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フク爺「サチ婆さんや、おはようさん」サチ婆「ああ、フク爺さん、おはようさん」フク爺「サチ婆さんや、虫の音ってどうしてきれいなんやろうな」サチ婆「フク爺さん、昨日も月を見たんやろう」フク爺「どうしてわかるんや」サチ婆「お酒を呑んだやろう」フク爺「どうしてわかるんや」サチ婆「ふふふ、お月さん、お酒、ゆったりとしているフク爺さん」フク爺「そうやな、ゆったりとしていると虫のさえずりが聞こえたんや」サチ婆「ふふふ、ゆったりとしているからきれいに聞こえたんや」フク爺「ゆったりと?」サチ婆「そうや、せわしい人や、イライラしちる人は虫の音なんか聞こえん」フク爺「ふむふむ」サチ婆「ゆったりとゆっくりと気持ちが静かな人にだけ虫の音は聞こゆる」フク爺「ふむふむ」サチ婆「想いがある人にはより美しく聞こゆる」フク爺「想い?」サチ婆「愛する、慕う、生きる、創る、夢などの……想いや」フク爺「へえーっ、サチ婆さんはすごいことを考えるんや」サチ婆「ふふふ、キイチロウ爺様の言っていたことや」フク爺「そうやろうな。サチ婆さんが、そげえむずかしいことは考えもんよな」サチ婆「ふふふ、むずかしいことじゃありゃせん」フク爺「おお」サチ婆「人は誰しも人それぞれの想いを抱いているちっことや」フク爺「おお、それもキイロウ爺さんかな」サチ婆「うん、そしてな、爺様は『想い』だけは いつまでも大切にしようと言ったわい」フク爺「サチ婆さん、ワシ、今夜も虫の音を聞く、想いを持ってな」サチ婆「ふふふ、フク爺さんよ、秋やな」フク爺「ああ、秋や」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.28
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フク爺「サチ婆さんや、おはよう」サチ婆「フク爺さんや、おはようさん」フク爺「静かやな」サチ婆「うん、静かやな」フク爺「鳥も鳴きよらん」サチ婆「うん、鳥も鳴きよらん」フク爺「子供の声もせん」サチ婆「うん、子供の声もせん」フク爺「ああ、朝陽がまぶしいな」サチ婆「うん、朝陽がまぶしい」フク爺「空気がおいしいな」サチ婆「うん、空気がおいしい」フク爺「風も吹きよらん」サチ婆「うん、風も吹きよらん」フク爺「ああ」サチ婆「ああ」フク爺「サチ婆さんや、ワシの真似をすんな」サチ婆「フフフ、フク爺さんや、今日も元気なことあるな」フク爺「おお、ワシは今日も元気や」サチ婆「元気、それが一番や、ああ、いい朝やな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.27
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フク爺「サチ婆さんよ、昨日ん夜ん月、きれいやったのう」サチ婆「そうやね、美しかった」フク爺「まだ満月じゃねえのに美しかった」サチ婆「十三夜の月っちいうんじゃ」フク爺「十三夜?」サチ婆「そう完全な満月よりもな」フク爺「満月よりも?」サチ婆「まだ未完成のところが美しいんよ」フク爺「ふむふむ、そうかいのう」サチ婆「一葉さんの『十三夜』っち小説、知っとんや」フク爺「知らん」サチ婆「ふふふ、昔、読んで泣いたもんや」フク爺「泣いた?」サチ婆「そうや、苦労している女性が初恋の男性と偶然会うんや」フク爺「初恋の男んしと?」サチ婆「そうや、偶然の再会を照らすには十三夜の明るさがちょうどいいんや」フク爺「満月でなく?」サチ婆「そうや、また別れる、しばしの逢瀬だからな」フク爺「ふ~ん」サチ婆「華やかな満月でなく控えめな十三夜の月の明かりや」フク爺「ふ~ん」サチ婆「十三夜の月を見ると、一葉の小説を思い出すんや」フク爺「そういうもんかいのう」サチ婆「女は歳をとってもロマンチストなんや」フク爺「ロ、ロ、ロマンチスト……サチ婆さん、頭おかしゆうなったんじゃねえか」サチ婆「うんにゃ、フク爺さんは、昨夜、また酒を呑みよったんじゃろう」フク爺「アチャーア」サチ婆「オキヨ婆さんが怒っちょるで、身体を大切にせんとな」フク爺「アチャーア、サチ婆さん、また明日な……今夜は十四夜やな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.26
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フク爺「サチ婆さんや、おはよう」サチ婆「フク爺さん、おはようさん」フク爺「ふふふ」サチ婆「何を笑ちょるのですかいのう」フク爺「ふふふ、変わらんなと思ってな」サチ婆「あたりまえじゃわな」フク爺「昨日も言いよった」サチ婆「言うちゃ、今日も、明日も、あさってもな」フク爺「そうやわな」サチ婆「もうすぐ稲刈りが始まるわな」フク爺「そうやのう」サチ婆「フク爺さんの出番がなくなったな」フク爺「そうや、みんな機械でするけんのう」サチ婆「そうやな、機械の音だけの稲刈りじゃ」フク爺「便利になったけんど淋しいもんや」サチ婆「そうやのう」フク爺「サチ婆さんや、今年は面白いことをしようと思うじゃ」サチ婆「面白いこと?」フク爺「そうじゃ、息子に言うち、藁を残すようにした」サチ婆「藁を残す」フク爺「そうじゃ、藁こづみをつくるんじゃ」サチ婆「藁こづみちい、あん藁こづみか」フク爺「そうじゃ、藁を束ねて積んでいくんじゃ」サチ婆「ああ懐かしいのう」フク爺「稲刈りが終わって、田に藁こづみがある」サチ婆「ああ昔の風景じゃのう」フク爺「サチ婆さんも手伝ってくれるかいのう」サチ婆「そりゃ手伝うさ、フク爺さんの好きなお酒を持ってな」フク爺「藁こづみをつくって、残った藁屑でイモを焼いたり」サチ婆「イモ煮鍋をしようかいのう」フク爺「そりゃいい、楽しくなるべえ」サチ婆「ああ、フク爺さん、秋やのう」フク爺「そうや、秋は食欲じゃな、ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.25
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フク爺「サチ婆さんや、お墓参りは行ったかいな」サチ婆「ハイハイ、私しゃあ、毎日、行っていますよ」フク爺「ふふふ、そうだっな、サチ婆さんの日課だものな」サチ婆「そうそう、お墓にお参りして、お寺にお参りして、神社にお参りして……」フク爺「ふふふ」サチ婆「フク爺さんと、こうやって話をする」フク爺「ふふふ」サチ婆「そうしないと気持ちが落ち着かないんだよ」フク爺「毎日が昨日と同じ」サチ婆「そう、昨日も今日も明日も、みんな同じ」フク爺「変わらない毎日が続くということじゃ」サチ婆「それが一番、それが穏やかということなんやね」フク爺「何も変わる必要なんかいらねえ」サチ婆「そう、フク爺さんがいつまでも元気でいてくれる」フク爺「サチ婆さんもいつまでも元気」サチ婆「そして、こうして話ができる」フク爺「そうそう」サチ婆「フク爺さんの笑い声が聞くことができる」フク爺「サチ婆さんの笑顔を見ることができる」サチ婆「そうよ、今朝も静かだよね」フク爺「そうだべえ、静かや」サチ婆「犬の鳴き声がした」フク爺「ワン公も元気だ」サチ婆「そうそう、みんな元気」フク爺「ああ、秋やな」サチ婆「ああ、そうですね……」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.24
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フク爺「サチ婆さんや、松山ではいろんなことがあったっち」サチ婆「そりゃそうだわさ、初めてん旅やったんやろう」フク爺「それもそうじゃが、ワシは枕を持っていったんじゃ」サチ婆「エッ、三十年前ちいうと、今の蕎麦殻枕でなく、あん大きな枕をか」フク爺「そうじゃ、あん大きな枕がねえと眠れんち思うたんじゃ」サチ婆「まあ枕が変わると眠れんちいう話はよく聞くがのう」フク爺「オキヨ婆さんは持っていかんでいいと言ったがのう」サチ婆「そりやそうさ、あん大きな枕を……」フク爺「そう大きな、大きなち言うなっち」サチ婆「キイチロウ爺様がフク爺さんの枕を見て言っちょった」フク爺「何ち?」サチ婆「フク爺さんの枕は村で一番、いや日本一、うんにゃ世界一だとよ」フク爺「そこまで言わんでもいいと思うけんどな」サチ婆「それでどうして持っていったんや」フク爺「大風呂敷に枕を包んで背中に背負ってな」サチ婆「その他のもんは……?」フク爺「トランクに入れて手に提げてな」サチ婆「ホホホホホホホ」フク爺「サチ婆さんや、そんなに笑んすんな」サチ婆「笑うなと言っても……ホホホホホホホホ」フク爺「……」サチ婆「背中に大風呂敷、手にトランク……ホホホホホホホホ」フク爺「……」サチ婆「ホホホホホホ……ああ疲れた、それで旅館でどうしたんや」フク爺「女中さんにこん枕にしちょくれっち頼んだわい」サチ婆「女中さんはどうしたんかい」フク爺「ポカーンとしちよったが笑い出したわい」サチ婆「ホホホホホホ……ああ、そりゃそうや、蒲団と同じぐらいあるけんな」フク爺「また笑う」サチ婆「キイロウ爺様は、フク爺さんは枕ん中で寝ちょるち言うたもんな」フク爺「それでん、女中さんは丁寧に置いちくれた」サチ婆「それで眠れたんかい」フク爺「眠れんかったわい」サチ婆「そりゃ初めてん旅やもんな」フク爺「そこで酒を呑んじょったら、いつんまにか畳ん上で寝ちょったわい」サチ婆「ホホホホホホホホ」フク爺「また笑う、それで次からは枕は持っていかんようにした」サチ婆「オキヨ婆様もほっとしたやろうな」フク爺「旅館の枕ん方がぐっすり眠れたや、蕎麦殻枕やった」サチ婆「ホホホホホホホ……それで家でん、今の蕎麦殻枕になったんかい」フク爺「うん、そうや」サチ婆「フク爺さんや、長生きをしてやな……ホホホホホホ」フク爺「ああ、また笑う、せちいな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.22
