ホラー、近未来、童話、独り言

ホラー、近未来、童話、独り言

2007年10月26日
XML
カテゴリ: 悲しい
 忠一が「お母ちゃん帰って誤判食べようよ。」洋子の腕を引っ張る、其れで目が覚めると急に

足が震え一刻も早く其の場を離れたくて二人の子供を引き摺るように家に辿り着いた、救いの神は

鄰の住人で九州から転勤して来た自衛隊の一家がマイホームを建て出て行った後に入居してきた

左官工の一家で洋子の異常に気付いた妻が「余計な事かもしらんけど。」顔を覗かせ、部屋に

上がり込んできたのだ。

 頼る人も居ない洋子は話を聞いてくれる人であれば誰でも良かった、今迄の出来事を包み隠さず

話すと左官工の妻は貰い泣きしながらも「泣いてばかりいてもマンマは食べられないよ明日市役所に

いっといで、私らが助けてやれれば良いんだけど家も其の日暮らしの職工だから、ごめんよ。」

北海道弁丸出しの荒い言葉使いだが優しい気持ちは伝わる「市役所に行ってどないなりますのどす。」



早くいっといで。」早口で捲くし立てた。

 今迄何もかも忠雄に任せてきた洋子が始めて自分で行動しなければならないのが生活保護の

手続きだった、明日の朝一番にも行かなければ菓子パンさえ買う金も残っていない誰も助けては

くれない、翌日意を決し訪れた市役所は幾つかの薄暗い窓口が並んでいた、何処の窓口で誰に

話せば良いのか分からず取り合えず正面の窓口に行って「生活保護を受けたいんどす、此処で

宜しおすやろか。」眼鏡を掛けた職員に聞くと洋子の言葉使いに一瞬驚いたようだったが、鼻を木で

括ったように「此処じゃないよ。」言われ、教えられた窓口に行けば「あっちで聞いて。」

鼻で方向を指示され、其の窓口に行けば「此処じゃない。」たらい回しにされ朝早く出て来たにも

関わらず目的の課に辿り着いたのは昼になっていた。

 それ程広くない市役所を一回りし辿り着いたものの昼だからと更に一時間待たされ、やっと

話を聞いては貰えたのが係りの人間は冷たかった「此処に来れば直ぐにも金が貰えると思って



若いんだから働きなさい。」タバコを吹かしながら人を馬鹿にした様な態度で物を言う。

 洋子は「働いたことがおへんし何処で働いたらええのかも分からしまへんのや、其れより今日

食べる物もないんどす。」一目も憚らず泣き「今夜から食べるもんもおへんし、電器や水道も

止められますのや、子供達の給食費も払えしまはん、助けておくれやす。」涙ながらに訴えたが

職員は飽く迄も冷たく「いきなり来て『はい、そうですか。』なんて金は出せないよ、取り合えず



住所を書き投げ捨てるように洋子に渡した。

 市役所を出ると二時を回っていた、洋子はクタクタに疲れていたが家には帰らず市役所を出た足で

渡された名刺の裏に書かれた民生委員の住所を探して歩いた、二時を回ったばかりだと言うのに

ドンヨリと黒い雲がまるで洋子の心の中のように立ち込めている。

 名刺に書かれた住所と表札に書かれた名前を確認すると緊張してブザーを押す出てきたのは

主人だった、名刺を渡し市役所で言った話を又繰り返した男は玄関にも入れずに「最近多いんだよな

楽して金を貰いたがる奴が。」洋子を睨みながら言う、もう如何して良いのか分からず其の場に

座り込んで泣いた、流石に外聞が悪いと思ったのか玄関の中に入れ「取り合えず手続きをしなければ

金は出ないよ、手続きしても金が出るのは早くて二週間はかかるな。」ぶっきら棒に言うと

早く帰れと言わんばかりに背を向けた。

 「二週間も待ってたら一家三人餓死するしかおへん。」男のズボンに縋り付き離れなかった

男はポケットから千円札を三枚取り出し「此れで二週間は持つだろう。」洋子の足元に投げ出した

「言葉は悪いけど優しいお人やったんやな、三千円もくれはるなんて。」男の後ろに後光がさして

見えたが幻だった「其の金は貸すんだから役所から金が出たら返して貰うよ。」背中を向けて言うと

サッサと奥に消えて行った。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年10月26日 14時25分53秒
コメント(4) | コメントを書く
[悲しい] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: