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2026.04.19
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カテゴリ: 音楽


その冒頭、コラム子は指揮者の鈴木秀美氏率いるこの楽団が、シューベルトの第8番「ザ・グレート」で鮮烈な演奏を聴かせたその裏で、運営主体から「補助金打ち切り」という非情な通告を受けていたことに思いを馳せ、2028年に三宮にオープンする1800席規模の新ホール建設を背景に、市が「稼げぬ楽団は不要」と切り捨てたのではないかと厳しく指弾しています 。文化とは数百年の命を「継承」する営みであり、民間には不可能な長期的支援こそが公金の役割である、という主張は、一般論としては至極まっとうなものです。

しかし、一歩引いて現代日本の足元を見つめたとき、この正論だけでは突破できない「壁」の存在を無視することはできません。それは、この国が直面している凄まじい人口減少とそれに伴う公的資金の減少という現実です。

現在、日本の人口は年間90万人という驚異的なペースで減少しています。これに伴う税収の減少は避けられず、一方で高齢者比率の増大は医療費や介護福祉費といった社会保障費を膨れ上がらせ、国や自治体の財政を硬直化させています。

このような状況下で問われているのは、実は「芸術・文化の価値」そのものではありません。限られた予算を何に割り振るかという「優先順位」の問題です。老朽化したインフラの整備か、文化の継承か。 一床の病床か、一回の定期演奏会補助か。

残酷なようですが、公金が投入される以上、芸術・文化支援は常に他の切実な民生支出との「ゼロサムゲーム」の中に置かれています。この状況下で、単に「文化は大事だ」という正論を叫ぶだけでは、当事者以外を説得することは難しいのが現実ではないでしょうか。

バブル期までの右肩上がりの経済成長の下で肥大化したクラシック音楽界のシステム(東京にはプロオケが9団体もある!)や、日本各地で建設された巨大なホールといった箱物は、だいぶ前から「過去の遺物」になりつつあります 。さらに、前世紀末ごろからの「教養主義の没落」に伴って 聴衆も「分衆化」 し、ハイ・カルチャーとしてのクラシック音楽の相対的な訴求力も低下しつつあります。神戸市が1800席の客席を埋めることに汲々とし、集客力のない楽団を切り捨てる姿勢は確かに短絡的ですが、楽団側もまた、人口減少・縮小経済・聴衆の好みの変化、という不可避な流れの中で、時代とともに移り変わる自分たちの役割や意義をどこまで意識していたでしょうか?

神戸の例のみならず、いま日本のクラシック音楽界全体として必要なのは、縮小していく社会の中で、いかに文化の質を落とさずに規模を縮小させるか。いわば「華麗なる衰退」をデザインすることではないかと思います。(その点、採用広告に「衰退業界へようこそ!」というコピーを掲げる新日フィルは真っ当な自己認識を持っていると言えます。)

映画の世界でも、公的支援が経済効果の見込める大作に偏っていることについて是枝裕和監督(低予算で佳作を作り続けている)が懸念しているとのこと。しかし、文化を守る側も、公金という縮小するパイの「優先順位」を勝ち取るためのロジックを磨くだけでなく、資金源自体を多様化することが待ったなしだろうと思われます。(実は全く同じ状況が自然科学における基礎研究の分野でも起きています。財務省曰く、「基礎研究が大事であることはよく承知している。しかし、国の政策の中では最優先順位ではない。」)

神戸市長が立ち上げるという文化芸術支援のフォーラムが 、単なるガス抜きに終わるのか、それとも「持続可能な文化の縮小形」への手がかりを見出す場になるのか。日本の文化政策の命運は、正論のその先にある、シビアな「解決策の提示」にかかっていると言えるでしょう。






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Last updated  2026.04.19 17:11:33
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