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フク爺「サチ婆さんよ」サチ婆「何じゃな」フク爺「四国を巡礼してな」サチ婆「何じゃな」フク爺「四国を旅するとな」サチ婆「何じゃな」フク爺「夜に寝て、朝起きるとな」サチ婆「何じゃな」フク爺「朝陽が昇るとな」サチ婆「何じゃな」フク爺「こう何ちいうかな」サチ婆「何じゃな」フク爺「せつない気持ちとともにな」サチ婆「何じゃな」フク爺「朝陽でワシんまわりんもんが黄金色に染まるとな」サチ婆「何じゃな」フク爺「こう何ち言うたらいいかわからんけどな」サチ婆「何じゃな」フク爺「朝陽の陽射しをワシん身体に浴びるとな」サチ婆「何じゃな」フク爺「胸ん奧んからな」サチ婆「何じゃな」フク爺「もう少し生きちみようかなっち気持ちにな」サチ婆「何じゃな」フク爺「生きちみようかなっち気持ちになったんや」サチ婆「そりゃ良かったな」フク爺「ふーうっ」サチ婆「ふふふふ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.21
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フク爺「サチ婆さんや、すっかり秋になったな」サチ婆「うん、とてもさわやかになりました」フク爺「朝、起きると、なにかとてもいい気持ちになるんや」サチ婆「ふふふ、四国に行きたくなったんやねえのか」フク爺「去年は足を怪我しち行かれんかった」サチ婆「そうやったのう」フク爺「そうや、四国巡礼をしようとすると、時々、怪我をしたっち」サチ婆「そうやな、稲刈りん最中に、よう怪我をしよったな」フク爺「救急車がサイレン鳴らし来るたらめんどうしかった」サチ婆「オキヨさんなんか大変じゃったろう」フク爺「ウチん婆さんは平気のヘイコラじゃった」サチ婆「ふふふ」フク爺「ワシが救急車で運ばれるちいうのに、稲刈りをしちょった」サチ婆「ふふふ」フク爺「ワシは病院でいつでも会える。しかし、稲は待っちくりんち言いよった」サチ婆「ふふふ、オキヨさんらしい照れだわい」フク爺「テヘヘヘ」サチ婆「一番心配しよったのはオキヨさんだわい」フク爺「テヘヘヘ」サチ婆「なんじゃい、そん顔は」フク爺「病院に来た婆さんが言ったわい」サチ婆「何ち言うたんや」フク爺「『今年は四国へ行けんなったな。これで安心や』とな」サチ婆「フク爺さんは幸せもんや」フク爺「ああ、秋やな、今年は行くぜ、四国へな」サチ婆「ひとりでか」フク爺「ひとりで行ったら婆さんから叱らるんわい」サチ婆「どうするんじゃ」フク爺「サチ婆さんや村んし、みんなで行こうや、道後温泉と石手寺や」サチ婆「そうやな、今年ん老人会は四国じゃ、温泉じゃ」フク爺「サチ婆さんや、空が高こうなったぜ」サチ婆「ああ、秋やな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.20
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フク爺「松山、はじめての四国巡礼っちいうこともあっち、いろいろことがあったち」サチ婆「いろいろあったち、何があったんや」フク爺「ふふふ、ワシらしくなかったことや」サチ婆「ほう、フク爺さんらしくないこと?」フク爺「そうや、ふふふ」サチ婆「含み笑いをしないで話して下さいな」フク爺「ふふふ、恥ずかしいな」サチ婆「恥ずかしがるお歳ですか」フク爺「ふふふ、そうじゃわな」サチ婆「そうですよ」フク爺「夜、旅館の出窓に座っちいたんや」サチ婆「そうやな、昔は出窓があったわいな」フク爺「そう手すりのついたやつや」サチ婆「それで……」フク爺「松山城がライトアップされちょった」サチ婆「あん当時に、もうライトアップされていたんや」フク爺「うん、松山に来ていろんなことがあった」サチ婆「そうやな、娘さん、お婆さん、子供さんなどな」フク爺「そうや、気持ちが澄んじょったんかしれん」サチ婆「澄んじょった?」フク爺「松山城がそれはそれはきれいに見えたんじゃ」サチ婆「それりゃ良かったのう」フク爺「すると無性にキヨ婆に見せたくなったんや」サチ婆「……」フク爺「あいつはどこにも旅に出たことはないけんな」サチ婆「……」フク爺「朝から夜まで働いて、親や子ん面倒を見て、ワシのことまで……」サチ婆「……」フク爺「そう思うと、涙がこぼれっち仕方がなかたあっち」サチ婆「……」フク爺「それからキヨ婆さんも誘った、誘ったけんど、婆さんは断ったち」サチ婆「……」フク爺「親や子んの面倒もあったけんど、牛や鶏の世話もあったけんな」サチ婆「……」フク爺「キヨ婆、とうとう一度も四国巡礼、一緒にせんかった」サチ婆「……」フク爺「松山城、きれいやった、きれいやった、婆さんに見せたかったち」サチ婆「……」フク爺「……」サチ婆「今度、ワシに見せちくりい」フク爺「うん、うん、きれいじゃぞ、昼の松山城もきれいじゃぞ」サチ婆「うん、楽しみじゃ」フク爺「石手寺にも行こう、そうじゃ、キヨ婆も来るわな」サチ婆「そうじゃ、キヨ婆様も来るっち、みんな一緒じゃ」フク爺「キヨ婆があん空から見よんやろう……ああ秋やな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.19
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フク爺「婆様が車に乗って去っていった。次のお寺に行ったんやろうな」サチ婆「……」フク爺「私は泣けて泣けて、その場を動けんかったっち」サチ婆「……」フク爺「ほいたら、急に雨が降ってきよった」サチ婆「秋やけんな」フク爺「仁王門の屋根ん下で、ワシは雨宿りをしちょった」サチ婆「朝ご飯の前やったんやろう」フク爺「ふふふ、そうや、腹がへっちな、たまらんかった」サチ婆「フク爺さんの顔が見えるよ、ふふふ」フク爺「そこに、ふたりん小学生が通りかかったんや」サチ婆「ほう」フク爺「ひとりん子が立ち止まってワシを見て傘を差しだすんや」サチ婆「ほう」フク爺「ご奉仕やとつぶやくんや」サチ婆「ほう」フク爺「傘は、そこの茶店に返しておいたらいいと言ってな もう一人の子の傘に入って行きよった」サチ婆「ご奉仕ね」フク爺「そうじゃ、四国遍路は奥深けえっち思うた」サチ婆「そうかい」フク爺「小さな傘を差して旅館に戻っち温泉に入った。心から温まった」サチ婆「そうやろうな」フク爺「後から茶店に傘を預けに行ったら、そん茶店の主の息子やった」サチ婆「ほう」フク爺「主が喜んで、これまた『ご奉仕』っち言うち、お茶とおやきをくれた」サチ婆「ふふふ」フク爺「はじめての四国やったのに、いろんなことを教わった」サチ婆「ふふふ、フク爺さんの人生が変わったやんけんな」フク爺「ああ、サチ婆さん、空が高けえなったな、秋やなあ」サチ婆「今日はご奉仕でおやきでもつくりますかいのう、ふふふ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.18
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サチ婆「フク爺さんほどの人間を変えるっち、いろいろなことを見聞したやろ」フク爺「ワシほどん人間っち、ワシ、それほどワルやったんかな」サチ婆「ワルガキもワルガキ、子供が大人になったような人やったよ」フク爺「そうかな、ワシはそうは思わんかったけんどな」サチ婆「しかしな、オキヨさんはそんなフク爺さんが好きやったんや」フク爺「ふふふふ」サチ婆「そいで、四国遍路の話や、まだあるんやろ」フク爺「ある、ある、話しちょったらキリがねえくらいじゃ」サチ婆「キリがねえ話をどんどん聞かしち下さいな」フク爺「あん時、初めてもあって、ワシは石手寺にずっとおったんや」サチ婆「はじめての時、ひとつのところにずうっといる。それがいい」フク爺「翌日は、朝ご飯の前に、寺まで行っちみた」サチ婆「フク爺さんは早起きじゃからのう」フク爺「ふふふ、寺は静かやった、小僧さんが箒で境内をはきよった」サチ婆「静かやったろうな」フク爺「うん、静かやった、そん中、ひとりの巡礼姿の婆様が歩いてきよった」サチ婆「朝早い中、婆様がのう」フク爺「それが、ゆっくりゆっくりとな、亀が歩きよるごとあった」サチ婆「亀のようにか、そんなにゆっくりか」フク爺「そうや、階段に差しかかった、私は手を差しのばした」サチ婆「それで……」フク爺「婆様は首を振った。自分で歩くっち昇るっち言うたんや」サチ婆「巡礼やけんな」フク爺「最後まで歩けるんか心配やったけん、ワシ最後まで見ちょった」サチ婆「うん、それは良いことをしたんやな」フク爺「どれくらいかかったしれん。婆様は本堂にようやくにたどり着いたんや」サチ婆「……」フク爺「婆様、お祈りをしていた。少しも動かんかった」サチ婆「……」フク爺「お祈りを済ませると、戻り始めたわい。ゆっくりとな」サチ婆「亀のようにゆっくりとな」フク爺「そう、またゆっくりとな、歩き始めたんや」サチ婆「……」フク爺「婆様、ワシを見て、驚いて、頭を少し下げ、またゆっくりと歩き始めた」サチ婆「……」フク爺「婆様の後ろ姿を見送りながら、ワシは出口の方を見たんや」サチ婆「うん、出口の方やな」フク爺「孫らしい若いシがじっと佇んで待っちょた」サチ婆「……」フク爺「若いシ、婆様を車から降ろしち、そのまま、ずーっと待っちょたんや」サチ婆「……」フク爺「ワシは涙がこぼれて、こぼれて、仕方がなかったんやわ」サチ婆「……」フク爺「若いシん背後に見えた青い空が涙でんぼやけちょったな」サチ婆「フク爺さん、いい話をあんがとうさん」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.17
