東方見雲録

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2025.11.25
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カテゴリ: 政経
この「石破茂ビジョン」の中身に目に通したことがないと思う。少々長くなるが、重要な文書なので全文をご紹介しておきたい。(以下全文)

コメ問題はずっと前から
米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向

米の生産調整は、昭和44年に試行され、46年に本格的に実施されて以来、これまで約40年にわたり実施されてきている。当初は予算措置として推進されたが、平成6年に制定された食糧法において、米の需給と価格の安定を図るために推進すると規定された。

しかしながら、この間、担い手の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加が進むとともに、生産調整をめぐっては、着実に実施している者が不公平感を感じている点や、担い手の自由な経営発展を阻害している点等の問題が深刻化し、農村部では閉塞感や将来に対する不安が拡がっている。

今後、世界の食料需給が中長期的にひっ迫基調で推移することが予測される中で、我が国が食料自給力を向上し、食料の安定供給を確保していくためには、私は、現在の農政、とりわけその根幹である米政策を見直し、これら生産調整をめぐる問題を払拭しなければならないと考えてきた。

以下では、現時点で得られているシミュレーション結果の分析を通じて、あるべき米政策の方向について論じていきたい。

農家の半数以上が「農政の見直し」を切望
米の生産調整については、先般行ったアンケート調査で、地域や経営規模により差異が見られるものの、農業者の59%が見直しを望んでいることが明らかになった(現状維持は25%、廃止は13%)。



このような農業者の意向を政策の選択肢として設定し、計量経済モデルを用いて将来の米価や生産量に加え、財政負担、消費者余剰等の予測を行ったのが、今回の「第2次シミュレーション」である。

今回のモデルでは、経営規模の拡大や高齢化の進展といった構造的な変化についても考慮に入れた上で、予測を行っている。

9つの米政策見直しの選択肢
シミュレーションを行ったのは、表1の生産調整の強化から廃止までの9つの米政策見直しの選択肢である。

それぞれの選択肢については、選択肢①は高い米価を維持するため、生産調整を強化し続けるものであり、選択肢②は現行の施策を続けるものである。選択肢③は農家の自主性や経営の自由度が高まるように、生産調整の仕組みを緩和する方向で見直すものであり、選択肢④は生産調整を廃止するものである。


農林水産大臣時代の石破茂氏が奮闘! 農業者の過半数が切望していた”農政改革”に向けた「石破ビジョン」とは
© 現代ビジネス

このうち、選択肢③と④では、販売農家を対象として、農家手取り価額が平均生産費を下回った場合にその差額を補てんするという新たな米価下落補てん対策を導入することとしている。また、選択肢③については、「緩和」の方法や程度がそれぞれ異なる5つの細分化された選択肢を設定した。

科学的に見る「生産調整」の効果
シミュレーションの予測結果は、表2のとおりである。

市場価格は選択肢により大きく異なるが、いずれのケースも補てん後の農家手取り価額は全国平均の生産費(規模拡大により、現在の13872円/60kgから10年目には11660円/60kgに減少すると予測)がカバーされる水準となっている。財政負担は、選択肢①の「強化」と選択肢④-2の「廃止」の場合に、非常に大きなものとなっている。



麦や大豆、米粉用米、飼料用米といった転換先の作物については、主食用米と同等の所得が助成されるケース(選択肢①、③-1から4)では生産が拡大するが、選択肢④の「廃止」の場合には、生産が消滅し、水田面積は大幅に減少する。

上記のとおり、選択肢①の「強化」のケースは、財政負担や消費者余剰等の面で、採りうる選択肢とは考えられない。また、選択肢④の「廃止」については、適切な政策展開により構造改革が進み、農家の経営判断に基づき需要に応じた生産が行われる環境が未だ整わない状況の下で、直ちに採るべき選択肢として適当であるとは考えられない。


農林水産大臣時代の石破茂氏が奮闘! 農業者の過半数が切望していた”農政改革”に向けた「石破ビジョン」とは
© 現代ビジネス

また、選択肢②の「現状維持」の場合には、財政負担はそれほど増えないが、現在の施策の継続では生産調整に対する不公平感、閉塞感が解消されない上、構造改革は遅々として進展せず、選択肢①や④と同様に選択肢としては適当でない。



米価下落補てん対策の導入により、生産調整を実施する農家には生産費が補てんされる一方、従来の経営所得安定対策が継続されることで、担い手は引き続き収入の減少に対する手当てがなされる。

この選択肢③の予測結果から、2つの重要な点が示唆される。

所得補償は実現可能…⁉
第1点は、多くの生産者が望む所得補償をこの新たな米価下落補てん対策により、過大な財政支出(納税者負担)を伴うことなく、かつ将来的にこれが逓減される形で実現できる点である。

