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2021.03.07
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カテゴリ: 美術


さて、せっかく近くに来たのでと、モール内にある書店を久々にぶらぶらしていたところ、新書コーナーで表題の本に行き当たりました。泰西名画の解説といえば、通常は美術史家が専門的な視点から蘊蓄を傾けるのが定番ですが、中野京子さんは(そのような専門知識を「わきまえ」つつも)、絵画の内容を現代の日常感覚で捉え直すという点が斬新で、時には偶像破壊的な効果すらもたらします。


例えば、ラ・トゥールが描く「ポンパドール夫人」、言わずと知れたルイ15世の寵姫ですが、本書では「ロココのキャリアウーマン」というキャッチフレーズの下、以下のような卓抜な解説を加えています。曰く、
この顔は時空を超えている。完璧に整った目鼻立ち、薄化粧、知的で賢明で、バリバリ仕事のできそうな女性。高層オフィスビルの重役室に座って部下に指示を出していたとしても、なんら違和感はないだろう。美貌と才覚でのし上がる女性の典型に見える。そしてそのとおりだった。彼女こそロココ時代の華やかなフランス宮廷で、ルイ十五世の公式寵姫として政治までも動かし権勢を誇った、マダム・ド・ポンパドゥールその人なのだ。
その中野さんが、メンツェルの筆になる「フリードリッヒ大王のフルートコンサート」を取り上げているのを見て、何が書いてあるのか知りたくなりそのまま購入。興味津々で中身を拝見しました。

まず冒頭のタイトルは「ロココ時代のモンスター」、主役が大王であることを示していますが、副題には「憂のチェンバロ奏者」と、大王のフルート演奏で伴奏を務めるエマニュエル・バッハに言及、扉絵の画像もまさにチェンバロを前に大王を向くエマニュエルの部分を拡大したもの。続く記事には、
どことなく心ここにあらずの憂い顔でチェンバロを弾いているのは、かの大バッハの息子カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ。才能を見込まれて宮廷音楽家となったものの、雇い主の王の個性が強烈すぎる上、彼の伴奏ばかりでストレスも溜まる。我慢は二十七年。王には引き留められたがそれを振り切って自由都市ハンブルクへ逃れ、のびのびと作曲や音楽監督に専念し、当時としては長寿の七十四歳まで生きた。
とあり、宮仕えの辛さを現代の感覚でズバリ。

続くページ前半ではフリードリッヒ大王の生涯やその事績に簡潔に触れながら、彼がなぜフルートを愛するようになったかが語られます。ところが後半では、ヒトラーの「退廃芸術」を例に、「権力者が芸術に関与しようとするとろくなことにはならない」と切り返し、宮廷音楽家の待遇に大きな格差が設けられていたことをスッパ抜きます。曰く、
…音楽はフルートとオペラが上位で、ヴァイオリンやチェンバロは伴奏楽器にすぎないと見做して薄給にとどめ、そうした己の判断(偏見)に微塵も疑いを持たなかった。扉絵のバッハが浮かぬ顔なのも当然だろう。
というわけで、続く文中ではフルート教授のクヴァンツがバッハの7倍近い報酬を得ていたことを暴露します。(うーむ、いくら何でもこの差は酷い…)

とはいえ、この解説で亭主にとって最も有り難かったのは、絵の中に登場する人物が誰であるのか、ほぼ全員の名前が紹介されていた点です。文章だけでは分かりにくいので図にしてみました。

A: ビーフェルト(作家、ベルリン・フリーメーソン支部長)
B: ゴッター(ベルリン・オペラ総監督)
C: モベルトゥイ(科学アカデミー会長)
D: グラウン(宮廷楽長、オペラ作曲家)
E: フリードリッヒの妹アンナの女官
F: フリードリッヒの妹アンナ

G: フリードリッヒの姉ヴィルヘルミーネ
H: ヴィルヘルミーネの女官
I: シャゾー(軍人)

J: ベンダ(ヴァイオリニスト)
K: クヴァンツ(フルート教授)

ちなみに著者は、クヴァンツの様子を「後ろ手で壁に寄りかかり、足を交差させているのは疲れているせいだろうか。まさか弟子の腕前に脱力したわけではあるまいが、何やら複雑な表情なのは間違いない」と、深読みを披露しています。

画家のメンツェルは19世紀後半に活躍し、挿絵画家として名を馳せたとのこと。この絵についても実際にサンスーシ宮に何度も赴くなど丹念な調べをもとに描いたようなので、想像とはいえそれなりの真実を伝えているのかも?





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Last updated  2026.02.12 20:29:44
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