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フク爺「サチ婆さんや、四国はいろんなことを教えてくれたわい」サチ婆「フク爺さん、あんたはあん頃から人間が変わってきよったな」フク爺「婆さんからも言われた」サチ婆「キイチロウ爺様も言いよった」フク爺「へ~えっ」サチ婆「フク爺さん、他人の声に耳を傾けるようになったと」フク爺「ふふふ、あん頃のワシは身勝手やったけんな」サチ婆「ふふふふ」フク爺「ワシひとりで地球を動かしちょる気持ちやった」サチ婆「そうそう、我が儘やったな」フク爺「うん、我が儘っちいうか、いろいろ言うヤツがメンドウシーイやったな」サチ婆「キイチロウ爺様でも手がつかなかったわい」フク爺「そりゃ違う、キイチロウ爺さんには素直やったで」サチ婆「ふふふ、そうかいのう」フク爺「でもな、四国で、巡礼していて、人が涙を流しているんのを見た時……」サチ婆「見た時……」フク爺「みんな、いろいろな人生を、それぞれの方法で生きていきよる」サチ婆「そうやわな、人それぞれの人生がある」フク爺「そうじゃ、お互いに、お互いの人生を大切にしなけばいけん」サチ婆「ふむふむ」フク爺「ワシはそう思うたんじや、石手寺の境内で思うた」サチ婆「それは凄いことじゃ」フク爺「婆さんも褒めてくれたわい」サチ婆「そりゃそうだわ」フク爺「季節も秋やったけんな」サチ婆「お酒もおいしかったやろう」フク爺「いや、それから四国を歩いているうちは、ワシ、酒は呑まんかった」サチ婆「へえーっ、フク爺さんが酒を断つこともあるんや」フク爺「おっとと、言わんでもいいことを言ったかな」サチ婆「フク爺、秋や、酒がおいしくなるよ」フク爺「ああ、しかし、ここは四国じゃねえから、呑めるんや」サチ婆「ふふふ、そうかい、そうかい、元気が一番や」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.16
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フク爺「はじめての四国遍路じゃ、まずは松山から始めることにしたんや」サチ婆「松山?」フク爺「そうじゃ、道後温泉もあったからや」サチ婆「そうか松山はお城と温泉があったな」フク爺「そう、初めてン日は道後温泉の旅館に泊まった」サチ婆「それは良かったのう」フク爺「昼に温泉に入ってビールを一本呑んでのう」サチ婆「ふふふ、お昼からのう、そりゃ良かったのう」フク爺「ちょっと一眠りして、夕方、旅館近くの石手寺っちいう寺に行ったんや」サチ婆「それも八十八カ所のお寺さんかいのう」フク爺「五十一番札所やった。最初ん寺やけん、ちゃんと覚えちょる」サチ婆「ふむふむ」フク爺「夕暮れ時ちいうかな、境内が静かやったな」サチ婆「ふむふむ」フク爺「二王門という立派な門をくぐってな境内を歩いて本堂に行った」サチ婆「ふむふむ」フク爺「誰もおらんち思うた」サチ婆「ふむふむ」フク爺「お賽銭を入れてお参りして驚いたっち」サチ婆「どうしたんや」フク爺「本堂横の小さなお堂前にひとりの遍路姿の若い娘さんがいたんや」サチ婆「……」フク爺「お線香を立てて一生懸命に祈っちょった」サチ婆「……」フク爺「ワシは動けんかった」サチ婆「……」フク爺「娘さんは涙を流して祈りよった」サチ婆「……」フク爺「なにか哀しいことでんあったんやろうな」サチ婆「……」フク爺「それを思うとせつのうなった」サチ婆「……」フク爺「人は」みんななにかしらせつのう思いを背負っているちゃ」サチ婆「……」フク爺「そんせつのう思いを大師さまがやわらげちくれるんやろうのう」サチ婆「……」フク爺「その癒すのが遍路やと、ワシは思うたんや」サチ婆「……」フク爺「娘さんはすくっと立って涙を拭くとゆっくりと歩いて行きよった」サチ婆「……」フク爺「少しん元気をもらったんやろうな」サチ婆「私も遍路に行きたくなったわい」フク爺「サチ婆さんや、秋やで……」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.15
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フク爺「そうじゃのう、四国八十八カ所巡りを始めたんは……」サチ婆「始めたんはいつじゃったんや」フク爺「ワシが四十前やったかな、子供に手がかからんなってからや」サチ婆「子供に手がかからん、子供はいつもオキヨさんが面倒みよった」フク爺「オキヨはやさしかったけん、子供をよう叱らんかった」サチ婆「そうやの、オキヨさんほどやさしい人はいなかった」フク爺「だけん、子供を叱るんはワシの役目じゃった」サチ婆「そうそう、フク爺さんとこん子供はみな悪ガキじゃった」フク爺「ふふふ、ワシん子供やけんな、仕方がねえ」サチ婆「みんな男ん子じゃったもんな」フク爺「ひとりぐらい女の子が欲しいっち、オキヨがようぼやいちょった」サチ婆「ふふふ、四人ともみな元気に育った、それでいいんじゃ」フク爺「そうよな、みんな元気、元気がありすぎていつも困っちょった」サチ婆「子供の喧嘩に、フク爺さんが謝りによう行きよったのう」フク爺「あいつら手加減っちいうもんを知らんもんな」サチ婆「フク爺さんもな」フク爺「ふふふ」サチ婆「それで四国ん巡礼は……」フク爺「そうや、四十の秋に、オキヨに頼んで行かしちもらった」サチ婆「ひとりでか」フク爺「そうや、なぜか神妙ややったな」サチ婆「オキヨさん、驚いたやろうな」フク爺「あんたがそんなに信心深いっち知らんかったちな、ふふふ」サチ婆「それで……」フク爺「最初は一番近いっちいうことで、別府から松山に渡った」サチ婆「そうやな、大阪に行く船やろう」フク爺「『くれない丸』っちいう大きん船やったな。これくらい大きかったんや」サチ婆「ふふふ……ああ、陽が落ちよん、それからん話はまた明日」フク爺「ああ、また明日な」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.14
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サチ婆「フク爺さんの婆様と、 キイチロウ爺様しか知らなかった旅はどうじゃった?」フク爺「サチ婆さんよ、そんなにトゲのある言い方はよしてくれよ」サチ婆「ふふふ、からかっただけですよ。 フク爺さんの旅のお話を聞かせて下さいな」フク爺「旅のお話……お話にはならないけれどな……」サチ婆「フク爺さん、 自分だけの世界に入ったようにぼんやりしないでくださいな」フク爺「ああ……四国の旅を思い出すとな、ゆったりしてくるんや」サチ婆「それだけ楽しかったんやろう?」フク爺「楽しかった、それは少し違う」サチ婆「楽しくなかったのかい?」フク爺「いや、楽しかった、本当に楽しかった、けんど……」サチ婆「けんど……何じゃな?」フク爺「キイチロウ爺さんに言ったことがある」サチ婆「何ち言うたんや?」フク爺「それがな、四国を歩いて回りちょったら、 ワシが幸せやなと思うちきたんや」サチ婆「幸せ?」フク爺「そうや、まず人はいろいろな運命を背負って 生きていることを知ったんや」サチ婆「ほう、むずかしいことを知ったんやな」フク爺「サチ婆さん、幸せっち小さなことなんやな」サチ婆「幸せが小さなこと?」フク爺「そうなんや……そうなんや」サチ婆「フク爺、涙、流しよるんかい?」フク爺「四国の旅を思うと、いろいろ考えて、なぜか涙が出るんや」サチ婆「……」フク爺「そうやな、ワシのはじめての四国、三十代の終わりやったな」サチ婆「……」フク爺「そう、今日みたいな秋晴れやったな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.13
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サチ婆「フク爺さんはどうして四国八十八カ所に行ったんかえ」フク爺「ふふふふ」サチ婆「何か理由があったんやろう」フク爺「ふふふふ」サチ婆「なにを笑っちょる。おかしなフク爺さんや」フク爺「ふふふふ」サチ婆「また笑う」フク爺「百姓ばかりしちょると、なにかやりきれんことがあるんや」サチ婆「人間、生きちょると、そんなことはいつもや」フク爺「ふふふふ」サチ婆「また笑った」フク爺「キイチロウ爺さんもそういうことを言いよったわい」サチ婆「そうかい」フク爺「生きるとはそういうことなんやとも言われた」サチ婆「そうかい」フク爺「そして、旅へ出ちみるといいかんしれんと言われた」サチ婆「ふむふむ」フク爺「しかし、百姓にすぐに旅に出ることはできん」サチ婆「そうやわな、百姓はあまりちいうかほとんど旅なんかせんけんな」フク爺「そこで、ワシはこっそりと八十八カ所を回ろうち思ったんや」サチ婆「そうやの、昔からずーっと続いているからのう」フク爺「婆様に言うち、収穫が終わったら、毎年一週間四国に出かけた」サチ婆「そうやったかいのう」フク爺「信心深くねえ、ワシが八十八カ所を回るっち、恥ずかしかったもんな」サチ婆「ふふふ、そげえねえよ」フク爺「それにしても、秋の四国は良かったち」サチ婆「フク爺さんもいろいろなことを考えたんやろうな」フク爺「うん、毎晩、呑んだな、村んしにお世話になった」サチ婆「話しちくれんかいのう」フク爺「明日からゆっくり話すかいのう」サチ婆「秋や、話を聞くにはちょうどいい」フク爺「ああ、四国のような空が広がっちょる、いいな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.12
