東方見雲録

東方見雲録

2024.10.07
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カテゴリ: 科学

日本海新聞 1007


ノーベル生理学・医学賞を受賞するビクター・アンブロス(左)とゲイリー・ラブカン=ノーベル財団資料から
© 朝日新聞社

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は7日、今年のノーベル生理学・医学賞を米マサチューセッツ州立大メディカルスクールのビクター・アンブロス氏と、米ハーバード大のゲイリー・ラブカン氏に贈ると発表した。業績は「マイクロRNAの発見と転写後遺伝子制御におけるその役割について」。遺伝子制御に重要な役割を果たす新しいタイプのRNAを発見したことが評価された。

 昨年の同賞は、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの実現につながる発見をしたカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏が受賞していた。

引用サイト: こちら

ノーベル物理学賞に「人工知能の機械学習」 ヒントン氏ら米国の2人  10.08
スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2024年のノーベル物理学賞を米国のジョン・ホップフィールド博士とジェフリー・ヒントン博士の2氏に授与すると発表した。授賞理由は「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的な発明」。
引用サイト:毎日新聞   こちら


© 朝日新聞社
 スウェーデン王立科学アカデミーは8日、今年のノーベル物理学賞を、米プリンストン大のジョン・ホップフィールド教授と、カナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン教授に贈ると発表した。爆発的な発展をとげ利用が拡大する現代の人工知能(AI)の基礎を、物理学の知見を生かして開発したことが評価された。

 ChatGPT(チャットGPT)などの生成AIは、人間の脳神経のつながりをまねた「ニューラルネットワーク」を通じ学習を重ねる。

 ホップフィールド氏は、物理学と生物学の理論を融合し、人工的な回路のつながりの強さについて計算を繰り返すことで、画像の特徴を判断できるプログラムをつくりだした。

 ヒントン氏は、ホップフィールド氏の研究をさらに発展させ、画像などの大量のデータからAIが自ら特徴を見いだして学習する「深層学習」と呼ばれる技術を確立した。(竹野内崇宏)
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ノーベル化学賞に「AlphaFold2」開発者ら選出 物理学賞に続き、AI関連技術が受賞

 スウェーデン王立科学アカデミーは10月9日(日本時間)、2024年のノーベル化学賞に、米ワシントン大学のデビッド・ベイカーさん、さらに米Google DeepMindのデミス・ハサビスさんとジョン・M・ジャンパーさんを合同で選出したと発表した。ベイカーさんは新しい種類のタンパク質を設計などを、Google DeepMindの2人は、タンパク質の構造を予測するAIモデル「AlphaFold2」を開発したことを評価された。

 AlphaFold2は、2021年に当時のDeepMindが公開した、遺伝子配列情報からタンパク質の立体構造を解析できるAIモデル。タンパク質は複雑な立体構造を持つため、その特定には数カ月から数年の時間がかかるといわれている。この問題は「タンパク質折りたたみ問題」として50年以上、生物学の課題であった。

 この問題を解決するために生み出されたのがAlphaFold2だ。AlphaFold2を利用することで、タンパク質立体構造を短時間で予測するなど研究作業の効率化が可能に。プラスチック汚染や抗生物質耐性など、さまざまな研究に寄与し、現在までAlphaFold2は190カ国200万人以上の人々が利用しているという。

 一方、ベイカーさんが所属する研究チームもタンパク質の構造予測ツール「Rosetta」を開発。AlphaFold2などタンパク質の構造予測ツールの礎を築いた他、03年にはどのタンパク質とも異なる新しいタンパク質の設計にも成功している。

 スウェーデン王立科学アカデミーはこれらの功績について「生命はタンパク質なしでは存在できない。タンパク質の構造を予測し、独自のタンパク質を設計できるようになったことは、人類にとって最大の利益をもたらす」と評している。



引用サイト: こちら
『別れを告げない』は作家と映像作家、映像作家の母親の3人の女性が主に登場する。雪や鳥といった繊細で象徴的なイメージが重なり、各人が持つ痛みが哀悼に連なっていく。「軽くて柔らかいものを通じて、事件の中に入りたいという思いがあった」と述べた。

