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開催日:2022.4.29(金)14:00開演場所 :長野市芸術館メインホール(1,292名収容)巨匠のタクト、子どもたちに Vol.2 ensemble NOVA キッズプロジェクトに行ってきました。プログラム管弦楽ensemble NOVA1.ウクライナ国歌NOVAキッズオーケストラ2.W.A.モーツアルト/ディベルティメント ニ長調 K.136管弦楽ensemble NOVA3.G.ホルスト/組曲「惑星」より火星・金星・木星スネアドラム:山本貢大NOVAキッズオーケストラ管弦楽ensemble NOVA4.M.ラヴェル/ボレロレポートウクライナ国歌ensemble NOVAが反戦の意味を込めてウクライナ国歌を演奏するとの宣言の後に演奏となりました。遅めのテンポの堂々たる曲想は一国の国歌として相応しい格式を感じたところです。ディベルティメント ニ長調 K.13マエストロ ユベール・スダーン氏からの呼びかけにNOVAが応じて2年前に企画が立ち上がったキッズプロジェクトですが、2020年から始まったコロナ渦に翻弄され、昨年はスダーン氏が来日できずといった困難もありましたが、今回スダーン氏の指揮によって40名の子供達による演奏が実現しました。みずみずしいモーツァルトの世界が未来を担う子供達によって表現され、その演奏はとても感慨深いものがありました。組曲「惑星」より火星・金星・木星ensemble NOVAがキッズに贈るという位置づけでの演奏になりましたが、それだけに大人の意地をかけた全力感がひしひしと伝わってきました。楽曲的には、これまで吹奏楽版では何度か聴いたり演奏したことのある惑星でしたが、オーケストラ版を聴くのは初めてで、そういった意味ではオリジナルの惑星を大いに堪能させていただきました。火星の特有のあの刻むリズムで冒頭は弦楽器のピッチカートがとても印象的で、次第に盛り上がり最後の管楽器群の迫力は圧巻。そして金星は、とても美しく静かな曲想で癒されるものですが、実際の金星の姿を知る現代を生きる我々にとっては、天国と地獄ほどもあるギャップが興味深いところかなと感じました。そして締めは最も有名な木星で、こちらは終始堂々たる演奏とその音の厚みに圧倒されました。弦楽器の繊細な部分と管楽器の音圧が程よくブレンドされて、パート間のかけあいも素晴らしいと感じました。ボレロスターン氏がNOVAとキッズとの合同演奏で選んだのは、あまりにも有名なボレロですが、子供たちと合わせるにあたって総合的に判断して選んだという配慮もあったようです。そして演奏人数的にはオーケストラピットもフルに使っての120名ほどの超大編成ということで、その威容にも圧倒されました。おなじみのボレロですが、2種類の旋律がひたすらに繰り返されるという他の曲には無い特徴を持っており、平坦に演奏していれば、各パートのソロ・ソリ大会というところですが、音量において山を登るようにクレッシェンドがかけられており、その山登りの雰囲気も大いに楽しませていただきました。このあたり、ボレロあるあるとして曲をCDなどで聴く場合、曲の始まりの音が小さいので再生音量を大きくしたら、途中からだんだんうるさくなってきて終盤では爆音になり、たまらず再生音量を下げるということがあるようです。またボレロのもう1つの話題としては最初から最後まで延々と同じリズムを刻むスネアドラムの役割の重要性がありますが、聴き手はもちろん演じ手としてもそれは認識しており、今回は群馬交響楽団よりスネアドラムの名手である山本貢大氏を迎えて万全の体制を取った上で演奏に臨んだ形になりました。まとめスダーン氏のキッズプロジェクトへの想い入れを感じる素晴らしいプログラムでしたが、NOVAのメンバーも長野県にゆかりのあるプロ奏者のオールスター集団という感じがあり、より親しみを感じるところがありました。また編成もNOVAメンバーだけでもかなり豪華な上、ボレロではさらにキッズメンバーとサクソフォーンも加わっての超大編成の迫力あるサウンドに大いに感動しました。
April 29, 2022
開催日:2022.4.23(土) 13:30開演場所 :信州国際音楽村 ホールこだま(300名収容)軽井沢を拠点に活動する廣田喜美先生の生徒さんたちによる発表会に行ってきました。また今回は上田ウィーンアカデミーで廣田先生にお世話になっている縁でクラリネットアンサンブルの一員としての出場もありました。プログラムピアノの部1.よろこびのうた/ベートーヴェン 聖者の行進/アメリカ民謡2.おたんじょうびマーチ/ケーラー こぎつね/ドイツ民謡 ぼくのたからもの/山本陽一郎3.エリーゼのために/ベートーヴェン4.ピアノソナタ第8番 ハ長調 作品13『悲愴』より/ベートーヴェン5.小犬のワルツ/ショパン 乙女の祈り/バダルゼウスカ6.紡ぎ歌/エルメンライヒ7.ピアノソナタ第16番 ハ長調 K.545/モーツァルト8.花の歌/ランゲクラリネットの部9.クラリネット4重奏 3つのラテンダンスより 第1番/ヒケティック 『革命家』/ピアソラ レ・ジャルダン/真島俊夫10.コンチェルティーノ op.26/ウェーバー11.クラリネット協奏曲より 第1楽章/ホフマイスター12.2本のクラリネットのためのコンチェルト/シュターミッツ13.第一狂詩曲/ドビュッシー14.クラリネット8重奏 オペラ『魔笛』より 序曲/モーツァルト 喜歌劇『こうもり』より 序曲/ヨハン・シュトラウス15.クラリネット全員 アヴェヴェルムコルプス/モーツァルトレポートよろこびのうた/聖者の行進ベートーヴェンの第9よりよろこびのうたですが、これを聴くと年の瀬だな・・・という雰囲気を感じるものがあります。聖者の行進は、講師の先生と生徒さんとの連弾になりましたが、いわゆるニューオーリンズジャズを彷彿させるものがあるので、親しみを感じました。おたんじょうびマーチ/こぎつね/ぼくのたからもの3曲ともおそらくピアノ演奏の初級者向け楽曲ではないかと思いますが、とても優しいメロディーでほのぼのした気持ちにさせられました。ぼくのたからものは連弾で迫力も感じられました。エリーゼのためにベートーヴェンのピアノ曲の代表曲ですが、先日の加藤文江氏のベートーヴェンの音楽は建築物を見るような面白さがある・・・という視点で聴いてみると、フレーズごとに土台、壁、屋根、塀、犬小屋などの光景が浮かんできてとても楽しく鑑賞することができました。ピアノソナタ第8番 ハ長調 作品13『悲愴』よりピアノソナタとなると、ピアノ発表会として大曲の部類に入るという印象ですが、ここまで演奏するには相当な練習をこなしたのだろう・・・と頭が下がる想いがありました。こちらもベートーヴェンの楽曲らしく、その立体感のスケールの大きさをより感じた次第です。小犬のワルツ/乙女の祈り昨年ショパンの生涯を音楽を通じて学ぶ企画である高橋多佳子氏のショパン・ザ・シリーズでショパンの楽曲を何曲か聴いてきましたが、その中でも小犬のワルツはピアノコンサートでプログラムピースとしてやソリストアンコールとして何度か聴く機会があり、短い曲ではあるものの、改めてとても魅力を感じるところがありました。乙女の祈りはピアノの楽曲としては音量もあるダイナミックである意味男性的な力強さを感じるところですが、その題名がとても乙女チックなのでそのギャップがまた興味深いところでした。紡ぎ歌初めて聴く楽曲でしたが、題名と曲想から連想するに、何か仕事をしている様子を表した感じがあり、最後は無事に出来上がった!といったふうでとても楽しい気持ちになりました。ピアノソナタ第16番 ハ長調 K.545モーツァルトの楽曲は有名な楽曲が多いですが、こちらもおなじみの曲ということで、曲名は知らなくても曲は知っている人がたくさんいるのだろうと感じ、モーツァルト特有の音符数の多い伴奏やかけあい的な組み合わせもあって、まさにモーツァルトのど真ん中をゆく楽曲という印象がありました。花の歌ゆったりめのテンポのとても優雅な楽曲で、癒しを感じました。改めて考えると人類は、花なんて食べられないのにどうして栽培しているのだろう・・・とも思う方もいるとは思いますが、花は人類にとって心の安らぎを与えてくれるものなので、いわば心の栄養素なのかなと感じるところがありました。3つのラテンダンスより 第1番クラリネットの部のオープニングは、アップテンポなラテンダンスの曲で3つのとありますが、曲が分かれている訳ではないので、疾走感が素晴らしいと感じました。『革命家』初めて聴く曲ですが、仮に作曲者が伏せられていたとしてもすぐにピアソラと分かる曲調と感じました。曲の中ほどに人が会話しているかのような音のやりとりがあったり、後半なはカデンツァもあり、かなりいろいろな要素がつめこまれた大曲という印象がありました。レ・ジャルダン真島俊夫氏らしいとてもお洒落な曲と感じました。弾むような伴奏もとても心地よく、イメージとすればパリの町を闊歩しながら、いろいろな人たちに会って会話しつつ、最後は自宅に帰る・・・そんなストーリーが浮かんできました。コンチェルティーノ op.26ウェーバーの楽曲はとても明るくて華があり、それでいて気品があるので、聴いていてとてもおだやかな気持ちになりますが、このコンチェルティーノもアップテンポ部分はとても伸びやかで新緑を思わせるさわやかさがあり、スロー部分も味わい深く聴いていてとても引き込まれるものがありました。クラリネット協奏曲より 第1楽章なかなかにテクニカルな部分を要求される印象がありましたが、面白いのはシャリモー音域でころころと動くフレーズがあることで、日頃高音域でのアピールに目を奪われがちなクラリネットの演奏の中にあって、クラリネットの魅力はシャリモー音域にもあり!とアピールしているような感じを受けて、とても面白いと感じました。2本のクラリネットのためのコンチェルト親子で2本のクラリネットのコンチェルトをやるというのは、親世代にしてみれば1つの夢なのかな・・・と感じるものですが、息の合ったアンサンブルは見事なものがありました。第一狂詩曲主宰の廣田先生による講師演奏となりましたが、ドビュッシーにありがちな水の波紋のようなメロディーやどこか現代曲的な部分とのせめぎ合いなども感じる深みのある演奏と感じました。またピアノ伴奏の細井先生とのアンサンブルも見事と感じた次第です。オペラ『魔笛』より 序曲クラリネット8重奏による演奏となりました。6パートを8人で吹いているので、クワイアー的な厚みも出て、時折オーケストラを彷彿とさせるサウンド感が出ることもあったようです。こちらの楽曲ですが、上田ウィーンアカデミーのクラリネットアンサンブルで2019年から手がけ、今年で4年目になりますが、ヤイトラー先生から直接レッスンを受けた直近の曲であり、その後コロナ渦となりヤイトラー先生が来日できずで、2020年、2021年とアンサンブルだけでアカデミーを開催して今日に至るものですが、魔笛もメンバーの入れ替えがあったりして、2019年当時とはまた違った演奏になっていると感じ、感慨深いものがありました。喜歌劇『こうもり』より上田ウィーンアカデミー2021のクラリネットアンサンブルで取り組んだ楽曲で、曲のつなぎをしっかりコンタクトを取って合わせていくところや、ウィーン音楽特有のためが随所にあるのもまた面白いところでした。このあたり、ウィーン音楽の王道をゆくヨハン・シュトラウスならではの醍醐味を感じた次第です。アヴェヴェルムコルプス最後は本日出演したクラリネットメンバーが全員でパイプオルガンのような重厚な響きを目指してモーツァルトの名曲を演奏しました。クラリネットとバスクラリネットだけの編成でも音域の広いクラリネットではオクターブでかなりの幅を取ることがでるので、そこもより重厚感が増した感がありました。まとめ2018年以来でMUSIC RAUMコンサートを拝聴ならびに演奏参加させて頂いた訳ですが、コロナ渦ということもあり、出演人数は限られるところでしたが、その分1つ1つの発表をより深く拝聴することができたように感じました。そして2020年から始まったコロナ渦は音楽活動にも大きな影を落としていますが、数度に渡る練習中断を余儀なくされた時期を乗り越えて、少しづつ積み上げた成果である演奏はどれも大変感慨深いものがありました。
April 23, 2022
開催日:2022.4.22(金) 19:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容)金子三勇士ピアノリサイタル関連プログラムのアナリーゼワークショップに行ってきました。プログラムアナリーゼレポートまずは、リサイタルで演奏するバッハのインヴェンション全15曲から1曲を挨拶のような雰囲気で演奏されました。そして今回のリサイタルはテーマとして「ピアニスト金子三勇士の「今」原点×挑戦」を掲げ、今世界を覆うコロナ渦や紛争という不安定な世情は、人類の歴史の中では繰り返されてきたものであり、その中でも音楽家たちはずっと変わることなく作品を世に送り続けてきた訳で、金子氏もそれを踏まえて活動してゆくという決意のようなお話がありました。そしてリサイタルについてはプロジェクターを使ってまずは音楽史のおさらいということでバロック→古典派→ロマン派→近代音楽→現代音楽を確認。そして、リサイタルで取り上げる楽曲のアナリーゼへと入りました。まずはバッハの楽曲について金子氏の幼少期のピアノレッスンの様子なども振り返りながら、インヴェンションについての解説があり、おおよそ世に出回っている音楽というものは主旋律と伴奏に分かれているものだが、バッハの音楽は分かれていないということで、その理由はバッハが生きた時代にはピアノは無くチェンバロやパイプオルガンのような音量が調節できない楽器しかなかったことから、そのような曲が生まれたとのことでした。バッハの音楽がどこか無機質で機械的な感じを受けるのはそういう訳があったのかと得心した次第ですが、曲を聴く時はそのような理論などは全て忘れて無心で聴くのがお薦めとのことでした。続いてシューベルトのアヴェマリアについて祈りの曲であることが紹介され、プロジェクターにてシューベルトの肖像画が映し出されましたが、若くして病気で亡くなったこともあり、その姿に老いを感じることはありませんでした。続いてスペイン狂詩曲について民俗学の視点から解説がなされ、フン族は時代が下る中で、フィンランド、ハンガリー、スペインのバスク地方へと枝分かれし、それぞれの地域で音楽文化を営んでいた訳ですが、後世になってリストがハンガリーとスペインのバスク地方の音楽文化が似ていることに気付いて、ハンガリー狂詩曲を書いた後に親戚筋のスペイン狂詩曲を書く気になったのでは?とのことでした。続いてシューマンの献呈について。こちらはコンサートでの演奏頻度は高い曲ですが、このリスト編曲の献呈は、先ほど出てきたアヴェマリアのメロディーが埋め込まれているそうで、じつは弾いている側も気付かないことも多いとのことで、いわゆる献呈あるあるみたいな知識で、リスト編曲版にはアヴェマリアが入っていることを知っていればちょっと優越感にひたれるのでは?とのことでした。最後はガーシュインのラプソディー・イン・ブルーについて。コロナ渦の中、ジャズの伝道であるブルーノート東京から金子氏に演奏依頼があり、これはクラシックピアニストの金子氏にとっては耳を疑うことであったそうで、それならばジャズとクラシックの架橋的なラプソディー・ブルーにとことん挑戦してみようとのことでした。しかしながらもともとピアノとオーケストラの曲なので、それをピアノだけでどう聴かせるかということを考えて金子氏自ら編曲を施したとのことでした。その中で、カデンツァについても語られ、クラシックピアニストとしての挑戦的なカデンツァを作ったので、リサイタルでは楽しみにしていて欲しいとのことでした。そして締めにカデンツァ直前までと、カデンツァ後を演奏して終了となりました。このあたり、あえてカデンツァを演奏しないことで、リサイタル当日の楽しみを増した感がありました。まとめ終演後の語りの中で、ビアノコンサートあるあるとして、チケットの売れる順番として鍵盤の見える席から埋まってゆく傾向があるとのことで、5月14日のリサイタルも多分にもれず同様とのことでした。しかしながら、音は鍵盤が見えない側の方が良いそうで、世の中価値観の違いで楽しみ方も変わると感じた次第です。
April 22, 2022
開催日:2022.4.26(土)14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容→半減)長野県小諸高校出身のプロ音楽家が集結し、2017年4月に旗揚げ公演を開催後、5回目の公演となる第5回演奏会に行ってきました。プログラム前半1.五月の風2.マードックからの最後の手紙3.マーチ「ブルー・スプリング」4.サーカスハットマーチ5.アルメニアンダンス パート1後半6.ファンタスティック・シナノ・ランド ~信濃の国~7.シブリ・メドレー8.サクソフォンとバンドのための青春の輝き ソロ:村田淳一9.スーパー・コモロ・スペシャルメドレーアンコール10.オーメンズ・オブ・ラブ11.宝島レポート五月の風コンサートのオープニングは、春開催の演奏会ではよく取り上げられる曲ながら、真島俊夫氏の作曲ということで、聴き栄えは素晴らしいが難易度が高く、アマチュアバンドにとっては敷居の高いマーチという印象がありますが、演奏はプロ集団のスーパーコモロということで、うまくまとめられ大変さわやかで素晴らしい風が感じられました。マードックからの最後の手紙タイタニック号の悲劇を乗組員のマードックの視点から見た曲で、スクールバンドでもよく演奏される曲ということで吹奏楽の定番曲という位置づけの選曲感がありました。そしてこちらの曲は樽屋氏の作品ですが、樽屋氏の作品と言えばピアノが登場し、弱奏部の表現でその存在が大きくクローズアップされる場面が用意されている訳ですが、そちらも大変素晴らしかったです。マーチ「ブルー・スプリング」2022年の吹奏楽コンクールの課題曲よりということで、初の課題曲生演奏を聴くことができました。指揮の小山弦太郎氏によればブルー・スプリングを直訳すると「青春」になるので、そういったイメージがこの曲にあるかなとのことでした。楽曲的には、正統的なコンクールマーチという印象で、同じひと夏かけて取り組むならば、明るくて楽しい感じのマーチが楽しいのかなと感じた次第です。サーカスハットマーチこちらも2022年の吹奏楽コンクールの課題曲よりということで、初の生演奏を聴くことになりましたが、こらちは同じマーチでもひねりの聴いた内容になっており、まさに曲名通りのサーカスチックな面白さがあると感じました。アルメニアンダンス パート1A.リードの作品では最も演奏頻度が多い曲という印象がありますが、演奏頻度が多いからといって演奏しやすい訳ではなく、取り組むにはなかなかの時間と労力がかかる曲なのかなと感じます。そんな中でスーパーコモロのアルメニ1は安定感はもちろん、重厚感と立体感も感じられ格別の演奏であると感じました。ファンタスティック・シナノ・ランド ~信濃の国~スーパーコモロウインドオーケストラのために作曲された作品で、昨年の第4回演奏会の演奏が初演となりましたが、今年もまた演奏されることとなりました。今後、スーパーコモロウインドオーケストラ演奏会の定番曲として毎年演奏されることになるのかもしれませんが、この演奏会でしか聴けない貴重な楽曲があるということがまずもって素晴らしいと感じた次第です。シブリ・メドレー指揮者の小山弦太郎氏よりジブリといえばトトロですが、このメドレーには入っておりません!とのことで、編曲者の真島俊夫氏が意図的にトトロを外したのか、自らのインスピレーションとトトロがかみ合わなかったのか、故人となってしまった今となってはわからないところですが、楽曲とすればオープニングは絢爛豪華に。途中でピアノソロが入ったりして相当にお洒落な感じがあると思いました。ちなみに入っている作品は風の谷のナウシカ、魔女の宅急便、千と千尋の神隠し、天空の城ラピュタ、もののけ姫の5作品とのことです。サクソフォンとバンドのための青春の輝きアマチュアバンドでもプロのサクソフォーン奏者をゲストで迎えた時の定番曲の1つであるという感じですが、プロの集まりであるスーパーコモロウインドオーケストラでは誰もがソロを担当する力量があるということで、その中で誰がソロを奏でるのかということは、企画段階から大きな話題だったのかなと推測した次第ですが、今回はつい先日地元でもソロリサイタルを開いて話題の人という感のある村田淳一氏がソリストを務め、その艶っぽく甘い音色を存分に楽しませていただきました。スーパー・コモロ・スペシャルメドレーレギュラープログラムの最後を飾るのは、根っからの吹奏楽好きの集まりであるスーパーコモロウインドオーケストラメンバーのこだわりが詰め込まれた17分にも及ぶ大メドレーでした。収録曲は、ドラゴンクエスト序曲、吹奏楽のための民話、ディスコキッド、アフリカンシンフォニー、スーダラ伝説、ピンクレディーメドレー、マツケンサンバ2、シングシングングで、それぞれが十分満足できる長さの尺があり、さらに演出としてピンクレディーメドレーではダンサーが登場して歌唱ポーズをとりながらの見事な舞い、最終曲のシングシングシングでは、定番のクラリネットソロをコンサートマスターの粟生田先生がロングバージョンで奏でるという圧巻な内容でした。オーメンズ・オブ・ラブスーパーコモロウインドオーケストラ演奏会のアンコール定番曲ということで、楽しいアンコールの時間が始まったという感じがありました。ある意味、聴き手もそれを期待しているところがあるので、安定の楽しさを感じたところです。宝島ドラムスのソロから、パーカッションパートとの会話的なやりとりを経て、カウベルで曲がスタート。そして今回も指揮者の小山弦太郎氏がサクソフォーンを持ってきてソロを担当し、指揮はアマチュアだが、最後は本職のサクソフォーンで本領発揮するといった演出になりました。まとめ昨年に続いてスーパーコモロウインドオーケストラの演奏を聴かせていただきましたが、1年経つ中でスーパーコモロウインドオーケストラを構成するメンバーの中でアンサンブルノワイエのお三方など間近で演奏を拝聴する機会もあって、より親しみを持って楽しむことができました。そして指揮者の小山弦太郎氏のトークの素晴らしさは相変わらずで、今年は演奏の方で時間が増えたため、トークは縮めたとはいうものの、場を和ませる内容は健在でした。
