2011/12/04
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カテゴリ: 『・・・・・』
<<新世紀 エヴァンゲリオン>>
~ アナザー ストーリー ~
『 とまどいのなかで… 』


第4話「とまどいの放課後」(後編)


「シンジ…私…シンジに話さなきゃいけない事があるの…」

シンジに後ろから抱きしめられた状態で私はそう言った
するとシンジは私の身体から手を離し正面に回ってくると
さっきのように片膝をつき私の右手を両手で握った

「あのね…実は私…こっちの世界…」


シンジは握っていた私の右手を自分の顔の方へ引き寄せると
手の甲にそっとキスをした

「ば、バカ!…な、何よ急に…」

手の甲にキスされただけで頭の中が真っ白になり
せっかく話そうとしたタイミングをはぐらかされてしまった

「アスカ…会いたかった…」

シンジは突然そんな事を口にした

「え?…な、なにそれ…どういう事」

私はシンジの言った事が理解できずそう聞き返す

「僕はね…1ヶ月前にこっちの世界に来たんだ…」

「じ、じゃあ…あんたは私の知ってるシンジなの?」



「この世界は何なの?」

「僕にもよくわからない…ただ、なんとなく僕の理想を具現化したような世界なんだと思う…根本的に僕に都合のいいようにできてるからねw」

「そうなの?」

「うん…季節があって、使徒が居なくて、エヴァがなくて、戦わなくていい平和な世界…父さんと母さんが居て…みんなが居る」

「この世界があんたの理想…なんだ」


なんでだろ…なんで寂しいって思ったんだろ…
シンジの理想の世界で私の居場所がないから?
それじゃ…まるで私がシンジの事を…それはない!絶対にない!
絶対に…無い…って言えるのかな…
その時…シンジは近くにあった椅子を持ってきてそこに座ると
私の腰に手を回し膝の上に向かい合わせで座らせた

「ち、ちょっと!…何して!…調子にのらないでよ!」

「少しだけ」

シンジはそう言って微笑んだ

(「な、なんなのよ…この自信たっぷりなシンジは…ホントに私の知ってるシンジなの?」)

私はプイッと顔をそむける

「ここに来て最初のうちはすごく戸惑った…何もかも違うしね…でも1日、1日と過ぎていく内になじんできてね…」

「じゃあ…あんたはここで幸せなんだ…」

「でもね…事実は変えられない…僕が居たあの世界いも僕にとっては現実…絶対に忘れる事は出来ない…」

「え?」

「そう…こっちの世界にいくら慣れても…どんなに平和で幸せの毎日を送っても…僕は僕…何も変わっちゃいない…それを解ってくれる人が居ないこの世界は僕にとっていつまでも夢の世界なんだ…だから今日こうしてアスカに会えて実はすごく嬉しいんだ」

「なにサラッと恥ずかしいこと言ってんのよ!」

「アスカは今日1日…こっちにいて居心地悪かった?」

「そ、そりゃ…急にこんなところに来たら居心地いいわけないでしょ…なにがなんだかわからないし…みんないるけど違う人だし…」

私が口をとがらせてそう言うと

「そうだよね…僕も最初はびっくりしたよ…何もかもが違ってね…だって僕なんてバスケットやってるんだよ?」

「えええ?あんたがバスケット?ウソでしょ?」

「ホントらしい…ルールだってろくに知らなかったはずなのに体が動くんだよ…不思議だよね」

「それで大丈夫なわけ?」

「まぁ…何とかなってるから大丈夫なんじゃない?…それと引き換えに毎日のようにやってた家事全般をやろうとしても何も思い出せなかったりね…」

「それで今日のお弁当あんなんだったんだ…」

「ホントごめん…」

「いいよ…別にそんなの…あ!ちょっと待って…」

私は腰に回されていたシンジの手を外すと立ち上がりメイド服のスカートを直してからまたシンジの膝の上に座った
するとシンジはクスクスと笑う

「な、なによ…」

「いや…てっきりこの態勢が嫌で立ったのかと思ったからさ」

「嫌よ!嫌に決まってるでしょ!…ただ…あんたがあまりにも嬉しそうにしてるから…あと少しだけなら…サービスしてあげてもいいかなって…勘違いしないでよ!」

「わかった…ありがとう」

シンジはそう言ってまた私の腰に手を回す

「ね、ねぇ…この世界があんたの理想なんでしょ?」

「たぶんね…」

「わ、私は…この世界では…どんな子なの?」

「気になる?」

「気になるわよ…そりゃぁ…」

「この世界のアスカはね…静かで奥ゆかしくて…料理が得意で勉強は学年トップ…で高飛び込みの選手してて…この前はインターハイで全国2位だったんだ…」

「なんかムカつくな…その設定…」

「そう?」

シンジは不思議そうな顔をする…

「だってそうでしょ…学力が優秀で運動が出来るっていうのは当然としても…あとは真逆じゃない…」

私は眉間にシワを寄せてそう言ってプイッと横を向く

「確かにそうだね…」

「それが理想だって言われたら…腹立つでしょ…」

「でもね…今日アスカに会って確信した…」

「な、なにを?…」

「確かに僕はこの世界でこの世界のアスカと出会って…おしとやかなアスカもいいなぁ…そう思った…でも…」

「でも?」

「今日アスカに会って…やっぱり僕は僕が知ってるアスカが好きなんだって良くわかった」

シンジはそう言ってニコリと微笑む

「ち、ちょ…ば、バッカじゃないの!…何言ってるのよ…そんな…このタイミングでそういうのってナシでしょ…」

私はシンジの言葉を聞いて顔から火が出るほど恥ずかしくなる…そして鼓動がものすごく早くなる

「じゃあ…改めて…アスカ…愛してる…僕とずっとこの世界にいて欲しい」

シンジは真顔でそう言うと私の腰を引き寄せてそのまま胸に顔を埋めてきた

「ち、ちょ!ば、バカ!調子に乗るなって言ったでしょ!何してんの!」

私は必至でシンジの頭を叩いて抵抗を試みるが全然力が入らない…

「アスカ…ドキドキしてる?…心臓の音がすごく早い…」

シンジは私の胸に顔をうずめたままそう言った

「ば、バカ!なに人の心臓の音…勝手に聞いてるの…そんな事…言うな…あ、あたりまえじゃない…ドキドキ…しちゃうってば…バカ…」

私はそう言って胸に顔をうずめてるシンジの頭を抱きしめる
どのくらいそうしていただろうか…気が付くと教室が夕日で染まっていた

「ね、ねぇ…シンジ…」

「なに?アスカ…」

「ホントに…いいの?私で…」

「うん」

「おしとやかじゃないし…奥ゆかしくもないよ…」

「いいよ…」

「口も悪いし…バカシンジって言うよ…」

「いいよ…僕は今のアスカが好きだから…」

「私…ここに居ていいの?」

「うん…居て欲しい…」

シンジは私の胸から顔を離すとまっすぐと私を見つめてくる

「本気にするよ…その言葉…」

「いいよ…」

シンジの言葉を聞いて私は目を閉じてシンジの首の後ろに手を回す
そして私とシンジは唇を重ねた…
私は不意に唇を離し

「せ、責任…とってよ…」

シンジにそう言う

「わかった…」

シンジは微笑みながらそう答えてくれた
そして私たちはまた唇を重ねる…もう離れないと誓いながら…





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『 とまどいのなかで… 』

-完-





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Last updated  2012/01/23 05:54:45 AM
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