ホラー、近未来、童話、独り言

ホラー、近未来、童話、独り言

2007年10月21日
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カテゴリ: 悲しい
出産の後始末をすると夜も明けていた、産湯を使わせる事も出来ず濡れタオルで拭いてやるのが

精一杯だったが幸いにも元気な産声を上げた長男に乳を含ませると、精も根も尽き果て貪るように

束の間の眠りに就いた。

 久しぶりに熟睡した洋子だったが其れも数時間、義母に冷たい言葉で起された「出産は病気と

違うんやで、早よ起きてマンマの支度してくれな困るな。」まだ子供の出来ない義姉も「子供だけは

犬コロのようによう産みなさるな。」冷やかに言い放つと子供の顔を見る事も無く消えた

産後数時間の身体は辛く思うように動かない、生まれたばかりの長男に乳を充分与える間もなく

何時も通り食事の支度をしに起き上がる、食事もそこそこに長男の元に戻ってみると生まれた時の

元気な泣き声は無く消え入りそうな泣き声になっている。



息子を籠の中に入れ畦道に置き、娘は母屋の柱に犬のように括りつけ田に出た、息子が泣けば

姑達の冷たい視線に耐え乳を与えオムツを替える、永遠に続くかに思われた辛い日々に終止符が

打たれたのは突然だった、野良仕事を終え暗闇の田舎道を一人真っ黒になりながら帰って来ると

犬の子のように柱に繋いでいた娘の姿が見えない、繋いでいた紐も解かれている洋子の子など

誰もあやしてはくれない筈なのに。

 広い土間や軒下まで名前を呼びながら探した「何をしている。」聞き覚えのある懐かしい声

俄かには信じられなかったが忠雄が娘を抱き大広間の襖を開けて立っているではないか

「御帰りやす。」一言言うのが精一杯で今迄の辛い出来事が洋子の頭の中を駆け巡り、泥だらけの

手も構わず顔を覆って座り込み只泣きじゃくるばかりだった、異変を感じたのか二人の子供も

泣き出し三人で涙の歓迎会を演じた、本当の苦労は此れからである事を此の時知る由もなく。






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最終更新日  2007年10月21日 15時11分00秒
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