April 16, 2022
開催日:2022.4.14(水) 19:00開演場所 :坂城町文化センター 大会議室サントミューゼの上田地域定住自立圏連携事業 加藤文枝 チェロ・コンサート in 坂城町へ行ってきました。プログラム1.E.エルガー/愛の挨拶2.C.サン=サーンス/動物の謝肉祭より 白鳥3.G.フォーレ/ロマンス イ長調 作品694.M.ファリャ/火祭りの踊り5.L.v.ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第3番 イ長調 作品69 より 第1楽章6.J.ブラームス/子守唄 作品49-47.R.シューマン/献呈8.F.プーランク/「ルイ・アラゴンの2つの詩」より第1曲 C9.A.ヒナステラ/パンペアーナ第2番 作品21アンコール10.C.B.ラフマニノフ/ヴォカリーズレポート愛の挨拶楽器や編成問わずにコンサートオープニングで奏でられることが多いと感じますが、坂城町文化センターが外の景色が見える珍しいホールであるということと、演奏時間が夜間なので、そこから見えるのは夜景ということから、加藤氏のインスピレーションがこの曲に対して、これまでの既定概念と違ったものになったとのことでした。このあたり、挨拶といえば、朝の挨拶を連想することが多いのかもですが、夜の挨拶はこんな感じというものがあったと思いました。動物の謝肉祭より 白鳥いろいろなコンサートでこの白鳥を耳にする機会は群を抜いて多く、それだけに名曲中の名曲ということをいつも感じます。そしていろいろな編成の楽器で演奏されるものの、基本形(元祖)はチェロとピアノということで、改めて元祖の白鳥を楽しめた感がありました。ロマンスフォーレといえばシシリアーノというイメージですが、ロマンスもとてもしっとりとした味があって素晴らしいと感じました。チェロのダイナミックな低音も大変心地よいものがありました。火祭りの踊り加藤氏から曲の筋書きが紹介されましたが、主人公の女性が新しい恋をしようとすると死別した旦那さんがやきもちを焼いて恋路を邪魔するので、美しい女性が踊って死別した旦那さんを誘惑して成仏してもらおうとする儀式を描いた楽曲とのことでした。それゆえフラメンコのようなスピード感があって、まさに炎がメラメラと燃えているようなイメージが圧巻でした。チェロ・ソナタ第3番ベートーヴェンの作品の魅力を建築物や工場でのものづくりに例えた解説がとてもわかりやすかったです。これまでベートーヴェンの音楽はたくさん聴いてきましたが、美しい建築物(町並みとも?)を想像したり、何か1つのものを組み立ててゆくようなイメージを持って聴くと、なんだかとても音楽が立体的に感じられました。このあたり、ピアノ担当の北端氏もベートーヴェンの音楽にはとてもポジティブな魅力があると感じているのことで、ベートーヴェンの音楽の楽しみ方の引き出しが増えた感がありました。子守唄ブラームスはロベルト・シューマンが亡くなった後、妻であったクララ・シューマンへの強い想いからかその子供達を献身的に守ったということがあったそうですが、ブラームスのクララと子供たちへの気持ちが込められた曲なのかなと感じるところでした。献呈ピアノのコンサートで演奏される頻度が高い楽曲の1つですが、ロベルト・シューマンが妻となるクララへの愛を込めて捧げた曲ということで、曲の色はピンクピンクしていてとても幸せな気持ちになりました。「ルイ・アラゴンの2つの詩」より第1曲 Cいわゆる反戦歌とのことで、Cの韻を踏んでいることで美しい和声が特徴的とのことでした。こちらの選曲はウクライナ侵攻前に決まっていたそうで、加藤氏からは改めて偶然ではない何かめぐり合わせのようなものを感じた中での演奏であるとのことでした。パンペアーナ第2番作曲者のヒナステラについてのマメ知識として、本人は「ジナステラ」と呼んで欲しいと言っていたそうです。そしてアルゼンチン文化の影響を強く受けた作品でもありますが、私的にはヒナステラと言えば6年前に演奏したエスタンシアが強烈に印象に残っており、それと結びつくものがあるのかなと注意深く聴いてみましたが、終盤の雰囲気はエスタンシアとそっくりで、やっぱり同じ作曲家の曲なんだなと納得した次第です。ヴォカリーズヴォカリーズとは歌詞の無い歌とのことですが、当初は加藤氏曰くどうしてこんなステキな曲に歌詞をつけなかったのかと思ったが、それは聴き手に自由に想像して欲しいという作曲者の願いなのでは?とのことでした。まとめチェロは、人の声に一番近いと言われることもあり、またその見た目の大きさから伴奏やベースラインを専属で担当していると思われがちだが、じつはソロ楽器として繊細な表現ができるのだという紹介がありました。加藤氏のわかりやすいMCも手伝って、大変内容の濃い公演と感じた次第です。
April 13, 2022
開催日:2022.4.9(土) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容)弦楽四重奏団のクァルテット・ソレイユの演奏会へ行ってきました。プログラム前半1.ハイドン:弦楽四重奏曲第38番 変ホ長調 作品33-2「冗談」 I.Allegro moderato II.Scherzo Allegro III.Largo sostenuto IV.Finale Presto2.ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏のための2つの小品 I.Elegy - Adagio II.Polka - Allegretto後半3.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 イ短調 作品132 I.Assai sostenuto - Allegro II.Allegro ma non tanto III.Molto Adagio - Andante IV.Alla Marcia,assai vivace(attacca) V.Allegro appassionato - Prestoレポート弦楽四重奏曲第38番 変ホ長調 作品33-2「冗談」解説によれば、ハイドンが1781年に作曲した全6曲の「ロシア四重奏曲」の2曲目にあたるこの曲は、ユーモアにあふれる終わり方から「冗談」という愛称で親しまれるようになったとのことです。第1楽章はさわやかな感じのする春を連想させる曲調でスタートし、続く第2楽章で少しまったりとした感じとなりつつ、グリッサンドが多用されることから独特のカラー感あり。第3楽章は、ゆりかごで眠る子供を静かに見守っているような優しさにあふれた癒しのひととき。第4楽章は、最終楽章らしくテンポも音量も十分で活気があり、結びは冒頭でふれたように終わったかと思ったら、また演奏が始まる・・・ということで、いつ終わるのか?!的なものがあり、これが「冗談」という愛称の所以かと納得した次第です。弦楽四重奏のための2つの小品第1楽章は、絶望感に満ちた雰囲気で重々しく始まるものの、ふとしたフレーズに夜明けのようなものを感じるところが、解説通りなのかなと思いました。第2楽章は、ガラリと雰囲気が変わり、こっけいな曲調が特徴的なものの、解説にもあるように、調子はずれのピッチカートのメロディーと2本のヴァイオリンのメロディーが2度でぶつかっているため、どうしてもすっきりしないぞわぞわするような不思議な感覚がありました。弦楽四重奏曲第15番 イ短調 作品132解説によれば、この曲はベートーヴェンの最晩年、最後の2年間に作られた作品とのことで、作曲を進めている最中で生死をさまよう大病を患い、中断を余儀なくされたが、その後なんとか復帰して作品を最後まで仕上げることができたという経緯から、副題に「リディア旋法による、病から癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」をつけ、全5楽章からなる壮大な楽曲という印象を受けました。このあたり、つい先月にはベートーヴェンの若かりし日の曲である「ロマンス第2番 ヘ長調 作品50」を聴いたところだったので、そこからずっと音楽活動を続けてきて、最晩年に弦楽四重奏曲第15番にたどり着いたベートーヴェンの生涯をほんの少し垣間見た感がありました。まとめクァルテット・ソレイユは、2004年に結成されたヴァイオリン:高宮城凌、ヴァイオリン:東山加奈子、ヴィオラ:鈴村大樹、チェロ:太田陽子で構成される弦楽四重奏団ですが、2014年度にサントミューゼレジデンスアーティストになったことが縁で、2017年から毎年この時期にサントミューゼで定期演奏会を開催しており、2020年のコロナ渦による中止もありましたが、2021年は無事開催となり、今回は5回目の演奏会とのことでした。またMC等は無く、演奏に全精力を賭けているという姿勢が感じられました。改めて、弦楽四重奏は曲も多く、いわゆるアンサンブルの基本形ということで、たくさんの演奏会があって、ちょくちょく聴けるかと思いきや、振り返ってみると、じつはそんなに多くは無く、そこは4人のアンサンブルを作り上げる作業が高度で時間がかかるものだったり、なかなか4人の都合を合わせるのが大変だったりということがあるのかもしれないと感じた次第です。ル
April 9, 2022
開催日:2022.4.8(日) 14:00開演場所 :千曲市文化会館 あんずホール(760名収容→300名)2019年10月の台風19号で水没の被害を受けてから2年半。待ちに待った復旧が成った信州の幸 あんずホールのリニューアルコンサートに行ってきました。プログラム1.千曲市民混声合唱団 混声合唱のためのメドレー 合唱でオペラ・アリア 楽劇「ニュルンベルキのマイスタージンガー」より前奏曲 歌劇「リナルド」より 私を泣かせてください 歌劇「魔笛」より 胸は怒りに燃えたち 歌劇「椿姫」より 乾杯の歌 歌劇「トスカ」より 歌に生き 愛に生き 歌劇「カルメン」より 闘牛士の歌 歌劇「トゥーランドット」より 誰も寝てはならぬ2.千曲市吹奏楽団 マーチ「春風の通り道」 さくらのうた キボウノカゼ3.あんず室内合奏団 組曲「ホルベアの時代から」よりプレリュード 子象の行進 エトピリカ4.千曲市フィルハーモニー管弦楽団 スラブ舞曲第2番ホ短調作品72-2 行進曲「威風堂々」第1番ニ長調 - 記念セレモニー -5.フィナーレ 千曲市歌レポート千曲市民混声合唱団どこかで必ず耳にしたことがある有名な楽劇・歌劇のメドレーですが、メインディッシュが次々と出てくるような感じがして、とどめにトゥーランドットというのがじつに豪華と感じました。千曲市吹奏楽団2017年のコンクール課題曲のマーチ「春風の通り道」。そして2012年のコンクール課題曲のさくらのうた、東北復興祈念作品のキボウノカゼの3曲の演奏となりましたが、季節感としてすごくあっていてタイムリーであることと、「風」というキーワードで統一された演目に選曲のセンスの良さを感じました。そしてコロナ渦以降、アマチュアバンドの活動がしづらくなってしまったことで目に見えて公演が少なくなってしまった吹奏楽の重厚なサウンドを懐かしい気持ちで楽しませていただきました。あんず室内合奏団弦楽器の合奏団ということで、そのやさしい音色にとても癒されました。また弦楽器は、マスクをしても演奏できるという特性からコロナ渦にあって感染リスクがより低いジャンルの楽器群として捉えられ、消えそうになった音楽の火を絶やさないように守り続けた役割が果たしてくれたという面もあったのではないかなと感じた次第です。千曲市フィルハーモニー管弦楽団今回、反響板を使わずにステージの面積をめいっぱい使って、奏者のソーシャルディスタンスを確保しての公演となりましたが、そんな中でステージいっぱいに演奏者がいるような配置となったオーケストラによる演奏は相当に迫力がありました。格調高い曲想の威風堂々は、あんずホールの復活を高らかに宣言しているようなメッセージ性があったように感じました。フィナーレ最後は、千曲フィルハーモニー管弦楽団に千曲市民混声合唱団が合流して、千曲市歌の演奏となりました。台風19号では本当に甚大な被害を受けたあんずホールの復活がようやく成ったことを実感したひとときになりました。まとめ2年半前の2019年10月12日にあんず小ホールでの公演を終えて帰宅してしばらく経ってからあんずホールが水没したということを知り、大変大きな衝撃を受けました。そして2年半という長い期間、あんずホールでの活動はいっさいできなくなった上、翌年のコロナ渦が追い討ちをかけ、活動そのものができなくなるという悲劇的な状況が長く続く訳ですが、ここであんずホールが復旧したことは、とても勇気付けられるもので、そのリニューアルコンサートを拝聴できたことはとても感慨深いものがありました。またあんずホールはネーミングライツ制度によって「信州の幸(めぐみ)あんずホール」となったことも新しい門出に花を添えたのかなというところです。
April 3, 2022
開催日:2022.3.27(日) 14:00開演場所 :上山田文化会館(952名収容→半減)第6回 ファミリーコンサート“りずむ” 楽しい音楽の玉手箱に行ってきました。プログラム第1部クワトロアルコイリス(汐入規予 高山賢人 髙久史子 山田和矢)による演奏1.彼方の光2.新天地3.蘇州夜曲4.出逢いの星5.江~姫たちの戦国6.賽馬7.旅人8.愛しかない時9.春よ、来い第2部リトムシュ(髙久史子 山田和矢 田中美恵子 佐藤美和)による演奏1.道化師のギャロップ2.サンバ・オブ・ザ・サン3.アンダー・ザ・シー4.宝島全員参加によるコラボ演奏5.銀河鉄道9996.瑠璃色の地球7.情熱大陸アンコール8.小さな世界9.マツケンサンバ2メンバー二胡:高山賢人ピアノ:髙久史子ボーカル:汐入規予ドラム:山田和矢ヴァイオリン:田中美恵子マリンバ:佐藤美和レポート彼方の光リベラで有名なおなじみの楽曲を二胡特有の曲線的な音色で演奏し、幻想的な雰囲気でコンサートのオープニングとなりました。新天地クワトロアルコイリスの定番曲ということで、ドラムスのノリの良いテンポの中、二胡、ピアノ、そしてボーカルの汐入氏はアコーディオンという役回りで見せて聴かせるといった感じで大いに盛り上がりました。蘇州夜曲汐入氏のボーカル初披露曲ということで、その美声を大いに堪能させていただきました。一言一言語りかけるような歌唱は本当に優しい感じでとてもステキだと思いました。出逢いの星汐入氏はFM長野でパーソナリティーをしている実力者ということもあり、とても自然な感じで聴きやすいMCに好感が持てました。出逢いの星はそんな汐入氏のソロステージということで、弾語りでの見事な演奏に感動しました。また仕事で出会った西村まさ彦氏に影響を受けて歌の感じ方が変わったとのお話もありました。江~姫たちの戦国歴代大河ドラマのテーマ曲の中でも印象に残る名曲という印象がありましたが、千曲市がロケ地になったという縁もあっての演奏となりました。番組で流れていた尺よりかなり長く感じられたので、繰り返しのアレンジがあったのかもしれませんが、スケールの大きさは原曲通りで久しぶりに姫たちの戦国を感じるひとときになりました。賽馬馬の走る様子を表した楽曲とのことですが、走るということからアップテンポであることはわかるのですが、曲の感じがさしづめ中国版チャルダッシュという感じでした。早弾きが見事で、最後は馬の鳴き声を二胡で表現するなどの演出がありました。旅人もとはギターデュオの曲とのことですが、ご機嫌なドラムスの前奏から始まり、主旋律はピアソラを思わせる雰囲気がありました。汐入氏のアコーディオンはバンドネオンのようにも聴こえて、とてもカッコイイ曲だと感じました。愛しかない時汐入氏から昨日のリハからの流れを話す場面があり、今日の本番でお客さんを迎えて完成との話がありました。また2020年のコロナ渦以降、みんなが抱える想いについても触れられました。演奏された愛しかない時は、シャンソンの名曲でグランドピアノでの弾語りというシチュエーションがとても豪華に感じられました。春よ、来いもともとこのコンサートは、昨年9月5日開催予定だったとのことで、二度の延期を経てとうとう年度末最後の日曜日となり、これ以上の延期はもはやできないという状況で開催決行となった事情があったとのことでした。延期にともなって曲目も見直されてきたとのことで、こちらの楽曲も3月開催の今だから入ったとのことでした。ボーカルは汐入氏が担当しましたが、前奏部分で「世界中に春が来ますように・・・。」というメッセージが添えられたのが心温まる演出でした。道化師のギャロップここからはリトムシュのステージとなりました。リトムシュとはハンガリー語でリズムを意味するということで、まずはグループ名に相応しく運動会でお馴染みのギャロップでスタートとなりました。こちらはマリンバメインのアレンジでしたが、ヴァイオリンのアドリブも入って、とても賑やかだなと思いました。サンバ・オブ・ザ・サンこちらは南国系の陽気な楽曲で、紹介では金髪のヴァイオリン奏者のNAOTO氏の楽曲ということでヴァイオリンがメインという感じがありましたが、マリンバも溶け込むように絡んでいてとても心地よいアンサンブルと感じました。アンダー・ザ・シーディズニー映画「リトルマーメイド」の代表曲ですが、水中で暮らすアリエルが地上への想いを馳せる曲というイメージですが、このあたり2020年から続く長いトンネルであるコロナ渦という世相を水中とすれば、コロナ後の生活である地上に想いを馳せるといったシチュエーションと捉えることもでき、そういった意味では、希望を込めた曲という感がありました。宝島吹奏楽で有名な曲!という紹介でしたが、それだけに真島俊夫氏の神アレンジぶりが感じられるところです。今回はT-SQUAREの原曲に近いアレンジでの演奏とのことで、ドラムスのアドリブソロが入ったり、飛び入りでシェーカーを持った高山氏、汐入氏が参加するなどの演出もありました。銀河鉄道999ここからは、二胡の高山氏とボーカルの汐入氏を迎えてコラボコーナーということですが、髙久氏がピアノでイマジンのBGMを弾き、汐入氏のMCでコーヒーブレーク的なひとときが入りました。そこでコロナ渦での音楽活動が話題になりました。その後、お馴染みのゴダイゴの999の演奏となり、二胡のメロディーにヴァイオリンが裏メロ的にかぶったり、ピアノとマリンバが音を重ねたりとなかなかの迫力を感じました。瑠璃色の地球スマホのライト機能を使ってペンライト的な演出をしようという提案が汐入氏からあり、汐入氏のボーカルのもと感動的なひととになりました。じつはペンライトの演出はステージから客席を見るのが一番のベストショットになるものですが、客席からその光景を想像しながら楽しませていただきました。情熱大陸本プロ最後は盛り上がるこちらの楽曲ですが、それぞれのパートで交代でソロ演奏が入るという演出もあって、それぞれのプレイヤーが想い入れを持ってソロを奏でたこともあり、かなり圧巻の演奏になりました。小さな世界アンコール1曲目は、ディズニーミュージックでは大定番のこちらの楽曲となりました。汐入氏のボーカルに加えて高山氏もボーカルに参加するサプライズもあり、大いに盛り上がりました。マツケンサンバ2アンコール2曲目は、全員スタンドということになり、かけ声は出せないものの手拍子で楽しいひとときで締めくくりとなりました。まとめ演奏終了後、実行委員会の髙久氏より改めて演奏者の紹介があり、それぞれの音楽家の皆さんへのリスペクトと感謝の気持ちが伝えられました。その後、コロナ渦に翻弄される中で開催までに度重なる延期を含めて3年半を費やした今回の公演までが本当に長かったこと。もうそろそろコロナ渦を脱却して普段の生活に戻りたいことなどが話され、その勢いで第7回のファミリーコンサートは早々に企画しました!という表明があり、出演予定のメロディカのグループの予告動画が流れ、まさにいまの朝ドラではないですが、TO BE CONTINUED的な演出がありました。このあたり、コロナ渦になってから次の演奏会ができるという約束ができない状態となっており、それこそチケットを買う際も、中止・延期連絡のための連絡先を伝えなくてはならないという悲しい事態が続いています。そんな状況であっても恐れることなく次回公演の予告を打ち出す心意気は本当に素晴らしいと感じました。
March 27, 2022
開催日:2022.3.26(土) 14:00開演場所 :信州国際音楽村 ホールこだま(300名収容)オーボエ、ヴィオラ、ピアノによるトリオコンサート -ふたりの作曲家が描いた詩の世界-に行ってきました。プログラムA.クルークハルト/葦の歌 op.28(1872)1.ゆっくりと、夢心地で 詩:彼方へと太陽は別れ行き2.情熱的に、興奮して 詩:暗闇は広がり 雲が飛び去ってゆく3.繊細に、静かな動きの中で 詩:秘密の森の小道の上を4.火のように 詩:日没 黒い雲が5.とても静かに 詩:池の上、動きひとつなくC.M.レフラー/2つのラプソディー1.池2.バクパイプアンコールA.クルークハルト/葦の歌 op.28(1872)より2.情熱的に、興奮して演奏者オーボエ:上原朋子ヴィオラ:栗林衣李ピアノ:大森晶子レポート葦の歌 op.285つの曲からなる組曲という形になりますが、演奏会パンフレットにドイツ語(日本語訳あり)の5つの詩が掲載されており、そちらを読みながら情景を想像して聴くのもよし、あるいは自由に想像の翼を羽ばたかせて聴くのもよしとのお話でしたが、開演前に詩の方は一読しておいて大まかなイメージを作っておき、演奏時には演奏者に注目して聴かせていただきました。3人のアンサンブルのやりとりの醍醐味もさることながら、1曲1曲にとても色彩感があって、トリオの皆さんが作り出す世界観にすごく引き込まれた次第です。そもそもオーボエ、ヴィオラ、ピアノの三重奏の曲は、上原氏の知る限り11曲しか出版されていないとのことで、そのうちの1曲という大変貴重な拝聴の機会だった訳ですが、土台となるピアノに乗っかる形でオーボエの四角い音色とヴィオラの丸い音色のハーモニーがたまらなく魅力的なアンサンブル感じました。2つのラプソディー上原氏のお話では、この曲の作曲者であるレフラーは、父親が捕まって処刑されたという幼少期のトラウマから、自らの出自を隠して生きつづけたということで、そのせいか発表された曲を見ると、同じ作曲家が作った作品とは思えない程バラエティーな作風を持っているとのことでした。1つ目のラプソディーの「池」では、詩にの中で池に頭蓋骨が浮いている情景を連想したので、もしやメンデルスゾーンの死の舞踏のようなドロドロの曲か?!と思ったのですが、そこは違ってより詩的できれいな楽曲という感じでした。2つめのラプソディー「バグパイプ」は、詩を読むとバクパイプを吹いていた彼は既に亡くなっていて、それを回想しているという情景が浮かんできました。こちらは、かなり時間をかけてそのことを表現しており、いろいろな想い出が走馬灯のように次々と映し出されるような感じを受けました。まとめ演奏後にピアノの大森先生から、この曲は存在を知ってはいたが、その編成の特殊性からまずやることはないだろうという中で、オーボエの上原氏が10年来のいつかやってみたいという熱い想いを打ち明け、タイミング良くヴィオラの栗林氏との出会いもあって、勢いでコンサートを決めたという経緯があったそうです。しかしコンサートへ向けた曲作りでは、一般的にはほとんど誰も聴いた事が無い、譜面も見たことが無いというところから始め、それは新雪の中を三人で進んでゆくような作業でかなりの時間も費やしたというお話がありました。これまでトリオ演奏というと、昨年の椿三重奏団(ピアノ:高橋 多佳子 ヴァイオリン:磯 絵里子 チェロ:新倉 瞳)が想い出されますが、こちらの編成は打楽器・弦楽器・弦楽器ということで、ある意味カラーが近いものでしたが、今日のトリオの編成は、ピアノ、オーボエ、ヴァオラで打楽器、管楽器、弦楽器ということで、ベースは同じピアノながら管楽器は息継ぎがある、弦楽器は弓の動きがあるといったいわゆる違う文化の融合というものがまた興味深いものがあり、ます楽曲的にもそうそう聴くことができないとても貴重な演目を拝聴できたという感がありました。
March 26, 2022
開催日:2022.3.20(日) 15:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容)第576回 群響定期演奏会プログラム 上田定期演奏会-2022春-に行ってきました。プログラム指揮:小林 研一郎 チェロ:宮田 大前半ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品331.Moderato assai quasi Andante -主題:Moderato semplice2.第1変奏 Tempo della Thema3.第2変奏 Tempo della Thema4.第3変奏 Andante sostenuto5.第4変奏 Andante grazioso6.第5変奏 Allegro moderato7.第6変奏 Andante8.第7変奏 コーダ Allegro vivoソリストアンコール 宮沢賢治/星めぐりの歌(宮田大アレンジ)後半交響曲 第5番 ホ短調 作品64第1楽章 Andante-Allegro con anima第2楽章 Andante cantabile con alcuna licenza第3楽章 Valse:Allegro moderato第4楽章 Finale:Andante maestoso-Allegro vivace アンコールダニー・ボーイレポートロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33プログラムノートによれば、チャイコフスキーにはチェロ協奏曲は無いが、それを補う作品としてチェリストの大切なレパートリーとして盛んに演奏されていて、その難易度は大変難しく技巧的にはヴァイオリン協奏曲かと見間違う程であるとのことでした。実際に通しで聴いてみると、改めて宮田大氏の圧倒的な力量に感動したのはもちろんですが、群馬交響楽団との緻密なアンサンブルが素晴らしく、それを束ねる小林研一郎氏の表現にも大いに感動しました。これまで著名なチェリストの演奏といえば新倉瞳氏の演奏を聴いたことがあり、その骨太の音色に魅了されたものですが、オーケストラとのコラボはまた別世界のスケールの大きさがあり、改めてチェロという楽器の魅力を再確認した感がありました。交響曲 第5番 ホ短調 作品64第1楽章の冒頭はクラリネットのシャリュモー音域のなんともやわらかな音色から始まりました。開演前や休憩中に音出ししていたクラリネットの音色にどうしてこんなまろやかでやさしい音色が出せるのだろう・・・と感じていたこともあり、本番演奏での存在感の際立ちにも自然と耳が行った形になりました。後で知ったことですが、そのクラリネットを演奏していた野田氏は本日が退職前の最後の演奏だったようで、それを知っていた聴衆が、メンバーがいったんはけた後にステージに登場した野田氏に拍手を送るという心温まるサプライズがありました。また終演後に小林研一郎氏から、このオールチャイコフスキープログラムは群馬県内でいくつかの公演をし、その都度うまくいかなかったところを修正してよりよい演奏を目指して完成度を上げてきたという趣旨のお話があり、上田で最高の演奏ができたとの見解のようでした。そのあたりは最終楽章の演奏を聴く頃にはその気迫がひしひしと伝わってきた感がありましたが、改めてそのような高い完成度の演奏を聴けたことは本当に幸せなことと感じた次第です。ダニー・ボーイアンコール曲は、少し寂しいがこの曲で!とのことですが、ロンドンデリーの歌でも知られるこの楽曲で、交響曲第5番の興奮さめやらぬところでのクールダウンでしみじみと聴かせていただきました。まとめ小林研一郎氏はコバケンとその仲間たちオーケストラでおなじみですが、昨年は長野・スペシャルコンサート2021でも演奏を聴かせていただき、今回は3度目となりましたが、改めてその偉大さを感じたところです。そして群馬交響楽団については、今回関連プログラムの群響メンバーによる室内楽演奏会を聴く機会があったことで、生の声を聴いたメンバーが増えて、より親しみ感を持って楽しむとができました。
March 20, 2022
開催日:2022.3.19(土) 14:00開演場所 :ホクト文化ホール 中ホール(984名収容)こころにつながるワンコインコンサート 和楽器オーケストラむつのを ~メンバーによるコンサート~に行ってきました。プログラム1.春の海2.さくら3.信濃追分4.ディズニーメドレー 「美女と野獣/子供の世界/チムチムチェリー/どこまでも~How Far I'll Go~/Once Upon A Dream/星に願いを」5.もったいない6.NHK朝ドラメドレー 「ありがとう、あまちゃんオープニングテーマ、雨のち晴レルヤ、365日の紙飛行機、アルデバラナン」アンコール7.紅蓮華レポート春の海箏と尺八のコラボによるオープニング演奏でスタートしましたが、季節感もぴったりの曲で、和楽器特有の「雅(みやび)」を感じるアンサンブルにとても魅力を感じました。さくら箏だけでの演奏になりましたが、やはりこの曲は箏の音色がよく合うと感じました。そしてもうすぐやってくるさくらの開花の季節をちょっと先取りしたような感があり、花を見ながら演奏を聴いているかのような錯覚に捕らわれた次第です。信濃追分演奏前に三味線の楽器紹介があり、チューニングについてちょっと面白いエピソードの紹介があり、「本調子で演奏します。」はその調子で演奏することを意味するが、「今日は調子がいいね!」みたいに誤解されてしまったとのことでした。こちらは、歌い手が三味線を奏で、尺八が支え、合いの手も入るというメンバー総動員の豪華アンサンブルとなりました。ディズニーメドレー箏が2パート。十七弦と尺八のアンサンブルとなりましたが、おなじみのディズニーの世界が和楽器アンサンブルで見事に繰り広げられました。改めて感じたのは、尺八は竹でできた笛ということで、フルートに近い音色が出るもので、その澄んだ音色にとても癒されました。もったいないよ演奏に先立ち尺八の楽器紹介がありました。それによれば尺八は音を変える穴が前に4つ後ろに1つしかないとのことで、これで西洋音階を普通に出しているのはいったいどんな仕組みなのだ?!と思いましたが、楽器の角度を変えたり穴を半分塞ぐ、四分の一塞ぐなどを駆使してドレミファソラシドに加えて半音階まで網羅しているテクニックは相当高度なのだろうなと感じるところがありました。このあたり、仕組みは違うものの、3つのピストンで全音階をカバーするトランペットなどと通づるところがあるのかなと思いました。演奏曲のもったいないよは生活感のある歌詞でテレビやエアコン、シャンプー、ティッシュが出てくる楽しい楽曲でした。こちらの曲は小学校のアウトリーチなどで演奏しているとのことで、なるほど!というところです。NHK朝ドラメドレーありそうで無いという朝ドラ好きにはたまらないメドレーで、ゲゲゲの女房、あまちゃん、ごちそうさん、あさが来た、カムカムエヴリバディのテーマ曲のメドレーですが、曲が流れるごとにその作品の光景が頭に浮かんできてとても懐かしく想いながら聴かせていただきました。また現在放送中で佳境に入っているカムカムまで網羅しているのがナイスなところと思いました。紅蓮華2020年にヒットしたが、コロナ渦によりあまり発表の機会が無かった曲という紹介があり、「たぶん紅蓮華かカイトだな・・・。」と思ったら、やっぱりそうだったか!ということで楽しませていただきました。まとめそもそもグループ名のむつのをとは、日本に伝わる古楽器の箏の弦が6本あったことからの命名とのことだそうです。また和楽器紹介も行われ、現在一般的に使われている中国から伝わった13本の弦のお箏や、低音が出る十七弦、三味線、尺八の楽器の特徴の説明まで網羅して1時間ちょっとのコンサートでしたが、演奏の素晴らしさのさることながら、演出についても曲にあった照明装飾がされて、ディズニーでは星が登場するなど、目と耳で十二分に楽しめ内容がとても凝縮された素晴らしい公演と感じました。
March 19, 2022
開催日:2022.3.13(日)14:00開演 場所 :松本市音楽文化ホール 小ホール(180名収容) エボニー・アンサンブル×Ami スプリングコンサートに行ってきました。 プログラムSTAGE1 Ami1.アイアイ in Jazz2.ハーレム・ノクターン3.津軽海峡・冬景色4.長崎は今日も雨だった5.彼方の光6.グレン・ミラー・メドレーSTAGE2 EBONY ENSEMBLE1.トップ・オブ・ザ・ワールド2.80日間世界一周3.「4つのスラブ舞曲」から4.紅蓮華5.世界に一つだけの花6.小さな世界7.ホール・ニュー・ワールド8.ウィ・アー・ザ・ワールドアンコール9.ロサンゼルスオリンピックのテーマレポートアイアイ in Jazzオープニングはお洒落にスタート!ということで、あのアイアイですが、原曲の素朴さのイメージをガラリと変えるじつにカッコイイJazzの曲になっており、編曲の妙を感じた次第です。ハーレム・ノクターンちょっとだるい系の曲想が特徴的な曲ですが、そんなまったり感をサクソフォーンアンサンブルならではのハーモニーで楽しませていただきました。津軽海峡・冬景色サクソフォーン特有の艶のある音色が、演歌特有の泣きの要素も適度に織り込んで心に染み渡った感がありました。今は過去の歴史となった青函連絡船・・・やはり船というものは哀愁を誘うものがあるのかなとふと感じた次第です。長崎は今日も雨だった題名からすれば、長崎は雨が多い土地?と思いがちですが、実際は他の地域と比べて特別に雨量が多い訳ではないとの紹介がありました。曲名を付けた作曲者の意図はわかりませんが、もしかすると長崎を訪れ、実際に感じたのは「長崎は坂が多かった。」だったのだが、それでは語呂がイマイチなので雨に差し替えたのかもしれません。いずれにしても、昭和演歌の醍醐味を十二分に楽しませていただきました。彼方の光世界的に有名なボーイソプラノ集団リベラの代表曲ですが、旋律をソプラノサクソフォーンの伸びやかな音色で美しく奏で、その透明感あふれるステキな演奏に思わず聞き惚れた次第です。グレン・ミラー・メドレームーンライト・セレナーデ、茶色の小びん、アメリカンパトロールをメドレーにしたメドレーですが、まったり系のムーンライト・セレナーデ、そしてアンコの茶色の小びん、最後はアップテンポのアメリカン・パトロールとなかなか編曲の妙を感じるところでした。Amiの演奏の締めくくりにふさわしいところでした。トップ・オブ・ザ・ワールド第2ステージは「世界」を一つにをテーマとした選曲とのことで、その最初を飾るのは数あるカーペンターズの中でも、特によく知られたこちらの楽曲となりました。私もカーペンターズの楽曲の中ではとても好きなので、大いに楽しませていただきました。80日間世界一周航空機が無い時代、80日で世界が一周できるか?というなんとも夢のある挑戦と感じます。曲調もどこかアドベンチャーしている感があって、旅がしたいという気持ちをそそられた次第です。「4つのスラブ舞曲」から4つのスラブ舞曲の組曲といった感じですが、聴いていると、スラブ民族の音楽文化の一旦が垣間見れるような気がして、じつに興味深いところがありました。紅蓮華疾走するイメージの曲想がなんとも心地よいところですが、こちらの編曲では伴奏パートの動きがけっこう凝っていて、それが立体感につながり、なかなかよい味を出しているように感じました。世界に一つだけの花ナンバーワンよりオンリーワンとはうまいことを言ったものだ・・・と感じるところですが、統制や統一感を尊重する昭和の時代から、個性を尊重する傾向になった平成の時代の世相にぴったりとはまったことも大ヒットのきっかけではなかったか?と思うところがありました。小さな世界ディズニーの音楽には夢がある・・・そんな印象がありますが、聴いているととても幸せな気持ちになるところです。ホール・ニュー・ワールド以前なにかのテレビ番組で見ましたが、ディズニー楽曲で一番演奏されているのが、この曲なのだそうで、確かにアラジンとジャスミンとのデュエットはディズニーのカップルの中では最高のものと感じます。個人的には新妻聖子の演じるジャスミンがイメージとして定着しているので、そんなことを想像しながら楽しませていただきました。ウィ・アー・ザ・ワールド世界で一番有名なチャリティーソングとの紹介がありましたが、まさにその通りと感じます。歌いだしのしっとりした語りかけるような1メロ、続くサビの盛り上がりはぞくぞく来るものがありました。レギュラープログラムのトリにこのようなスケールの大きな曲を持ってくる構成の妙も素晴らしいと思いますが、まさに音楽は世界を1つにできる力があると感じました。ロサンゼルスオリンピックのテーマアンコール曲では、AmiとEBONY ENSEMBLEの合同による大迫力の演奏となりました。これまでオリンピックのために、東京オリンピックマーチとか、オリンピックスピリットとかいろいろなテーマ曲が作られてきましたが、振り返っても1984年のロサンゼルス大会のテーマのようにスター性を持ったカッコイイのはないなと改めて感じました。このあたり、1980年のモスクワ大会で西側諸国が参加辞退をしたことで、1984年のロサンゼルス大会は世界が集う8年ぶりの完全なオリンピックという位置づけとなり、ほとばしるエネルギーかよい高かったからなのかなと感じた次第です。まとめEBONY ENSEMBLE代表の方から、2019年の年末にコロナというものが中国で発生し、どこか遠い世界のことと思っていたのもつかの間、2020年に入り、あっという間に世界を覆ってしまったコロナ渦での活動の大変さ、度重なる演奏会中止の無念さについてお話があり、アマチュア音楽サークルの活動がどれだけ困難であったかということを改めて感じました。私事ではありますが、本日の出演者の皆さんの何人かとはコロナ渦以前にはバンドを越えたつながりでステージを御一緒させていただいた縁もあったのですが、そんな交流も全く途絶えてしまった今日において、元気に活動されていることを拝見できたのはとてもうれしく感じるものがありました。
March 13, 2022
開催日:2022.3.9(水) 19:00開演場所 :西部公民館 大ホール群馬交響楽団 上田定期演奏会-2022 春- 関連プログラム 群響メンバーによる室内楽演奏会へ行ってきました。プログラム1.チャイコフスキー:花のワルツ2.リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行3.チャイコフスキー:四季より4月“松雪草”4.ショスタコーヴィチ:バレエ黄金時代より“ポルカ”5.チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 第1楽章 モデラート・エ・センプリーチェ 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ 第3楽章 スケルツォ,アレグロ・ノン・タント・エ・コン・フォコ 第4楽章 フィナーレ,アレグロ・ジュストアンコール6.チャイコフスキー:子供向けのポルカメンバーヴァイオリン:秋葉美果氏ヴァイオリン:原実和子氏ヴィオラ:太田玲奈氏チェロ:ファニー・プザルク氏レポート花のワルツ3月20日の上田定期演奏会はオールチャイコフスキープログラムということで、同じくチャイコフスキーの三大バレエのくるみ割り人形の中でも最も華やかなシーンという印象のある花のワルツですが、弦楽四重奏での演奏はまた格別な味わいがありました。熊蜂の飛行いわゆるテクニカルな部分を披露する楽曲として知られていますが、こちらの編曲はそれだけでなくクラシックの名曲の断片を曲に織り込んであって、それを探してゆく楽しさがありました。四季より4月“松雪草”四季ですが、1月~12月までの組曲になっており、例えば12月はクリスマスなどそれぞれの季節を彷彿とさせるテーマがついているとのことで、本来であれば3月を演奏するところをあえて4月を演奏という季節先取り感がありました。このあたり、今を表現するよりこれから来るちょっと先を表現する方が気持ちで前向きになれるのかなと感じました。バレエ黄金時代より“ポルカ”コケティッシュな雰囲気のとても楽しい雰囲気のポルカと思いました。時折、音を外した?!的な箇所がありましたが、こちらはMCで「外したように聴こえましたか?」と触れていたので、そういう曲なのだということです。チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調本日のメインプログラムで相当聴き応えのある楽曲になりましたが、こちらの楽曲で最も有名なのが第2楽章のアンダンテ・カンタービレとのことで、演奏前のMCで「きっと皆さん知っていると思います!」と前置きがあり、どんな曲が出てくるのかと大いに期待していたところ、デメイのエクストリーム・メイクオーヴァーそのものであった・・・という結果になりました。エクストリーム・メイクオーヴァーはいろいろな意味で演奏するのが大変な楽曲だったので、その原典曲を本家本元の弦楽四重奏曲で聴くことができ、音楽のつながりは面白いと改めて感じた次第です。子供向けのポルカアンコールではチャイコフスキーが子供向けに作ったというポルカが取り上げられました。子供向けなので難易度は抑えてあるとのことでしたが、長さも短くショパンで言えば子犬のワルツ的な位置になるのかなという感がありました。まとめ3月20日公演のオールチャイコフスキープログラムを強く意識した選曲になっていましたが、上田市出身の太田氏の凱旋公演といった雰囲気もあったのかなという感じです。そしてMCは最初は太田氏が担当し、その後を引き継いだプザルク氏のトークがとても親しみがあっていいなと思いました。20日の来場についても強く勧められて、「是非いらしてください。探しますよ!」とのことで、今から20日公演が楽しみなところです。
March 9, 2022
開催日:2022.3.6(日)14:00開演場所 :長野市芸術館メインホール(1,292名収容)黒木岩寿プロデュース ラ・ストラヴァガンツァ東京のブエノスアイレスのマリアに行ってきました。プログラムA.ピアソラ作曲《ブエノスアイレスにのマリア》演奏会形式/日本語ナレーション第1部第1場 アレバーレ第2場 マリアのテーマ(インストゥルメンタル)第3a場 狂ったストリートオルガンのバラード第3b場 私はマリア第4場 カリエーゴのミロンガ第5場 フーガと神秘(インストゥルメンタル)第6場 ワルツによる詩第7場 罪深きトッカータ第8場 ミゼレーレ・カンジェンゲ(古き大盗賊)第2部第9場 葬儀な捧げるコントラミロンガ(マリアの最初の死のために)第10場 夜明けのタンガータ(インストゥルメンタル)第11場 街路樹と煙突への手紙第12場 精神分析医たちのアリア第13場 小悪魔のロマンツァ第14場 アレグロ・タンガービレ(インストゥルメンタル)第15場 受胎告知のミロンガ第16場 タングス・デイ(神のタンゴ)編成ヴァイオリン×2ヴィオラチェロコントラバスピアノボーカル×2語りバンドネオンギターフルートドラム&パーカッションパーカッションレポートラ・ストラヴァガンツァ東京のメンバー6名(松野弘明氏、横溝耕一氏、篠崎友美氏、植木昭雄氏、黒木岩寿氏、山田武彦氏)に加えてゲストとしてボーカル(小島りち子氏、中鉢聡氏)、語り(大谷朗氏)、バンドネオン(三浦一馬氏)、ギター(大坪純平氏)、フルート(斎藤和志氏)、ドラム&パーカッション(石川智氏)、パーカッション(萱谷亮一氏)の総勢14名での演奏となりました。編成の配置としては、バンドネオンが中央前方に座り、そこからピアノとコンタクトをとっている場面が幾度かあり、全体のアンサンブルの精度の高さを感じた次第です。また開演前にリーダーの黒木氏からプレトークがあり、まずもってブエノスアイレスのマリアを日本語に訳すのが大変だったこと・・・(いわゆる流行語のような辞書に載っていない言葉が多用されていた。日本語で例えるならチョベリグとか?)。演奏については3日前から合宿して合奏の精度を上げてきたとのことで、本当に素晴らしいものがありました。また来場者には、23ページにもおよぶ歌詞対訳の冊子が配布され、原文と日本語訳が対比になっており、とてもわかりやすかったです。こちらですが、演奏を聴きながらページをめくっていく楽しみ方もあるかと思いましたが、演奏者の動きとか表情を見ながら演奏を楽しむことを優先した感じになりました。また余談にながら第5場のフーガと神秘は、数年前に演奏したことがあったので、聴いてみて本家はこういう音がするのか!と感動のひとときになりました。まとめこちらの公演は長野市芸術館の自主公演となりますが、公式FBでメンバーが会場入りしてリハを始めた様子から始まり、前日のプレコンサートの様子。そして終演後には当日の様子をかなり詳しくレポートした上で、お客様アンケートの抜粋を掲載するなど、主催者としてのプレゼンテーションが見事だと感じました。
March 6, 2022
開催日:2022.3.5(土) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容)松本蘭 ヴァイオリン・リサイタルに行ってきました。プログラム前半1.エルガー/愛の挨拶2.ベートーヴェン/ロマンス第2番 ヘ長調 作品503.武満徹/波の盆4.ビートルズメドレー「Here,There and everywhere」「Michelle」「Hey Jude」「Yesterday」5.プッチーニ/オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」6.サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン後半7.リヒャルト・シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ変ヘ長調 作品18 第1楽章 Allegro ma non troppo 第2楽章 Andante Cantabile 第3楽章 Andante - Allegroアンコール8.松本蘭/未来へ9.モンティ/チャルダッシュレポート愛の挨拶1月の地域ふれあいコンサート、2月の地域ふれあいコンサートに続いて3回目の拝聴となりましたが、小ホールの素晴らしい響きの中で聴く愛の挨拶はまた格別のものがあり、改めて松本氏の骨太なヴァイオリンの音色を感じることができました。ロマンス第2番 ヘ長調 作品50松本氏より音楽室に飾られている苦悩に満ちた表情のベートーヴェンではない、恋する若き青年時代のベートーヴェンを連想して聴いて欲しいとのことで、一般的に認知されているベートーヴェンの楽曲とは異なった毛色を持ち、一言で表すなら「幸せいっぱい」の楽曲で聴いていてとてもほっこりした気持ちにさせられました。波の盆松本氏イチオシの曲で、ハワイに移民した日系1世の人物を主人公にしたドラマの主題歌で、アメリカ人として生きるこだわりから、間接的に原爆開発に協力したことになり、計らずも広島に残してきた家族を失ってしまうというストーリーで、主人公の悲しみと葛藤、怒りといったものが交錯する複雑な心境を表現した曲であり、じつは曲名が覆水盆に帰らず・・・的なことに絡めているのだろうかと思うところがありました。ビートルズメドレー松本氏が来場者の顔ぶれを見てビートルズ世代の方が多いようですのできっと楽しんでいただけるとのお話がありましたが、先日のめざましクラシックスでも取り上げられた内容を引用するとバッハ、ベートーヴェン、ブラームスという巨匠に続く4つ目のBという位置づけがビートルズなので、もはや全世代の音楽なのかもと感じるところがありました。そしてメドレーの順番で一番最後に一番盛り上がる「Hey Jude」が来るというのも編曲の妙という感がありました。オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」松本氏は子供の頃からパヴァロッティの大ファンだったそうで、朗々と歌い上げる様は見事とのことでした。また今回演奏するアレンジでは、ピアノパートがとても凝っていて聴き所ありとのことで、松本氏のパヴァロッティを彷彿とさせる堂々たる歌い上げとともに酒井氏のダイナミックな演奏力を存分に感じ取ることができました。ツィゴイネルワイゼンいわゆるジプシーの楽曲ですが、いわゆる泣きが入るのが日本の演歌に共通する部分があり、日本人の琴線にも触れるところがあるとのことでした。いわゆる弦楽器の特徴的なグリッサンドが多用されていることもあって、とことん泣きの入りを感じるところでした。またこの曲は超絶技巧が必要ということで、プロは難しい曲を簡単そうに弾くという松本氏のポリシーもよくよく拝見させていただきました。リヒャルト・シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ変ヘ長調 作品18地域ふれあいコンサートでは1楽章のみの演奏でしたが、アナリーゼ・ワークショップでは全楽章をとことん掘り下げて十分に予備知識を得た状態で拝聴となりました。またリヒャルト・シュトラウスはピアノパートが弾きにくいことで知られていますが、裏話としてあるヴァイオリニストが請け負ったコンサートで相方を務めるピアニストにスケジュールのオファーをしたところOKをもらえたが、後日リヒャルト・シュトラウスが演目にあることを伝えると、急用ができて共演を辞退されたことがあったそうです。辞退したピアニストとすれば「オファーはありがたいけど、リヒャルトは練習が大変だから遠慮したい。」という気持ちがあったことは容易に推測できるところでした。そして、地域ふれあいコンサートでも松本氏がしきりに酒井氏を素晴らしいピアニストと持ち上げていたのも、リヒャルトをこなせる力量をリスペクトしていたからと感じたところです。楽曲としては、デュオなのにオーケストラの音がする・・・というのが特徴で、それがピアノパートの音が多くなり、ピアノでいろいろな楽器の音色をイメージしなくてはならず難解になっている要因の1つなのかなと思いました。とにかく豪華な響きが、リヒャルト・シュトラウスの音楽の真骨頂で、全楽章を通しで聴くということは相当に圧巻でした。演奏後には松本氏の弓の毛がほつれていたので、その熱演ぶりが伺えるところでした。未来へアンコール1曲目は、松本氏が作った楽曲で自作自演となる未来へです。聴き手にとってもメインのヴァイオリンソナタで耳が熱々になっているところでのクールダウン的な曲調でコンサートの余韻を感じるひとときになりました。チャルダッシュ昨年来、何人かのヴァイオリン奏者のチャルダッシュ、マリンバでのチャルダッシュなどいろいろ聴かせていただきましたが、同じ曲の聴き比べの回数が重なると、奏者の個性の違いが感じられるところがあって、とても興味深いところがありました。松本氏のチャルダッシュは、弱奏部のフラジオレット奏法でもしっかりと音が立っているのが特徴的で、これまでの記憶ではヴァイオリンの伊藤文乃氏は、音が聞こえるか聞こえないくらいの繊細な表現。マリンバの塚越氏はこの部分をマレットを逆さにして柄の部分で鍵盤を叩いて表現。そして松本氏の演奏は確固たる意思を持った骨太感で表現ということが感じられました。まとめ今年度のサントミューゼのレジデントアーティストによる最後の公演となりましたが、本リサイタルを入れて、地域ふれあいコンサート2公演とアナリーゼワークショップで最大4回アーティストと触れ合うことができ、これは1回のリサイタルで終わる公演に比べて、4倍楽しめる企画であると感じるところです。またそれはアーティスト側も感じているようで、音楽的にはアナリーゼ・ワークショップをやるために演目を勉強することで、より深く作曲家や楽曲を理解し、リハーサルの合い間をぬって温泉に行ったり、そばを食べたり、グルメ巡りをしたりと上田での想い出がたくさんできましたとのことで、松本氏からは是非また呼んでいただきたいというリクエストがありました。
March 5, 2022
開催日:2022.2.13(日) 15:30開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容)信州ハムプレゼンツ めざましクラシックスin上田に行ってきました。プログラム第1部1.歌劇「ウィリアム・テル」序曲より“スイス軍の行進”/ロッシーニ2.G線上のアリア/バッハ3.交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」/ベートーヴェン4.ハンガリー舞曲 第5番/ブラームス5.ビートルズ・メドレー ~Strawberry Fields Forever~Eleanor Rigby~Yesterday~第2部6.筒美京平・メドレー ~また逢う日まで~ブルー・ライト・ヨコハマ~木綿のハンカチーフ~17才~サザエさん~ さらば恋人~シンデレラ・ハネムーン~よろしく哀愁~7.ショパン・メドレー ~別れの曲~子犬のワルツ~ノクターン第2番~ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 英雄ポロネーズ~華麗なる大円舞曲~革命のエチュード~-スペシャルゲスト 荻野目洋子-8.ダンシング・ヒーロー9.Frankie10.虫のつぶやき11.ラプソディ・イン・ブルーアンコール12.見上げてごらん夜の星をレポート歌劇「ウィリアム・テル」序曲より“スイス軍の行進”コンサートのオープニングは、序曲でというのはまさに王道ですが、まずこの1曲でめざましクラシックアンサンブルのの素晴らしいハーモニーを感じることができました。G線上のアリアここからは、ドイツの3大Bと言われるバッハ・ベートーヴェン・ブラームスを取り上げるということで、まずはバッハの代表作の1つであるG線上のアリアの演奏となりました。これまでサビの部分はよく耳にしてきましたが、前奏からまるごと聴く機会はなかなか無かったので、フルバージョンのG線上をじっくり楽しむことができました。交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」私の中ではサイトウキネンフェスティバルでの千人合唱の圧倒的スケール感がとても印象に残っている第9ですが、弦楽四重奏+ピアノという編成でありながら、PAを上手く活用してオーケストラの迫力を感じる重厚さを感じました。ハンガリー舞曲 第5番演奏に先立ってヴァイオリンについての紹介がありました。高嶋氏が解説し、2ndヴァイオリンの森本安弘氏が演奏を担当する形で、さまざまな奏法ビブラート、ピッチカート、フラジオレット、重音、ミュートなどを学びました。日頃弦楽器の演奏を耳にしてきても、あのチャルダッシュの弱奏部はフラジオレット奏法であると意識している訳ではなかったので、まさに知識としてのめざましクラシック!なのかなと感じました。そしてこの曲では、オーケストラ気分を味わってもらうためということで軽部氏が指揮をしての演奏となりましたが、演奏により積極的に介入する指揮で、存在感が半端ないところでした。最も演奏後に高嶋氏から「あながち間違っていない指示を出されるから演奏する側としてはやりにくい!」とのつっこみも入って、場が和みました。ビートルズ・メドレードイツの3Bに続くBのビートルズとのことで演奏が始まりました。クラシックスタイルのビートルズはとてもきれいな音楽に仕上がっていて、印象とすればしっとりとしたビートルズという感じですが、原曲が持つ力をうまく利用して聴きやすいアレンジになっているなと思いました。筒美京平・メドレー2020年に亡くなった筒美京平のヒット曲のメドレーですが、また逢う日までとギンギンにさりげなくは、軽部氏がボーカルを担当。歌うアナウンサーの評判どおりの活躍でしたが、演奏後に高嶋氏にマッチの仮装をダメ出しされるという展開で会場の笑いを取りましたが、めざましクラシックとして考えた時にはこれは狙った演出の一つなのかなと感じたところです。ショパン・メドレーピアノ担当の菊池亮太氏はストリートピアニストとして有名な方だそうで、高嶋氏・軽部氏とMCでそのあたりのことが話されました。それによればユーチューバーとして有名とのことでした。そして演奏曲は菊池氏がピアニストにとっては永遠の課題というショパン。ショパンといえば昨年ショパンコンクールで日本人が二人入賞する快挙で盛り上がったり、上田地域では高橋多佳子氏がサントミューゼの企画でショパン・ザ・シリーズを公演したり、のだめカンタービレの音楽会のファイナルでピアノ協奏曲第1番を演奏したりと話題が尽きないところでしたが、そのショパンの名曲群のおいしいところ取りのメドレーということでなんとも贅沢なひとときになりました。その後は、菊池氏のリクエストコーナーということで、聴衆からのリクエスト数曲を即興で弾くという楽しい企画がありました。ダンシング・ヒーローここからはスペシャルゲストの荻野目洋子氏が登場しての演奏となりました。ダンシング・ヒーローは大阪府立登美丘高校ダンス部が取り上げて再ブレークした感がありますが、2017年にリバイバルヒットで日本レコード大賞特別賞を受賞しており、そんな話題の曲をオリジナルの荻野目氏の生歌で聴くことができたということが、とても貴重な機会になりました。Frankie1959年の懐かしい洋楽曲とのことですが、呼びかける名前のところを観客の一人に読み替えるという計らいがありました。またこの曲では、軽部氏がコーラスとして参加しましたが、高嶋氏から「コーラスなんだからでしゃばらないで後ろでやりなさい!」と譜面台を下げられてしまい、そこは少しかわいそうなところかなと思いました。虫のつぶやき2020年8月に荻野目氏が作詞作曲を手がけた新曲で、荻野目氏がウクレレを弾きながらの演奏となりました。軽部氏からの話では、荻野目氏はウクレレでは名を馳せているそうで、興味深いところでした。ラプソディ・イン・ブルージャズの要素を取り入れたクラシック曲というところですが、冒頭のクラリネットのグリッサンドはピアノで表現されていて、コンサート締めくくるに相応しい豪華なアンサンブルがとても印象的でした。見上げてごらん夜の星を特別ゲストの荻野目氏が再登場して往年の名曲を歌い上げ、さらに軽部氏が追従し、最後はデュエットで締めくくるという感動のフィナーレとなりました。まとめめざましクラシックは、今回が381回目のコンサートとのことで、歴史とすれば25周年を迎える人気のコンサートシリーズで、実際のところコロナ渦にも関わらずチケットは発売後早いうちに完売となり、今回もなんとかチケットを取れた感がありました。そしてこれだけ大きな公演をしたのに、軽部氏が翌日ちゃんとアナウンサーの仕事をしているといことに驚いたのですが、考えてみればアマチュアの音楽活動も日曜日に本番をやっても月曜日には普通に仕事ということで、要は時間の使い方なのかなと感じるとともに、改めて休日の過ごし方をもっと有意義にしなくては!と感じるところがありました。
February 13, 2022
開催日:2022.2.11(金) 14:00開演場所 :西部公民館 大ホールサントミューゼのアーティスト・イン・レジデンス 地域ふれあいコンサートVol.70 松本蘭ヴァイオリン・コンサートへ行ってきました。プログラム1.エルガー/愛の挨拶2.武満徹/波の盆3.ビートルズメドレー「Here,There and everywhere」「Michelle」「Hey Jude」「Yesterday」4.プッチーニ/オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」5.ベートーヴェン/ロマンス第2番 ヘ長調 作品506.リヒャルト・シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ変ヘ長調 作品18より第1楽章アンコール7.トルコ行進曲 ピアノソロ8.未来へレポート愛の挨拶コンサートのオープニング曲の定番中の定番曲ですが、何度聴いても温かい気持ちにさせられるやさしい曲調がとても魅力的でした。波の盆ハワイに移民した日系1世の人物を主人公にしたドラマの主題歌で、アメリカ人として生きるこだわりから、間接的に原爆開発に協力したことになり、広島に残してきた家族を失ってしまうというストーリーとのことでした。悲しみや葛藤などが入れ乱れる複雑な心境を表現した曲であり、ある意味レクイエムにも聴こえるところがありました。ビートルズメドレークラシックの名曲がメドレーの繋ぎに使われているという面白い編曲で、とてもよいと思いました。メドレーのラストがヘイ・ジュードになりますが、ここでお二人のテンションがかなり上がってきて、高揚感につつまれた感がありました。オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」とても上品で美しい曲調が印象的な楽曲ですが、とても二人で演奏しているとは思えないような立体感がありました。またこの曲はなんといっても日本女子フィギュア唯一のオリンピック金メダルを獲得した荒川静香選手のフリーの曲として日本人に知られているので、ちょうど4年に一度の冬季オリンピック期間中に演奏されたことも何かの縁と思うところがありました。ロマンス第2番 ヘ長調 作品50ベートーヴェンが若かりし頃の作品ですが、ベートーヴェンに限らず一般的に多くの作曲家において若い時の作品は明るく希望にあふれた作品が多い傾向があるのかなと思いました。ヴァイオリン・ソナタ変ヘ長調 作品18より第1楽章3月5日のリサイタルで演奏されるメインプログラムの中から1楽章のみの抜粋演奏ですが、ミニアナリーゼが行われ松本氏、酒井氏の両名からそれぞれの立場でお話がありました。またこちらの楽曲は、作曲者のリヒャルト・シュトラウスが後に妻となるパウリーネと恋愛関係にあった時に書かれた作品なので、その恋心のようなものも表現されているとのことでした。またパウリーネはとても気性が荒い女性だったそうで、恋心を抱きながらも不安を感じるところもあったらしく、そのあたりが音楽の調性に表れていて、明るい音でスタートしたと思ったら、すぐに物悲しい音になる・・・といったところで、女心と秋の空を表現した楽曲でもあったのかなと感じました。トルコ行進曲アンコール1曲目は、松本氏がサプライズでピアノ演奏。ねこふんじゃったからトルコ行進曲を1フレーズ弾いたところで、酒井氏に演奏を変わるよう促されて、トルコ行進曲の演奏を再スタートし本職の圧倒的な力量を見せ付けることとなりました。演奏後に松本氏をして「やはり本職のピアニストには叶わない・・・。」とのことで、何事も極めるとはどういうことかを垣間見れた感がありました。未来へ松本氏が作った曲とのことで、コロナ渦が思った以上に長引いていることで演奏家としてはとても厳しい状況が続いていること。その中でもクラシックのコンサートは、感染拡大の危険が少ないことなどが科学的に実証されてきたことから、だいぶ元に戻ってきたことなどが話され、そんなこともひっくるめて未来への想いを馳せることのできるこの曲を届けていただいたという印象を受けました。まとめ先月に行われた地域ふれあいコンサートVol.67に続いての拝聴となりましたが、ほぼ同じプログラムとはいえ、MCが違うことはもちろん、楽曲についてもCDを繰り返し聴くのとは全く違うということを今回も感じました。このあたり、いくらデジタル文化が進歩して高音質で音楽を記録でき、後でCDやユーチューブなどで聴くことができても、音楽はやはり一期一会の文化であり、その時にその場所で聴くのでなければ感動が半減してしまうのかなと感じました。
February 11, 2022
開催日:2022.2.10(木) 19:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容)松本蘭 ヴァイオリン・リサイタル関連プログラムのアナリーゼワークショップに行ってきました。プログラムアナリーゼ演奏リヒャルト・ワーグナー/夢~リヒャルト・シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18よりレポートまずは、オープニングで1曲ということでワーグナーの夢が演奏されました。その後、リサイタルのメインプログラムであるヴァイオリン・ソナタ変ホ長調作品18の作曲者であるリヒャルト・シュトラウスについて、家庭環境から取り巻く背景など、かなり詳しいこともまで掘り下げてのお話がありました。内容としてリヒャルト・シュトラウスはワーグナーに大きく影響された作曲家であったが、幼少期はワーグナーの音楽を嫌った父から古典しか聴かせてもらえずに育ったとか、それならばなぜ父はワーグナーと同じリヒャルトという名前を息子につけたのか・・・。経済的には、父は有名な首席ホルン奏者、母がドイツの有名ビールメーカーの御令嬢という資産家で、大変恵まれた環境で音楽をやっていたことなどが紹介されました。そしてリヒャルト・シュトラウスの代表的な作品である交響詩「ドン・ファン」、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、2001年宇宙の旅でおなじみの「ツァラトゥストラはかく語りき」などに触れました。続いてはリサイタルで演奏するヴァイオリンソナタの解説に入り、1楽章・2楽章・3楽章と曲の内容を説明してから奏でて実証するといった感じで進み、演奏者自らがそれを行うという意味でとても贅沢なアナリーゼとなりました。まとめコロナ渦ということもあり、松本氏、酒井氏両名ともマスク着用にての公演でしたが、ハンズフリーマイクを装着することで、トークと演奏の切り替えに時間のロスが無くできるということで、1時間という短い時間をフル活用した感がありました。
February 10, 2022
開催日:2022.1.23(土) 14:00開演場所 :上野が丘公民館 大ホールサントミューゼのアーティスト・イン・レジデンス 地域ふれあいコンサートVol.69 松本蘭ヴァイオリン・コンサートへ行ってきました。プログラム1.エルガー/愛の挨拶2.武満徹/波の盆3.ビートルズメドレー「Here,There and everywhere」「Michelle」「Hey Jude」「Yesterday」4.サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン5.プッチーニ/オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」6.ベートーヴェン/ロマンス第2番 ヘ長調 作品507.リヒャルト・シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ変ヘ長調 作品18より第1楽章アンコール8.トルコ行進曲 ピアノソロ9.真田丸メインテーマレポート愛の挨拶コンサートのオープニング曲としておなじみの楽曲ですが、それだけに弾き手が持つ個性の第1印象を感じるのにとてもよいと感じます。そんな中、ヴァイオリンの松本氏とピアノの酒井氏による演奏は、輪郭がはっきりしていて音量もしっかりあるとても積極的な演奏という印象を受けました。波の盆東京オリンピックの閉会式でダンスのBGMとしても演奏された楽曲とのことですが、松本氏お気に入りの楽曲とのことで、ゆったりとした和のテイストとどこか懐かしい感じのするメロディーに癒しを感じたひとときになりました。ビートルズメドレー単なるビートルズの曲をメドレーにしたものではなく、クラシックの名曲が埋め込まれているという凝った編曲とのことでした。何の曲が埋め込まれているか?ということについて、聴いてすぐにわかったのは、間奏的な位置にチャルダッシュが入っていたこと。またこの後に演奏されるロマンス第2番もあったりと1度に2度おいしい感がある楽曲でした。ツィゴイネルワイゼンヴァイオリニストにおいて難関の超絶技巧の楽曲との紹介がありました。松本氏曰く「難しい曲をいとも簡単そうに弾くのがプロというもの。」と師匠に教わったそうで、「どのように弾くか、私の表情や手元にご注目下さい!」とのことで、演奏を涼しい顔で、超絶技巧をたんたんとこなしてゆく場面がとても印象的でした。オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」この曲でよく話題になるのは2006年のトリノオリンピックで荒川静香選手が金メダルを獲得した時にフリー滑走で流れていた曲というものですが、後にも先にも日本人フィギュアスケート女子で唯一のオリンピック金メダル獲得という偉業を回想させられるところがありました。ロマンス第2番 ヘ長調 作品50ベートーヴェンが28歳くらいの若い時に作られた楽曲とのことで、晩年に書かれた作品とは明らかに違う雰囲気があり、ある意味みずみずしい曲調がとても印象的でした。ヴァイオリン・ソナタ変ヘ長調 作品18より第1楽章3月5日のリサイタルで演奏されるメインプログラムの中から1楽章のみの抜粋演奏とのことでした。抜粋演奏といっても10分におよぶ大曲になることもあり、演奏に先立って楽曲のミニアナリーゼが行われました。それによるとベートーヴェンなどの楽曲であれば、しばらくは同じハーモニーが続くものだが、シュトラウスの作風は、ころころ変化する安定しないハーモニーがとても魅力的、一方でピアニストが作った曲ではないのでピアノパートが手になじみにくい難しさがあるなど弾き手側の内部事情も語られました。そんなことを心に留め置きつつ演奏を聴くとなるほどと思う部分もあって、改めて弾き手の想いを事前に知るということは大切だなと感じた次第です。トルコ行進曲アンコール1曲目は、松本氏がサプライズでピアノ演奏。ねこふんじゃったからトルコ行進曲を1フレーズ弾いたところで、酒井氏に演奏を変わるよう促されて、トルコ行進曲の演奏を再スタートし本職の圧倒的な力量を見せ付けることとなりました。真田丸メインテーマ2016年~2017年頃には大流行した真田丸メインテーマも最近は耳にすることもとんとなくなりましたが、久しぶりに聴くことができ、当時を懐かしく想い出すことができました。まとめ限られた演奏時間で少しでも多くの音楽を届けたいという想いや、運営側の感染対策の徹底の意味もあり、マスクの着脱や換気にかかる時間短縮のため、MCは1曲目と2曲目の間と5曲目と6曲目の間にまとめるなどコロナ渦での演奏会として腐心した工夫がありました。また予定されていた小学校でのアウトリーチが直前に中止になり、子供たちに音楽を届けることができなかったという悔しい想いから、開催されたこの公演へ込めた想いはいつにもまして強いものがあったようです。
January 22, 2022
開催日:2022.1.15(土) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容)塚越慎子マリンバ・リサイタルへ行ってきました。プログラム前半1.ハチャトゥリアン:剣の舞2.サン=サーンス:動物の謝肉祭より「白鳥」3.ベートーヴェン(ブリューアー編曲):エリーゼのために4.武本和大:トランキュリティ5.ステンスガード:サルサ・メキシカーナ(マリンバ・ソロ)6.挟間美帆:デルタ・リブラ後半7.ファリャ:火祭りの踊り8.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番より「悲愴」第2楽章9.モーツァルト(サイ編曲):トルコ行進曲10.武本和大:アズ・タイム・ゴー・オン11.納所弁次郎(佐久間あすか編曲):うさぎとかめ12.ピアソラ:エブリビオン13.モンティ:チャルダッシュアンコール14.ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー(抜粋)レポート剣の舞昨年行われた地域ふれあいコンサートでは、マーチング木琴で演奏しながら入場というスタイルでしたが、リサイタルでは普通に入場してマリンバでの演奏となり、これはこれでとても新鮮なものがありました。塚越氏からは、原曲では木琴が担当しているが、マリンバも木琴に近い楽器なのでより近い雰囲気を感じていただるとのお話もあり、そんなイメージをしながら楽しませていただきました。動物の謝肉祭より「白鳥」やわらかい音色のマリンバにとても合う白鳥ですが、元祖はチェロであるものの、ヴァイオリンを始め、管楽器での演奏もしっくり来ることから、改めて白鳥は演奏する楽器を選ばない名曲なのだなと感じた次第です。エリーゼのために冒頭だけオリジナル雰囲気で入り、ガラリとジャズ風に転換して、マリンバの歯切れの良い打音での旋律の奏でがとても心地よいものがありました。トランキュリティ武本氏がこのリサイタルのために作った作品で、静寂をテーマにしているとのことでした。曲入りはとても落ち着いた曲調ですが、だんだんと盛り上がり、強く訴えるものがあることを感じさせるものがありました。このあたりは、静寂の中にもいろいろな主張があるということを感じた次第です。サルサ・メキシカーナ6本マレットによる演奏曲ですが、改めて6本マレットでの演奏の困難さと、2020年前半のコロナ自粛期間を利用してそれを克服したことなどの詳細なお話がありました。こちらの楽曲は、6本マレットに留まらず、両足にそれぞれ木の実と鈴のパーカッションをつけての演奏になったので、1人でどれだけの演奏ができるかということへの挑戦ということもあるのかなと思いました。その運動量は半端ないものだったようで、演奏後は息が上がってしまい、すぐにMCができないほどの白熱ぶりでした。デルタ・リブラ作曲者の挟間氏はニューヨークを拠点に活動している世界的なジャズ作曲家とのことで、ニューヨークが拠点といっても、世界のどこにいるかわからないという多忙な方ではあるものの、塚越氏の大学時代の後輩にあたる縁もあって、この楽曲の提供を受けることができたとのことでした。また、本日の共演者の武本氏との縁も、塚越氏の生徒さんがデルタ・リブラを演奏する時の伴奏者として紹介されたのが武本氏だったということがあったとのことでした。人の縁というものは、どこでつながるかわからないものですが、曲がつなげる縁というのはステキだなと思いました。楽曲的には、いわゆる現代音楽的ですが、難易度が高く音楽家泣かせのところがある分、芸術としては高いクオリティーが感じられるものがあったようです。火祭りの踊り後半のオープニングは、リズミカルで情熱的な曲調のファリャの火祭りの踊りで幕を開けました。踊りを題材にした曲だけにスピード感が特に印象的でした。ピアノ・ソナタ第8番より「悲愴」第2楽章塚越氏が大好きな曲で、マリンバの音色にも合いそうとのことで選曲になったようですが、曲の持つ落ち着いた雰囲気とマリンバの温かい音色がマッチして素晴らしいアンサンブルと思いました。トルコ行進曲塚越氏いわくモーツァルトに怒られそうなアレンジというところですが、あのトルコ行進曲がここまでカッコ良くなるとは!ということで、アレンジ次第で曲の色はすごく変わるものなのだということを再認識したところです。アズ・タイム・ゴー・オン武本氏のオリジナル曲で、2020年のコロナ自粛期間中に作られたとのことです。テーマは時の流れということで、時を刻む音が入っていたりして、ストーリー性を感じられるところがありました。演奏後には、二人で合わせるにあたってのエピソードなども紹介され、より身近に感じることができました。うさぎとかめジャズ風にカッコ良くアレンジされていますが、あのうさぎとかめを題材にしており、親近感が湧くところでした。途中で「あれ?曲が変わった?」と思うくらいのアレンジになっていますが、最後はやっぱりうさぎとかめだったというオチです。リサイタルの構成として考えると、こういった楽曲を取り入れるというのは、とても良いなと感じた次第です。エブリビオンこちらも塚越氏が大好きな曲とのことです。マリンバはもちろんピアノにも盛り上がりのある見せ場が用意されていて、静かな曲だがとても情熱的という雰囲気がありました。チャルダッシュクラシック音楽の名曲として、いろいろな組み合わせで演奏されていますが、マリンバはマレットによって音色を変えることができるので、より表現力が豊かになっているように感じました。今回の演奏では、マレットをだんだん硬いものに替えてゆくという方向で、チェンジする度にだんだん音が立ってくるのが手に取るようにわかり、見て聴いて楽しむことができました。ラプソディ・イン・ブルー(抜粋)地域ふれあいコンサートで演奏された18分にもおよぶ大曲ですが、聴き手からの再演を望む声があったとのことで、抜粋での演奏となりました。こちらの楽曲はオーケストラでの演奏を強く意識していることもあり、どれだか大きい音を出せるかということにも意識が向いていて、強奏部ではピアノもマリンバもこれまでのどの曲よりも強打が目立ちました。それは楽器が壊れるか手が壊れるかくらいの渾身の力が篭っていて見事としか言いようのないものがありました。まとめサントミューゼのレジデントアーティストとして、10月・11月と学校や地域公民館でのコンサート、アナリーゼワークショップを経て、最後の総まとめとも言えるリサイタルでしたが、アンコールまで含めると全14曲というとてもボリュームのある公演という印象がありました。前半が終わった段階でそれを感じましたが、後半のスタート時に「15分休んで回復しました!」とのことで、お二人が精根尽き果てるまで!という程の渾身の力で演奏していることと、そのオーラが会場を包み込んでいた感がありました。
January 15, 2022
開催日:2021.12.28(火) 14:00開演場所 :ヒオキ楽器上田店サロン(70名収容)アンサンブルノワイエのみんなのわくわくコンサートへ行ってきました。プログラム第1部1.トリッチ・トラッチ・ポルカ2.チョコレート・ダモーレ3.遠き山に日は落ちて4.バレエ「眠れる森の美女」よりワルツ5.剣の舞第2部 年忘れだよ!全員集合!ノワイエジルベスターステージ6.紅蓮華7.泣き笑いのエピソード8.裸の心9.北の国から~遥かなる大地より~10.また逢う日まで11.恋するフォーチュンクッキー12.愛燦燦13.千本桜アンコール14.カイトレポートトリッチ・トラッチ・ポルカ運動会でおなじみの曲ですが、ウィーンポルカの代表的楽曲の1つということで、オープニングに合う疾走感がとても心地よいと感じました。チョコレート・ダモーレチョコレートは甘いという連想からか、とても甘いメロディーが印象的でした。調べたところダモーレはイタリア語で愛のという意味があるようで、さしずめ愛のチョコレートというところでしょうか。このあたりは、バレンタインデーでチョコレートが愛を伝える道具として使われることなどを考えると納得なところです。遠き山に日は落ちて新世界の第2楽章ラルゴのメロディーに作詞家の堀内敬三が日本語の歌詞をつけた楽曲とのことで、通称「家路」で親しまれています。この曲を聴くと家に帰るということを連想する訳ですが、想い返せば、下校時の音楽にも使われていたかもと懐かしく感じた次第です。バレエ「眠れる森の美女」よりワルツ三大バレエの一角ということもあり、お馴染みの曲ですが、華やかなワルツで楽しく踊るバレエ団を連想しました。こちらの楽曲はもともとオーケストラで演奏するものということで、ノワイエはピアノとトランペットとサクソフォーンの3人編成だが、トランペット・サクソフォーンは基本的に音が1つしか出ない楽器なので、ピアノの役割がより重要で、それは曲決めなどにあたっての3人の力関係にも影響しているとのことでした。言われてみれば、ピアノは単独でのリサイタルが成り立つものですが、弦学期や管楽器はほとんどの場合、ピアノやマリンバ、ハープなどの一度に複数の音が出せる楽器と組んでリサイタルをするのが一般的なので、とても納得させられた次第です。剣の舞冒頭の鋭いタンキングから木琴の曲という印象がありますが、ノワイエは、ピアノとトランペットとサクソフォーンという編成なので、まずそのタンキングをどのパートがやるのか?ということが注目でしたが、ピアノの前奏の後にまずはトランペットが先陣を切るという形で曲に入り、以後は交代でということで、大いに楽しませていただきました。紅蓮華第2部は、ノワイエジルベスターステージと題して紅白歌合戦を意識した選曲とのことでした。最初の曲は鬼滅の刃より「グレンゲ→意外と読めない人が多いらしい・・・」ということで、掴みがよい曲調でテンションが大いに上がりました。泣き笑いのエピソード演奏前にサクソフォーンの紹介がありました。今回ソプラノ、アルト、テナーの三管が用意されていたので、それぞれについて特徴を解説しました。そして演奏曲はNHK連続テレビ小説おちょやんのテーマ曲でおなじみのこちらの曲。ボーカルが男性なので、まずテナーサクソフォンが演奏し、原曲のやさしい雰囲気がとても良く出ていて、トランペットもその雰囲気に続きました。裸の心あいみょんのヒット曲ですが、女性の恋心を歌った曲でとてもしっとりした雰囲気がステキでした。とても原曲をよく研究されているようで、曲が気に入ったら原曲を是非知ってほしいという勧めがありました。北の国から~遥かなる大地より~演奏前にトランペットの紹介があり、トランペットの魅力と題して、B♭トランペット、Cトランペット、フリューゲルホルンの三管を順番に解説してゆきましたが、今回のコンサートではB♭トランペットとフリューゲルホルンはここまでに出番が終わってしまっており、あとはCトランペットで演奏するということでした。そして演奏は、トランペットがメインを取る形でとても温かい雰囲気で北の国からの世界観を十二分に表現した素晴らしいものでした。また逢う日までこの曲を歌った尾崎紀世彦にも触れられましたが、こちらは原曲のイメージを忠実に再現するため歌のパートはテナーサクソフォーンが全て担当していました。このあたりは、表現の幅が広いサクソフォーンならではの魅力がとても良く出ていると思いました。恋するフォーチュンクッキーAKB48の大ヒット曲ですが、世界中で自国語に変換されて歌われていたことが印象に残る、いわば世界ソングとも言えるものですが、歌の部分はトランペットが担当して太い音色で元気を象徴している感がありました。愛燦燦演奏前にピアノの紹介がありました。ピアノは誰もが知っているメジャーな楽器であるということで、内容を凝縮してお題は「ピアノの鍵盤の数は88鍵です。」ということで、その知識を持ち帰る形となりました。紅白歌合戦を語る上で絶対に外せないのが、伝説の昭和の歌姫の美空ひばりですが、作曲者の小椋佳にもふれた形の曲紹介があり、より曲を知ることができました。演奏は、三人がそれぞれ主張する形で素晴らしいアンサンブルと感じました。千本桜ボーカロイドの草分け的存在の楽曲ですが、機械が歌うので本来熱い音楽なのに妙に冷静というギャップがとてもはまるのだとのことでした。こちらの楽曲は管楽器のアンサンブルでもさかんに演奏されていたので、お馴染み感がありましたが、ピアノと管楽器という組み合わせは初めて聴き、その編成の利点をうまく生かしていてとても洗練された感があると思いました。カイト2021年のコンサートにおいてかなりの演奏頻度となっているカイトですが、嵐のボーカルの掛け合いの雰囲気をテナーサクソフォーンとトランペットでとてもうまく表現しており、さらにそれを支えるピアノのかみ合いが見事で、3人で演奏しているとは思えないスケール感がありました。まとめアンサンブルノワイエは、小諸高校音楽科で出会い、共に学び、学生時代から1人でも多くの方に、音楽やそれぞれの楽器が持つ音色、そして生演奏のコンサートをお楽しみいただきたいという想いを胸に演奏活動を行うコンセプトを持ち、結成7年目を迎えるグループとのことでした。メンバーは、ピアノが町田莉佳氏、トランペットが蓬田奈津美氏、サクソフォーンが山本直哉氏ということで、編成としてはとても珍しいものだが、木管の音色・金管の音色という2つの柱があって色彩感豊かな演奏ができるということと、音楽の基本形であり、万能とも言えるピアノが入っていることで、どんな曲でも演奏できるという無限の可能性を感じさせるところがありました。またMCを交代で行うなどして、三人の個性もそれぞれアピールすることで、より身近に音楽を感じられた部分もあり、素晴らしいと感じた次第です。
December 28, 2021
開催日:2021.12.26(日) 16:00開演場所 :ホクト文化ホール 大ホール(1,971名収容) 信州大学吹奏楽団の第38回定期演奏会に行ってきました。プログラム開演前1.金管アンサンブル2.低音クラリネットアンサンブル 宝島第1部1.Transcendent Journey2.さくらのうた(改訂版)3.眠るヴィシュヌの木第2部4.Make Her Mine -in Swing-5.ドラえもん6.ジャパニーズ・グラフィティー127.カイト8.カーペンターズ・フォーエバー第3部9.オリエント急行10.フェスティバル・ヴァリエーションズレポート金管アンサンブル曲名はわからないですが、トロンボーンとチューバによるファンファーレ的な楽曲で、トロンボーン特有のパリッとした音色がとても印象的でした。低音クラリネットアンサンブル 宝島アルトクラリネットとバスクラリネットのアンサンブルによる宝島という大変珍しい編成の貴重な演奏でした。パート分けがどのようになっているか興味深いところでしたが、聴いた感じとしてはもともとの高音パートはアルト。中~低音パートはバスが担当しているのかなと思いました。Transcendent Journey演奏会のオープニングに相応しい華やかで希望に満ちた曲想がとてもドラマチックと感じました。曲目解説によれば、作曲者のロッサーノ・ガランテは、吹奏楽の分野だけでなく映画やTVの音楽でも活躍しており、他の楽曲もとてもドラマチックだとのことで、大いに興味が湧きました。さくらのうた(改訂版)2012年の吹奏楽コンクール課題曲として、当時はコンクールで勝ちづらいイメージがあったため選ぶ団体が少なかったようですが、コンクール後の演奏頻度は毎年必ずどこかの演奏会で耳にするほどの人気曲となったこともあり、作曲者の福田洋介氏が、より演奏しやすいようオプションパートの設定とソリ・ソロの選択幅の拡大や最低10名から演奏できるような改訂版を出したとのことです。この改訂版の素晴らしいところは、2012年のオリジナルの雰囲気はそのままに再現しているところで、どんな楽譜になっているか拝見してみたいと感じました。眠るヴィシュヌの木解説によれば最高神の一人である眠れる神ヴィシュヌを題材にした作品で、じつはこの世界はヴィシュヌの夢の中の出来事であると言われているそうで、そんな壮大な世界観を音楽で表現するとどうなるか・・・ということでしたが、冒頭はヴィシュヌの眠りのイメージで、霧の中にいるようなぼやけた感じがしましたが、曲が進むに従ってヴィシュヌが夢の中で覚醒し、大冒険のドラマが展開される感じがとてもわかりやすいと思いました。Make Her Mine -in Swing-スウィングガールズでも取り上げられたとてもご機嫌な楽曲で直訳すると「彼女を自分のものにしたい。」ということで、ストレートな想いが曲想によく表現されているように思いました。アレンジ的には、いろいろな楽器のソロが組み込まれていて見せ場の多いところでした。ドラえもん星野源のドラえもんということで、2018年~2019年にかけて大流行した曲ですが、中間部に古いドラえもんのフレーズが組み込まれているのが面白いところでした。また同じ音を連弾するという星野氏の作風がここでもしっかり入っているのがなるほどというところです。また演出でドラえもんファミリーが登場して、ジャイアンは後々まで絡むことがありました。ジャパニーズ・グラフィティー12数あるジャパグラシリーズの中でも演奏頻度は1・2を争う人気曲という印象ですが、銀河鉄道999と宇宙戦艦ヤマトという日本アニメの金字塔の2作品を網羅したもので、特にテレビ版のテーマのカッコ良さはしびれるものがありました。この2作品は、現在ユーチューブ等で配信視聴が可能ですが、改めて見ると、メカニック的にはいろいろと矛盾があるものの、それらを補って余りあるストーリーの完成度の高さはさすがというところです。カイトNHK2020ソングとして令和を代表する作曲家の米津玄師がこれからの時代をになっていく若者を応援したいという願いを込めて作り、歌唱は嵐が担当という鳴り物入りで世に送り出された作品で、今年のオリンピックでは日本選手の活躍とともにたくさんの感動を与えてくれました。演奏では、ジャイアンが再登場してオリンピックの印象に残ったシーンを述べた演出も良かったです。楽曲的には、とても温かくてやさしいメロディーが吹奏楽のサウンドによく合っていて原曲を凌ぐ深みを感じました。カーペンターズ・フォーエバーこの曲は真島俊夫氏のアレンジということで、難易度はわりと高めという印象がありますが、見せ場のソロもあり、アレンジの豪華さは折り紙付きかなと思います。そしてこの曲は、あの淀川工科高校吹奏楽部の18番であり、長年に渡って指導されてきた丸谷明夫氏が12月7日に亡くなられたことから、追悼演奏という意味合いもあったかもしれません。※都合により第2部にて退出してしまったため第3部のレポートが無いことはご容赦下さい。まとめ信州大学吹奏楽団はメンバー数が多く、その厚みと高いクオリティーの演奏がとても素晴らしいという印象がありますが、コロナ渦の中思うような活動ができずに悩みを重ねているというのは見て取れ、今日の公演についても「状況により中止もしくはYouTube配信のみの開催となる場合がございます。」という前置きがありました。結果的にこうして有観客にて演奏会ができて良かったと感じます。私自身、配信を否定するものではありませんが、こうして生演奏が許される環境があるならば可能な限りその場に足を運びたいという想いがあり、生演奏特有の演じ手と受け手の双方によるその場の緊張感とか空気感の共有というものが音楽には大切な要素の1つであると改めて感じた次第です。
December 26, 2021
開催日:2021.12.25(土) 14:00開演場所 :ダンスホール鹿鳴館(30名収容)ワンコインで聴けるコンサート ヴァイオリン&マリンバによるクリスマスコンサート~響きあう木の音色~に行ってきました。プログラム前半1.クリスマスメドレー きよしこの夜~サンタが町にやってくる~他2.愛の挨拶3.セルビア民謡を取り入れた北川氏のオリジナル曲4.チャルダッシュ後半5.戦場のメリークリスマス6.羊は安らかに草を食む7.クリスマスメドレー2 恋人たちのクリスマス~クリスマスイブ~ハッピークリスマスアンコール8.主よ、人の望みの喜びよレポートクリスマスメドレー1オープニングは、クリスマスを代表する楽曲のきよしこの夜からスタートとなりました。2曲目はサンタが町にやってくる。最後は賛美歌的なクリスマスの曲(曲名を想い出せずですみません・・・)ということで、まずはいっきに会場がクリスマスの雰囲気に塗り替えられた感がありました。演奏後に、ヴァイオリンの楽器紹介がありました。楽器の歴史や有名なストラディバリにふれ、後はクイズ形式で弓や弦についての触れられました。弓は馬のしっぽ、弦はスチール(かつては羊の腸)、また野口万佑花氏が使っている楽器のお年が200歳弱であること(楽器に製作年が刻印されているとのこと。)なとが紹介されました。愛の挨拶ヴァイオリンのコンサートでは定番中の定番の曲で、12月5日 の野口氏のコンサートでも演奏されていましたが、マリンバとのデュオということもあってか、調を変えて演奏したとのことでした。このあたり、先日の塚越慎子マリンバリサイタルのアナリーゼワークショップでピアニストの武本氏から調がどう変わるとどんな雰囲気に音楽が色が変わるかということについて勉強する機会があったので、とても興味深いものがあり、音楽の奥深さを改めて感じたひとときになりました。セルビア民謡を取り入れた北川氏のオリジナル曲マリンバのソロ曲となりましたが、途中でセルビア民謡を北川氏が歌いながら叩くというサプライズ的な演出もあり、民俗音楽の魅力の一旦を感じさせていただきました。こちらは表題にもあるように北川氏のオリジナル曲ということで、セルビア民謡に魅せられた北川氏の想いが強く入っていて、さらにアイルランドでの生活の中で得たステップや日本的な要素も組み合わせて作ったとのことです、余談ではありますが、少し前にジャズの歴史を学ぶ機会があり、アフリカと西洋の音楽が融合した結果としてジャズが誕生したという経緯から、もしかすると世界のどこにもない新しいジャンルの音楽が誕生した瞬間に立ち会っていたのかも?!という感じがありました。チャルダッシュ演奏に先立ってヴァイオリンの演奏について少しつっこんだ紹介がありました。チャルダッシュはアンコールの定番曲ではありますが、レギュラープログラムにも組み込まれることも多い曲で、私自身も今年はいろいろな編成で聴かせていただきましたが、ヴァイオリンとマリンバという編成は初めてだったので、とても新鮮な印象がありました。戦場のメリークリスマス後半の1曲目は、クリスマスにちなんだ曲でしたが、演奏後に野口氏のパリ留学時でのクリスマスの様子が語られました。それによると、日本ではクリスマスは24日・25日に限定されるが、西洋では前後数日間という長い期間に設定されていて、その間は祝い続けるとのことで、そのあたりの文化の違いを知らないとクリスマス音楽に対しての解釈が少し変わってくるかなと感じた次第です。羊は安らかに草を食む野口氏お気に入りのバッハの曲とのことで、あまり内容の無い曲ではあるが、不思議と耳に残る曲とのこで、「がんばれがんばれ羊さん。」という歌詞が聞こえてくるとのことでした。このあたり、1つのフレーズが執拗に繰り返されるバッハの音楽の傾向から何度も何度も刷り込まれてきて、演奏が終わる頃にはすっかり歌詞が刷り込まれた感がありました。クリスマスメドレー2本プログラムの締めくくりは、クリスマスソングのメドレーとなりました。恋人たちのクリスマスとクリスマスイブは、おなじみの曲なので、とてもほっこりした気持ちになりました。そしてメドレーを締めくくるのはハッピークリスマス。こちらは「戦争は終わった。」という副題が付けられていますが、この曲を取り入れた北川氏の想いとすれば、2020年から続くコロナ渦の終わりを願って「パンデミックは終わった。」というふうにとらえて欲しいとのことでした。主よ、人の望みの喜びよアンコールは、バッハのこちらの楽曲となりました。クリスマスという聖なる祭典にあやかったコンサートの終幕にふさわしい気品のある素晴らしい演奏でした。まとめ演奏者である野口氏と北川氏が入り口で受付をやっていたということで、コロナ渦以降、なかなか演奏者と話せる機会が無かったこともあり、わずかではありますが交流を深めることができました。コンサートのコンセプトがホームパーティー的なものにしたいとのことで、来場された子供さんへのクリスマスプレゼントや大人にも抽選で北川氏のCDや野口氏のヴァイオリン教室の体験レッスン券が当たるなど、演奏だけでなく、総合エンターテインメントとしても完成度が高い素晴らしいコンサートだったと感じました。
December 25, 2021
開催日:2021.12.19(日) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容)2年ぶりに開催された上田市民吹奏楽団のポップスコンサート2021に行ってきました。プログラム前半1.混成9重奏 聖者の行進2.フルート5重奏 「天空の城ラピュタ」メドレー3.サクソフォーン4重奏 ラムのラブソング4.クラリネット5重奏 クリスマスメドレー5.管打楽器11重奏 バレエ組曲くるみ割り人形より後半6.ディズニークラシックスレビュー7.川の流れのように8.A列車で行こうアンコール9.また逢う日まで10.ジングルベル in Swing!!レポート聖者の行進オープニングはご機嫌なアメリカ民謡のこちらの楽曲でのスタートとなりました。基本的な曲の枠組みはとてもシンプルな曲ですが、いろいろなパートが順番に演奏してゆくことで、バリエーションが広がってとても楽しいものになりました。また1曲目から観客参加型の手拍子のリズムレクチャーが入りました。「天空の城ラピュタ」メドレー冒頭、ホールの横の方からトランペットでハトと少年を演奏して、間を置いてからフルートによるアンサンブル演奏が始まりました。この編曲版はクラリネット4重奏で演奏したことがあり、曲の構成も全く一緒でとても親近感を覚えました。サクソフォーン4重奏 ラムのラブソング当初演奏会パンフを見たときに「ラムのラブソング?知らない曲だな・・・。」と思ったのですが、うる星やつらのテーマだったということで、ああなるほど!となりました。こちらはサクソフォーン4重奏にパーカションも入ってのとてもコミカルな楽しい演奏でした。クリスマスメドレー12月19日ということで、クリスマスまであと6日!この時期の演奏会でクリスマスを取り上げない手はない!という感がありますが、おかげさまでクリスマスムードを満喫することができました。クラリネットは音域が広いので、B♭管でも十分に厚みのあるアンサンブルができますが、さらにバスクラリネットが入れば、かなりダイナミックな響きがすることもあって、とても魅力的と思いました。バレエ組曲くるみ割り人形よりくるみ割り人形についてのクララと王子の心温まるエピソードの紹介がありました。演奏は、序曲、おもちゃの兵隊の行進曲、こんぺいとうの踊り、ロシアの踊りのメドレーでしたが、特にこんぺいとうの踊りを聴くと、過去に私が演奏した時の記憶が鮮明に蘇ってきてとても懐かしく感じました。余談ながらこちらはバレエ組曲ということで、いわゆるチャイコフスキーの三大バレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」でもあり、是非くるみ割り人形のバレエ公演を一度見てみたいものだと思いました。ディズニークラシックスレビューこちらの曲は雑然とした個人練習シーンからドラムスがスティックをカカカカッ!とやって練習をやめさせて曲がスタートする面白い楽曲ですが、その独特の冒頭からステージのオープニング曲として演奏されることが多いように思います。川の流れのように演奏前に司会の佐藤氏から最晩年の美空ひばりとの出会いのことが語られました。かなり体が弱っていて、自力でステージへの階段が登れず、リフトで上げるような状態だったのに、ステージに上がったら圧倒的な歌唱をして度肝を抜かれたとのことで、偉大な昭和の歌姫の威厳を感じた次第です。A列車で行こうこれまで漠然とA列車で言ってましたが、司会の佐藤氏からA列車のAは急行のことであることが紹介され、なるほどと思いました。本日の演奏は有名なニューサウンズインブラス岩井氏による編曲版ということでおなじみ感も手伝って大いに楽しむことができました。トランペット、トロンボーン、サクソフォーンのソロも素晴らしく、まさに急行の贅沢な列車の旅をイメージすることができました。また逢う日までこの曲を歌った尾崎紀世彦が亡くなって8年が経ちましたが、久しぶりに聴いて名曲は色褪せることはないのだなと感じた次第です。こちらはアンコールの定番曲と思います。ジングルベル in Swing!!わくわく感が高いクリスマスソングのジングルベルですが、それをカッコ良くスイング調にアレンジした曲になります。聴いてみるとジングルベル以外のクリスマスソングの断片があちこちに使われているようで、まさにザ・キング・オブ・クリスマスみたいな楽曲と思いました。まとめ今回のポップスコンサートは、前半にアンサンブルステージ、後半に指揮者不在でも演奏できる曲というコンセプトで構成されていました。2020年春のコロナ渦以降、2年が経過しようとしていますが、プロの楽団は2020年中に活動を再開させているものの、アマチュア楽団はいろいろな職を持ったメンバーが集っているという特性から人が集まらないために満足な練習ができない状況が続いている印象があります。そういうことから、なかなか演奏会を開くというハードルが高いのも事実ですが、そんな中、集まれた人数でどうしたら演奏会を開けるのか・・・と工夫した結果が今日のポップスコンサートであり、その心意気に大いにエールを贈りたいと思います。
December 19, 2021
開催日:2021.12.11(土) 14:00開演場所 :相模女子大学グリーンホール 大ホール(1,790名収容→ソーシャルディスタンスで半減) 関東を代表するバンドで市民に寄り添った楽しい演奏会を開いている相模原市民吹奏楽団の定期演奏会に行ってきました。プログラムテーマ 英国からの招待状開演前A.クラリネットアンサンブル シアターB.金管アンサンブル ビスマスサイケデリア2第1部1.ジュビリー序曲2.吹奏楽のための第一組曲3.エニグマ変奏曲より「ニムロッド」4.組曲『惑星』より「木星」第2部5.僕らのインベンション6.蒼き三日月の夜7.ディープ・パープル・メドレー8.オペラ座の怪人アンコール9.ハッピークリスマス10.Yours!レポートクラリネットアンサンブル来るアンサンブルコンテストでの演目の披露演奏とのことですが、高音から低音までのクラリネットの音色がとてもよく融合している感じがある一方で、奏者一人一人の存在感がしっかり感じられるところもあり、曲の持つ躍動感もあいまってわくわく感かつスリリングといった緊張感のあるとてもステキな感じがありました。金管アンサンブルパーカッションが加わった現代曲のような楽曲でしたが、古典的な金管アンサンブルと違って主旋律のようなものが存在しない分、ある意味各パートがそれぞれに「私はこれを奏でます。」的な主張をしあうような面白さがありました。その中でのパーカッションの役割は「よろしい!」的な鐘を鳴らす裁定者だったかもしれません。ジュビリー序曲テーマの英国からの招待状のオープニングは、英国を代表する作曲家であるP.スパークのこちらの楽曲でしたが、スパークの楽曲はとても華があるのでオープニングにふさわしく選曲の妙も感じた次第です。吹奏楽のための第一組曲ホルストが吹奏楽のために作った吹奏楽オリジナル曲で、吹奏楽の世界では多くの人たちが演奏したことがあるという有名な楽曲と思いますが、とても奥が深く演奏することで得られることが多いように感じます。私も演奏したことがあり他団体の演奏を聴く度にその時の練習で苦労したことなどを想い出しました。演奏後に福本先生から第一組曲について吹奏楽の元祖のような曲で、若い方にも演奏してもらいたいし、大事にしたい曲とのお話があり、とても共感できた次第です。エニグマ変奏曲より「ニムロッド」エニグマとは「謎」を表す言葉ですが、福本先生の解説によればそれぞれの楽章にいろいろなメッセージが隠されており、これまでに解明されているものもあるが、故人である作曲者エルガー自身がまだ隠されたメッセージはあるが、それは明かさずにおきたいとのことで、とても神秘的な楽曲と感じました。またこのニムロッドは一番美しい楽章とのことで、静かに楽しむとともに、ふと今放映中のNHKの大河ドラマ青天をつけのテーマ曲を想い出した次第です。組曲『惑星』より「木星」福本先生と高松氏の面白トークが炸裂していましたが、組曲『惑星』には地球は無いんですよね・・・。地球があるのは別の曲だった・・・。とかいろいろと場が和みました。また中間部を抜き出した平原綾香のジュピターなどの話題もありました。この中間部は、アンサンブル曲としてもたくさん楽譜が出版されているので、私も何度かお世話になっています。そして本日演奏されるのはいわゆるフルバージョンということで市吹の大編成での演奏には大いに圧倒されました。余談ながら木星やるならホルン8人用意して!とホルンパートから話が出るのが吹奏楽あるあるみたいなところですが、小さな編成のバンドでは夢のまた夢・・・。それが市吹の編成ではその8人が揃っており、8人揃うというのはこういうことだったかということを身を持って感じられて本当に圧巻でした。僕らのインベンション市吹の恒例プログラムとなるその年のコンクールで演奏した曲の披露となりましたが、5月のグリーンコンサートでの演奏から大幅にクオリティーが上がった素晴らしい演奏と感じました。実際のところこちらの楽曲は、なかなか難しくて初見では通すことすらできず途中で止まるのが当たり前で、本当に課題曲3のレベルかな?と思うようなところがありましたが、仕上がった楽曲はとても聞き所が多いと感じるところがありました。余談ながらこの曲を紐解くには、作曲者の宮川彬良氏が持つ独特の世界観を探ってゆくということが近道の1つなのかもという印象がありました。蒼き三日月の夜伊達政宗の三日月兜を題材にした楽曲ですが、そこには父の輝宗が息子へかける愛情が強く描かれていて、その父との悲劇的な別離という歴史の事実も含めて聴き手を涙させるものがありました。楽曲的には、いわゆる和のテイストの味付けとしての太鼓がとても大きな役割を果たしているような印象があり、こういうところが邦人作品ならではカッコイイ部分と感じた次第です。ディープ・パープル・メドレークラリネットとサクソフォーンの座席位置を入れ替え、サクソフォーンセクションを強調しての演奏となりました。こちらの楽曲の原曲は1970年代のものですが、楽譜的にはニューサウンズインブラス96に収録されていたもので25年前とそこそこ昔ではあるものの、最近の演奏会でもそこそこ耳にする楽曲の1つです。かなりハードなので一般バンドではスタミナが続かないということで、主に高校生のスクールバンドを中心によく演奏されている印象があり、私の中では学生の曲というイメージがありました。そんな中で市吹がこの曲を取り上げ、大編成にてド迫力の演奏を聴かせてくれ本当に圧巻と思いました。またこの曲ではバリトンサクソフォーンのソロがありますが、テナーとアンサンブルにしてよりカッコ良くなっていました。オペラ座の怪人アメリカのジョン・ウィリアムズ、日本の久石譲といったポジションにあたる英国のアンドリュー・ロイド=ウェバーの代表的楽曲がオペラ座の怪人とのお話がありました。そしてオペラのシーンが演出として行われ、怪人・クリスティーヌ・ラウルが登場しました。その素晴らしい音楽のもと繰り広げられた演出はオペラ座の怪人のラストシーン(怪人がマスクを残して姿を消す・・・。)で静かに幕を閉じるというもので涙をそそられるところでした。演奏後は、消えた怪人を福本先生がイリュージョンで再登場させるという演出も加わってとても面白かったです。ハッピークリスマスアンコール1曲目は、英国の代表的なアーティストのビートルズの楽曲より。クリスマスも近いということで、こちらの選曲になりました。チャイムとグロッケン、鈴によるオープニングは一足早いクリスマスムードを出していました。Yours!最後はおなじみの市吹のテーマ曲ですが、今回のソリストは冒頭がオーボエ、後半がサクソフォーンと最もスタンダードな形ではなかったか?と思いました。まとめ今回終演時間が16:30と、まさにタイムテーブルぴったり感がありましたが、2時間という短い公演時間の中で、テーマの英国からの招待状と夏のコンクールでの演奏曲の披露。そして開演前にはこれから行われるアンサンブルコンテストへ出場する壮行演奏と、本当に内容が凝縮された演奏会という印象がありました。そして続くコロナ渦の中で練習会場が使えないという困難もある中で様々な工夫をして活動を粛々と進め、演奏会当日もできうる限りの対策をして、このような素晴らしい公演を実現させたことは大変素晴らしいことであり、全国にたくさんある音楽団体にとっての希望の光であると感じました。
December 11, 2021
開催日:2021.12.8(水) 19:00開演場所 :坂城町文化センター 大会議室サントミューゼの上田地域定住自立圏連携事業 岡田奏 ピアノコンサート in 坂城町へ行ってきました。プログラム1.モーツァルト:フランスの歌「ああ、お母さんに聞いて」による 12の変奏曲(きらきら星変奏曲)ハ長調 K.2652.ショパン:ワルツ 第6番「小犬のワルツ」変ニ長調 作品64-13.リスト:パガニーニ大練習曲 第3曲「ラ・カンパネラ」嬰ト短調4.ドビュッシー:プレリュード(前奏曲)集 第1週から「沈める寺」5.サン=サーンス:かわいいワルツ 変ホ長調 作品1046.サン=サーンス:6つのエチュード 第5協奏曲のフィナーレによるトッカータ 作品111-67.ショパン:バラード 第1番 ト短調 作品23アンコール8.ドビュッシー:月の光レポート12の変奏曲(きらきら星変奏曲)岡田氏登場後、まずMCから入りました。今日ここへ来ることをとても楽しみにしていたことや北海道函館市出身ということもあり雪がとても好きだが、今日は降らなくて残念なこと・・・。そして10ヶ月の息子がいるので、毎日このきらきら星を聴かせていることなどを話され、とても親近感を感じることができました。そして演奏は、おなじみのきらきら星ですが、こちらはモーツァルトが作った原版ということで弱奏も強奏もあってとても音楽のバリエーションが広い感じを受けるとともに、岡田氏のダイナミックな演奏にとてもわくわくした感じを受けました。ワルツ 第6番「小犬のワルツ」変ニ長調ショパンのワルツではおそらく最もよく演奏されている曲なのかなと思いますが、先日の生で聴くのだめカンタービレの音楽会でも高橋氏がソリストアンコールで演奏した曲でもあったので、その弾き方の違いにも着目しました。パガニーニ大練習曲 第3曲「ラ・カンパネラ」嬰ト短調鐘をテーマにした曲でピアノの演奏会ではとてもよく演奏される曲ということで、それだけに演奏者の個性がより良く発揮される曲でもあるのかなと思いました。岡田氏の打音はとても力強くスケールが大きい感じがして、緩急もすごくよく効いており、輪郭がはっきりしていて、どんどん音が体に入り込んでくるような、とても心地よい感じを受けました。余談ながら、昨年のコロナ初期からの全面自粛期間が明けてやっと屋外でのコンサート第1号が開かれた7月に金子三勇士氏のラ・カンパネラを聴いて大いに感動したものですが、岡田氏のラ・カンパネラはそれに負けず劣らずのインパクトの強さを感じた次第です。プレリュード(前奏曲)集 第1週から「沈める寺」こちらも鐘をテーマにした楽曲ですが、ラ・カンパネラとは全く違う曲想で、感じとすれば、ラ・カンパネラが小さい鐘をたくさん鳴らす音楽だとすれば、沈める寺は大きな鐘を渾身の力を込めて鳴らす・・・そんな印象がありました。このあたり、岡田氏のダイナミックでとても力強い演奏がとても曲にあっているような気がしました。特に低音の迫力は圧倒されてしまうほどで、おなかに響くかなり深みのある演奏にこれはすごい演奏を聴かせていただいたという想いがありました。かわいいワルツ 変ホ長調MC等で話す時に使う脳と音楽を奏でる時に使う脳は違うというお話があり、そのメカニズムはよくわからないものの、共感できるところがありました。かわいいワルツは3分くらいの短い曲で、どこかコミカルなところがある親しみやすい感じがありました。6つのエチュード 第5協奏曲のフィナーレによるトッカータ岡田氏曰く超絶技巧が多い難曲で、他の曲なら弾くことで腕が痛くなるようなことは無いのに、この曲はけっこう体にきます・・・とのことでピアニスト泣かせの難曲なのかもしれませんが、負けず嫌いの性格もあいまってか、その演奏は見事なものであり、コロナ渦でなければブラボーが叫ばれていただろうなと思いました。それだけの難曲なので、演奏後はさすがに息が上がってしまったようですが、すぐに落ち着いて質問コーナーが実施されました。いつくかの質問に岡田氏が回答されましたが、改めて演奏者との距離が近いコンサートって素晴らしいと感じた次第です。バラード 第1番 ト短調ショパンの初期の代表的作品ですが、こちらの曲は8月20日に行われたショパン・ザ・シリーズVol.1で取り上げられた曲でもあったので、懐かしくも感じました。こちらも岡田氏のダイナミックな演奏の色が出ていて、ある意味「私はこう弾く。」というものが確立されている演奏なのかなと感じました。月の光ピアノコンサートのアンコール曲の定番という感がありますが、それだけに聴き手としてもアンコールでは月の光を聴きたいとの希望が少なからずあるのかもしれないと感じました。今年は月の光をけっこうな頻度で聴く機会に恵まれましたが、おそらく今年はこちらの演奏が最後になりそうなので、締めくくりの月の光を大いに楽しませていただきました。まとめ上田地域定住自立圏連携事業ということで、上田市に隣接する自治体の会場で行われる地域ふれあいコンサートという位置づけかなと思いました。実際のところ上田市も広いので住んでいる地域によっては、市内より隣町に生活圏があるという場合もあるのかなと思いました。岡田奏氏については、話したいことがたくさんあります!ということで、ご自身の経歴はもちろん、10ヶ月になる息子さんのこと、ピアニストの内部事情としてまず会場入りしたら、ピアノの特性を知ることから始まり、うまくいかなければピアノが怒っているような音になってしまうなど、とてもわかりやすい表現で話していただけ、いろいろなことを学ぶことが出来ました。
December 8, 2021
開催日:2021.12.5(日) 14:00開演(171名収容)場所 :飯山市文化交流館なちゅら 小ホール長野県出身の若手アーティストとして活躍する野口万佑花&鈴木ゆきデュオコンサートへ行ってきました。プログラム前半1.E.エルガー/愛のあいさつ2.F.クライスラー/愛の悲しみ3.E.イザイ/無伴奏ヴァイオリンの為のソナタ第2番より 妄執 :ヴァイオリンソロ4.F.プーランク/即興曲 第15番 エディット・ピアノを讃えて :ピアノソロ5.C.サン・サーンス/死の舞踏後半6.R.シューマン/献呈7.J.ブラームス/ヴァイオリンとピアノの為のソナタ第1番《雨の歌》アンコール8.J.ブラームス/ワルツレポート愛のあいさつ解説によれば、英国の作曲家エルガーが、婚約記念に妻に送った作品ということで、まさに題名そのものの想いが込められている印象があります。そしてデュオやトリオの演奏ではけっこう高い確率でオープニング曲として演奏されており、コンサートにおいてまずその演奏者の音楽に耳を馴染ませるのにもちょうど良い感じなのかなと思いました。愛の悲しみクライスラーの「愛の喜び」と対になっており、セットで演奏されることも多いとのことですが、私の印象とすれば「愛の悲しみ」の方が演奏される頻度が高いように感じます。それだけ弦楽器の魅力を十分に引き出す素晴らしい曲ということなのかなと思いました。無伴奏ヴァイオリンの為のソナタ第2番より 妄執解説によれば作曲者のイザイは、バッハの作品に心を奪われ、特には脅迫的な恐れも感じたことから、バッハのたくさんが切り取られた破片となって作品の中に現れているそうです。またグレゴリオ聖歌の怒りの日の旋律(ファミファミレミドレ))が取り入れられてやおり、これは「死」をイメージする時によく使われる旋律とのことで、演奏前にこの旋律を野口氏が弾いてイメージ付けをしてくれましたが、なんとも不気味だなあという印象でした。そしてこの「死」のイメージが楽曲中に見え隠れする都度、音楽に影ができる・・・そんな不思議な感じがする曲かなと思いました。即興曲 第15番 エディット・ピアノを讃えて解説によればフランスを代表するシャンソン歌手であるエディット・ピアフをオマージュする曲ということで、どこかシャンソンのイメージがあるのかなと思いました。ピアノは一人で音楽が完結してしまう楽器なので、解説にも書かれていましたが、4人くらいが合奏しているイメージがしてとても興味深いものがありました。死の舞踏ガイコツの踊りというのがこの曲の通称のようです。そして前半のメインプログラムということもあり、演奏前にとても丁寧なアナリーゼが行われました。曲の冒頭から真夜中の12時を告げるレの音。続いて死神のチューニングを通常のチューニングと弾き比べ、死神のチューニングの不気味さを体感。これはなるほど~ということで直感的にとてもわかりやすかったです。そしてガイコツの不気味なワルツの調べを取り出して演奏。最後は、朝を告げる一番鶏が鳴くと「ガイコツの時間はおしまい!」という曲なのだとのことでした。この曲のモチーフは中世ヨーロッパであり、ペストのような疫病や百年戦争による戦死が頻発した時代で身近に「死」があったことから、死のチューニングといったものが取れ入れられたのかもしません。また先ほどの妄執で出てきた怒りの日の旋律も取り入れられているとのこと。そして楽曲を聴いてみると、事前のアナリーゼがとても役に立ってリアルにガイコツの踊りを感じることができ、改めて作品を知ることの重要性を感じました。余談ながらサン・サーンスと誕生が同じという野口氏ですが、今年は没後100年という節目でもあり、特に「没後」というキーワードから、この曲とつながるところがあるのかなと感じた次第です。献呈解説によれば、この曲はロベルト・シューマンが最愛の妻クララ・シューマンとの結婚前夜にクララに贈った「ミルテの花」という全26曲からなる歌曲集の第一曲目とのことですが、ロベルトとクララの結婚にはクララの父の反対があり、その抵抗を乗り越えてやっと想いを遂げられたという経緯もあって、それが曲にやや屈折した要素(2分の3拍子だが、拍とうまく合わないところが多い)を取り込んだ感があるとのことでした。また演奏後には、鈴木氏からロベルトについて語られる場面があり、もともと精神的に弱かった部分もあったが、いろいろなことが積もり積もって最終的には投身自殺から若くして世を去ることになってしまった悲劇の作曲家という印象を受けました。ヴァイオリンとピアノの為のソナタ第1番《雨の歌》演奏前に野口氏から、楽章ごとに丁寧な楽曲紹介がありました。印象的だったのは3楽章の雨について日本とヨーロッパの捉え方の違いであり、日本は梅雨に代表されるようにじめじめしたイメージがあるが、ヨーロッパではもともと雨が少ないので、恵みの雨という捉え方をしているとのことでした。そういった観点から楽曲を聴いてゆくと、とても癒しを感じるところがありました。また今年は7月に伊藤文乃氏の雨の歌を聴く機会があり、それにともなうアナリーゼワークショップでこの曲について十分時間を取って掘り下げることができたので、そんな知識も手伝ってより演奏を楽しめた感がありました。ソナタアンコールとして演奏するのは、ブラームスのソナタとの紹介がありました。アンコールの演奏曲を本プログラムでやった作曲家と合わせるととても自然な感じでまとまるという印象がありました。まとめ第1部では、いわゆる小品と呼ばれる短い楽曲とヴァイオリンとピアノのソロ演奏。そして第2部ではオープニングとして献呈、そして大曲の雨の歌と構成的にもとてもボリューム感のあるコンサートだと感じました。またコンサートパンフレットの楽曲紹介がとても丁寧に作られていて予備知識が無くても、これをしっかり読めば楽曲をより楽しめるような工夫がされていました。それに加えてお二人の丁寧な楽曲紹介もあって至れり尽くせりという感がありました。また入場するともらえる名刺サイズの入場券がとてもお洒落なもので、表面はもちろん、裏面にも黄色いラインと音符をあしらったワンポイントが入れられていて、お二人のおもてなしの心を感じた次第です。
December 5, 2021