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フク爺「サチ婆さんや、どこかに行きたくねえかい」サチ婆「ふふふ、秋になって、フク爺さんの旅心がうずき出したかいのう」フク爺「うん、そうでもないんじゃが、何か心ときめくんじゃ」サチ婆「フク爺さんは昔からそうじゃった」フク爺「秋が来るとドッキンドッキンしてくるんじゃ」サチ婆「稲刈りが終わって祭が終わると」フク爺「……」サチ婆「フク爺さんは、どこかに、姿を消していたもんな」フク爺「ふふふ」サチ婆「何処に行っちょったんな?」フク爺「キイチロウ爺さんにも一緒に行こうち誘ったこともあった」サチ婆「ほう」フク爺「キイチロウ爺さんは、村長ん仕事があったけん駄目やった」サチ婆「うちん爺様は、フク爺さんが羨ましいといつも言っちょた」フク爺「村長なんか早うやめたら良かったんじゃ」サチ婆「うん、そうしたら、もう少しは長生きをしたかもしれんのう」フク爺「キイチロウ爺さんは、自分のことより、よそん人を大切にしたもんな」サチ婆「……」フク爺「ゆっくり旅に出ちょったら楽しかったのに」サチ婆「そうそう、フク爺さんはどこに行っちょったんや?」フク爺「うちん婆さんだけには話しちょた」サチ婆「だから、どこに行っちょったんや?」フク爺「ふふふ、四国や」サチ婆「四国?」フク爺「四国の八十八カ所を巡っちょったんや」サチ婆「フク爺さんはお大師様にそんなに信心があったんかいのう」フク爺「ふふふ、キイチロウ爺さんからも聞かれた」サチ婆「爺様には話しちょったんかいのう」フク爺「キイチロウ爺さんから問い詰められたんや。 うちん婆さんに心配かけるなっちな。 だけん、四国を回りよったち教えたんや」サチ婆「爺様らしいな。そうかい、毎年、四国に行っちょったんかい」フク爺「四国、八十八カ所、何回、巡ったかいのう……ああ」サチ婆「フク爺さん、四国にも、あん青空が広がっちょたんやな」フク爺「ああ、青かったな……ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.11
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フク爺「サチ婆さんや、これ喰えや」サチ婆「ああ、栗やね」フク爺「栗や、今朝、早う山に入っち来た」サチ婆「大きいね」フク爺「大きい、もうこんなになっちょった」サチ婆「山は知らんまに秋やったんやな」フク爺「そうや、山は秋が一番に来るみたいやな」サチ婆「そうやもんな、山は自然ばっしやもんね」フク爺「そうや、自然しかないもんな」サチ婆「フク爺さんの暴れるところやもんな」フク爺「暴れる?そいつぁひどいや」サチ婆「うんにゃ、フク爺さんは山に入ると顔が変わるもん」フク爺「顔か変わる?」サチ婆「そうや、子供の顔になっちょる」フク爺「子供か……うん、まあいいかな」サチ婆「そうそう、その顔や」フク爺「ああ、サチ婆さんにはかなわねえな」サチ婆「栗、とてもほっくりして、とても甘いよ」フク爺「夏が暑かったもんな、栗は夏を一生懸命に受けてきたんや」サチ婆「あんがとうさん」フク爺「何てや?」サチ婆「フク爺さんと、栗にあんがとうさんち言うたんや」フク爺「ああ……秋やな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.10
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フク爺「サチ婆さんや、昨日、畳替えをした」サチ婆「そりゃ、気持ちがいいやろう」フク爺「畳の新しい香りがして気持ちいいやけんど……」サチ婆「けんど?何や」フク爺「あっさりし過ぎて淋しい」サチ婆「あっさりし過ぎて?」フク爺「そうや、畳屋が、朝早よう来てのう、畳を一気に剥いで持って帰る」サチ婆「うん」フク爺「そして、畳屋で張り替えて持ってくる」サチ婆「へえーっ」フク爺「それを二回繰り返して終わるんや」サチ婆「庭先で作業はせんのかい?」フク爺「全然、何の作業もせん、すべて畳屋で張り替えてくるんや」サチ婆「へえーっ、そりゃ、淋しいのう」フク爺「そうやろう、昔は畳替えち言うたら、大騒ぎをしたもんや」サチ婆「そうや、家族総出でタンスを動かしたり、畳屋さんにお茶を出したり……」フク爺「一日がかりよったもんな」サチ婆「うちなんか三日はかかったな」フク爺「そうやろう、畳替えがすべて終わって、畳の切れ端を庭で焼いたもんな」サチ婆「そう、あん煙の香りが良かった」フク爺「そうや、なにか凄いことが終わった気持ちやったもんな」サチ婆「畳だけでなく気持ちも新鮮になったもんや」フク爺「夕暮れん中、庭先で、おやじと畳屋のおやじが酒を呑み交わしちょる」サチ婆「茜色に染まるん中、子ども達が走り回る」フク爺「あん懐かしい光景が消えちょんのや」サチ婆「あんまり便利になるのもせつないのう」フク爺「長生きし過ぎたちいうことなんやろうか」サチ婆「それはないけんど、淋しいな」フク爺「そうやな、秋やけんかな……ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.08
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フク爺「ああ、せつないのう」サチ婆「フク爺さんや、なにがせつないんや」フク爺「うん、なんとなくせつないんや」サチ婆「ふふふ……なんとなくね」フク爺「そうや、わからんけど、せつないんや」サチ婆「若い頃は秋になるとせつなくなったもんや」フク爺「うん、そんなせつなさやねえんや」サチ婆「ほう」フク爺「なにやら、わからんけんど、せつないんや」サチ婆「わからんけんどね」フク爺「胸がきゅんとしめつけられるんや」サチ婆「胸がきゅんと、若い頃と同じや」フク爺「若い頃と同じ」サチ婆「そう初恋や、片想いや」フク爺「ゲエッ、そういうもんじゃねえ」サチ婆「フク爺さんや、胸に当てているやつは何じゃね」フク爺「あっ、昨日、心臓の検査のため胸に機械を取り付けられたんや」サチ婆「それや、それで胸がしめつけられたん気がしたんよ」フク爺「ふむふむ」サチ婆「せつない、フク爺さんらしくないこと言うもんやけんたまげた」フク爺「ふふふ、秋やけんな」サチ婆「はいはい、秋ですからね、身体に気をつけて下さいな」フク爺「機械をつけているんを忘れちょった、ああ、クワバラクワバラ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.06
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サチ婆「フク爺さん、お昼のお蕎麦、ご馳走様でした」フク爺「ふふふ、キイチロウ爺さんほどには打てんけどな」サチ婆「いえいえ、とてもおいしゅうございました」フク爺「ふふふ、蕎麦畑の草を取りよったら、蕎麦を思わず少し収穫してしもうた」サチ婆「フク爺さんはせっかちやけんな」フク爺「ふふふ、今年ん蕎麦の出来が気にかかるもんな」サチ婆「そうやな、もう秋やもんな」フク爺「キイロウ爺さんからいつも蕎麦はまだかっちせかれたよ」サチ婆「爺様は、フク爺さんとこん蕎麦が一番と思うとったからね」フク爺「でも蕎麦打ちの一番はキイチロウ爺さんじゃった」サチ婆「フク爺さんは力任せに打ちすぎるんや」フク爺「ふふふ、キイチロウ爺さんはほどほどということを知っちょった」サチ婆「体重も軽かったけれどな」フク爺「ふふふ、ワシの蕎麦粉を大切に打ってくれよった」サチ婆「井戸ん水が一番っちいうてな」フク爺「ふふふ、キイチロウ爺さんは変に頑固なとこがあったけんな」サチ婆「……」フク爺「そん頑固なところに、サチ婆さんは惚れたんやろう」サチ婆「……」フク爺「ああ、もうすぐ蕎麦をいっぱい食べられる」サチ婆「うん、そうやな」フク爺「新蕎麦や、ああ、秋が来た」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.05
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サチ婆「フク爺さんや、その作業服姿、どうしたんや」フク爺「ふふふ、マツタケが出ちょるか山に入ってきた」サチ婆「今年はどうやった」フク爺「ようわからん」サチ婆「暑かったけんな」フク爺「そうやな、まだ出ちょらんかった」サチ婆「そんわりにや、疲れちょんじゃねえか」フク爺「ふふふ、コスモスを見つけたんや」サチ婆「コスモスかい」フク爺「薮で陽当たりが悪いところにコスモスが咲いちょった」サチ婆「そうかい」フク爺「陽をあてちゃろうと思って薮狩りをしたんや」サチ婆「そりゃご苦労さんやったな」フク爺「汗をかいたけんど、コスモスに陽があたりだした」サチ婆「そりゃ良いことをしたな」フク爺「花は一輪やったけど、風に気持ち良さそうに揺れていた」サチ婆「そりゃ見たいのう」フク爺「うん、明日、連れて行っちゃる」サチ婆「ありがとうさん、フク爺さんよ、秋なんやな」フク爺「そうじゃな。コスモスん次はマツタケじゃ」サチ婆「ああ、秋はいいな」フク爺「サチ婆さんよ、頑張ろうな」サチ婆「ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.04
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フク爺「サチ婆さんや、お茶がおいしいな」サチ婆「そうやな、お茶がおいしい」フク爺「空気が澄んできたせいかな」サチ婆「そうかもしれん」フク爺「そうやな」サチ婆「こんお茶は井戸水で入れたんや」フク爺「あん、裏庭にある井戸か?」サチ婆「そうや、あん小さな井戸や」フク爺「あれ、まだ使いよったんか」サチ婆「うん、キイチロウ爺様があん井戸の水のお茶がいいんと言うてたもんでな」フク爺「そうかい、キイチロウ爺さんがな」サチ婆「ふふふ、今じゃ、あん井戸の水を汲むたびに爺様を思い出すんや」フク爺「そうやもんな、夏は冷たく、冬は暖かい」サチ婆「味が変わらんもんな、頑固な爺様みたいや」フク爺「ふふふ、焼酎のお湯割りもおいしくなるもんな」サチ婆「井戸水のおいしいこん村は最高や」フク爺「そうやな、水がおいしく飲める、最高やもんな」サチ婆「フク爺さん、長生きもできる」フク爺「ふふふ、そうやな」サチ婆「ああ、お茶がおいしい」フク爺「そう、おいしいな」サチ婆「ああ、涼しい風が吹いてきたわい」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.03
