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僕はTwitter世界に入り浸っているのだが,よく広告が流れてくる。どれも漫画の一場面を切り取って,扇情的な見出しを書き入れたもので,見ているとすごく気になるようになっている。これで読んだ漫画もあるし,逆にうざいのでブロックしたものもある。今回読んだ『ようきなやつら』もTwitter経由で見知った漫画だ。ようきなやつら [ 岡田索雲 ]本作は妖怪を主人公とした短編集で,7本の短編が収録されている。こんな感じだ。・「東京鎌鼬」・「忍耐サトリくん」・「川血」・「猫欠」・「峯落」・「追燈」・「ようきなやつら」このすべての短編に感想を書くと冗長になるので,「東京鎌鼬」と「川血」をメインに書きつつ,最後にタイトルにもなっている「ようきなやつら」について語ろう。「東京鎌鼬」であるが,この作品は著者のTwitterで全ページ見ることができる(2022年8月21日時点)。https://twitter.com/sakumo_info/status/1526792042877136896これが投稿されたのが2022年5月18日。この日記を書いている2022年8月21日時点で3.1万リツイートと14.3万いいねがついてる。たぶん,このとき僕は読んでいるはずだ。冒頭,鎌を背負ったオスのイタチが,「疲れてるから寝かせて」という妻のイタチと性 行為をするところからはじまるのだ。もう,冒頭から普通の漫画にはない展開で心をつかまれてしまう。このあと,子供を欲しがっている主人公のオスのイタチに隠れ,こっそり妻がアフターピルを飲んでいるという衝撃の展開から,さらに衝撃的な結末に至ることになるのだ。さて,この漫画のテーマは正直言って僕には全然わからない。性的同意の話,と著者のTwitterでタイトルがついているけれど,内容は相当複雑で,読み手次第で色々なことを読み取れるのではなかろうか。ネタバレをどうしても避けたいのだけれど,子どもを自分の思い通りに育てたいという,古い時代なら星一徹みたいな男親とそれに反発する母親という図式でも読めるし,素直に夫婦のコミュニケーション不足がもたらす悲劇を描いているとも読める。なお,単行本あとがきでは「Twitterには物語の見え方が少し変わる見出しを付けてもらったところ,多くの人に読んでもらえました。うれしい反面,無邪気に差別的な解釈をして愉しまれる方も見受けられまして困惑しました」とある。物語の見え方が少し変わる見出し,というのはもちろん「性的同意の話」というところですね。ようするに,著者も想定外の読み方をする人が相当数いたということで,もはや書き手を超えたところにこの作品あるように思うのだ。次に「川血」。これもけっこう衝撃的で,Twitterの広告ではやはり冒頭1ページ,半魚人っぽい子どもが河童の夫婦に対し,「おれ…河童じゃねぇのか?」と質問するシーンから始まる。河童の両親は「父ちゃんと母ちゃんの子どもなんだ。河童以外の何物でもねぇ」ととりなすが,どう見ても,こんなんギャグ漫画である。(『ようきなやつら』42ページ)主人公の子どもは,頭に皿もないし,クチバシもない。顔の横にはヒレがあって外見上の特徴を言えばどう見ても河童ではない。だが,これは断じてギャグ漫画ではない。河童の両親たちは,「お前はおれたちの子だから河童だよ。甲羅のない河童もいるんだ。皿がないなら弱点がないってことだ」と必死に主人公をとりなしたりして深い愛情を感じる。作中で描かれるが,河童なら当たり前に使える水術(水をつかった魔法みたいなもの)も一切使えないので,「ニセ河童」学校でいじめにあっている。主人公が河童の国から巣立っていくまでを描いているのだが,ある意味で,「みにくいアヒルの子」みたいなところも感じる。ところで,やはり単行本に収録されているあとがきを見ると,「外国人や外国にルーツを持つ人たちが実際に受けている扱いを参考に描きました」とある。そう,この著者はけっこう社会派なのである。5番目の短編「峯落」なんかも,性被害を受けた女妖怪と,それを封殺する男妖怪の話なんだけど,あとがきによると「MeeToo運動」,つまり性的被害を受けた女性が「私も,私も」とSNSに被害を投稿し,性被害の撲滅と啓蒙を図るという運動である。単に作品を読んでいるときには展開の唐突さに困惑したが,背後に「MeeToo運動」があったとなると,これは納得できる。同様に6番目の短編「追燈」は関東大震災の際,在日朝鮮人の虐殺事件が起きたのを主題にしている。この「ようきなやつら」は現代の鳥獣戯画でもないが,妖怪を描くように見えて,実際には人間を描いている。もちろん,書き手にも色々な思惑があるのであろうが,テーマ自体に答えのないものを描いているのが多いため,読み手が著者の意図を超えてしまうケースも多いだろう。僕の感想自体も的外れかもしれないし,感想を書くのも少し恐い作品でもある。最後にタイトルにもなっている「ようきなやつら」。ある意味で,この短編集の総決算ともいえる作品である。これまでに短編で登場した妖怪の何人かが再登場している。短編のころより老いている者もいるので,時間経過はあるようだし,逆に言えば,紆余曲折があったにせよ若くして死んでしまうのではなく,老いるまで生きられたというのは良かったというべきか。ようきなやつら [ 岡田索雲 ]
2022.08.21
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この間、『モンテ・クリスト伯爵』を元ネタにした『白髪鬼』を呼んだ影響だか、僕の中で『モンテ・クリスト伯爵』が静かなブームになっている。色々と読み返している中、森山絵凪先生の漫画『モンテ・クリスト伯爵』の評判がわりといいので、買って読んでみた。モンテ・クリスト伯爵【電子書籍】[ 森山絵凪 ]いまさら、『モンテ・クリスト伯』のあらすじを説明する必要はあるまい。無実の罪で投獄された男が14年かけて脱獄し、さらに9年の準備期間で大金持ちになり、次々と復讐をしていくという物語である。ある意味で、チート級の財力・知力・精神力で復讐をしていく姿はいま流行の「なろう系」に近いように思う。数々のリライトが生産されまくっているところを見るについて、『モンテ・クリスト伯』の普遍的で強い人気を感じるところである。さて、この漫画版であるが、原作に忠実に描いている。正直、1ページ目をめくったところで少し意外だった。だって、岩波文庫で全7巻の大長編なのだから、ある程度省略をして、たとえば主人公が脱獄後から物語を始めるのかな、と思っていたからだ。本作では、原作ではあくまで第2にヒロインだったエデという奴隷少女にかなり焦点を当てていると聞いていたから、「主人公の脱獄まででページを使って大丈夫かな?」と思ったものだ。逆に、GONZOの巌窟王は主人公の投獄から脱獄までを大胆に省略し、後々その部分を回想などで語らせる手法をとっていた。巌窟王 第2幕 月に朝日が昇るまで【動画配信】具体的な漫画版の内容であるが、原作に忠実であるがゆえ、そこに意外性や驚きというのはあまりない。しかし、原作を漫画化しただけではなくて、原作では第2のヒロインだったエデについて作者独自の味付けがされている。彼女の初登場は4話目。そこから、主人公の伯爵のことが好きそうなオーラを出し始めるのが6話目くらいで、このあたりからエデのかわいらしさ、愛らしさが出てくる。原作に戻るのだが、僕の中でエデという少女はとにかくよくわからない人物であった。もともと、主人公のモンテ・クリスト伯爵ことエドモン・ダンテスは結婚式の日に逮捕され、脱獄してくればかつての婚約者・メルセデスは仇敵と結婚して子どもまで作っているという、女がらみで激しい悲しみを背負った人物である。原作では、エドモン・ダンテスが脱獄してモンテ・クリスト伯爵と名前を変えたあたりで彼の心理描写がかなり少なくなるということもあって、彼の心情はその言動から察するしかないのだが、彼の中で最愛の人はかつての婚約者じゃなかったのかな、と思うのだ。そういう意味で、人妻になろうが、母親になっていようが、第1のヒロインはメルセデスなのだろう。そういえば、昔見た映画ではメルセデスと主人公は婚前交渉してて、生まれた子どもは托卵してたという衝撃の事実が中盤で明らかになり、復讐を遂げた主人公はメルセデスと結婚する・・・というのを見た記憶がある。逆に、托卵されている仇敵の方がかわいそうな気持ちすら生まれたわ。そういうわけだから、たぶん、エデは第2のヒロインでしかなかったはずだ。もっと言えば、エデは主人公が復讐を遂げるための道具でしかなかったはずだ。そんな彼女が紆余曲折の末、主人公と結ばれて大団円というのが原作であるが、いかにも唐突で、第1のヒロインが途中退場したために繰り上げ当選したような気がしないでもなかった。僕の中でこの展開はかねてから疑問であって、作者はもともとエデを最終的なヒロインとして設計したのか、新聞連載の途中でプロットに変更があったのか。これが分からない。正直言って、エデについては最大の見せ場が1つ用意されているが、それ以外はさほど活躍しないし、主人公と情を交わすシーンはなかった。一方で、本作はちょいちょいと、エデと主人公のとりとめない会話シーンだとか、心情を独白するシーンなんかが描かれている。あと、なによりエデがかわいいね。もともと漫画家の森山絵凪先生の絵柄がすごいセクシー。もしかして森山先生はダンディなオジサマと美少女の取り合わせが好きなのかもしれない。話は変わるけれど、森山絵凪先生の別の作品で、『この愛は、異端』というのがある。この作品も『モンテ・クリスト伯爵』も年の差カップルだったけれど、『この愛は、異端』もかなりの年のカップルだ。この愛は、異端。 1【電子書籍】[ 森山絵凪 ]後書きを読むと、漫画制作に詰まっていた著者が担当に「子どもの頃に一番好きだった本は?」と聞かれて『モンテ・クリスト伯爵』と即答したとのことである。活字は苦手なのに、何度も読み返したとか・・・。そうして連載デビューをしたのが漫画版の『モンテ・クリスト伯爵』だという。そう聞いてから、2作目の連載作『この愛は、異端』を思い出すと、「保護者でダンディな悪魔のオジサマ」というのはモンテ・クリスト伯爵に似通ったところもある。もしや、森山先生も幼き頃に通読した『モンテ・クリスト伯爵』に性癖を歪められたのかもしれない(笑)。モンテ・クリスト伯爵ことエドモン・ダンテスについては、若い頃より中年期以降の方が圧倒的に魅力的だもん。仕方ないね。モンテ・クリスト伯爵【電子書籍】[ 森山絵凪 ]
2022.02.03
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いよいよ地上最強の女を決める戦乙女闘宴(ヴァルキリー・オペラ)の決勝戦である。 気がつけば,このトーナメントは6巻から始まって,いま13巻。気がつけば本作の半分をトーナメントに費やしているわけだ。本家ともいえる刃牙もグラップラー時代に半分以上を最大トーナメントに使っていたからそんなもんかもしれない。 はぐれアイドル地獄変 13【電子書籍】 この巻はトーナメントの優勝者に関するネタバレとかあるので,しばらく雑談をしてから本題に入ろうと思う。なので,ネタバレが嫌な人はブラウザバックして欲しい。 12巻の感想でも検討したけれど,恐らくは構想段階で決勝戦は主人公の海空と刃牙を女体化させた主人公補正の化身・マオマオだったんだろうと思う。 それが作者の想定以上に勝ち上がったのがアレフティナ・グゼバなんだろう。 ただ,彼女には問題点があってですね・・・。そう,ルックスである・・・。 (電子版13巻28頁,両者合意の上でのノー道着マッチ) 主人公の海空はもともとグラビアアイドルなので道着を脱いでも見事なプロポーションなのだが,グゼバは微妙ですね・・・。ノー道着マッチなのに,あまり嬉しさを感じない。 やはり格闘技において体格というのはなにより重要なわけで,女子プロレス選手なんか見ても筋骨隆々としているのが珍しくないからね,仕方ないね。 真面目な話をすると,道着はそれ自体,裸締めなんかのとき凶器にもなるだろうし,つかまれて投げ技に入られる可能性もあるから海空がノー道着というのは分るんだけど,グゼバ的には柔道技の多くが使用できなくなるんで,かなり不利な感じですね。 あとは,試合中の回想でグゼバの悲しい過去が語られるのだけど,彼女の母親は幼きころチェルノブイリ原発事故で被爆しており,原爆症でグゼバの母親や友人たちは命を落としているようなのだ。あと,グゼバの双子の姉妹も未熟児で生まれ,長生きできなかったようだし。 最終的に,試合は一進一退の展開が続くものの,海空が足刀を喉にぶち込んでから,マオマオの魔弾をグゼバの顔面にぶち込んでKOした。 一連の流れで,首に足刀をぶち込むところでは鯨岡ミカやルナ・カーンたちが,魔弾のときはマオマオが背景に出てきたけれど,得意技を借りている感じなんですかね。 なお,グゼバは海空を浴びせ倒す形で倒れ込んでいるのだけど,やる気なればグゼバは海空の喉に体重を掛けた肘をぶち込んで,殺せたのか,再起不能ぐらいのダメージを与えられてたけどそれをしなかったっぽい。 大会本部は海空の勝利という判定だけど,海空の自己採点ではグゼバの優勝。ドローという見方もありのようである。 感想なのだが,グゼバの強さは充分異常に描かれていたと思う。 グゼバは体格を見ても187センチ95キロという恵体である。一撃が重い様子が大ダメージとして描かれているし,ちょっとでも海空が気を抜けばKOどころか再起不能,下手をすれば死ぬ可能性があるくらいの描写であった。 ただ,難点も少なくとも2点はあった。 1つめは,展開の遅さである。これまでの試合は,だいたい単行本1冊で2~3試合だったのだが,今回は1冊全てを使って決勝戦なので展開はかなり遅かったように感じた。 観戦者がリアルタイム解説をしてくれるというのに加え,刃牙でよくやる後日のインタビュー形式で試合の回想と解説をしてくれるというのが展開を遅くしている。 2つは,特にグゼバと海空には過去に何の接点もないので,試合中に人間関係を掘り下げ,理解しあうとうのがない点である。 だいたい,この手のトーナメントだと試合前になにかしら,事前に接触があるものである。キャプテン翼なんか振り返ると,松山くんは食堂で「肩がぶつかった」程度の理由で日向くんにぶん殴られて喧嘩になりかけ,遺恨試合になるという演出が特になかったのだ。 もちろん,これは作者が意識してやってた可能性もある。刃牙の最大トーナメントなんかでも,決勝の相手のジャック・ハンマーは刃牙とそれまでは何の接点もないキャラだった。そこを参考にしたのかもしれない。 最後に,せっかく戦乙女闘宴が終わったので,その総評でもしてみよう。 だいたい,この手のトーナメントというのは主人公が1回戦か2回戦で負けることはありえない。優勝か,全試合を体験させてるという意味で準優勝というのはほぼ確定である。あのドラゴンボールでも孫悟空は天下一武道会に3度出場し,優勝1回,準優勝2回という戦績だった。 たぶん,主人公の成長を描く方が話を作りやすいという観点からすれば,優勝よりも準優勝くらいが次の話を作りやすいんだろう。 なので僕は,海空は準優勝くらいかな,と思っていたのだ。 そういう意味で,正直言って僕は海空は優勝しなくても良かったのかな,とも思う。本業がグラドルなんだし,最強の称号まではなくてもいいんだし。 これからは日常回にもどるようだけれど,いったいどうなることやら。 トーナメントやってる間の業界を見てもNizuUが一瞬流行ったり,政治の世界を見ても首相が2回かわったりした。掲載誌の別冊ゴラクも電子版のみになってしまったし。その辺の世情も見たいものよ。 はぐれアイドル地獄変 13【電子書籍】
2021.10.08
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このあいだ,『結婚アフロ田中』が全10巻で完結した。僕はこのアフロ田中シリーズとともに16年くらいの時間を過ごしてきた。つまり,僕と田中の付き合いも16年くらいということになる。結婚アフロ田中(10)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]16年近くもの付き合いとなると,僕の中で田中という男は古い友人みたいな感覚である。いや,現実の友だちなんて月1回会うかどうかということを考えたら,週1で漫画連載を追いかけている田中の方が現実の友だちよりも,いや別居する親たち以上に関わっている時間は長いとすら言える。僕は田中より数歳年上である。しかし,田中は僕より先に合コンを経験し,就職し,結婚している。そういうわけで,田中は僕の先輩とも言えるのだ。一時期,「Fateは文学,CLANNADは人生」と言われたものだが,田中はまさしく人はどう生きるべきかを描いた哲学書である。僕は田中の成功や失敗から学んだものだ。言うならば,アフロ田中シリーズを読む,というのは田中という人間と付き合うということだから,別にシリーズのどこから読んでもいいし。実際,僕の妻なんかは『結婚アフロ田中』から読み,たまに過去作にさかのぼっているが,まだ1作目に到達していない。たぶん,妻はアフロ田中の続刊を僕と追いかけることがあっても,さかのぼりはしないだろう。さて,自分語りをしながら,アフロ田中の話をしていきたい。もともと,アフロ田中はたぶん,シリーズ化する予定も何もなく,『高校アフロ田中』のタイトルで連載が始まった。高校アフロ田中(1)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]一昔というか,僕が小学生のころ『行け!稲中卓球部』という漫画があった。普通,部活動をしている学生を主役にした漫画ならば,全国大会なんかを目指してまじめにスポーツに取り組むものなんだけど,『行け!稲中卓球部』は,部員たちが下ネタやあるあるネタなど,どうでもいいお喋りをしたりする日常漫画だった。ある意味で,『高校アフロ田中』もそんな感じだろう。ボクシング部に入った田中だけれど,男の悲しき性欲ネタだの,あるあるネタなど延々と繰り広げていた。転機になったのが,シリーズ2作目,『中退アフロ田中』である。タイトルの通り,田中は何の目的もなく高校を中退し,ダラダラとバイトをしたり,友だちと遊んだり,合コンに行ったりする。もはや「高校生を主役にした学園漫画」という最低限の枠もなくなり,ただの男を描く漫画となってしまっている。中退アフロ田中(1)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]普通の漫画の主人公ならば,生まれたことに目的があるはずだ。たとえば,『ドラゴンボール』の孫悟空ならば孫悟空はドラゴンボールを集めるために生み出されたキャラクターだし,刃牙は最強になるために作り出されている。ところが,『中退アフロ田中』には主役の田中を描く以外に何の目的もない。作者ですら,中退アフロの時点で,田中が将来結婚するなんてことは決めていなかっただろう。だけど,人生って言うのはそんなものだと思う。もののたとえとして,「イチローはプロ野球選手になるために生まれてきたような男だ」ということがある。しかし,人間というものは実存が本質に先立つというやつだ。人間はまず意味もなく生まれてきて,生まれてきた意味というのは生まれてから探すものだ。当時の僕は大学生。遊びに行った友だちの家で単行本を読み,これがずいぶんと面白くて,ハマったものである。そういう意味で,僕はこの『中退アフロ田中』にはずいぶんと思い入れも大きい。田中の合コン話や,モテない話に共感し,笑ったり,泣いたりしたものだ。次の3作目が『上京アフロ田中』である。ここで田中は地元を出て,東京に出て行った。上京アフロ田中(1)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]ここで画期的なのが,レギュラーだった地元の友人たちがリストラされてしまったことだ。僕は正直,悲しい気持ちになった。だって,田中の地元の友だちにも親しみがわいていたし,地元のいんらん娘なんか,結構好きだったのだ。ところが,田中は地元を出て東京で新しい人間関係を作ることになった。就職で親や友人のいた地元を離れる,というのは現実ではよくある話であるが,漫画でそんなことをやるのはあんま見ない。これは,結果的には大成功だったといえる。地元の友人たち以上に,田中が東京で知り合った人たちもまた魅力的なのだ。また,これまでモテないでいた田中にも,ついに恋人とができたりもする。特に,僕は田中の上司,遊び人の鈴木さんが好きである。モテない田中のため,合コンをセッティングしてくれたり,口説き方,デートの仕方をアドバイスしてくれたりする。鈴木さんが教えてくれた,「初めてのデートは映画館に行け。上映中は会話をしなくていいから,口下手でもやっていける」だとか,「彼女の家に入りたいのならば,家でDVD見ようよ,と誘え。これで決まりだ」などのテクニックは僕も実践したものも多い。僕は,田中には古い友人みたいな感情を抱いているが,鈴木さんには頼りになる兄貴分みたいな気持ちである。鈴木さんは結婚してしまって,あまり田中と遊んでくれなくなったのが寂しいものだ。4作目が,『さすらいアフロ田中』である。失恋をしたり,仕事が嫌になった田中は地元の友人と2人でバイクで旅に出るのだ。さすらいアフロ田中(1)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]田中が上京することで大きく舞台を変え,それが成功した3作目に対し,4作目の『さすらいアフロ』について,「田中が旅に出る」という展開は結果的に失敗だったのかもしれない。北海道から沖縄までさすらったものの,最終的に田中は上京アフロで就職した東京の建築会社に戻り,日常生活を送ることになる。マンネリ展開にもどった,ともいえる。そういえば,ちょうどの『さすらいアフロ』をやっていたころあの東日本大震災があり,田中たちがボランティアで東北に行く話なんかもあった。一生懸命,瓦礫を除去した田中であったが,それはほんの一部でしかなかった,というシーンは結構好きである。なお,アフロ田中シリーズはこの『さすらいアフロ』をもっていったん完結してしまった。田中との別れは,少し寂しかったものだ。5作目が,『しあわせアフロ田中』である。だいたい,『さすらいアフロ』のあと,2年ほど間隔があいている。この連載再開は,古い友だちとまた連絡を取り合うようになったような感覚で,ずいぶんと嬉しかったのを覚えている。しあわせアフロ田中(1)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]復活した田中シリーズであるが,当初は田中が地元の友人とゲストハウスを作る,という話だったこれはこれで面白かったのだが,当時の僕は「東京の鈴木さんたちをもっと見たいなぁ」と思っていた。結果として,田中のゲストハウスは火事で炎上し,田中はもとどおり,上京アフロで就職した会社に戻るのだ。このゲストハウス炎上の話は,どういうわけかネットでコラージュが作られまくったのをよく覚えている。もしやすると,ゲストハウス経営を田中たちにやらせるとなると,作者の方でもゲストハウスの取材なんかが必要になるだろうし,それがうまく行かなかったのかもしれない。さて,ようやく6作目,『結婚アフロ田中』である。前作ラストでプロポーズした田中は恋人と結婚し,子どもまで授かるのだ。結婚アフロ田中(1)【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]田中に遅れること1年くらい,5巻が出たころ,僕も結婚することになったのだが,親への挨拶のやり方なんかは田中を参考にさせてもらったものだ。たぶん,この『結婚アフロ田中』から読者のターゲット層が微妙に変わってきているのを感じる。もともと,前作の『しあわせアフロ』からその傾向はあったが,田中は恋人とそれなりにうまくいっており,モテないネタは田中ではなくて,田中の同僚たちがやるようになった。田中も,妻とのセックスレスで悩んだり,子育てで悩む話はあるにせよ,「恋人がいない」という悩みはもうなくなっている。子育て漫画,というのは古くから女性をターゲットに何作もあったのだろうが,『アフロ田中シリーズ』もついに子育て漫画となったのだ。つまり,女性が読んでも楽しめる漫画になりつつある。最後に,自分語りのまとめである。僕の友人にKという奴がいる。彼は恋人に「読め」と命じアフロ田中を読ませていたそうだ。当時の僕はKのことをさんざ馬鹿にしたものだが,僕も妻にアフロ田中を読ませてしまった。なんというか,男というものは恋人に対し,ありのままの自分をさらけ出すのが嫌なのだ。だが,自分がどんな男なのか,知ってもらいたいのだ。ここで,田中である。田中は僕と同じような感性を持っており,醜いところも,情けないところもあって,血が通った人間そのものだ。そんな田中に触れることで,男性読者はあるあるネタとして楽しめるだろうけれど,女性読者には男の心を理解する教科書になるだろう。そう,女性には田中を通じて,間接的に男の優しさ,けなげさ,悲しさ,美しいところも醜いところも,全てのものを知って欲しいのだ。子育てアフロ田中【電子書籍】[ のりつけ雅春 ]
2021.05.17
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最大トーナメント・・・じゃなくて,戦乙女闘宴もいよいよクライマックス。前巻では主人公の海空が決勝戦進出を決めたところで終わったので,この12巻は1冊まるごと使って海空と決勝を競う対戦相手を決める戦いになる。1冊まるごと,といっても巻末にLGBTをテーマにした読み切り漫画が掲載されているのでだいたい4分の3くらいになるのかな。はぐれアイドル地獄変 12【電子書籍】さて,準決勝第2試合だけれど,ミャンマーのマイナー格闘技,ラウェイのマオマオと柔道のアレフティナ・グゼバの戦いになる。(22頁,にらみ合う2人)何度か,僕は過去の感想で書いていたけれど,マオマオのモデルは刃牙ではないかと思っている。傷だらけの体。刃牙によく似た泥臭いファイトスタイル。なお,刃牙と言っても時期によってファイトスタイルは変遷していくのだけれど,最大トーナメント時代くらいまでは,強敵に対しては主人公補正としかいえないようなギリギリの勝利をしていた。グラップラー刃牙 41【電子書籍】[ 板垣恵介 ]マオマオの場合,必殺技というかスキルとして「運命殺し」という,どうも説明が難しいが逆転の可能性が少しでもあれば負けを回避する能力が主人公補正バリバリである。読んでいても,一進一退の試合で一方が有利になったかと思えばもう一方が逆転するという目まぐるしい展開が続き,僕は読んでいてもどちらが勝のか,予想ができなかった。巻末の後書きを読んでいくと,著者もマオマオを「漫画の主人公という幻想の決勝」と評しており,この準決勝第2試合はグゼバの「純粋な力」とマオマオの「主人公力」の対決という図式で描いていたようだ。もしかして,マオマオを刃牙とするのならば,グゼバはジャック・ハンマーなのかもしれない。準々決勝では小柄なテクニシャン殷小敏と戦ったがこれは渋川剛気で,準決勝では刃牙と似通ったマオマオを倒す展開になったからだ。ところで,12巻末の後書きで,81話について「当初の予定通りか,途中で覆ったのか,ご想像にお任せします」とあるので想像してみよう。僕は高遠先生のTwitterアカウントをフォローしているのだけれど,2年ほど前にこんなつぶやきがあった。つまり,準々決勝第2試合(ルナ・カーンvs鯨岡ミカ)と準々決勝第3試合(アレフティナ・グゼバvs殷小敏)の結果は当初の予定と逆だったというのだ。そして,グゼバは当初の予定では殷小敏との準々決勝で敗退し,複雑骨折病院送りになっていたはずである。グゼバvsマオマオという対戦カードは作者の想定外のものであり,本来はの準決勝第2試合は殷小敏vsマオマオになっていたはずである。恐らく,高遠先生の中でグゼバが強くなりすぎたんだろう。そうすると恐らくは,本来の流れとしてはマオマオが主人公力を発揮して殷小敏を倒していたのだろう。そして,決勝には刃牙をモチーフにしたマオマオと海空になるはずだ。海空が刃牙と戦うならばどうするか,考えただけでも楽しいじゃないか。なので,恐らく準決勝の展開そのものが高遠先生の想定外なのだろう。僕はこの戦乙女闘宴で,何度か「このキャラをここで使ってしまうのは惜しい」と感想を書いていた。たとえば,女版のヒクソン・グレイシーであるマリア・ルイーザ・リベイラは決勝に出ても良さそうなくらいいいキャラだったのに2回戦で主人公・海空に敗退してしまったし,過去作の主人公だったカトリーヌ・ボアザンも1回戦敗退である。逆に言えば,そういったキャラを押しのけて上がってきたのがグゼバであるはずだ。高遠先生が執筆している内,グゼバは技の殷小敏や主人公力のマオマオをすら上回ったというのだ。どちらも決して弱い相手ではなかった。「運命殺し」といえば,正直言ってグゼバにこそふさわしい。海空vsグゼバの試合が,刃牙vsジャック・ハンマーを超える名勝負になることを祈りつつ,今回の感想はここまでにする。はぐれアイドル地獄変 12【電子書籍】
2021.03.31
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梶原一騎の名作といえば,『巨人の星』と『あしたのジョー』の2作品のどちらかが頂点だろう。この2作品のうち,続編もなく完結したジョーに対し,『巨人の星』は人気にあやかり続編が作られている。このたび,U-NEXTで見ていたので感想を書いていきたい。新巨人の星(1)【電子書籍】[ 梶原一騎 ]ところで,僕が住んでいたところの市立図書館は手塚治虫だとか『美味しんぼ』にまぎれて,なぜか『新巨人の星』の文庫本が全巻並べられていた。なお,普通の『巨人の星』はおいていなかったので,チョイスが謎としか言えない。僕はどちらかといえばこちらを折に触れて読んでいたので,実は『新巨人の星』の方が思い入れが深かったりする。『新巨人の星』は,どうしても『巨人の星』と比べると評価は低いのだろう。漫画版は飛雄馬が大リーグボール右1号を打ち込まれ,夜の港で再起を誓ったところで唐突に物語が終わってしまった。打ち切り,というわけではないだろう。人気がなかったとは思えない。アニメ版はきっちりやっているわけだから。正直言って,僕はこの『新巨人の星』という作品が嫌いではない。むしろ好きだと言ってもいい。絵柄についても,新の方の写実チックな方が好みである。さて,ここからはアニメの話である。『新巨人の星』であるが,アニメは『新巨人の星』と『新巨人の星Ⅱ』が作られている。Ⅱまで作られたというのは人気の高さゆえか,逆に一度中途で終わっているわけだから人気はさほどでもなかったのか・・・?このアニメ版ではさまざまな改変が加えられている。たとえば,オリジナルキャラ,丸目太(まるめ・ふとし)である。もともと,原作では飛雄馬の女房役,伴宙太は引退しているため,飛雄馬はキャッチャーとの友情物語りもなく,孤独に戦っていたのだが,アニメでは丸目という新しいキャッチャーとバッテリーを組むことになる。丸目はレスリング部の出身で,伴と同じような巨漢と,伴の劣化版みたいなところはあったが,それでもバッテリーの掛け合いというのはあると良い。そして,アニメは対象年齢を低くしているせいか,ストリーが全体的に明るい。飛雄馬は何勝も重ねていくし,大リーグボール右1号が破れたからといって失踪することもない。左時代の大リーグボール1号,2号,3号といった過去の魔球も織り交ぜて完全試合も達成している。そのうえで,飛雄馬は大リーグに挑戦するため,アメリカに飛び立つ。まだまだ飛雄馬の戦いは続くけれど,その前途の明るさを思わせる。明るい飛雄馬と逆に悲劇を背負ったのが花形満である。大リーグボール右1号を打つためには,理論はよく分らんが全身の筋肉がズタズタになり,再起不能になるというのだ。最終回の2話くらい手前,花形は1球に全てをかけ,大リーグボール右1号を打ったものの,再起不能になってしまう。形としては,左の大リーグボール1号攻略の焼き直しであるが,こういう,明日のことを考えない刹那的なプレイは,飛雄馬にこそふさわしい。ただ,花形満は野球をやっても一流であるけれど,経済人として大成させたいというアニメスタッフの心意気であろうか。また,花形の良かった点といえば,最終回に子どもが生まれたというところ。男の子か女の子か不明ではあるが,めでたいことである。ふと考えてしまうのだけれど,梶原一騎の漫画は父と子の関係性を描く作品が多いものの,主役級のキャラクターに子どもが生まれるという展開がほぼない。『巨人の星』は『新巨人の星』という続編が作られた結果,飛雄馬,花形,左門に伴といったキャラクターが少年から青年になったものの,飛雄馬と伴は独身のまま。既婚者組の花形も左門も,漫画版では子どもはできないままだった。梶原一騎の漫画で思いつくのは,『人間兇器』くらいである。もっとも,『人間兇器』の美影義人は子育てをしていない。僕の思いつく限り,最初から子どもがいるというのではなく,作中の時間経過で子を持つことになった梶原漫画のキャラはいないのではないか。これが少年漫画ならそんなものだろう。たぶん,あだち充なんかは父親を主役にした漫画は描いてないだろう。でも,梶原一騎は青年漫画も手がけているわけで,父親を主役にしたテーマで作品を描いてないというのは不思議である。もちろん,子の目線から父を描くことで,間接的に父親を主要人物にした漫画はいくらでも描いているのだけれども。もしかすると,梶原一騎は子の目線で父親を描くことはできても,その逆,父親の目線で成長する子どもを見守るというのができなかったのかもしれない。実際,梶原一騎は激務のため,あまり子育てをしてなかったらしいから。新巨人の星(11)【電子書籍】[ 梶原一騎 ]
2021.03.24
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ついに『衛府の七忍』が10巻で完結,最終回を迎えた。個人的に満足できるないようではなかったかが,感想など書いていきたい。それから,雑誌チャンピオンRED4月号に掲載されていた付録冊子の話もしていきたい。衛府の七忍 10【電子書籍】[ 山口貴由 ]まず,10巻の内容であるが,箇条書きするとこんな感じ。・徳川家康は老衰で死亡・カクゴと伊織は家康の死で目的を失い,安住の地,トコヨノクニを目指す。・伊織,浦島太郎に誘拐される。・カクゴ,タケルと動地憐と合流し,浦島太郎を3対1でタコ殴りにする。・カクゴら怨身忍者たちは日本を捨てて海上で生活するようになる。・秀忠,日本を離れたカクゴたちを無視することにするものの,桃太郎卿が攻め入ろうと進言(完結)完結の仕方だけ語ってもいいのだが,事実上のラスボスになってしまった浦島太郎について語らないわけにはいかないので,それを簡単に語った上,中途半端な完結について語ろう。まず,本作では竜宮城は巨大な遊郭になっている。浦島太郎は乙姫の恋人的な立ち位置で,竜宮城の経営者的な感じ。(10巻電子版164頁,浦島太郎さんの自己紹介)この浦島太郎の戦績を見ると,こうだ。・vs六花氷鬼・吹雪を耐えた上,銃で六花の頭を吹っ飛ばす。ただしとどめは刺さなかった。・vsカクゴ・タケル・動地憐3対1で戦っており,袋だたきにされる。流れを見るとタイマンなら怨身忍者にも勝てそう。戦績を見ると,決して弱くはない。ただ,微妙ではある。最終的に,怨身忍者3人は浦島太郎を集団で袋だたきにされているところを見かねたツムグに,「お前ら,人間みたいだったぞ!」と怒られて対戦は終了した。(10巻電子版191頁,「人間みたい」が罵倒になる世界観よ)そして,別ルートで遊郭に潜入していた黒須京馬とも合流し,散以外の6人の怨身忍者は日本を出て,元は巨大遊郭船だった竜宮城を拠点に生活することになる。で,日本を出て海の上で活動するのならば無視しようとする将軍秀忠に対し,桃太郎卿と金太郎が攻め入ろうと進言するところで本作は完結。なんとも微妙な終わり方だ。これから,怨身忍者たちと衛府の戦いが始まらんとするところで完結なんだもの。僕はこの物語について,こんな予想をしていた。「第1話,零鬼編が元和元年9月の出来事だ。ラスボスの徳川家康は,歴史的には元名2年4月に死亡するのだから,たぶんこの家康の死をカクゴたちの功績にするだろう。桃太郎卿を含む中ボスにも見せ場が欲しいから,中ボスに怨身忍者を3~4人倒されてしまうだろう。最後に怨身忍者が2~3人が命を捨てて,家康を討ち取って終わりだろう」いや,もう全然予想ははずれましたね・・・。このラストを一言で表現するなら,典型的な「俺たちの戦いはこれかも続くぜ!」という打ち切りラストだ。残念でならない。説明不足も目立つ。秀忠が「父家康との約定通り,鬼どもは本土を離れたようだな」というんだけど,そんなシーンあったかな? (10巻電子版224頁,そんな約定あったけ・・・?)死に際の家康と散が会談してるシーンはあったけれど,散に怨身忍者を代表して何か言う権限があったとは思えない。同様に,死んだはずの銀狐が唐突に竜宮の秘薬で生き返ったり,武蔵や沖田総司といった魔剣豪枠がいったい何だったのかも不明である。打ち切りにも色々理由があるだろうが,『衛府の七忍』の人気がなかったとは思えない。連載終了は2021年1月号だが,単行本の発売と同時期に発売された2021年4月号には得点の小冊子がついている。(僕はこの付録目当てに本誌を買ったぞ)この小冊子が30頁で全ページカラーという大盤振る舞いである。雑誌の方もかなり優遇してくれていることが分る。こちらでは鬼哭隊の入隊試験ということで,武蔵と沖田総司の試合模様が描かれている。ここにも説明不足はあって,武蔵が鬼哭隊に入ることになった経緯も不明ながら許せるとして,桃太郎卿のスカウトを断って逐電した沖田総司についてはしっかりした説明が必要だろう。なお,この小冊子に山口貴由先生の後書きが載っており,こう書かれている。改行もそのまま一部を引用する。鬼となった化外者と,吉備津彦命率いる魔剣士,どちらか一方が息絶えるような闘いにならなかったことに後悔はありません。まるろわぬ民が望むものは,安全な棲み家,これに尽きるでしょう。(チャンピオンRED,2021年4月号付録冊子)」この文面を読む限り,中途半端な最終回の後,桃太郎卿こと吉備津彦命と怨身忍者が戦うことはなかったようだ。秀忠は本土に来ない限り怨身忍者を無視するし,怨身忍者もまた衛府と敵対しない。もしかすると,桃太郎卿を強くしすぎて怨身忍者と戦わせられなくなったのではなかろうか,そう思ってしまう。個人的には,怨身忍者には家康の首くらいは取って欲しかった。正直言って,本作の問題点はクロスオーバーをしたところにあるのではなかろうか。カクゴはもちろん,『覚悟のススメ』の主人公から来ているし,怨身忍者はたいてい他の作品の重要人物だったりする。これが料理の世界では食前酒だったり,刺身のツマだったり,箸休めだったり,メインを引き立てるものがあったりするものだ。本作はメインの料理がどんどんテーブルに並べられ,そのメイン料理どうしが互いの長所を活かせていたのか疑問はある。ぶつかりあって,世界観を台無しにしてしまったのではなかろうか。しかも,個性の強い主人公たちに加えて桃太郎卿や魔剣豪たちがいる。処理にはずいぶんと困っただろう。少なくとも,魔剣豪の武蔵と沖田総司は本筋の「まつろわぬ民が権力と戦う」というテーマと別の世界におり,登場させる必要性がなかっただろう。個人的な見解だが,クロスオーバーにより物語の収集がつかなくなったのは過去作,『エクゾスカル零』も同じだった。この作品も,過去作のオールスターをやって中途半端な形で完結してしまっている。ある意味で,『エクゾスカル零』と『衛府の七忍』について,同じ失敗が繰り返された。次こそは,独自の世界観で勝負して,『覚悟のススメ』,『後空道』,『蛮勇引力』のような名作を書いて欲しい。衛府の七忍 10【電子書籍】[ 山口貴由 ]
2021.02.23
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梶原一騎の作品は単なるスポーツ漫画ではない。哲学書である。梶原一騎は童貞について論じたボクシング漫画を作っていた。それが『雨の朝サブは』である。本作を梶原一騎の傑作漫画,『あしたのジョー』と比べながら見ていこう雨の朝サブは【完全版】1【電子書籍】[ 下條よしあき ]あらすじとしては,主人公,志波三郎,通称サブがボクシングを通じて成長し,恋をし,登り詰めていく様子を描いた青春漫画である。タイトルの「雨の朝」というのは,モハメド・アリが新チャンピオンになった際,「いつも雨の朝だったが,これからは違う」とインタビューに答えたとされるのを元に,ドン底の主人公を重ねているのだろう。この作品では雨の演出が何度も描かれており,『夕やけ番長』における夕焼けのように,ときおり暗い影を作品に落としてくるのだ。(電子版1巻7頁。梶原漫画なので本当にこんな台詞があったのか疑問はあるなぁ・・・)この作品,Wikipediaを見ると1979年に連載が始まった作品である。梶原一騎の逮捕による破滅が1983年なので,末期の作品と言って良い。なんといっても,梶原一騎はすでに『あしたのジョー』というボクシングを世に出しているのであって,これの二番煎じとならぬよう,気を配りながら作っていたのだろう。もっとも,初期のサブはサンドバックをたたきながら「サンドバックに浮かんで消える~」と『あしたのジョー』のテーマソングを口にしたり,ときにはテーマソングを演奏したりとファンサービスもしていてジョーの方のファンも楽しめる内容になっている。(電子版4巻101,102頁。サブもジョーは読んでいるのだ)本作は『あしたのジョー』と色々と差別化はあると思うが,特徴的なのが,サブの恋愛模様がしっかりと描かれているところだ。相手の女性は,赤尾火鳥(あかお・かとり)という,ブルジョワ令嬢だ。梶原一騎はよく不死鳥,火の鳥というモチーフを好んで使うので,火鳥という名前からして梶原一騎の思い入れを感じるところ。この火鳥の父もまたボクサーで,かつてサブの父親と対戦した結果,試合中の事故でサブの父親の両目を失明させた経歴を持つ。いわば仇の娘である。さらに火鳥の兄,KOケンこと赤尾研二は序盤のライバルとして活躍したりする。『あしたのジョー』でいえば,火鳥は白木葉子,KOケンは力石徹のようなものだ。正直言って,KOケンはライバルキャラとしては力石とは比較にならない。序盤こそ,その異名の通りKOの山を築き日本チャンピオンとなり,ついには世界チャンピオンに挑むものの,中盤で世界チャンピオンに挑んだあたりがピークで,以後は事業の方に専念するとして引退を決意したりする。この引退を決意した後,KOケンはサブと試合をしたものの,蛇足みたいな感じで盛り上がりには欠けた。一方で,火鳥はヒロインとしては申し分ないほど魅力的であった。当初は敵対的な立場からサブを挑発し,たき付ける。サブの男気を認めると,徐々にはげまし,ついには結ばれるのだ。象徴的なのが,サブが物語のスタート時点で童貞だったことである。なんと,サブの親友であるインテリ君もまた童貞で,ときたま童貞談義をしたりする。また,サブは途中で童貞を捨てるチャンスがあれど,「ここで童貞を失ってしまえば,どこにでもいるトコトンありきたりの男に成り下がってしまう気がする・・・」と激しい意思の力で我慢をしたりする。(電子版4巻9頁,男には童貞の捨て方も重要になってくるのだ)童貞の捨て場所に悩んだサブは,もしサブがKOケンを越えるボクサーになったら,火鳥はサブに体を捧げるという約束を取り付ける。もともとは,サブが火鳥を挑発するため「俺がお前の兄,KOケンを越えるボクサーになったらお前とやらせろ」くらいの感じで一方的に言いつけただけであったが,火鳥もこれを受け入れてしまっている。(電子版4巻31頁,童貞を捧げる・・・!)単にセックスをさせろ,というのではない。「童貞を」というのが最大のポイントである。だからサブは決して他の女と夜を過ごすことができないのだ。真の男が童貞を捨てるのであれば,これに付き合う女もふさわしい女でなければならんのだ。この点,サブの親友であるインテリ君の方は意志が弱く,サブのタイトルマッチでマカオに行った際,商売女を相手に童貞を捨ててしまう。インテリ君はスッキリした顔をしているものの,実はだまされているだけで,1度しかない初体験をドブに捨ててしまっているのだ。(電子版8巻,当時は日本人がマカオなんかで海外で買春をするのが国際問題になっていた)対するサブは,ちょっとエロティックな表紙で飾る9巻でついにJフェザー級の東洋チャンピオンになり,約束通り火鳥と夜を過ごすのだ。雨の朝サブは【完全版】9【電子書籍】[ 下條よしあき ]東洋チャンピオンにもなり,恋人との一夜を過ごしたサブの顔はどうだろう。この晴れやかな表情をしているではないか。いつも心に降っていた雨がやんだという独白も入れて,この漫画の最高潮だと言っていいだろう。逆に言えば,この9巻が最高潮であり,これ以降は徐々に下がっていく。(電子版9巻86頁,チャンピオンベルトと恋人の両方を手に入れた朝の図)この童貞をどう捨てるか,さらにその前の誘惑から守り通すべきか,と言うところには梶原一騎の哲学が込められているように思う。様々な研究者は,『あしたのジョー』の「矢吹丈は童貞だっただろう」と論じている。単に女っ気がないとか,コミュ障だと非難するのではない。ジョーは純潔を守り,汚れることなく死んだのだと,むしろ褒める文脈だ。梶原一騎自身,多数の女性と浮名を流しているものの,どこかプラトニックなところへの憧れというのがあったのだろう。実際,欲望の限り女を抱く主人公よりも,サブやジョーは圧倒的に美しい。そうして,サブは心と体で恋人と結ばれたものの,これは梶原漫画である。火鳥はサブと一夜をともにしただけでヤクザの凶弾に倒れ,死んでしまう。サブは火鳥の思い出の詰まった日本を飛び出し,世界ランクに挑戦するために海外を転々としていくのだ。そして,ついに世界チャンピオンと戦うことになる。はっきり言って,この世界戦はさほど語ることもない。『あしたのジョー』のチャンピオン,ホセ・メンドーサのように不気味な強さが語られるわけでもなく,唐突に登場するキャラにすぎない。名前こそ,「キッド・サンシャイン」となっており,行く先々が雨だという雨男のサブと対比させるような名前ではあるものの,『あしたのジョー』のように盛り上がるわけでもない。最終的に,サブは王座奪還ならずで終わるものの,パンチドランカーになるわけでもなく,自動車のセールスマンとして第2の人生を送っている。そんなサブは,朝目覚めても心に雨の音を聞くことがない日々を送っている,とのことである。死亡説もあるジョーと比べると,五体満足で引退し,第二の人生を送っているだけサブは幸せと言えるかもしれない。総評として,この漫画は梶原一騎の哲学の結晶といっていいだろう。主人公は最愛の恋人とたった一夜しか結ばれることはなく,世界戦では惜しくも敗退する。だが,それでいいのだ。梶原一騎は努力の大切さを説くものの,決して努力が報われることにはしない。それでも,夢に向かう姿勢は美しい。たとえ,行く先に破滅が待っていようとも。雨の朝サブは【完全版】14【電子書籍】[ 下條よしあき ]
2021.02.17
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ヤンマガで連載していたものの,突如として「続きはアプリで」と本誌での掲載されなくなってしまった『雪女と蟹を食う』だけど,12月26日の更新でついに完結を迎えた。本誌での掲載がなくなったのでもしや打ち切りか,と思ったものの,きれいに話が終わっていたので個人的には大満足である。振り返りで感想なども書いていきたい。雪女と蟹を食う(1)【電子書籍】[ Gino0808 ]そもそも,『雪女と蟹を食う』だけれど,タイトル通り,主人公の青年が雪女を連想させるような冷たい感じの人妻ヒロイン,雪枝彩女(以下「彩女さん」という。)と2人,蟹を食べるために北海道に向かうという物語である。当初の主人公は痴漢冤罪で仕事も恋人も失って自暴自棄となっており,「自殺する前に蟹を食べたい。金もないから強盗しよう!」という発想から彩女さん襲ったのだが,どういうわけか2人で北海道に蟹を食べに行くことになるのだ。あらすじをざっと書いてみても意味の分らんことになっており,こういうことになるのは彩女さんにも色々あるのだ。このヒロインの方の事情は,ゆっくりと語られるのだが,1つ,また1つと開示されるたびに僕はなんとも言えない気持ちになったものだ。以下,単行本にもなっていないけれど,ある程度のネタバレはしながら書いていく。当初,主人公はヒロインの彩女に「自殺する前に,北海道で蟹を食べたいかな,って・・・」と言い,彩女は「それはいいですね」と答えたことから2人で北海道に行くことになった。終盤でやっと明らかになる話だが,彩女さんの「いいですね」は「北海道で蟹を食う」という点だけではなくて,「北海道で蟹を食って,自殺する」の2点を含めて「いい」と言っていたというのだ。旅行中,徐々に主人公は彩女さんに惹かれていき,その真意に気がつくものの,自殺はとめられない。ついに彩女は「次生まれてくることがあれば,宮沢賢治を愛せる女になりたい」と言い残して入水自殺するのだ。そして,ここで唐突にヤングマガジンでの連載は終わってしまい,僕は打ち切りなんかと不安に思ったものだ・・・。さて,この漫画はそこかしこに文学の匂いがする。テーマとして,色々なものがあるのだろうが,「心中」,つまり恋人同士がいっしょに自殺するというのがあるのかもしれない。明治の文豪は自殺しまくりだし,特に太宰治なんか3回心中して,そのうち女だけが死ぬという心中未遂を2回はやっとる。また,心中の起源をさかのぼってみても,江戸時代の歌舞伎で恋愛を扱うと,たいていが心中ばかりで,ジャンルとして心中物というのがあったとか。いまでいう,異世界転生ネタのようなものか。とはいえ,『雪女と蟹を食う』は単純な心中ではない。同じように自殺を目的としていても,2人の死ぬ動機が全然違うのだ。本来的な心中は,結ばれない2人が,せめて死後の世界では一緒になれることを願っていしょに死ぬと言うことだろう。ここで,主人公の青年は,社会からつまはじきにされて自暴自棄になって死にたいと思っている。途中,彩女さんを恋するようになったことで死ぬ気は完全に失せてしまっているし,できるなら彩女さんと2人で生きていきたいと考えてしまっている。一方で彩女さんは,夫を日本一の作家にさせるためにスキャンダラスな自殺をしたいのだ。どういうことかといえば,文豪・太宰治が愛人の日記から着想を得て『斜陽』を完成させたことから,自分も夫の文学作品のため犠牲になろうというのだ。そういうわけで,一時的に主人公の青年の腕の中にいたとしても,放っておけば夫の所に帰って行ってしまいそうな気もする。もう,この女を夫の元に返さず,主人公が独占しようと思ったら,どうしたらいいのか?一緒に死ねばそれでいいのだろうか? 実際,主人公も第64話で彩女さんの遺体を抱きしめながら,こう独白するのだ。たとえ魂が入っていない半分の身体でも旦那に・・・骨の一本返さないこの64話を読んでいたときの俺は,「この女とならば,いっしょに死んでも惜しくない」と思ったものだ。そういうわけで,彩女さんといっしょに自殺もできず,おめおめと生き残ってしまった主人公には少々の不満はあった。繰り返すが,主人公と彩女さんは自殺の目的が違うわけで,少なくとも彩女さんの愛情は主人公ではなくて夫の方に向いている。いっしょに死ぬという,心中の表面的な部分だけをやってみたところで,まさしく主人公は彩女さんの心は手に入れられない。手に入るのは死体だけだ。なお,最終回の68話については・・・,読後感は非常に爽やかだった。主人公は彩女さんの夫をぶん殴ってスッキリはしたし,最後のどんでん返しもあった。この,最後のどんでん返しについては,気に入った人もいるだろうし,逆に気に入らなかった人もいるかもしれない。僕は・・・どちらでも良かったのかな。俺ならばたぶん,彩女さんといっしょに死んでしまって終わりだ。主人公の青年のように,夫を殴りに行ったりはできない。あの結末は,主人公の熱意が生んだ奇跡ということでいいのじゃなかろうか・・・。一応この最終回のあと,作者のTwitterを見ているとエピローグがあるようだ。こちらも楽しみである。雪女と蟹を食う(4)【電子書籍】[ Gino0808 ]
2020.12.28
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異種族レビュアーズのアニメも終わったけれど,漫画の方はまだまだ続いております。アニメの方はエロ以外にもスタンクたちの冒険者としての活動が描かれていたり,文字中心のレビューをうまくアニメにしていたし,「好評のうちに終わった」といえるのだろう。なお,放送中止になった局もあるそうで,それも込みで成功だろう。だって,こんなアニメが普通に放映できる方がおかしいのだから・・・。異種族レビュアーズ 5【電子書籍】[ 天原 ]さて,5巻なのだけど原作者の天原先生のコメントをみると,今巻はアニメの放送を見ながら描いた話が多いので,影響されて1巻2巻の頃のキャラが再登場している話が多めの巻になりました。とある。言われてみれば原点回帰というわけではないが,新キャラや新たなサキュ店をガンガン出しまくるというのではなく,これまでのキャラの掘り下げなんかが行われていて,作品に深みが増したように思える。さて,目次はおおよそこんな感じ。この漫画はサブタイトルがなく,目次を見ても内容が分らんので,備忘的な意味も込めて僕の方で適宜サブタイめいたものをつける。第36話 耐火リングとサラマンダー編第37話 天使と世界観編第38話 ゼルの回想編第39話 アラクネ編第40話 訓練所ダイエット編(前編)第41話 訓練所ダイエット編(後編)第42話 ウンディーネ編こうしてみると,36~38話は過去キャラや過去のサキュ店が再登場する話だとか,世界観の解説回ということになる。39話と42話は普通にサキュ店のレビューをする回になっているのだが,42話はスタンクとゼルがサキュ店レビューをしないという,ちょっと珍しい回になっている。この漫画,基本的にたまり場となっている食酒亭で雑談後,サキュ店に行き,レビューをして終わりという黄金パターンといえばいいが,マンネリに陥りやすいところがあるのだが,決してそうはならんというように,微妙にパターンを変えてきているのが心憎い。また,サキュ店の紹介ばかりではなく,スタンクたちの冒険者としての描かれていてこの辺も楽しい。個人的に気に入ったのを2つほど紹介したい。1つは,38話。ゼルの回想編である。この話は・・・,ネタバレはやめて虚心坦懐に読んで欲しいので内容に踏み込んだ感想が非常に描きにくい。僕はまっさらな気持ちで1回読み,仕掛けを理解した上出もう1度読み返した。そうすすと,1度目とはまた違った感想がわいてくるのである。たんにサキュ店に行き,エッチして帰ってくる。それだけの話で感動・・・といってしまうとなんだが,心は間違いなく動かされる。この話も恐らく,アニメから設定を逆輸入したのじゃないかなと思うが,アニメがいい影響を与えているのだろう。2つが,40~41話。ダイエット編である。レビュアーズたちも,命がけの冒険をせずとも,エッチしてレビューするだけで収入を得られるというので,最近はたるんできた。ジムとサキュ店が合体したような店で楽しもう,という話である。このとき,スタンクの素性がちょっとだけ語られる。(5巻101頁,天才児も大人になると・・・)アニメ版や小説版だと父親がハーレム持ってるとか,元々は貴族の坊ちゃんみたいな話があったけれど漫画版でははじめてかな。年齢もこれで「(剣術大会優勝が)十何年も昔の話」と言っていて,「二十何年も前」と言っていないので,ギリギリで二十代・・・なのかな。顔を見る限り,てっきり三十代前半から中盤くらいだと思ってた。無精ひげを生やしているから,ちょっと老けて見えるのかもしれない。どうも最近は,小説版の影響からか,スタンクたちがサキュ店で遊ぶところもいいのだが,キャラの掘り下げなんかも楽しいと思えるようになって来た。かつて天才児だったスタンクが,エリート街道を捨てて遊び人になる経緯なんかの過去話も気になるところ。まだまだ連載の続きを読んでいきたいものだ。異種族レビュアーズ 5【電子書籍】[ 天原 ]過去感想・4巻感想・3巻感想・小説2巻感想
