとんどありません。

 そして、2015年の「ワールド・クラス」という世界的なカクテルコンペ(ディアジオ社主催)では、奈良県のバーテンダー金子道人氏(Lamp Barオーナー・バーテンダー)が見事、世界一となり、国内のバーテンダーが海外に目を向ける大きなきっかけとなりました。その後も、日本人バーテンダーで世界的なコンペで優秀な成績を収める人が相次いでいます。

◆海外ではクラシック・カクテルに再び光が
 こうした海外志向のバーテンダーの皆さんが、どういうカクテルづくりを目指すのかは、人により様々でしょう。普遍的な材料を使って次世代へ残るようなカクテルを考案したいと願うのか、カウンターでお客様を楽しませるための斬新かつ革新的なカクテルづくりを追求するのか。

 私はどちらの方向性も、バーテンダーとしてやりがいのある素晴らしいチャレンジだと思っています。後者のカクテルの中から結果として、後世へ受け継がれるものが誕生すれば、さらに喜ばしいことだと思いますが、何度も言うように、どこの国・地域でも手に入る材料で創作しなければ、世界的な幅広い普及は難しいでしょう。。

 ところで、海外では2000年以降、なぜか「クラシック・カクテル」に再び光が当てられ、再評価されるようになっています。欧米の大都市のカクテルバーでは、古いクラシック・カクテルを見直し、21世紀のアレンジ(ツイスト)を少し加えて、蘇らせる試みが盛んになっています。

 この傾向は、欧米の人気カクテル・ランキングでも同様で、近年では例えば、日本のバーでは注文されることが少ないオールド・ファッションド、ネグローニ、サゼラックなどというクラシック・カクテルが常に上位を占めるような現象が続いています。

◆先人の遺産や歴史・文化を受け継ぐ気風
 なぜ、欧米で再び「クラシック・カクテル」が再評価されるようになったのかーー。元々、クラシック・カクテル志向が強く、米国では禁酒法という逆風もありながら、19世紀末から20世紀初頭に生まれたカクテルは根強く飲み継がれてきました。背景には、アルコール耐性が強い欧米人は度数の高い、辛口系カクテルも好むということもありました。

 日本の現状でも同じようなことが言えるかもしれませんが、近年、材料や手法が斬新な「モダン・カクテル」が増えて、味わいが複雑になりすぎたことへの「アンチテーゼ」として、「クラシック・カクテル」のシンプルな魅力が再発見、再評価されたのではないかとも言われています。

 忘れてはならないのが、元々欧米では、歴史や先人の遺産・文化を受け継いでいこうという気風が根強くあり、バー業界も例外ではありません。米国や英国では現在、100年ほど前に出版された古いカクテルブックの復刻版・刊行が盛んです。

 この5~10年ほどの間だけでも、長い間絶版だったカクテルブックが30冊近く復刻・復刊されています。おそらくは、古いカクテルブックの中から、現代に生かせるヒントがないかを求めるバーテンダーからの要望が多いためではないかと私は想像しています。

◆「知っておいて絶対損はしない」欧米のトレンド
 先日のこと。ある日本人バーテンダーの方から、「海外のバーでよく注文されることの多いカクテル、あるいは近年注目されているカクテルで、日本のバーの現場でも知っておいた方がいいものは何ですか?」という質問を受けました。この方も将来、海外のコンペに挑戦したり、海外のバーで働いてみたいと考えています。

 そこで、良い機会なので、まがりなりにも長年カクテル史を研究してきた私が、独自?の視点で「プロとして知っておくべき、大切なカクテル」を選んでみました。選考にあたって重視したのは、最近の欧米でのトレンドです。近年の人気カクテル・ランキング調査、カクテルを専門に扱っているサイト、有名バーでの提供メニュー、近年発刊されたカクテルブックでの収録カクテル等々、可能な限りのデータを丁寧に集めてみました。

 今回紹介するカクテルは、 日本のバーの現場ではほとんど注文されることがないものが多く、いわゆる「(日本での)スタンダード100選」には入っていない、日本では知名度の低いカクテル です。プロのバーテンダーでも知らない人が多いかもしれませんし、知らなくてもそう困ることはないかもしれません。
 しかし、プロなら「知っておいて絶対に損はしない」カクテルだと私は信じています。とくに、これから海外のコンクールなどに挑戦したい、または海外のバーで働いてみたいと思っているバーテンダーには、ぜひ知っておいてほしいカクテルです。

 それでは、次回から3回に分けて、こうした「知られざるカクテル」について、標準的なレシピに加えて、誕生した時期、考案者(不明なものもありますが)、誕生の由来等について、現時点で知り得る限りのことを紹介したいと思います。
次回「プロなら知っておいて損はない『知られざるカクテル』<上>」は、明日17日に掲載いたします。






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うらんかんろ

うらんかんろ

Comments

汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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