すなわち、稲作の経営規模拡大の進展に伴い補てんの基準となる平均生産費が低下することが想定されるが、この生産費の低下スピードと生産調整の「緩和」による米価下落のスピードを調和させることにより、財政負担を抑えることが可能となる。

さらに、緩和の程度により、米の市場価格や財政負担、消費者余剰が連動して変化することになるが、これらの中から状況に応じて政策選択を行う際に、一定の予測とその効果を示すことが可能となり、納税者、消費者や生産者の理解を得ることに資するものになると考えられる。

米価下落対策に見えた希望
第2点は、この新たな米価下落補てん対策と従来の経営所得安定対策が両立し得るという点である。経営所得安定対策は、いわゆる品目横断的対策として、平成19年度より導入された担い手向けの対策である。この対策は、補てん基準が5中3平均(過去5カ年中、最高と最低を除く3カ年の平均)の価格であることから、米価が年々下落する局面では基準自体が下がり、補てん額も徐々に減っていくこととなる。

他方、新たな米価下落対策は、規模拡大の進展により補てん基準は徐々に低下していくものの、生産費を確保できる補てん水準が維持されることで、中長期的な経営の安定化を図ることが可能となる。

さらに、米の場合には、中・小規模農家の占める割合(担い手以外の販売農家による作付が全体の約4割)が大きいため、担い手だけでなく、それ以外の販売農家も対象にする対策とすることで、生産調整に関する不公平感を解消する上で十分な効果が期待できる。

選択肢③では、この経営所得安定対策と米価下落補てん対策の2つの対策が補完し合うことで、生産調整を実施する農家が適切に報われるとともに、大規模農家への経営の集約を促し、水田農業の構造改革を加速することが可能となる。

また、消費者負担型から納税者負担型の政策へのシフトを図る上で、消費者余剰と財政負担のバランスをいかに取るかが重要であるが、この選択肢③では、現在よりは多くの財政負担が必要となるものの、消費者余剰は、特に選択肢③-4や③-5のケースでは、10年目でも現在より増加することになる(表2の※印参照)。

さらに、選択肢③-4では、麦、大豆や米粉用米、飼料用米等の生産も増加し、水田面積の減少も抑制される。私は、このような政策こそが、米政策のあるべき姿であると考えている。

解決には“科学的な予測”が不可欠
今回お示しした分析結果は、私が、省内に設置した「経済分析チーム」に命じて、「第2次シミュレーション」として進めてきたものであり、政府内の正式な手続きを経て公式なものとして確立された段階のものではないが、このようなシミュレーションの手法並びにその妥当性については、私なりに得心し、首肯しうるものであると考えている。

顧みれば、平成13年8月の自民党総合農政調査会において、私が仮に生産調整を廃止したらどうなるのか、シミュレーションを行って議論して欲しいと発言し、農林水産省内でその作業が行われた。それ以来、このような客観的かつ科学的な予測が行われてこなかったこと自体が、現在の状況を招来した大きな要因であると認識している。

昨年(平成20年)9月に農林水産大臣に就任して以来申し上げてきたように、採りうる政策の選択肢の幅は極めて狭く、与えられた時間は余りにも短い。


今回のシミュレーション結果が示したことを糧として、今後、透明で開かれた農政が、生産者、消費者、納税者共通の理解の下に展開され、我が国農業が持続可能性を維持するのみならず、あらゆる面で世界で最も恵まれた潜在的条件を活かし、飛躍的に発展することを願ってやまない。

   平成21年9月15日 

   農林水産大臣 

   石破 茂

引用サイト: こちら

関連サイト:石破政権のコメ増産方針「間違いとは思わない」 首相退任後初、地元で国政報告会
 日本海新聞  こちら  1122
 農業政策に関し、食料自給率の低さと耕作放棄地の増加を問題視。特に過疎が進む中山間地の水田を守るには輸出拡大が鍵だと指摘した。コメ増産の方針を転換した現政権を念頭に「その時さえ良ければ良いという話ではない。どう山を守り、国を守るかに直結する話だ」と訴えた。

 首相在任中の演説では、警護上の理由で聴衆との距離を取らざるを得なかったことを振り返り「全く反応が見えなかった。首相と国民との距離が遠くなったのが本当に良かったのかなと思う」と葛藤を明かした。

 昨年9月の党総裁選について、「水月会(石破派)も解散し、出るのはやめようと思っていた」が、世論調査で自身への高い支持が続き、考えを改めたと明かした。「期待がある以上、それに応えないのは無責任ではないかという思いがあった。地元への恩返しの気持ちもあった」と述べた。(西山恭平)





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Last updated  2025.11.25 09:00:06
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