灯台

灯台

2024年04月23日
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  51







インスタグラムホラー


どうする? 
心霊世界のアイドルになっちゃう?
それとも、心霊商法で、
気を入れた壺を百万で売っちゃう?

どうしよう、幽霊用トラップで、
通路の真ん中に段ボール置いておいたら、
普通に倒れた、写真撮っておこう。


黒い影ゲットだぜ。
塩投げる? 数珠投げる?
でもとりあえず、写真撮っておこう。

うわー、リアル貞子じゃん、
貞ちゃんさいこー!

どうしよう、壁の穴から、
人の眼がじっとこっち見てる。
可愛い、珍獣じゃん、
めっちゃおもろいじゃん。
くうーっ、たまんないから写真撮っておこう。

日本人形動いてるーっつ!

これ、ヤバイ、家電業界に革命走るよ!

やばいやばいやばい、ベタ更新だよ、
バスルームに髪の毛、トイレにも髪の毛、
そして誰が出したわけでもないのに、
水が流れてる、


イージーゴーイング!
これがジャパニーズホラー必殺の、
リアル呪詛だー、すげー、
もっと写真撮りたいのに故障した、
スマホで、もっと撮りたい!


  *


  52







欲求不満の先輩は
後輩とシモネタを
熱く語りたい


「ここだけの話さ、女の子だったら誰でもいいって思う?
 なんていうんだろう、リアルソードアートオンラインっていうか。
 ヤバいと感じたものがなにもかも全部詰まってるオスの矜持。
 一夫多妻制したいぜー、ハーレム最高とか思ってるよね、ごめんねー、
 いやー、若いっていいよねー、二歳しか違わないけど、いいと想うよ、
 その若さには限界はない、でも膀胱には限界あるよねー」
「すみません、僕、そういうのとは違うんで」
「出た出た、蒸発しそうな性欲抱えてる十代のはちきんればかりの、
 暴れ太鼓が何を言いまするか? カルピス祭りなんざましょ?
 席に座ってる女の子を見たら、ぶっかけしていいのかと思うって、
 そういう名言残すつもり?」
「ごめんなさい、本当に、そういうの苦手なんで・・・」
「じゃあ、信じてあげる。一途なんだね、ロマンティック街道歩くんだ、
 女の子、タイセツにしたいんだ、わかるわかる。
 それで好きな女の子を色んな体位で攻めてみたい、積み木崩し、
 なるほどなー、あと、とりあえず、くわえてくれる?」
「先輩、先輩、本当すみません、俺、そんなこと・・・」
「じゃあ、ホモなの? ホモっつたら、結構手厳しいよ。
 はいてないから始まって、
 二つのチンチンと二つの穴のそれは奇遇な、だからね。
 いっとくけど、あたし、そこ、こだわる方だから。
 プールの着替えと、温泉でどんな気持ちになるか言ってもらうし、
 あと、攻めか受けなのか、
 きちんと答えてもらうことになるけどー」
「先輩の、期待に応えられなくて、その、申し訳ないですけど、
 本当に、普通なんです」
「普通にむっつり、ドエロってことですか?
 拙者は、やはり、白魔法だくだくのホーリーの発動、
 カルピス社でござる、ってそういうことー?
 俺、実は、シチュエーションにこだわる方なんですよねってこと?」
「ちょっと待ってください、先輩、
 本当に俺は、清い恋愛が?」
「じゃ、言ってみて」
「えーと、河原で手をつないで歩くとか」
「・・・・・ほかには?」
「えーと、日曜日に、ショッピングして、
 喫茶店はいって、映画観るとか・・・・・・」
「ふうっつ・・・・・後輩くん?」
「はい」
「それでギャラリーどうするの、みんな顔面蒼白になっちゃうよ、
 あのね、死ぬほど面白くないから、却下ね。
 せめて、夜中の学校忍び込んで、
 屋上でバンジージャンプしながらキスしたいとか、
 そういう若さを、求めてたの、あたし」
「すみません」
「いやもうなんだったら、先輩、実は俺、
 チンチン二つ増やして二つの穴を攻撃してみたいんです、みたいな、
 そういう意外性を求めてたわけ、わかる? 
 年上のあたしがシモネタを言って、それに全力で、
 シモネタで答える、これが一種の師弟愛なの」
「師弟愛って・・・・・・」
「なんていうんだろう、先輩ちょと待ってくれますかって、
 立ち上がってドアの前で、何故かピストンして、
 これがエレクトリック・ギターのフィードバック奏法だー、
 うわー、みたいなー、俺は本物の若さを手に入れたがっている、
 みたいな、そういうロックが欲しかったの、わかる?」
「・・・・・・先輩」
「・・・・・・じゃ、とりあえず、やってくれる?
大丈夫大丈夫、あたし、クチは固いし、こうみえて、
あそこの締まりもいい女なのね」


  *


  53






君が想うよりずっと


何処までも行けるような気がしていたんだ、
馬鹿な僕等は、輝きに溢れた真夏の昼間に、
笑って泣いて、そして怒って、取り乱して、
写真機のシャッターが降りて、
気化した色素の透明で、
自分の限界に触れるナイフの切り口を得た。
それでも遠くまで行きたいって思ったんだ、
奥深い豊かな街の展開を視野におさめながら、
背伸びしてたと思う、
誰かを傷つけたし、後悔もした、
でもあの日なんていうあの日なんてないよ、
大和絵や、万葉集や、百科事典のことを考えていた、
僕等の地獄が、あるいは天国が、
垣間見せた感情のノートに琴線をふるわせた、
この自由な青い音階を爪弾いて、
僕等は旅人になった、
都会化されない粗野な態度で、
興奮しがちで神経の休まらない日々の、
ほんの一瞬だけ訪れた、前向きな気持ち、
そんなに純粋に、率直に、素直に、
生きてゆくことを受け入れた僕等の道は、
坂あり谷あり回り道の連続に違いないわけだけど、
期待するなよ、岐路とか運命とかじゃない、
僕等はただ何故かそうしたいって選んだ、
一本の細い飛行機雲のようなフローチャート。
明るく堂々としていようぜ、
卑怯なことは嫌いなんだ、ダサいのは猿だし、
情けないのは今に始まったわけじゃないしさ、
でもさ、気分が良かった、
いま死んでもいいって思えることを、
何度も繰り返したい、果てから果てを掴まえたい、
僕等は、愛の才能と、自由の名の下に、
怖いぐらいに真っ直ぐに張りつめて、不敵だった。


  *


  54





夕陽


世界が終わるって
言った
その瞬間に
やっぱり
世界は終わったんだよ
二つの答えがあって
その一つを選んだ
そんな禅問答みたいな
よくわからない
慰めにもならないことを
考えながら
強くなろうとか
賢くなろうとか
死に物狂いで
生きてやるとか
まるで本当に
世界が終わる
五秒前みたいに


  *


  55






Reggae


象のような君は、
君も靴の裏に沢山の蟻を潰してる。
黒が何層にも渡って塗りたくられた、
深夜のグラデーションカラー、
テクノや、ファンクを聴いているのか、君は。
段ボールで作られたスチームパンクっぽい外国人は、
何処かの部分で交差しながら、
交差するほどに近づくことも遠ざかることもできない、
象徴のような気がしてる衛星。
金網の向こう―――は。
やっぱり鳥籠だったのかも知れない・・。


「広場に集まって、
火を囲んで民族的な太鼓を叩きたい」
<シャーマニズム、ニツイテ、
カンガエテイタ>
>>>サムヒア・ノーヒア


“ダイエットは無理さ、
ドラッグだらけの社会じゃみんな、
肥大化する”
“ローマはすべての道に通ず、
ローマになりたいみたいなNY、
僕にとってのローマだった香港、
とある人達にとってのローマだった、
ビジュアルフライトしたい、
ジャマイカという国”


I'm waiting for the day to burn it down...
I'm waiting for the day to burn it down...



(日焼けしてゆく、シャツの襟、)
《ワンドロップリズム、
オフビートアクセント、ダブ・・》
(紙やすりを撫でつけられたような、
ザラザラ感―――だ・・)
<プランクトン、ミタイナ、
ノウサイボウ、ノ、ヴェール>
>>>サムヒア・ノーヒア


蟷螂の眼がグレースケールになる。
骨/と/皮


細身のファッションモデルみたいだよって褒められた時代も、
いまじゃ手品師のように、拒食症とか、不健康とか、病的とか、
そんなワードが引っ張りあげられるようになってくる。
ほとんど気の迷いだって思いながら、
道路の反対側を急ぎ足で歩いている人。
もどかしさの棄て場もやっぱり、鉄格子の中・・・。
多様性というのが美しい幻影だって、知っている。
それでもやっぱり息苦しい、
模型細工みたいな、多様性という言葉。


絶望の淵にいる何か、
或いは誰かに向かって伸ばされる救いの御手。
厄介な友達と、本当に気遣ってくれる友達(を、)
グラフィックして、ボードゲームした、
暗闇の中の一筋の光。
身体中の血液が鉛になったような感覚。
足が、がくんと重くなって、膝をつきそうになる。
根本的なシステムのスキャナーにあたる論点。


ここは―――【告解室】


『ラスタカラーにドレッドヘア』
(そして南国風のメロディと、
レゲエっぽいリズム、、、)
<ジュリン、ト、シオサイ、ト、
オンガク、ノ、ジャマイカ>
>>>サムヒア・ノーヒア


単純なベースと裏拍でリズムをとったギターによる、
生音での演奏と、ジャンベやボンゴなどの民族楽器。
リラックスした雰囲気の中で適時情報開示閲覧・・。
―――感じ、って吹けば飛ぶような問題。
―――感じ、って問題にするのもわからない微小なもの。


電子レンジでチンされたものを食べている、
ライオン、
痛々しいほど瘦せ細り、
そんなんでハイエナに勝てるの?
そんなんでサイに勝てるの?
そんなんでゾウにだって勝てんの、ねえ?


ぐっと押すも、びくともしない、窓。
ぐっと引くも、びくともしない、窓。
―――横に開けば普通に開く、窓。


“選ばれた人になりたい”(らしい、)彼等は。
インスタ蠅と言って、草と言って牛を放牧する。喜びの歌。
“選ばれるべきではない人”(らしい、)彼等だ。
ティッシュペーパーとかいって、変顔して、炎上するのが好き。
モグラたたきのモグラみたいだよ。
二進も三進もいかないよ。
底部とか底辺とかいうつもりもないはずの彼等も、
フラストレーション溜めて、シュプレヒコール叫んで、
ルサンチマンを繰り返す阿呆になる。


いまじゃ―――【電柱みたいな原始林】
(が、)見えるだけ・・・・・・。
野獣の牙と角もないから、
滋味豊かな血肉を味わうことも出来ない。
鈍く光る水のおもてにも似たmotionの印象・・。
―――感じ、って吹けば飛ぶような問題。
―――感じ、って問題にするのもわからない微小なもの。


I'm waiting for the day to burn it down...
ピシッと亀裂入ったら、葉巻が立ち込めた、南国の夜。
I'm waiting for the day to burn it down...
パカッと頭から抜け出たら、波乱万丈でも、大団円でもない、
眼の中に燃えている、sunshine(だったらいいのに、) 
べとり、と、なすりつけたような、色――だ。
都市の膜のやぶれた名残のように、
一種漠然とまだ薄明るく、啓示性もなく、
方向と時間を見失った旅人たちへ。
―――感じ、って吹けば飛ぶような問題。
―――感じ、って問題にするのもわからない微小なもの。


(海行きの電車が、)
slow motionになってゆく、replayして。
美しいカリブ海じゃない、夜光虫だらけの、
波音と、揺りかご。
slow motionになってゆく、replayして。
ボブマーリはいない、自棄になった酒、
トラックが喧しい、
決定的な台詞もない夏のレゲエ。
>>>サムヒア・ノーヒア


  *


  56







機能と障害


周囲がぐるぐると回転して、
妄想という晦渋の餌食になる。
一歩間違えば、被害妄想の穴の底。
天国へと至る梯子は何処だ?

apocalypse...

“吊るすもの“
“吊るされるもの“

光の複雑な屈折や乱反射(から、)
「存在証明」「二律背反」
デウスエクスマキナも安楽死する、街。

gravity...

違う角度や違う背景を知って、
切り口が変わり認識機構も変質する、
内側や裏側や細部にある、解像度。
造形や構成、演出の、深部。
でも特権化された「眼」の中じゃ、
風が吹けば桶屋が儲かる式のイリュージョン。

“壊れているけれど”
“壊れるまでは”

(...ファイナルファンタジーが、
リアルに立ち上がる瞬間を見て、)
(...プレートテクトニクス的な意味での。
 地球を考えてた、)


  *


  57







注がれることのなかった、
コーヒーカップへ、
知的な陰翳を嫌った、
難解な迷路の、
路地裏の気配が忍び寄る。

It was never poured,
to the coffee cup
He hated intellectual shadows.
A difficult maze,
The presence of the back alley is creeping up on me.


  *


  58








magnetic world


化け物の中へ入っていったことは、
覚えている。
“深淵のラビア”
(電磁波測定、各種放射線測定、
言語化プログラムを含んだエラーコード、)
...PS.shock trigger spiralの罠。
本体を攻撃し、息の根を止める。
「解析完了まで、qー2programを起動、)
***【身体損傷/制御デキナイ】
だが、ともすれば思考の迷路に迷い込み、
ともすればもがきのたうつ、
思春期の感受性。
《EXCITE BOOK RECORD!!!》
殺されたくなかった化け物は、
(網膜ニ、痛イホド、焼キツケタ、)
死に物狂いで賭けに出た。
絶対的不利の状況を引っ繰り返すために、
絞りを開け放したレンズのような、
俺の心の中へ侵蝕した。
『“寄生”“規制”“奇声”』
(司令、イグニッション・プレス・
ディストーションの許可を・・・)
・・・俺は薄暗がりの中で、
股間を、black ATTRACTION(mode)にし、
消えかけた熾と対峙する。


  *


  59







You are always
the one who gives me
the words I really want


ただいまって言えたら、
おかえりって言って欲しい。
脳髄の底を透明な振動が潜って、
甘やかな美しい旋律を見ている気がする。

恋をすると、緊張する。
自分のことを知って欲しいと思って、
空回りして、そのくせ、
相手のことをもっと知りたい。
我が儘は苦手だった、
みんながいいと想うようなものも嫌いだった、
でも高音部の聞こえぬ基調低音のように、
あなたがいるだけで周囲の雑音が和らいだ。
鏡を見てたら、病気の獣って気がしたけど。

気が付くと好きな人のことばかり考える、
この時間が、
プラスチックにはめこまれた、
人間という脆い生き物のことを考えさせる。
厚い膜に包まれたような不老不死、
永遠の若さ、それはしなやかな身体を持って、
いま、わたしはそれが前提条件じゃないかと、
想うから。

心を見透かすような眼をしてる気がする、
はるか下の方の時ならぬざわめき、
きっと、もうあなたに嘘をつけなくなっている。
高揚感はいつか信頼や安定を求める、
ピアノのキイに触れて美しい音が鳴るように、
みだらな体臭も、息苦しい胸の痛みも、
それが偽物でもいい、ダイヤモンドだと気付いたから。


  *


  60






短縮/縮小/
省略/全体像



ジオラマやヴィネット、
ゲームなんかではクォータービューというけれど、
巨人になってゴキブリホイホイみたいな屋根をパカッと外せたら、
(それは“発想の勝利”だけど)
―――とっつきの悪いデザインを見直すきっかけになるだろうか。

もしかしたら君もスーパーデフォルメタイムしながら、
朝の挨拶をするかも知れない、ロリペドじゃないよ、待てよ、
僕等は、子供であり、大人なんだよ。

本棚がIQテストみたいになっている権威付けの世界に飽きて、
みんな、部屋のコンセプトと口に出して統一感と、
わかったような口を聞きだしたんだよ。
でもね、ナチュラル、クラシック、モダン、アジアン。
壁紙や素材や部屋のイメージカラーにいたるまでこだわって、
気が付いたらみんな優婉な肌触りの空気。
二〇世紀を超えていったんだよ。

インテリアコーディネートの書籍が押し入れにある、
取り出そうとは思わないけれど、なになに違うさ、
近頃r、本屋が潰れたって話をしたかったのさ。

ねえ、地図の本を開けば飛び出し絵のように見える時代、
もしかしたら本屋をARする、もしくは自室でVRする、
そんな絶命危惧種対策なのかも。
オ ナニーみたいだって言いたくないけど本当にそうだよね、
でも近い将来、確実にやって来るぶったまげた新しい世界設定。
ポップセンスの光った、拡張現実の世界。
何もない部屋には、ポケットモンスターが勢ぞろいしてるんだ。

記号を生成的に捉えることで、
運動と生成の中で、
記号が自壊しながら変容していく臨界点。
手当たり次第に変わっていくわけじゃないよ、
でもブートしてゆく、
妄想を現実に変える力がSFだった。
でもこのSFは“スペースオペラ”でも、
“サイエンスフィクション”でもない、
“すこしふしぎ”なのさ。
(でも、馬鹿な僕は、“サイコロジカルファンタジー”
という音楽の余韻の漂った世界にぶちまけるかも、)

道路の標識を見たら、アニメーションの女の子が、
コーヒーを飲んでるかも知れない、
(“見えないもの”が“見えるようになる”って、
一種の霊能力みたいだな、拡大レンズや顕微鏡みたい―――だ、)

ふっと、清冽な水のように、ピンと背筋伸ばして、
図書館の書架から、一冊の本を抜き出す、
不思議な高揚感を思い出した―――よ。
宮崎駿式ラピュタみたいに、外界から閉ざされて、
誰かがその扉を開けるのを待っている冒険活劇のような予感。
(「写真」の、こう見えたらいいっていう最たるものが、
“決定的瞬間”だ、ドラマチックな物語や、
何でこうなったが接着剤していて、眼を離せないんだ、)

きっとさ、ジオラマやヴィネット、クォータービューもさ、
『階段』なんだよ、
たとえば埃っぽい木造の階段のたった一段に、
歴史を感じるような仕掛け装置。
君が見ているのは、センスのあるぐちゃぐちゃな部屋、
どんなに整理整頓されていてもね、それは記号にすぎない、
『階段』なんだよ、
一歩一歩踏みしめてゆくと、一階から二階へと、
あるいは一階から踊場へと辿り着く。
いままで誰にも言ったことはないけれど、
階段に窓を作ろうと思った人は天才だね。


  *


  61






夏になる
―――世界(は、)



タタタ、と水滴のリズム、で、
氷砂糖が落ちてった、
センシティヴ・デッドなら、
砂漠で一粒のダイヤモンドを、
見つけるような確率なんて、
気障なことは言わないで。

はじきかえるサイダーの泡、
別の回路に飛び火する線香花火、
眩暈した滝の汗と遠い流行歌、
それら全部、筧に落ちた水。

硝子箱した、
フィードバックループした、
でも、同じ分だけ亡霊を見た、
徒花のような無数の傷を暴き、
無数の死を迎えた素晴らしき特攻隊。

巨大な鯨みたいな入道雲と、
崖の鼻を舐めてゆく潮騒、
襟元に白刃立てられたような、
夏の間、
快活な昆虫のように空を泳いだ、
受け皿もなく、蒸発しながら。

夏の終わりの雨という、
古代遺跡みたいな古い詩的な文句を、
思い出す、ペトリコール。

世界で一番暑い夏は、
おそらく異常気象のこれから、
やって来る、
全世界的宿題、
二〇世紀は忘れ物が多かったね。

でも世界で一番熱い夏は、
首筋を滑った汗が胸にまで流れたら、
きっとそうだ、
僕等は若くて、青くて、
透明な夜風に、
蚊取り線香の匂いを嗅いだ。

修学旅行が始まっちゃう前に、
ハネムーンを始めたい、夏。


  *


  62







バス停


言葉の壊れた世界の入り口のようなバス停。
紫陽花の花壇が、
重ね着の襟元にほの見える白い肌のように見える。
ゴルゴーンの顔を見たものは石になってしまう、
瀝青のいろをしている排水溝。
農産物直売会と廃車部品販売所を思い出す。
共同椅子の下にいる猫は、
触ろうとすると逃げてしまう。
ジャイアネス御用達の傘入れには、
少年雑誌が入れられている。

(僕等も、微弱な電磁波を、信号を―――)
(願わくば、閃光を・・)

傘をした人が通過する。
了解可能な単語と会話の断片。
動物のように口の中へ忍び込み膨れ上がる、不協和音、
張り詰めた心の糸がシャッターの連続音をきかせる、
よく発達した黴のようだ。
雨の俋鬱。

座席をバスの両側に仕切る狭い通路や、
天井からぶら下がった吊革、荷物棚、
汚れた窓。
ギアチェンジをしたときに回転速度が上がったエンジン音と、
ドスドスというステップを駆け降りる音を聴いている。

デ ー ト ア ッ プ し て 、
ニ ュ ー ヴ ァ ー ジ ョ ン へ 、
モ デ ル チ ェ ン ジ し て 。​

バスの日は雨の日でも歩かなくていいし、住宅費用を抑えられる。
座れることでゆっくり考え事ができるし、
靴の消耗が少ないという利点もある。
バスの運転手は大型二輪、その後、運行する路線や地理を勉強し、
アナウンスの練習をしたりする。
そして老人たちに、間引き運転しているんじゃないかと言われる。

揺れる吊り橋は消えてゆかない・・。
意識の隙間の真空の中、
眼蓋の奥にある冷たい硝子のような憧れ。 
僕等いつになったら踊るような気分で、
口笛を吹きながら歩いて行けるんだろう―――ね。
『拒絶』がさらなる『拒絶』を生み、
『送信』がさらなる『送信』という拡大を生む。

呼吸するよ。
話をするよ。

だから―――こたえて・・。

シャツはいつのまにか半袖から長袖になり、
セーターを着、ジャンパーを着、コートを着る。
リーヴァイスのズボンに、
ガソリンスタンドのレシートは迷い込んだまま・・。
ユーチューブのコメント欄みたいに湿気た、
地方都市規模のメインストリートのまどろみ。

『抽象的な理論』でも、『数値』でもなくて、
平行に張られた五本の蜘蛛の糸を横ぎって進行する星の光像を、


言葉の中で―――見 つ め て い た ん だ ・・。


  *


  63







Strange Days of Despair


浅い眠りの何の意味もない、ざわめき―――が、
どうしてか―――あたしの胸をさらう・・・。
水に落とした墨汁の雫、胸の中でまだら模様が拡がる。

「「「So here's to love, the highs and lows

空間が回転する、
そのたびに鮮血が上がるguillotine。
―――​漂着した、千一夜物語の続き。

「「「crazy world, forever side by side.

あらゆる熱エネルギーを遠隔吸収する異常性、
大音量で音が鳴っている―――のに、
埃が夏の虫のように―――舞い狂っているだけ・・・。
二/重/エ/ア/ロ/ッ/ク
重力や遠心力も吸収されて、
抵抗による異質化、特質化、中心化には、
芳香性の環の緊密な連鎖でシャボン玉の夢。
でもまだ紫外線スペクトラムと、
それ以下の非電離放射線の発散。
胸を嘘の入れ物にして、
夜は終わりのない、トリガー弾く前に考えてみる、

(―――ク ラ ク シ ョ ン だ ・・
ベ イ ビ ー 、 ベ イ ビ ー 、
ク ラ ク シ ョ ン 、 ク ラ ク シ ョ ン 、)

「行為の残骸が艶やかに冷たく光っている...」

空に魅入られた呪われたイカロス、
装飾画の天才は風景を包帯にして、
暗さを増してゆく時流と時刻に、疑惑の瞬間、
正確な視点は時に警告のサイン。
世界では―――今日も洪水のフォーム。
恍惚としたタイムテーブルの魅惑的な裏地の手触り、で、
一瞬間前の鋭い心構えなんかもう存在しても、
い、な、い・・・。
い、な、い・・・。


「「「So here's to love, the highs and lows
デェンキスウィンゴウ・・・ハ・・
《加速》ス/ル/

1mmの穴が空いても、
キャッチアンドリリースの御伽噺。
ピラミッド形の石灰岩の台座の上にすえられた生贄の歌、
いますぐjet coaster...
松果体へと充填されるブルースの青、
褐色の皮膚を切り裂いてゆく鋭利なメスの白、
裏切りと復讐の赤、
妙なる誘惑のmode! 
距離を予測する有効な手掛かり・・。

「「「crazy world, forever side by side.

フェイスラインから咽喉にかけてのラインがシャープ。
無造作ヘアで―――デザイナーズブランドのブティックの領域・・。
ステート・オブ・マインド―――。
視界遮断用高壁の敷設(でも、)

“key”は、『開封』ではなく『閉鎖』

ステート・オブ・マインド―――。
空気の対流による局所的異常気象(でも、)

心のありよう・・。
断片は映画のフラッシュ、
一分にも満たないその記憶の前―――で。 
闇の中の配電盤に取り残された。
足の折れた昆虫・・。

(―――ク ラ ク シ ョ ン だ ・・
ベ イ ビ ー 、 ベ イ ビ ー 、
ク ラ ク シ ョ ン 、 ク ラ ク シ ョ ン 、)

何が残されているとしても―――。
・・・・・・胸に迫るのを、―――感じた、
“絶望”は誰も救わない、希望一つ射さない呪い、
小さなプロペラの回転音だと思う、
でもその微かな光の中に“明日”が待っている。
(車の音がする、バイクが通り過ぎる―――)
「地獄を掠め取ったら、生命の脈拍が聞こえる・・」
(自転車が歩道に乗り上げてくる―――)
「ガソリンを飲んで、夜の街へ繰り出そう・・」


  *


  64







月が見えるか?
(「Can you see the moon?」)


警察官の僕は、
殺人事件限定で、神出鬼没に現れる、
探偵の噂についてよく知っている。

問題は三つある、
現場を猫さながら素足で歩く悪癖があり、
僕は鬼塚ちひろかよって言いました。
二つ目は千億人に一人という、
IQ二〇〇越えとなっているけど、実は計測不明の、
このお化けが制服着た中学生であることと。
最後に、警視総監の姪であり、
家系って素晴らしい、政界の重鎮の娘であったりする。

いや、もう一つあった。
東京砂漠とコンクリートジャングルで満たされた、
僕の家の近くの空き地で、
スポーツを一通り教えた妹分であること。
僕はこうみえて、格闘技オタクで、
剣道の有段者だ。
そしてそのお礼に、受験勉強を見てもらっていた。
情けないとはいうが、教師に頼るか、家庭教師に頼るか、
自分の頭に頼るか、小さな女の子に頼るかだ。

いまもそれほど変わらないが、
当時の彼女はそれこそ寡黙キャラで、
一言もしゃべらなかった。

ところで捜査スタイルは一貫している。
所轄の署員、機動捜査隊、
鑑識課、本部の刑事といった面々を尻目に、
シラーッとした白眼視もとい、
KY旋風を巻き起こしながら、
「いつもの。」とか言って僕に声をかけ、
捜査状況を口述させることだ。いかつい。

場合によってはこの時、エレガントでビューティフルな、
家系の影響で、自然と求めてしまう、
スターバックスコーヒーと、ドーナツを所望することもある。
こいつまじで殴ったろかと想いながら、
人生の節目に猛烈なアシストをしてもらった仲である、
パシリやアッシーといった便利屋コンビニエンス店員が、
僕の仕事ですよね、やっぱり。

そんな僕についた綽名が、ワトソンだ。
シンプル・イズ・ザ・ベスト。
口の悪い人は、コバンザメとか、金魚の糞とか言う。
ひどいもんだよ、あと何故か僕のポケットに、
使用済みのパンツを入れようとするしね。
どうするかって? まあ、想像に任せるけど、
ストライク寄りのボールだね、まあ。

よいことは一つだけ言える、
Aボタンはジャンプで、Bボタンはダッシュだ。
この前、中学校を卒業して、ニート探偵になった。
もちろん、ニートだけにニット帽を贈った。
あとで警視総監にそのチャーミングなネタで、
こっぴどーく、叱られた。
そして警察署内に、探偵課という謎部署が出来て、
嫌な予感がしていたけど普通に配属された。
配属初日、力をわからせてやろうと凄んだ、
腕相撲した、そのあと、英語とフランス語で、
滅茶苦茶悪口を言われた。

僕はなるべくどんなことがあってもいいように、
辞表を持ち歩いている。彼女曰く、僕もいかつい。
毎日出勤してからほとんどの時間を、
ユーチューブや映画や音楽やゲームや漫画漬けで、
過ごす。なんてなめきった職場なんだ。許せん。
とかいいつつ、今日も甘い汁を吸う。

殺人事件の起きない世界は素晴らしいと想う、
だって、みんなニートの親戚をしていられる。


  *


  65






(...暗闇で、星が見える、頭じゃなくて、
眼でもない、心で、選んだ―――感じた・・・
誰も が 何か を 
(・・・静謐なる花骸に    アルペジオ的生体反応。
願っ て る

I want to burn
it completely

―――割れる硝子屑の海、
泳いでやりたい
PASSWORD WINDOW SYSTEMは、
 なかに/(外に)/なかへ/(外へ)と


  *


  66






ミーミカ

眼に見えない速度で、
芝居のあさぎ幕のように、ゆっくりと世界は暮れていった。
熟れたトマトや、朝顔にも、少しの皺もなかった。
まだ賞味期限は来ていないし、景品表示法は成立してる。
それでも理解した、板金が打ち延されたような、
アスファルトのハレーションを見た時、
自分の人生には限界があり、
他人の人生を生きてはいけないことを悟った。
シスター、琥珀色の中に透明を抱え込んだ僕等の、
射 精管に午後の太陽の奥が融けていった。


  *


  67







(「Give me your first time」)

君が眼鏡外したって、
靴下を脱がなきゃはじまらない。
素ー顔(は、)
服の一部じゃない。


  *


  68






自分に勝ちたい


勝敗とか、才能って、絶望的なレンズで、
新奇な形態を組織したぐらいじゃ抜け出せない。
でも・・・。

負けたくないことに理由はないよね。
素直な“勝ちたい”

諦めたら、そこで試合終了だし、
なんか、学校の授業中、寝たふりしてた、
シャツの肌触り思い出す。

HPが一〇から回復
させる僧侶の魔法。

チンパンジーやゴリラや猿でもいいんだ、
けど、霊長類とか、人間とかいうなら、
やぶけたオブラートのような前頭葉の、
別の使い道ぐらい見つけたい。

無機質な壁、無表情な壁、扁平な印象、
その広く長い通路を歩いてゆく僕等、
筋肉マン方式で、四倍、八倍、十六倍したい、
―――心の中には鉄蓋、ピッキングでしか開かない鍵穴、
もっとHなこと、もっとワクワクすること探そうよ。


  *


  69





Secret time
on a rainy day


夕方過ぎの通り雨がもたらした空間を、
頭上の薄い光の層が消えてゆくことで、
謎の、ナンダカクロイ、
グレーダヨ、シンジケートにする。
エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、
えろいしうっさいよー。

吊るしあげならぬ、
吊るされるハラスメント。
ラッキースケベボーダーラインの、
エグゼグティヴプロデューサー。
真っ黒で、微熱でもあるような眼して、
きっと、獰猛な蛇性だ。時限爆弾式の本能だ。

銃で撃たれる、あたりの手頃な石ころで、
撲殺天使えすかりぼるぐされる、
そのような心構えなくして、
百本の小針飲む心意気なくして、
好きな子と一緒の、
通り雨シチュエーションを脱出できない。

生意気に力学的設計された、
曲線や流線形に運動的刺激。
そこには、楽園があった。
平和な日本の姿があった。
健全な青少年の胸高鳴らせた。
ハートビートはヘビメタに変わるヤスユキオカムラ。

透けてるということで、
上着貸せたら超カッコいい。
あちらこちらでするするこぼれおちる雨は、
肺炎の恐れがあるは大袈裟でも、風邪を引く。
「大丈夫?」はマスト。
「全然大丈夫じゃないよ」だけどね。
でも僕はTシャツで、
できることは何もない。
泣きたい気持ちでいっぱいで、
ポケットを引っ繰り返して、
コンドーム出てくるような悲しさ。
せめてエロい眼で見ないで、
そっと時間が止まるか終わるか、
「天国じゃよ」「やはり死にましたか?」
「そうじゃ、情けない話じゃよ、
鼻血で死んだ男はお前が初めてじゃ」
と謎の三途の川シチュエーションを、
妄想するか、だ。
神様まじで感謝、いつも十円しか入れないけど、
百円いれたる。


でも浮かれている気持ちの反面、
雨はセンチメンタルすぎて、
やさしくかすかな音楽みたいだ。
周囲を遮り、二人だけの世界が生まれる。
雨宿りする郊外のだだっ広い公園。
そこが罠、隣接式に野放図に、森がセッティング。
兎いる、栗鼠がいる、そして僕等も野外学習の仲間入り。

「ごめん」って君が言う。
「ううん、俺も」って言う。
間延びしたような時間、
ダルにダルにダルけきって、ダルビッシュ出てきて、
もう、だるまさんがころんだして、岐路、天におまかせ。

興奮してるのに本当に寒い。
道に迷って、本当に道に迷った、
ロマンティック。
様々な障害を踏みこたえたら、
ぼうっと彼女がこっちを見てる、
目尻が笑ってるのを僕は見逃さなかった。
「そろそろ、森を突っ切る?」
決断を待ってくれていたらしい。
「行こう」

手を繋いで、走り出したのを覚えてる。
本当にそっちであってるのかよと想いながら、
僕はドキドキしてた、
だって彼女は、帰り道を知ってた。
一緒にいたかったんだっていうのは、妄想。
君とならいいんだっていうのも、妄想。
昔の勘が正しければこっちを突っ切ったら、
道路に出る、が、彼女の言葉だ。

詰まってる、はちきれそうに、もう出口、
「(君は今日のことを忘れないんだろう?)」
延長すれば無限の彼方、そんな平行線!
「(太陽の消えてなくなった、暗さと寒さ、
けれど、洪水の夜のように雨の匂いを嗅いだ)」
何度でも再現される、袖なしブラウス、スカート、
人形じみた命の通っていない休止符のような一瞬の、
すさまじさ。
(スイッチ・オンになっていて、
オリオン座のベテルギウス。
いやいや、ジャニス・ジョプリンの声の悲しさ。
冷蔵庫の内側からカメラが扉を見ているような視点、
僕は君のこと好きだったから、君は僕のこと、
どう思っているのか知りたかった、
二人きりになりたかった、
いつでも聞けたのに、本当に聞きたかったのに、
こんなに傍にいても、問い掛けられない僕のために、
雨が降っているような気がした)」


  *


  70







カーテンの僅かな隙間で、
オフィーリアが死んでいた。

化粧台の上に、
襟巻蜥蜴がいて、
漆を塗ったような、
明るい殻が割れている。

青絵具で空を塗りつぶすと、
縞瑪瑙になり、
ややもすると緑色の縞瑪瑙の、
切断面のように見える。

そこに雨が降れば、
夢遊病者のようなあやめだ。
雨に現れた情愛の紫は、
一つの主題の余韻を語る。

春になると鶯が自殺をする、
斜光線の明るい小川で。
そして向かい側には、
東洋の多彩な劣等が、
エポレットしている。
怠惰な裸女の寝姿のように、
裁縫糸を紡ぐ、あの女の夢。

夢遊病者のように、
世界は硝子絵となった。
犇々と迫って来る静寂と孤独が、
照明装置のように、
縦横に鋭く交差しながら、
様々なものをフジツボにしている。

牢屋格子の絵模様もかくやに、
美しい生え際の、
オフィーリアが死んでいる。
大脳が歩いている、
眼が話している、
オフィーリアは砂丘の起伏の波のように、
在りし日の姿でうねりながら、
落葉松と楡と樅の木の繁りの中で、
生きてのたうつ爬虫類となった。
珠を砕き、泡を噛み砕き、
見ろ、口から蜘蛛のような粘着質の糸。

オフィーリア、三色菫は好きかい、
瞬間的な銀箔の月夜に孵化して、
瞬間的な刹那の業を生きる女よ。
無数の吸盤と触手が青黒く、
しかしかがやかに光る、水の精として。

カーテンの僅かな隙間で、
オフィーリアが死んでいた。
痙攣の発作のように眼がぴくぴく動いて、
魔物のような海の母胎とした妖しい歓楽境、
それでも、オフィーリアはやはり死んでいた。
無数の小魚が餌を欲しがって蠢いている海藻のように、
肉体の限界は崩れたのだ。


