サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.12.05
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カテゴリ: カーネーション
 ところで、ここの親族会議のエピソードに限らず、実際にはもっと辛いことや笑える話がコシノ家にはあったはずです。しかしそれらが何の作為もなく描かれたなら、ドラマは途端に「特異な一家の物語」という、たんなる他人事に転化してしまう。むしろ恐しく謹直に実際にあったことに作り手が想像的に関わった結果、すこぶる魅力的な人物像が生まれたのです。糸子はかつて確かにこの世にいた綾子さんと、平成の今の世を結ぶ「想像力の糸」なのだと思う。
 でその目的は、たぶんそれを「望む人たち」には、ドラマをいくらでも我が事のように「内在化」出来るような、外に「開かれた作り」にしておくということだったでしょう。

 というわけで、ここで描かれた他をもって変え難い糸子らしさや、勘助他の人物造形に共通して流れるこのドラマのマインドのようなものを、例の糸子的「反権力的思考」とは別の新たなものさしで考えてしまうのです。

 先の「私は人間の不正直は責めるが、人間の愚かさは責めない」という神門さんの字句を手がかりにして、これを糸子ふうに言い直すとするなら、

― 私は我が身も含めた人が往々にして仕出かす「愚かさ」は責めないけれども、そうした「愚かさ」の存在自体を認めないような人の「傲慢性」あるいは「不正直」は許せない ―

といったことでしょうか。

 神ならぬ人間がしばしば失敗を犯すのは、むしろ有限な生き物としてあたりまえ。しかしそこで人をたんなる生き物でなく人たらしめているのは、当の失敗を率直に受け入れること、きちんとそれを正直に「言明」出来るかどうか、というところにかかっているのではないか知らん。しかし、これがなかなか私たちには出来ないのですよね。「真正直」であるということは、往々にして世間との軋轢を生むものです(とくに日本では)。
 逆にこのドラマの後味の清々しさというのは、「殺ってしまった」勘助は(他の日本兵と違い)それから眼をそむけることが出来なかった、「不倫した」糸子はそれに関していっさい弁解しなかった、というところから生まれているのでしょう。
 さて今どき、むしろそれとは真逆の強がりや隠蔽が、世に蔓延しているような、してないような。


「そや、女はそこをチャラっと下げられるんや。張らんならん意地なんか、ないさかいなあ。 … これは強みやで」と糸子。

 これは「親族会議」ではなく、ずうっと後の「太鼓」での糸子と女性経営者たちのちょっとした会話なのですが、何やら世間にがんじがらみにされて身動きが取れなくなっている、男社会に対する強烈な皮肉とも取れますね。目覚めた女たちが進化しつつある間、既存の権力構造に守られた男たちはテレビにしがみついているわけです。
 糸子的「正直」のありようから見てみれば、男社会というのは「正直」であることから構造的にはじかれざるを得ないようなところがあるのかもしれない。早い話、弁護士のディベートなどというのは、自分のクライアントの非は絶対的に認めないという前提で話が進むのです。彼らにとって「正直」であることとは、それこそ「愚かさ」の表象以外の何物でもない。
 日本の法廷物がアメリカのに比べて今一サマにならないのは、彼我の「正直」と「正義」の捉えかたにかなりな隔たりがあるからではないかしらん。

― つづく ―





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Last updated  2012.12.05 11:07:22
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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