2020.09.12
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コロコロコミックの裏話を語る『コロコロコミック創刊伝説』だが,今回のテーマはいまも根強いミニ四駆である。今回は豪華に1冊まるごとミニ四駆であう。これまでは1話完結だったり,4巻のビックリマンが比較的長かったが,1巻まるごとは初めて。表紙を見ても,ダッシュ四駆郎が何よりも大きく描かれており,コロコロのマスコットであるコロドラゴンが大きく描かれていた過去とは大きく違う。強い意気込み,これまでとは違う感をにじみ出ている・・・!さて,ざっと目次はこんな感じ。コロコロ創刊伝説(5)【電子書籍】[ のむらしんぼ ]第28話 「ジャンプ研究会」伝説第29話 「ミニ四駆」開発伝説第30話 「ダッシュ!! 四駆郎」爆走伝説第31話 前ちゃんが語る「ヒットの理由」伝説第32話 漫画家・徳田ザウルス伝説タイトル見る限り,28話は「ジャンプ研究会伝説」となっていてミニ四駆と関係なさそうである。しかし内容的には,コロコロ編集部が週刊少年ジャンプに勝つべく研究し,その結果としてミニ四駆にたどり着くというのだ。(5巻23頁。体験を重視するコロコロ編集部)それと合わせて語られるのが,コロコロでよく出てくる「ホビー」という言葉の定義づけである。なんでも,コロコロでは「おもちゃ」は「決して使わない言葉」になっているそうな・・・。そしてミニ四駆はおもちゃじゃない。ホビーなのだ,という。ここでホビーというのは大筋で,「完成品を与えられるものではなく,自分の手で作り上げるオンリーワンのもの」と定義づけられている。そして,ミニ四駆が大ヒットしたのは,おもちゃではなくて,自分の手で改造し,作り上げるからだというのだ・・・。(5巻42頁。未完成であるがゆえの楽しさがある・・・)(5巻44頁,ホビーという言葉の誕生した瞬間である)正直,僕は小学生のころからコロコロを読んでいたが,これは知らなかった・・・。僕の世代はちょうど『爆走兄弟レッツ&ゴー!』が連載していた,まさに第2次ミニ四駆ブームのころ。このころは,ハイパーヨーヨーだとかビーダマンが取り扱われていたが,まさに自分の手で改造していくことができるものだった。厳密に言えば,たぶんこのホビーの定義からはずれるおもちゃもあるのだろうが,なんにせよ一つの思想が語られており,興味深い。つーか,この「ホビーとは何か?」という,コロコロを語る上で大切なことが5巻まで語られてこなかったのか・・・と思うと逆にびっくりである。これはアレかな,ミニ四駆を語るには長くなることに加え,著者の高い漫画力が必要になるが,のむらしんぼ先生が『ハゲ丸君』を描いていた全盛期の力を徐々に取り戻したからこそ描かれた・・・ということかな。また,このほかにも『ダッシュ四駆郎』を描いていた漫画家の話だとか,ミニ四ファイターの話,どうしてミニ四駆が流行ったのか・・・。色々なことが語られているが,どれもこれも興味深い。特に,徳田ザウルス先生の,「人が乗れないデザインはミニ四駆ではない」という熱いこだわりだ。読んでいると本当に,熱意とともに強いこだわりを感じる。『コロコロ創刊伝説』の最大のおもしろさは,やはり実話であるところ。きっと小学生の僕なら「つまらん」で終わっていたのだろうが,大人になると「こんな風に仕事すると成功するのか・・・」とか,「成功の影にこんな努力があったのだな・・・」とビジネス漫画として読んでしまうところもある。なお,次の6巻はどうもハゲ丸君を描いていた,全盛期ののむらしんぼ先生を描くそうな。「漫画家はどれだけ儲かるのか」という,マネーの話もあるようだ。ちびっ子は全く興味ないだろうが,大人はみんな興味がある話だな。楽しみよ。コロコロ創刊伝説(5)【電子書籍】[ のむらしんぼ ]過去感想・2019.4.16日4巻感想
2020.08.07
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前巻の感想(桃太郎卿の戦いっぷり)でも書いたけれど,『衞府の七忍』そろそろ話をまとめにはいったようで,表紙を見てもこれまでの話で主役を張った怨身忍者が表で4人,裏で3人描かれていて,これまでと違う感が出てきている。なお,カバー裏には兵藤伊織,銀狐,山本テヤン勘助のヒロイン3人が描かれている。京馬編の感想を述べた後,全体の七忍の話をしたい。衛府の七忍 9【電子書籍】[ 山口貴由 ]まずは,京馬編。この黒須京馬は『エクゾスカル零』や『開花のススメ』なんかに登場するキャラである。エクゾスカル零では唐突に登場したと思ったら物語が終わってしまったので,ある意味で最後の七忍にふさわしい。さて,京馬だけど真田十勇士の弟分という立ち位置になっている。彼が面白いのが,死んでしまった十勇士の遺体や,生きている十勇士の体の一部を忍法「淤能碁呂」(おのごろ)で移植された改造人間みたいな扱いになっているところである。たとえば,背中におのごろされた根津甚八のおかげて,京馬は「忍法鰓瞼(えらまぶた)」を使える。口から飲んだ水を瞼から出して,水中呼吸ができたりするのだ。また,頭髪におのごろされた霧隠才蔵の「忍法映し髪」は,髪をカメレオンの迷彩のように使って変装や保護色を使って隠れることができる。(9巻54頁。おのごろなったか,は何度も繰り返されるのだけど,熱いですよ)このデタラメの中に,どこか科学的な説明をつけるのは,山田風太郎先生の忍法帳を読んでいるような気分になりますね・・・。そもそも,これまでの怨身忍者は「忍者」と名乗りつつ,別に忍者ではなかったような気がするから,これが正統派忍者というべきだ。危機に陥るたび,京馬の体に移植された十勇士たちの幻影が「おのごろなった!」と力を貸してくれるシーンは胸が熱くなりますね。それに十勇士の忍法を全て1人で使えるというのならば,これまでの怨身忍者たちのなかでも圧倒的な上位クラス。対等に戦えるのは波裸羅くらいなんじゃないかな。一方,今回の主役が強い物だから,敵方も超絶に強い。剣聖・上泉信綱だ。チャンバラ小説なんかの世界では最強とも言われてる。これが山口貴由の世界観だと,「時淀み」が体の周りに常時発動していて,間合いに入ると物体が超スローでしか動けなくなると言うのだ。『ジョジョの奇妙な冒険』でもそうだけど,時間をどうこうする能力は強い。(9巻13頁。ジョジョならばラスボス級のチート能力)最終的に,京馬は猿飛佐助の奥歯がおのごろされたことで使えるようになった,「忍法奥歯噛み」を使って時淀みに挑む。これは奥歯を噛みしめたとき,すごい速度で動けるというの。たとえるなら,『サイボーグ009』の加速装置みたいなもん・・・というか,そのインスパイヤですね。(9頁148頁。血がたぎるシーンですね)これが信綱の時淀みとの相性が良く,無効化とまではいかないが,かなりいいセンまでいけるのだ。常時発動の時淀みと違って,歯を噛んだ一瞬しか使えないのが弱点のようだが・・・。正直,猿飛佐助が「京馬にくれてやった奥歯が熱い」と言ってるシーンで,「ケチだなぁ。死んだヤツもいるし,十蔵なんかは生きてるのに腕をくれてやってるんだぞ」と思ったものだが,これはすごいプレゼントだったわけだな。(9巻17頁。腕や頭皮を失った方々に比べると,なんとなく軽いような・・・)ところで,気になるのが京馬の時淀み攻略法だ。望月六郎の「忍法爆ぜよだれ」を空中にばらまいて,触れると爆発する液体火薬の檻に信綱を閉じ込めたところを「忍法奥歯噛み」の超加速で攻撃したのだ。初見のときはてっきり「時淀みの世界では,よだれがなかなか地面に落ちないから,檻になったのだなぁ」と思ったものだが,もしかして「爆ぜよだれ」自体が空中でとどまる能力があるのかもしれない。これはそのうち,別の戦いで見えてくるかも。話変わって,ついにタイトルの「七忍」が勢揃いしたようだ。零鬼・カクゴ震鬼・動地憐雪鬼・六花霞鬼・波裸羅(ハララ)霹鬼・タケル(犬養幻之介)霧鬼・ツムグ雷鬼・黒須京馬この七人はいまのところ,カクゴと波裸羅のように面識のある者もいるけれど,別に面識のない者もいる。この七人で覇府,つまり徳川家康と戦っていくことになるのだろう。と,ここまで書いて思ったのだけれど,逆なのかな。「衛府」の,つまり幕府側の七人ということになるのか。幕府側だと桃太郎卿とか金太郎あたりになるのだろう。気になるのがあぶれている魔剣豪の宮本武蔵と沖田総司である。彼ら魔剣豪については,どっち側の勢力につくかもわからない。次で物語が大きく動きそうだ・・・。・8巻感想衛府の七忍 9【電子書籍】[ 山口貴由 ]
2020.06.23
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知る人ぞ知る・・・という感じだった『ライドンキング』だったのに,最近はかなり売れてきているようで,書店でも平積みされていることが多い。ファンとしては嬉しい限りである。僕はキン肉マンネタならいくらでも拾えるんだけど,プロレスネタになると他の人の感想を見たり,ニコニコ静画のコメントで気がついたりもするので,ファンが増えるのは良いことである。ライドンキング(4)【電子書籍】[ 馬場康誌 ]今回のあらすじだけど,ケンタウロスの村での戦いは前の3巻で終わったので,4巻からはまた新しい話が始まっていく。前も書いたけれど,ライドンキングの主人公であるプルチノフはもともと作者の前作,『ゴロセウム』の敵キャラ,プーチノフがモデルになっていて,そんな敵キャラが異世界に行く巻末オマケ漫画が元になっている。そんなオマケ漫画でもケンタウロスとの交流で終わっていたので,ある意味でこの4巻からは未知の世界になるといっても過言ではない・・・。ゴロセウム(6)【電子書籍】[ 馬場康誌 ](別次元のプルチノフことプーチノフ。合わせて読むと面白いよ)さて,そんで4巻だけどかなりの部分がこの異世界の説明にも使われる。なんかこの世界には魔族という,なんかすごい強いのがいるそうなのだ。戦争になったりするとまずいというので,プルチノフが魔族と話し合いに行くことになった。表向きはともかく,真の理由は魔境にいるという,巨大でより恐ろしい魔獣に騎乗したいからでしょうね・・・。そのため,プルチノフは自分の作ったプルチノフ村の未来のため,またさらなる騎乗欲のおもむくまま旅立つのだった。とりあえず,気になったところを3つほど。1つは,この異世界って,もしかして北海道ではないのか,という話。地図を見てみると,ムローラだとかボクスだとかいう地名が見られる。ムローラは室蘭で,ボクスは函館,オームスは大間町だろうか。地形もなんとなく北海道から東北っぽい。そういえば,前作,『ゴロセウム』も舞台は北海道だった。『ゴロセウム』だとラスボスはロシアの大統領,プーチノフだったが,北海道はロシアと地理的に近いからね。ある意味で,プルチノフとも縁があるのかもしれない。(4巻88頁。どことなく北海道)2つめがプルチノフのさらなるパワーアップについて。まずは魔族化というの。この漫画の世界観だと,魔族というのは生まれついてのものではなくて,転魂の儀式によって生まれ変わるものだとか。じゃあ,プルチノフだって魔族化すればさらに強くなれるんじゃないのか・・・?いやそれより個人的に気になるのはプルチノフの知力面でのパワーアップだ。獣神ランダーライガー山田・・・じゃなくて獣王ヤマドゥアから亡き妻の記憶を呼び覚ましてもらったプルチノフだけど,過去の記憶を自由に引っ張ってこられるようになったっぽい。これでプルチノフは元の世界の農業知識を駆使してプルチノフ村の食糧問題を解決するのだ。(4巻60頁。ノート取らなくても授業完璧やんけ!)これって結構すごくないですか? 司法試験とか楽勝で合格できるやんけ!以前の日記で,「なんでももらえるのに,安易に力を求めないでささやかな力をもらったのがいいね」と言ったけれど,これも超弩級にチートである。3つめ,最後にパロディの話。皇帝魔熊がゴマすりクソベアー呼ばわりされていたりだとか,キャルマーの「たのしそー」と,けものフレンズのネタなんかもはいっていてこれも笑えるのだけど,僕はやはりキン肉マンネタを言いたい。海底ダンジョンの門番である牛頭人の戦士とタッグマッチで戦うのだが・・・。この美しいカーフブランティングで1人!(4巻134頁。いった! いった! プルチノフがいったー!)もう1人をブレーンバスターでKOするのだ!(4巻138頁。ハリケーンミキサーをとめてからのブルキリング)この戦闘スタイルは,まさしくテリーマンですね。テリーマンはザ・摩雲天だとかキング・ザ・100トン,マックスラジアルみたいな巨漢と戦ったため,「巨漢(ジャイアント)ハンター」の異名があるのです。特に摩雲天だとかマックスラジアルをKOしたブレーンバスターは熱かった・・・。なお,タッグマッチだったはずなのに,気がつけば普通にプルチノフが1人で無双して終わった。できるなら,パーティ入りしたヨシュアスあたりが成長してタッグを組んだりできんものかと思う。・1巻感想・2巻感想・3巻感想ライドンキング(4)【電子書籍】[ 馬場康誌 ]
2020.04.27
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僕もそうだけど,男の子というは「ルフィとうずまきナルト,どっちが強い?」とか「ジョナサン・ジョースターと鬼舞辻無惨が戦ったら,どうなる?」いう話が好きだ。たとえば,古代ローマではライオン対トラの試合を見世物としていたそうな。勝率は,体が大きく,群れではなく単独で狩りをするトラの方が高かったそうだが,古代から人間はこういうことをしていた。こういう最強の動物は何か,をテーマにした格闘漫画,『真・異種格闘大戦』を読んだのでネタバレ感想を書いていく。真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 1巻【電子書籍】[ 相原コージ ]ざっとあらすじを説明すると,物語冒頭で強矢・鋼(ごうや・はがね)は格闘技のチャンピオンだけが出場できる大会に出場し,決勝戦でアレクサンダー・スターリン(たぶん,モデルはアレクサンダー・カレリン)に勝利し,人類最強となるのだ。最強となった鋼だが,次は人間だけではなく,アフリカで行われるライオンだとかトラの出場する地上最強の生物を決める格闘大会に出場することになる。ここまでが,だいたい2話目くらいの展開だった。この時点で僕は,「きっとこの漫画はヒト代表として大会に出場した鋼が,次々と猛獣と戦っていくんだろうなぁ・・・」と思ったが,早々にこの予想ははずれてしまう。主人公かと思われた鋼だが,一回戦でカバに負け,死亡してしまうのだ・・・。この後,物語は動物たちがトーナメントで最強を決めるということになる。ただ,普通に動物たちが戦うだけだと物語もなにもないので,普通にライオンだとかトラは互いに会話をしていたりする。また,ゴリラに至っては黒帯を身につけていて柔術を使ったりする。真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 3巻【電子書籍】[ 相原コージ ]人間不在の格闘大会なんて盛り上がるのか,と思ったものの,それでも全10巻,7年にもわたる連載をしているというのは驚かされる。ただ,どうしても物語性が必要なのか,随所に人間は登場している。例えば,選手として登場するイヌは元闘犬なのだが,飼主だった人間との絆があった。また,ゴリラは人間から教わった柔術を使う。そんな動物たちの中,もっとも深く描かれているのがシマウマのチェ・ゼブラである。たぶん,チェ・ゲバラから名前を借用したのだろうが,「草食動物が肉食動物に食われる世界は間違っている」と革命を志し,その革命のために格闘大会に出場していたりするし,「対戦相手の強さを取り込むため」に相手の肉を食べたりする。このゼブラは決勝戦でライオンと戦うほか,ヒクイドリ,ワニ,オオトカゲなんかと戦って勝ち上がっており,強さの箔づけがなされている。実質的な主役はこのシマウマ,チェ・ゼブラだろう。仲間たちとの交流だとか,過去の掘り下げがかなり描かれている。真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 2巻【電子書籍】[ 相原コージ ]最終的に,決勝戦はシマウマのチェ・ゼブラとライオンのキング・オブ・キングスの試合ということになる。(なお,トラは1回戦で敗退。)百獣の王,ライオンの強さはいちいち説明しなくていいだろう。本作でも,インドサイやアフリカ象を秒殺し,柔術使いのゴリラにも勝利している。特に柔術ゴリラ対ライオンの試合はかなり盛り上がり,ゴリラに柔術を教えた人間とゴリラの交流のほか,ネコ科の柔軟な体を持ち,必殺の牙と爪を持つライオンに対し,相手と密着しなければならない関節技は通じるのか,と非常に面白かった。さて,最終回だけど,激闘の末,ゼブラは試合中に立ったまま死亡してしまうものだ。しかし,何度倒れても立ち上がるゼブラに恐怖したライオンは恐怖でたてがみが真っ白になってしまうのだ。こうしてチェ・ゼブラは決勝戦で死んでしまったものの,彼の革命の心はシマウマの心に残り,シマウマは肉食獣と戦い,追い払えるだけの力を得て物語は完結する。感想として,著者の相原コージは梶原一騎のファンだったからか,随所に梶原漫画のリスペクトが見られる。たとえば,決勝戦,チェ・ゼブラに試合では勝ったものの,ライオンのたてがみが真っ白になったのは『あしたのジョー』のリスペクトだろう。早々に死んでしまったとはいえ,人間代表として大会に出た剛矢鋼もライバルの吾代力を殺してしまったという悲しい過去があったりする。僕みたいな,梶原漫画ファンは楽しめるだろう。(1巻44頁。構図がまんま力石の死に慟哭するジョーと同じ)我ながら,驚くのがこういう人間不在・・・とまではいかないが,ほぼ動物だけの漫画をよく読み続けられたものだと思う。なぜ読み続けられたのかと言えば,それは物語がどう終わるのか,それが非常に気になったからである。たとえば,人間である剛矢鋼が決勝まで勝ち残って優勝する・・・,そんな漫画でも良かったとは思うのだ。これでも,各動物の特徴や,もし戦えばどうすればいい,などのうんちくを語ることはできたはずだ。しかし,本作はそうしなかった。人間である剛矢鋼は一回戦で早々に敗退することで野生動物の強さを強調した。実際,そうだろうとは思うのだ。人間の最大の武器は知恵にあり,これで戦えば最強の動物である。さらに素手でも人間が最強でありたい,というのはいささか強欲するぎる。そういう意味で,人間が早々に敗退したのは英断だったといえるだろう。ふと思い出したのが,吉川英治の小説『宮本武蔵』である。村で暴れまくっていた武蔵を,知略で拘束し,木に縛り付けた沢庵和尚の発言である。別に人間は虎より弱くてもいいのだ。なお,話の合間に動物に関するうんちくが語られるのだが,正確なのかどうか・・・。最近の漫画だと,『テラフォーマーズ』だとか『キリングバイツ』みたいな,動物だとか虫だののうんちくを語りながら動物の力を移植した改造人間たちが戦う漫画があるけれど,こういう漫画が好きな人なら楽しめるだろう。キリングバイツ(1)【電子書籍】[ 村田真哉 ]真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 10巻【電子書籍】[ 相原コージ ]
2020.04.23
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劇画王の名をほしいままにした梶原一騎であるが,逮捕された影響なのか,単に売れないからなのか,絶版になっている作品も多い。以前から興味があった『人間兇器』なのだが,コンビニコミックなどで復刻することもなく読めなかったのだが,電子で復刻していたので読むことができた。奥付をみると,作画の漫画家と連絡を取れないかなにかで出版できなかったらしいのだが,「著作権者不明」ということで文化庁に裁定の申請をし,それが認められたから出版できたようだ。他作,特に『カラテ地獄変牙』なんかと比較しながら感想など書いていこう。人間兇器1【電子書籍】[ 中野喜雄 ]『人間兇器』は空手をテーマにしている作品だが,本作について語る前に梶原一騎と極真空手について触れなければならない。梶原一騎のヒット作と言えば,『巨人の星』と『あしたのジョー』であり,この2つが双璧だとしても,極真空手の大山倍達を主役にした『空手バカ一代』もやはり大傑作だ。梶原一騎の台所事情を推察するに,映画だとかでかなりの収益を上げたのではないだろうか。【中古】少年コミック 空手バカ一代(6) / つのだじろうそんな『空手バカ一代』は1971年に連載を開始するわけだが,梶原一騎は『空手バカ一代』の焼き直しとしかいえないような作品をどんどん生産していくことになる。たとえば,1974年の『新ボディガード牙カラテ地獄変』だとか,1978年の『新カラテ地獄変』だとかである。この『人間兇器』は1979年に連載を始めるわけだが,正直言って『空手バカ一代』の焼き直しである『カラテ地獄変牙』のさらに焼き直しと言えるかもしれない。主人公の立ち位置が非常に似ているのだ。カラテ地獄変牙1【電子書籍】[ 中城健 ]ここで,『カラテ地獄変牙』との類似点を書き出してみると,おおよそ以下の通り。・主人公はぶち込まれた少年院でボスとして君臨する・主人公の師匠は大山倍達をモデルにした空手家・主人公は所属する空手道場の普及のため,海外へ渡航する・主人公は大山倍達をモデルにした空手家と対立し,愛憎半ばする関係を持つこのほか,『人間兇器』の主人公・美影義人は「人間はみんな兇器」。「強い兇器と弱い兇器があるだけだ」というニヒルなリアリスト思想を持っているのに対し,『カラテ地獄変牙』の主人公・牙直人は「人間の性は悪なり」というのを座右の銘にしており,どちらも殺伐とした思想を持っている。しかし,『人間兇器』の美影が『カラテ地獄変牙』の主人公,牙直人と明確に違う点がある。それは,牙直人ほど空手道に邁進しようとしないところだ。(1巻36頁。人間はみな兇器)象徴的なのが,少年院時代の話である。牙直人は少年院で火乃原奈美の空手に敗北すると,自分も空手を習得し,強くなろうとした。一方で美影はどうしても実力で勝てないボスがいると,ボスの姉を陵辱し,その写真をネタにボスをタコ殴りにするのだ。牙も美影も少年院でボスとして君臨するものの,美影には「自分の肉体を鍛えて強くなる」という努力する姿勢をあまり感じない。のち,美影は自分より実力の勝る武術の達人,薫子に対し,自らの空手を鍛えるわけでもなく,肉体を陵辱することで支配した。このように,美影はなにかあると女性を陵辱することで支配する。それでいて,師匠の大元烈山への恐怖などから「股間の兇器」が肝心なときに役に立たない,女性を陵辱できないというシーンが何度も描かれてしまっており,精神的な弱さを感じさせる。同じ現実主義者でありながら,牙直人は空手にだけは絶対的な価値観を維持しており,問題解決について鍛えた空手を武器に立ち向かう。一方で,美影義人は空手も使うが,それ以外の手段をためらいなく使うという点で大きな差がある。そんなわけだから,美影義人については兇器の凄味というよりも,どことなく小悪投じみた印象を受けてしまい,牙直人ほど共感もできない。最終的に,美影義人は政治家の秘書になり,自らも国政に打って出ようとする。梶原漫画において「師匠との対立」というテーマはよく使われるものの,国政に出るという美影は空手の世界,格闘技の世界の盟主になろうとしていた師匠を超えていると言える。梶原一騎が描く空手漫画や格闘漫画の主役たちは,あくまで格闘技の世界のチャンピオンをめざしことはあっても,現実世界の権力を求めなかった。ただ,美影はほかの梶原漫画の多くの主人公たちと同様,破滅を迎えるのだ。また,師匠キャラにおいても『人間兇器』の大元烈山と『カラテ地獄変牙』の大東徹源とは大きく違う。どちらも空手の一流派の創始者であり,海外にも空手を普及させようとするという点で極真空手の大山倍達をモデルにしていることは間違いない。ところが,弟子に愛情を持っているか疑わしい『カラテ地獄変牙』の大東徹源に対し,『人間兇器』の大元烈山は明確に愛情を持っているように描かれている。基本的に,『カラテ地獄変牙』の大東徹源は弟子の牙直人を「空手普及のための鉄砲玉」と見ているような描写が多く,死の危険があるような危険な任務に送り込んだり,自らの手を汚すかわりに牙直人を使ったりする。一方で『人間兇器』の大元烈山は,弟子の美影義人がアメリカで不祥事を起こし,刑務所にぶち込まれることになると責任を取ってアメリカの道場をすべて撤退させたりする。また,刑務所で空手を指導するという名目で囚人となった美影義人を助手にし,刑務所内に限定されてはいるものの,一定の自由を与えたりもした。当初の僕は,てっきり大元烈山も大東徹源のような「空手魔王」だと思っていただけに,ちょっと衝撃を受けた。総評として,どうしても『人間兇器』は先行する『カラテ地獄変牙』と比べざるを得ず,先行作品の焼き直しとしか思えないような部分が多い。上述したように,梶原一騎が主人公や師匠キャラを少し変えているが,大枠が似通っているため,焼き直しの評価は免れないだろう。そして,焼き直しだとして,完成度は大きく下がると思う。困難を鍛え抜いた空手で乗り越える牙直人に対し,女性を陵辱するだとか現金の力で切り抜けようとする美影義人はどうしても魅力に欠けるのだ。もしかすると,脱スポ根を願い,また世間への鬱屈をためていた梶原一騎の心の変化が,美影義人という人物を生み出したのかもしれない。僕は,『カラテ地獄変牙』は何度か読み返しているが,『人間兇器』を読み返さないのではないかな,と思う。人間兇器23【電子書籍】[ 中野喜雄 ]
2020.04.21
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ついに10巻の大台に達した『はぐれアイドル地獄変』。本作の表紙はけっこうセクシーなのが多いのだが,今回は露出度かなり控えめなので,未成年もレジに持って行きやすい。はぐれアイドル地獄変 10【電子書籍】本編に入る前に,もう1つ雑談を。『はぐれアイドル地獄変』ですが,実写映画化が決定したそうです。一瞬,「AVになるの?」と思った僕は心が汚れているのかもしれない。下手にアニメ化をするよりも,実写の方が海空の魅力が伝わるのかもしれない。2020年秋公開予定というが,これは楽しみである。さて,本編だが2つの試合を見ていく。1つは,主人公である海空とマリア・ルイーザ・リベイラの試合の話である。過去の日記でも書いたけれど,このマリア・ルイーザ・リベイラの父親は容姿や経歴から見て,ヒクソン・グレイシーをモデルにしている。つまり,マリアは女版ヒクソン・グレイシーのような戦闘スタイルなわけだ。期待値は高まる,と言わなければならない。試合は,一進一退の末,海空が覚醒して勝利。格闘技で言う,無拍子というか,ああいうやつですかね。ところで,最近の高遠先生はTwitterで試合の解説をしてくれるのだけれど,このようなツイートを投稿しておられる。(高遠るい先生の2019年11月17日のツイートから引用)これまでの試合展開を見ても,「余力を残して勝ち上がっているマリアの方が,苦戦しながらの海空より格上かなぁ」,と思っていたが,実際にそうだったようだ。何度か言っているけれど,このマリアというキャラ,ベスト8で敗退というにはもったいない,もっと試合を見たいキャラであった。決勝であたっても全然不思議ではない。言うならば,『グラップラー刃牙』の最強トーナメント時点の烈海王くらいの魅力がですね。なお,作者もそう思っているのかどうなのか,今後も解説役なり,なんなりで再登場はありそうだ。2点目に,鯨岡ミカとルナ・カーンの試合。ミカさんは過去作の主人公とは言え,海空と同じく空手使い。強キャラ感を出しまくりのルナ・カーンには勝てないだろう・・・と予想していたが,普通にミカさんが勝ってしまった。しかも,結構エグい。ルナは右の鎖骨骨折,右肘と右膝脱臼骨折,肋を数本骨折,眼底骨折とかなりダメージを負っている。これは正直引いてしまう・・・。なお,ミカさんの空手観を説明するため,200×年に行われた他流試合の解説の話。これ,どうやら各方面に配慮したらしく,総合格闘技のA氏と合気道流派のB氏と紹介をしているが・・・,これはあれですね。探偵ファイルでやってたあの試合。流血沙汰の凄惨な試合になって,当時話題になったやつだ。(本書172頁。ややピンボケさせているが,B氏の胴着には・・・)配慮しているっぽく見えるけれど,当時を知るものならば瞬間的に特定できるだろう。また,仮に知らなかったとしても,B氏の胴着に色々書いてあるためちょっと検索すればでてきそうではある。さて,色々あったけれど,準決勝は海空とミカさんの空手対決になる。空手観の違い,というのがテーマにはなりそう。思えば,ミカさんは初登場の時点でヤクザに喉に貫手をぶち込んでたし(5巻),この大会でも一回戦で「腎臓に突き刺す」つもりで対戦相手の肋を折ったり,二回戦でも相手の喉に貫手をぶち込んでた(7巻)。『ミカるんX』の時代はこんな殺意の強い技を使っていたっけか・・・と思うがどんなもんだろうか,対戦相手をKOはしても破壊までしない海空と対照的に描いているっぽい。ついでに今後の予想もしておく。ミカさんには悪いが,海空が決勝に行くことはほぼ確定だろうとして,決勝戦の相手である。本誌の方では色々あるが,ロボ子がけっこう強い・・・。個人的には,今のタフもそうだが,機械に格闘技をさせてというのはあまり好きでもない。やはりここはマオマオに賭けよう。はぐれアイドル地獄変 10【電子書籍】
2020.04.20
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なんとなく,読んでて分からん漫画というものがある。分からんから読むのをやめてしまう場合が多いのだが,分からないのになぜか読み進めてしまう漫画もある。今回,そんなよく分からん漫画である,『首を斬らねば分かるまい』を買ってしまったので,感想と分からん点を色々書いていきたい。首を斬らねば分かるまい1巻【電子書籍】[ 門馬司 ]さて,この本作はどんな漫画かといえば,舞台は明治4年の東京。主人公は華族の少年,愛洲幸乃助(あいす・ゆきのすけ)である。名前からして,アイスで雪って,狙っている名前なのだろうか,たまたまなのだろうか,意味のない深読みをしてしまう。この幸乃助であるが,18歳という若さで立たないのである。それも生まれてから一度たりとも,というのだから症状は深刻である。(1巻15頁。一度たりとも。。。)そんな幸乃助であるが,無頼の兄に連れられて首斬りを見ることになる。首を斬るのは美少女,洞門沙夜(どうもん・さよ)である。1巻の表紙にも描かれている美少女である。どういうわけか,返り血を浴びる沙夜を見た幸乃助のカラダに変化が起きて・・・というところで1話目が終わり。僕はてっきり,華族の少年と,首斬り家の少女の恋愛漫画なのかな,と思ったものだ。ただ,これがそう簡単にはいかない。ようやくエレクチオンしたという興奮で首斬り家に夜這いをかける主人公だが,普通に拒否されてしまい,幸乃助は無頼の兄に連れられて吉原に行く。兄としては,「お前が洞門沙夜にフラれたのは,綺麗すぎるから」といって,汚れなきゃいかんというのだ。21世紀に生きる僕としては,もっと色々ある気がするのだけれど・・・。このあと,1巻では,主人公が初体験をした遊女の悲哀なんぞをやることになる。これがもの悲しくて・・・。そして,遊女の話が終わった頃,つまり1巻も8割くらい読んだところで僕はふと思い出すのだ。首斬り家の少女はどうなったんだ,と。これでは,明治吉原浪漫譚という感じではないか,と。なお,最後の方でやっと首斬り家の少女は再登場して,盛大に主人公をフるので,たぶん,この首斬り少女がメインヒロインでいいのだろうなぁ,と思う。(1巻188頁,ダメっぽいです)ここからが,分からん話。1つに,主人公はそうそうに遊女で初体験をすませてから,しばらくは吉原に通いまくるのだが少年漫画ならあり得ない話である。21世紀を生きる僕としては,初体験というのは愛する女のために取っとくものじゃないのかと思うが,時代が明治だというのでそんなものなのかもしれない。というか,生まれてから一度も立ったことがない,というのならば精神的なものというより肉体的なものだと思うのだが,一度エレクチオンすると,その後も普通に遊女のものと通いまくってる。2つに,主人公を悪の道に誘い込む兄,達臣である。この兄,妾の子であるし,顔も恐いから,てっきり主人公を堕落させて嫡男の座を奪い取ろうとしているのではないか・・・と僕は思っていた。(1巻11頁。なんとかエレクチオンさせようとする兄の図)ところが,どうやらそうではないようだ。弟が立たないというのなら,目の前で使用人とヤって見せるというAVのない時代特有のやり方で立たせようとしてみたり,弟が首斬り家の少女にフラれたとあらば吉原に連れて行ってやる。また,弟の馴染みの遊女が働いていた遊郭がブラック企業で,自殺未遂までしたというなら経営者をやりこめてくれたりする。単行本にはまだ収録されていないけれど,幸乃助がアヘン,つまり麻薬に手を出してしまうと殴ってでもやめさせたりする。いつのころからか,僕はこの兄・達臣のファンになってしまい,読み進めてしまった。まとめに入るけれど,この『首を斬らねば分かるまい』はいまいちよく分からん漫画である。たとえば,『カイジ』ならギャンブル漫画だと言えるし,『彼岸島』なら吸血鬼と戦うバトル漫画だと言える。じゃあ,『首を斬らねば分かるまい』は何の漫画なのだろう。恋愛漫画というには少し違うように思うし,明治を描く時代劇漫画がになるのだろうか。物語がどういう方向に転がるのか,このあたりが全然分からない。ただ,なぜか読んでしまうし,単行本も買ってしまったんだよなぁ・・・。首を斬らねば分かるまい1巻【電子書籍】[ 門馬司 ]
2020.03.26
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『北斗の拳』という国民的な漫画がある。僕らの世代で「北斗の拳ごっこ」をしたことがないという男はいないだろう。適当に「あたぁ!」等と叫びながら友達の体を指圧し,「お前はもう死んでいる・・・」とかやるのである。これが結構楽しい。(2020年16号。表紙画像)さておき,ヤングマガジンで,衝撃的な新連載が始まった。タイトルは『ケンシロウによろしく』。『北斗の拳』やら『ブラックジャックによろしく』を盛大にパロった名作・・・になるかもしれないので感想を書いていこう。あらすじとしては,こうだ。主人公・沼倉孝一は10歳のころ,唯一の家族だった母親に捨てられたのだ。なんでも,母は交際していたヤクザと一緒になるため,邪魔だった主人公を置き去りにしたのだ。復讐を誓った主人公はヤクザを殺すため,『北斗の拳』を読み込んでトレーニングし,10年をかけてケンシロウのようなムキムキの体を手に入れたのだ。また,ツボの勉強もした結果,「あん摩マッサージ指圧師」の免許を手に入れた。本作は,そんな主人公を描くギャグ漫画である・・・。個人的に注目して欲しいのが画像左下。『北斗の拳』のコミックスが綺麗に描かれており,武論尊先生と原哲夫先生の名前が普通に読めるようになっている。(12頁。左下のコミックスがモロ出し・・・)『北斗の拳』の主人公,ケンシロウの使う北斗神拳は相手の秘孔(ツボ)を刺激し,逆らう奴は指先一つでダウンさせる最強の暗殺拳であるが,そんなもんは現実には存在しない。本作の主人公,沼倉孝一も20歳過ぎて,ヤクザにボコボコにされてはじめて「北斗の拳だけじゃ正確なツボがわからないことに気づいた」とかいうあたりは爆笑して読んだ。そんな感じの1話目は基本的に主人公の紹介である。北斗の拳パロディ満載である。一方で,2話目は主人公が風俗に行き,風俗嬢をマッサージするという,なんかやべー展開になっている。たぶん,こんな感じで日常回をやるんじゃないかなぁ,と思う。ところで,Twitterでこの漫画のことをつぶやいたら,知人弁護士から「権利関係は大丈夫なのか?」とメンションが来た。いやー,ヤバいんじゃないですかね・・・。特にコピーライトがどうとか,原作原哲夫なんて書き込みはない。ただ,よく見てみると普通は広告なんかが入るページの端に「GREAT RESPECT to 『北斗の拳』and the authors,BURONSON & TETSUO HARA」と書いてあるのが分かる。(見開き2頁まるごと載せると,さすがに怒られそうなので1頁隠します)(週刊ヤングマガジン2020年16号,14~15頁)また,「『北斗の拳』【究極版】単行本全18巻 全国大好評発売中!!!」と広告してたり,極力怒られないよう,配慮をしているのがわかる。(見開き2頁は問題ありそうなので1頁隠します)(週間ヤングマガジン2020年16号,20~21頁)このくらい『北斗の拳』宣伝をしておけば,わりと許してくれそうな感じはする。ちなみに,1話目は『北斗の拳』の表紙画像やら構図をそのまま使ったシーン出ているが,2話目は「北斗の拳」の「ほ」の字すら出てこない。最悪,1話目を単行本未収録にするか,あるいは怒られても適宜改変すれば許されるのかな・・・。ところで,『北斗の拳』のパロディは数多く,公式で出ている『北斗の拳イチゴ味』のほか,白泉社でやってた『KAPPEI』だとかジャンプでやってた『ボボボーボ・ボーボボ』なんてものもある。こう考えてみると,『北斗の拳』ってギャグとの相性が良いようだ。たまにシュールギャグみたいなシーンもあるからなぁ・・・。北斗の拳 イチゴ味 1巻【電子書籍】[ 武論尊 ]KAPPEI1【電子書籍】[ 若杉公徳 ]北斗の拳 イチゴ味 1巻【電子書籍】[ 武論尊 ]ボボボーボ・ボーボボ 1【電子書籍】[ 澤井啓夫 ]
2020.03.17
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唐突に弁護士やってる友達(アニメ好き)から異種族レビュアーズについてのラインが来た。そういえば,アニメ化したもんなぁ,と感慨に耽ってしまう。こう,場末のインディーズを「俺が応援しなきゃ」という使命感からCDなんかは欠かさず買っていたが,なんかメジャーになっちゃうと「もう俺が応援しなくてもいいじゃん」という気持ちになるアレである。異種族レビュアーズ 4【電子書籍】[ 天原 ]それはそれとして,漫画の4巻が出たので感想を書いていく。目的としては感想を残しておくというのもあるけれど,備忘的なメモとして各話のおおざっぱな内容も残しておく。この作品,サブタイトルがなく,そっけなく「29話」としか書いてないから,あとで目次を見て,どんな話だったか探すのが一苦労なのだ。なので,簡単に記録を残しておくのも悪くはあるまい。4巻に収録されている29話~35話に俺がサブタイトルをつけるとこんな感じか。29話 異種族結婚奇跡の村(後編)30話 けもの道編31話 サキュバスムービー編32話 ドワーフ編(前半でギルド紹介)33話 こげつき依頼編34話 レビューなし(勇者の紹介)35話 ミミック編例によって,すべての話に感想を書く余裕はないので,2つにしぼろう。1つは30話,「けもの道編」だ。これは,レビュアーズのみなさんが獣人系専門のサキュバス店に行くという話。何が面白いかというと,獣人にも色々いて,人間成分が99%でかるく猫耳がある程度のものから,人間成分が薄くて「しゃべる獣」くらいのものまでいるところ。そんななかケモ度が高い嬢に対してスタンクが「が,頑張ればなんとか・・・」と言って嬢をキレさせるシーンは爆笑した。性豪スタンクさんも,やはり人間なんだな・・・。この世には,「イーブイを性の対象として見られる」というケモナーもいるんだけどね,いや関係ないね。(26ページ。頑張ればなんとか・・・)次に34話,「こげつき依頼編」。この世には,冒険者が誰もやらないという「こげつき依頼」というものがある。どうしても処理したいので,ギルドとしては酒場の看板娘とのプレイを報酬にしているのだけれど,スタンクたちがそんなこげつき依頼に挑戦するという話である。スタンクたちレビュアーは,設定上,いずれも腕のしれた冒険者である。一応,小説版ではダンジョン攻略をするシーンなどはあるのだけど,漫画版でそんな冒険シーンがあると新鮮だ。それにしても,スタンクって英雄クラスの実力だったのか・・・。で,ブルーズもライオン獣人なみなのね。個人的に,このコマはいつもレビューしてるスタンクたちのレビューのようで面白い。(82ページ。各レビュアーズに対する冒険者としてのレビュー)なお,小説版も読んでるから,そのうち感想書くよ。異種族レビュアーズ 4【電子書籍】[ 天原 ]
2020.01.15
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沖田総司が江戸時代初期にタイムスリップする沖田編もいよいよ大詰めの8巻である。衛府の七忍 8【電子書籍】[ 山口貴由 ]前巻の復習だけど,タイムスリップした沖田総司は色々あって,町道場の世話になっていた。ところが,そこの一人娘が鬼に殺されたということもあり,沖田は柳生宗矩に協力し,鬼退治をすることになったのだ。前巻の終わり具合から,柳生宗矩と沖田総司がそれぞれ鬼と戦う感じだろう・・・と思っていた。実際,柳生宗矩も具足を身にまとい,戦うのだ。新影流の極意「兜割」なんて,そんなもん見世物のための技で実戦では使わないよ,という回想から鬼退治用の技だったとか,こういう展開は熱いと思う。ただ,そんな渾身の兜割でも死なない鬼に,宗矩が自爆攻撃を仕掛けようとするところに桃太郎卿が登場するわけだ。神州無敵だとかなんとか物語初期から言われていた桃太郎卿である。宗矩も,「娘を献上してもかまわぬ! いや,わしを捧げてもよい!」とかホモくさいことまで考えてしまっている。(8巻電子版28頁。神州無敵のたたずまい)なお,演出を見ると宗矩は桃太郎卿の顔を知らなかったようだが,桃の鉢巻きに平安風の鎧なんて,こんなわかりやすい格好をしているとそりゃ桃太郎だよという感じになるよね。なお,そんな桃太郎卿の戦いっぷりだけど,けっこうエグい。火薬を詰めた子犬を投擲してみたり,力尽くで鬼の体を引き裂いたりする。(8巻電子版78頁。安泰じゃ)口癖は「安泰じゃ」であるっぽく,常人ならば死ぬレベルの攻撃を何度も受けつつも「安泰じゃ」とノーダメージをアピールしてくるんだけど,おかしくはないですかね・・・。よく見たら,犬,猿,雉の化身鳥獣を呼び寄せて攻撃させているものの,自身の刀は抜かずに終わらせている。そんな桃太郎卿の戦い方は規格外ではあるのだけど,個人的に衝撃を受けたのは桃太郎卿が首と顎での白羽取りをするシーン。(8巻電子版40頁。押すか引くかしなければ切れぬ。安泰じゃ)これ,『悟空道』の主人公,孫悟空の魔技・真王首にそっくりだ。これは,悟空が「息を止めて力を入れると首が鋼鉄より硬くなって刃物の方を折ってしまう」って技で原理はずいぶん違うんだけどね。僕は,『悟空道』が大好きなのだけど,あんまり最近は出てきてなかったからそこは嬉しい。一方で,沖田総司の方は谷衛成との激闘の末勝利。実際は色々あるのだけれど,桃太郎の方がインパクトあったかな。で,柳生宗矩から四百石で江戸市中の警護の仕事を依頼されたものの,沖田総司はこれを拒否して逐電。これにて沖田編は終了となった。新撰組という幕府側の人間だったはずなのに,なんで沖田は宗矩の誘いを拒否したのだろうか。これはよく分からない。旗本奴を率いての仕事が気にくわなかったということなのか,鬼の方にも人情があることが分かったからなのか。これまでの主人公たちと異なり,幕府側だった沖田がこれからどうなるのか,気になるところだ。あと,前巻の感想で,「いか娘は死んでないんじゃない?」と書いたけど,何のフォローもないので本当に死んでいるっぽい。悲しい。そして,波裸羅を主人公とした短編のあと,次の話として黒須京馬を主人公とした新しい話が始まった。黒須京馬はこれまでの山口貴由作品でもたびたび,文字通りクロシオーバーして登場するキャラクターではあるのだけど,今度は真田十勇士に育てられた忍者として登場した。沖田総司と違って,明確に豊臣側なので,先は読みやすそうである。ところで,いつになったらこの物語は収束に向かうのだろう。零鬼編,震鬼編,雪鬼編,霞鬼編,霹鬼編,武蔵・雹鬼編,霧鬼編,沖田・霓鬼編と,これまで8つの話があり,8人の主人公がいた。このうち武蔵と沖田の者は怨身忍者になっている。ここに黒須京馬の雷鬼編が始まると,9人の主人公がいることになる。キリよくもう1人くらい入れて,10人の主人公で家康と戦うのだろうか?・9巻感想(2020/6/23)衛府の七忍 8【電子書籍】[ 山口貴由 ]
2019.12.26
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ロシア本国では絶対にアニメ化できなさそうな『ライドンキング』の新刊が出た。大雑把に言えば,プーチンのそっくりさんであるプルチノフとジェラリエ騎士団との対決編といったところか。感想を書いていこう。(参照「1巻感想」「2巻感想」)ライドンキング3巻【電子書籍】[ 馬場康誌 ]簡単なあらすじだけど,プルチノフと旅の仲間になっていた可愛い女の子たちの秘密がついに明かされる。魔法使いの方の女の子,ベルは「魔圧縮」という,生物以外の物を小さくし,また必要な時に元の大きさに戻す魔法が使えるという。ドラえもんのスモールライトみたいなものか。描写を見る限り,質量保存の法則も無視してようで,かなりヤバい。(8頁。これは兵站の革命だ。)さて,女の子の話はここまでで、以下はプルチノフの話をしてく。まず,今巻のプルチノフは自慢の交渉力を見せてくれる。マッチョな上半身裸という蛮族スタイルで、ドヤ顔しつつ交渉力を自慢するプルチノフは最高に笑える。ラインスタンプにしてくれたら、金払って買うファンが続出するだろう。(19頁。交渉力に自信。)そんなプルチノフだけど、彼の国作りがうかがわれる発言がいくつかあったので、2つほど見ていく。1つが、これ。「為政者として統治の責任は民に対して負うもの」というの。汚職に励む日本の政治家に聞かせてやりたいものだ。なお、この発言を発展させると、「民のための政治をしない国は滅ぼしていい」という形に発展するわけだけどね。(31頁。主権は国民にある)また、プルチノフは王になるわけだが、別に自ら名乗ったというより、まわりが勝手に王と呼ぶようになる。それに対し、プルチノフはあくまで王ではない、みなが友だというのだ。そう、強いだけではダメなのだ。キン肉マン風にいえば、「心に愛がなければ、スーパーヒーローじゃない」のだ。プルチノフは強さも、愛も備えている。まさにスーパーヒーローである。真面目な話はこのあたりにして、プルチノフとジェラリエの戦い。ここ、馬場先生は遊びすぎじゃないですかね…。もともとも、ライドンキングは拾いきれないほどプロレスネタが詰まっている。たとえば、プルチノフが敵方から「閃光魔術師」(シャイニングウィザード)と呼ばれているんだけど,これは同名のプロレス技から来ているわけだ。で,今回のプルチノはプルチノフは獣王の証である「十二亜八冠」(じゅうにあはっかん)の力で気位の高いケンタウロスに騎乗し,悪魔的合体をしたり,大地の力を入れての正拳突きで敵を倒すのだ!ここ展開はふざけまくっていて,「十二亜八冠」って2巻で出てきたときは「12の部族を統治した8王国の冠」と説明されてたので読み流しちゃたっけど、これは明らかにグレートサスケ(みちのくプロレス)のジュニア八冠だろう。あと,プルチノフがケンタウロスと悪魔合体したのに対し,ベルが「悪魔的(サタン)の結合(クロス)みたいな。1+1が200で10倍・・・」って発言しているけど,どこからどう見てもキン肉マンに登場する悪魔超人,サタンクロスろ・・・。あと、「1+1が200」ってのは小島聡だろバカヤロー! 笑わせるなじゃないぞコノヤロー!画像は面白すぎるので引用しない。自分で買って読むべき。さらに再読していて気が付いたが,十二亜八冠について巻末の設定解説では,「ミチョーク王国のサスク王が作らせた」という,ふざけ切った説明がなされている。そのほかにも「獣の神化は絶望をともなう哀しみを背負うことによる無想転生」と北斗の拳ネタをぶち込んでみたりしていて,色々とヤバい。(189頁,遊び心があふれ出す解説)物語的には,ケンタウロス編はジェラリエに悲しい過去が明かされたりと色々あったし,そこも語りたいけれど,長くなりすぎたので断腸の思いで省略。ジェラリエは物語から退場したようだが、いよいよ話は大きく浮き出したので、次も買うしかない。・1巻感想・2巻感想ライドンキング 3/馬場康誌【合計3000円以上で送料無料】
2019.10.15
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アニメの『ドラゴンボール超』も完結し、いよいよオリジナルストーリーに入ったドラゴンボール超の漫画版。10巻が出たので感想を書いていく。 ドラゴンボール超 10【電子書籍】[ とよたろう ] これまでのおさらいだけど、アニメ同様、力の大会は悟空たち第7宇宙の優勝で終わった。それから始まったのが、銀河パトロール編とか、星喰いモロ編という話だ。 内容的には、銀河刑務所から脱獄した凶悪犯、星喰いモロと呼ばれる強敵と戦う話になる。 そんなモロはナメック星にドラゴンボールを求めて移動して来たので、ナメック星を舞台にして、悟空とベジータの戦いが始まるというのが前巻まで。 さて、10巻ではまずはベジータ対モロ戦が行われる。ひねくれた読者的には、「ベジータ負けるだろうな…」と思っていたのだが、まさにその通り。 モロの、対戦相手のエネルギーを吸収する能力にやられ、ベジータだけでなく、悟空まだやられてしまう。これに対抗できるのは、ブウだけという形になっていて、相性の問題か、助っ人に来たブウが有利に戦いを繰り広げる。 ただ、今回気になったのが2点ある。 1つは、どこかで見た展開が繰り返されていること。 そもそも、老いた強敵とドラゴンボールを争うというのはピッコロ編のようだし、戦場にナメック星が選ばれた経緯もフリーザ編とそう大きく変わらない。 また、ベジータはモロ戦の序盤で、わざと負けそうなフリをして、モロと会話をし、モロから情報を引き出した。これって、セル編でピッコロがやったのと同じ方法だよね…。 (10巻20ページ。わざと劣勢な演技をし、情報を引き出すベジータ) また、モロの能力であるエネルギー吸収って、どうも人造人間19号や20号の能力と重なる。特に、ベジータのギャリック砲を吸収するシーンなんてそっくりだ。 (10巻60ページ、ギャリック砲を吸収するモロ) ここあたり、長期連載だったドラゴンボールで物語を作ることの難しさを感じる。 それから、2点目。 モロがわざわざドラゴンボールで叶えたかった願いは何か、という点だ。 そもそも9巻においてモロは、「オレの願いは1つで十分だ」と言い、部下に残りの願いを叶えて良いと言っていた。 (9巻159ページ。モロとその部下、グランベリの会話) ところが、10巻でこの話はなかったことになる。ナメック星の神龍、ポルンガは最終的に3つの願いを叶えたが、それは以下の通り。 ・瀕死だったクランベリの傷を治す。 ・老いたモロの魔力を全盛期にする。 ・不明。 1つ目のグランベリの傷を治すというのは、イレギュラーな願いだ。でも、事前にモロは「自分の願いは1つでいい」と言ってた。 ところが、モロはグランベリを殺してまで、3つ目の願いを叶えた。この3つ目、読者や悟空たちに隠されているけど、何かがあるんだろう。 この辺りが、モロ編の鍵になりそうなのだが。
2019.08.07
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『カラテ地獄変』に刃牙成分と萌え要素をぶち込んだ,『はぐれアイドル地獄変』の9巻が出たので感想など書いていく。ちなみにこの9巻は7月29日発売だったのだけど,この直前である7月21日には参議院選挙が行われていた。この参議院選挙の投票証明書と,9巻の写真を作者である高遠るいに送ると好きなキャラを書いてもらえる規格がひそかに行われていたのだが,発表が21日の13時20分。僕は投票を終えており,応募資格はなかった。なお,のちに「投票所の写真でもいい」と条件が緩和されたが,気づいたのが翌日だったという…。教訓,高遠るいのTwitterはよく見ろということ。はぐれアイドル地獄変 9【電子書籍】さて,肝心の内容である。主人公である海空は,色々あって格闘技トーナメントに参加することになった。主人公以外の試合も丁寧に描いていくというスタイルのため,今回,海空の試合はない。それでも延々と表紙だったり扉を飾っていくのは主役である海空である。そういえば,『餓狼伝』の北辰館トーナメントしてたころ,主人公の丹波文七は本編で全く活躍しないのに延々と扉絵を飾っており,「グラドル」と揶揄さえたものだが,今の海空はまさにグラドル…。全キャラを見ていくと冗長になるので,キャラをマオマオというキャラにだけ絞って書いていく。(8頁。右目が白いのは失明の表現なのかオッドアイなのか…)このマオマオ,前巻の感想で僕が「決勝まで来るんじゃないかな」と予想した相撲の大島渚を破ったキャラなのだ。正直,僕はこのマオマオというキャラにはあまり期待をしていなかった。画像のとおり、右目が白くて失明してるっぽいし、使う格闘技がミャンマーに伝わるラウェイという,ムエタイみたいな格闘技だったから。高遠先生のリスペクトしてる刃牙の世界においてムエタイって基本的にかませ犬だし。しかも,このマオマオというキャラ,試合運びが非常に泥臭い。1回戦を見てもムエタイ相手に技では完全に劣っていたような感じ。それをクリンチからの頭突きでひっくり返したわけだ。頭突きという技,見栄えがしない。実際は頭突きは非常に危険な技で,ルール上禁止されている格闘技も珍しくないんだけどね。そして,2回戦でマオマオは相撲の大島渚と対戦するのだけど,やはり鯖折りでKO寸前までいったが,「審判の死角でタップして,ギブアップするふりで技を解かせる」なんてやり方をしたりと,ファイトスタイルが「勝てばよかろう」のケンカ空手みたいな感じである。ただ,マオマオが渚を仕留めた「魔弾」という軌道が変化するパンチを撃ったんだけど,やはりこれは『シンシア・ザ・ミッション』で久我阿頼耶が使っていた必殺技なんだよね。関係がありそう。他の強豪キャラのように相手を圧倒するわけでもなく,ある程度ダメージを受けながら,泥臭く,勝てばよかろうというのに,どうも引っ掛かりを覚える。そして傷だらけの体は,刃牙を連想させる。ラフファイトに持ち込めば,綺麗な戦い方をする殷小敏やマリアなんかにも勝てるんじゃないかな。そろそろ他のキャラの話もすると,僕が注目していた殷小敏は相変わらず圧倒的な強さを見せてノーダメージでベスト8入り。そして,突如乱入したロボがチェ・ユニを倒してベスト8入り。チェ・ユニは海空と対戦して引き分ける実力だし,1回戦で空手世界一のベアトリスに余裕で勝利していただけに,ロボの勝ち上がりは意外。(140頁より。ベスト8確定。)さて,次の予想を。前巻の予想でも書いたけど,たぶん,海空は次でマリアと戦って勝ち,次でルナ・カーンと戦うのだろう。で,決勝戦なんだけど中国拳法の殷小敏か,ラウェイのマオマオなのかな…。圧勝で勝ち上がっている殷小敏に対し,ギリギリで勝ちあがっているマオマオだが,ラフファイトに持ち込めばワンチャンスありそう。ついでに『シンシア・ザ・ミッション』で猛威を振るった魔眼まで使うとかあるかも。あと,ロボはそんな期待してない。中に人間が入っているというならともかく,あんまこの展開は僕好みではない。そういえば,今の『TOUGH外伝 龍を継ぐもの』でもメカが主人公たちを圧倒しているけど,そういうのは求めてないんだ。※前巻の感想は2月18日日記
2019.07.29
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以前から感想書いてきた『終末のワルキューレ』の新刊が出た。感想を書いていく。 終末のワルキューレ 4 (ゼノンコミックス) [ アジチカ ] 前回までのあらすじだけど、神vs人間の13本勝負をすることになったのだ。 神側はギリシア神話あり、北欧神話ありの多国籍軍だが、人類も過去の英雄たちを呼び出して戦うのだ。これまで2戦して、神側は2連勝。 そして、3試合目は佐々木小次郎vsポセイドン。日本刀対三つ又の槍のぶつかり合いだ。 そういえば、これまでの試合を見ても、武器の使用は認められてるっぽいけど、銃火器の使用はできんものか。けっこう人類側が有利になりそうなのだが。 そして、恒例の戦いながらのキャラ掘り下げ。 まず、ポセイドンなんだけど、かつてはオリンポス12神ではなく、13神だったという。消えてしまったアダマスって神が主神ゼウスへ反逆を企んだんだけど、ポセイドンがサクッと殺してしまったそうな…。 僕も聖闘士星矢のころからギリシア神話は読み込んでいるけど、聞いたことのないエピソードである。 あるとしたら、ゼウスの父であるクロノスが使った大鎌の金属がアダマスだったのくらいかな。たぶん、ここは作者の創作だろう。 色々考えてみるに、『イリアス』なんかではポセイドン自身がゼウスへの反逆をしたものの敗北した話なんかも語られていて、なんかしっくり来ない。 一方で、佐々木小次郎の掘り下げである。 この漫画において、佐々木小次郎は一度見たり、戦ったりした相手と、リアルなイメージトレーニングが出来るという特技を持っている。 そのため、小次郎は生前、武蔵と戦う前に柳生石舟斎だとか上泉信綱みたいな剣豪と戦っては負け、その後に想像上の柳生石舟斎だとか上泉信綱と戦って強くなっていってた。 違う漫画でいえば、刃牙のリアルシャドーみたいなものか。 そんな小次郎だから、生前は「死ななきゃ勝ち」と言うと言い過ぎだが、けっこう諦めが早く、「参った」とやってしまってた。 だが、武蔵戦だけは楽しくて、やめることができなかった、という流れ。 このポセイドン戦も、やめたくてもやめられないから、死ぬまでやらなきゃならないのだが…。 と、こんな風にキャラの掘り下げをし、小次郎の刀が折れたり、それでも小次郎が二刀流を始めたりとか色々やって4巻は終わり。 決着、つかなかったな。試合場を水辺のフィールドにした点について、前の感想で「海神ポセイドンに有利な反面、小次郎に不利過ぎない?」と突っ込んだが、今のところ特に試合場を水辺にした意味はなさそう。 そろそろ人類が勝たなきゃなー、と思うところではある。 そして、予告によると5巻では神側からヘラクレス、人類側からジャック・ザ・リッパーが戦うそうな。 微妙なチョイスだな。切り裂きジャックなんか、普通の殺人犯だからヘラクレスには瞬殺されそう…。と思わせておいて、実はすげーつえー、みたいな感じなんだろう。 終末のワルキューレ 4巻【電子書籍】[ 梅村真也 ] ・過去日記 ・3巻感想 ・1〜2巻感想
2019.07.27
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2年に1回くらいの周期で新刊が出ている『ヒストリエ』,ようやく新刊が出たので買ってきた。 最近は僕の中で唐突に訪れたアレクサンドロスブームなのでちょうどいいタイミングである。 ヒストリエ(11) (アフタヌーンKC) [ 岩明 均 ] 表紙はライオンとそれに相対する後姿の青年という姿。てっきり,後姿の青年をアレクサンドロスだと思っていたが,もしかすると彼と顔が似ているパウサニアスかもしれない。 そんな『ヒストリエ』の11巻だけど,メインとなるべき人物はこのパウサニアスだ。 パウサニアスといえば,アレクサンドロスの父親であるフィリッポス2世を暗殺したマケドニア兵なのだが,この『ヒストリエ』の世界でもおおむねそんな立ち位置である。 なお,僕の知るパウサニアスについての知識は,英語版のWikipediaくらいの情報くらいしかないので,ほとんど知らないのだが,『ヒストリエ』の世界でのパウサニアスは大きく2つほど特徴がある。 1つは,アレクサンドロスと顔がそっくりだという,身体的特徴だ。 これはどうも史実っぽくないな,と思う。こんな話があれば,さすがに僕も知っていそうだから。 2つは,心がないわけではないにせよ,パウサニアスがあまり感情を見せないという点。 (84頁。パウサニアスはアレクサンドロスとそっくり。) そんなパウサニアスだけど,獅子狩りに行った際,ライオンの色々な感情が混じったような顔を見て,気を取られたところを顔に重傷を負ってしまう。 明らかにアレクサンドロスと違う顔になってしまったので,今後は影武者もできないという感じだが,ずっとライオンの顔を心にひっかけている感じになる。 たぶん,フィリッポスが暗殺された動機については,パウサニアスがすぐ殺されてしまったためによくわかっていないのだが,この獅子狩りのときのエピソードを入れて,組み立てていくのかな,と思っている。 ちなみに,英語版Wikipediaでパウサニアスについての項目を読んでいくと,暗殺の動機は痴情のもつれだったんじゃないか説,裏でアレクサンドロスかオリンピアスが糸を引いていた説だとかいろいろ書かれている。 この『ヒストリエ』という漫画,史実に忠実なのかといえば決してそうじゃないのだけど,どうやってパウサニアスがフィリッポスを暗殺をするまで話を持っていくのか…。次もたぶん2年後くらいかなと思うと非常に気が長い話だ。 気が長い,といえばこの物語はいつごろ完結するのかな。 ようやく,オリンピアスが追放されるところまで話が進んだけれど,まだアレクサンドロスには東方遠征というビックイベントが控えている。わざわざバルシネを重大そうなキャラとして登場させているんだから,東方遠征はきっとやるだろう。 そして,わざわざエウメネウスを主役にしている以上,ディアドコイ戦争だってやりたい。 刊行スピードを早めてくれはしませんかな。
2019.07.23
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1巻から愛読していた『異種族レビュアーズ』、3巻出たので感想など書いていく。3巻出たのとほぼ同時にアニメ化も決まったみたいで、嬉しい気持ちもある反面、こう、「応援してたインディーズバンドがメジャーデビューしたときの気持ち」に通じる寂しさも感じる。なんだかんだ言って、僕はこの漫画がニコニコ静画で更新されるたびに読んでいるので、単行本が出たからと言っても再読になる。初見のときのような驚きや感情の動きはないものの、当時のことも思い出しながら感想を書いていこう。まず、この漫画は異世界での風俗をテーマにした漫画である。スケベたちがエルフだとか、悪魔だとかが風俗嬢をしてるお店に行ってクロスレビューをするという、基本的に一話完結の漫画である。正直、著者の発想は異次元のレベルに到達しており、「天原先生はもしや異次元から転生してきたのでは…?」と思うところもある。また、見どころとして細かな文字で書き込まれているレビュー部分の作り込みがあり、ここに全てが集約されていると言える。全ての感想を書いてくわけにもいかないから、いつものように2つくらいに絞る。1つに、お酒の妖精、クルーラホーンのいる店に行く回。このお酒の妖精のレビュー自体はさほどでもないが、レビュアーズの外道枠、カンチャルが商才を発揮するところが見どころ。徐々にキャラ付けが深まっているが,このカンチャルはゴーレム店あたりから個性が強まった気がする。(3巻57頁。レビューで金儲けを企むカンチャル)もともと、主人公たちのレビューは評価が高く、記事が売れていたのだけど、それをマネしてきた奴らが出てきた。そこを取り締まるわけではなく、利用して儲けると言うところが凄いといえる。実際、現実世界にいる僕が、現実には存在しない、生きる上で全く役に立たない風俗店に関するレビュー漫画読んでると言うのは「面白いから」である。なんとも感心するよ。2つに、悪魔の生態の話。作中、悪魔はひどく嫌われている設定なのだけど、その一端が明らかになる。悪魔って、契約が大好きなのだ。そして、契約を守らせるのも大好き。そういえば、悪魔が契約に忠実というのはどういうアレなんだろう。星新一のショートショートだと定番の設定で、人間と悪魔との知恵比べの定番みたいな気がする。そんな悪魔店の受付が結婚を例に説明しているけど、こうだ。(3巻76頁。悪魔による結婚申込みのやり方講座)まず、「君を幸せにする」と悪魔にプロポーズしちゃうのはダメな例で、働かない嫁が出来てしまう。じゃ、「2人で幸せになろう」だと夫を支える良妻になるが、母としてはクソになりやすいとのこと。うーん、悪魔との取引の難しさを感じるが、当時、僕はTwitterでも感動して140字以内で感想を書いたはず。僕は弁護士やってるんだけど、皆んなが契約を守ってくれたら…とか思うのだ。あと、契約だけじゃなくて法も守ってくれるとなお良し。 つーか、この悪魔たちにとって弁護士とか裁判官は天職なのでは…。いや、逆にストレスで死ぬかもしれないからダメか。この3巻には7つの話が収録されているが、この悪魔店を扱った26話がダントツで一番気に入ってる。あと、アニメ化するらしいから、連載はまだまだ続くのだろう。アイディア勝負なこの漫画、未だにネタ切れする様子もないが、そこらに天使の輪の伏線を貼ったりもしてる。安易な異世界バトルものとかにならず、このまま続くだけ続いて欲しいものだ。異種族レビュアーズ 3【電子書籍】[ 天原 ]
2019.07.09
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サーフィンを題材にした梅澤春人先生の『SURFINGMAN』読んだ。色々と語りたいこともあるので、感想など書いていく。 SURFINGMAN 1巻【電子書籍】[ 梅澤春人 ] 主人公は39歳、離婚したばかりの悲しき中年である。もう、物語の冒頭から悲しい。 (1巻7ページ。冒頭、離婚報告から入る主人公39歳) ただ、僕みたいな中年層の読者は、中年期から何かを始めようとする主人公の姿に、一気に心を鷲掴みにされるところがある。 僕はまだ39歳ではないけど、なんというか、「あっ、この主人公は未来の俺じゃないか…? えっ、俺が漫画の中にいるぞ!」みたいな感覚である。 だいたい、中年ってこの漫画の主人公みたく、この年齢でも何かやりたい、このまま人生終わりたくない、という漠然とした不満を抱えて生きているものだ。 そんなサーフィン漫画の主人公だが、実はサーフィンは新婚旅行のバリ島でちょっとやっただけの初心者である。しかも、この時は結局、ボードに乗ることすらできなかったという。 だが、「人生の波」に乗りそこねたのかもしれない、という理由もあって、ネットで見たマンツーマンの個人レッスン、送迎付き1万のプランに申し込んでしまったところから物語は動き出す。 見どころの1つとして、なんと言っても、レッスンをしてくれるのは可愛い女の子(21歳)である。 この女の子は主人公となんとなくウマが合うし、またカーシェアをすることになってプライベートでも頻繁に遊ぶようになる。 表紙も主役ではなく、レッスンコーチの可愛い女の子メインであるし、この女の子目当てでも読む価値は十分にある。 見どころの2つとして、サーフィンの魅力というか、サーフィンを知ることができるという点。 僕もそうだけど、たぶん日本人のほとんどはサーフィンの経験はないだろう。主人公だって、経験はないも同然だ。 だから、僕たち読者は主人公を通してサーフィンというスポーツの楽しさや、道具へのこだわり、ルールというかマナー、人とのふれあいを体験することになる。 わりといいテーマだと思うけど、悲しいことに2巻で終わってしまった。人気がなかったのかもしれない。 前述したが、たぶん日本人のほとんどはサーフィンの経験なんてないはずだから、ちょっとだけ敷居が高いんだよね。1話から読んでると、「この漫画の主人公は俺なんですよー」みたいな気持ちで読めるけど、たぶん途中からだとこんな気持ちにはなれないだろう。 ちなみに、最終的に主人公は早期退職して海の近くに引っ越し、サーフィン漬けの生活をすることになる。髪型なんかもサーファーっぽい。なんとも羨ましいような、将来は大丈夫なのかとか思わないでもない。 でも、可愛い女の子がいればそれでいいよね。 (2巻169ページ。髪も伸ばして身も心もサーファーになった主人公40歳) ちょっと脱線するけど、梅澤春人先生の代表作といえば、もちろん少年ジャンプでやってた不良漫画『BOY』だろう。幼い頃のぼくは、無敵の主人公、日々野晴矢の強さに憧れていたものだ。 BOY 1【電子書籍】[ 梅澤春人 ] だが、僕としてヤングジャンプでやっていた『カウンタック』も捨てがたいと思う。こちらは幼いころの「大人になったらスーパーカーを買いたい!」という夢を、36歳でようやく叶えた主人公が読者にスーパーカーの魅力を伝え、またカウンタックを通して人とのふれあいを深める物語だった。 スーパーカーかサーフィンかという舞台装置は違えども、『SURFINGMAN』と『カウンタック』は根っこが同じと言えるだろう。 カウンタック 1【電子書籍】[ 梅澤春人 ] 梅澤先生も50歳を超えておいでのようだけど、まだまだ面白い漫画は描けるというのが『SURFINGMAN』を読むとよく分かる。 2巻で終わったというのは、短いと思うが、次回作には期待をしたい。 なあに、梅澤先生にはまだ「ロックンロール」という得意分野がある。もう一花、咲かせてくれるはずだぜ。 SURFINGMAN 2巻【電子書籍】[ 梅澤春人 ]
2019.06.09
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最近はGYAOでちょっとずつ更新されている『あしたのジョー』をBGMがわりに仕事をするようになっている。たまに仕事の手が完全に止まってしまうことがあるが,そこは仕方ない。色々面白いのが,漫画にはないアニメのオリジナル回だ。当時のアニメ情勢はよくわからんが,かなり真剣に作りこんでいるのがわかるし,非常に質が高い。そんなわけでアニメ版『あしたのジョー』40話,「白銀に誓う」の感想を書いていく。https://gyao.yahoo.co.jp/player/00114/v12195/v1000000000000005935/物語は,ジョーがウルフ金串をトリプル・クロスカウンターでK.Oした直後。勝ったとはいえ,ジョーは満身創痍。そのため,丹下段平はジョーを温泉に連れて行き療養させることにしたのだ。ジョーも,「やっほー,スキーができる!」と大喜びである。のちのち,ジョーは試合中に力石を殺してしまうという悲劇の結果,非常に禁欲的な悲壮感漂う男になるのだが,物語序盤の年相応のジョーというのも貴重である。ご機嫌で歌など歌いながら温泉に向かうジョーたちであるが,バスで移動中,ラジオでウルフ金串が再起不能になったというニュースが届く。「この世界の仁義だ…」と段平とジョーは温泉に向かう前,ウルフ金串の所属していたアジア拳闘クラブに向かうことになる。そこでジョーと段平は大高会長に謝罪,というか一言挨拶に行くことになる。そこで大高会長は「新人王まで取った男が駆け出しのジョーに負けてしまうなんて,ウルフはアジア拳闘クラブに泥を塗ったも同然だ。ウルフのことはどうでもいい」と辛らつなセリフ。これに激高したジョーはこう言い放つのだ。「それじゃあ,ウルフの立つ瀬がなかろうぜ!奴はあんたのため,このアジア拳のために戦ったんでぇ。勝った時だけ頭をなぜで,負けたら犬っころでもあしらうように蹴っ飛ばす。そんなふざけたやり方,俺は許せねえぜ!」なぜかわからんが,泣きたい気持ちになってくる。リングの上で戦ったのみではなく,ウルフはジョーの取り巻きのチビたちに暴行を振るった男である。だが,そうだからと言って,アジア拳の会長はひどい。漫画ではないエピソードだが,展開になんの不自然さもない。敵とはいえ,そこには武士の情けが必要なのだ。また,アジア拳の会長は自分のために戦ったウルフを使い捨てるべきではない。ここに表れているのは,敵にも情けを示すジョーの美しさと,冷酷に味方を切り捨てたアジア拳の醜さだ。僕の中で梶原一騎ブームが来ているのだが,最近になって『あしたのジョー』を全巻再読した。つくづく思うのは,『あしたのジョー』は哲学書だということだ。大袈裟だという人もいるかもしれない。だが,哲学とは何かといえば,goo国語辞典によるとこうなっている。1 世界・人生などの根本原理を追求する学問。古代ギリシャでは学問一般として自然を含む多くの対象を包括していたが、のち諸学が分化・独立することによって対象領域が限定されていった。(後略)2 各人の経験に基づく人生観や世界観。また、物事を統一的に把握する理念。「仕事に対しての哲学をもつ」「人生哲学」ならば,まさしくジョーは哲学だ。読者はジョーの生き方を通して,どう生きるか考える。困難にぶち当たったとき,ジョーはどう生きたのか。ジョーのどんな行動に美しさを感じたのか。「男とはどう生きるか」,これはまさいく人生の根本原理だし,ひとつの世界観だ。誇張ではなく,僕は梶原一騎の漫画に数々の影響を受けている。ま,そんな哲学を抜きにして『あしたのジョー』は面白い。これは間違いのないことだ。あしたのジョー7巻【電子書籍】[ 高森朝雄 ]
2019.06.09
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梶原一騎の晩年の作品である『火子伝説』を読んだ。ざっと読んでみて,かなり異色の作品だと思う。梶原一騎らしさ,というか梶原一騎の匂いがほとんどしない作品である。感想など書いていく。 火子伝説 1【電子書籍】[ 梶原一騎 ] Wikipediaによると,この『火子伝説』は1985年に始まったという。ファンには有名な話だが,梶原一騎は1983年に逮捕され,いったん全ての連載は終了している。また,逮捕以後には業界から干されてしまい,Wikipediaによると逮捕後の漫画は『男の星座』と本作だけである。 逮捕以後の漫画としては,未完に終わった自伝漫画『男の星座』は良く語られるが,『火子伝説』については,ほぼ語られることがないようである。繰り返すが,異色の作品であり,梶原一騎の中で何かが変わったのではないか,という意味で意義がある作品ではないかと思うのだが。 まず,作品の概要であるが,古代日本,仏教が伝来したころを舞台にしている。 物語冒頭は,主役である物部氏に使えるタケヒコ(1巻表紙)から始まる。このタケヒコはもともと盗賊の少年だったが,物部氏の清姫に一目惚れして物部氏に仕えることになるのだ。 やがて物部氏は対立してた豪族の大伴氏を滅ぼすのだが,清姫は様々な事情から大伴志顕の妻となっていた。清姫は中国大陸にまで逃げ延び,燃え盛る家の中で子を産む。この子がやがて主役となる火子(2巻表紙)である。 また,大伴志顕を追ってタケヒコも中国にやって来る。ここでタケヒコはかつて愛していた清姫を見つけ,清姫の夫を殺してしまったという微妙な立場に苦しみながら,火子を保護したりするのだ。 最終的には中国から日本に帰って来て,聖徳太子や蘇我氏とともに仏教を弾圧する物部氏と戦うようにはなるのだ。 火子伝説 2【電子書籍】[ 梶原一騎 ] 異色な点をいくつか挙げてみる。 第1に,物語の舞台が古代日本,中国であるという点。 梶原一騎の作品はほぼ現代日本を舞台にしており,せいぜい江戸時代の剣豪漫画があるにせよ,古代日本は例がない。 第2に,超能力を使うという点。 作中,主人公格であるタケヒコ,火子はいずれも超能力を持っていて,手を触れずとも物を破壊するなどできる。また,タケヒコと対立する大伴金村だとか,火子の師匠であり,ラスボス的な周天もまた超能力を使う。 梶原一騎の漫画のキャラは,あくまで鍛えぬいた肉体と技で戦う者たちだった。そこに超能力の入る余地はなかったはずなのだ。時代背景として,スポ根は1980年代に入るともう時代遅れとなり,超能力ブームが来ていたはずだ。それにあやかったのかもしれない。 もっとも,火子もタケヒコも,腕っぷしも問題なく達人である。特に火子は昌輪寺という寺で武道を修行し,巨大な鐘を素手で叩き割る特訓をするなどしている。 第3に,火子は武力だけではなく知恵にも優れている点だ。 特に昌輪寺に入る前の,幼いころの火子は戦力にならないため,もっぱら頭脳労働担当だった。 そんな火子は火薬から爆弾を作ったり,ハンググライダーを発明して空を飛んだりしている。実際,ハンググライダーは火子の超能力もあるのだろうけど,梶原一騎の漫画には珍しい。 正直,火子には超能力,武術,知恵といろいろ詰め込み過ぎているような気はするのだけど。 このほか,色々と細かな点で異色な点はあるだろう。 梶原一騎の漫画において恋愛というのはさほど重要視されず,短い期間で悲恋に終わることが多かったりする。ところが,タケヒコは物語中,ずっと清姫を愛し続けた。それは清姫が子を産んでも変わることはなく,物語終盤になって清姫が死ぬまでそれは続いた。こういうのもあまり例がないと思う。 また,細かなセリフ回しを見ていても,あまり梶原一騎の個性を感じないのも不思議だ。正直,梶原一騎を研究するうえで,まじめに研究する価値のある作品だと思う。 これほど異色な作品であるが,面白いかといわれると微妙であると言わざるを得ない。 特に,超能力についてはなくても良かったんじゃないか,と思う。特にタケヒコなんか,別に超能力がなくても充分に強いんだし。 同じく,中国編なのだけど必要性を感じない。火子の修行は日本でも普通に出来たろう。中国でも色々と人間関係が生じるのだが,舞台が日本に移るとほとんど縁がなくなってしまうのだし。 また,梶原一騎が歴史に詳しかったのかといえば決してそうじゃないだろう。たまに,中国人の将軍の名前を何人かGoogleで調べてもヒットしないので,どうも架空っぽい者が多く,うまく歴史漫画として描けていないように思えるのだ。また火子が武術を修行する昌輪寺は「しょうりんじ」だから少林寺をモデルにしていると思うのだが,たぶん少林寺が時代考証的につかえなかったのだろう。 ちなみに,異色ついでに漫画家の方の話。 表紙を見れば分かる通り,『火子伝説』の作画は途中で交代しており,1巻から3巻を古城武司が,4,5巻を広岡球志が描いている。 絵を見て,僕くらいの年代の方ならピンとくるかもしれないが,古城武司は「学習漫画世界の歴史」だとか「学習漫画日本の伝記」を描いている。小学校で合法的に読める漫画といえば,図書室においてある『はだしのゲン』とか歴史漫画だった。彼の絵を見ていると,歴史漫画を読んでいる感が強い。 なぜ,途中で作画が交代してしまったのか,これが分からない。梶原漫画は『空手バカ一代』みたく途中で作画が変わることがたまにあるとはいえ,理由がちょっと思い浮かばない。 火子伝説 5【電子書籍】[ 梶原一騎 ]
2019.06.02