  *


  71







鏡にキスをする女


懐疑的通り越して、人間不信気味だった頃の僕は、
美味しい食事も、綺麗な服も、化粧も不要だと思っていた。
舞台設定や、装飾的な理解としてでしか、
僕はそういううすっぺらい女を理解できなかった。
衣食住は贅沢品で、余剰品で、人間より人間らしい付属物だ。
豚の皿と思っていたこともある。
僕は外面的なことに対して邪悪さのようなものを、
稚拙なことに、感じていた。
ファッション雑誌のフォントや、作りは好きでも、
モデルのプロ精神は好きでも、
それとこれとは別のように感じていた。
僕は美人がそもそも好きではなかった。
けれども郷の何とやらで、
自分の肌を綺麗にしたり、髪形を整えたり、
服装にこだわってみたりした。わかるよ、ややこしいね、
難しい性格してるだろ、
でもそうやってそこに眼で見えないものや、
耳で聞こえないもの、鼻で嗅げないもの、
感覚では理解できないものが存在する可能性を感じた、
気分、つまりフィーリングだ、別にそんなのなくたっていい、
それは嘘を始めるしかない、業を深くするかも知れない、
だけど、その小さな一歩が、様々な叡智や、真理や、箴言の、
一つになりうるかも知れない。
美しいということにもきっと理由がある、
ただ美しいなんていうのは誰にとっても失礼だ。
有象無象のワンオブゼム、空っぽを満たしたまえ。


  *


  72






wonder of life


朝凪が波を消すように、束の間、
飴のようにとろりとしている街の主要物を見ながら歩いた。
無数の蒼白い痩せた手と、信号機。
その質量、スピード、慣性に基づいて現実的な結果を、
影法師の歩みに合わせて。

―――僕等は別に“国家”に属さなくてもよい。

特産品や名物料理、歴史的建造物ではない、
無限のキャンパスに描くはかない賛美歌。
季節の訪れのたびに遠方の景色が少しずつ、
見えてきたような気もする。
マイクロプラスチック、電磁波過敏症、
日本消費者協会というワードを持ち出しググって、
ピックアップしてようやく人の心は落ち着く。
飛び出しナイフはグレーか、でも身を守る。
音の不適切な衣装、舞踏、いまは、社交名刺録へ。

―――僕等は別に“特別”にならなくてもよい。

街路樹の冷ややかな空気と幽邃の光線で、
髪を掻き上げながら真剣な眼をして死にそうにくたびれて、
本質とは何だと見果てぬ生命を重ね合わせている。
まともじゃないのはわかってる、
でも、論理性の正体は広告さ、
そしてそれは整合性じゃない、その場凌ぎさ。
広告の正体はまとめサイトと同じなんだよ。
わかったような気持ちになるだけで、
本当に君や、僕や、全体にとっての利益にならない。
だから薄めてゆくだけの気持ち悪さが生の黴みたいに思える。
時々僕の言っていることが君にはわからないと思う、
だけどね、本当にわからないのは僕ではなく君の方だよ、
叫びたい、泣きだしたい、助けて欲しい、
乞食みたいな僕等の弱音もパターン化されている、
自殺したいことは社会経験あれば誰でも普通に起こりうる、
鬱も現代病、宗教も詐欺も、週刊誌のいい加減なデマも。
ねえ、才能とか苦労なんて姉妹みたいなもの、努力でカルテット、
けれども幾重にも重なる景色の噴水の中じゃ、
横殴りの雨に打たれているのに等しい。

―――僕等は別に“愛”を求めなくてもよい。

不協和的。あるいは対立主題。
偽の救い主の登場・・。
雑然と植えられているように見える樹木たちも、雑草も、
繁栄の理由、分布の形式が前提にあって存在している。
そこにも名称の由来、名付け親がいて、星の名前みたいだよ。
僕は街燈や、路面の舗石の専門業者とかのことを考える。
解像度を変更してみなよ、絶えず世界は見方を修正する。
もっと直視しなよ、曖昧なんだよ、
断定なんかどうしたって僕には出来ないんだよ、
長くそこに生き続けることは、
かすかに、ほそぼそと続いた命の液体が垂れるようなもの、
予備部品なんてない、鳥の巣の卵。
真夜中、咽喉が渇いてコップ一杯の水を飲み干しながら、
涙を呑んでいるような気がした。
でもそこにおける本当の傷みは体験した人にしかわからない。

―――僕等は別に“自分の良心”に従わなくてもよい。

おのずから溶けて流れてゆくような屋台骨だよ、
行政手続きや住民サービス、金融サービス、学習や娯楽の場、
交通機関、散歩をするなら大きな公園が欲しい。
神経を張りつめて、尖らせて、
手当たり次第にセンサーに触れたものと、とっつかみ合いをする。
ヤクザや反社、刺青、言葉における洗脳は食欲と同じ、
次は暴力へと進む、支配、
そしてみんな気が付けば身動き出来なくなる。
十代の頃の苛立たしさ剥き出しの僕とは思えない、
優しい物の見方、別の言い方をすれば保険をかけたような言い方。
眼の中に映り込んでゆく人は、似た者同士で、
空っぽで、一つも分かりあえないのを、
共通認識や、額縁の中の絵のようなイメージをして、
刹那的な衝動で誤魔化して生きているにすぎない、僕等。
そんな典型的な眺めに眼を細めていたら、
眩しいのか、眼が潤みそうになる。
孤島の世捨人のような気が不意にして、
カレーライスの付け合わせの、らっきょうを思い描く、
僕の視座、瞳の向こう側(は、)

―――僕等は別に“真実”に触れなくてもよい。

昆虫の眼、猛禽類の眼、魚の眼・・。
柘榴の胤と、黄色い玉蜀黍の粒。
細胞が記憶しているものを裏返すように、
無表情の、本能的な生き物の顔を思い出す。
四角く区切られた映画の一齣のような日常は、
光の中に霞んでいて、どれほど焼いても刈っても、
根絶することのできない病のようにそこにある。
村という閉鎖社会は血族的な形成も、闇鍋のように煮えている。
フェルメール的レンズでサブユニット的ノウハウ、
補完システム、平等も、差別も、アイデンティティも、
いくつもある、無茶苦茶考えたんだよ、
目先で間違っていることも総合的には正しかったりする、
絶対なんて何処にもないこの世界では、
臨機応変さが求められる、
でも、それだけじゃ諦めしか生まれようがない。
それじゃルサンチマンになる、シュプレヒコールになる、
本当の声が聞こえてこない、本当の命の在り処を見つけられない。
おびただしいほどある答えを、
知らなくてもよい、浮ついているかも知れないけど、
ひび割れ、亀裂、矛盾という弱さをつないで秤にかける、
心の中の花も、葉も、朽ちて、裸になって、
繊細な神経を全部ありのままさらけだして、
グロテスクでも、そう、醜くでも、僕はここにいる、
受け止めてみたい、この幻のような人の心が生を美しくする。


  *


  73





fruit time


僕等の住むこの地球には、
何千種類もの果物が存在していて、
その中で食べられるものは百種類ほど。
とはいえ、王侯貴族というわけでもないので、
せいぜい十数種類、数種類がポピュラーな果物ということになる。
僕も奥さんがいなかったら苺や葡萄を買おうという、
気持ちにはならなかった。
健康にいいらしいぞというのは知っているけれど、
なんかやたらと高い。
とはいえ、果物は毎日の食卓を色とりどりに飾り
変化を持たせてくれるだけでなく、
健康に欠かせない有益な栄養素を多く含む食品だ。
いいこと言ったよね。

「果実の王様」と呼ばれるドリアン。
ドリアンといえば、テレビなどで「臭い」という印象があるため、
(玉葱の腐敗臭または都市ガスのような強烈な匂いを放ち、
飛行機などでは持ち込み禁止にされている。
そんなの持ってくなって話だけど、いたんだろうな、やっぱり。
実のところ、ナガエミカンというのも臭いという。
ただ、臭くなった時が食べ頃であるらしい、一種の銀杏だね)
美味しいものではない、と思っている人もいるけれど、
「濃厚でクリーミーな甘み」が特徴の果物。
その美味しさから、一度食べたらクセになる人も多い。

個人的な意見だけれど「酸っぱい」とか、外国における現地の人が、
「普通に食べない」という果物の場合はジャムとか、
料理の調味料として使われることが多いようだ。
スナック菓子になっていたりするなどの創意工夫が見られるが、
ようは、創意工夫しなきゃ食べられないようなもの。
(けれど、うなぎの血には毒があるなんて、
日本人なら誰でも知っていることだ、河豚には免許がいる、
と合わせて、じゃがいもにも毒素があるは、当然知っていることだ。
だのに、それでも毎年のように中毒になったり、亡くなる人がいる)
この見地では、ゆず、というのをイメージすると分かり易い。
ゆず風呂っていうのも、風情があってもいいものだけれど、
正直それを食べようと思う人はいないだろう。
そこで思い出すのはやはり、野菜と思われがちなアポガドだろう。
信じられないことだけど、じゃがいも、も、野菜ではないし、
トマトは果物か野菜かということでアメリカで裁判が起きた。
明確な分類の難しさは学問の世界でも頻繁に起こりうる。
僕等もスイカで裁判を起こしてみたいところだ、
ちなみに僕はスイカを食べると、
口が痒くなるのできっとアレルギーだ。

そういえば「ムラサキフトモモ」という熟年女性好きの造語のような、
そういうフルーツがあるのだけれど、
(君は低反発リビドーという漫画を知っているか!)
ただの木の実かと思うと案外美味しく、
ブリーベリーのように期待するとがっかりするという代物。
でもこういう一体この人何描いてんだろうという漫画に、
時折してやられることがある。
僕なりに熟年女性好きの、おねショタ漫画として、
『団地魔女』という漫画を挙げておきたい。
何だこいつ、絵下手糞だなって思ったけど、いやこれがいい。
すごくいい、それはやっぱり魅力なんです。
こんなに漫画的表現を志向しているような作品に出会ったことがなくて、
僕は随分やられた。
そしてお前は一体何を話しているのか?

「赤いイガイガ」のランブータン。
ランブータンは、東南アジア原産のムクロジ科の中型から大型の、
熱帯の果樹で、その名前はマレー語で「毛」を意味する、
“rambut” に由来する。その特徴的な見た目は、
果実の表面に生えている柔らかい肉質の刺からきている。
外見はキツいが、中身はまるでライチのような上品な味、
甘くてジューシーで、沖縄でも栽培されているらしい。

沖縄つながりだけれど、サトウキビは砂糖の原料として有名だろう。
つい先日、サトウキビジュースというのを知ったのだけれど、
まあこれが不味いらしい。
色んな物の捉え方、切り口というのがあるけれど、
「ほう、どんな風に不味いのだろう」と興味を持つ人もいる。
炎上商法というのがあるように、ネガティブな要素やマイナスな面も、
世界で一番まずいように思えたサトウキビジュースと書けば、
これは完璧な釣り広告の感性である。
ちなみに僕は飲んでいない。

長細く赤い皮につつまれた木の実の、ウバリア・ルファ、
トロピカルフルーツの一種で、通称タリアン。
スイギュウの乳とかそんな感じで呼ばれてる。
中に細かく分かれた透明な実が入っているけれど、
果実を切ってみた時の深海生物感には慄然とする。
とはいえ、あけびだって「女性器」のような感じに見えなくもない、
(実はこれを書くにあたって、食べたこともない、
あけびを切っているシーンを初めて見たのだけれど、思わず拍手してしまった、
知っているけれど、現実にそんなナチュラルにいってしまいますか、と思った)
またツノニガウリも美容方面で注目されているらしいけど、
真っ二つにしてみたら、これ、本当に食べ物かと思う。
僕なりに分析してみると、これは白蟻とか、オタマジャクシとか、
あるいは無数の蟻が蝶を取り囲んでいるような、
そういう生命の不気味な感じだ。
先人たちの冒険心と勇気とアホさ加減に敬服するよりほかにない。

「蛇苺」というのを僕は知っているけれど、
スネークフルーツについては知らなかった。
インドネシアとマレーシアに自生する、椰子の仲間だ。
サラクともいう。
実の皮が赤褐色で鱗状になっていて、果皮も鋭い刺に覆われている。
大きさと輪郭だけは、熟したイチジクの実と似ている。

ところでバナナというのは誰でも知っているわけだけれど、
「チェーク・クロホーム」は、
カンボジア語で「赤いバナナ」を意味する。
そうなのだ、このバナナは赤い、
カンボジアのプノンクーレンで購入することができるらしい。
といって、中身は通常のバナナと同じ色をしているし、
味は割と普通で何の変哲もなく、かろうじてもっちりした食べ応えがあったり、
通常のバナナより甘いと感じるかも知れない。
こういうのを「赤いだけのバナナ」と称するべきか、
迷うべきところだ。インスタグラム脳には最適な果物だ。


  *


  74








文春砲


出版社のゴシップは限りない、
有名芸能人の不倫現場に、政治家の闇。
たとえそれが本当でも多くは信用性の薄い、
ゴシップ記事として流される。
週刊誌を売る側にとってはネット記事の時代でも部数、
ようは何処までいってもお金だ。
そういう中で週刊文春はゴシップ記事ではなく、
真実という風に解釈されて読まれている。
一世を風靡するような特ダネ、大スクープを挙げる、
「文春砲」

民主主義を中心に政治思想とその歴史を論じている。
・・蟻。蟻―――蟻・・。

もちろんそういう記事を書けるジャーナリストは稀だ。
扱う側が違うだけで、どんな真実の記事も、
ゴシップ扱いになり、
かたや一世を風靡するニュースにもなる。
影響力を持たないボカロPや、歌い手、
あるいは漫画家、みんな殆ど何の違いがあるかわからない。
どうしてそうなっちまいやがりましたかって嘆くことはできても、
とりあえず世の中っていうのはそういう不平等を当たり前に作る。
とはいえ、そもそも文春が一強であるのは、
一種の独占体制というのがあるからだ。
簡単に言えば、これもお金だ。

社会の思惑や演奏上へのこだわりも捨てて、
魔物めいた妖麗さが付き纏う、のびやかな極小的観察の世界。

たとえ道徳に悖る行為であれ、
人のプライヴァシーを冒すのはそもそもよいことではない。
中にはもちろんいるだろう、人の悪口を話す人、陰口を話す人。
でも、あなたの周囲でそういう人が、
よく思われている例なんて一つでもあるだろうか?
誹謗中傷罵詈雑言がネタとして昇華されている笑いもあるだろう、
でも何事も行き過ぎれば気分が悪くなる。
そう思ったことはないだろうか?
だが、人気者やスターには別の次元というものがある、
だるま落とししてみたい、ピラミッドから引きずり下ろしたい、
という心理がどうもあるといえる。

戦車と機関銃。核ミサイル。野蛮でサディスト。
・・・・・・・同一化がうまく受け入れられない。

けどさ、世の中には勘違いしている人も沢山いるけれど、
自分が善人だとか、立派な人間だとかいうのにも、
資格や肩書きが必要であり、
なんだったら心理学的手法でアシストする必要がある。
社長と美人秘書はワンセット商品みたいにね。
残念ながら、昔はそうじゃなかった、善人はちゃんといて、
立派な人間はちゃんといて、それを僕等は理解していたからだ。
クチが悪かったら申し訳ないけれど、
誰でも後ろ暗いところがあり、ゲスなところがあり、
みっともなくてカッコ悪いところがある。
そういうのを無理矢理引きずり出して、悪意たらたらに、
他人の行為の悪しき一面とばかりに暴き出す心理学、統計学。
もちろん、それはそれでいいのだ。
あとは、それを好きか嫌いかであり、
自分がそれをするか、しないか、だけだ。
心理学や統計学の本を読むよ、知識は必要だからね、
でも、僕はなるべくそれを使いたいと思わない。

―――でも、綺麗ごとは言わないよ、
非日常を切り取ったら、
あとはもう、写真機のシャッターのように降りるだけさ・・。

職場で同僚がゲスな野郎だったとして上司に報告する、
という人はまずいないだろう。
嫌いだったらそっと距離を置く、これはマナーだろう。
それでも我慢できなかったら職を変えるとか、
裁判などの手段を取るだろう。
ブラック企業や、サイコパスなどの人格不適合者、破綻者、
世の中を生きていればまあ屑に出くわす確率は引き上がる。
学生時代はそうではなかったのにというが、
あれは管理されているからだ、外部をシャットダウンする仕組み、
でも、そういう中でも僕等はお笑いを通じて悪意という不純物を、
どんどんどんどん手に入れている。

本当にそういうのが全部必要な一連の方程式なら、
僕等はきっと病気になったりしない。
心の病に至らない、と思う。
漠然と曖昧になる固定点、無智なほど適用する対象、
適切な対処が、ぼやけてゆく。

で、裁判だ。
週刊誌はいままで何度も裁判沙汰を起こして、敗訴している。
裁判自体が弁護士をのさばらせていて、屑の職業の代名詞みたいだけれど、
ルールという線引きにはやっぱり屑というのが必要なのだ。
仙人とか、神様とかがいるにせよ、
僕等が活動するその地球という場所に直接影響を与えているわけじゃない。
ね、週刊文春だって別に例外ではない。
しかし弱小週刊誌の多くは、割に合わなくて止める。
名指しで攻撃するなんていうことはまず出来ない。

少数の集団から、
多数の集団へと移行していく過程・・・・・・。

けれど文春砲は違う。
裁判になっても屋台骨を支えられる潤沢な資金力がある。
徹底的な証拠集めだって安くはない、
それに加えて諸々の裁判費用が決定したら致命的だ。
このコスパの悪さがゴシップ記事が流布する要因でもある。
これをして、お金の力ではないというのであれば、
そんなのはまったくの嘘だ。
一つのネタで大体一億、多い時で数億の売り上げになる。
血も涙もない取材姿勢の裏は、儲かるからだ。
正義という言葉はただのまやかしだ。
だが、お金の力が優秀な取材力を持った記者を集める。
潤沢な取材費用と、徹底的で、執拗な言葉の暴力。
そしてそこへと集まる読者の関心を集めるネタ。
こういう循環構造はさながらマネーロンダリングだ。
君もそう思わないか?

風に飛び散る藍の飛沫。
あるいは遠く離れてゆく水平線―――。

情報提供者には一銭もお金が入らないということは、
知られていることだ。
だが、周囲の眼はそうはいかない、
何十万、何百万、場合によっては何千万かとも思われる。
アメリカだったら僕もちょっとは疑うかも知れないけど、
けれど、信憑性のあるなしはともかく、
日本で情報提供者にそんな破格の費用は支払えない。
だけれどこういう情報提供者神話は尽きることがない。
一種の都市伝説だ。
もちろん食事の代金とか、
申し訳程度のお金を渡すことはあるかも知れない、
けれども真実はまあそんなものだ。

「情報をいくらで買ってくれるか」と聞かれた段階で、
「情報には金銭は支払えない」と答えるはずだ。

では、お金ではないのに話す心理とは何だろう、
切り口が変わるけど、
正義という言葉を言うのならあなたはまだ若い。
この社会は人間の屑で出来ている、と思った方がいい。
僕も十代から二十代に移り変わる段階で、
つくづくそう思った。
復讐心、あるいはどうしても我慢できないという恨みつらみ、
地獄から天国へ行けないものは、やっぱり地獄へ行くしかない。
墓穴をこじ開けて骨を引きずり出して呪いを生み出すぐらいの、
そういう一切救われない、醜い人の心だ。
大多数の人はちゃんとわかっていると思うが、
道徳を悖る行為をした政治家や芸能人を、
白日の下にさらす行為の何処に正義があるのか。
百歩譲って、談合だ、不正行為が見つかったというなら、
それはジャーナリストの正義だ。

鬱展開は始まったんだよ、
心を揺らすたびにシリアスな顔をし、時代のせいにした僕等は、
きっとこれから新しい禍根の種子を残すだろ―――う。
考えたこともないっていう顔をしている君には、
臨機応変な対応をせざるをえない、この余儀なき決断すらも、
すげなく斥けられることの馬鹿馬鹿しさがわからないだろう。
麦の収穫が終わって、稲の植付けが始まったにすぎないんだよ。

世の中にはそういう正義の筆を公表しようとするだけで、
社会的かつ政治的な圧力をかけられる例はいくらでもある。
とある宗教組織にいたっては、犯罪行為に手を染めた。
場合によってはその業界で仕事が出来なくなる、
噂の審議は定かではないけど、
自殺に見せかける殺し屋もいるというし、
そうでなくとも、ジャーナリストが行方不明になったって、
この国の行方不明者は沢山いるのだ。
例外はあるにせよ、
やっぱり見つからなければ裁判だって出来ない。
お金の力、権力の力というのはそういうものだ。
世の中には裁判を引き延ばして悠々自適に暮らす悪党だっている、
笑いながら銃で人を殺せる人だっているんだ、
お金や権力、そういうものが理不尽な世の中を生み出していること、
会社でも学校でも、何だったら人付き合いやネットにも、
君には何となく思い当たる節があるんじゃないだろうか。
ねえ、そういうものと対峙して、死ぬつもりで覚悟を決めた、
ジャーナリズムというものがあればそれは正義だ。
ペンは剣よりも強し、だ。

でもはっきり言って、政治家の隠し子がいようが、
芸能人が不倫しまくっていようがどうでもいい。
それはもちろんいけないことだ、
でもそれを言うのはジャーナリストの仕事ではない。
お前は誰だ、
そんなのは文章の必修科目ですらなく、
人間の品位の授業の一つにも入らない。
自らの血を流せよ、それでこそ他人の返り血を浴びる権利がある。
人を騙す行為が何故詐欺行為にあたらないのか。

あらゆる時と場所の規則を超越して、
たとえばそう、時がもつれるように、
本当の自分にすら容易に接近しようとしない人が、
一挙一動を絶えず興味深くじっと眺めている。
檻の中を眺めている何かを眺めている別の何か、だ。

小さくて弱い理非から外れた人間が生み出す、
知りたいではなく、
見たいでしょという障子の穴を除くような根性は、
懶惰淫恣な生活の人にはどうにも響くらしい。
毎日死ぬほど努力しようと思って暮らしていて、
他人を蹴落とそうとか、馬鹿げた考えをしている方が疲れる。
忙しいって疲れるけれど、
僕は人を傷つけないのならそれがいいと思う。
賤民という言葉が消えて、ルサンチマンという言葉が残った。
劣等感は消えない、どいつもこいつも屑人間の集まりだ。
一切合切が、救われない構造の中で繰り広げられる、
馬鹿の総見本市だ。

階段をさ、ただ昇っているだけ、ただ降りているだけみたいな、
そういう思考回路についていけない・・。

もちろん、そういうのが好きな人間の屑も沢山いるし、
中にはそこまでひどいのかと神経を疑う奴もいるのは確か、だ。
でも、だからといってそんなものを暴き出すことも、
そんなものを読むことにも何の価値があるのだろう。
歪曲収差に心がねじれてくような錯覚をする。
Xもといツイッターではたびたび謎の粛清が繰り返されてきた。
2ちゃんねるもとい5ちゃんねるでも住所暴露は繰り返されてきた。
正義の執行人と名乗るような奴もいたらしい、お祭りムードで。
知っている人間とりたてて恨みを持っている人間が、
仇討ちする、復讐をするというのならまだわかる、
それが正しい行為だとは言わないよ、
でも仇討ちや復讐をしたい人の気持ちはわかる、
人を殺したいほど憎くなる気持ちもわかる、
だからそういう負の感情を抱え込んでドロドロする人の心を生み出す、
闇の連鎖、救いようのない構造に待ったをかけたい気持ちがある。
でもお前誰だよ、
よんどころない事情というのがあるなら書き込めよ、
それは裁判でも使用できる証拠になるからな。
それとまったく関係のない第三者がそんなことに参加する現象は、
たんなるストレス発散としか思えない。
知る権利とか伝える義務って何だよ、そんなものありはしないだろう、
こういう生贄産業廃棄物業界の闇は、
社会をうすっぺらくし、人間をうすっぺらくする。
思ひやる八重の汐々、
いづれの日にか正義の濫觴に帰らむ、
とでも歌おうか、精神的に追い詰めて自殺した政治家や、
自殺した芸能人のことをあなたは本当にどう考えているのか、
そこまでの覚悟や責任がある奴なんてただの一人もいはしない。
悪魔に魂を売ってでもお金が欲しい、
本当に頭の中が漫画みたいな人間って沢山いるんだなと思う。

独占体制というのは何処の世界でも同じで、
さながらダイヤモンドのとある会社のように、
いずれ大きな被爆対象になるわけだけど、
お金なんていうものを信奉する現世利益の氷山の一角は、
同じ穴のむじな、人を呪わば穴二つといくだろう、
それでも価値がある内は持ち上げてくれる。
反感を買いすぎれば世間からそっぽ向かれる日も近いだろう。
文春砲の終焉のカウントダウンはもう始まっているのだ。
落剝した挙句に餓えた犬が骨を拾いに行くようなことがあるだろう、
金の箱はすなわちパンドラの箱だ、群衆は雷同する。
無表情の人が口だけ笑顔を作りながら、それを見ている。
―――僕等の【社会】を。


  *


  75








The end of the universe and the waltz


「宇宙の最後」には一体どんなことが起きるのか?
現在の宇宙には数え切れないほどの星や銀河が広がっており、
いつまでもこの状態が続くかのように思われるけれど、
いつの日か宇宙にも終わりがやって来る―――らしい。

僕は懐疑的ではないし、寂寞の長さにインド神話をひとしきり思うけど、
こんな時、預言者ノストラダムスやら何やらというのを考える、
いっておくけれど、これは満更出鱈目じゃない、
だってそうだろ、預言者の誰も宇宙の終焉について述べた事例はない。
そこまで誰にとっても必要ないからだ。
預言者が詐欺師という人もいるが、科学だってその方面では完璧な詐欺師だ。
僕は科学者の仮説をさも、もっともらしく結論のように語る論調よりは、
はるかに信頼できる。

だって新しい学説や、新しい発見、
なんだったら法則性の変更が起こった場合に、
その人々はどんな言葉をもっともらしく言うのか。
必要がないものは認識の限界というのがあって、そもそも存在しない。
思考の澱にだって触れないからそれは生まれないのだ。
科学だってインスピレーションにすぎない、
なんだったらイリュージニストという言い方をしてもよい。
きっと僕は科学者の面々を激怒させるだろうが、
それはもう美しいだけの荒唐無稽な世界である。

宇宙が生きたまままったく死なない幽遠の時を彷徨し続けるかも知れない、
何がダークマターで、何がダークエネルギーだという考え方だって、
僕は当然あるだろうと思う。
何でそうは思わないかって言ったら、人は自分の所有物の延長線上で物を捉え、
終焉すらも制御したいと思うからだ。愚かの極みである。
こんにちは、宇宙です、サポート期限が切れました、終了します、
長い間ご愛顧ありがとうございましたと言って欲しいのだ。
悪意ある物の言い方だけど、
無限の季節の展望を勝手に箴言調でかくあれかし断定するな。
芥川龍之介は好きだけど、間延びした悠長な時を愛せ、
だから二〇世紀はストレス社会になったのだ。

さて、ビッグクランチというのがある。
急激な収縮を起こし、潰れて終わるという。
宇宙は現在加速膨張しているが、やがて加速膨張の原因である、
ダークエネルギーより重力の効果がより強くなって加速膨張が終わり、
宇宙は収縮に転じて最終的にビッグバンと同じ高密度状態に逆戻りする。
こんにちは、宇宙です、サポート期限が切れました、終了します、
長い間ご愛顧ありがとうございました。

熱的死というのがある。
膨張の末に、あらゆる活動が停止する。
宇宙の最終状態として考えられうる状態で、
宇宙のエントロピーが最大となる状態を指す。
この状態に達した宇宙は完全に均一であり、何も変化しなくなる。
こんにちは、宇宙です、サポート期限が切れました、終了します、
長い間ご愛顧ありがとうございました。

ビッグリップというのがある。
ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる。
恒星や銀河から原子や亜原子粒子に至るまで、宇宙のすべての物質は、
宇宙の加速のために未来のある時点でバラバラになる。
理論的には、宇宙の計量は、有限な時間で無限大になりうる。
こんにちは、宇宙です、サポート期限が切れました、終了します、
長い間ご愛顧ありがとうございました。

真空崩壊というのがある。
真空の泡に包まれて完全消滅する突然死。
真空の温度は非常に低いので、量子力学的な揺らぎによって発生する。
真の真空の核ができると、周りの空間を巻き込んで、
光のスピードで広がっていき、真空崩壊が発生すると、
物質を構成する原子は素粒子レベルまで分解される。
そして、宇宙の構造はすべて無くなってしまう。
こんにちは、宇宙です、サポート期限が切れました、終了します、
長い間ご愛顧ありがとうございました。

ビッグバウンスというのがある。
特異点で跳ね返り、収縮と膨張を何度も繰り返す。
宇宙が収縮し、ビッグバン的な特異点にいたると、
跳ね返ってふたたび膨張する。
こんにちは、宇宙です、サポート期限が切れました、終了します、
長い間ご愛顧ありがとうございました。

さて、幽閉中の慰安のような茶番の斜陽で茶しばいたわけだが、
この前提にはインフレーション宇宙論とか、
ダークマターの発見とか、加速膨張の発見とかがある。

もちろん天文学や物理学の、ニュートン、ガリレオ、コペルニクスが。
アインシュタインやハッブルによって、パラダイムシフトが、だ。
思考錯誤する過程を絶えずじっと見守る上で、
嫣然たる姿勢や妖艶な媚びのような、上辺の技巧というのを感じる。
すべての弱い議論はあやふやさから出発するけれど、
根拠なんていうものが絶対ではない時、
縋りつくよすがによって悉く見て知ったように書く、
五つのシナリオというのがある。

では僕は六つ目を書こう、人類は宇宙人に支配されて家畜化する。
そして宇宙人は「お前等なんかに宇宙のことがわかるわけない」
とせせら笑いながら、檻の中の人間に言いましたとさ。
いずれ、宇宙人は薬を飲ませて人間の脳は退化し、
言葉も考えることも出来なくなりましたとさ、
悲劇的雄渾の極致だけれど、進化あれば退化ありけり。
人権なんていう孤独の匂いは必要ありませんよ、
上等とか下等なんてそもそも馬鹿馬鹿しい裏切りであり、まどろみ。
宇宙人はペット愛好家です。毎日散歩に連れてって、
健康に気遣ったヒューマンフードをくれてやります。
宇宙人は好んでそれを「ほねっこ」とか、
「ペディグリーチャム」と呼んで微笑んでいます。
これは非常に宇宙戦艦ヤマトなオタク用語です。
ヒューマンは頭を撫でられるのが好きなのでよくお座りします、
あぐらを掻いていいよと言いますが忠誠心豊かです。
友達であり、親子であり、一種の恋人のようでもあります。
ベッドの上で寝かせないと腰を悪くします。
淋しがりの甘えたがりで余計なことを考えたがりのヒューマン種は、
毎日眼をかけてやらないと飼い主を殺すこともあります。
愛情はめいっぱい注いで、ある作用を引き起こす要因である、
不安や恐怖を覚えさせないように世話しなければなりません。
そしてヒューマン種は自然と、知性の高い宇宙人が飼うのです。
「なあ知ってるか、ポチ、お前の祖先は、
宇宙が終わるとか言っていたんだよ、爆笑だよな。
でも宇宙なんか終わると論じる前に、
宇宙がそもそも何なのかもわかっていないじゃないか、
何故それでも神が必要で、宗教が必要で、愛が必要かも、
お前の祖先はわかっていなかったじゃないか、ただの一つも」
「(ご主人様は何をおっしゃっていやがるのだろう?)」
そんなことを考えている暇があったら、
日々問題があることを考えやがれ、
おしまいおしまい、ラストワルツが始まるよ。
めでたしめでたし、そのパートナーは誰?
―――ああ、宇宙の一切合切何もかも、馬鹿馬鹿しい。


  *


  76







ポスティング


漫画家とかボカロPやイラストレーターなど、
インドア派クリエイティヴに多いのだ。
いやいやそれは夢見がち、でも俺コミュ障だし、
とんちんかんですっとこどっこいのこの俺。

株式会社ポケモンセンターの採用サイトで自己分析して、
将来に繋げようと思ったら、
二〇二三年一二月二一日を持って終了していた。

ドヤアとキメ顔して尻掻いてる、
スーパーニートプレイヤーのかもめだしってことならどうするかって、
新聞配達、タクシー運転手、
ポスティングと相場は決まって来る。
仮面ライダーV3。

それよりひどい場合は、職業訓練を受けに行ったり、
社会復帰プログラムを受けに行ったり、
知り合いのツテとか色んなものを頼ってみようね。
地に足つけるっていうことはしんどいけど、
バス停でも駅前のベンチでもいいからさ、
色んな人を見ていたらわかる、
みんなそれぞれの生きづらさを抱えているものさ。
あ、リア充だ、地獄に墜ちろ。

スーパーニートプレイヤーは電車を泣きながら帰り、
ブランコを漕こうとしたらなくなっていたけど、
アドレナリン全開、
反応速度測定をしてパッとしない記録を叩き出した後で、
Googleマップ上で自動車を運転できる、
3Dドライビングシミュレーターでうおおおおお、する。
そして「Astronaut.io」とかいうカオスなマジヤバいサイトで、
低周回軌道から見た地球の姿を背景に、
ランダムな映像を延々と流しているのを観てた。
閲覧数ゼロのYouTube動画の愛を感じながら、逝こうぜ。

で、オススメするわけじゃないけど、
宗教に入って仕事を探すっていう手法も、
俺は存外いいんじゃないか、と思う。
カルト教団とかは駄目だよネットでよく調べてね、新興宗教。
道閉ざされてるんなら、
明らかにアヤシゲイカガワシゲなところに首を突っ込んでみる。
荒療法で上手くいくケースだってある、
いわば毒の沼に突っ込んでHP削られながら辿り着く。
何もせず、動かずに悩んでるぐらいなら、
失敗をして学んだ方が成長できる。
在宅ワークや内職の鬼になったり、
資格などを取得するのも成功の秘訣だ。
慣らしが必要な場合はアンケートモニター、治験、
データ入力、短期の工場バイトなんかもいいよね。
心配するな、マジンガーぜえええええぇぇぇ。
ってそれ何だよ。
へ?

いや、俺もね、すでに積まれたテトリミノを崩していく、
逆テトリス「Fudge」で様々な能力を花開かせていたし、
ニコニコ動画で火事起こしてる動画とか、
何か珈琲の豆を挽いている謎動画も観たしね、
ここまできたらって「CityHop」で、チルミュージックを聴き、
様々な都市をヴァーチャルに旅したよ、
ああ、ピーターパン・シンドローム、仕事したくねえ。
ああ、これ以上何もねえ、
神様お前の頭に洗面器落としてください。

で、ポスティングの反響率は〇.一~〇.三パーセントとされているけど、
仮に一〇〇世帯の反響が欲しいのなら、
単純計算でも一,〇〇〇枚の配布が必要なんだという世界なんだ。
っていきなりなんなんですか、あのさ、これ、ポスティングの詩なんだよ。
大人の事情なんだよ、わかるだろ。
さてポスティングの話だけど、一人で配れる枚数は一時間あたり、
建物が密集しているところで三〇〇枚程度、格差感じるよね、
これが仕事の難しさってやつかって思うよねー、
けど都内タワマンだと一時間で一,〇〇〇枚も夢じゃない、
あっという間に捌けて明後日の方向を見ながらレフトフライ万歳できる、
そして耳をすませばのラストシーンは―――来ないな、
やっほー、スーパーニートプレイヤーの腕の見せ所。
あ、ごめん、息切れしてきた。
ちょっとコカコーラウエスト飲んでいいですか?
ああ、美味しい、マックシェイク。

あ、すみません、ちょっと昼休憩。
おっおっ、これこれ、無限のリアルタイムピクセルアートキャンバス、
「Everyone Draw」
ってお前仕事しろやって色んな人に怒られながら、
ケンズウィ・ミ・ヤ・ダワの有名な詩の一節。
西ニツカレタ人アレバ、
俺モ疲レテルンダヨト言イ、
南ニ死ニサウナ人アレバ、
ソノママ俺モオ亡クナリ。

でねって、何普通にナチュラルに入っていこうとしているの、
うるせーな。お前、メスカブトムシの気持ちわかるのかよ!
何度も言わせるなよ、お前、メスカブトムシの気持ちわかるのかよ!
腹立った時に、連呼してやりましたよ!
でね、建物がまばらであれば一〇〇枚から二〇〇枚といわれてる。
チラシを自転車やバイクなどで持って回り、
郵便受けに入れて行くのが主な業務で、
作業自体は地味な単純作業なのだが、
意外にもスキルにより、収入や待遇が変わって来る。
コンビニや駐車場の場所を見つけられるスキルや、
動きやすいラフな格好でありながら存在感を消せるステルスは、
スーパーニートプレイヤーにも超向いている。

あのね、ショボさっていうの、ミットモなさっていうのも、
そういうのもね、天文学的確率で需要があるものなの。
うさぎだってね、にんじん食べるの。
うさぎうさぎ、にんじんにんじん、美味しい、美味しい。
下手糞な絵、下手過ぎる文章、センスなさすぎる音楽、
Gしか弾けないそれこそゴキブリのようなギターもね、
君は一七〇キロの速球に興奮する、
でも俺は時速一二〇キロぐらいの星野に興奮する、
投球術ってやつ、やったー、
ワクワクすっぞ、そしてピラミッドの中を探検できるWebサービス、
『The Tomb of Ramesses』で人生という糞ゲーの暇つぶしをする。
ふう、最高にイカしてんな、俺。
いま確実に、ガンジーを超えちまったんじゃねーか。
パイナップルケーキ作れるんじゃねーか、いまなら。
いま俺の中の、ガンジー度数がヤバいことになってたぞ、なあおい、
いまなら、青汁に缶コーヒーを入れる、
サクソフォンプレイもできるんじゃね?
あ、こら、何ジロジロ見てやがんだ、喧嘩売ってやがんのかぶっ飛ばすぞ、
スーパーニートプレイヤーかもめなめんな、
俺は沢山のニートのために愛と夢を与える職業をするんだー、
でもお前、正社員で働いてんじゃん?

とはいポスティング禁止を掲げている家やマンションもある。
禁止されているポスティングすると、高確率で苦情が来る。
そんな時に精神と時の部屋へ逃げ込むこともできない。
まず、禁止されてないか確認し、
されていたら大人しく引き下がるのがルールというものだ。
ただ、ポスティングあるあるで、
気付かずに入れてしまうこともあるようだ。
ポスト投函口が二重構造とか、チラシを入れたらチラシが落ちたり、
ポストがそもそも何処にも存在しないなどの幽霊現象もある。
罠はそこかしこに潜んでいて住民いたら後回し、
相手はゾンビだからこっちも必死よ、そういうゲームだからね。
ゲームじゃねえよ、
でも猛犬いたら手を噛ませてあげたりね、
噛まれた後に単価安いんだって愚痴ったりしてね、
でも天気予報はいつでも心の中に雨だよってね、
大雨の日や雪の日、夏の炎天下での作業はとても苦労するよ、
それなのにお前は噛んだ、だから慰謝料請求していいよね、
ひろゆきとかいう詐欺師は大学時代に五回、
アタリヤ家業を自慢げに話していたし、
でもねそれが素晴らしい、だってそれがスーパーニートプレイヤー。
今日もいってらっしゃい、ロケットスタートだぜ、
始まるぜ、始まるぜ―――「隕石衝突シミュレーター」で、
地球上の任意の場所に隕石を落とす、
ふっふっふ、これがあれば・・・・・・。


  *


  77







ヒアリ


世界中で猛威を振るったヒアリは、
赤茶色で、二.五〜六ミリのアリだが、
アメリカでは、被害額が日本円で年間七〇〇〇億円。
毎年一四〇〇万人以上の人々が刺されていて、
その多くでアレルギー反応が起きていると考えられている。
炎症や腫れが見られ、数日後には無菌性膿疱となる。
それでも僕等の感覚でいえばスズメバチのように、
アナフィラキシーショックを起こし放置した場合は、
死の危険性もあるし、実際死亡例も出ている。

南米生まれのヒアリには二種類の毒があって、
一つは焼けるような痛みを与えるピペリジンアルカロイド。
毒の成分の九五パーセントは水不溶性のこれだ。
もう一つが、ソレノプシンというたんぱく毒で、
有機合成化学の研究対象として注目されてるのだが、
細胞毒性、溶血性、壊死性、
殺虫、抗菌、抗真菌、および抗HIV特性を持つ。

といってもピンとこない人もいるだろうけど、
世界の侵略的外来種ワースト一〇〇に堂々とランクインし、
前述した毒に加えて、繁殖力が強い。
一度定着してしまえば、厄介なことは間違いない。
ちなみに定着とは、ヒアリの集団が越冬して、
複数年に渡り繁殖し続けるような状態。

ところで「ヒアリは北海道には住めない」と言われているが、
これだって「北海道にゴキブリがいない」のと同じ理屈で、
嘘になりうるかも知れない、と思うのが無難なような気がする。
オトナ語で申し訳ないし、
別に北海道民に恨みがあって言うわけじゃなくて、
その言い方が物凄く僕には引っ掛かる。
ゴキブリだっていまは繁殖するのに、
ヒアリが繁殖しない根拠は何処にあるのかというツッコミだ。
繁殖しやすい場所が増えれば、
どんな結果が引き起こされても文句は言えない。
ただ、寒い地域は他よりその危険性が薄いというだけだ。
僕はコロナが流行り始めた時にマスクすらしていなかったけれど、
そこから一か月も経たないうちに、
マスクをせざるを得なくなった経験をとても強く覚えてる。

ちなみにヒアリが定着した後に根絶できたのは、
ニュージーランドだけだが、これも多大な費用をかけて、
二年がかりで駆除したというものだ。
二〇〇一年にオークランド国際空港でヒアリの巣が見つかった、
ニュージーランドでは発見場所から半径一キロ以内の、
物品の移動を全面的に禁止。 徹底した調査と駆除を繰り返し、
政府が根絶を宣言した。
もちろん北海道民と同じくニュージーランドの人に恨みはないけど、
これからだってそういう可能性は起こりうる。

ちなみにヒアリが北米で分布を拡大した後、
中国や台湾などの環太平洋地域に侵入が相次いでいたことから、
いつか日本にも来るだろう、と環境研では考えられていたらしい。
日本でも二〇一七年に最初に発見されており、多くはコンテナなどだが、
もう回数を数えるのも面倒なほど発見されているし、
日本では二〇一七年に一人、
二〇一八年には二人が軽傷を負っている。
というのが、ウィキペディア情報なのだが、
ウィキペディア外のホームページやサイトなどで、
たとえば中国やフィリピンのコンテナから見つかっているというのを知った。
多くは注意の喚起をするにとどまる比較的無難なものだったけれど、
ヒアリはもうそこまで本当に来ているのだ。
これもオトナ語だけどね、注意しているだけで防げたら儲けものだよ。

ヒアリの専門家に至っては、
「どの港で発見されても、おかしくない」と言う。
けれどじゃあ港や空港などを徹底的に取り締まればいいと思うが、
個人宛ての海外輸入品の箱から見つかる場合もあるらしい。
この水際強化でヒアリ探知犬を導入しようとしたり、
二〇二三年四月一日には、
「特定外来生物による生態系等に係る、
被害の防止に関する法律の一部を改正する法律」が出た。
「外来生物法」ね。
ヒアリは「要緊急対処特定外来生物」に指定された。
輸入品や陸揚げした港などからヒアリが発見された場合に、
通関後の検査や物品の移動禁止、廃棄、
施設の消毒の命令などが可能になった。

何だかこうやって書いていると、
日本政府がとんちんかんなことをしているように聞こえるけれど、
だってじゃあいままでどうしていたんですかと疑問に思うけど、
お役所仕事、政治というのはそういうものだ。
少数派だと意見が通るけれど、大多数になると意見はまず通らない。
物事の順序としてはよくあることだから今後もこういうことはある。
海外旅行で掏摸があると考えて行動するかしないかだけでも違ってくる、
もしあなたに小さな子供がいたら物凄く気を遣うはずだ、
何事も自衛、ならびに知識を持ってあたらなくてはいけない。
国なんかに頼る時代は終わったというのは悲しいけれど、
別にディスっているわけではなくて、
政治献金の問題、原発の問題と併せて、
個人がもっとしっかりしなくちゃいけない時代ではないかと思う。
ずば抜けてモノを考える必要はない、
必要なのは連携と、シミュレーションと、指針をしっかり打ち出すことだ。
「国家なき専門家なきスペシャリストの時代」だ、と。

とりあえずインスタグラムやティックトックの、
頭の軽くなりそうな動画は素敵なので、
それを参考によくよく考えて欲しい、
もうこの子たちにお任せして、日本を沈没させようぜ。
僕は大好きだけどね、メリハリは大切だよ、
どちらかに傾きすぎちゃ駄目だよ、
面白いことと、真面目なことはちゃんと分けようっていつも思う。

ところで同じアナフィラキシーショックを起こす、
ヒアリとスズメバチの大きな違いは、
多くのところスズメバチが山、家の軒下や屋根裏などであるのに対し、
ヒアリは公園や野原など、子供たちが遊ぶ場所に現れる。
会社の花壇の傍によいしょと座っていたら、申し訳ないけれど、
アリなんか普通にいる。
まあ仕事場に一度スズメバチが現れたこともあったけどね、
アリは危険音を鳴らしながら、
「これから行くぜ」という暴走族とか、決闘へ向かう漢でもない、
静かな殺し屋然として、ゆっくりゆっくり近づいてくる。
もしこれが繁殖しているアメリカだったらこんな風に呑気に、
座ってはいられないだろう。
日常が常に危険と隣り合わせっていうのは、
バイクを運転する度に思うけど、
公園のベンチにおちおち座れなくなったら僕は泣くかも知れない。
公園愛好家としていくつかの定義を掲げてきたけれど、
やっぱり日本って平和ボケしているなと思いながら歩くのがよい。

ヒアリは土で直径二五~六〇センチ、高さ一五~五〇センチの、
ドーム状の、特徴的な蟻塚を作るので発見しやすいともいえる。
またヒアリの行動範囲は狭い。
交尾したところから半径四〇〇メートル程度が一般的だが、
中には風に飛ばされて一キロ、
最大では一六キロ移動するという話もある。
僕はこの話を聞いた時に、子供時代、車のフロントガラスの隅に、
蜘蛛がずっといたのをふっと思い出した。
走っている最中に風に飛ばされていなくなったけど、ね。

なお、一般人が在来種、例えばキイロシリアゲアリはじめ、
オオシワアリやアミメアリ、
ヒメアリ等をヒアリと勘違いするケースが多発しているけれど、
疑わしいアリを見つけた場合は、環境省ヒアリ相談ダイヤルへ。
仕事場でも判断の基準って難しいことがあるのだけれど、
僕はとりあえず小さな声でも、
まず言おうとすることが大事だと思ってる。
だから判断の基準の難しいことを教えてくれたらお礼を言う。
これは基本姿勢だよ。
といって警察や病院へのいたずら電話する人がいるわけだ。
本当に逮捕されている人がいるし、踏みとどまれるならやめよう。
この心理もきっと痴漢や多重債務者になる心理と同じだ、
あおり運転をする人もそうだね、
ストレス発散ならびにルサンチマン、心の魔というものだ、
一度味をシメると抜け出せない、自分をもっと客観的に見て、
病院へ行って相談をしなければいけない、
心の病気というものは僕が知る限り、
日常の不平不満を持ちやすい隙間に入り込みやすいものなのだ。
突発的なものじゃない、ゆっくりゆっくり腐っていくのさ、
ヒアリが腐肉を好むみたいにね。
花蜜でも、糖分が多い物よりアミノ酸が多い花蜜を好む。

一緒だよ、言わなくちゃ始まらない、止まらない。
記憶が間違ってなかったらだけど、還暦を過ぎた人がコンビニで、
三度目の窃盗をし逮捕され、裁判官から説教されたというような、
記事を読んだのだけど、深呼吸をして、冷静に振り返って、
本当のその理由について考えなくてはいけないよ。
それでこれは何の話かって、もちろんヒアリの話だよ。


  *


  78







雨の街


彫刻的な感じから絵画的なものへ、
あたかも巨大水槽のジンベイザメが圧巻の、
ジョージア水族館の中へでも間違って入ったような気がする。

まるで揶揄い、眠りに陥るように、
影薄く模糊としたものへ変えてゆく、卯の花腐し。
朝方から低く垂れこめていた青灰色の雨雲は、
東からの風に追われ、
雲が速く流れているように感じられ、
陰気臭い、女性に腋毛でも生えてきそうな、夜への招待状。

モネならきっと印象派風に蓮とかと一緒に描き出す、雨の街は
四季豊か、自然豊かというきわめて自堕落な人々の住む胸に、
強く、本当に強く、響い―――て・・・。

青空をいま漉き出し、あたかもおびただしい鱗やタイルやように、
暗沫の影とともに見る見る剥がれつつあるアンリ・マチスの面影。
世界の終わり―――だ・・。
美しいものは同時に淋しいものであるという、一見矛盾した、
二つの、心的傾向は無辺の世界の中に小さく生きる、
儚さや、心を蝕み尽くす弱さであるのかも知れない。

三階のヴェランダでは慌てて洗濯物を取り込んでいる女性の姿が見え、
MTBに乗った、短髪の、韓国の歌手みたいな印象の十代の男の子は、
嫌がっているはずなのに、楽しそうに駆け抜けてゆ―――く。
硝子絵に伝う水のように、入れ子状に、
亀が沢山住んでいるあの小さな川では、まるで大洪水。
しゃぼしゃぼと小さな前脚で泳ぐミドリガメを思い出す、
家で飼われていたミドリガメは何処へ行ってしまったんだろ―――う・・。
流されたりするんだ、生きるのってとても大変なんだ、
毒を持った花や虫や蛇のことを我がことのように感じる。
しかし、そうだねしかし、無為つれづれに、何処で始まったんだっけ、
水溜りを傳って、蛙のようにぴょこぴょこ跳ねてさ、
ああそうだよ、一体何処から、何をしに、
僕は雨の街へ出たんだったっけ。
歩き始めた頃はまだブロック塀をまばらに濡らす程度だったのに、
四〇〇種類にも及ぶ雨の表現はしとやかな響きとして、
それゆえスラングのように、じとじとと降り続き、
世界に甘饐い、青い後光を放っている。

街全体から生活の音を奪う雨に濡れながら、
身を躱すつもりで、やっぱり少しずつ、本当に少しずつ、
夢と現実の織り成す世界の方へ接近してゆ―――く・・・。

美しくない街路、大きくて人目を引くこと以外に何の取柄もない広告、
景色を覆うむやみに高い事以外にまったく何の取柄もない建物。
濡れたスカートが気になるらしいドブネズミみたいな女、
車の下でこちらをうかがっている翡翠の瞳に体温を秘めている猫。
こっちを見るなよ。
何千メートル走ったって、
―――風景の奥からメッセージが聞き取れない、
きっとエネルギーの循環が悪いんだ、
人を苛立たせ不幸にする人々が沢山いるんだ。
偏見丸出しでそう思った。

森を歩いている時のハーブのような匂いをふっと思い出す、
真夜中、そんなシーンあったかな、
チャップリンの真似事と称して傘をくるくる回していた。
馬鹿なことっていつまでもなくならないね、
難解なんだよ、中庸じゃなくてさ、
妙諦なんだよ、冥加なんだよ、
―――本当のことなんて何一つわかりはしないよ、誰にもね、
ただ、欺きながら清く明るく朗らかに死んでゆくことは出来る。
ぼうっと霞んだ先ではそうさ、きっと鳥が死んでいる。
善と悪の対立もない、白と黒、右でも左でもない、
純一無雑な弱肉強食、適者生存という言葉の一路に緑を衝き、
どうして僕は鳥に生まれて来なかったのだろうかと思う。
繊細さや知性や個性というものは何なんだろう、
うなだれながら家まで帰る道。
ずっと前に読んだ野垂れ死んだ俳人のことを思い出す、
名利競争の俗念が消えても運命は永遠に葬り去られることがない。

もつれた糸を引っ張れば琴線が鳴る、
張りつめることで、音にあてるということで見えてくる、
ああ、肉体が混凝土のように冷えてゆく、湿気で満たされてゆく、
―――何か別のもの、より大きなものに操られているような気持ち。

どうしてこんなに人間というのは気持ち悪いものなんだろう、
君がそう思うならその通りなんじゃないかいと声が聞こえ―――る・・。
人って何も勉強しないんだ、毎日そのことに落ち込んでいた日々があるよ、
この期に及んでも何を躊躇するのか、一段階暗さが増してゆく、
それでも満腔の熱を注いで爛れて骨が垣間見えるほど思い焦がれてる、
何だって言うんだ、
―――片側から風景を消していくような、もう一人の僕の声。

舗石の間の水溜まりへと着地し、また浮き上がる、
短い打ち切るような性急な音間の抜けた余韻を持たぬ音。
その合間に忍び込む、樋を伝いきれない水が、
二階の庇から直接地面まで落ちる騒がしい響き。
若干の時間を置いて着地する靴から、
硬ばったように滴る水は、白く濁っているように感じられて、
石化石膏という言葉の、安楽に、隠れ栖んでいる、
車道の端に溜まった水の循環と、
濡れた路面の命脈を絶たれたような姿が目も綾に浮かび上がり、
そこへ、はだらはだらに射し下ろす孤独な街の灯りと、
車のヘッドライトが、
都市風景に死者の眼を与えている。

いつかの夢みたいな燐のような光―――と、
消える不協和音・・・・・・。

タイヤの溝がすくいあげた泥水がフェンダーに勢いよく当たり、
ミルククラウンのような、艶っぽい水飛沫をあげている。
角度が強調される、ロー・カウンター。
小さな虫のような球体ないしは楕円形の印象をもたらす、
無数の集合体たる波間に沈む時、抑揚の激しい憂鬱が芽生え、
街路樹の木の葉一枚一枚にまで水滴がこびりついているのを、
名伏し難い苦悩や、空虚のように感じ―――られる・・。

時が少しずつ重みを増していったら秤は傾くだろうか―――ね、
センチメンタル過ぎるよ、笑顔が遠いね、笑い声が遠い、
根まで腐ってくのさ、人間の皮をかぶった蛋白質の塊さ、
苦しくて、叫び出しそうな、知覚の遠い抹消に訪れた陶酔、
そうさ、中指を立ててやる、こんな奴等は人間じゃない。
幾万劫の恋とかというものがあれば深くもなる、
ああ、何処まで行っても底知れぬ地獄の気配さ・・・・・・。

何も見えないぐらいがちょうどいい―――ね、
世界は生まれ変わるんだよ、そう信じて、もう十何年も経つ・・・。


  *


  79






「(自称)彼女」



あらかじめ設置しておいた、監視カメラから―――。
夢の中の出来事のように女の子が入って来る。
カチャッ、と音声が拾った。
スペア・キーのようなものをしまうのが見えた。
凡庸に及ばぬ仔細がそこはかとなくあるのだろうが、
重要なのは、それを―――『許可』していないこと。
「お邪魔しま~す、えへへ・・・・・・」
音声も拾っている。
熟しきったような、冷えきった血液を一瞬内に感じながら、
翻弄される魅惑的な裏地のミンクの手触り・・。
上ずってはいるが、可愛らしい女性の声だ。
昆虫採集のようにピン・ホールドする。
どう考えてもおかしい。
段ボールを積み上げた隙間に仕込まれたカメラが捉えている、
人物の映像が不自然なほど美しい。
仕込まれたか、と思ったほどだ。
メドゥーサに石に変えられましたを地でいっていた。
放胆に展開されている一筋縄ではいかぬ劇のなか、
こんな容姿をして、どうしてこのような犯行に及んだのか、
という疑問という名の有り余る人体電気を蓄積する。
固唾を飲んで見守る、時間を遡った光景が映し出されている、
プライベート・エリアは少しずつ、エニグマを明らかにしていく。
上がり框に座って、靴を脱いで、よいしょを身を屈めて揃えている。
アパートの部屋各所にこっそり設置された監視カメラによって、
洗濯籠に入れておいたものを物色し、
担いでいたリュックサックの中に入れ、
スッと、新しいシャツと入れ替え、洗濯機をピポパと操作し、
その間に掃除機をかけ、
掃除機をかけた後は、トイレ掃除と風呂掃除をし、
炊飯をし、リュックサックからスーパーの袋を取り出し、
料理を作っている。
まるで生活能力のない僕の破綻を埋め合わせるような光景に、
メアリー・ポピンズを思わず考える。
水面に舞い落ちた、白い羽根。
いや、ウォーリーを探せとか、ミステリーの難問を解くとかではないから、
服を明らかに拝借したのは見えたわけだけれど。

「・・・・・・なあ?」とモニターを見ながら、友達が言う。
「・・・・・・うん?」と僕も大体の言葉の予測をしながら、言う。
「・・・・・・これ、何か問題があんの?」
―――僕には答えられなかった。

包丁の手際もいいようだ、純な、幼い僕には、
料理を楽しそうにしているだけでも優良物件だなと思われる。
尋常な外界からの法外な痛烈なスパイス、
何でそうなった、
こういうことがなかったら、家庭的な女性と二重丸をつけている。
あと、そこから僕の万年床にダイブしていた。
芝生に組み敷かれた愛想のよい猫の柔らかくふくらんだ瞳・・。
ダイブしたあと、変な笑い声をあげたあと、むくっと起き上がり、
ベランダにかけて日向に干してくれていた。
妄想にキャリブレーションは必要だが、
学校では調理部でした、作動部でしたというような映像を、
ぼんやりと想像する。
通常なら、なるほど礼儀正しい美少女だということになる。
あちらはこちらがこんな風に、
まじまじと克明に目撃しているなんて思っていない、
だからそれはいつも繰り広げられている日常の劇なのだ。
申し分ない、
―――それがストーカーでなければ。

ちなみにお金持ちの友達に相談し始めたことに端を発する。
「料理や洗濯をしてくれるストーカー? え、なにそれ、
めっちゃ面白いじゃん、座敷童じゃん、
じゃあ、撮ろうよカメラ設置してさ」
トントン拍子で業者入って、本格的な隠し撮り体制が整った。
お金持ちってこんなことで散財できて羨ましいと思う反面、
ユーチューバーの企画物のようなノリなのかも知れないし、
意識の底で起こった好奇心はいかんともしがたかった。
ただその時点では、親の知り合いとか、
僕の知り合いではないかという線もあった。
漠然たる憧憬のようなものもあった、と正直に付け加えるしかない。
家を空けることは多く、大学へ行ったあと飲食店でほぼ毎日、
アルバイトもしている荒み切った生活で、コンビニ弁当、
金がなかったらパンの耳齧る、キャベツにマヨネーズは嘘だけど、
誤魔化したってしょうがないおおむね以下同文だ。
服は一週間に一度洗濯とか、だ。
鍵さえ持っていればという注釈がつくし、
どうしてそんなことをする必要があるのかと再三再四思われるが、
誰でも入ろうと思えば入れる。
泥棒だって貧乏かお金持ちぐらいかはちゃんと見る。
お金持ちの友達は犯行の一部始終を目撃したあと、
ビールを飲みながら言った。
勝手にやったこととはいえ、酒代ぐらいは持つ。
でも友達はなんか悪かったなと逆に畏まった猫だ。
「漫画とかアニメだよ、あれ」
「うん、萌え指定林檎畑の花盛り」
「その通い妻にしか見えないんだけど、許嫁じゃないの?」
「そんな話、両親からは聞いてないけど・・・・・・・」
「悪いんだけどこんなの、どう考えてもオニャラスじゃん」
「うん、オナール閣下」
一応北海道の実家にそれとなく電話で探りを入れてみたが、
その線はやはりなかった。
そもそも、そんな子がいたらまず幼馴染とか従姉妹だって。
けど、そういう子を想像しちゃったんだよなあと思う。
恥ずかしい。
そういう具体的な顔が浮かぶような相手がいなかったのに。
恋人いない歴=実年齢。
この悪魔の定理の陥穽ないしは蟻地獄にはまっている凡庸な男に、
何だって、こんな子がと思うと本当に解せなかった。
あと、どうでもいいけど、背中のブラジャーの肩紐がゆるんで、
斜めにズレているのがえっちかった。

証拠はあるんだ、警察に突き出すかというお金持ちの友達の問いに、
反射的に首を横に振ったのは―――。

かれこれ一か月も、親とか、知り合いでも来たのかなと、
テーブルのサランラップをかけられた料理を食べ、
洗濯された服を着、きれいな部屋で居心地よく過ごしていた、
という間抜けさがある。
ここにあんな美少女がストーカーしていたのかと思うと、
友達の弁じゃないけど、漫画やアニメだ。
際限がない堂々巡りさ、むしろラビリンスへようこそ。
顔よかったらとかいうけど、性格も明らかに良さそうだ。
シンプルな物の見方で、その二つあったらまず、
人生は幸せだって思える。
何を言っても、誰にどんな風に言ったとしても、
やっぱり言い訳めいたことしか言えないような気がするけど、
―――警察に突き出すのは何か違う気がした。

アパート裏は林で、網戸越しに這入って来る風が心地いい。
とても小さな物語、憐れの深い物語、
もしくは抱腹絶倒するような物語かも知れない。
お金持ちの友達に相談しなかったら、
もっと長い期間、お世話になっていただろう。

ということは―――ということは、やっぱり、そうなのだ。
彼女は別にイケメンでもない、一人暮らしの家政婦をする、
殊に一点の目標もない水平線を何故か越えようとする、
『ストーカー』なのだ。
今後エスカレートすることも有り得る―――し、
逆にこれ以上、この犯行を続けさせてはいけないような気がした。
でも本当にわからなかった。
僕なんて告白されただけで相手にドキドキして、顔を真っ赤にして、
断るなんていう選択肢がないことぐらい分かりそうだ。
自己卑下じゃないけど、何を血迷ってやがりますか、と思う。
新手の美人局なのかという思考回路の方が、絶対に正常だ。
そんな眠れない夜を過ごしたあと、
家を出る前に僕はテーブルにこっそり手紙を置いた。
なるべく刺激しないように心掛け、悩ましい妄念を戒め、
どうか自分の幸せを願って生きてほしいというようなことを書いた、
まるでめくるめくばかりの青い甘美な春に。

恋愛感情とか好意とかいうのとは全然違うけれど、
―――武士の情けみたいな、気持ちがあったことは認める。

そして家へ帰ると、テーブルに見知らぬ手紙が置かれていた。
きっと反省して、もうこんなことはしない、という手紙だろう。
真っ暗な部屋の明かりを点け、もはや監視カメラも回収された部屋、
そして、ストーカーも今日限りでいなくなった部屋で。
料理は冷蔵庫にしまわれていたけれど、
きっとこれが最後なんだろうな、と思うとセンチメンタルにもなった。
南アフリカで、ニシキヘビがヤマアラシを呑み込んで死んだ、
というニュースをふっと思い出す。
一人暮らしを始めた二年前、ホームシックにかかって、
昔の写真を眺め、アルバムを捲り、女々しくなっていたのを思い出す、
笑いは小さな気泡―――最小単位の不安・・ガスの圧力・・。

―――何かを失ったと気付くまでに、人はとても長い時間がかかる、
ろくでもない僕等の、ありていな、後悔が・・この夜の美しさ―――。
声も出せない夜の色は、不安の色・・。
夜にだけ安定する心の色は鉄格子に似た―――影・・。

あんな美少女だったらむしろこっちからお願いしたいところだよな、
とかアホなことを考えながら、
封を開けて便箋を見ると、交換日記という文字が躍り、
すぐとはいきませんけど、そろそろ同棲ですね、という、
不可解な、脳内革命へといざなう文章群が躍っていた。
そろそろ溜まってしまいますよね。
魔術詠唱の勢いで行われる、ダークネス・エロペディキア、
カウンターパンチにしてやられたのか、ビールの酔いにやられたのか、
ヒヨコが最低でも十匹は数えられた、一種のストリートファイター。
江戸川コナン君が、あれれーとか頭の中で言っていた。
ドラえもんが、ほらほら頑張れのび太君と言っていた。
―――『ストーカー』はその日から、
『(自称)彼女』になった。


  *


  80







それだけは絶対に違う


個人宅の一階に構えられた店舗、
生ビールと冷やし中華始めましたの宣伝ポスターが見える。
ラーメンと書かれた暖簾をくぐったものの、
さしづめ飲み屋で、これはいわゆる二次会。
一次会は九〇分ヨンキュッパの飲み放題プランで、
キンキンに冷えて、咽喉の奥が痛くなるぐらいの、
爽快な喉越しを楽しんだ。唇に泡がついても気にしない。
かき氷現象のキーンとは違う意味で、
アラレちゃんが走る。
ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェなの!
キレがある。ほろ苦い。
社会人三年目、労働はついに酒の味を覚えさせた。
とはいえ、会社の飲み会というのは、
飲みニケーションが廃れたとはいえ健在、
無礼講を装う面倒臭いだけの、
仕事の延長線上にある付き合いだ。
下戸以外はしこたま飲むより他ないところがある。
時折には、大学のサークルの飲み会の延長線上だと思う。
先輩が行くと行ったら、まず断れない。
親が死んだとか、バイトがある以外断れない。
しこたま飲んだとはいうものの、まだ素面だった。
解散後、歩いていたら袖を引かれた、
女だった。
同期の美女だと気付くのに、十数秒はかかった。
あの子、出世しそうだよ、仕事よく出来ると、
褒められているのを間接的に聞いたことがある。
僕は? 窓際係長一直線。
ただ、名前はまったく思い出せなかった。
イケる口だったんだね、と言われた。
そんなボーイッシュな喋り方するんだと初めて知り、
親近感を湧いたのは覚えている。
オタク女子がイケボの練習をするようなそういう感じで、
清涼感やさわやかさのある声だと思っていたら、
あれは外面営業用で、
実はハスキーボイス気味のそんな声の出し方をされる。
マリアだと思っていたら、ユダだった。
時速三八九キロで急降下する隼。
駅にいい店があるんだ、行こうよと言われた。
相手に困らなさそうなのに僕を誘うのは不思議だったが、
よっぽど意外だったんだな。
でもカクテルとか無理ですよ、いやいや。
あと、焼き鳥屋とかは嫌ですよ、いやいや。
そんなわけでガラガラと引き戸を開けたのは、
―――覚えている。

随分なシモネタを言っていたのを覚えている。
僕ではない、彼女の方―――だ・・。

カメラのシャッターを切りたくなる。
脳のエラー検出メカニズム。
鮭の塩漬けしているとはいえね、こういう時って形式上は、
地元はとか、血液型はとか、誕生日はとか聞くじゃない、
教えたこともないし、さ。
違うのね、フルスロットルアクセル全開の、
エキセントリック号。
おお~し、わかった、ばっちこい、みたいなね。
欲求不満とか、だる絡みとかいうものだ、通常は。
普通に考えるとセクハラだし、逆セクハラみたいだし、
通常ならどうも誘われているみたいだと誤解するところだが、
けれど酔いも手伝って、
屋根裏にひそむインディアンみたいだ―――よ・・。
何言ってくれちゃってんの、天麩羅。
僕は彼女が仲のいい男友達のような感覚で接した、
僕も何をイタしておるのかコンドームの付け方を指で実演したり、
女性の九割はヤンキーで、その半分は絶対に肉食系なんです、
という持論を展開したりした。

「貧乳はステータスだ! 希少価値だ!」と宣えば、
「馬鹿はステータスだ! 希少価値だ!」と宣った。
―――そして、総理大臣と大統領のように、
日米の関係を強調しながら固く、堅く、硬く、
あれどんな漢字だったっけ、
でもミッションコンプリートフルハウスオペラ、
火宅、仮託、家宅、、、
ま、いっか、握手―――する・・。

犬の性感帯というのはいっぱいあるんですよとアホなことを言えば、
女性は男性の数倍気持ちいいんだよと返って来る、
列車に石炭を入れるような気分で。
ロボットがハイオクを飲んでいるような気分で。
こけしってエロいよね、
こけしには苔と罌粟という要素が入っているんですよ、
と信じられない類のアホなことを言っていた。
いいですねと言ったりした、そんなこと一つ一つで。
何がおかしいのか、げらげら笑った。
出来上がっていた。
漫画週刊誌のように捲れていたとも言える。
いわゆる一つの、壊れかけのレディオ。
天使って翼に性感帯があるのかなとも言えば、
悪魔はきっと尻尾が性感帯だ、そうですね、げらげら笑った。
脳に閃くタロット・カード的散乱による乱心語。
あるいはおほめにつかわり候語。

軽快だった。ちんどん屋だった。
そして氷敷き詰め、カルピスの原液と水を注ぎ、
マドラーでぐるぐると掻き混ぜ―――たような・・夜・・・だ。

中華鍋から空中に踊る炒飯の妙技、テーブルに肘をついた時の感触、
ウォーターピッチャーもコップにもまったく触れることはなく、
キッチンタイマー、手書きのメニュー表が油じみていくように、
僕等もベタベタの、油じみていった。
あれ、あの人、ポール・マッカートニーじゃないって言ったりした。
げらげら、あと、やっぱり名前思い出せない。

もはや、自分が何を飲んでいて、何を食べていたのかも、
いまとなっては思い出せない。
多分、酒量の限界を越えていたのだと思う。
そして相手が随分なシモネタを言って来る、
それに合わせる形で僕もオープンマインドに、
何というかアホになっていったのだろうと思う。
ハッ、ジョー式だよ!
じょーすぃき!
空いたグラスにすぐさま酒を注ぎ入れるし、
「美味しいからもっと飲もう」
とほとんど表情を変わらないカノジョを競う形で、
ビール瓶を何本空けたのかはわからない。
サファリパークライオンエリアを素っ裸で駆け抜けるような、
スーパードーパミンタイム。
一時間ほどかけて、チャーシューとおつまみ三品、
メンマとキムチと唐揚げ、それから別で餃子を二回おかわりし、
炭水化物が欲しくなった身体はラーメンを軽く食べて出た。
とはいえ食べれるかなと思ったら、
彼女が二人で一つ食べようよと言った。
想いは同じだったようだ。
酔い覚ましのつもりだったが酔いはまったく醒めなかった。
水を飲まないと悪酔いする。

そしてふらふらの千鳥足になりながら、
家に帰ったのは覚えている、嘘だ、帰ったような気がする、
圧迫する、額に皺が入る、頭痛は万力で締め上げるような痛み、
というか、そのはず―――だ、というように記憶がない。
人生で一番酒を飲んだということはわかるし、頭痛がした。
宿酔という言葉はエドガー・アラン・ポーしか言えない。
朝ベッドの上で目覚めると、
ふぁさああ―――っつ・・と、メロンの香水させた、
腋が見える、白い腕が眩しい、ノースリーブの女がいてビビった。
一瞬、バレエのダンサーみたいな寝方するんだなと思いながら、
ばちくそエロいけど、
こいつ誰だと思わなかったといえば嘘になる。
スカートは何故か捲れていて、何というか、煽情的な具合だった。
そして何故かもう一つの手は僕の股間に置かれていた。

将棋で言えば―――王手、で。
チェスで言えば―――チェックメイトなんだよ。
つまり? つまり、どういうことなんだろう―――ね・・困った・・。

ぐわし、という感じのギャグを思い出さなかったと言えば嘘になり、
アロハ、といいう感じで水に流したかった、そうだよそうだよ、
―――左耳から右耳へ華麗にスルー、スルー、
聞くな、見るな、何も言うな、スルー!

誰に言ってんだよ、でもね、ナチュラルに、
誤魔化しくなかったかと言えばそれもまた嘘になる。
アウトだった。
いや、わざとじゃないんですよ、セーフだった。
そっと後ずさりして逃げようと思ったら何故か彼女の眼が、
ぱっちりと開いて、何か言うのかな、何か言うのかなと思ったら、
最初に言いたい、公式的見解として、
君のことが好きだ、でもごめんと言いながら、
はれ―――つ・・おん? 
イエー、はれ―――つ、(on,)
急激な膨張を予期させるおと・・・・・・。

とある国からの誤射ミサイルという捏造記事を思い描きながら、
ヴァレリーの退屈な詩を読みたくな―――る・・。

それは、かきのたねの、きわめつけの、たねあかし。
ワトスンがホームズにしたり顔でピストンする。
はれ―――つ・・おん? 
イエー、はれ―――つ、(on,)
何が起きたか、沖田総司が近藤勇にピストンする。
して、テー、てぇー、しまったー。
(でもその、“にんしき”は、かえられないぞー、)
アァ、ああ、アァ、
・・・・・・・ンアアアアぁぁアアアァァ!!!
(オッケー、それは飛びだしゃいい、彷徨える青い弾丸!)

