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2023.12.09
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着く。城はさらに山の中に頂上を目指す。樹木の中に城の遺構があり、説明板も設置されており、山の頂上の平地が城の中心部 で、南に浜名湖を望み、すぐ北側の地下には新東名高速道路が通っている。
井伊谷を東北方面から望む一際高く聳える山、標高466.8mの三岳山の山頂部に、三岳城は展開する。西側の山頂部には主郭を 構え、東側に続く山をも城域とし、実に広い空間に城館が構えられている。主郭の西側および東側の山の東北方向のそれぞれに 横堀・堀切が普請され、城域が画されている。主たる尾根筋が西側および東北方向に伸びていることもあるが、その方向からの 侵入を警戒する構造になっている。山頂からの景色は抜群で浜名湖を見渡すことができ、南北朝初頭に三岳城に籠城した宗良親王 が「李花和歌集」に、「はまなの橋かすみわたりて、橋本の松原湊のなみかけてはるくとみわたさるゝあした夕のけしき」と遠く 橋本の松原までの風景を読み込んだ場所は、まさにこの地と実感できる。眼前には三方ヶ原も広がる。また井伊攻めに参戦した 松井助宗が「遠江くに井伊城前の三片原の御合戦において」という空間認識を軍忠状に書き記したのも、山頂よりの景観が納得 させてくれる。まさに風光明媚の地である。 
<遺構>
現存する遺構のなかで、先に除かれると指摘した一部の遺構とは、山頂西側の横堀付近である。まず注目すべきは横堀の規模 の大きさである。そして随所に岩盤を切った壁・竪堀さらには石垣を見ることができる。石垣は粗割で野面積という戦国期らしい 石垣であるが、一部には登り石垣を思わせる遺構もあり、精査が期待される遺構である。また岩盤の穿った竪堀は他にあまり例を みることのできないほどの貴重な事例である。普請に際して多くの石工が投入された事は確実である。この付近の遺構は、石工の 動員に始まり、普請にかかわる土木量が多く、遺構の規模の大きさや投入された労働力の差が顕著である。城館に石工が投入される のは戦国期以降のあり方でもあり、少なくとも南北朝時代の遺構ではありえない。戦国時代以降の改修であることは間違いない。 この横堀と石垣を中心とした主郭西側の遺構は三岳城のなかでも一番の見どころである。さらにこの西側の横堀と対をなす東側の山 の東北隅に堀切が普請されていることにも注意を払いたい。さきにも述べたとおり、城の東西に堀を普請し、城域を画すという設計が  三岳城の基本的な構造であり、石垣の有無は存在するものの、両者の遺構はおおよそ同時期に設計されたと考えられる。南北朝期に 先行する城館があったことを考えれば、山頂を中心としたであろう山城の構造から、東西の堀切で区画された構造へと城館が改修 されたと考えたい。あるいは東西に堀を普請する段階、そして西側のみに石垣を普請する段階の二段階を考える必要があるかも しれない。この点の検証については、考古学的検証を必要とするものであり、後の課題として指摘しておきたい。南北朝時代の構造 からの変更という改修の年代については、文献史料からあきらかでにできない。ましてや二段階になるかどうかは課題となるが、 政治情勢や残る石垣の状況、すなわち遠江国での石垣導入を踏まえるならば、現在に伝えられる構造への改修は、あまり古くまでは 遡りえないであろう。あるいは天正13年(1585)前後ではなかろうか。天正12年9月に小牧・長久手の戦いが終結し、天正14年(1586) 10月の徳川家康が上洛するまでの間、徳川領国の境は不安定な状況にあった。事実、天正13年12月には豊臣勢が三河国に至ったという 
情報がある。この時期に井伊谷は徳川領の三・遠国境の重要地点となっていた。ここに、三岳城が取り立てられる理由がある。全面的 な築城ではなく、西向きだけの石垣などの普請という部分的な様相は、この緊急事態への対応だったことを物語っているのでは なかろうか。この天正13年前後の石垣普請はひとつの解釈ではあるが、三岳城が南北朝期に取り立てられつつも、現在に伝えられる 遺構が戦国時代のものであることは間違いない。 






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最終更新日  2023.12.09 05:55:52
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