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梶原一騎の『青春山脈』の電子版を読了したので感想を書いていきたい。有名な作品ではないらしく,紙の本では見たことがない。僕は個人的に好きだな,という感覚。 時代背景を見ていくと,連載開始は1977年。比較的に終盤の作品になる。作品一覧を見ていても,もはやスポ根作品はほぼ発表されなくなっていている。 大河ドラマ的な感じで少年だった主人公が大人になり,老人になり,そして死んでいくまでを扱っているため,一口にまとめるのが難しい。とりあえず便宜上,少年期,青年期,壮年期,老齢期になんとなく分けてみていく。 青春山脈1【電子書籍】[ かざま鋭二 ] 1.少年期(1~4巻終盤) 舞台は第二次世界大戦中の日本。主人公は火乃家の兄弟。兄の火乃直彦と弟の火乃正人。 この兄弟はまさに火のような激しい気性の持ち主だ。海軍所属の兄の方はまだしも冷静なところがあるが,弟はまさに炎のような激情家だ。舞踏会で軍需産業の財閥令嬢(のち兄の恋人)に正面から挑みかかったりする。 (1巻22。軍需産業に挑む正人) この少年期編を一言でいえば『はだしのゲン』の初期ころだろうか。 主人公たちは戦時中を生きながら,戦後的な価値観を持っている。大本営発表には批判的だし,愛国者の皮をかぶった権力者には容赦はしない。 見どころは,火乃兄弟の反骨的なところに感じる格好良さ,男らしさだろう。火乃兄弟の行く手は試練ばかり。上層部に嫌われた兄の方は「見殺し部隊」に入れられてしまうも,多大な武功を上げる。最終的に,兄は特攻で戦死してしまうが死後は軍神となる。弟の正人の方も特攻隊に入るものの,幸運にも,いや悪運があって生き延びるのだ。 2.青年期(4巻終盤~6巻半ば) 兄の方が死んでしまったから,弟の火乃正人が単独主人公となる。 戦後の焼け野原,張り合いもなく生きていた正人だが,兄の子である水上正樹に出会う(4巻168)。 (4巻168.正人と直樹の対面) この甥である直樹の成長を楽しみに生きる正人だが,暴力団同士の抗争の結果,直樹とその母親を助けるため対立する暴力団員を4人も殺してしまい,刑務所に入れられてしまうのだ。 この青年期を一言でいえば,『新カラテ地獄変』の初期といったところ。 見どころは「ステゴロ正」と恐れられる正人のケンカ強さだろう。かつてのスポ根のように,正人にはライバルといえる好敵手はいない。相手はあくまで組織であり,素手で戦えば正人に勝てる奴は誰もいない。 それでも,正人は兄の血を引いた甥・直樹とその母親には極端に弱く,正樹はヤクザにしたくないと距離を置いて苦悩する。ちなみに,正人は普段はコワモテのくせあまりにも子供に対して甘いのだが,全巻通して読むとこのへんからその片鱗は見えている。 (5巻83。正人の子どもへの甘さは後々問題になる) 組員がちょっと引くなか,組事務所の屋上でキャッチボールをしたりとか,このころは,「甥に甘いなぁ…」とのんきに思っていたけど,全巻通して読むと色々あとで思うところはある。 3.壮年期(6巻半ば~12巻頭) 正人が12年の刑期を終えて出所したあたりを壮年期編とする。年齢的に30歳前後だから壮年期というにはちょっと若いかもしれんが。法律家的な発想だと,「現住建造物放火に加え,死者4人,重傷15人」だから死刑になっても全然おかしくはないのだが,結構軽いよね。 青年期編は幼児だった直樹も高校1年生になっている。ここからは,正人と直樹がともに主人公格になる。 この正人の壮年期編が最も長いのだが,色々と思うところはある。やっていることは基本的に,ヤクザと正人の抗争,それから甥である直樹の恋物語である。 そんな直樹の恋の相手は甲賀魔子(こうが・まこ)という,名前を見るだけでヤバい奴である。画像が重たくなってきたので6巻のリンクを貼っておくが,奥の学ランが正樹,左奥が魔子,右前が壮年期の正人である。 青春山脈6【電子書籍】[ かざま 鋭二 ] この壮年期を一言でまとめると,『愛と誠』の焼き直しである。 梶原一騎が脱スポ根した記念碑的な作品である『愛と誠』なんだけど,物語は恋愛描写よりも不良グループの抗争がメインになっていて,非常に暴力的な作品になっている。 『愛と誠』は不良の主人公と優等生のヒロインの恋物語だったが,本作ではそれを反転させたようなものか。主人公の直樹は勉強もできる優等生,ヒロインの魔子はヤクザの2代目だというから。 この壮年期編の最大の問題点は梶原一騎の限界というべきか,知的なキャラが活躍する話を描くのがたぶん得意ではないのだろう点だ。問題の解決は基本的にステゴロ正の暴力に委ねられる。 ために優等生の直樹はほぼ活躍ができない。どころか,直樹はメンタル面でも問題があり,ヤクザのバックを得ると学校でいじめをしてしまったりする。僕は弱い者いじめはどうしても好きになれない。 また,冷めた目で見てしまうと,正人がかかわるから甥の正樹たちがヤクザに狙われることになったわけだから,正人が原因を作っているというのはマイナスポイントだ。 素直に,直樹も特攻で散った父親のように火のような男にすればいいのにとおもうが,もしかすると『愛と誠』の焼き直しになるのを避け,かたくなに直樹には暴力を振るわせなかったのかもしれない。 また,シナリオも迷走気味で,終盤はヤクザとの抗争が女子プロレスになる。正人がケンカ殺法をコーチし,魔子がプロレスデビューをするという謎の展開だ。正直,この辺は特に見るべきところもなく,コメントはない。 4.老齢期編(12巻) 色々あって甥の正樹たちの前から姿を消した正人だったが,色々あってまた甥の正樹たちと暮らすようになる。 50歳を超え,年齢よりも老けて見える正人だが,甥の子である正樹に対しては非常に甘い。一時期は男の中の男というべき正人が,こんなに甘い爺さんになるとは…。 (12巻39。片腕という正人の障害を笑いものにする正樹とそれでも甘い正人) 正樹は登校拒否をしたり,また元ヤクザである正人を脅しの材料にして学校でいじめをしたりする。なんとも情けないものだ。星一徹を見習えと。 最終的に,正人は「自分がいることで直樹はダメになってしまう」と考えて家を出て,阿蘇山に身を投げて自殺して終わり。 全体の総括として,少年期は文句なく面白い。『はだしのゲン』に似ていると指摘したが,ほかの梶原一騎作品に似たものはぱっと思い浮かばない。また,火乃兄弟はどちらも激情家ではあったが,キャラがかぶることはなく,戦争の悲惨さ等文学的なテーマがしっかりと描かれていた。 青年期編は『新カラテ地獄変』のように正人の強さを楽しむ作品になっていて,不器用に兄の愛した女性に接したり,甥の直樹の成長を無上の楽しみとする正人には惹かれるところがある。 だが,壮年期以降はちょっと…。好みの問題なのだが,僕は甥の直樹も「強い男」であって欲しかった。たとえ『愛と誠』の焼き直しだろうが,強い男には憧れるものだし。 『おれとカネやん』の感想でも似たようなことを書いたが,もし『愛と誠』がなければ,普通に直樹を強い男として書ければ,『青春山脈』こそが梶原一騎の恋愛作品として不朽の名作になっていたかもしれないと思いはするのだ。『愛と誠』にはない大河的な要素がある分だけ,ポテンシャルはあったと思うのだ。 青春山脈12【電子書籍】[ かざま 鋭二 ]
2019.05.27
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梶原一騎の野球漫画といえば『巨人の星』だが,それ以外にも『侍ジャイアンツ』だとか色々ある。今回は電子で『おれとカネやん』を読んだのでとりとめもなく感想を書いていく。以下,引用は全16巻の電子版から。おれとカネやん 1【電子書籍】[ 梶原一騎 ]タイトルの「カネやん」というのはプロ野球選手の金田正一のことである。数々の記録を持っている名選手だ。本作は,カネやんこと金田正一に憧れる少年の物語という形になっている。連載開始時期は1973年。すでに『巨人の星』の連載は終え,1971年から始まった『侍ジャイアンツ』も終盤に差し掛かったくらいの時期だ。なお,この1973年には脱スポコンの記念碑的な作品である『愛と誠』の連載が始まっている。そんなわけで,本作も従来の作品と方向性を変えようとした模索した形跡が見て取れる。主人公は勝三四郎。金田正一が期待のルーキー長嶋茂雄との初対決の日,長嶋を4打席4三振にとったことにちなんで三四郎と名付けられたのだ(電子1巻31)。名づけのセンスが古風だが,昭和33年4月5日生まれならば実際こんなものだろう。この三四郎は父親が金田のファンだったということもあって,野球を始め,小学校,中学,高校,プロ野球と舞台を変えて活躍をしていく。電子版は全16巻なんだけど,プロ入りは11巻だから,物語の半分以上を過ぎたタイミングになる。プロ野球中心であまり学生野球を描かない印象の梶原一騎としてはちょっと意外なのかな。本作の最大の特徴は金田正一という人物の扱いだろう。主人公の目標というか,崇拝すべき人物が最終的に乗り越えるべき相手になる感じ。星一徹あたりにそんなところがないでもないが,崇拝から入るキャラは『巨人の星』にも『侍ジャイアンツ』にも見当たらない。あえていうなら,『空手バカ一代』の大山倍達にとっての宮本武蔵みたいなものか。三四郎は父から与えられた「聖書」である金田正一の自伝を読み込んで,人生の指針にしていくわけだ。そうしてプロ編で三四郎は金田正一が監督を務めるロッテに入団し,大活躍をしロッテを優勝に導く。しかし,金田によってトレードに出され,バファローズに移籍させられてしまうのだ。金田率いるロッテは三四郎の手の内を知り尽くしているため,魔球・二段ホップが撃ち込まれて苦戦をする三四郎だが,金田に裏切られたという苦しみをバネに三四郎は本格派投手として成長を遂げ、バファローズを優勝に導くのだ。しかし、これには裏があった。三四郎の得意とする二段ホップは投げすぎると三四郎の選手生命を奪う魔球なのだ。金田は,あえて二段ホップを攻略し,もう投げさせないということで三四郎を救い、さらなる成長を促したのだ,というところで本作は終了する。梶原一騎作品には強敵のほか,超えるべき師匠キャラがいる場合が多い。ある意味で金田正一は本作の「憧れの人物」から「超えるべき人」になったというべきか。また,魔球・二段ドロップを捨て,本格派投手としての成長をするという必殺技の否定には,本作と同年の1973年に連載の始まった『紅の挑戦者』なんかを思わせる。必殺技に頼りすぎると,どうしてもそれを攻略されると歯が立たなくなる。穴のない,真の実力をつけることが大切だということだわな。また,ちょっと珍しいのが恋愛描写だ。三四郎はアイドルに失恋して空手道場の娘とピュアな恋をし,最終回では婚約までやる。このアイドルへの憧れと失望なんかは梶原一騎自身にもあったらしく,色々考えさせられる。悲劇で物語を締める梶原一騎なので,「あっ,この婚約者は電車の事故とかで死ぬな…」とか思ったけど,別にそんなことはなかった。個人的に気に入ったのは三四郎の父親,勝大吉である。この父親は土方をしていて頑固なところもあるという,絵にかいたような昭和の親父だ。ケンカに負けて帰ってくると,「勝つまで家に入れない」と言って三四郎を追い出したりもする。だが,『巨人の星』の星一徹とは明確に違う。たとえば,三四郎のために貸衣装を用意してひとり応援団としてかけつけたりする(2巻67)。高校生ころから,父親は少しづつ厳しくなっていき「獅子は子を突き落とし,這い上がってきた子だけを育てる」という考え方になるものの,三四郎が活躍するとすごく嬉しそうな表情をしたりする。また,三四郎の方も高校中退後,ロッテの入団までの暇な帰還に自主トレーニングとして父といっしょに土方の仕事をしたりする(11巻53,54)。非常に温かい,を通り越して熱いシーンであって,僕はこのシーンが本当に好きである。魅力を言えば,星一徹に勝るとも劣らない。最後にちょっとした不満点。父親だとか憧れの金田正一みたいな上の世代は満足できたが,本作では同世代がかなり弱い。主人公には中学時代には赤沢,高校時代には団というキャッチャーと親友になるが,『巨人の星』の伴忠太と比べると一段落ちる。また,ライバルにしても織田信虎は『巨人の星』の花形満なんかに比べたら劣る。このへん、ちょい文献を当たってみた。漫画を担当した古城先生は、こう言っているそうな。「安定した仕事ではあったけど、正直言って愛着を感じることができない作品でした。明らかに『巨人の星』の焼き直しでしたからね。(斎藤貴男『梶原一騎伝−夕やけを見ていた男』252頁、文藝春秋社、2005年第1版)まじかー、という感じである。あと、打ち合わせが適当だとか色々あったみたい。一つの仮定として、『巨人の星』さえなければ、と思わなくもない。どのみち、梶原一騎の実力からすれば『巨人の星』がなければ、別の野球漫画で大ヒットを出していただろう。『巨人の星』によって梶原一騎はある意味で、これと違う展開をさせなければならないという制約を得た。もし、『おれとカネやん』を、梶原一騎が何の制約もなく野球漫画をかけていたら本作こそが不朽の名作になったいたかも、というのは考えすぎだろうか。おれとカネやん 16【電子書籍】[ 梶原一騎 ]
2019.05.23
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上杉謙信には女性説があるんだけど,それをもとにした創作はけっこうある気がする。そんな上杉謙信をかわいい女の子にしたほのぼの歴史4コマ漫画,『軍神ちゃんとよばないで』を最近読み返したので感想など書いていきたい。軍神ちゃんとよばないで 1巻【電子書籍】[ 柳原満月 ]イラスト通り,主人公の上杉謙信は引きこもり気質というか,ニートっぽいかわいい女の子になっている。ほのぼの4コマ漫画にふさわしく,ゆるい天然ボケのタイプである。なお,上杉謙信は作中では幼名の「虎千代」とか「お虎」なので,以下は虎千代でいく。こんなかわいい女の子だけど,虎千代は軍神の化身とまで言われているわけだ。これについては本人の実力というより,運とか誤解がある。たとえば,虎千代が「寒いから」と戦場で家臣たちに酒を振舞って休んでいたりするが,結果的には「あえて隙を作り,誘い込んだ上で迎え撃った」になる。また,単に「眠いから」と戦場で眠り込んだりすると,「さすが軍神。戦場で眠り込むとはなんという余裕だ」となる。こんな感じで,周囲の過大評価とそれに伴う読み違いもあって,虎千代は戦場でも勝ちまくっていくのだ。これがたとえばリアル路線の『キングダム』とか『センゴク』なんかでやると噴飯ものだろうが,ほのぼの4コマ漫画だから許されるわけだな。なお,僕が上杉謙信についてよく知らないためか,いちいち元ネタの深さに恐れ入ったりする。作中で虎千代がなんとなく詠んだ和歌を調べたら本当にその手の和歌があったりとか,虎千代が塩とか梅干しをツマミに酒を飲んでいたりするが,これは上杉謙信が実際にやっていたりすることだったりする。また,一騎当千の鬼小島こと小島弥太郎だとか,筋肉大好きの柿崎景家だとか,あんま知らなかった家臣たちも極めて魅力的に書かれている。このへんは,ネタを拾うためにWikipediaを見ながら読んでると色々と発見があって楽しい。ネタと言えば深すぎてずっと悩んでいたのが武田信玄の家臣にいる高坂弾正昌信である。(画像は3巻49頁。どう見ても女の子だが男だ)男の象徴のチョンマゲが2つで,なみの男の2倍男らしいといっているけど,どうみてもツインテールのかわいい女の子である。しかも,歌ったり,踊ったり,握手会やったりとアイドルみたいな活動をしている。そして,高坂弾正が女の子っぽい外見をしていることについて,作中で一切の説明がない。Wikipediaを見てても女装したエピソードなんかもなく,2年くらい悩んでいたんだけど最近になって,高坂弾正が信玄の男色の,つまりホモの相手をしていて,信玄から高坂弾正にあてたラブレターが残っていることに気が付いた。たぶん,そういうことなんだろう。このへんについては,作者の別作品,『クレオパトラな日々』みたいく解説コーナーが欲しいなと思う。クレオパトラな日々(1)【電子書籍】[ 柳原満月 ]なお,突っ込みもないわけではない。たとえば,物語が始まった時点で主人公は「上杉謙信虎千代」と名乗っているが,これは違う。上杉謙信は何度か改名どころか苗字まで変えているから,「長尾景虎」くらいが正しいのだろう。だいたい,仮名の前に諱が来るというも変な気がする。でも,話がややこしくなるし,そんなこと言ったら戦国無双とか戦国BASARAもそうだからね。改名したり苗字変えてもいちいち覚えてもらえるのは,木下藤吉郎からの豊臣秀吉とか超有名人にしか許されないわけだな。また,兄の晴景と虎千代は親子ほど年が違うはず…とか色々あるけど,ほのぼの4コマ漫画なんだ。わりと,話を成立させるために歴史の方を曲げているが,その辺は各自調べていくと楽しいかもしれない。現時点での最新刊は5巻。第三次川中島の戦いの途中まで。どこまでやるものか,期待をしたい。正直,主人公だとかメインキャラを信長にする歴史漫画にはそろそろ飽きてきているのだ。こういう漫画には増えて欲しいのだ。軍神ちゃんとよばないで 5巻【電子書籍】[ 柳原満月 ]
2019.05.19
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劇画王、梶原一騎は数々のヒットを出している裏で、短期に終わった作品や、過去作の焼き直しとしか言えんものも出してる。 今回読んだ『ケンカの聖書』も全5巻だし、正直言って『タイガーマスク』とか『カラテ地獄変牙』あたりと似たような展開が多かったりする。 ケンカの聖書(バイブル) 1【電子書籍】[ 梶原一騎 ] 『ケンカの聖書』はwikipedia情報だと1971年の発表。ちょうどこの年に『空手バカ一代』の連載も始まっている。なので、『空手バカ』と似てても焼き直しというよりは、試行錯誤の時代だったのかもしれない。 なお、この1971年の時点で梶原一騎は『巨人の星』、『あしたのジョー』、『タイガーマスク』といった大ヒット作はすでに出ていた。さらに『空手バカ』を出したことで極真空手との関連する作品が量産され、また梶原一騎には『愛と誠』だとか『プロレススーパースター列伝』なんかも後に控えているから、まだ上り坂の時期だな。 さて、内容なのだけど『ケンカの聖書』というタイトルに反して中身はプロレスものである。 主人公、吉良旭(きら・あきら)は幼いころ、原爆で両親を失ってしまう。成長した旭は単身アメリカに向かい、漠然とアメリカに対する復讐を考えていたのだ。本名をもじって二重の殺し屋、キラー・キラーを名乗る旭だが、彼はプロレスのチャンピオンであるプリンス・スターをアメリカの象徴と見て、プリンス・スター打倒を決意する。 (電子版1巻、27。主人公の自己紹介) 特徴的なのは、主人公である旭が全然練習をする描写がないところだ。 タイトルどおり、主人公の旭が使うのはあくまでケンカ殺法だ。特に空手をやるだとか、柔道をやるとかはしない。エゲツない目突き、金的、凶器攻撃なんかが必殺技になる。比較的にマシな技がアゴの関節を外すブラック・ジョーあたりになるのかな。 本人曰く、「ケンカはフィーリング」とのことである。 (電子版1巻184。ケンカはフィーリング) ただ、練習をしないと成長がない。ここでいう成長には肉体的なもの、精神的なものもあるだろう。梶原一騎のスポーツ根性漫画には大切なものだ。 成長のない旭は、描写を見ていても明らかにライバルのプリンス・スターに劣っているし、それどころかその前座的なレスラーよりも弱そうだ。あくまで、反則技で勝ち抜いている。 そして、ついに旭はプリンス・スターとの試合にまでこぎつけるが、決まり手は事前にリングに隠しておいた日本刀を使うという凶器攻撃だった。…さすがに、これはない。 プロレスという競技は、5秒以内なら反則も許されるというルールがあるし、セン抜きとかフォークくらいなら凶器攻撃として許される風潮もある。反則だってテクニックなのだ。だが、さすがに日本刀はない。 このあたり、本作より前に連載が始まった『タイガーマスク』なんかで描かれる「テクニックとしての反則」、「力、技、反則の三要素」みたいに反則を扱いきれてない気がする。 さて、日本刀という凶器攻撃によってプリンス・スターを倒した、旭だが、最後の敵は力王岩。つまり、力道山をモデルとしたプロレスラーである。 力王岩もまた、プロレスにとどまらず、ケンカの強い男だということで、旭は力王岩と戦うことになるのだ。 2人の戦いは、プロレスの試合から最終的にケンカになる。最終的に旭は力王岩とのケンカを最後に引退し、横浜の港で荷物の積み下ろしの仕事をするようになる。そして、力王岩が刺されて死んだという新聞記事を読み、感慨にふけって終わり。 ただ、ジョーや飛雄馬のように選手生命を絶たれたわけでもなく、五体満足のうちに引退できて、恋人もいるあたり、他の梶原漫画の主役たちと比べると格段に幸せかもしれない。 (電子版5巻、203。引退した旭) なんというか、消化不良だ。 練習をしないものだから主人公の成長がない。ケンカという着眼点は見事だし、梶原一騎のケンカ最強論は現代にも残っているが、そんなケンカ屋を制約の多いプロレスのリングに上げたのはどうかと思う。 タイガーもまた、初期は反則技で戦うものの、練習によって技を身につけて成長していった。『空手バカ一代』のケンカ十段、芦原秀幸はケンカに空手を加えさらに強くなった。そういう展開が欲しかったかな。 また、この『ケンカの聖書』は『空手バカ一代』の発表と同年のものだから、まだ梶原一騎が極真空手との繋がりを深める前の時期だ。そのため、空手の評価がさほど高くないというのも興味深い。 まとめると、『ケンカの聖書』は梶原一騎の中期頃の作品としてそれなりに価値はあると思う。ただ、面白さとしては『タイガーマスク』や『空手バカ一代』には明確に劣る。そんなところだろう。 追記 ツイッターの方で作品の発表順の誤りについて指摘をいただいたので若干訂正しました。申し訳ありませんでした。 ケンカの聖書(バイブル) 5【電子書籍】[ 梶原一騎 ]
2019.05.19
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上杉謙信をかわいい女の子にしたほのぼの4コマ漫画,『軍神ちゃんと呼ばないで』を執筆した奇才,柳原満月先生が今度はクレオパトラを主役とした4コマ漫画を描いたというので読んでみた。クレオパトラな日々(1)【電子書籍】[ 柳原満月 ]クレオパトラは表紙イラストみたいなかわいい女の子になっている。ちょっと天然入っているけど,けっこうしたたかな,計算高いところある。クレオパトラがカエサルに「大人のコミュニケーション」である「セッタイ」をしているはずなんだけど,図書館の視察はともかく,具体的なシーンは基本的に全カットである。ほのぼの4コマ漫画とはそういうものだ。また,狂言回しに登場するおつきの侍女,カルミオンとイラスが2人いるのだけど,これもけっこうかわいい。ただ,僕はかわいい女の子たちより,2巻から登場するユリウス・カエサルを推したい。このカエサル,この漫画では「ハゲを気にする女好きのオッサン」になってる。ベタではあるが,カエサル好きにはたまらない内容になっている。で,肝心の1巻ではクレオパトラが弟とともにエジプトの共同統治者になるところまで,2巻ではカエサルとの出会いからエジプト内乱の終了までが描かれている。戦場シーンやら陰謀シーンもあるのに,それをほのぼの4コマ漫画であるがゆえに,そこは色々と血の匂いがしないよう工夫をしている。特にエジプト内乱は妹であるアルシノエと弟であり夫でもあるマグス(プトレマイオス13世)と殺しあうわけなんだが,暗くせず,殺伐としている感じでもない。物足らないという人もいるだろうが,ほのぼの4コマ漫画なんだからそういうものなのだ。また,個人的な魅力としてはおまけコーナーである。ほのぼの4コマ漫画として,歴史ネタなりをやってても,肝心のネタが日本人向きではないため,たまに解説が欲しくなる。たとえば,クレオパトラとカエサルの出会いだけど,クレオパトラが絨毯にくるまってカエサルに会いに行ったとかいうアレなんかも史実なのか検証をしたりしている(2巻28頁)そうかと思えば,難しい話じゃないのもやってる。たとえば,エジプト王家は伝統的に近親婚をしまくっていて,兄妹だとか姉妹での結婚をあたりまえのようにやってる。クレオパトラも弟と結婚しているのだけど,「実際,姉弟でハレンチなことはしてたの?」とか解説をくれたりする(1巻60頁)。その他,狂言回しとしてメインで活躍するクレオパトラのおつきの侍女たちが,一応,歴史上の人物だったり,オカマっぽく描かれていた大臣が宦官だったりと,漫画を深く楽しめたり,漫画で表現できなかったりしたところが描かれていて非常に良い感じ。クレオパトラな日々【カラーページ増量版】(2)【電子書籍】[ 柳原満月 ]ところで,この『クレオパトラな日々』についてはジャゲ買いをしたわけでもなく,他人のレビューを読んで買ったわけでもなく,完全な「作者買い」である。正直,クレオパトラはあんま好きじゃないんだよね,と思いながら作者の名前を見て買う程度にはファンである。『軍神ちゃん』の方は,上杉謙信を怠惰でニート気質のあるかわいい女の子にしちゃうという,大胆を通り越してかなり無茶なアレンジというか創作を入れているものの,史実から外れないようにしていたり,ちょっとマイナーな武将も生き生きと描かれてたりして,Wikipediaと突き合わせながら読むと,「この元ネタをこうアレンジするのか…」と結構楽しめたのである。なお,『軍神ちゃん』の方はクレオパトラのように解説コーナーがないため,分からないネタがあればWikipediaを調べなければならないが,日本人にはなじみやすかろう。この手のマイナー漫画は買って応援しないとすぐ終わっちゃうから,買って応援せにゃらなん。軍神ちゃんとよばないで 1巻【電子書籍】[ 柳原満月 ]
2019.05.16
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BB戦士,『七人の超将軍』が復刻されたということもあって漫画版の『七人の超将軍』を買って読んだ。こんな採算のとれなさそうなニッチな漫画が復刻されるとは,たぶんコスト的な問題なのだろうけど,電子書籍ってすごいですね。新武者ガンダム 七人の超将軍1巻【電子書籍】[ 神田正宏 ]最近のゆとり世代は知らないと思うけど,昔は男子小学生をターゲットにする漫画月刊誌といえばコロコロのほかにボンボンというのがあってな…。ボンボンは「がんばれゴエモン」とか「OH!MYコンブ」とか「王ドロボウJING」とか面白い漫画が色々あったが,ガンダムとのタイアップをしててそこが特徴だったのだ。で,このBB戦士だが,毎年アニメ放映されたガンダムシリーズの作品を翌年あたりにSD化して売り出していたのだ。たとえば,『Vガンダム』の翌年には飛駆鳥(ビクトリー)を主人公とした『七人の超将軍』が,『Gガンダム』の翌年には號斗丸(ゴッドマル)を主役にした『超起動大将軍』といった感じだ。キャラの立ち位置や性格はもとになったガンダムのパイロットをもとにしているところが多く,新キャラの顔と名前を見れば敵なのか,味方なのか,どういう性格なのかがだいたい分かるようになってた。さて,内容なのだけど,主役の飛駆鳥が七人の超将軍とともに闇軍団という悪の組織と戦うのだ。この七人の超将軍たちはいずれも「過去の大将軍の生まれ変わりと言われている」という設定。生まれ変わりを自称しなかったりするあたり,日本人特有の奥ゆかしさがある。ちなみに,「超将軍とは何だ?」というのはいまいち説明がないが,何かの官職である様子もなく勝手に名乗れるみたいだし,実際に国を統治している大将軍より格下であるようだ。ストーリー上の問題点だけど,主役チームは七人の超将軍に,主役の飛駆鳥。さらに飛駆鳥の弟である武威丸(ブイマル)の9人である。数が多すぎるのだ。超将軍たちより飛駆鳥や武威丸の方が活躍するため,ほとんど活躍していない超将軍もいる。実際に活躍しているのはリーダー格の荒鬼頑駄無と,闇軍団から光に目覚めた鉄斗羅頑駄無(テトラガンダム)くらいだろう。せめて,飛駆鳥と武威丸も超将軍の枠に入れて数を減らしても…と思わないでもない。そうはいっても,プラモを売るためだ,数は多い方がいいのかな。ちなみに,小学生時代の僕は七人の超将軍のうち,弟と協力して荒鬼,獣王,千力,爆流,鉄斗羅の5体がそろえていた。説明書にも「獣王頑駄無は初代大将軍の生まれ変わりと噂されている」とか簡単な設定が書かれていて,色々と想像したりして楽しんでいたものだ。ところで,2巻の巻末の宣伝コーナーを見ると,次は『超起動大将軍』も電子化されて復刻されるとある。期待して検索してみたが,いまだに復刻はされていない。これは,頓挫したのかな…。七人の超将軍では目立たなかった爆流頑駄無が號斗丸の師匠キャラになっていたりとか,色々あるのよ。新武者ガンダム 七人の超将軍2巻【電子書籍】[ 神田正宏 ]
2019.05.11
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プーチン大統領のそっくりさん,プルチノフが異世界転生してモンスターに騎乗しまくる『ライドンキング』の2巻,買って読んだ。(「1巻感想」「3巻感想」)。ライドンキング2巻【電子書籍】[ 馬場康誌 ]2巻での大きな出来事としては,プルチノフが廃墟と化した村の村長への就任とダンジョン探検だろう。順に見ていく。ケンタウロスの村に向かう途中,プルチノフはある村に立ち寄るのだ。年寄りと子どもしかいない村なので,やむなくプルチノフはやむなく子どもたちを1週間ほど鍛えたり,防塁工事をしたりする。その結果,プルチノフはまわりから村長と呼ばれるようになる。(2巻44頁より。プルチノフの信念)プルチノフはのちにこの決断を後悔してはいるが,少年兵を抱くプルチノフの眼が優しくてあこがれる。(184頁。その目は優しかった。)よく見ると,プルチノフは巨大熊は自分で叩きのめしているが,猪くらいならあえて自分で狩らず,指示だけやって狩りは子どもたちにやらせていたりする。こういうところ,仕事をするうえで大事だよ。異世界で人望を得て村長と呼ばれるようになったプルチノフだが,きっと現実世界でもこうやって大統領になったのだろう。1巻感想で,「元ネタのゴロセウムでは悪の独裁者の魅力があった。でも,今回は主人公という制約があって悪行はできず,魅力が減るかも」と書いちゃったけど,あれは間違いだった。プルチノフの指導者の魅力,リーダーとしての魅力が描かれていて大満足。そしてお楽しみのダンジョンだ。大暴れするプルチノフを見てて気持ちいのは間違いない。だが,感想も長くなりすぎるので,僕の心が一番震えた場面にしぼる。巨大なゾンビドラゴンを倒し,ダンジョン攻略を果たしたプルチノフの前に,ライオンキングみたいな獅子面の獣王が登場するのだ。そんな獣王はプルチノフに「加護」をくれるというのだ。無双の膂力でも,魔法力でも不老の体でも,なんでもくれるという。僕だったら,思わず飛びつくだろう。これに対しプルチノフはこう答える。(157頁。加護を拒否するプルチノフ。)さらにプルチノフは,こうも答える。「不老の体もいらない。この身だけ永らえようと思わない。金貨のわく壺もいらいない。金貨の価値がゴミになるのを何度も見てきた」そのうえでプルチノフは,「亡き妻の記憶がおぼろげにならないようにしてくれ」と願う。(159頁。妻の記憶を保持するのを願うプルチノフ。)なんともクールではないか。効果のほどは,プルチノフが目を閉じれば写真みたいにくっきりと妻の顔を思い浮かべられるようになった,という感じらしい。なんともささやかな話だが,これの方がプルチノフにとって価値があるのだ。うまく説明できないけど,妻を生き返られてくれ,と願わないあたり,プルチノフの良さがあるのかもしれない。なんだかんだ,設定解説を見るとプルチノフは工作員をやってて,過去には暗殺もしてきたようなことが書かれている。大統領をやってて,たくさんの命を奪って来ているプルチノフの思想的なものがあるのかもしれない。異世界転生といえばチートじみた能力である。ただ,それは自分で努力して身に着けたものであることは少なくて,神だとか何かから与えられたものであることが多いように思う。そんな中,こういう「与えられる力」を拒否したところ,これまで主人公たちが努力して強くなる格闘漫画を描いてきた馬場先生の思想を感じる。あと,2巻末の流れから,3巻でプルチノフにくっついているかわいい女の子の過去が語られるっぽい。さんざん興味ないようなことを書いてきたが,普通にかわいい子だ。出演する漫画が『ライドンキング』でさえなければ,エース級の活躍ができたろうに。・「1巻感想」・「3巻感想」
2019.05.09
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学生に読み込んだ、『コミックマスターJ』が電子で復活した。今の時点で6巻まで読める。 とりあえず感想と、当時の思い出など書いていく。 コミックマスターJ1巻【電子書籍】[ 田畑由秋 ] まず、『コミックマスターJ』とは何かという話だ。 主人公であるコミックマスターJは凄腕の漫画アシスタントである。一回500万円という破格の報酬を取り、締め切りに間に合わなさそうな作家を助けるのだ。 白づくめで、夏でもコートを着てて、そのコートの下には漫画を描くための道具がしまいこまれている。 設定を見ていれば分かるが、彼は手塚治虫の『ブラックジャック』のオマージュ的なキャラである。なんというか、Jも独特の倫理観を持ってて、そこが面白いところである。 個人的にJの最大の魅力は漫画にかける情熱の異常なまでの熱さだ。 何度か、似たような描写があるけど、Jは「面白い漫画が描けるのなら、ほかの何を犠牲にしても構わないし、そうするべきだ。場合によっては、ある程度倫理や法律に反しても構わない」と思っているような言動をする。 たとえば、6巻から少し画像を引用してみる。 (電子版、『コミックマスターJ』149〜150より。) 場面は、妹が死んでしまったことから精神を病んでしまった姉が、それ故に天才的な漫画を描けるようになったところ。治療して精神が安定すれば、今のような漫画が描けなくなるかもしれない、という状況で非情にもJは「犠牲になってもらうしかあるまい! 人生を捨て命を捨てずして傑作が生まれるものか!」と言い放つのだ。 これはもう、いかんでしょ…。 わりとヤバイ場面を選んだけど、この場面に以外にもこれと似たシーンはいくらでもある。Jはまさに漫画の鬼とでもいうべきか、この危うさ、ヤバさがJの魅力なんだけどね。 僕は完結まで読んではいるが、読んでいるとあのころを思い出す。ちょうど、大学にいたころ、授業で「わいせつと表現の自由」をやつたころJでも同じような話をしてたのが本当に面白かった。 「わいせつな漫画を描くと逮捕される、だが俺はギリギリまで描く!」みたいな漫画家が登場する回だ。 このあとの続きも楽しみ。 コミックマスターJ6巻【電子書籍】[ 田畑由秋 ]
2019.05.05
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時代を駆ける沖田総司を描く『衛府の七忍』の7巻を買って来て読んだ。感想書いていく。衛府の七忍 7【電子書籍】[ 山口貴由 ]まずはおさらい。主人公を順次変えながら,徳川幕府初期を描くこの漫画なのだけど,6巻から沖田総司編が始まった。病気のため新選組を脱退し,療養していた沖田総司だけど,異世界転生のノリで江戸時代初期にタイムスリップ。数々の斬りあいを生き延びてきた沖田の剣は,太平の世ゆえに道場剣法しか知らない若い武士をばったばったと倒していくのだ。さて,7巻では冒頭から,沖田総司と柳生宗矩の果し合いが描かれる。道場剣法しか知らないような青二才と違って柳生宗矩は戦場でも活躍した実戦派である。総司もずいぶんを苦戦を強いられる。(画像は14頁より。活人剣について語る宗矩。恐い。)宗矩の「活人剣とは手足をつめて首と胴を生かすもの」という説なんだけど,こう,俺が『るろうに剣心』で読んだ活人剣とはずいぶん違う考え方ですね…。この辺は戦場の血なまぐささが感じられる。つーか,沖田総司は池田屋事件とかその程度しかやってないはずなので,リアルな戦国時代を生き延びた柳生宗矩から見れば沖田の方がまだ道場剣法なのかもしれない。そんな沖田総司対柳生宗矩という時代を超えた対決は,沖田が指を,柳生が首の皮一枚を切られ,双方軽い流血程度で痛み分けという形で終了。沖田の評価的には自分の負けらしいけど,あのままやってればと興味は尽きない。それから沖田は転がり込んだ剣術道場で師範代として門下生を教えながら,わりと楽しく生活をすることになる。道場主の娘,一果(いちか)といい感じになってて,ゆくゆくは娘ごと道場をもらえそうな展開だ。(画像は102頁より。かわいい。)ところが,そうはいかない。発端は,「江戸を超防疫防犯都市にするため」,河原にいた遊女たちがまとめて幕府に殺されてしまったことだ。まるで,東京オリンピックのためにコンビニからはエロ本が撤去され,風俗なんかも廃業に追い込まれているそうだけど,江戸自体はもっとえげつない。その復讐のためか,幕府に敵対する鬼によって,能の会場で旗本乙女が皆殺しにされてしまう。この旗本娘には総司といい感じになっていた一果もいたのだ。なので,総司は幕府方に味方し,柳生宗矩とともに鬼退治に向かうことになる。(187頁。鬼の血を舐める沖田。凛々しい。)鬼は刀で殺せるのか、不安を抱えながら血を舐めてみて、「なんだ、これなら殺せる」と判断しちゃう沖田。武闘派ですね…。色々と考えるところはあるが,今後の展開について2点ほど。1つは,一果は本当に死んじゃったのかな,ということだ。能の会場に向かう際,一果は何度も「私だけ,お目見え以下のいか娘」と言ってた。繰り返し,旗本というか武士階級による理不尽な身分差別が描かれてきたが,一果だけは身分が低い。なんとか,命ばかりは助かってないかな…。一果のこと,俺は結構好きなんだよ。2つに,沖田の立ち位置がこれまでの主人公たちとずいぶん違うことだ。これまでの怨身忍者たちはまつろわぬ民だったりで,基本的には反権力というか,徳川家康には敵対する立場だし,家康はバケモノのように描かれていた。ところが,沖田は徳川家康のことを「家康公」と言ってて,沖田の脳内の家康はずいぶんイケメンに,そして理想的な人物に描かれている。おそらく,そろそろ各話の主人公たちが集結し,徳川家康と倒すことになるはずだ。史実として家康は元和2年に死ぬはずであるが,たとえば零鬼編が元和元年であるから,物語的には主人公たち怨身忍者が家康を討つ,というのでもいいはずなのだ。あと,最後に1つ。そういえば,沖田って病気はどうなったんだ。6巻のころは病弱アピールしてたのに,7巻になると思いだしたようなタイミングで咳はするが普通に活動してるんだけど…。【新品】【本】衛府の七忍 7 山口貴由/著
2019.05.03
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は終わったものの,映画になったりソシャゲが稼働していたりとまだまだ人気が衰えないドラゴンボール超の新刊買ってきた。なお,8巻感想は過去日記でどうぞ(2019年1月21日)。ドラゴンボール超 9【電子書籍】[ とよたろう ]目次を引用すると以下のとおり。前半で力の大会編が終わり,後半で銀河パトロール編が始まる形になる。41話 身勝手の極意42話 決着と結末43話 銀河パトロール入隊44話 脱獄囚モロまずは力の大会編。前巻で悟空が身勝手の極意・兆になったのだが,悟空が身勝手の極意を完成させる。アニメだと兆の方は全身を淡く青色のオーラがおおっていていたりするのだが,白黒の漫画ではいまいちそれがよく分からない感じ(13頁より)。ただ,アニメにはなかったセリフ,「オラの心はパオズ山の清流みたいに穏やかだ」というシーンはグッとくる。これまでの超サイヤ人のような,怒りの戦士的なものと対極にある感じが出ている。そして完成した身勝手の極意(20頁より)。こちらも白黒の漫画という表現の限界があって,超サイヤ人とどこが違うのかというと非常にわかりにくい。髪が逆立っているかで見分けなければならない。決着は,ほぼアニメどおり。限界から悟空の身勝手の極意が解除されたが,フリーザとのコンビプレイでジレンを場外に叩き落す形。そして,17号が隠れて武舞台にのこっていたので,第7宇宙が優勝したのだ。「ほぼ」と言ったが,細部は色々違っていて,ジレンの師匠の関係が掘り下げられていたり,身勝手の極意が解除された状態の悟空がベジータが共闘するシーンがかなり充実している(51頁)。これについて,ウィスとの修行が連携攻撃の練習になっていたとか,ベジータの活躍と悟空とのツーショットが見られていて非常に満足した。アニメと合わせる関係からか,ベジータがリングアウトで敗退していたが,どうせなら漫画は独自色を出して悟空とベジータのコンビで勝たせても良かったのではないか。いや,そうすると17号だけが武舞台にのこって優勝という流れが壊れるからできないか。ビルスが来てからのドラゴンボール超は,「力こそすべて」,「必ず主人公の実力が敵を上回って勝つ」というZ時代からの流れを変えてきていると思う。さて,銀河パトロール編に入る前に,間に入っていたブロリー編である。これはなんと,1ページで,「ブロリーと戦った。その話は別の機会にする」だけで終わった。大人の事情だな。単行本のおまけページでゴジータが,「省略させてもらうぞ。じゃあなブロリー」(100頁)という形でフォローはしているけどね。仕方ないね。さて,最後の銀河パトロール編。ここはアニメにもない,完全な新作になる。1000万年ほどまえに銀河を荒らしまわった「星喰いのモロ」という敵が復活したのだ。このモロ,山羊に似た容姿で魔力も衰え,いまは老人の姿だが,今後どんどん強くなるみたい。老いた姿で登場した敵キャラというあたり,ピッコロ大魔王を思わせるな。なんというか,強さのインフレで話を作ってきたドラゴンボールだが,限界に近いのかもしれない。もう,悟空達は人間の想像力できる限りの強さを身に着けてしまった。今の悟空達よりも強いキャラを出しても,説得力のある描写をするのが相当大変だろう。モロはどんな強さを見せてくれるのか,次を待ちたい。
2019.04.21
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『コロコロ創刊伝説』の4巻買った。今回のメインはビックリマンとカービィのひかわ先生だ。コロコロ創刊伝説(4)【電子書籍】[ のむらしんぼ ]目次はこんな感じ。第21話 「星のカービィ デデデでプププなものがたり」誕生伝説第22話 ピカリン引退伝説第23話 「ビックリマン」遭遇伝説第24話 「ビックリマン」誕生伝説第25話 「ビックリマン大ブーム」伝説第26話 漫画家・玉井たけし伝説第27話 3代目編集長誕生伝説長くなるので,2点。ビックリマンとカービィのひかわ博一先生についてだけ話すことにする。まず,3話を使っているビックリマンがこの巻の最大の見せ場だろう。ビックリマンシリーズは1977年に発売されていたそうなのだけど,実は1982年の時点では,いまひとつヒットにつながらなかったという。これをロッテの企画部のサラリーマン,丹後四郎がデザイナーさんと協力してもりあげ,またコロコロコミックがコラボすることでヒット商品に押し上げていくのだ。たぶん,子どものころの僕が読んでも面白くなかっただろうが,大人になって仕事をする僕が読むと本当に面白い。自分の企画が認められ,大きくなっていくのは,仕事をするようになった大人ならば誰しもが夢見る話だろう。「悟空が修行して強くなる」というのもいいけど,大人のサクセスストーリーだ。だが,個人的には21~22話で2話を使って語られた,「ぴかりん」こと星のカービィのひかわ博一先生の話の方が心に突き刺さった。もともと,ひかわ先生はこの『コロコロ創刊伝説』の作者,野村先生のアシスタントだったという。漫画家の卵だった時代,売れない漫画家だった時代,そしてカービィのヒットで絶頂を迎えるひかわ先生のことを,師匠の野村先生の眼から描いている。感じ入ったのが,絶頂期のひかわ先生に対し,野村先生が嫉妬するシーン。当時の野村先生は『ハゲ丸』が終わっていて,着実に売れない漫画家となっていた時代だ。そんな野村先生が,カービィの漫画でヒットして,激しく嫉妬するのだ(画像は4巻29~30頁より)。実際はこんなこんなもんではなく,もっと思うところがあったろう。生きていれば,人の成功を心から祝福できないという精神状態になることがあるだろう。たとえば,自分が司法試験に落ちたのに,いっしょに勉強していたあいつが先に合格したときとかだ。そして,そんな自分の醜さに自己嫌悪するということもあるだろう。デジカメがうらやましいとか,そういう問題ではないのだ。さらに,野村先生は金に困り,弟子だったひかわ先生に金を借りに行ったりもする。漫画では喫茶店のトイレで号泣している様子が描かれている。野村先生の絵柄はコミカルだけど,これも実際こんなもんじゃなかったろうだな,と思うのだ。泣く気持ちも本当に分かるよ。そして,そんなひかわ先生も下り坂がやってくる。このあたりは,野村先生も自分の眼で見ていないのか,はばかりがあるのか,ひどく簡単な描写になっている。あえてであろうか,野村先生はこのころのひかわ先生の顔を描いていない(画像は4巻37頁より)。表現力の限界を超えていたのか,それとも描きたくなかったのだろうか。また,ネット上で噂になっていた,「ひかわ先生がほぼ絵を描いていなかった」という話が事実であるように描かれていて,ここもショックである。そうはいっても,いまのひかわ先生は回復されていて,また漫画を描きたいと考えているよう。回復して何より,というか回復しているからこそ,こうして漫画にできるわけなんだろうけれど。きっと,漫画家の世界でこういう状態になっているひかわ先生だけではないのだろう。いや,漫画家だけにとどまわず,そこらのサラリーマンだって弁護士だって,なにかの拍子で仕事が大成功することがあるだろうし,逆に前と同じ仕事ができなくなるということはありえる。『コロコロ創刊伝説』は,上り坂の,勢いがあったころのコロコロコミックを描くことを目的にしているのだろうけど,野村先生もそうだけど,落ちてから這い上がった漫画家の話というのも心に響くものだ。僕だって,いつ何かの拍子で仕事ができなくなるか分からないから。
2019.04.16
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漫☆画太郎の『星の☆王子さま』が4巻まで出たので、この機に感想を書いてく。内容は、もちろん、サン=テグジュペリ原作の『星の王子さま』なんだけど、画太郎色で染め上げられていて、ずいぶんと酷いことになってる。星の王子さま 4【電子書籍】[ 漫☆画太郎 ]さて、この『星の☆王子さま』なんだけど、原作どおり、砂漠に墜落した飛行機パイロットと謎の王子さまの物語だ。画太郎版では、パイロットの名前はパヤオになっていて、絵に描いたものを現実化する能力を持ってる。王子さまは、とにかく暴力的なんだけど、手で触れたものを治療したり、死亡から3時間以内の者なら蘇生する力を持ってたりする。物語は、ババアのせいで危機に瀕している王子の星を救うため、パヤオたちが宇宙を旅するという内容になってる。原作を最低限はなぞってはいるが、かなり酷い物語に改変されてる。サン=テグジュペリはもう亡くなって久しく、著作権がないからできる技だな。そして、パヤオたちは宇宙をめぐり、原作でも出会うキャラを大胆にアレンジした地質学者やビジネスマンを仲間に加えて旅をする。だが、三巻で不条理な打ち切りになってしまうのだ。正直、画太郎漫画が打ち切られるのは自然の摂理なんだから驚きもしないが、画太郎先生はここでクラウドファンディグに出た。これと似た動きは、『ミトコンペレストロイカ』でもやられてて、「売り上げがないと打ち切りだ! 買えバカヤロー!」みたいなことを言ってたが、それでも打ち切られたので期待はしてなかった。ところが、『星の☆王子さま』4巻冒頭でなんと934万円が集まったことが明かされ、連載が続けられることになったという…。うーん、こんな展開あるんですね。ミトコンペレストロイカ 5巻【電子書籍】[ まん○画太郎 ]ただ、クラウドファンディグの際、パトロンを漫画に登場させることが出資の条件になってたため、4巻の半分くらいはクラウドファンディグ返礼漫画になってる。これは…正直微妙だな。おれは『星の☆王子さま』の続きが読みたいんだよ。例えるならば、『地獄甲子園』を読みたくてコミックス買ったら、半分以上が外伝の『3年B組珍八先生』とか『ラーメンバカ一代』だったときみたいな気持ち。とりあえず、完結はして欲しいが…。ところで、漫☆画太郎といえば、汚い絵、コピペ芸、不条理なストーリーと理不尽な打ち切りといった特徴を持ってるんだが、最近は原作モノを描くようになってる。転機として考えられるのが、『ブスの瞳に恋してる』だろう。ある程度原作をなぞりながら、まさに画太郎としかいえない不条理なストーリー展開を見せた。それから、『罪と罰』もそうだ。もしかして、画太郎の自由すぎる発想力をセーブするためには、程度原作というか、しばりは必要なのかもしれない。『珍遊記』とか『地獄甲子園』なんかはストーリーが迷走し、完全に収集がつかなくなっていたが、原作があれば最低限のストーリーは保証されるわけだし。【中古】 ブスの瞳に恋してる(1) ヤングチャンピオンC/漫画太郎(著者) 【中古】afb思えばデビュー作の『珍遊記』も元ネタは西遊記なんだ。でも,たしか画太郎先生は西遊記を読んでなくて担当に叱られたこともあるらしく、『珍遊記』は猪八戒的なキャラを仲間にする前に独自の世界に入ってしまい、迷走してしまった。最近の画太郎先生は原作があれば最低限は原作をなぞるため、『星の☆王子さま』も、不条理なストーリーの中でありつつも、サン=テグジュペリの原作に従い、地に足のついた感じになってはいる。ストーリーがどこか飛んで行ったり、「これまでの話はなかったことにしてください!」などと言った不条理を通り越して外道な展開はとりあえずなくなる。そういう意味で、漫☆画太郎先生にはここ数年、原作モノで新しい波が来ていると思うのだ。今後の画太郎先生の作品には期待したい。もうベテランの域だと思うけど、まだまだ面白い漫画はいくらでも描けると思うんだよ。
2019.04.15
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以前(2019年1月22の日記)、感想を書いた『終末のワルキューレ』、3巻が出たので読んだ。 僕は神話も歴史も好きなガチ勢寄りの人間なので、この手のジャンルには色々とうるさいので、やや辛口にはなる。 終末のワルキューレ 3巻【電子書籍】[ 梅村真也 ] 前回までのおさらいだけど、神と人間が13対13で試合をすることになったのだ。 第1試合は呂布対雷神トール。呂布の設定が盛りまくられて、光栄のゲームみたいな感じになってたが、雷神トールに負けてしまった。 続く第2試合、アダム対ゼウス。アダムは神のコピーだから超強いという、謎の理論でアダムが優勢なところで2巻が終わったのだ。 そして、3巻ではほぼアダム対ゼウスの試合が繰り広げられる。戦い方としては拳での殴り合いである。 キャラの掘り下げは試合中にやる方針らしく、アダムが善悪の実を食べた経緯だとか、全人類の父親であるアダムの人類愛なんかは試合中に語られる。 アダムの父性愛はともかく、善悪の実を食べた話は、一般的な聖書のように、誘惑に負けたイヴが先に食べて、そのイヴに勧められてアダムと食べた、という形にはなってない。悪魔が美女であるイヴを誘惑するも、イヴに拒絶されたため、悪魔がイヴを善悪の実を食べたと陥れたのだ。法廷で裁かれるイヴだが、アダムも神々を嘲笑するためか、法廷で善悪の実を食べてるという感じになってた。思考過程がいまいち分からんような気もする。 以前の呂布でもそうだったけど、なんか人間側の代表選手を過度に英雄視してませんかね…? 最終的に、拳での殴り合いの結果、アダムはゼウスをかなり追い詰めるところまで行った。ゼウスは全身の筋肉が崩壊寸前になり、アダムはコピー技を使うために目の方が限界近くなった。勝負は紙一重で、偶然に流血がアダムの目に入ったため、そこで一気に不利になったような感じで、アダムが敗北してしまった。 これで、神側は2連勝ということになる。 神話好き勢としては、ゼウスさんは雷霆を投げればアダムを瞬殺できたんじゃないのかとか、そこまでしなくてもディオニュソスの母親を焼き殺したときみたいに後光だけで人を殺せるでしょ、と思わないでもない。 だいたい、ゼウスは神の王だったクロノスに勝って神の王になり、ティターン神族との戦いにも勝ち、怪物テュポーンにもタイマンで勝ってるわけだ。特に戦った逸話のないアダムに遅れを取るとは思えないのだ。 そして、表紙を飾りながら終盤になってやっと出てくるのが第3試合のポセイドンと佐々木小次郎だ。 当然の疑問として、「なぜ、武蔵でなくて負けた方の小次郎なの?」というのがある。しかも、人間サイドは全盛期で試合に出られるはずなのに小次郎は中年というより老人の姿。小次郎の口ぶりだと、死後も修行をしていたので、生前ではなくて今が全盛期なのだとか。たぶん、試合中に掘り下げるのだろう。 ちなみに、3巻では試合が始まる直前までしか話が進まないのだが、これまでの何もない試合場と異なり、試合場が水辺のフィールド的な感じになってる。 ポセイドンは海の神だ。水辺の戦いは得意だろう。なぜ、ここまでポセイドンに有利な試合場にするのだ…? しかも、佐々木小次郎は巌流島の海岸で武蔵に負けてるわけで、水辺は不利ではないのか。何故に、ここまで小次郎に不利な試合場に…。 総評なのだが、どうしても試合をしながらキャラの掘り下げをするため、あんまキャラに思い入れが湧きにくい。しかも、掘り下げられる話が神話や伝説とずいぶんと違っていたりする。 せめてゼウスにはニコラ・テスラをぶつけて発電なり、科学技術で勝負させればと思う。いや、本当にこの漫画、タイマンの武術じゃなくてほかの芸術だとかスポーツで優劣を争えばいいのではないかと思うのだ。あと11試合やるとして、どうなるのかな。
2019.04.15
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『魔法少女特殊戦あすか』の10巻を読んだので感想を書いていく。 ところで、この『魔法少女特殊戦あすか』、3月までアニメでやってたんですね。僕は30分も集中力がなさすぎてほとんどテレビを見てないんだけど、どこまで話をやったのか気にはなる。 魔法少女特殊戦あすか 10巻【電子書籍】[ 深見真 ] さて、10巻の感想に入る前におさらい。この作品の世界観なんかは過去の日記(2019年2月3日の日記)で書いたから、9巻から始まったタマラ救出編を見ていく。 あすかたちの旧友、最後のマジカルファイブのタマラなんだけど、9巻では洗脳マシーンを使われ、そのためにロシア軍に所属してたことが発覚した。それじゃ、助けに行こうと魔術傭兵ナーズィニーがロシアのマフィアに潜入したのだ。だいたい、この辺が9巻の大雑把なあらすじ。 で、この10巻なんだけど、タマラの洗脳と過去が語られる。 メインはタマラ(表紙右奥)であって、ミア(表紙中央)とペイペイ(表紙左奥)は活躍しない。 ここで、僕が感じ入ったのが、内通者のおじさんだ。 このおじさん、3年前の大戦でタマラと戦ったおじさんなのだ。あすかに対する飯塚さんみたいもんだね。 このおじさんが、「ロシア軍がタマラを道具扱いするのは見てられない。あすかたちなら、きっと助けてくれる…」とこっそり協力してくれるのだ。 この世界で魔法少女は兵器にも匹敵する。特に最強の5人、マジカルファイブのタマラとなれば、核兵器に近いほどの戦略的価値があるだろう。それを知ってながら、それでもロシアを裏切るおじさんの心意気を考えると胸が熱くなる。また、タマラにも、あすかたちマジカルファイブ以外にもちゃんと仲間がいるんだな、と思えた。 そうは言っても、この漫画は女の子中心なので、おじさんは深くは描写されないんだけどね。 それからタマラの過去なんかも語られる。洗脳マシーンで幻として出てくるお姉さんなんだけど、このお姉さん、娼婦をやってまでタマラを育ててくれた人だと明かされるのだ。 これは結構辛い。本当にこの漫画の世界はハードでダークだな、と思い知らされる。 大戦のためPTSDの疑いもあるあすか、いじめによる心の傷と闇を抱えるくるみと、本当にこの作品の魔法少女のメンタルはボロボロだよ。 終盤、色々あってロシア軍から洗脳マシーンごとマフィアに誘拐されたタマラなんだけど、ここであすかたちと敵対するよう洗脳されてしまうのだ。 ナズィーニーや、ちさとたちを撃破し、強さを見せつけるタマラと、ついに始まったあすかとタマラの戦闘が繰り広げられるところで10巻はおしまい。バトル描写にはかなり力が入ってて、寝技や関節技の攻防になると、素人の僕には何をやってるかよく分からんが、丁寧に描かれていることは理解できた。 10巻の総評として、タマラの掘り下げは十分だったけど、主役であるあすかの出番がほぼなかったのが残念。終盤で仲間たちがタマラにやられたところ、颯爽と登場するのはドラゴンボールの悟空のようだ。だが、あすかが好きでこの漫画を読んでるんだという、僕みたいな人間には少々物足りない。 あと、タマラ救出編の序盤から中盤で事実上の主役というかメインキャラだったナズィーニーの扱いについて、語りたいことはあるが長くなったのでカット。いいシーンは非常に多いんだけど、この感想をタマラ中心に書きたかったから涙をのんで割愛。活躍してる期間はながいものの、実力不足から終盤で悟空に手柄を取られるサイヤ人編とナメック星編のクリリンみたいな立ち位置かな。たぶん、母親の身柄がどうのと伏線を貼られてたから、また主役回があるだろう。 今後の話だけど、次の巻あたりでタマラ編は終わりだろう。あすかが勝って、洗脳も解いてもらわないと色々困る。 問題はその後だ。これであすかを含めたマジカルファイブは全員、仲間になったというか、敵対関係ではなくなる。 そうすると、敵対キャラをどうしようかとなる。ここらで、前回大戦で死んだ6人の魔法少女が復活して敵になるとかどうかな。裏設定で終わるのも悲しいし。 もっとも、そんなことになるとあすかのメンタルが本当に死にそうなんだけど。