アニメ式では虹色になるところの、自主規制システム、
盛大な吐瀉物を、案山子ないしはへのへのもへじとなりながら、
眼にモザイク入れながら、メン・イン・ブラックの服装しながら、
いってらっしゃい、した。
こんな時、グッドバイという言葉はすけこまし。
頭痛がメキメキした。
もしかしたら身体が割れて昆虫が飛び出す、
とある日の、かまいたちの夜パート2。
爽やかな水色の朝は、未来永劫始まらなかった。
チ、チュン、チュンカ、チ、チュン、チュンカ、チチ、
と、雀たちは絶対に笑っている、そんな鳴き声。

あと、名前をやっぱり思い出せな―――い。
でも一つのささやかな遍歴というものが、
こんな時に強く、慰め、勇気づけてくれ―――る・・。
―――そういえば俺、名前聞いたことなかったわ。


  *


  81







美しい眺め


風は轟々と鳴りだし、
ほつれ毛をくすぐるように襟元に触れる。

狂人じみた広告塔もないよ、
歓楽街の臭気も。
僕は水溜まりに小さな波紋を作ったって、
見てみないふりをした。

風が首筋へ滑って行くと、
鼻孔へひっそりと呼吸する夜の植物の匂いを運ぶ。
快活な昆虫の見えない羽搏きを連れて、
テントの幕が捲れたんだよ。

何も知らない、何も見ていない、
そんなことで一体どうするんだい、
小器用なイミテーション、
キーワードを導いた服を着て、
幾重にも折り畳まれた、
本当の声や言葉を閉じ込めて、
今日も生きているのかい。

樹の形を歪め、
樹冠の形や枝の派生状態が揺れる時、
枝は向きを変えたろう。

国定教科書風な物の言い方をして、
抽象語だらけ、さもなければお遊戯倶楽部、
何とも繋がろうとしない心理学的、病理的な領域で、
地べたに這いつくばっている、
みじめな奴隷たちを想った。

生まれてから眼にしたことのないもの、
突然広々としたところへ彷徨い出たような感覚、
心を一杯にしたことのない、
煮え切られない考えを自己分析もできない、
それが全体にとってどのように還元され、
自らがどのような立ち位置にいるかも、
まったく知ろうとしない、
わかろうともしない見下げ果てた連中。

頰を撫で、後方へと流れていく、
透明な断層を思い描いた、
この夜風は思いがけないほど冷たい。
そして君は錠剤を飲んで、
ありもしないダム湖に身を沈めてゆくのかい。

ますます現実や日常が遠ざかっていくかも知れない、
緊急事態は告げられても、僕の中では、
戦争も自然破壊も孤独死もすべて同じ扱い、
一つ一つ考えていちゃいけないよ、
片っ端からやっつけよう、
何が出来るかじゃなくて、
何でもやっていかなくちゃ先には進めないんだよ。

軽やかに踏みしめて欲しいんだよ、
正しいことなんか一つもない、
間違っていることだらけかも知れない、
百年先や千年先に骨一つ残らないと思う、
僕だって同じさ、
ねえ、君だって同じなのさ、
みんな同じだよ、
だからってそれを言い訳にするのは、
フェアじゃない、
それはきっと答えじゃない、
それじゃ生きているとは言えない。

燃えくすぶった、煮え切らない顔。
現実は残酷だよ、
でも自然だって残酷さ、
だったら天国や地獄というものがあっても、
それはきっと残酷なのさ、

―――残酷なんていう言葉で逃げないで、
どんな方法でもある、
たとえどんなに時間がかかっても、ね。
現在形で話す僕も、
未来系で話す宗教も、
過去形で話す老人も。

粉のように見えないまま、
舞い上がる、
まるで鳥の囀りを真似ているみたいだった。
きらめきが折り重なり、
欠けるところのない調和を見せていたって、
やっぱり僕は何も言える気がしなかった、
沢山の人のことを考えていたら、
長い間ずっとそうさ、
誰でもいつかは死ぬ、
いつも幾度も繰り返されてきたという論調の、
ニュースみたいな物の言い方をして、
責任の追及も、その矛先も、
丸くして、僕は眼を逸らしたのさ。

弦の音などしもしない、
風は林を吹き抜けていったんだ、
特殊な通り道とか重要な使命もない、
IQも必要もない、遺伝子も関係ない、
循環するもの。

ぼんやりと思う蜂の巣。
祭礼、しきたり、風潮、伝統行事。
昨日と同じ振動だったよ、
昨日と同じ暮らしの気配があったよ、
でも、脆い地層は崩れて、
そんなんじゃ誰も言葉すら聞いてくれない、
そんなんじゃ誰も生きているとは思わない。

様々な微妙な物音が、
入り乱れて騒がしくなったら、
電車に乗っているみたいだった、
瑠璃色に割れる痛みに、
ほんの少しでも、
醜いものが隠れていないようにと思った、
完璧に間違っているものを作ろうと思った、
僕は空洞の渇きを満たす―――よ・・。
愛なんてない時代だとか、夜の時代だとか、
何千年、何万年流れたって、
僕等はちゃんとここにいたって言うよ、
終わらないことを考えていたら涙が出た、
次の扉へ向かうよ、
誰もいなくったって、
それがどんなに向こう見ずなことだって、
禿げたスヌーピーみたいになりたくなかったから。


  *


  82







subtle differences



病室のような清潔さは、
檻の中の熊みたいに揺れている。

「清潔」と「衛生」には微妙に違いがあるというのは、
食用蛙のような物言いであるよ、許せ。
『清潔』というのは一般市民的な主観の言葉だが、
『衛生』というのは業者指定的な客観の言葉だ。
故に数値や指標というのが後付け的に存在する。

絵を見ている時の感覚が的確に捉えられ、
容赦なく林檎に食い込んでゆく、虫。
噛んでいたガムの吐き出す紙をなくした僕等に、
はっきりと識別されない、光。


  *


  83







亜熱帯植物


「せいぜい」の本来の意味は、
「力の及ぶかぎり。できるだけ。
つとめて。一心に努力して」
(『日本国語大辞典(日国)』)

―――この言葉を見た時、
火傷の上に酢を垂らしたように、
シャッターが、突然、死んだ。

「せいぜい仕事を頑張りたまえ」
と言えば嫌味なニュアンスか、
ほどほどに、という意味合いになる。
何となく理解しているという意味では、
亜熱帯植物みたいなものだ。
わかるだろうとは言わないけど、
それも何となくわかる物言い。

この延長線上に、
あるいは一般に用いられる類の用例として、
「せいぜい送別会に集まるのは、
五、六人だろう」
と言えば、たかがとか、やっと、
というところの意味だ。

しかしながら、
「せいぜいご利用ください」
となると僕も実を言うと聞いたことがないが、
本当に存在するものらしい。
思うに、これはきっと方言的なもので、
言い方が少し異なる。
僕も文章をやっていて長いので、
「(っ)せいぜい」というように、
間があるみたいな物言いをするようなものと、
考える。あるいは、
「せい/ぜい」となるのではないかと思う。
つまり「雨」と「飴」のように、
言い方にアクセントをつけることで、
丁寧な物言いになっていると思う。

「せえぜえ」とか言えば、
老人調になり、
「っせェっぜエ」とかなると、
何だか、チーム名を円陣組んで叫んでいるとか、
早起きの農家のおじいさんが、
ラジオ体操しながら言ってそうな感じになる。
日本語というものは、
人の背景によってさまざまな表現の仕方がある。

男女差によるもの、年齢的によるもの、
また方言によるもの。
なんだったら「確信犯」の誤用や、
「流れに掉さす」は進むか、止まるかみたいなもの。
いやもちろん、同じ言葉であろうとも、
やがて死にゆくニュアンスであることは違いない。
言葉は不思議な万華鏡だ。

螺旋を描いた明るい一点と、
殻を取られた蝸牛だが、
「せいぜい(を)」とか「セイゼイ(ヲ)」
とかになってくると、古めかしい調子の文脈を抽出し、
古文のお勉強させられるぞ、
でなくちゃお教養の時間が始まるぞ、嫌だい嫌だいと言う、
あなた様の顔も見えてくるようですぞ。
でもね、僕は別に国語教師ではない。

文章は様々な要素の集合物で、
共鳴し連環しながら、文体のイメージを形成することになる。
「せいぜい、束の間のパントマイムをしようぜ」
とかになってくると、
まったく理解できない人もいるので、
亜熱帯植物を燃やしに行ってきます。


  *


  84







The strange combination
of puzzles,
the missing link


不自然か自然かという言葉の話で、
「壁(に)衝突する」と「壁(を)衝突する」
を考えてみたらいい。
もちろん、
「壁(に)衝突する」は一般的に用いられている、
とても自然な使い方、使われ方だ。
けれど「壁(を)衝突する」と聞くと、
これは明らかに不自然だ。

ところで、
「回りくどい」という語を何となく覚えていて、
何となく音が似ている、
「曲がりくどい」と言ったり書いたりしている例がある。
これを何言ってるんだと囃す声もあるだろう、
学校の先生はすぐさま指摘するんじゃないかな、どうだろう、
いやいや、言葉の教習免許皆伝をもっている、
かもめ様のお通りでーい、
ねちねち嫌味たらたら神経をすり減らしてやるぜ、
というのは、嘘である。
僕は、いいと思う。
だって言葉ってそもそも揺れているからである。
ただ、文章のルールをそもそも理解していない作家志望に、
辟易する編集者の気持ちはよくわかる。
ボカロの歌詞の言葉の間違い方もすさまじい。
でも、なんというか、みんなはケーキが好きかも知れないけど、
僕は結構きなこ餅が好きなんだよ。

物は言い方ってやつで、
その間違いを間違いだと思って使っているんじゃない限り、
外国語っぽくなるしさ、
もちろんその間違いを意図的に使うようになればベストさ。

詩を書く上で揺らぎの中にある純度というのを、
(たとえば、周波数的な考えでいくと、
迷っている時の方が言葉の音は高くなりやすい傾向があると僕は思う、
「緊張」という要素が、言葉にも見られるんだ)
理解していない人に比べればずっとよいと僕は思う。
ネットスラング的な用い方の最初が、
たとえば「イオソ(イオン)」とか、
「カレソ(かれし/彼氏)」とかね。

詩を書く上で、こういう要素のない詩は、
はっきり言って読むに値しない。
言葉に対する扱い方を心得てない、
あるいは俗に言う「老いた」「定年劣化(経年劣化)」
「ポンコツ」「馬鹿」「豚」「タヒ」というように、
言われるので、気を付けようね。
悪口じゃないよ。
あのね、悪口じゃないですよ。
おっと、あと、下手糞というのを忘れた。
ちなみにこれは自作自演手法とか言えるかも知れない。
こき下ろすというやり方としては中々よく出来ますね、
ああそうでしょう。嫌いですからね。
物は言いよう、君もいつかウィザードになれよ。
僕の音はかなり融通性が利く上、自由度が高い。
なんでこんな風にすらすら読めるのって言われたことは、
何度もある、簡単なことさ、訓練だ。練習だ。
木材があるだろ、端から端を何度も往復するのさ。
言葉は魔力を持っていて色や形やイメージを、
脳味噌に叩き込む。

とはいえ、文章的には別に間違っていない。
思うに、間違った言葉の流れにそれを置くから、
その不自然さが際立つ。
僕だったら、「壁を、衝突する」と表現するかも知れない。
一見、自由律俳句みたいでドキッとする人もいるだろうけど、
句読点をつけることで別の言葉の流れになる。
この必然性を作るやり方としては、
「輪転機の速度のように壁を、衝突する。」
とすれば、違和感を覚えなくなる。

もちろんこういうのって音のイメージを練習するしかない。
無限の反復練習。音に対する問題は、
何十回も何百回も何千回も繰り返しながら、
音をきちんとイメージの中に定着させるしかない。
それが出来ないと言葉の音はピアノのようにならない。
僕はずっとピアノの音を聴きながら定着させようとした。
音をばらけないようにする、
音の軽さや重さをきちんと使い分ける、
この言葉の意味がちゃんとわかったら、
伸びしろがあるよ。

というような職人気質の僕の意見はともかく、
正しい日本語がいいというのは間違っている、
だって、正しい日本語っていうのは、
様々な階層を照らし出すものじゃない。
これっていわゆる特権意識や、知性の暴走である。
言葉狩りをする側は、固定観念という呪縛にかかって、
映画評論家のような真似をしていると言ってよい。
寺田寅彦とかいう僕の好きな人も、言ってた。
(そして、かもめは、子供のような言い方をします)
それにさ、
「回りくどい⇒曲がりくどい」という定着を見せたら、
これは誤用ではなく、正しい言葉になる。
それに夏目漱石の漢字の遣い方みたいで面白い。
こういう時いつも、九夏という言葉を思い出す。
金子光晴っていう高踏派系の詩人がいたのさ。

てなわけでさ、
それを面白がれる人になるかどうかっていうのは、
生きていく上で解像度の変更をしやすいかどうかを分ける。
ギアチェンジ身に着けて言葉をもっと自由にしなやかにしよう。
こういう言葉の使い方をしたら、まじぶったまげんじゃないかな、
というサービス精神も、駆け引きの道具さ。

前にこんな場面があった。
「重く受け止める」と「真摯に受け止める」ってどう違うの、と。
もちろん同じような意味だ、類語という発想になり、
ボキャブラリーの視点からすれば重要度の高い場合、
硬い表現(硬質な表現、あそこ、カチコチだよって覚えようね)を、
用いる方がいいだろう、というオトナ語になる。
「ヴィトゲンシュタインのように受け止める」と書けば、
この人、偏屈なんだなあ、と思われる。
「カントのように受け止める」と書けば、
この人、時間に厳しいんだなあ、ということになります、多分。
ちょっとした違いで、カチコチになります。
いやあ、興奮する牛。
ボツノキではボツリヌス菌が繁殖するでござるよ。

とはいえ、
「壁(が)衝突する」というのは明らかに間違いであるからして、
それはもちろん、からくり屋敷とかの起動スイッチが押されました。
洞窟とかダンジョンの罠、迫りくる壁、襲い来る壁、
逃げられない壁、というように表現は変化していきます。
不自然ということは言葉の揺らぎだけれど、
使われる格助詞が変化した例としては、
「~をそむく→~にそむく」という例がよく知られている。


  *


  85







Map To My Heart


パリッとしたスーツ姿で、誕生日に両親からもらったと、
気恥ずかしそうに話していたのを覚えている腕時計、
それから、
パルレモアドゥパルファムのミルキームスクの、
何とも言えない、薫り・・。
祖母から戴いたと神妙な顔をして言っていたけれど、
高級品で、どういう意図だったのか、
また渡した時のシチュエーションというのが気になる。
LINEのやりとりをするスマホには、
携帯ストラップのルービックキューブ。

勉強を教える時になるとスッと上着を脱いで、
糊の利いたカッターシャツになる―――のが・・、
セクシーランジェリータイムのように感じられるお年頃。
空気は飴のように粘り始め、脳内麻薬の成分を嗅ぎ分ける。
頼りがいがあって、知的な、イケメン眼鏡・・。

インターフォンを押したのが聞こえた時に、
夜の森の中の栗鼠にでもなったような―――気が・・する・・。
ふと、机に活けられた、薔薇の花の香がしみこむようで驚く。
学習机に本棚、ぬいぐるみ、
ゲーミングパソコンに高級ヘッドフォン・・。
顔中の皮膚が地下の振動のようにぶるっとして、
鼓動が一気に上が―――る・・。
志望校を決めた、一年前に一年間のスケジュールを記入した。
大学に合格したら家庭教師はいらな―――い。
何かのはずみで逃してばかりだった、
思春期特有の感情が花開―――いて。

大学生の家庭教師が、お母さんと挨拶をして、
階段を一歩ずつ上がってくる音が聞こえる。
法廷に立たされているような気分になって来る。
いまさらになって、制服を着たまま、
ベッドの上で待機をするという手法はミスマッチだったか。
けれど見えるところに伏線を張るしかない。
活け花も、制服も、か弱さを演出する小道具。
これは、心理戦。
ドアが開けられて、「こんにちは」と言いながら、
学習机にいなくて見回し、ベッドに座っているわたしを見つける。
もちろん、返事はしない。
これはとても大切なポイント―――だ・・。
長い間ずっとドアを開けたら、学習机に座って挨拶に応えてきた。
「気分でも悪いのかい?」と、鞄を床に置いて近寄ってくる。
少し緊張した面持ちなのは、
デリケートな年頃の女の子と接する難しさからだろう―――か。
チャンスはたったの一度だけ、
冗談も度が過ぎれば悪戯になり、
悪戯も、してはいけな―――い、
絶対にやってはいけな―――い、ものになる・・。

「受験のことで神経質になったり、悩むことはあると思う・・・、
隣に座っても、いいかい―――」
こっくりと肯くと、ぎしっとベッドの音が鳴る。
その拍子に、
「うち、先生のことが―――好きなんだ・・」と言う。
固唾を吞むような気配がし、唾を飲む音が聞こえた。
背伸びした色気は妙に艶っぽく見えたりするだろう―――か。
けれど先生ならきっと、そういう言い方をするだろうということ―――を、
シミュレーションした通りに述べられた。
「ありがとう、本当にすごく嬉しいよ・・。
でも、告白の返事は―――先でもいいかな、
その、それは嫌いとか、好きとかではなく、
いまは、受験のことを考えて欲しい―――から・・。
合格するまでの君は―――『生徒』で、
合格したあとの君は―――『恋愛対象の女性』だよ」と。

言葉を選んで話す、先生の真意は、当人にしか分からない。
もしかしたら、言葉通りかも知れないと思うロミオとジュリエット。
失恋してボロボロになって受験に臨ませるようなことを回避したい、
一年の努力が水の泡になるような真似だけは絶対にしない、
という気持ちを優先した結果かも知れな―――い。
真面目な人だ、自分の掌に生殺与奪さながらの権利を得たら、
風船を叩き割ろうだなんて絶対に思わな―――い・・。
恋愛感情なんて受験の邪魔だという言い方もしない。
恋愛感情というものはプラスにもマイナスにも働くもので、
時には、きっと、予想以上の結果も引き寄せるもの。
心臓が全力疾走している、真っ白なキャンバスの向こう側を。
まだ何一つも書かれていない、
まだ何一つも触れられていない、
澄んだ音を立てている、美しいものを美しいといえる、進入禁止区域。
淡く煌めく御伽の国の、幻想と呼べそうな場所へと向かって。

「少しだけで、いいんだ・・・・・・」

ぐいと、ネクタイを掴んで、引き寄せる形で、
キスをした時の感触を覚えている。
中学校の校舎裏で隠れてキスをしている姿をふっと思い出し―――た・・。
歩いてゆく。
眼を逸らして、恥ずかしいものを見たような気持ちになる。
頭の中を蝶の群れが色づいた風のように過ぎ去るヴィジョンが浮かんで、
声がする。
わたしはきっと、そういうことを誰にも見られたくないんだ。
見せる心理には他者への優越感と同じく、
所有物への鷹揚な振る舞いが隠れているのかも知れない。
場面は変わる。
ずらりと並ぶ屋台から、香ばしいソースや、
ベビーカステラの甘い匂いがぷわんと漂う。
来るはずのない祭りの日のあの胸の痛み。
恥ずかしくて誘えなかっ―――た・・。
混乱は続く。
大学ってどういうところなんだろう、
高校生から大学生になると化粧で綺麗になった女性が沢山いる、
年齢が上がるごとに恋愛は身近なものになり、
中学から高校、大学となってゆく毎にイヴェントも増えてゆく。
そんなことに涙が落ちるほど思い焦がれ、
口の中で潰れるほど嫉妬した。
その場所は、就職に有利だからとか、学力に見合った場所ではなく、
いつのまにか、この弓なりの地平線だけが捉えている場所。
原始的な火の点け方である、キリモミ式火おこしを想像する。
キスをすると妊娠すると言い始めたのは、
やっぱり子供なんだろう―――か。
何処かでサイレンが聞こえた拍子に思った。
街燈が灯り始める時間帯は、
子供の頃、テレビを観ている時間帯で、
それが学校の宿題をする時間帯で、
いつのまにか音楽や動画を観る時間帯になってい―――たことを・・。
炎は透明なスクリーンを燃やし尽くして、
恋人の部屋、同棲、家庭という風に移り変わった。

相手が絶対に好きになってくれる薬。
洗脳や、マインドコントロール。
監禁に、手錠。
そんな方法しかないとしたら、きっと悲しい。
けれど、そんな馬鹿馬鹿しい方法を選ぶ人は稀だ。
でも不安は屈折を生み、屈折は狂気になる。
そして狂気はきっと社会不適合の意識を植え付ける。

どうすれば、笑っていられるだろう。​
​どうすれば、自然にしていられるだろう。​

先生からすっと身を離したら、後頭部をぽりぽりと搔いていた。
瞬きがやけに多く、口を左手で覆い隠している。
とんちんかんな、先生。
笑顔で歌うアイドルにグッときたり、
きわどいグラビアにドキドキすることはある、健全な年頃の男性。
あまり女性慣れしていないのが地だと信じたい。
楽器の弦のように震えていた神経が収まってくる。
「気は済んだかい?」と先生が優しく問いかけてくる。

先のことは分からな―――い。
年下の女性が恋愛対象なのかも分からないし、
先生の好みの女性も分からな―――い。
プレイグラウンドという名の社会的な場がそう言わせる。
瞳孔の拡張と、毛細血管の急激な収縮。
ただ、激しく強い熱情がその一瞬、溶岩のように流れた、
現在進行形、それでもまだ心に巣食っている幼さが、
「美味しかった」と肉食系の台詞を言わせる。
思春期特有の、強がり。
けれど気障だ、それから悪戯の見つかった子供みたいに、
満面の笑顔を浮かべたら、
先生がホッとしたように、頭を撫でてくるので眼を瞑る。
指先が滑って、行ったり戻ったりする波の感覚が、
安心を促す最適なリズムのように思える。

ピカチュウもどきが心の中で喋っている。
こまっしゃくれた物の言い方は、友達の声。
充電完了?
さりげなくもう一回やっとく?

