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2004.08.22
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「Ciao!」


『Ristorantee Pizzeria da IVO (リストランテエピッツェリアダイーヴォ)』

恵比寿から明治通りに向かってすぐの場所に位置する。

日曜日の18時。

我々が最初の客だったらしく、まだ店内にはのんびりした雰囲気が流れていた。

こちらとしては珍しく、予約もせず来てしまったが、ギャルソンは一通り店内を見渡し、窓際の席に案内をした。


Kと二人席に向かい合って座るのは、一体何ヶ月ぶりなのか。
今更ながらどんな表情をしたらよいのか分からなかった。




********


Kの車を最後に見たのは、半年以上も前。

桜のつぼみも膨らむよりもずっと前のことだった。

汐留のビルの前で私を降ろし、いつもの音を響かせて立ち去った、フォレストグリーンのMG。

その車を次に見る日が、まさか半年以上も先になるとは思いもよらなかったあの日。

人生の中で結構最高なヴァレンタインの日を過ごした翌日のことだった。

またすぐ明日にでも会えるよ、という笑顔でKは、


「それじゃあ、よい一日を。」


といい、私とROCHASのGLOBEの香りだけを残し、音を響かせて、走り去っていった。


しかしその後、会う、という約束が守られたことはなかった。

待ち合わせ時間を過ぎてから鳴る、手元の携帯電話の音に、落胆しながら、電話に出る。



もはや聞きなれたフレーズになっていた。


桜の花が咲き、散り、そして、初夏の風が吹いても、彼が待ち合わせの場所に姿を現すことはなかった。

電話で伝えられる、その言葉だけが私には、唯一の拠り所あり、それを信じるしかなかった。
否、信じたかった。

たとえ、たった一言でも。




そして電話の最後にはいつも、

「また電話するね。」

その”また”がいつかも分からず、心配だった。
また、は、ときによっては1週間後のこともあったが、1ヶ月も後、ということも少なくなかった。

いつも電話を切った後に、一体、いつ、が何時(いつ)なのか聞けばよかった、と後悔した。



そんな状況だったから、眠れない夜は何ヶ月も続いた。

携帯電話の着信音が鳴る度に、どんな夜中でも跳ね起きて、携帯の画面を見た。

いたずらメールの着信には、怒りを感じていた。

何一つ約束を守れない彼。
もう、いい加減、愛想を尽かさなきゃいけないのに、尽かすことができなかった私。


どっちもどっちだった。

このままじゃあいけない、と思った。
精神的にも、体力的にも、限界だった。

ただ、私に足りなかったのは”現実”に直面する勇気。

”その人が、もはや自分を愛していない”、という現実。。。


やがて数ヵ月後、約束時間を1時間過ぎて現れたその人に、自分の正直な気持ちを伝えた。


地面がぐらぐらする思いをした帰り道だった。

でも、心のどこかでこの上ない安堵感が存在していた。

その日、数ヶ月ぶりに、途中起きることもなく、眠った。
悪夢や不安に襲われることもなく、昏々と眠った。


*********


「お飲み物はいかがいたしますか?」

渡されたメニューの一文字一文字を目で追いつつも、何も読んでいなかったことに気づいた私は、急いでメニューを開きなおす。

私が言葉に出すよりも先に、向こう側から声がした。
「ではスパークリングを。僕は運転なので、ガス入りのお水で結構です。」


思い出すほどの思い出の数がないことに愕然としながら、目の前のグラスを見つめた。

この気泡のように、ほんの一瞬の、輝かしくもはかないものだったのだろうか。。。

視線の高さに上げたグラスを口元に運ぶ。

Extra Brut。

咽喉に落ちていく、華やかなほろ苦さに、思わず苦笑した。


そしてテーブルの上の最初の一皿。
白いモッツアレッラチーズと、まぶしいほどの明るい色のオレンジスライスのサラダ。

その名も「ソフィアローレンのサラダ」。

当然、愛に生きてきた女優、ソフィア・ローレンに思いを馳せる。

骨のがっちりした、筋肉のうっすらついた足を包む、ハイヒールに、子どもながらに憧れていた。
マルチェロ・マストロヤンニ、だんなていう長ったらしい名前だって、このひとが愛した男性だったから、憶えたのだと思う。

生涯、愛を貫いてきた女。
それがどんな結末を迎えようと、けして後悔せず、堂々と生きてきた女。

そして。

過去をひきずらない女。


私が彼女に及ばないことは百も承知だ。

でも、彼女のような、潔い生き方、愛し方をしていきたいと思う。

人生は、たくさんのほろ苦さがあるから、わずかながらの幸せなひと時は、甘い生活、そう、「Dolce vita」に感じられるのだろう。


そして、視線を戻した先の、目の前にいるそのひとは、もはや、見知らぬ人であるかのような、不思議な感覚におそわれた。



************


本日のワイン

San Vincenti
『STIGNANO 』
タイプ : 赤
ヴィンテージ : 2000
ブドウ品種 : サンジョベーゼ90% メルロー10%

「スーパータスカン」だなんていう恥ずかしい言葉は、あまり好きではありませんが、世間ではそうともいう(らしい)。
私はあまりイタリアワインには明るくないんですが、(他もわからないけど・笑)こりゃあ、なかなか美味しかったです。

By the Glassで飲めるワインがこれとBurunello Di Montalcinoとあって、即答でなんとなくこちらにしてしまった。。。

こちらのお店はナポリのお料理がメインですが、お肉のグリルの盛り合わせとあわせて飲んで、美味しかったです。


************

今日の日記は、ほかでもない、尊敬するユウリィさんの冴えた文章に触発されてがんばってみたが、所詮、私の筆さばき。
お恥ずかしいばかりです。。。






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Last updated  2004.08.22 23:38:36
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