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フク爺「……」サチ婆「……」フク爺「……」サチ婆「……」フク爺「ああ、挨拶するんも、もったいねえ」サチ婆「うん、もったいねえ」フク爺「なんちいう朝なんやろう」サチ婆「気持ちがいいよね」フク爺「蝉も鳴きよらん」サチ婆「小鳥も鳴きよらん」フク爺「静かやな」サチ婆「本当に静かやな」フク爺「サチ婆さんや」サチ婆「何ですかな、フク爺さん」フク爺「生きているんやな」サチ婆「生かしてもらっちょる」フク爺「ああ、そうやな」サチ婆「そうや、空や雲や、木や草や……みんなのおかげや」フク爺「ああ、静かやな」サチ婆「ああ、静かに生きちょる」フク爺「ああ」サチ婆「ああ」フク爺「……」サチ婆「……」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.02
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フク爺「ああ」サチ婆「フク爺さんや、どうしたんや」フク爺「ああ」サチ婆「ため息をついてどうしたんや」フク爺「ああ」サチ婆「何をぼんやりしるんや」フク爺「ああ」サチ婆「ああじゃ何もわからん」フク爺「ああ」サチ婆「せちぃいな」フク爺「ああ」サチ婆「フク爺さん、しつかりしてや」フク爺「ああ」サチ婆「どうしたんや」フク爺「ああ」サチ婆「美しいおなごしが歩きよん」フク爺「どこや、どこに美しいおなごしがいるんや」サチ婆「あ~あ、やっぱし変わっちょらん」フク爺「うん、今日から九月やなと思ったらため息がでたんや」サチ婆「九月、秋が近づいたちいうことや」フク爺「そうや、秋なんや」サチ婆「そう、夏が終わったんや」フク爺「だけん……ああ、なんや」サチ婆「さあ、頑張っちいきましょうよ」フク爺「サチ婆さんや、赤トンボや」サチ婆「ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.09.01
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フク爺「サチ婆さんや、おはよう」サチ婆「フク爺さんや、おはようさん」フク爺「ふふふ、昨日と同じやな」サチ婆「そうや、同じですよ」フク爺「明日も同じやな」サチ婆「そうですよ、明日も同じですよ」フク爺「ふふふ、いつも同じ」サチ婆「ずーっと同じですよ」フク爺「ずーっとか」サチ婆「そうですよ。いつも同じ話をするんです」フク爺「いつも同じ話か」サチ婆「それが元気、生きているということ」フク爺「そうやな」サチ婆「穏やかに生きていること、生かされていることですよ」フク爺「そうやな、健康でないとできんもんな」サチ婆「そうそう、フク爺さんも元気、私も元気もそれが一番ですよ」フク爺「そうやな、明日も元気で挨拶しような」サチ婆「フク爺さん、お願いしますよ」フク爺「サチ婆さんや、秋が来たよな」サチ婆「ふふふ、そうです、秋ですよ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.31
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フク爺「サチ婆さんや、朝は涼しうなったな」サチ婆「ほんまや、寒いぐらいや」フク爺「自然は正直や」サチ婆「そうや、夏が過ぎたらちゃんと秋が来よん」フク爺「ああ、気持ちがいいな」サチ婆「そうやな、風がさわやかや」フク爺「サチ婆さんや、夏が終わったんや」サチ婆「何を考え深げな顔をしとるんや」フク爺「ふふふ、うんにゃ、今年の夏が終わったち思うちゅるだけや」サチ婆「そうですかいのう」フク爺「そうや、今年のワシの夏が終わったんや」サチ婆「フク爺さんだけじゃねえ、私の夏も終わりましたよ」フク爺「ワシの秋が来た」サチ婆「私の秋も来た」フク爺「サチ婆さん、ワシは生きるぜ」サチ婆「ふふふ、いつまでも元気で頑張って下さいな」フク爺「そうや、頑張るぜ」サチ婆「フク爺さんが頑張っちょん、それが一番や」フク爺「だけん、サチ婆さんも頑張れよな」サチ婆「ああ、頑張るよ、ああ涼しい風が吹いてきた」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.30
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フク爺「サチ婆さんや、昨日ん晩の月を見たんかい」サチ婆「月蝕やろう」フク爺「そうそう、きれいやったやな」サチ婆「そう、きれいやった」フク爺「最初は雲がかかっち見えんかった」サチ婆「もう見られんかち思うた」フク爺「そうやな」サチ婆「すると途中から見えた、三日月になっちょった」フク爺「そうや、三日月やった、雲の合間に見えた」サチ婆「それがゆっくりと満ちてきた」フク爺「そうそう、満ちてきた」サチ婆「満月になった時、雲もすっかり晴れちょった」フク爺「そう、夜空に満月がぽっかり浮かんじょった」サチ婆「空が明るかった、美しかったな」フク爺「うん、まぶしいほど明るかった」サチ婆「フク爺さんや、次の月蝕を見らるるんかいのう」フク爺「サチ婆さんや、長生きするんや」サチ婆「そうやな」フク爺「お月さん、美しかったもんや、また見てえ」サチ婆「うん、フク爺さんも元気でな……ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.29
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フク爺「今夜は月蝕やな」サチ婆「そうらしいな」フク爺「月が欠けて満ちてくるんや」サチ婆「そうらしいな」フク爺「サチ婆さん、もっと興味ある顔してや」サチ婆「歳とるとこうなるんや」フク爺「エッ!」サチ婆「なんでんかんでん興味がなくなるんじゃ」フク爺「う~ん」サチ婆「月蝕、何回、見たかわからん」フク爺「そう言わりゃそうだけんどもな」サチ婆「同じようなもんだわさ」フク爺「そうだけどな」サチ婆「フク爺さんはお酒を呑めるから楽しいんじゃろ」フク爺「テヘヘヘヘ、しかし、盆踊りは楽しんじょったじゃねえか」サチ婆「そりゃそうさ、踊る子ども達の成長している顔が見られる」フク爺「ふむふむ」サチ婆「衰えていく私達を実感できるじゃねえか」フク爺「テヘヘヘヘ」サチ婆「盆踊りは、毎年、違うんじゃ」フク爺「月蝕は?」サチ婆「自然っちやはり大きいもんやと感心するだけや」フク爺「そういうもんかのう」サチ婆「そういうもんや」フク爺「ああ、サチ婆、蝉の鳴き声が聞こえんなったな」サチ婆「うん、秋が来よんのやな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.28
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フク爺「サチ婆さんや、昨日ん晩は十三夜じゃった」サチ婆「そうかい」フク爺「空は曇っちょったけんど、時々、月が姿を見せちぃくれた」サチ婆「そりゃ良かったのう」フク爺「良かったけんど、せつのうなった」サチ婆「なんで?十三夜のお月様を見られたんじゃろう」フク爺「十三夜の月っち、なんで哀しいんやろう」サチ婆「ほおう、フク爺さんでも哀しいことはあるんかいのう」フク爺「あるわい、せつのうて哀しいなるんじゃい」サチ婆「ふむふむ、お月様を見てな」フク爺「うん、満月じゃなくて、なんで十三夜なんじゃろうと思ってな」サチ婆「明日ん晩が満月じゃ」フク爺「うん、それはわかる、だからせつねえんじゃ」サチ婆「満月になったら、欠けて、また満ちてくる」フク爺「うん、それもわかる、だからむげねえんじゃ」サチ婆「……」フク爺「どうして、毎晩、満月じゃねえのか」サチ婆「……」フク爺「毎晩、満月やったらせつのうなくなるわい」サチ婆「ふふふ、月の満ち欠け、それが自然っちいうもんじゃ」フク爺「それはわかる、わかっちょるけん、せつのうなるんじゃ」サチ婆「ふふふ、秋がフク爺さんを哲学者にさせちょん」フク爺「哲学者でんなんでんいい、ああ、せつねえのう」サチ婆「ああ、せつねえのう」フク爺「サチ婆さんや、いつまでん元気でおれっち」サチ婆「ハイハイ、明日が満月、そうじゃ月蝕の夜だよ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.27
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フク爺「サチ婆さん、蝉が鳴かなくなったよな」サチ婆「そうやな、静かになった」フク爺「うん、静かやけんど何か淋しゅうなった」サチ婆「ふふふ、昨日ん夜、虫たちが鳴き始めよったんよ」フク爺「そうか、虫たちが鳴き始めたんか」サチ婆「フク爺さんはお酒を呑んで眠っていたんやろう」フク爺「そうか、虫が鳴きはじめたんか」サチ婆「チリリンチリリンと愛らしく鳴いていたよ」フク爺「秋なんじゃな」サチ婆「そう秋ですよ」フク爺「秋か」サチ婆「九月、稲刈りが始まりますよ」フク爺「こん町もせわしうなる」サチ婆「実りの季節ですよ」フク爺「サチ婆さん、秋はいいよな」サチ婆「いいですよ。フク爺さん、頑張って下さいな」フク爺「そうやな……頑張るかな……ああ蝉が」サチ婆「ふふふ、蝉も最後の頑張りで鳴いているのですよ」フク爺「そうやな……ああ風が気持ちいいな」サチ婆「そうですよ……秋の風ですよ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.26
