ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Apr 3, 2022
XML




 弦楽奏者的には最初から最後まで弾きっぱなしでタイヘンでした。楽器を肩から降ろしてのんびりする暇など皆無に近い。ぼくは今まで何十本ものミュージカルの劇伴をしてきたけど、レミズほど弾きっぱなしの作品はないと思います。肩こりや腰痛に悩めるお年頃の中年男子といたしましては激しく疲れたのでありました(心地よい疲れですが)。

 それにしてもよくできた作品だと改めて思うのです。昔のフランスのお話だけれど、最近のウクライナのこととかにも想いを馳せてしまいます。
 音楽的にもいー感じ。てか、曲の「使い回し」が絶妙。編曲もよくできてるという印象。ぼくはこの作品を三年前に弾いたときはバイオリン、今回はビオラで参加したのだけれど、ビオラ(やチェロ)もなかなか目立ちます。

 登場人物のキャラ設定もお見事。主役ジャン・バルジャン以外の役もいろいろと見せどころ聴かせどころが多い。

 役者さんたちにとっては演じるのはさぞ難しそうな演目かと思いきや、ミュージカルのくせして踊りの場面が少なく、仁王立ちで語ったり歌ったりできるので、踊りが下手な役者でも何とかなる。しかも話の展開が既にじゅうぶん劇的だし、演技の下手っぴな役者さんでも大根であることがバレずに演じられるかも。
 だがしかし、この演目はとにかく歌唱力のある役者が必要。ジャンバルジャンはもちろん、ほかの役も安定した高音を出せる歌手じゃなきゃお話にならない。
 その点、今回共演したこの劇団は歌える役者さんばかりで、ぼくらも楽しく演奏できました。


 とても気の毒でした。てか、ファンティーヌってこの後死んじゃうので彼女の出番はすぐに強制終了だし(後半に幽霊として一瞬の出番はあるものの)、I dreamed a dream は彼女の最初で最後の見せ場と言ってもいい。この曲に限って音響事故とはイタすぎます。我々も演奏してて真っ青になりました。
 結局ぼくら楽団は、指揮者の咄嗟の判断で、鍵盤や管を極力抑え、弦楽器をピアニッシモで鳴らして、歌がちゃんと聴こえるような音作りを必死に心掛けました。
 そしたら、何てゆーか会場が一体となって、みんなで固唾を吞んで彼女の熱唱を聴き入ったのでありました。それはそれは幻想的な場面でございました。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Apr 9, 2022 08:17:43 AM
コメント(2) | コメントを書く
[音楽(全般、大衆音楽)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ピカルディの三度TH

ピカルディの三度TH


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: