すい工房 -ブログー

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2008年12月08日
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カテゴリ: 冷えた指 1~



 言っているのか。

 和之の思いは、言葉途中で声が途切れた。

 うめくように告げられた言葉だったけれど、何を言おうとしていたのかは、想像できた。

 和之の、想いがわかるからつらくて。
 心情がわかるから、つらくて。

 わかるからこそ――つらいからこそ。

 あえて和之に、切り出したのだ。

「佳奈美さんを通じて、和之が何かしようとしてるのは、わかってる。
 彼女の父親が……おじさんに何をしたのかも、わかってる。
 だけど――」
「わかってる?
 わかってるって?
 何を?
 何をわかってるって言うんだ?」

 再び、皮肉げにゆがめられた口元には、今度は怒気がはらんでいた。

 口調も、穏やかな性格の和之とは思えないほど、荒々しさを帯びている。

 これまで、対面したことのなった和之の一面に触れて、ひるみそうになりながら。
 どうにか自身を奮い立たせて、言葉を続けた。

「和之がどれだけ大変だったか。
 つらい思いをしたか。
 私なんかが、口出しできるはずがないっていうのも、わかってる。
 だけどっ!
 彼女は、関係ないんでしょ?」

 私に、和之のことを尋ねた佳奈美さんは。
 礼を知っていて、そして誠実な印象を受けた。

 ……同時に。
 抑圧を、受けているような。
 必要以上に、控えめな印象が……強かった。

 彼女と話しているときは、それが彼女の性格なのだと、思っていたけれど。

 本橋の家で交わされた、木島と名乗る人の概要を想定すると。
 かなり強引な人だとの印象が強く残っている。

 おじさんを騙すような契約を取り交わしておいて。

 だというのに、平気な顔をして、おじさんに連絡をとって、商談を持ちかける。
 もちろん、自分に有利なように。

 木島の名を聞かなければ、それが佳奈美さんと繋がるとは、とても思えなかった。

 ……多分、木島の名だけでは。
 それが佳奈美さんの親族だとは、思えなかっただろう。

 佳奈美さんと同じ姓を持つ人。

 それくらいの認識しか、なかったはずだ。

 佳奈美さんと、木島と名乗る人と、和之と。

 その三つが揃って初めて、繋がりがあるのだと、思えたから。

 それらの繋がりを知って、和之の、たぎるような怒りを、想像できて。

 ……同時に。
 戸惑いにも。

 思い、いたっていた。






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最終更新日  2008年12月08日 21時54分33秒
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