HP de るってんしゃん

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2006.08.31
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カテゴリ: 伊坂幸太郎
『秘密。私と私のあいだの十二話』(メディアファクトリー) 「ライフ」 が収録されている。これは 『ダ・ヴィンチ』 2003年12月号~2004年10月号およびODNサイトの、日本テレコムSHORT THEATER「心をつなぐ言葉たち」に掲載したものを一冊にまとめた文庫本である。

本の内容は、裏表紙の文章を借りると・・・

レコードのA面・B面のように、ひとつのストーリーを2人の別主人公の視点で綴った短編12編。たとえば(中略)など・・・・・・。出来事や出会いが立場の違い、状況の違いでどう受けとめられるのか、言葉と言葉の裏にあるものが描かれた不思議な一冊。

伊坂幸太郎の他に 吉田修一・森絵都・佐藤正午・有栖川有栖・小川洋子・篠田節子・唯川恵・堀江敏幸・北村薫・三浦しをん・阿部和重 という、半分以上が直木・芥川賞を受賞の豪華作家陣による贅沢な短編集である。正直、この本について言えば、伊坂氏よりも森絵都や三浦しをんの方が腕が立っていた印象を受ける。期待していたが故そう思うのだろうけど。それでも、決して悪くはない。 「ライフ」 は、穏やかでカラリと明るくて、少し粋で軽い雰囲気の、伊坂幸太郎らしい良い空気を持った作品であったように思う。

納入したシステムのトラブルで残業中のシステムエンジニアとサッカーの国内プロリーグで仙台に遠征中のミッドフィルター、小学校からの友人同士である2人は電話で話をする。それを、A:システムエンジニア編 B:ミッドフィルダー編としてそれぞれの視点から描いた作品が 「ライフ」 だ。この作品の重要キーワードは 「繋がり」 『ラッシュライフ』 の志奈子の絵「つなぐ」を思い出す人がいるかもしれない。 「人生はきっと誰かにバトンを渡すためにあるんだ」 、それをショート・ショートにしてすごく簡潔に表したような感じである。まず、A面・B面というコンセプトからしてそうだ。たとえ別主人公の視点にしていても、その2人、その2つの話は強い繋がりを持っている。次に台詞。 「そういうもんだ。うまくいかないこともあるよ。」 という何だか気の利いたシステムエンジニアの口癖がA・B両方に出てくるのだが、これが本当にレコードだったらサビに当たる部分なのかなと思う。この許しを与えてくれるような優しい台詞が両面に存在することによって、作品の空気が一つに繋がっている。そして、他の伊坂作品との繋がり。プログラムの以前の担当者の伊藤とは、 『オーデュボンの祈り』 の伊藤のことだろう。ファンにとっては思わずニヤリとしてしまう嬉しい箇所だ。この作品に限らず全体を通して 「繋がり」 を前面に押し出した本であった。

上に他の作家の方が優れている印象を受けたと書いたが、伊坂幸太郎は単にショート・ショート向きではないのだと思う。稿が短すぎて本領発揮できないまま終わってしまっただけなのだ。と、なぜ私がフォローをしているんだという感じもするが、この本を読んだだけで12人の作家陣の力量を分かったつもりになってはいけないということである。でも、面白い本には違いないのでぜひ読んでみてね。


秘密。





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Last updated  2006.08.31 17:44:26 コメントを書く
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