 「4・3事件」は1948年、米軍政下の済州島で、南北分断に抵抗した武装蜂起への武力弾圧。3万人以上の島民が虐殺されたといわれる。過去にハン・ガンさんは『少年が来る』(井手俊作さん訳、クオン)で、光州で起きた民主化抗争「光州事件」(80年)をテーマにした。「二つの小説はつながっている。『少年が来る』も苦痛を通過して愛に向かう小説だったが、今回はより愛に焦点が当てられた作品だと思っている」と話した。『別れを告げない』は、仏文学賞のメディシス賞とエミール・ギメアジア文学賞を受賞している。【棚部秀行】
引用サイト: こちら


ノーベル平和賞に日本被団協 授賞理由、核廃絶へ「証言してきた」
ロンドン=藤原学思2024年10月11日 18時01分




 日本のノーベル平和賞受賞は、1974年以来50年ぶり。

 平和賞はアルフレッド・ノーベルの遺言に基づき、「国家間の友愛、常備軍の廃止や縮小、和平会議の開催や促進のために、最も大きな、あるいは最も優れた活動を行った者」に贈られる。これら三つの分野で昨年までに、111人と30団体が受賞してきた。

 ノーベル委員会はノルウェー人5人で構成され、「ノルウェーと北欧諸国の外交政策全体を特徴付ける理想主義と現実主義の混合物を反映する」(2001年、ルンデスタッド前委員会事務局長)といわれる。近年は特に、現実の出来事に関して前向きなメッセージを与えられるような受賞者を選んできた。

 女性の抑圧が大きな課題となっていた昨年は、獄中にいるイランの人権活動家、ナルゲス・モハンマディさん(52)が受賞した。

 今年の平和賞は、1月末までにノミネートされた計286候補(197人、89団体)から選ばれた。候補や推薦者は原則として50年間は公表されない。

 賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5700万円)。授賞式はノーベルの命日にあたる12月10日にオスロで開かれる。(ロンドン=藤原学思)
引用サイト:朝日新聞   こちら

関連サイト:ノーベル平和賞にNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」
受賞理由に「北朝鮮の脅威」
2017年10月6日 19:49
【ロンドン=小滝麻理子】ノルウェーのノーベル賞委員会は6日、2017年のノーベル平和賞を国際非政府組織(NGO)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与すると発表した。核兵器禁止条約の採択に向けた取り組みを評価した。ノーベル賞委員会は「北朝鮮のように核兵器獲得を目指す国が増えている」と授賞の背景を説明した。

ICANは2007年に設立。スイス・ジュネーブに本部を置き、世界約100カ国のNGOからなる。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)とも連携し、核兵器廃絶を目指し、核保有国を含めて各国政府への働きかけや一般に向けたキャンペーンを進めてきた。

ノーベル賞委員会はICANが「核兵器がもたらす人類への壊滅的な結末への注目を高め、条約を通じた核兵器廃絶の実現に画期的な努力をした」と評価した。受賞決定後に記者会見したICANのベアトリス・フィン事務局長は「各国は核兵器廃絶を宣言すべきだ」と述べた。
引用サイト: こちら

関連日記:2023.03.05の日記  第五福竜丸   こちら

関連サイト:ノーベル平和賞、日本の安保には逆風も 政府・与党首脳は相次ぎ祝意コメント
日本は唯一の被爆国として核廃絶を訴えつつ、現実には米国の核抑止力に依存するジレンマを抱える。政府は米国との緊密な連携で拡大核抑止力を維持しつつ、核兵器国と非核兵器国の「橋渡し役」となることで、将来的な核廃絶を目指す立場をとってきた。

一方、被団協は核抑止政策そのものを認めておらず、政府の抑止力維持の取り組みを厳しく批判してきた。「核兵器禁止条約」に関しても、被団協が政府に参加を求めるのに対し、政府は慎重な立場を崩していない。同条約には核兵器国が参加しておらず、現実的な進展が見込めないためだ。