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フク爺「サチ婆さんや、アチイィナ」サチ婆「フク爺さんや、その言葉は聞き飽きたわい」フク爺「サチ婆さんは聞き飽きたかしれんけれど、ワシは言わんと気がすまん」サチ婆「フク爺さんの気がすまんけれど、ワシは聞く度に暑くなる」フク爺「ふふふ、しかし、サチ婆さんは麦わら帽子が似合うな」サチ婆「こん麦わら帽子、何十年前かに、爺様がつくっちくれたんよ」フク爺「キイチロウ爺さんがつくったんか」サチ婆「そうや、フク爺さんのように上手やないけんどな」フク爺「どれどれ、荒っぽいけんど、目がちゃんとつまっちょる」サチ婆「……」フク爺「これじゃけん、長持ちしちょるんじゃ」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さんはアチイでもアチイィッち言わんかった」サチ婆「爺様はやせていたけんな」フク爺「やせていたっち、アチイもんはアチイ」サチ婆「爺様は言うても涼しくならんなら言わんのじゃったと思う」フク爺「ワシはアチイ場合にはアチイと言うぜ」サチ婆「ふふふ。爺様とフク爺さんは正反対じゃったな」フク爺「そうじゃのう、だからキイチロウ爺さんと気がおうたんかもしれん」サチ婆「……」フク爺「ああ、キイチロウ爺さんに、思い切りアチイっち言いてえな」サチ婆「……」フク爺「かなわぬことでん、かなわぬことでん、言うちみるか」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さん、アチイーーーーーーイッぜよ」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さん、すっきりしたけんど、せつのうなったわ」サチ婆「……」フク爺「ああ、これで、夏が終わるかな?」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.25
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フク爺「サチ婆さんや、赤トンボが飛び始めたよな」サチ婆「うん、蝉が鳴かんなったと思うちょったら……」フク爺「赤トンボが飛びよった」サチ婆「そういうことや」フク爺「夏が過ぎて秋が近づいちょんことや」サチ婆「そうやな、キイチロウ爺様がよう言いった」フク爺「何ち」サチ婆「人間にいろんなことがあっても……」フク爺「いろんなことがあっても?」サチ婆「いろんなことがあっても、自然いつの間にかちゃんと秋になる」フク爺「そうやな、秋が来ちょんもんな」サチ婆「そして冬、春、また夏が来る」フク爺婆「そう自然はちゃんと変わらずにやって来る」サチ婆「それなのに人間は何をしちょるんかとね」フク爺「何をしちょるんかって」サチ婆「戦争をしたり、人を殺したり」フク爺「ふむふむ」サチ婆「おろかな行為を繰り返すばかりじゃとな」フク爺「キイチロウ爺さんは偉かったけんな」サチ婆「うんにゃ、それは誰もが考えんといけんこっちゃ」フク爺「ふむふむ」サチ婆「最近、新聞を見るとそれがまだ変わちょらんことを感じるわい」フク爺「ワシにはむずかしいことはわからん。 ただ戦争はいけんし、人を殺すのはいけんことはわかる」サチ婆「それでいいんじゃ。フク爺さん、赤トンボが飛んじょる」フク爺「うん、飛んじょる」サチ婆「赤トンボをこうして穏やかな気持ちで眺められる」フク爺「ふむふむ」サチ婆「それが平和じゃ、それが幸せなんじゃ」フク爺「ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.24
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フク爺「サチ婆さんや、最近、夕立がよく降るよな」サチ婆「ありがたいよ。夕立が降ると急に涼しくなるもんな」フク爺「そう、空が曇ってきて、あれと思っていると……」サチ婆「ざーっと来るんだよね」フク爺「そうそう、ざーっと来る前に風が吹いてくる」サチ婆「そう、風がね、雨が来よるっち感じや」フク爺「そうそう、昔、一番に『雨や』と叫んだもんが勝ちやった」サチ婆「勝ち?」フク爺「そうや、勝ちなんや、最初に『雨』っち叫んだもんが勝ちやった」サチ婆「勝ってどうするんや?」フク爺「どうもせん。勝ちだから偉いんや」サチ婆「偉い?」フク爺「そう、みんなから偉いと思わるるんや」サチ婆「へえーっ、男ん子はそんなことしちょったんか」フク爺「うん、雨が降るのがわかった、勝ったもんは偉いんや」サチ婆「男ん子は単純やったんやな」フク爺「テヘヘヘ」サチ婆「しかし、そうやって自然の変化を身体で覚えたんやな」フク爺「そうやな、大人になると自然相手の百姓やったもんな」サチ婆「フク爺さんよ、今日も夕立が降るかいのう」フク爺「サチ婆さんに勝っても何もならん」サチ婆「夕立が降りそうかいのう」フク爺「ワシが偉いっち言うたヤツ、みんな逝ってしもうたわい」サチ婆「フク爺さんは偉いよ、偉いよ」フク爺「偉いもんか、ちくしょう、サチ婆さん、夕立がくるぜ」サチ婆「ああ、冷たい風が吹いてきた」フク爺「……」サチ婆「……」フク爺「夕立が降ってきた、みんながいねえよ」サチ婆「フク爺さん、あんたの勝ちや、あんたは偉いよ」フク爺「……」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.22
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フク爺「サチ婆さんに竹割りの遊びを教えたん子はどこん子やったん」サチ婆「お父さんが法務関係のお役人で東北から転勤してきんや」フク爺「そうやな、国んお役人はあちこち転勤して子供は大変や」サチ婆「そん子、最初は黙っちょった」フク爺「そうやろな、東北と大分じゃ習慣が違うもんな、恥ずかしいやろうな」サチ婆「ワシの横の席にいたから自然と話し合うようになった」フク爺「サチ婆さんは面倒見がいいからな」サチ婆「ふたりで放課後にお手玉などしだしたんや」フク爺「お手玉をな、女の子の遊びじゃ」サチ婆「ある日、彼女が箸ぐらい長さの竹ん棒を何本か持ってきた。」フク爺「ふーうん」サチ婆「それを空中に投げて落ちてくる棒を何本取れるか勝負したんじゃ」フク爺「面白そうやな」サチ婆「女の子の遊び、おとなしいのが多かったから そん挑戦的な遊びに、みんな、すぐに熱中したわ」フク爺「なるほど」サチ婆「そしてね、彼女が歌も教えてくれた。 ♪ひとなげ、ふたなげ、みいなげ、ようなげ、いつなげ……」 フク爺「楽しそうやな」サチ婆「みんなと友達になれたわな」フク爺「そうやな、遊んでいれば、みんなすぐに友達になれた」サチ婆「今ん子はテレビゲームなどひとりで遊ぶもんが多いけんな」フク爺「昔は、みんなで遊んだ、みんなで騒いだもんや」サチ婆「そうやな、しかし、彼女、半年で、お父さんの転勤で東京に行ってしもうた」フク爺「大人の仕事に子供が振り回されたんやな」サチ婆「たった半年なのに、せっかく友達になれたのに、淋しかったな」フク爺「それからどうしたんや」サチ婆「手紙のやりとりをしていたんやけど」フク爺「そうやな、昔は手紙やもんな」サチ婆「彼女もワシも結婚して便りが遠くなって……今頃、元気なんやろうかな」フク爺「うん、多分、元気で生きちょんやろう」サチ婆「彼女が去った後、竹ん棒が残っちょった」フク爺「……」サチ婆「ひとりで遊んでは、♪ひとなげ、ふたなげ……ああ、懐かしいな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.21
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フク爺「夏休みももう終わりやな」サチ婆「ひ孫たちは慌てているやろうな」フク爺「ふふふ、ワシや、最後ん日まで遊んで、慌てたもんや」サチ婆「そうやな、昔ん子はよく遊んだけんな」フク爺「そうそう、サチ婆さんは『竹割り』っち遊び知っちょんかい」サチ婆「ああ、竹ん棒を投げて掴むヤツやろう」フク爺「ふ~ん、サチ婆さんは知っちょんのかい」サチ婆「突然、そんなことを言んじゃ」フク爺「北海道の知っちょん人から尋ねられたんや」サチ婆「そうやな、竹割りは、雪ん国の女ん子の遊びやつたけんな」フク爺「昔ん遊びは、男ん子、女ん子と分かれていたもんな」サチ婆「うん、竹割は座布団に座って楚々とやったもんや」フク爺「ふ~ん」サチ婆「最初はお行儀良くやっていたけど、最後はめちゃくちゃやった」フク爺「ふ~ん」サチ婆「女ん子の遊びにしてはヤンチャなものやったわ」フク爺「ふ~ん」サチ婆「♪ひとなげ、ふたなげ、みいなげ、ようなげ、いつなげ……唄ったな」フク爺「ふ~ん、ワシは知らん」サチ婆「そうやろうな、ワシが女学校に行きよる時教わったんや」フク爺「ふ~ん」サチ婆「そん子はお父さんの転勤で東北の方から来たんや」フク爺「遊びにも東と西で違っちょったんや」サチ婆「そうやな、新しい遊びやったけん、女学生だったのに熱中したモンや。 着物の裾を乱して、先生から叱られたな」フク爺「ふふふ、熱中しよるサチ婆さんを見たかったな」サチ婆「♪ひとなげ、ふたなげ、みいなげ……ああ、懐かしいな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.20
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フク爺「サチ婆さんよ、お盆が過ぎると、また来年まで生きんといけんと思うんや」サチ婆「そうやな、お盆はひとつん区切りやけんな」フク爺「そう思っち、なぜかため息が出てくるんや」サチ婆「ふふふ、歳をとると、誰もそうやわ」フク爺「そうかな、正月はそう思わんのにな」サチ婆「正月は気持ちがシヤキッとしているけんな」フク爺「シヤキッとか、そうやな寒いけんな」サチ婆「寒い、それもあるけんど、新しい年を迎えたっちいう気がするやろう」フク爺「そうやな、お盆は亡くなった人を偲んでせつなくなるけんな」サチ婆「そうや、お盆は昔を振り替えるんや」フク爺「正月は新しい一年を考える」サチ婆「そうそう、それが正月とお盆との違いや」フク爺「うん、理屈ではわかるけんど、せつないわ」サチ婆「ふふふ、せつない、ふふふ、フク爺さんらしくないわいのう」フク爺「今年は太鼓を久し振りに叩いたからかのう」サチ婆「そうじゃ、太鼓を叩いきながら、多くの人と話したやろう」フク爺「そう、キイチロウ爺さんや沢山の人が思い浮かんだわい」サチ婆「それでいいんじゃわ、亡くなった人を偲んで、生きる力を貰うんや」フク爺「ふ~ん、生きる力をな」サチ婆「そうや、フク爺さん、元気で頑張らんと」フク爺「うん、そうかな」サチ婆「アッ、フク爺さん、赤トンボや」フク爺「アッ、赤トンボや、秋やな」サチ婆「そう秋や、涼しくなる、さあ頑張ろう」フク爺「ふふふ、秋か」サチ婆「蝉も蜩に変わるわいな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.19