2019.04.14
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『空手小公子小日向海流』なんかでヒットを飛ばした馬場康誌先生の『ライドンキング』を読んだ。流行りの異世界転生ものではあるが,これがかなり面白かったので,感想など書いていく(→2巻感想は2019年5月9日の日記)。ライドンキング1巻【電子書籍】[ 馬場康誌 ]主人公はブルジア共和国の大統領アレクサンドル・プルチノフ。表紙でグリフォンに騎乗しているオッサンである。ニュースを見ている方なら分かるはずだが,ロシアのプーチン首相をモデルにしているわけだ。このプルチノフはちょっと変わった性癖を持っていて「乗りこなす」という行為が大好きなのだ。またがり,操ったときの征服感と愛おしさがたまらないらしく,バイクや戦車,戦闘機にとどまらず,国家でさえ乗りこなしてて,冒頭から生きた虎を車代わりに通勤してたりする。また,腕っぷりも超強く,生身でトラックを背負い投げしていたしりしてる超人である。のちにプルチノフは異世界転生するわけだが,ここまで現実世界である。バカかと,アホかと。ちょっと脱線するが,馬場先生の過去作,『ゴロセウム』にもプーチンに似たキャラが登場している。このときはウラジスノフ・プーチノフという名前だったけど,やっぱり猛獣に騎乗することが大好きな物語のラスボス的なキャラだった。前作『ゴロセウム』1巻の表紙を見てわかる通り,初期は綺麗なねーちゃんが主役のバトル漫画だったはずなのだが,明らかに作者は敵方のプーチノフをを気に入っていたようで,巻末のおまけ漫画なんかで異世界転生して冒険したりとかやりたい放題だった。ある意味で,この『ライドンキング』は『ゴロセウム』の続編というか,スピンオフともいえるな。ゴロセウム1巻【電子書籍】[ 馬場康誌 ]物語としては,現実世界であらかた騎乗しまくってしったプルチノフが,まだ見ぬファンタジー世界の猛獣に騎乗してくという形になる。もともと,現実世界でもトラックを背負いなげしてたプルチノフだからけど,異世界ワイバーンを蹴り飛ばしたり,ゴブリンを素手で撲殺したりしてる。1巻ではワイバーンやホッチ(ダチョウ型の巨大鳥。この世界の馬みたいなもの)に乗り,いまはケンタウロスに乗るため,ケンタウロスの集落を目指しているところまで。もともと,前作の『ゴロセウム』のころは敵だったので善悪を超越してのやりたい放題だったが,今回は主役だということでは正義に反する行為ができなくなったのはちょっと魅力を損ねるかもしれない。たとえば,「魔狼に騎乗したい」と思ったりしつつも「隷属の首輪」についてはどうも使う気がなさそうだし。個人的に,1巻で一番笑ったのが,蒙古覇極道で突っ込んでくるオークに返し技でパロスペシャルを決めているところ。僕としては非常に面白かったのだけど,プルチノフ的には,「人型の生き物だと騎乗の楽しさはあんまない」そうである。(『ライドンキング』1巻162ページより。オークにパロスペシャルを決めるプルチノフ)また,色々と可愛い人間やエルフの女の子なんかも出てくるが,プルチノフのことを書くだけでかなりの分量にもなるからカット。別に,この漫画は可愛い女の子を見るための漫画じゃないから。なんというか,ちょっと昔の異世界転生ものは,現実世界でパッとしない人間が転生先でチート能力を得るというのが主流だったようだが,最近は現実世界でも優れた能力を持っていた者が転生するというジャンルも出てきたようだ。異世界転生も徐々に進化しているのかもしれない。追記:2巻感想を書きました(2019年5月9日)
2019.03.31
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最近,土山しげるの漫画ばかり読んでいるので,とりあえず『どぶ』の感想を書いていく。全4巻なのでわりとさっくり読める。土山しげるは,『荒野のグルメ』とか『極道めし』のようなほのぼの食事漫画ばかりではなく,こういうアングラ漫画も描いていたということだ。どぶ 1【電子書籍】『どぶ』のあらすじは,だいたいこうだ。主人公は42歳。平凡なサラリーマンだったが,部下にハメられ,風俗店に出入りしているところを写真に撮られてしまう。そして,その写真が会社に報告されたことで理不尽にもリストラされ,妻子も失ってしまう。主人公はやむなく風俗店でアルバイトをするのだが,もともと営業マンとして働いていた経験などをいかして才能を発揮していく,という流れ。弁護士的な発想からすれば,たかがピンサロに出入りしているところを写真に撮られたところで解雇は明らかに不当だと思うし,裁判に勝てるんだろうとは思うが,それはそれだ。ちなみに,主人公は物語冒頭の風俗には,彼をハメた部下に誘われる形で行っているので,主人公のハメられやすい,というかどこか騙されやすいところが出ている。こうして主人公が風俗で黒服として働き始めてからが本編スタートなんだけど,風俗業界はあんまよくわからないので参考になる。ある意味で,営業のスキルを活かして,「繁華街でレジ袋入りコンビニ弁当を持っている1人歩きの男は出張族。地元を離れて遊びたがっているはずだ。資金があればソープだが,身なりから金もなさそう。誘えばピンサロに連れてこれる!」だとか色々考えさせられる。確かに,僕もそんな恰好で繁華街歩いているとよく声をかけられる気がする…。見どころとしては,主人公の成り上がりっぷり,アイディアの出し方である。青年漫画だと主人公は仕事を成功させ,地位と金を得ていくところを見て,読者は楽しみを得るのである。そんな主人公は風俗店を任され色々なアイディアを出すのだ。まずは,デリヘルとキャバクラを合わせたようなデリサロ。出張サラリーマンのために女の子をホテルに派遣し,酒を飲ませる。飲んで性欲が沸いてきたらヘルス行為。飲むだけで満足したらキャバクラ行為で終了というもの。また,65歳以上の老人をターゲットにしぼったデリヘルなんかもそう。保険証なんかで年齢確認をしたうえでやり,行為後に血圧を測ってあげたり,簡単な健康診断をやるというきめ細かいサービルが売りだ。最終的に,主人公はコンパニオン派遣でさびれた温泉街を立て直したところで終了となる。面白いアイディアは多いが,本当に実現できるのかな,と思わないでもない。特に,主人公はピンサロでもデリサロでも二輪車,つまり1人の客に嬢を2人つけるという,客からすればコスパの良さを押し出して成り上がるわけだが,女の子からすれば単価は安くなってしまうのではないかな。また,デリヘルのサービスとして健康診断は法的に問題がないのか,考えれば色々ある。著者の土山しげるといえばグルメ漫画なんだけど,『食キング』みたいなビジネス漫画も扱っているし,主人公の成り上がりを楽しむ漫画なので細かなことは言うまい。いや,でも温泉コンパニオンとかは完全に下火だとは思うのだけどね…。あと,本筋から離れすのだけど,主人公はもともと大阪で風俗店をやっていたのだけど,物語中盤から拠点を北陸のI県に移す。このI県は作中ではイニシャル表記だが,「北陸でも有数の教育県」,「県庁所在地のK市には一軒の風俗店もない」と言われているが,まあ,石川県の金沢市のことだろうな。ただ,物語の書かれた当時は知らんが,いまの金沢は普通にデリヘルくらいあるはず。また,終盤で温泉コンパニオンを「となりのT県の南部。都端温泉」で作るのだけど,これはたぶん富山県だろう。ただ,「都端」に該当するのが富山になさそう。恐らく,石川県の北部,「津幡町」のことだろう。ちなみに,土山しげるは石川県の出身。故郷を舞台にするのにはばかられたのかな,と思わないでもない。どぶ 4【電子書籍】
2019.03.31
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『いかにしてアーサー王は〜』でやたら推薦されていたので、『金色のマビノギオン』読んでみた。もともと、Twitterでたまに情報は入ってたが、どうも少女漫画というハードルの高さはあって今まで読んでなかった。 今出てる2巻まで読んだので、感想など書いていく。 金色のマビノギオン ーアーサー王の妹姫ー 1【電子書籍】[ 山田南平 ] 前置きだけど、僕はアーサー王にわりと詳しい。ファン歴は20年くらいになる。個人サイトを作ったこともあるという、ガチ勢である。 多少、マニアックな話もしていくたい。 さて、『金色のマビノギオン』であるが、まずは日本の高校生3人が修学旅行でイギリスへ行くのだ。この3人が、色々あってアーサー王の時代にタイムスリップするのだ。この3人の日本人高校生がメインキャラとなる。 1人目が、たまき。内気な女の子なのだが、アーサー王と魂が同じだということで、アーサーの影武者とするために呼び出された。 2人目が、真(まこと)。強気な女の子で、アーサー王伝説マニアである。アーサー王物語だけではなく、アーサー王物語の周辺のイングランド史にも詳しく、この世界で魔法使いの修行なんかをすることになる。 3人目が、広則(ひろのり)。唯一の男の子で、3人組の中で唯一英会話がでいる。といっても、物語序盤に魔法のアイテムで言語問題は解決されちゃったんだがね。実家が合気道の道場だという設定もあるので、この時代の人たちの知らない合気道と、この時代で学んだ剣術なんかで活躍していく。 さて、3人がタイムスリップしたのは、アーサーが剣を抜いたばかりの時代で、これから戴冠式だ、というあたり。アーサー王物語としては序盤である。 アーサー王物語である以上、悲劇に向かって進んで行かざるをえないのだが、魔法使いのマーリンがいうには、どうやら未来は変えられるらしく、そこを目指していくことになるのかなと思う。 真以外の日本人メンバーはアーサー王物語についてほぼ知識がない状態なので、たとえば広則なんかは、「ゲームでランスロットの名前は聞いたことがあるけど、ガウェインは知らない」と言ったりしてるもんね。オウガの話かな。 見どころは色々とあるのだが、気になったキャラを3点ほど。 まず、やはりガウェインに触れなければならない。 のち、円卓の騎士No.2、太陽の騎士となるであろうガウェインは礼儀正しく、ヒロインであるたまきといい感じになる。もちろん、ルックスもイケメンだ(2巻表紙)。 金色のマビノギオン ーアーサー王の妹姫ー 2【電子書籍】[ 山田南平 ] 最初は、「黒髪で色黒のガウェインは違うなー。金髪か茶髪の明るい髪のイメージだわ…」とか言ってたけど、見慣れると何の問題もない。 細かな描写から作者に愛されているような匂いがする。 そして、第2に、円卓の騎士の筆頭、湖の騎士ランスロットにも触れなければならない。 この『金色のマビノギオン』では、ランスロットが既に死亡しているのだ。なんでも、ガウェインと幼馴染だったが、湖で事故死したと。いや、本当なんかな、これ? アーサー王マニアの真なんかは、「ガウェインとランスロットが一体化してるのか?」とか考え込んでたが、どういうことだろう。 ランスロットという『ブリタニア列王記』にも出てこない、初期アーサー王伝説にいなかったキャラだから出さなかった、といつのならば分かるが、あえて物語から脱落させるのなら何かの意図があるはずだ。そうでなきゃ、生きてるんだろうね。もともと、マロリー版なんかでは、ランスロットは世を欺くため、死んだというていで、湖の乙女に養育されていたからね。 実は生きてて、なんか色々あって敵に回るとか面白いのかもしれない。 そして、最後に日本人キャラの広則だ。 序盤、「たまきはアーサー王の影武者。真はアーサー王マニアで知識があるし、魔法使いに弟子入りした。広則だけ得意の英会話のアドバンテージもなくなって穀潰しですね…」と思ってたが、これがそうでもない。 もともと持ってた合気道という特技に加え、剣術や馬術と訓練してる。2巻では、宮廷で刃傷沙汰に及んだベイリンを取り押さえるという活躍もしてのけた。 しかも、広則(ひろのり)が発音しにくいし、手が綺麗だったという理由で「ボーマン」(美しい手)のあだ名をつけられて、騎士になる修行をし始めた。これ、立ち位置としてはガウェインの末の弟、ガレスやんけ! しかも、湖の乙女と恋仲になってたりとかしてて、少年漫画なら確実に主人公になるようなキャラですね。 また、そのうち感想なども書いていくよ。『いかにしてアーサー王は〜』も読み進めてるから、そのうち感想書く。
2019.03.17
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先週、最終回を迎えた『闇金ウシジマくん』の感想を書いていく。余談だが、僕の周りのコンビニでは軒並みスピリッツが売り切れで、僕はスピリッツ読むために漫画喫茶に行く必要があった。普段はこういうことはないから、最終回が掲載されている号だけスピリッツを買った人が多かったのだろう。闇金ウシジマくん(45)【電子書籍】[ 真鍋昌平 ]まず、これまでのおさらい。ウシジマは、ヤクザの滑皮から舎弟になるように要求されていたが、これを拒否したため、滑皮から執拗な攻撃を受けて逃亡せざるを得なくなる。追い詰められるウシジマだが、ついに滑皮に降伏し、滑皮から盃をもらう、つまり舎弟になることになった。ちょうど、ウシジマの持ってたレジ袋にミネラルウォーターのペットボトルがあったので、滑皮は「水盃ってのもあるぜ」と、意気揚々と盃代わりににペットボトルから水を飲み、ウシジマにも飲むように勧める。しかし、これはウシジマの罠だった。ペットボトルの中には猛毒が入っていたのだ。実際、このペットボトルは何者がウシジマを毒殺しようと、ウシジマの泊まってたホテルの冷蔵庫に入れたものなんだ。運良くウシジマは、飲む直前に、「針か何かで底の部分に小さな穴を開けてから塞いだ形跡」を発見して飲むのをやめたんだけど、滑皮はキャップを開ける感触から、「新品のペットボトル」だと思っていただろう。ついにウシジマは滑皮に逆転勝利するこになったのだ。さて、肝心の最終回である。これまでの債務者が順次登場して近況を語る感じになる。紙面横には、何巻に登場した誰であるか紹介されてて親切である。そういえば、2ちゃんの最終回予想では、「過去の債務者が、これまでの取り立ては無駄ではなかった…、って言って助けに来る」とか無茶な予想があったが、少しだけ当たってたね。過去の債務者たちは、やはり貧困の中にいる者が多い。風俗嬢は、「店は儲からないから、パパ活をやろうかしら」みたいなことを言ってて、したたかな感じがする。一方で、カウカウファイナンスのメンバーは飲み会をやるべく、みんなで居酒屋に集まってた。ところが、回収が遅くなってるウシジマだけがまだ会場に来ない。ここでの雑談という形で、「滑皮は二審でも死刑が求刑された」という話が入ってくる。一審が終わってるということは、前回から1年前後は経過しているんだろうな。僕は弁護士なんだけど、どう考えても滑皮の死刑は免れないと思うよ。場面かわってウシジマだが、債務者の家に取り立てにいくのだが、そこで明らかに精神疾患のありそうな、ナイフを構えてる男に出くわす。コワモテで、暴力も得意なウシジマだが、一瞬の油断からナイフで刺されてしまう。「救急車呼びますか?」の呼びかけに、「いいって」と答え、飲み会の居酒屋に向かうウシジマだが、途中で倒れてしまう。これで完結だ。ウシジマは死んでしまったのか?ナイフで刺されてもしばらく活動できたから、望みはあるのかもしれない。もし、連載を再開したいのなら、生きていたことにすればなんとでもなるだろう。この最終章が始まったころから、「ウシジマは死ぬのでは?」という話はされていたと思う。こんな闇金業者が何年も生きていられるはずがないもの。一方で、悪のカリスマともいえる滑皮ではなく、そこらの精神疾患のある男に刺されて死ぬのも悲しい。いや、『鳥人戦隊ジェットマン』では、敵の幹部とサシでやって勝ったブラックコンドルが、最終回で町のケンカで刺されてあっさり死んだし、ダークヒーローの末路というのはこんなもんかもしれない。幸せな顔で、カウカウファイナンスのメンバーと飲み会やって最終回、ではやはりまずかろう。ある意味で、ウシジマくんにふさわしい末路なのかなと思わないでもない。闇金ウシジマくん(46)【電子書籍】[ 真鍋昌平 ]
2019.03.10
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最近は僕よりも母親がハマっている『アシガール』の新刊買ってきた。 一応、物語に一区切りはついているので、ここで完結でもいい感じに盛り上がってる。 アシガール 12 (マーガレットコミックス) [ 森本 梢子 ] ざっとあらすじとして、若様を誘拐して、いったん現代に逃亡した唯であるが、若様と2人で戦国時代で生きることになったのだ。 そんなん言っても、もう羽木は滅んだのでは…となるが、その辺の心配は無用である。羽木家は一族郎党まとめて若様の大伯父の領地に逃げ込んで、そこで生活をすることになる。この辺が優しい世界で、この大伯父には子がなく、ゆくゆくは若様が後を継ぐことが示唆されていたする。 この巻の一番の見せ場は、阿湖姫だろう。 阿湖姫は一世一代の勇気を出して成之にぶつかって無事結ばれることになる。めでたしめでたし…。 たぶん、読者の大半は、戦国乱世の駆け引きだとか、過酷さよりも、若い男女のこういうシーンを見たいはずだろう。もう、若様と唯のように安定してしまったのと違うドキドキがあるからね。 あと、ようやく若様と唯が本当に夫婦になった。あまりに引き伸ばすと不自然な域に達してたからね。もう、この2人はすでに完成されているというか、もう互いの気持ちがすれ違ったり、誤解しあったりということがなさそうだし、話は相当作りにくいよね。 もう、『アシガール』という作品として、やらなきゃいけないことはやりきった感があるのだけど、あとがきを読むと「ドラマのスペシャルと同時に物語を終えようと、思ってました」とある。 でも、読者の「この先の2人を見たい」という声で、まだ話は続くことになったそうです。 これが「なろう系」とか少年漫画なら、天下統一に向けて動いてもいいのだけど、少女漫画だからね。若様と唯がのんびりと暮らす漫画を見たいな。正直、織田がどうとか、その辺はまあ、別にいいよ。平和に、みんなと仲良く暮らして欲しいものだ。 あと、巻末のおまけ漫画なのだけど、天野信近が頑張っておふくろ様にアタックする「天野の兵法」が描かれている。 天野は家老なんだし、いくらでも女はいるだろうに、子持ちの未亡人を狙うのはどうかと思うのだけど、見てて楽しい。 外堀を埋めると言って、おふくろ様の子どもに「父上」と呼びなさいと言ってみたり、本をプレゼントしてみたり、情に訴えてみたり…。よく見ると、笑顔で子どもを膝の上に乗せてたりする。おふくろ様に気に入られようと必死やんけ、天野さん! 僕はもう薄汚れた大人ので、少年少女の恋愛描写もいいけど、こういう大人の恋の描写も非常に好きです。 で、さっきは織田はどうでもいいと言ったけど、ちょっと気になるのが、阿湖姫が結婚させられそうになってたのが「織田家家老、能見秀良の嫡男秀尚」って奴だ(77話)。 この物語は永禄年間(1560年ころ)。信長が桶狭間で今川義元を倒したのが永禄3年(1560年)だから、信長がブイブイ言わせてる頃だ。 家老の能見って、僕は知らんなぁ…。でも、秀良で「ひでよし」ってルビ振ってあるし秀吉を想像しちゃうな。 何かの伏線ではないと思うが、ちょっと気になった。
2019.03.08
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毎年3月のひな祭りころに出る『ヒナまつり』。新刊の16巻でたから買って読んだ。 ヒナまつり 16【電子書籍】[ 大武 政夫 ] 第80〜85話まで掲載されているけど、とりあえず気に入った3話分くらいの感想を書いていく。 1つ目は80話、「超人会への道」。 前々から超人会はマオのことをカネヅルとしか思ってないのではないか、という描写が多かったが、ついにそのへんの問題に終止符が打たれる。 実際に本部の奴らはマオたちの稼いだ金で本部はリアルに酒池肉林をしてるという…。漫画の限界だからか、酒池肉林の描写がキャバクラにしか見えず、僕のように汚れた大人としては、「この程度で酒池肉林とか…。ショボ!」とか思えてしまうがな。 結局、ここではロックージョンのアツシが男を見せた。男泣きするアツシはずいぶんとカッコ良かった。マオも、「今でもロックージョンには興味を持てない。でも、私はこの人を本物にしたい」と独白するまでに至る。 初登場のときは、モブくらいに思ってたアツシは立派になったものだ。マオの力もあって、アツシは超人拳法のトップになるわけだが……。もしや、これが未来の荒廃につながるのかもね。 ところで、マオたちの超人フィットネスは順調で、ついに50店舗を達成した。冷静に考えて、これはすごいことだと思う。ほぼ1県に1店舗という規模。どんな経営をしたのか、気になってしまうな。 次が82話「お・か・え・り」。 内容としては、アンズのラーメン屋に出禁になってた新田が、許されて再びラーメン屋に行くという、ただそれだけの話。ほっこりはするが、この話単体だとそんなもん。 なんだけど、この前の81話で、新田が娘というか、アンズから肩たたきをして欲しいとか、ソファで一緒にくつろぎたいとか、そういう願望をだだ漏れさせたあとだったので破壊力は増している。 最後に83話「タブレット端末三嶋瞳」。 前巻で色々あってアメリカの大会社のトップにまで上り詰めた瞳だが、普通に学校に行きたいということから、タブレット端末とスカイプを使い、学校に通ったり、友だちと遊ぶという話。 絵がかなりシュールで、タブレットを通して授業を受けたり、友だちとハンバーガー食べたりと、なんかそれだけで笑える。 なんでも、会社の方では瞳をお飾りとしてて、仕事もできないと言ってるけど、たぶん、次の巻あたりで怒涛の活躍をして実権を握るんじゃないかな。このまま大人しくしてるとは思えないもの…。
2019.03.02
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梶原一騎の『カラテ地獄変』と板垣恵介の『グラップラー刃牙』にアイドル成分をプラスした『はぐれアイドル地獄変』の8巻を読んだ。のんびり感想でも書いていく。はぐれアイドル地獄変 8【電子書籍】前までのおさらいだけど,グラドルの空手家,南風原海空は色々あって格闘技の大会に出ることになった。全32人の大会なのだけど,主人公は今回試合はなし。内容的には,主人公の芸能活動と,E~Hブロックの試合模様が描かれていく感じ。この作者,刃牙リスペクトなのか,主人公以外の試合も丁寧に描いていくので,8巻5試合がそれなりの濃度で描かれている。全試合の感想や,芸能活動の方も書くと長くなるので,気になった試合を2試合だけ見ていく。1試合目が,ライラ・メンデス(ボクシング)対カトリーヌ・ボアザン(サバット)だ。僕はサバットという格闘技を梶原一騎の『カラテ地獄変』や『空手バカ一代』で知ったのだけど,フランス式キックボクシングみたいなものかな。サバットが登場すると嬉しい気持ちになるのだけど,それ以上に嬉しかったのが,カトリーヌ・ボアザンの登場だな。このキャラ,高遠先生の過去作,『ボアザン』の主人公なのだ。てっきり,ボアザンが楽勝という感じで行くのかな,と思いきや,そうもならない。もったいない気もしなくもないかな。ボアザン1【電子書籍】[ 高遠るい ]2試合目が大島空姫(キックボクシング)対殷小敏(八卦掌)。殷小敏がかなりの強キャラ感を出しているけど,僕は彼女の師匠の方が気になる。この師匠,著者の過去作『シンシア・ザ・ミッション』のラスボス,シベール・ロウじゃないのかな。そうだとすれば,この子も結構上に来そう。CYNTHIA_THE_MISSION(シンシアザミッション)1【電子書籍】[ 高遠るい ]さて,次回からの予想もしていきたい。次は3回戦の準々決勝。主役の南風原海空は次の準決勝でマリア・ルイーザ・リベイラと戦わなくてはならない。このマリアというキャラ,どう見ても父親が「ヒクソン・グレイシーのそっくりさん」なのだよね。このマリアはヒクソン・グレイシーの女版といっても過言ではなかろう。ここにも「勿体なさ」があって,マリアの強さを見ていると,2試合とも余力を残して圧倒的に勝っていてて,けっこう魅力的なキャラなのだ。どう考えても,主人公と準々決勝で当たるには惜しいほど魅力的なキャラなのである。で,準決勝。美空は鯨岡ミカか,ルナ・カーンのうち,勝ち上がった方と戦わなくてはならない。鯨岡ミカことミカさんは著者の過去作,『ミカるんX』の主人公(のそっくりさん)なんだよね。一方で,ルナ・カーンも優遇されているキャラで油断がならない。ミカさんは隣にるんながついていれば無敵だろうと思うけど,いまはそうじゃないし,もう主人公じゃない。余力を残して勝ち進んでいるルナ・カーンに対し,ミカさんはギリギリで勝ち上がっていることもあるし,使う武道が空手というところでも美空とかぶるから,準決勝はルナ・カーンが来るんじゃないかな。ミカるんX1【電子書籍】[ 高遠るい ]決勝戦は,ちょっと予測がつかない。殷小敏はいいセン行くと思うけど,身長145センチと小柄なんだよ。ちなみに海空は176センチの長身。年齢も21歳の海空に対し,殷小敏は14歳。そんな体格的に劣る相手と決勝をして盛り上がるのか,という話だ。最近の刃牙が相撲やってるから,相撲の野坂渚あたり面白いかもしれないけど,世界中から選手を呼んでいるのに,日本人同士で決勝というのもなんか違う気がする。しかし,マリアやミカさん以上に魅力的なキャラが来ないと話が盛り上がらないの,期待はしている。とりあえず野坂渚が決勝に来る,と予想だけはしておこう。・追記2019年7月29日に9巻感想更新しました。
2019.02.18
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