ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Dec 28, 2021
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カテゴリ: 映画、テレビ
「そして僕は途方にくれない」(評価 ★★★★★ 満点五つ星)

 1990年代のニューヨークを舞台にミュージカル作家を目指すアラサー男子ジョナサン・ラーソンの奮闘(実話)を描いた映画。リンマニュエル・ミランダの初監督作品、主演はアンドリュー・ガーフィールド。

 さすがミュージカル畑出身の監督だけあって演出にメリハリがあって良かった。その点で、映画畑出身のスティーブン・スピールバーグ監督のウェストサイド物語よりも演出力は上。本作では舞台ではできなくて映画ではできることが存分に活かされているという印象。そして、ミュージカルでは避けられない違和感、つまりいきなり歌い出したり踊り出したりする強引な展開もそうは感じさせないように滑らかに処理。 
 まだ新人の映画監督っぽいところがないわけでもない。例えば厳寒のニューヨークの屋外の場面。吐く息が白くないし、全く寒く見えないのは初歩的な失敗。

 主演役者ガーフィールド氏の熱演には唸る。ご本人はイギリス人のはずなのにきちんとアメリカ英語で演じてて、しかもちゃんと歌ってるっぽい。

 なお、このジョナサン・ラーソンさんという作家は、その後も決して諦めることなく曲を書き続け、後に「レント」(家賃)というミュージカルを制作。よってレントの内容を知ってるとこの映画は観やすいはず。彼自身が家賃を払えず苦しんでたり、個性的な同居人がいたり、闘病してる人がいたり、レントが彼の実体験をもとにしていることがわかる。

 で、実際のラーソンさんは後のレントの成功を目にすることなく急死してしまうのだけれど、この映画ではそこまでは描かれない。その点は意外だし、よって号泣を誘う映画ではない。あくまで才能が開花する一歩手前、がむしゃらにもがいて自分探ししている部分(だけ)が紹介されている。
 潔いとも思ったけど、これってもしかしていつの日か続編映画を作るための策略であり、あえて最期は詳しく描かなかったのかもしれない。


・ 悪役が全く登場しない、あるいは悪役を明らかな悪役としては描かない
・ 登場人物の人種、宗教、性的嗜好や指向、貧富などを説明的に描写しない(中盤で何となく判明)
・ 感動的な話のはずなのにあっさりと演出、泣かせどころを設けない





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最終更新日  Dec 30, 2021 12:38:41 AM
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Re:映画:チック、チック…ブーン!Tick, Tick... Boom!(2021年アメリカ)(12/28)  
LimeGreen  さん
アメリカは最近、西部劇みたいに勧善懲悪があまりにも現実離れして、感情移入できなすぎ、って状態なんじゃないかなあ。
悪い人にも悪いことをする理由があり、善人にも暗い一面を出すことで、少々現実味を帯びるんだろうと。

Tick Tick Boom!なぜかまだ見てない。
みなければ~。

私はもともとミュージカルファンじゃないんですが、Rentは映画見た時に好きになりました。2009年にツアーになったときにボストンで見ました。

ラーソンの死亡原因って、救急病院の誤診ですよね。マルファン症候群なんて見りゃあすぐわかんじゃんよ~、って思ってしまいました。お金なくて保険もないと、そういうことになるんだなあとしみじみ。 (Dec 30, 2021 08:48:44 PM)

Re[1]:映画:チック、チック…ブーン!Tick, Tick... Boom!(2021年アメリカ)(12/28)  
LimeGreenさん

レントって、ぼくはじっくり観たことないです。ナマでこそ観たい演目ですね。
ラーソンさん、かなり才能あるお方だったみたいだし、人望も厚かったようですね。この映画の続編が作られるなら是非観たいです。 (Dec 31, 2021 08:12:56 PM)

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