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フク爺「サチ婆さんところは静かになったんかい」サチ婆「うん、みんな戻って、やっと静かになったわい」フク爺「うちもじゃ、なんか死んだごとシーンとなっちょん」サチ婆「盆がせわしゆうて、盆が去って静かになる」フク爺「おかしいもんじゃのう」サチ婆「しかし、みんなが集まるっちゅうのはいい」フク爺「そうじゃのう、みんなでにぎわうちぃうのはいい」サチ婆「ワシは何もせんでいいけん楽や」フク爺「なあに、サチ婆さんがいる、それで、みんな楽しいんさ」サチ婆「そうやな、みんながいる、それでいいんやな」フク爺「そうや、サチ婆さんが元気、それが一番やわ」サチ婆「フク爺さんは、お酒、今年も沢山呑んだやろう」フク爺「今年も、ふふふ、毎日や」サチ婆「そうか、毎日か、身体にワリイよ」フク爺「そうやな、キイロウ爺さんは呑まなかったけんな」サチ婆「そうやった、呑めんのに、みんなが集まると無理して呑みよった」フク爺「あげんあるんや、キイロウ爺さんはな、場を考えよった」サチ婆「ふふふ、そうやったな」フク爺「けんど、ワシも歳や、呑む量が減った」サチ婆「そりゃ、いいことじゃ」フク爺「いいことかもしれんけんど淋しいわい」サチ婆「長生きしよっち神様が酒ん量を考えちくれちょるんよ」フク爺「ふふふ……はあ」サチ婆「何ため息つきよんのや」フク爺「ふふふ……それにしてんアチィーーーイッのお」サチ婆「ふふふ……まだ夏やな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.18
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フク爺「サチ婆さん、毎日、アチィーッな」サチ婆「そうやな、今年は暑いな」フク爺「昔の夏も暑かったけんど、日陰に入ると涼しかったもんな」サチ婆「そうやな、木の下におると風がさわやかやった」フク爺「冷房や扇風機なんかなかった」サチ婆「そうや、団扇だけで十分やった」フク爺「そうそう、初盆の家では団扇を配っていたよな」サチ婆「そう、今のプラスチックではなく竹の団扇やったよな」フク爺「あの竹の香りが何とも良かった」サチ婆「フク爺さんなんかは団扇飛ばしなんかで遊んでいたやろう」フク爺「ふふふ、そう人差し指と薬指そして中指で挟んでな」サチ婆「真剣な顔になったな」フク爺「前に押し出すようにして放すんじゃ」サチ婆「何度も繰り返しよったな」フク爺「あきんかったもんな」サチ婆「ふふふ、男ん子は遊びの天才じゃったもんな」フク爺「そうじゃな、女ん子は人形遊びかおはじきかままごとやもんな」サチ婆「そう、女ん子は家の手伝いがあったもんな」フク爺「うん、女ん子は男ん子と違って大人に早くなったもんな」サチ婆「そうやな、それが女ん子やと思ちょった」フク爺「そうなんか、ああ、アチィーナ」サチ婆「夏やもんな」フク爺「ああ、まだ蝉が鳴きよんわ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.17
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サチ婆「今年のお盆も終わったな」フク爺「そうやな」サチ婆「フク爺さん、今年はお疲れ様でした」フク爺「ふふふ、疲れとりはせん。ただボケーッとしている」サチ婆「ボケーッとね」フク爺「うん、普段もボケーッとしちょるが、お盆を過ぎると激しい」サチ婆「激しい」フク爺「うん、激しいっちいうより、気が抜けちょんのや」サチ婆「太鼓を叩いたからやろうかな」フク爺「うん、太鼓を叩くと十も二十も若返る」サチ婆「うんうん、そうじゃろうな」フク爺「しかし、歳は歳なんじゃ、身体は歳をとっちょん」サチ婆「そうやな」フク爺「疲れを感じてボケーッとなるんじゃ」サチ婆「そうやな」フク爺「でも、今、思うちょるんや」サチ婆「うん、何を?」フク爺「来年も必ず太鼓を叩いちゃるとな」サチ婆「うん、そうじゃとも」フク爺「もっともっとうまく叩こうと思うちょる」サチ婆「フク爺さん、凄いやんか」フク爺「サチ婆さんや、蝉が鳴きよる」サチ婆「うん、今年ん夏が過ぎていきよん」フク爺「ああ、静かやな……」サチ婆「本当に静かやな……」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.16
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サチ婆「フク爺さん、昨夜はありがとうさん」フク爺「……」サチ婆「フク爺さんの太鼓で今年の盆祭が盛り上がった」フク爺「……」サチ婆「フク爺さんの太鼓の響き、すごかったよ」フク爺「……」サチ婆「昔のフク爺さんを思い出したよ」フク爺「……」サチ婆「ドンドンドンドン……昨夜は、ああ泣きたくなったよ」フク爺「……」サチ婆「フク爺さんの太鼓、心に響くよね」フク爺「……」サチ婆「みんな、嬉しそうに踊っていたよね」フク爺「……」サチ婆「私も嬉しかったよ、ありがとうさん」フク爺「でも、キイチロウ爺さんの声が聞こえなかった」サチ婆「いいや、私には聞こえたよ」フク爺「……」サチ婆「フク爺さんの太鼓に合わせて、爺様は嬉しそうに唄っていたよ」フク爺「……」サチ婆「フク爺さん、本当にありがとうさん」フク爺「……」サチ婆「フク爺さん、来年も頼みますよ」フク爺「サチ婆さん、蝉が静かになった」サチ婆「うん、もうすぐ蜩だね」フク爺「カナカナカカナカナとね」サチ婆「そう、カナカナだね」フク爺「ああ、サチ婆さんや、今年の夏が過ぎていくね」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.13
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フク爺「太鼓ん練習しても、昔の通りんなかなか叩けんかった」サチ婆「……」フク爺「もう叩けんのかと思いよった」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんに、太鼓ん練習しよるのをわかるのが怖かった」サチ婆「……」フク爺「昔の太鼓の響きがどうしても出らんかった」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんが耶鉄ん話をしてくれた」サチ婆「……」フク爺「耶鉄ん音、レールの響き、カターンカターンと思い出した」サチ婆「……」フク爺「カターン、カターン、ドンツク、ドンツク、ドンドン」サチ婆「……」フク爺「そう思うと力が抜けて、叩くことができた」サチ婆「……」フク爺「うん、今年ん盆踊り、ワシや叩くで、太鼓を思い切り叩くで」サチ婆「フク爺さん、今年の盆踊り、楽しみやわ」フク爺「叩いちゃる、叩いちゃる」サチ婆「ふふふ、蝉が鳴いちょる」フク爺「ふふふ、今年のお盆が来るぞ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.12
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フク爺「キイロウ爺さんがサチ婆さんを残して亡くなっちまった」サチ婆「……」フク爺「ワシん方が先に死ぬっち思おちょった」サチ婆「……」フク爺「ワシん方が先に死んだ方がいいち思おちょった」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さんの弔辞はうまかった」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さんがワシをどげえ褒めちくるるか楽しみじゃった」サチ婆「……」フク爺「だのんに、キイチロウ爺さんがワシより早う亡くなっちまった」サチ婆「……」フク爺「ワシは何しちいいかわからんなった」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さんの葬式ん日、みんなからせつかれて太鼓を叩いた」サチ婆「……」フク爺「太鼓を叩いた、叩いたけんどキイチロウ爺さんの声が聞こえんかった」サチ婆「……」フク爺「ワシ、太鼓を打つことを辞めた」サチ婆「……」フク爺「十三年が過ぎた」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんも生きちょる、ワシも生きちょる」サチ婆「……」フク爺「叩いちみようかっち思った」サチ婆「……」フク爺「叩けるか不安じゃった……」サチ婆「蝉が鳴きよんな」フク爺「……お盆が近づきよんな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.11
