すい工房 -ブログー

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2008年01月16日
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 私としては、居心地悪いこと、この上ない。
 誰にも言えない秘め事を、見られているも当然だから。

 ひとしきり眺めて、ファイルを閉じたのを見て、どれほど安堵したことだろう。

 やっと返してくれる。

 そう思ったのもつかの間。

「これ、しばらく借りるよ」
「はい――。……はい!?」

 早とちりして、返してくれるものと思ってした返事は、すぐさま慌てたさまに変化する。

 とにかく、私は泡くった。

「か、借りるって!?
 どういうことですか!?」
「どうって……そのままの意味だが。
 借りてもかまわないだろう?
 原本、あるんだし」
「そ……そういう資料の有無でなくて!」
「……やっぱり、使い慣れたものの方がいいのか?」
「いや、それもありますけど!
 そうじゃなくて!
 どうして持って帰らなきゃいけないんです!?」
「見たいから」

 悪びれもなく、これまた平然と久坂さんは言ってのける。

 あんまり堂々としているものだから、私の方が、硬直してしまったほどだ。

 そんな私を、久坂さんは不思議そうに首をかしげている。

「ほかに理由が必要か?」

 理由って……。

 何か言いたいけれど、言う言葉が見つからなくて、口だけがむなしく、わずかに動いてた。

 ……結局。
 久坂さんを納得させるだけの理由も思いつかず、言葉も見出せず、仕方なく、彼の要望にそうことになった。

 その時は、なぜ久坂さんが、それほどファイルを見たかったのか、わからずじまいだったけれど。

 翌日になって、その理由がわかった。

 朝、出社するなり、秘書課の方々にとりかこまれた。
 その誰もが切羽詰った表情をしている。

 鬼気迫る表情に、私は身の危険を感じて、後ずさりしたほどだ。

 その一人にがっちりと二の腕をつかまれたときには、小さな悲鳴をあげてしまった。

「何があったの?」

 ひそめつつも、迫力のある声で、そう聞かれた。
 何のことかわからなくて、私は怯えつつ、首をかしげた。

 彼女はさらに言い募った。

「社長よ、社長。
 機嫌がいいのよ、ものすごく」
「え?!」

 ……と。

 彼女の迫力に感化されて、反射的に驚いてしまったけれど。
 あとでふと「あれ?」と考え直して、またまた首をかしげた。

「……それが、なにか悪いんですか?」

「悪いもなにも!
 初めてよ、社長からにこやかに挨拶されたのなんて!
 就任してからこのかた、一度もそんなのなかったわ!」

 と、その声に同調して「私も!」とか「得体が知れなくて怖い!」との声があがる。
 後半部は、ちょっと久坂さんがかわいそうだなと思っていると、腕をつかんでいるかたが、さらにグイっ、私との間合いをつめてきた。

「ねえ、いったい何したの!?」

 つめよられても、思い当たる理由は一つだけだ。

 あのファイルしか、心当たりないけど。

 なんであれで機嫌がよくなるわけ?
 そんなに面白いものでもないと思うけど。

 でもどっちにしても、そんなファイルの話自体、できるわけなくて。(落書きなんて、いえるわきゃない)

 私は冷や汗をダラダラ流しつつ「わ……わかりません――っ!」と、囲われた輪の中から逃げ出すこととなった。







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最終更新日  2008年01月16日 20時57分12秒
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