核廃絶を訴えた岸田氏ですら、被団協の主張からは距離を置いてきた。一方、石破茂首相は米シンクタンクへの寄稿で米国との「核共有」の検討を提起するなど、むしろ核抑止力の強化論者だ。

立憲民主党の野田佳彦代表はさっそく、首相の核共有をめぐる寄稿を踏まえて「被団協の取り組みと逆行するリーダーだ」と攻撃した。今回の授与により、国内外で核抑止力を否定する議論が勢いを増すことになれば、日本政府の外交・安全保障政策にとって必ずしも好ましいことではない。
引用サイト: こちら

関連日記:2024.09.28の日記  アジア版NATO寄稿   こちら


日本海新聞 1012

追記 1018
露外務省報道官、被団協のノーベル賞受賞巡り「原爆投下した米国の責任が追及されていない」と主張  読売新聞   こちら
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は16日の記者会見で、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞決定に関連し、「ノーベル賞委員会はこの数十年、米欧諸国に支配され、政治的な目的のために利用されてきた」と一方的に主張した。

 ザハロワ氏は被団協の受賞に関する直接的な評価は避けつつ「ソ連時代の子供は皆、広島や長崎で何が起きたか知っていた」と述べ、学校教育で原爆の被害を学ぶ機会があると強調した。原爆について「米国の明白な過失を思い起こさせるようなことは何も語られない」と指摘し、投下した米国の責任が追及されていないとの考えを示した。

 ウクライナ侵略を理由として、広島市や長崎市が毎年8月に開催する平和式典にロシアの駐日大使を招待していないことにも触れ、「ここ数年招かれていない」と不満を示した。

日本被団協の受賞「とても重要」 核軍縮にあたるオーストリア外交官
 ――日本被団協への平和賞授与をどう受けとめていますか。

 「非常に賢明で素晴らしい決定です。核戦争のリスクは、これまで以上に高まっています。核軍備競争の再燃という力学が働いており、実に危険な展開です。来年は広島と長崎で核兵器が使われてから80年、国連創設から80年です。核軍縮は国連創設の主な目的の一つですが、我々は今、間違った方向に進んでいます。こうした今日の状況を考えると、核兵器の恐ろしさを自ら体験した日本の方々の受賞はとても重要な意味を持ちます」

 ――日本被団協の活動をどのように評価しますか。

 「私たちは長年、被爆者の方々と密接に仕事をしてきました。私自身深く関わってきた核兵器禁止条約は、被爆者の皆さんの尽力に負うところが大きいです。安全保障政策では『核抑止』という考え方が重視されていますが、極めてリスクが高く、国際的な安全保障を確かなものにするには非常に脆弱(ぜいじゃく)な方法です。被爆者の方々は、核抑止が機能しなかった場合に何が起きるかを教えてくれます。我々は(核兵器という)最も恐ろしく、非人道的で破滅的な力を扱っています」
引用サイト: こちら

ノーベル経済学賞、米マサチューセッツ工科大のアセモグル教授ら3人  毎日新聞 1014
スウェーデン王立科学アカデミーは14日、2024年のノーベル経済学賞を米マサチューセッツ工科大(MIT)のダロン・アセモグル教授ら3人に授与すると発表した。授与理由は「制度の形成と国家の繁栄への影響の研究」。

 他の受賞者は、MITのサイモン・ジョンソン教授と米シカゴ大のジェームズ・ロビンソン教授。

 賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)は3氏で分ける。


ノーベル経済学賞を(スクリーン左から)ダロン・アセモグル氏、サイモン・ジョンソン氏、ジェームズ・ロビンソン氏に授与すると発表した記者会見=14日、スウェーデン・ストックホルム(TT通信提供・AP=共同)

国家はなぜ衰退するのか―権力・繁栄・貧困の起源(上・下) [著]ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン
世界には豊かな国と貧しい国がある。その差はどこから生まれるのだろうか。素朴だが、深遠な問いだ。つい決定論に走りやすいこの設問に、本書は、国家の経済的命運は経済的な制度が決める、つまり自発的な努力によって豊かになれるのだという仮説を示す。
 ノーベル賞受賞の経済学者たちから大きな反響があったこの話題の書は、著者らが15年かけた共同研究の成果を一般読者に向けてまとめたものだ。英国の名誉革命や日本の明治維新、世界各国の過去300年の歴史を「制度」という視点から解釈し直した。
 これまで国家間の格差の要因にはもっともらしい説がいくつもあった。地理説は進化生物学者のジャレド・ダイアモンドも提唱しているし、信仰や風習などの文化的要因、遺伝的要因に理由を求める説もあった。為政者無知説は経済学者に支持が多いという。本書はそのいずれも退ける。
 実証研究から浮かびあがるのは 豊かな国には自由で公平、開放的な経済制度があることだ。所有権が守られ、分配ルールが確立した社会では技術革新が起き、新産業が勃興(ぼっこう)しやすい。逆に貧しい国には権力者が国家を食い物にして民衆から収奪する経済制度がある。
 本書がもう一つ強調するのは、 経済制度を決めるのはその国の政治制度だということだ。豊かな経済をつくりあげたとしても、法の支配や政権交代が可能な民主制度の支えがなければ、結局それを維持できず国家は衰退してしまう。
 本書の制度説は、一見ごく当たり前のようにも見えるのだが、実は多くの「常識」を覆す問題提起をはらんでいる。
 たとえば米国の対中外交やイラク政策の根底にある近代化理論。すべての社会は成長とともに民主化に向かう、というこの考えを、本書は「正しくない」という。
 また近年急成長する中国などの新興国は、いずれ先進国の経済水準に追いつくだろうと多くの人は信じている。ならば日本もやがて中国に追いつかれ、賃金や物価は中国並みになるのだろうか。それまで日本のデフレは続くのか。
 本書の見解に従うなら、必ずしもそうとは言えない。中国の国家資本主義はいまは強さが目立つものの、民主化されていない政治制度のもとでバラ色の未来は描けない、と著者らはみる。私たちは中国発のデフレに極度におびえる必要はないのかもしれない。
 昨今、世の中では効率が悪い民主主義や、政府の意にそわない頑固な中央銀行への批判が絶えない。だがそれらは長い目でみるなら、豊かな経済社会の礎を築くのに必要な機能なのだ。そんな点も含め、この本には、そこかしこに論争のタネが仕込まれている。
    ◇
 鬼澤忍訳、早川書房・各2520円/Daron Acemoglu マサチューセッツ工科大学エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念経済学教授、James A.Robinson ハーバード大学デイヴィッド・フローレンス記念政治学教授。
引用サイト: こちら

国の経済発展をもたらすのは「政治制度」ではない 「ノーベル経済学賞」のアセモグル教授らに反論  1019 東洋経済オンライン
小幡 績
今日は、私の考える社会資本を、具体的な一例を挙げて説明してみよう。

先日、いつものように地下鉄に乗った。そして、よく見かける光景だが、車いすの高齢者が介助者と一緒に乗っていて、駅に着くと、駅員が車いす乗降用の板を持ってきて、降車を補助した。周りの人はこれに手を貸すか、スペースを空けて協力した。このようなことがあっても、地下鉄は20秒と遅れず発車し、順調に運行が続き、私は目的地にスマホサイトの示す時間どおりに着き、約束の場所に向かった。

「社会資本がきちんと存在している状態」とは?
社会資本がきちんと存在している社会であれば、まず、①車いすが入手可能である。②介助する人がいる。次に、③車いすの人を見かけたら、知り合いでなくとも、その場にいる周りの人々が助けてくれる。

そして、④そのニーズに気づいて、これをシステマチックに解決しようとする。⑤地下鉄の運営組織がこれに対応して、あらかじめ板などを用意する。⑥どこの車両に助けを必要とする人がいるか、その人がどこで乗降車するか、これらを認知する仕組みを作る。

⑦これを実施する担当者(ここでは地下鉄駅員)が、自分の活動をいったん脇に置いて、これを実施する。⑧この補助が、全体の地下鉄運営に悪影響を与えないようにする。あるいはある程度のロスがあっても、カバーして、持続可能なものとする。

①から⑧までを1つひとつみていこう。まず、①が成り立たなければ、大きな困難に直面する。車いすという発明が必要だし、これを生産する技術が必要で、それを購入できる経済力も必要だ。これは、社会資本の成立には、一定水準の経済発展が必要ということだ。

衣食足りて礼節を知るという言葉どおりで、学問的な実証研究でも社会資本と、1人当たり国民所得の相関は示されている。②は、雇える経済力でもいいし、家族というものでもいいし、ボランティアというものもある。徴兵制のように、ボランティアの強制もありうるが、それは社会主義的だ。共産主義なら担当の公務員を作る。これは社会のスタイルにより、さまざまだ。

③は、その社会の優しさであり、同時に平和で、他人を不必要に警戒しなくて済む社会である。いつひったくりや暴行にあうかわからないような社会では、周りを見渡す余裕はないし、隙を見せたら、別の人にやられてしまうかもしれない。

そもそも車いすで外出しようとすること自体が本人にとって危険かもしれない。一方、乗客全員がスマホだけを見ていれば、車いすの人が降りようとしていることに気づかない、いや乗っていたことすら認識していないだろう。これは別の意味で、社会資本が失われている社会だ。他人に対する完全な無関心である。

重要なのは④の「ニーズに気づいて、これをシステマチックに解決しようとする」だ。これを実現できる社会はそんなにない。日本の場合は、欧州ではこういうのがある、と誰かがプレッシャーをかけたか、駅員がそう思って、社内で上に提案したか、どういうきっかけかわからないが、いずれにせよ、そういう発議が起こる社会はよい社会だ。

すばらしいのは⑤で、これに対応できる余裕が、この組織(企業にせよ政府系にせよ)にあることが重要である。それは、ボスの度量かもしれないし、その組織の文化かもしれないし、その組織の仕組みによるかもしれない。

⑥はアメイジングだ。全社で対応しなければいけないし、駅間のチームワークも重要だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)で、情報だけは飛ばせるかもしれないが、その見込み時間どおりに地下鉄が着かないと、駅員は待ちぼうけを食うことになるし、電車がついてから対応を始めれば、この地下鉄は発車が遅れてしまう。

⑦は個人の性質にもよるが、社会、コミュニティの雰囲気による。ラッシュが続く新宿区では難しいかもしれないが、それほど混んでない郊外の地下鉄なら簡単かもしれない。さらに、その組織がどこまで時間の余裕を駅員に持たせているかも重要だ。東京メトロが10月23日に上場したら、株主が「1分でも金にならない時間は使うな!」と株主総会では表立って言えないが、内内に訪問して圧力をかけるかもしれない。⑧は、まさにチームワーク、組織文化、そして社会の総力戦である。

「今ある社会資本」を守り、育てていくことが重要
これでわかるのは以下の4つである。第1に、社会資本にはいろいろな種類がある。第2に、それは意図的に作り出すのは難しそうで、市場メカニズムからは生まれにくいと見込まれる。

第3に、それは社会毎に異なる、さらに同じ国でも部分により異なり、階級ごとあるいは所得階層ごとに異なるコミュニティが成立していれば、そのコミュニティごとに異なり、また同じ国でも時代により異なり、数十年いや10年でも、急速に失われる場合がある。そして第4に、その一方で、ゼロから作るのは難しく、また失われたものを取り戻すのも難しく、今あるものを大事に守っていく、育てていくしかない、ということだ。