真っ直ぐに物を見なくちゃいけないし、
周囲もちゃんと見なくちゃいけないし、
足元がお留守になってはいけない。
それはきっとそうだ。
絶対そうだ。
でも―――『大学へ行きたい』んじゃなく―――て・・、
多分そうだ、きっとそうだ、
わたしは、―――『大人になりたい』と思いなが―――ら・・、
それでもまだ、先生の生徒でいたいような気がした。
夕陽が射しこんでいる、ファースト・キス、
ロマンチックというにはセンチメンタル過ぎる、
無理矢理はきっとカウントには入らない。
それでも、わたしはきっとこの日のことを永久保存して、
忘れないだろ―――う・・。


  *


  86






Lost Forest Strategy Guide
(「迷いの森攻略ガイド)」


汗が流れる―――。

あの時、上手に君の手を握れなかった。
こんな気持ちのままじゃ、
終われない・・・・・・。

熱帯魚のスカートの裳裾翻して、
―――『人魚』

蜩が鳴いて・・・・・・。
遠近法の錯覚の線路と鳥居が見えて・・・・・・。
乱反射する玻璃細工、無意識の弱い星を搏って・・・・・・。

こんなに君のことが好きなのに―――。

うまく触れられなかった・・・・。

欲しいんだよ、

(―――硝子の表面に・・・引っ掻き傷をつけた・・・・・・)
恋愛感情をこじらせて、

指の形の黒い影に焦がれて屈折した悪魔。


  *


  87








(・・・・・・僕等は欠陥という隙間を持って生まれてくる
わからなかったよ、努力で埋め合わせるんじゃない。
また別の隙間で、本当の人間になるんだって・・・・・・)

嘘や憎しみの世界なのに、
愛がすべて救ってくれるわけじゃないのに、

こんがらがって、
ほどけなくなった糸。

「I LOVE YOU」なんて言えないけど、
“好きにならずにいられない”

夢を見・・・ている・・・・・・
心の中の・・・二人だけの時間・・・・・・

「ささやかな想い」が、
『かけがえないもの』に変わってゆく。

うまく踏み入ることのできない、
眩しい鏡のようなもう一人の僕・・・。

言葉を重ねてゆく心臓は押し出した絵具のチューブ・・・。

肩が揺れるたび肩甲骨の影が動く・・・。

息が、
止まりそうだ・・・。

気付かないでいる、振り向かないでいる、
この世界に、【愛】が必要な本当の理由・・・・・・。


  *


  88







どこまでが見えていて、
どこから違うんだろう?


何もないし、何かあるのも変だし、
するめいかのように風呂入って、
招き猫のような姿勢で爪切りしながらテレビ見る。

ローキック入りすぎた襖は丈夫さ。
おでんを食べて、ビールを飲むんだよ。
小説の登場人物みたいに物語を強く動かす目的もなくさ。

それで下手なコピーライターみたいなことを言う。
歩く百科事典は宝の持ち腐れ。
メンタリストDAIGOのように、
ワイン飲んでさ。
他人に訴えかける人は相手に信じてもらえなきゃ、
ただの酔っぱらいなんだなって再認識してさ。
釣り広告みたいなユーチューブ見ていて殊更に思う、
そうやって色んなところが腐っていくんだ。
不祥事起きれば文春砲。
ブームが去れば時代の寵児もただの人。
てのひらがえしは大衆の得意技。

この前、老人のブログを見た。
毎日おそろしくつまらない毎日を送っていて、
漫画やゲームや映画やユーチューブの話でも、
すればいいのにと思った。
きっと何も語ることがないんだな。
けど、何か語らないと自分の存在意義を見出せないんだ。
不安なんだ。

評論家に洗脳されて、
別に知りたくもない天気予報に深く頷いて、
漫才芸人が何処にもいて、
コミュニケーションの時代なんだなって痛感する。

ちょっとでも前向きたい、後ろを向きたい、
眼を瞑りたい、眼を開けたい、
あるいはずっとこのままでいたい、
それがあなたで、君で、何処かの誰かだ。
どれでもないなんていうことも出来ないけど、
どれかである必要もない。
みんな淋しいんだというのも間違っていないと思うけど、
時折にはみんな怖いんだというのがわかる。
お金や、趣味や、価値観が繋ぎとめているものが、
生命維持装置なんだな。

時々、ベランダで星を見る。
フライパンに無数の穴があいたみたいに星がきれいで、
夜が浅い受け皿のようだから、きれいなんだ。
何にもないし、何かあるとも思えないし、
生きている理由もないし、死ぬ理由もないけど、
こんな日々が明日も続いていくんだろうなと思う、
いつ死ぬかわからないような暮らしをしていた時は、
眠ったら本当に眼を醒ますのかわからないこともあった、
いまとなっては、かえって、
何か信じられないような美しさだと思う。
戦争に巻き込まれても平気だ。
何が起きても平気だ。
そうやってきっと生きてゆくんだ。


  *


  89





ぶっとびjamboree
アゲ♂アゲ♂ぐしょ♀ぐしょ♀2024


We're最前線Walker(な、)Surviving War、
今乗り越えるBoader(な、)marathon runner。
(嫉妬、日射眩暈sit)
“残す爪痕とkiss mark”
磨くDay By Day(な、)飛躍のfly away、
いわばChange The Game(な、)魅惑のShow me。
やって来ました、ご冥福prayer。

(​​​​君が、いつでもどんな時でも、​​
​​​それ​を望​むなら​​・・・​)
(ヘップバーンがエクレア食べるような、
ペーパー・ドライバーへ立候補するから)

俺はget a mosquito biteの申し子、
もう Come rain or shineで放課後、
風鈴鳴って咽喉も鳴って、
“蜃気楼じゃなくパコダが見えてきたヤバさ”
俺はJapanese curryの伝道師、
もうChilled Chinese noodlesで倦怠師、
“凶暴化する第二章はマリアナ海溝”
「ジャランジャラン(散歩する)」
股間がどうにかなりそうなラブソング。
「ジャランジャラン(散歩する)」
ばちくそゲロエロでワッチャッチャーなラブソング。
ズバダダダン...​。

(奥底で違和感を覚えて蛍みたいで綺麗、
灯入​り模型都市のような遠景―――)
(フラスコの中で膿みが出てくるように、
チャック=ベリーがsealみたいに見えるYT)

ず/ん/だ/も/ん
ゆ/っ/く/り/霊/夢

「ああ、今年もSummer is hereで、
sugarcoatが必要な俺のjust fitな女はいずこ」
Ah...leave the AC onの部屋からgo to the beachして、
ドライアイスの煙に手を突っ込むような衝撃。​​​​​
(まだゴリゴリのsummer dream...)
>>>ぶっ飛んじゃっte、濡れちゃっte。
>>>ウキー! ハイレグ水着のプロフェッショナル!

(太陽は​曇りや雨の日には光の軌跡が途切れて、
時にはゆらめくようなフレアーが出現する。​​​​​
嬉しいような怖いような、​​
​​​そんな悠ったりとした時間が流れる―――)
「辛いよな、苦しいよな、オーケー、身を任せて・・、
踊りだすブレイクビーツ、お前の為に踊るぜ盆dance」
(眼を閉じれば、ぞっとする。​​
永遠に満たされることのない消せない過去・・・)
「だからpaper tattooして、
何かよくわからないけどaloha shirt着て、
ノープログレ、俺はパーフェクトなエロ魔人」
―――後戻りできないけど、
考えりゃ馬鹿なことばっかりしてるのが俺の人生さ。
​​​​​現実の内側のもっと奥深い場所へACCESS!

We're最前線Walker(な、)Surviving War、
今乗り越えるBoader(な、)marathon runner。
(嫉妬、日射眩暈sit)
目覚め始める!​​
​フロンティアスピリット・・・!​
“パ ンチラインはステルスのまんまwhat's your name?”
磨くDay By Day(な、)飛躍のfly away、
いわばChange The Game(な、)魅惑のShow me。
やって来ました、ご冥福prayer。

(まごついて、むきだしになって、不安定で、
けど、何がヒップホップ、何がレゲエ、
なんぼのもんじゃいで始めてゆくエロティカセブン、)
YES OR NOじゃ終われない、、、
(ウルトラセブンに去勢されそうなヘブン、)
アメージングダイショーリセイイタイショーグン!!!

俺の、俺の、俺の、俺の、
ヒュー! スーパードーパミンタアアアアアアイム!!!

でも待って、ちょっと待って、
あのごめんちょちょちょちょっと待って!
そ、そんな早口できないんで、あ、あの活舌悪いんで、
も、もっとゆっくり喋ってもいいですka。
―――ばちくそゲロエロでワッチャッチャーなラブソング。

映画を観る、​
​​​​それから、あと音楽を聴く。
硬直した五本の指という名のbutterfly。

「Ah...leave the AC onの部屋からgo to the beachして。
(まだバキバキでベキベキなsummer dream...)
幽/体/離/脱
“架空の秘密条約のeternal dream...”
>>>ぶっ飛んじゃっte、濡れちゃっte。
>>>ウキー! 

「ジャランジャラン(散歩する)」
少子化対策、子づくりから始めてゆくラブソング。
「ジャランジャラン(散歩する)」
パスタと大貧民とパチンコ屋で化粧品なラブソング。



  *


  90









eye drop



目薬をさす時、一緒に口を開けてしまう。
ことほどさように、ハンカチティッシュなどを、
口で軽く噛みながら行えばよいのだが、
それはそれで、どういうプレイだと気になる。
ちなみに言っておくが、
あわよくば目薬を飲もうと思ってそうしている。
別に飲んでよいというものではないが、
眼から鼻へ、つまり咽喉へ流れ込むこともあるので、
基本的に害というのがあるものではない。
ただ、気分が悪くなったりした時は、
病院に電話してたずねるのがいいだろう。

ちなみに眼科へ行くと目薬は点眼薬とその名を変える。
そもそも、点眼するという言葉自体、
細かい字を読んだ勇者に捧げられるのではないだろうか。

ちなみに眼科に二度ほどお世話になった経験がある。
仕事場で鉄の砕片のようなものが入って、
涙が止まらない上、眼が開けていられない。
基本的によく言われることだと思うけれど、
何かなければそんな状態にはならない。
ただ、そういう状態の時に目薬さしまくったり、
目をぱちぱちして、何だかよくわからないけれど、
上手くいったりするとこの悲劇度は高まる。
何かといえば、病院へ行かずに自力で直すという選択をする。

ちなみに市販薬を選ぶ際についてだけど、
疲れ目・眼精疲労には、
ビタミンB12(シアノコバラミン)や、
眼筋調節剤のネオスチグミンを配合しているか確認しよう。
この成分は目のピント調節機能を改善する。

乾燥の症状がある場合は、人工涙液の目薬。
涙に近い成分組成の液で、一時的に涙を補うことで目の乾燥を防ぐ。
また、角膜の修復及び涙成分の分泌を促す、
ビタミンA(レチノール)や、
目の表面の水分を保ってくれるコンドロイチンも、
症状に効果が期待できる。

結膜炎やものもらいによる充血の場合は、
スルファメトキサゾールなどの抗菌薬を配合した目薬。
かゆみを伴う充血についてはアレルギー症状の可能性があるため、
抗ヒスタミン薬やケミカルメディエーター遊離抑制薬といった、
アレルギーを抑える成分に注目する。

またコンタクトレンズ着用する人なら、御存知だろうと思うけど、
その目薬が使用できるか確認しておきたいところだ。
とりたててソフトコンタクトレンズの場合は、
塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤がレンズに吸着しやすく、
レンズの変形や結膜炎などの原因になる。

ドラッグストアへ行って沢山の商品を見て困る経験はあるだろう。
詳細や評価などはさておき、とりあえず価格帯を重視する人もいる。
眼科なんて一生お世話にならない人も一定数いるだろうが、
花粉症などで受診する人もいる。
仕事場でも花粉症という同僚がいる。
ちなみに点眼薬の容器の先が、睫毛や目蓋に直接触れると、
点眼薬が汚染されてしまう原因になるし、
これでもかと念を押してしまいたくなる心理があり、
僕も実を言うとやってしまったが、
点眼薬は何滴入れても効果は変わらない。


  *


  91







piano


白鍵と黒鍵からなる鍵盤、ハンマー、弦、
そして共鳴板で構成されているピアノ。
鍵盤を押すと、内部のハンマーが弦を打ち、
その振動が共鳴板を通じて音を鳴らす。
通常は八八鍵、五二の白鍵と三六の黒鍵で、
最低音はA0、最高音はC8。

ちなみに人間はピアノを何回打鍵できるのかという記録があり、
二〇一二年にハンガリーの青年が挑戦し、
結果、一分間に七六五回、一秒に一二.七五回。
もちろんそれは演奏技術とさっぱり、つゆほども、関係ない。
いや、関係ないことは沢山ある。

タイにある象の保護区に年老いた盲目の象がいて、
ピアニストのポール・バートンは、
彼女に生演奏を届けようと、
保護区内にピアノを持ち運びクラッシックを演奏した。
草食動物の暴走という言葉を記事を何処かで読んだけど、
象は優れた記憶力を持っていて、
フラッシュバックし、人間に襲い掛かることがある。
戦争の道具、森林破壊の道具、
そしていらなくなれば、捨てられる。
そんな象は食べることより音楽を聴くことを優先した。
音楽は、言語とは異なる別のコミュニケーション手段なのだ。
ちなみにピアノを弾くと脳の処理能力がアップし、
気分が晴れるというデータもある。

ところであまり知られていないことだけど、
といって演奏経験のない人にとって特に意味はないが、
ピアノには通常三つのペダルがあり、
それぞれ異なる機能を持っている。
右のペダルはダンパーペダルで、
これを踏むと弦の振動が止まらず音が長く響き、
中央のペダルはソステヌートペダルで、
特定の音だけを長く響かせる。
左のペダルはソフトペダルで、
これを踏むと音量が小さくなる。

ところでピアニスト横山幸雄に、ギネス世界記録があり、
ショパン・ピアノソロ一六六曲コンサート。
ピアノ系ユーチューバーは是非とも挑戦して欲しい。
ショパンの全ピアノソロ曲を朝の九:〇〇~深夜の二四:五五まで、
弾き抜いた、頭のおかしい記録である。
インスタグラム脳がとびつきそうなSNSワード。
そんな人は自走式「ピアノ型BBQグリル」という魔改造ピアノで、
美味しい肉を食べるのがオススメ。
トンデモ発明品だけど、寝食を惜しんで練習したいという、
ピアニストはもしかしたら欲しいかも知れない。

ちなみにピアノというのは完全に調律できないといわれていて、
オクターブを基準としていわば辻褄合わせともいえる状態で、
調律が行われている。
これはピアノ弾くと微妙な音のズレとなって感じられることがあり、
ほとんどの場合はこのズレが気にならないように調律されている、
和音を引くと、ほんのわずかに音のうねりが感じられることがある。
ただ、平均律で調律された楽器は十二音階が等しく響き合うように、
調整されているため、どのキーで演奏しても、
同じ響きが得られるようになっている。
これにより、様々なキーで演奏される音楽にも、
スムーズに対応できるという大きなメリットが存在する。

さて、ピアノには主に二つの種類があり、
コンサートなどで見かけるグランドピアノは大きく、
豊かな音色が特徴で、
一方、アップライトピアノはコンパクトで、
家庭や小規模な演奏に適している。
これに加えて電子的に音を生成し、ヘッドフォンで聴ける、
デジタルピアノと。
コンピューターやスマホ上で動作し、
キーボードやタッチスクリーンを使って演奏する、
ヴァーチャルピアノというのがある。

知る人は知っているだろうが、
鳥の羽のようなデザインのピアノ「Ravenchord」というのがある。
あまりにも斬新で、僕も鳥なので非常に興味津々だ。
世界に一台しかない鍵盤数が三倍の、
二六四鍵という「三倍高密ピアノ」とか、
ドイツで制作されたピアノ「Klavins-Piano Model 370」は、
最高の音色を求めて設計された全高三メートル、
総重量二トンという超巨大ピアノ。
一八世紀に誕生した楽器であるピアノという素晴らしい楽器は、
その三〇〇年以上にわたる長い歴史の中で改良を加えられ、
様々な音楽に対応できるオールマイティな性質を持っていて、
とうに完成しているように見えるけれど、
まだまだ眼を見張るような変化は訪れるかも知れない。


  *


  92






Have You Never Been Mellow

井戸の底で揺れる、
あやうげな飛翔の陰翳。
小さき手に麻酔はなく、
いたずらに長いエンドロール。
工作物の、
ファウンデーション・クリームのような、
石膏ボンドが乾くように、
遮光カーテンを引く目蓋から、
まったく違う図像が浮かぶ。


  *


  93





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最終更新日  2024年09月21日 22時49分20秒


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