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フク爺「……」サチ婆「十三年が過ぎたんやな」フク爺「そうや、十三年や」サチ婆「早いな」フク爺「早いかどうかわからん」サチ婆「十三年やな」フク爺「サチ婆さん、頑張ったよな」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さん、よう生きちきたよな」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さんが亡くなった時のサチ婆さんの姿」サチ婆「……」フク爺「ワシは見きらんかった」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんまで死ぬかっち思った」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんまで死んだら駄目じゃ思った」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんが死んでも、キイチロウ爺さんは喜ばんと思った」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さん、よく生きちくれた」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さんや、蝉が鳴きよる」サチ婆「ああ、聞こえよん」フク爺「ああ、それでいいんや」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.10
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サチ婆「フク爺さん、なぜ太鼓を叩き始めたんや?」フク爺「わからん」サチ婆「わからんちいうことがあるんか」フク爺「わからん」サチ婆「突然に叩き始めたんやろう」フク爺「うん」サチ婆「どういう心境の変化なんかのう」フク爺「わからん」サチ婆「最後に叩いたのはいつや」フク爺「……十三年前……」サチ婆「十三年前っち!!!」フク爺「そうや」サチ婆「そうか、十三年前なんか」フク爺「そうや」サチ婆「十三年も叩かんやったんか」フク爺「そうや」サチ婆「……」フク爺「……」サチ婆「蝉が鳴きよる」フク爺「うん、十三年間、蝉はずーっと鳴きよった」サチ婆「うん、そうやね、十三年間……」フク爺「十三年が過ぎたっちいうことや」サチ婆「……ああ……蝉が鳴きよるな」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.09
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サチ婆「フク爺さん、おはようさん」フク爺「ああ、サチ婆さんや、おはよう」サチ婆「今日は眠たい目をしちょるぜよ」フク爺「うん、眠てえ、たまらん眠てえ」サチ婆「ふふふ、ところで昨日ん夜も神社から太鼓の音が響いちょった」フク爺「……」サチ婆「みんな、夜遅くまで練習しよるんやな」フク爺「……」サチ婆「フク爺さん、あんたも練習しよるじゃろう」フク爺「……」サチ婆「昨日ん夜の太鼓は確かにフク爺さんの響きやった」フク爺「……」サチ婆「それまでの響きは少し自信なかったけれど、昨日んの響きはフク爺さんの音や」フク爺「……そうや、ワシや」サチ婆「そうじゃろうな、響きに勢いがあったもんな」フク爺「やっと戻った、やっと昔の響きを取り戻した」サチ婆「……」フク爺「キイチロウ爺さんが聞いても恥ずかしくねえ音を取り戻した」サチ婆「……」フク爺「サチ婆さん、今年の盆、ワシは叩くぜ、太鼓を久し振りに叩くぜ」サチ婆「フク爺さん」フク爺「サチ婆さんや、聞いてくれや、キイロウ爺さんもきっと唄っちくれるぜ」サチ婆「……」フク爺「ああ、昨日ん練習終わって呑みすぎたっち。ああ眠てえな」サチ婆「……」フク爺「ああ、蝉が鳴きよん、盆が近づいちょる」サチ婆「そうやな、蝉が鳴きよんな……ああ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.08
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フク爺「サチ婆さんや、 キイロウ爺さんはいつも七夕に何を書いたか知っちょるかい」サチ婆「そんなもん知らん」フク爺「そうやな、サチ婆さんは意外にキイチロウ爺さんのこと知らんもんな」サチ婆「……」フク爺「七夕の短冊な、サチ婆さん、名前を書くのを忘れたち言うたはな」サチ婆「ワシはあわてん坊やけんな」フク爺「うんにゃ、違うと思うで」サチ婆「……」フク爺「キイロウ爺さんも短冊には名前を書かんかったんや」サチ婆「爺様が、あの几帳面の爺様が……」フク爺「そうや、短冊にはな『みんなが健康でありますように』とか 『この村に災害が起こりませんように、やすらかな時間を』とか こん村んことばかりを書いちょった」サチ婆「爺様は、なぜ自分の名前を書かんやったのかい?」フク爺「村ん人、全員の願いやったんや」サチ婆「……」フク爺「自分んだけじゃなくて村人みんなことを考えちょったんや」サチ婆「……」フク爺「オマチの七夕飾りが派手になっちいきよっるのを見て、 こん村は笹竹の飾りに凝るんやち、キイチロウ爺さんは言っちょった。 七夕は竹と短冊と折り紙飾りが一番やとも言っちょった」サチ婆「……」フク爺「そうやな、キイチロウ爺さん、そう一枚だけ名前を書いちょったわい」サチ婆「どんな短冊やった?」フク爺「ふふふ」サチ婆「隠さんと教えよな」フク爺「ふふふ『婆様が元気でありますように キイチロウ』とな」サチ婆「……」フク爺「蝉が鳴きよるな……盆が近づきよるわい」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.07
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フク爺「サチ婆さんや、ワシ、オマチに行ってきた」サチ婆「フク爺さんは元気やな、どうやった」フク爺「夏祭りちいうか、七夕祭りでにぎわっちょった」サチ婆「それは楽しかったやろ」フク爺「楽しかったけんど、年寄りには疲れるだけや」サチ婆「オマチは慌ただしいけんな」フク爺「そうや、音楽が高う鳴ってうるさかったわい」サチ婆「七夕飾りはどうやった、ものすごくきれいじゃそうやの」フク爺「きれい過ぎる、豪華過ぎるわい」サチ婆「そうかいのう」フク爺「サチ婆さんがいつもつくる葉竹に短冊が一番や」サチ婆「今年はひい孫に星飾りをつくって飾ってもらった」フク爺「そうそう、短冊、お星様などの折り紙ん飾りやな」サチ婆「ひい孫に久し振りに折り紙を教えたわい」フク爺「サチ婆さんや、今年の短冊には何と書いたんや」サチ婆「ふふふ……何と書いたか忘れたわい」フク爺「そうじゅのう、サチ婆さんは自分の名前を書くのをいつも忘れるもんな」サチ婆「ワシはどこか間が抜けたところがあるけんな」フク爺「そこがサチ婆のいいところじゃ」サチ婆「ふふふ、ところで、昨夜、フク爺さんは太鼓の練習しよらんかったかいのう。 神社から聞こえた太鼓の響きが、フク爺さんの太鼓に似ちょったんもんな」フク爺「……」サチ婆「ふふふ、蝉が鳴きよるの」フク爺「うん、お盆が近づきよるわい」サチ婆「ああ、今日も暑くなるわい、フフフ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.06
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フク爺「盆踊りに口説き歌があるわな」サチ婆「フフフ、フク爺さんから口説き歌が出るなんて」フク爺「テヘヘヘ、ワシに似合んかな」サチ婆「似合うとか似合わんとか言うより、フク爺さんには太鼓じゃな」フク爺「やっぱり太鼓かな」サチ婆「フフフ、そうやな、もうすぐ盆なんやな」フク爺「そうじゃな、盆が来る」サチ婆「あなたナー、百までわしゃ九十、コラ九まで ともに白髪の生ゆるまで、ハイソリャヨー 生ゆるまで白髪の、コラともに、ともに白髪の生ゆるまで」フク爺「サチ婆さんや、いいよな」サチ婆「爺様が練習しているのを聞いちょたらいつの間にか覚えた」フク爺「キイチロウ爺さんの口説き歌は上手かったのう」サチ婆「フフフ、爺様は声が良かったけんな」フク爺「声だけじゃねえ、顔も良かった」サチ婆「待つがよいかよ別れがよいか、嫌な別れよナント待つがよい 別れよ別れよ別れよ嫌な、嫌な別れよナント待つがよい」フク爺「ワシには意味がわからん」サチ婆「口説き歌は意味なんか考えんでもいい」フク爺「……」サチ婆「そん時、そん時で、言葉は変わる」フク爺「……」サチ婆「ひとりひとりの口説き文句があるんじゃ」フク爺「キイチロウ爺さんの口説き文句はどうじゃった」サチ婆「ヒミツ、ヒミツじゃ」フク爺「ふふふ……ああ、お盆が近づきよる」サチ婆「そうじゃな、ところでフク爺さん、最近、太鼓の練習をしちょらんかえ」フク爺「蝉が鳴きよる、ああお盆が近づきよるな」サチ婆「そうじゃな、フフフ」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.05
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フク爺「台風は過ぎたけど、昨夜は大変やったな」サチ婆「今度の台風は雨が多く降ったもんな」フク爺「ワシがたん前の川は溢れたわい」サチ婆「あそこはよう溢れるけんのう」フク爺「隣ん家が浸かった。まあ土間だけん良かった」サチ婆「道路が大変じゃったんらしいな」フク爺「ああ、あちこちで土砂が流れたり木が倒れたりでな」サチ婆「昔ならフク爺さんの出番やったな」フク爺「ふふふ」サチ婆「鋸と斧とスコップを背中に背負って持って回ったんやろ」フク爺「それで充分やった」サチ婆「頭に鉢巻き巻いて、大雨ん中、走り回っち、 倒れた木を伐ったり、土をどけたりしちまわったらしいな」フク爺「ワシらん道やけんな、ワシらで守らんといけんち思うたんや」サチ婆「キイチロウ爺様がありがったっちょたよ」フク爺「キイチロウ爺は役場で、ひと晩中、待機しちょうたけんな」サチ婆「みんなで故郷を守りよった」フク爺「そう、みんなでじゃ……みんなでな」サチ婆「ところでフク爺さん、昨日ん夜、神社で太鼓の練習しよらんかったかいのう」フク爺「サチ婆さん、蝉が鳴きよる、せわしくのう」サチ婆「フフフ……盆が近づきよるわい」人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!
2007.08.04
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