経済学の泰斗であった宇沢弘文・東京大学名誉教授によれば、彼が言う社会的共通資本とは、自然環境、社会的インフラ、そして制度資本の3つとされる。

ただ、自然環境と社会インフラはこれまでの経済学やそのほかのところでも十分議論されているし、3つ目の制度資本の議論は重要だが、宇沢氏が例として挙げる医療制度や教育制度は、それぞれの社会の価値観に基づき、工夫して試行錯誤して作っていくしかない、と私は思うから、この三類型以外の社会資本が重要だと考える。

「株式会社の利益最大化」とは矛盾しないのか?
では、前述の①から⑧の社会資本から、上記の宇沢氏の3類型を除くと何が残るか? 社会学でいうところのsocial capital(社会関係性資本)は、①から⑧の中に含まれているが、それ以上に微妙なものがここには含まれており、それこそが重要だと考える。

もう一度上記の車いすの例をみてみよう。まず、①の車いすの入手は経済力と解釈しよう。②の介助は、親族関係あるいは経済力あるいはコミュニティの善意の助け合い、あるいは社会主義的な政府サービス(福祉とか社会民主主義的と言ってもいいが)ということで、選択肢があり、代替が可能である。だから、社会主義か資本主義か、前近代的家族制度か現代か、という問題ではない。どんな制度をとるにしても、社会資本の提供は可能なのである。制度ではなく、その奥にある何かが必要なのだ。

また、③の周囲の自発的な手伝い、は社会の力であり、これが社会学でいうsocial capitalのど真ん中にあるものだろう。

私がここで強調したいのは④の「ニーズに気づき、システマチックに解決しようとすること」だ。これこそが社会の力である。そして、どこから来るかよくわからない。どういう社会で④が豊かに生み出され、生まれない社会ではどこに生まれない理由があるのか。

さらにクライマックスは、⑤の組織的対応、⑥の現場の具体的な仕組み作り、⑦の担当者レベルの献身を含む対応だ。日本の場合は、一体的に地下鉄の運営会社によって実現されている。これができる民間企業(しかもまもなく上場する)とは、なんと素晴らしいことか。
・・・・
「形式的な経済合理性を追求しすぎない価値観」を共有
つまり、株式会社の利益最大化とは矛盾し、経済合理的な行動ではないのである。それにもかかわらず、この駅員はやりたいと思うし、この会社も、それはぜひやれと言う。これこそが社会資本があるということだ。

そして、これは、株式会社の形式的な経済合理性を徹底的に追求しすぎない、多少の精神的余裕が駅員にも経営者にも、そして組織にもある、ということから生まれていると私は思う。

こういう株式会社のほうがいいんだ、ということが、社会構成員全員(もちろん株主も含んだ)の価値観として共有されていることにより、生み出されているのだ。この価値観が社会で共有されることが重要なのだ。それは、感性あるいは最近の日本語で言えば、人間力から来ていると思う。

最後に、⑧の車いすで生じた時間的なロスなどを組織でカバーする力、これがいちばん偉大なことだ。さまざまな要素の集合体、蓄積というよりも堆積の結果だ。社会の歴史そのものと言ってもいい。

たとえば、日本社会の時間厳守という慣習(?)も大きく影響している。誰もが「時間どおり」が重要だと思っているため、自然にこれを実現するために、無意識に社会構成員全体が協力する。無意識に全員が協力するというのも社会の歴史の堆積の結果だ。これこそ社会の力であり、この類の金にならない力に日本はあふれている。

これら、私が述べた④から⑧は、政治制度に左右されない。政治制度成立以前に存在する社会の力であり、トップダウン的な明治時代も、民主主義が進んだ戦後以降も、日本では同じく成立している。

しかし、民主主義は維持されてはいるにもかかわらず、昨今、社会への無関心、他人への無関心、袖振り合うも他生の縁、という言葉とは正反対の行動をとることが多数派の価値観になりつつある社会、これが急速に進み、日本の社会資本は減少しつつある。したがって、政治制度よりも、その奥にある社会資本、もっと根本から社会に堆積している大事な土壌の維持、豊饒化が重要だと私は考える。
引用サイト: こちら





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Last updated  2024.10.19 18:33:04
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