サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.12.24
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カテゴリ: カーネーション
という問いは、ずうっと以前に少し取り上げたことがあるのですが、ここで改めてじっくり考えてみたいのです。
 ドラマのナレーションというのは不用意に多用されると、得てして観る側の想像力を奪ってしまって、少なからず白けるものですが、「カーネーション」の場合は逆にそれが増幅されるでしょう。それはたぶんこのドラマでのナレの立ち位置がハッキリしているからだと思う。
 要は糸子の「一人語り」であることによって、ドラマからより多様な音階が響いてくるような仕掛けになっているでしょう。それは時に主人公とともに泣き、あるいは笑い飛ばすといった具合の「盛り立て役」なのであって、主人公から離れた神のような座にいるわけではない。
 能のシテ方の「高揚」に連動して、謡の吟唱部分を地謡(じうたい)が唱和するように、糸子のナレはしつらえられているのです。

 面白いのは、それでも語る糸子と演じる糸子の間には、微妙な距離感があることで、完全に一体化しているわけではないということでしょう。言ってみれば若かりし頃の自分の失敗も成功も、一切合財をいとおしむみたいな。「回想なんだから、あたりまえじゃん」と云われそうですが、そんな単純なものなのかどうか?
普通ナレというのはドラマの補足や解説で使われ、出来るだけ客観的であろうとするわけですが、それが一人語りで行なわれる場合、誰に向って語られているかというのは、ドラマの構えや印象に深く関わってくるわけです。
 アメリカ映画などではナレを入れる場合、主人公の身内への手紙とか遺言という形をとることが多いのですが、日本ではわりと誰宛なのかハッキリしない場合が多い。要は「たかがドラマじゃん」と、あまりこだわらずに用いられていることが多いのではないか。
 一口に回想と言っても、いったい誰がいつ誰を宛先にしているのかによって、語り口は自ずから変わってくるわけです。ここの糸子の語りは、いつ誰宛に発せられたのか?子供たちなのか、将来の自分なのか、それとも今は亡き父善作や勘助なのか、しかしいずれもしっくりとは腑に落ちませんね。
 では単刀直入に視聴者宛に向けられているかというと、一般社会では不特定多数に向ってこういう語りかたは普通しないものです。逆にドラマとか小説に手紙や一人語りがよく出てくるのは、まさしく一般社会の語り口では語り切れない「私的」な話が、この形式では出来るからでしょう。


 「個人の秘密」に立ち会わせるような語り口でヒントになるのは、モデルの綾子さんがクリスチャンだったという事実でしょう。私は綾子さんが自伝などで、自身の不倫も含めた事柄をあえて記した構えに、通常の日本人とは異なるマインドを見止めてしまいます。普通私たちはこうした時、自身の告白より世間への配慮を優先するでしょう。
 これはひょっとするとクリスチャニズムの「告解」に似た構えだったのではないか。全能の神の前では自身の振る舞いは、何をさておきすべて明らかにされねばならない、というのが一神教の構えでしょう。

 とすれば糸子の語りの宛先もまた「神」に向いていたのでしょうか?確かにこのドラマには何がなし聖書的なイメージがあちこちに散見しますね。他に先んじて罪を引き受けた勘助とか、娼婦に落ちた奈津の救済とか、寡婦としての玉枝や糸子という具合に、創作手法の根っこで綾子さんのマインドを引き継いでいるような所があるのです。

 しかし、かと言って糸子が毎度仏壇に手を合わせていたことも私たちは知っているわけで、一概にこの語りが「告解」に似た語り口とするのには無理がありますね。

― つづく ―





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Last updated  2012.12.24 12:03:59
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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