ひーちゃんのゼミナール 名古屋産業大学(現代ビジネス学科)・大学院環境マネジメント研究科)現代の社会・経済・環境・芸能・スポーツ・宇宙

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2021.09.17
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カテゴリ: 推理小説
お断り:この推理小説は予告なく加筆修正することがあります。

「羨ましいわ」
 缶ビールを、部屋に備え付けのグラスに移し替えて、蜜柑は真佐子に言った。
「何が?」
と、真佐子は一応聞き返して、グラスの半分を空けた。蜜柑は、あまりアルコールを嗜まない父親にはにずに、瓶ビールなら中瓶2本は軽く空ける。コロナ禍の中、アルコールを出す飲食店は皆無で、ここは捜査に便乗して、ストレスを発散させようと企んだところだ。
「だって、真佐子さん、仲村先生と仲がいいんですもん」
 眠くなったら、ベッドに潜り込めばいいし、明日の朝食は定食だけど、自炊をする必要もない。
「私ってわがままでしょ、あの人、私に合わせてくれるんですよ。私っていい気になっているかしら?」
 真佐子は、テイクアウトで取った餃子を、大事そうにつついている。

 真佐子は、宿泊に誘ってくれた蜜柑の真意を察して聞いた。
「ええ、まあ、いるにはいるんですけど、本気かどうかもわからないし」
「どちらが?」
「もちろん」
「わたし」
「当たり」
 二人はどちらからともなく笑い出し、大声で笑った。
「わたしも同じよ」
 真佐子が続けた。もう、缶ビールの大瓶が空になっている。冷蔵庫から2本目を取り出して、並々と注いだ。
「でもね、蜜柑さんと違うのは、ごめんなさいね、私たちの間には、明日がないの」
蜜柑には、この真佐子の言葉が理解できなかった。でも理解できないままにした。

「羨ましいわ」
 蜜柑は口を挟んだ。
「でもね、仲村さんは、大袈裟ですけど、なぜ、私たちが別れなければならなくなったのか、言ってくれないの」
「真佐子さん、その秘密をわからないままにしておきたいのでしょ」
「図星」

「仲村さん、私の弱みを握っているのかしら」
「仲村先生は、そんな人ではないと思います。きっと真佐子さんの幸せを考えて」
 蜜柑は、ふと脳裏に優柔不断な彼氏の顔がかすめた。
「島根の海辺で偶然再会されて、鳥取砂丘でお互いを確認されたとか、パパから聞きました」
「ええ、それはもう、半信半疑というか、心臓が飛び出るようでした」
「でも、記憶は失われていたのでは。よくわかりましたね」
「仲村さんのことは、姉から聞いていましたので。もしやと思い、イニシャルの編んであるハンカチを渡したのです」
「再開する運命だった?」
「そうかもしれませんね」
「蜜柑さんも、出会いは神様がくれたものと思って、大事にしてくださいね」
「はい、私もハンカチを渡します」
「ハハハ」
 真佐子と蜜柑が、酔いに任せて、おのろけを言っている間に、第三の殺人事件が実行に移されようとしていた。真佐子と蜜柑の会話は、深夜まで続いた。
(続く) ​ 目次へ





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最終更新日  2021.09.18 08:30:20


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