サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.02.17
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カテゴリ: 文学
 とはいえ、藤壺の宮との密通の結果、生まれた赤子を(それと知ってか知らずか)、桐壺帝が抱いて光源氏に語りかけるシーンは、御簾の後ろに控える藤壺も交えて、大きな劇的場面を造り出しているので、引いておきますと、

― (帝が)「御子たちあまたあれど、そこをのみなむ、かゝる程より、あけくれ見し。されば、思ひわたさるゝにやあらん、いとよくこそ、おぼえたれ。いと、小さき程は、みな、かくのみあるわざにやあらん。」 ― 同上
「私には御子たちはたくさんいるが、そなただけは、このように小さいときから、日頃見ていたものだ。そのせいか、そなたの幼顔はよく覚えているが、この子は本当にそなたによく似ている。ごく小さいときは、みんなこのようなものだろうか。」 
 これを聞いた光源氏の反応は、
― 中将の君(源氏)、面、色かはる心地して、恐ろしうも、かたじけなくも、うれしくも、あはれにも、かたがた移ろふ心地して、涙落ちぬべし。 ― 同上
源氏の君は、顔色が変わる心地がして、空恐ろしくも、勿体なくも、嬉しくも、あわれにも、さまざまにかき乱れ、入りちがう思いが色に出て移ろっていくように思われ、涙が落ちそうになられた。(円地文子訳、新潮文庫)
 同じく藤壺の宮は、
― 宮は、わりなく、かたはらいたきに、汗も流れてぞおわしける。  ― 同上
母宮はどうにも耐えられないほど恥ずかしくて、汗にあえておいでになる。(円地文子訳、新潮文庫)



 ところで、断っておかないといけないのですが、このブログであちこち取り上げている原文は、私が原文に通暁しているということではもちろんなくて(あたりまえで、訳文さえ今回が初めてなのですから)、現代訳を通して気になった部分を、実際はどう書いているのか確かめたくて、抜き取り式に書いているに過ぎません。
 古典とはやっかいで、話が面白いと、思わず自分と登場人物を同一化して、今の倫理観や世界観で読み込むということになりがちですが、これは逆に今どきのものさしでは絶対受け入れがたい要素を古典に見い出すことになりかねず、「源氏物語」を平安貴族社会の放蕩物語、あるいは仏教由来の宿世を描いたものと裁断して、まったく今日的に受け入れない読者を生み出しかねないのです。
 この場合、有効な心の持ちかたというのは、古典を自分の国のもの(したがって、無条件に自己同一化できるもの)と思わず、云うなれば 異文化の受容 をするというくらいの感覚で臨むのが、ちょうど適当な感じがします。ひらたく云えば、今ここにある「イスラーム文化」や「一神教社会」をどう捉えるか、というようなレベルの接しかたならば、ある程度あやまたず平安貴族社会のニオイ程度は嗅ぐことができるのではないか。
 何だか偉そうな話になってしまいましたが、私の都合では、原文をそこここに挿入するというのは、自己同一化した想像力が糸の切れたタコのように、かってにフワフワと飛んでいかないように、原文の錘を適当に吊り下げておきたい、という願望があるのです。もちろん、もし仮にこのブログを読まれる人があるとすれば、私のくだくだしいゴタクなどより、抜き取った原文だけでも味わってもらったほうが好いかもしれません(白状すると原文の書写って、けっこう手間がかかるのですよ)。

― つづく ―





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Last updated  2009.02.17 14:13:05
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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