開催日:2021.12.3(金) 18:30開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容→半減)生で聴く「のだめカンタービレ」の音楽会<オーケストラ版Vol.5>に行ってきました。プログラム第1部F.ショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11 ピアノ:高橋 多佳子 第1楽章 アレグロ・マエストーソ 第2楽章 ロマンツェ・ラルゲット 第3楽章 ロンド:ヴィヴァーチェ ソリストアンコール F.ショパン/ワルツ第6番「子犬のワルツ」第2部J.ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98 第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ 第2楽章 アンダンテ・モデラート 第3楽章 アレグロ・ジョコーソ 第4楽章 アレグロ・エネルジコ・エ・パショナートアンコール L.v.ベートーヴェン/交響曲第7番(抜粋)レポートピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11解説によれば、「のだめカンタービレ」の最後の部分をとても深く印象づけていたミルヒーとのだめの協奏曲初共演となった演奏会を再現したのが今回の音楽会となりますが、正面のプロジェクターにその時の場面が投影されたりして、のだめファンにはたまらない演出だと思いました。また私とすれば、今年は6月から群馬交響楽団コンサートマスターの伊藤文乃氏とピアニスト高橋多佳子のデュオリサイタルやアナリーゼワークショップでシューマン夫妻とブラームスにまつわる様々なお話とその音楽。そしてアナリーゼワークショップの進化版であるサントミューゼの新企画であるショパン・ザ・シリーズでショパンの生涯の軌跡を丁寧に追う学びの機会。さらに生で聴く「のだめカンタービレ」の音楽会<ピアノ版Vol.5>でもオーケストラ版をより楽しむためのミニ講座を受けて、かなりいろいろな知識を持った状態でこの曲を聴くということが、今年を締めくくる集大成のようなところがあって、とても感慨深いものがありました。演奏を聴き進むと、そういえばポーランド国歌を聴かせてもらったな・・・とか、この作品はショパンが20歳の時の作品だから、その頃のショパンはこんな感じで音楽活動していたとか、次から次へと回想が広がり、ステージ上の高橋氏の神がかったソロ演奏と群馬交響楽団の素晴らしいハーモニーに強く心引かれた次第です。交響曲 第4番 ホ短調 作品98ブラームスの最後の交響曲であり、後世の多くの作曲家にして「この曲は1音も直すところが無い。」と言わしめるほどの大傑作との案内がありましたが、そんな作品を生で聴けるという喜びを感じつつ、充実したひとときを過ごさせていただきました。ブラームスの作品を聴くということについては、今年は伊藤文乃氏と高橋多佳子氏によるヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 Op.78「雨の歌」、ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108をフルで聴かせていただき、またそれについてアナリーゼワークシッョプも受けていたので、ブラームスの音楽に「こんな感じ・・・。」というイメージは持っていたつもりでしたが、フルオーケストラでしかもブラームスの最高傑作ともなれば、さらに感動が増幅された感がありました。まとめ5年をかけて続いてきた「のだめカンタービレのピアノ協奏曲連続演奏」という企画はこれにて一区切りとのことですが、始まりがあれば終わりがある・・・ということはわかっていてもなんだか寂しいものがありました。高橋氏も「のだめにはヴァイオリン奏者も出てくるし、まだまだやることはあると思います!」とのことで、来年以降新しい企画を期待したいところです。
December 3, 2021
開催日:2021.11.28(日) 13:30開演場所 :宮田村民会館 大ホール(300名収容)音楽の贈り物というお洒落な団体名を持つMusical Giftsの第2回定期演奏会に行ってきました。プログラム第1部 Classic Stage1.Make A Joyful Noise!2.さくらのうた3.Sea Of Wisdom~知恵を持つ海~第2部 Pops Stage4.キャッツ・アイ5.カイト6.「ライオンキング」メドレー7.マツケンサンバ2第3部 Play For Japan8.吹奏楽のための「海の詩・風の詩」~東日本大震災の追悼・復興を祈って~アンコール9.With You Smile10.銀河鉄道999お見送り11.ジングルベルレポートMake A Joyful Noise!スウェアリンジェンらしい、親しみやすく、疾走感や歌心もあるオープニングに相応しい序曲的な楽曲でした。演奏後の曲紹介では「コロナ渦からの脱却の象徴」と位置づけており、とても共感できるものがありました。さくらのうたステージ横のプロジェクターにて、事前に地域の人たちから募集したさくらの画像を流しながらの演奏となりました。編成にピッコロ・フルートが不在ということもあり、ピアノで冒頭から入る形になりましたが、これがまた一味違ったさくらのうたを演出してくれて、とても素晴らしかったです。Sea Of Wisdom~知恵を持つ海~海無し県民による海を描いた作品の演奏というアナウンスがありましたが、楽曲を聴きながら思ったのは、海が日常に無いからこそ、そこに想像の翼を羽ばたかせる力が強く働くとも言え、海のように深い演奏と感じました。感じたのは時折り顔を出すピアノの音色が海から時折顔を出す魚のような雰囲気で、とてもステキでした。キャッツ・アイ北条司原作の昭和アニメの名作のオープニング曲ですが、キャッツアイと言えば、来生三姉妹の次女 瞳。長女 泪。三女 愛の活躍が印象的ですが、ここでは演出として三姉妹を模した衣装を指揮者・チューバ・パーカッションのお三方が着用して大いに盛り上がりました。カイト東京オリンピックを象徴する楽曲ですが、令和を代表する作曲家として注目される米津玄師氏の作曲で、これまたジャニーズトップアイドルの嵐が歌うという鳴り物入りの楽曲であり、コロナ渦でなれば日本中で演奏されまくっただろうなという惜しい感があったものの、オリンピックイヤーも終わりに近づいたこのタイミングで聞けたのは、とてもよかったと思いました。「ライオンキング」メドレーライオンキングもいろいろな編曲版がありますが、こちらはJohn Higgins版ということで舶来の雰囲気が感じられました。そして改めてライオンキングの世界を堪能した次第です。マツケンサンバ2MCにて、私はマツケンサンバ2を保育園の時に踊りました!という話があり、リアルでマツケンサンバ2がヒットしてからそんなに立つのか・・・と感じました。また指揮者のチョンマゲの演出もあいまって2部の締めくくりにふさわしい盛り上がりでした。吹奏楽のための「海の詩・風の詩」~東日本大震災の追悼・復興を祈って~東日本大震災から10年。その間、たくさんの作曲家が追悼曲を作り、私自身も聴いたり、演奏したりしてきましたが、このコロナ渦の時代にあって音楽は不要不急のものではないとされ、数え切れない程の公演が中止になってきました。そんな辛抱の時代を抜けてやっと今日ここに演奏会ができたという強い想いが語られるとともに、演奏にも随所そんな気持ちが感じられた圧巻のひとときでした。そしてこの曲では、コーラス隊として近隣の音楽教室・中学校・高校の合唱部の有志が加わり、大迫力の演奏にとても感動しました。With You Smile知的障害を持つ青年たちの音楽活動「楽団ぶあぶあ」のために作られた楽曲で、混声3部合唱+吹奏楽にアレンジされたものですが、音楽教室と合唱部と吹奏楽によるクオリティーの高い演奏にしみじみしたひとときになりました。銀河鉄道999999もいろいろなアレンジがありますが、とてもお洒落なアレンジで、特にピアノが入ることでとても上品な感じになりました。また合唱隊メンバーが客席まで広がって手拍子で盛り上げるというサプライズもあり、大きな一体感の中でフィナーレとなりました。ジングルベルすべてのプログラムを終了しましたというアナウンスの後、来場者が退出しはじめると、ステージ暗転のまま、演奏が始まりました。シングルベルでも元祖とも言うべきM8版で私も数え切れない程演奏してきたこともあり、とても懐かしいと感じつつ、もうそんな季節なのだなと肌で感じた次第です。まとめMusical Giftsは、2018年に結成された新興の吹奏楽団ですが、その命名のセンスの良さに加えて、月1回くらいの練習でじっくりと活動してゆくスタイルを持った楽団のようです。演奏会パンフレットの挨拶の結びに「本日のステージはすべて、再配達不可の今日限りのお届けものです。」と記載されており、改めて音楽活動は一期一会の側面があるのだなと思いました。
November 28, 2021
開催日:2021.11.23(火) 14:00開演場所 :小諸市文化センター(712名収容)無観客の上、地元のコミュニティーテレビ録画公開となる小諸市消防音楽隊のミニコンサートに行ってきました。また縁あって演奏者として参加させて頂くことができましたので、演奏者視点でもレポートさせて頂きたいと思います。プログラム第1部1.ラッパ吹奏第2部1.炎と森のカーニバル(SEKAI NO OWARI)2.虹(映画「STAND BY MEドラえもん2」主題歌<菅田将暉>)3.白鳥の湖Brass Rock4.宿命(Official 髭男dism)5.海の声(au三太郎シリーズテーマソング浦島太郎<桐谷健太>)6.ウィーアー(ONE PIECE主題歌)7.紅蓮華(鬼滅の刃主題歌<RISA>)8.風のプロフィール(東京スカパラダイスオーケストラ)レポートラッパ吹奏コロナ渦以降、県内の消防音楽隊演奏会の未開催が続く中、消防ラッパを聴くのも2年弱ぶりとなったこともあり、とても懐かしい感じを受けました。そして消防ラッパの所作である整った規律と引き締まった演奏はやはり良いものだと感じました。炎と森のカーニバル音楽隊演奏のオープニングには、メッセージ性のある力強い曲調がとても印象的でした。この曲は、118というマーチテンポもあいまってステージドリルでもよく演奏されていたようですが、力強く刻まれる低音パートの2分音符や4分音符の伴奏のもと、トロンボーン、トランペット、クラリネット、ユーフォニアムがそれぞれのカラーで主題をリレーして、最後はみんなで朗々と主題を奏でるという楽曲的にとても聴き所がある構造になっており、ある意味アレンジによって原曲を上回るパフォーマンスを感じたところです。虹弱奏のアンサンブルがとてもきれいな楽曲という印象がありました。72というゆったりとしたテンポの中で冒頭にユーフォニアム、中間部にオーボエのソロ、クラリネットアンサンブルという見せ場があり、曲の持つ癒しの力が前面に押し出されてくる感じがしました。白鳥の湖Brass Rockあの名作白鳥の湖をロックバージョンでアレンジし、かなりのインパクトがあるのに、この曲のすごいところは終始ロックで流してしまうのではなく、中間部に9小節間の本物の白鳥の湖を彷彿とさせるオーボエソロの弱奏部が存在することで、ブラスロックとはいうものの、原曲に対するこだわりもしっかり残しているところかなと思いました。私的にはつい先ごろ新国立劇場バレエ団 白鳥の湖<新制作>を拝聴する機会があり、その体験を踏まえてこの曲に取り組めたこともとてもプラスになったかなと感じるところです。宿命(Official 髭男dism)ダンディとリズムを組み合わせた造語と思われるダンディズムという洒落たアーティストの楽曲ということもあり、その音楽もとても洒落た感じがありました。編曲の妙かもしれませんが、伴奏パートのリズムが4泊目から始まるなどなかなかに凝っており、それゆえ一筋縄ではいかないのかなと思いましたが、こうすることによって曲に緊張感が生まれて聞き手にもそれが伝わるのかもと思いました。海の声第1小節目と最終小節にこだわりの波の音が入るという演出がありました。さらに特殊楽器である三線が入り、とてもゆったりとした時間が流れるアイランドミュージックならではの味がありました。ウィーアーワンピース初代テーマ曲ですが、もう20年も前の曲なのにワンピース関連では最も多く演奏されているように感じます。それだけ名曲ということになりますが、ドラムスのご機嫌なリズムのもと160というスピードテンポで疾走するとても前進感のある楽曲でちょっと目を離すとたちまち置いてかれるようなところがあり、聴き手もですが演奏側もスリリングでそれはとても楽しいことだったかなというところです。紅蓮華まず曲名をどうやって読むんだろう・・・という話ですが、こちらは「ぐれんげ」です。135という少し早めのテンポではありますが、パターンが一定なので安心して聴いていられるところがあるのかなと思いました。こちらですが、2020年がコロナ渦でなければおそらく全国で演奏されまくる楽曲になったと思いますが、音楽は流行りはあれど陳腐化はしないというのが私の説なので、またこれから演奏されてゆけばいいなと思うところです。風のプロフィール氷結のCMでたまに耳にするおなじみの楽曲ですが、ご機嫌なビート感で東京スカパラダイスオーケストラのサウンドをじつによく再現しているように思いました。さらに吹奏楽版では、編成の人数が増えている分表現の幅も広くなり、楽曲的にはひと回りもふた回りもスケールが大きくなった印象です。演奏の終盤には、「火の用心」「団員募集」のプラカードが示され消防音楽隊らしい幕切れとなりました。まとめ2021年1月に予定されていた第22回ふれあいコンサートは、残念ながら中止となってしまい、2020年の年末まで練習した楽曲への想いが残ったまま、なんだか忘れ物をしたまま家に帰ってしまった感がありましたが、今回、手堅く無観客という条件のもとで、若干規模を縮小しつつも第23回ミニコンサートが開催されたことは、その忘れ物を取り戻すことができただけでなく、また新しい発見もあり、全体としては音楽の楽しさを再確認するとても大事なひとときになりました。
November 23, 2021
開催日:2021.11.21(日) 15:30開演場所 :坂城町文化センター 大会議室2年ぶりの開催となる坂城町吹奏楽団の冬の定期公演であるウインターコンサートのレポートです。また演奏会のテーマは「スウィングジャズ」で、第1部で往年のジャスヒットナンバーを。第2部でテレビ音楽、ミュージカル、アニメ、J-POPなどお馴染みの楽曲を取り上げました。プログラム第1部 スウィングジャズステージ1.茶色の小びん2.Let's Swing!! メイク・ハー・マイン~故郷の空~シング゙シング・シング3.メモリーズ・オブ・ユー4.ファンダンゴ5.ルパン三世メドレー ルパン三世のテーマ'80~サンバ・テンペラード~炎のたからもの第2部 坂ブラ2021スペシャルステージ6.カリキュラマシーンのテーマ7.踊りあかそう8.生命の奇跡9.となりのトトロ さんぽ~風の通り道~ねこバス~となりのトトロ10.J-BEST~日本を勇気づける名曲たち~アンコール11.星影のエールレポート茶色の小びんベースパートだけから始まる導入部が、「そろそろ始めるよ!」的な雰囲気をかもし出しており、肩肘を張らない和やかなスタートとなりました。そしてこちらのアレンジでは中盤にテナーサクソフォーンのご機嫌なアドリブソロが用意されており、最初からジャズらしい色合いが感じられました。Let's Swing!!スウィングガールズでおなじみの3曲をメドレーにした楽曲ですが、アレンジ的には難しいアドリブを避け、楽曲の有名な旋律をアンサンブル~全体演奏で進むというスクールバンドでも演奏しやすいような配慮がされている感じがありました。このあたり、アドリブおまかせのメンバーがごろごろいるバンドには少し物足りないかもしれませんが、吹奏楽上がりの大人には素直でとても吹きやすい良アレンジかなと思いました。メモリーズ・オブ・ユーサブタイトルに「クラリネットとバンドのための」と付いており、クラリネットソロフィーチャー曲ですが、ベニイ・グットマンを彷彿とさせる味のあるソロがなんともステキなところでした。また演奏後のソロインタビューを受けたソリストが、2019年の初演奏を経ての2度目の挑戦ということで、表現を自分なりに工夫したとのことで、さらに深みを感じる演奏になっていました。ファンダンゴニューサウンズインブラスとしても古典の分類に入るような歴史のある曲ですが、トランペットとサクソフォーンのソロのかけあいがとてもカッコイイところです。アレンジ的に、メロディーを吹けるパートは限られており、半数以上は全音符のハーモニーやパッキングで支える感じかなというところです。ルパン三世メドレー実質的にはカリオストロの城メドレーになりますが、名作ゆえに度々地上派で再放送があるので、レコーダーに録画してたまに見ていますが、このシーンでこの曲が流れているのか!などと思い浮かべてゆくのもまた面白いところです。カリキュラマシーンのテーマ宮川彬良氏のお父上である宮川泰氏による楽曲となりますが、もともとは昭和40~50年代の子供向け番組のテーマ曲として作られたものだそうで、耳馴染みが良いのでその後も多くの番組で使用されたという名曲とのことです。令和の時代では、チコちゃん!がこの曲の顔になっており、そういった意味では音楽って時空を越えた文化だなと改めて感じました。踊りあかそうマイ・フェア・レディの代表曲ですが、コロナ渦以降、お祭りや宴会といった踊りあかすシチュエーションはタブーとされて久しいので、そういった意味ではコロナ前を懐かしむような雰囲気もありました。また坂ブラ的には、春の定期演奏会2021で演奏した楽曲でもあり、そこから唯一ここまで持ち越した楽曲としての完成度の高さも感じられたところです。生命の奇跡世界的な少年合唱団として知られるリベラ。そして多くの映画音楽・テレビ音楽・舞台・ミュージカルの楽曲を手がけた村松崇継氏とのコラボが話題になった曲ですが、旋律は、各パートのソロがリレーされてゆく編曲になっていて、とても面白いと感じました。余談ながら6月の長野東高校吹奏楽部の定期演奏会ではこの曲をステージドリルで使っていて、そんな多様性から連想される面白さもあったかと思います。となりのトトロトトロで有名な4曲をメドレーにした楽曲ですが、風の通り道を前奏に使い、とても重厚な感じで曲が始まるのが印象的でした。トトロもいろいろな編曲版がありますが、こちらはいわゆるシンフォニック系かなというところです。J-BEST~日本を勇気づける名曲たち~「世界に一つだけの花」「どんなときも」「明日があるさ」「愛は勝つ」「負けないで」「全力少年」「ら・ら・ら」「それが大事」「栄光の架橋」というJ-POPの全盛時代を象徴する楽曲群がメドレーになったものですが、愛は勝つなどは今から約30年前頃の曲ということで、歴史も感じるところでした。またコロナ渦で先の見えない今の時代では、なおさらこのような勇気をもらえる曲がより心に染みるものがありました。星影のエール音楽家を題材にした朝ドラ「エール」ということで、音楽団体としては外せないところもありましたが、コロナ渦により途中まで放送して、また最初から再放送するという朝ドラ史上初の作品となり、それだけ長くこの曲も日本中に流れていた訳で、そういう背景からもとても感慨深いものがありました。まとめ坂ブラとしては、2019年以来2年ぶりのウインターコンサートとなりましたが、5月に開催された春の定期演奏会2021は屋外ステージだったため、2年ぶりの屋内での演奏会になりました。そして2021年も8月に第5波が来たため、活動停止期間を挟んで開催に漕ぎ着けたということもあり、楽曲の完成度という点では詰めきれなかった部分もあったかもですが、準備された約80席の座席がほぼ埋まるという盛況ぶりから、多くの音楽愛好家の皆さんが生の音楽に飢えていたのではないかと感じた次第です。
November 21, 2021
開催日:2021.11.20(土) 14:00開演場所 :信州国際音楽村 ホールこだま(300名収容→半減)フルート&ハープの「デュオ・パステル」のコンサートに行ってきました。プログラム前半1.エルガー 愛の挨拶2.ビゼー 組曲「アルルの女」よりメヌエット3.久石譲 もののけ姫4.ドビュッシー シランクス5.ホヴァネス 組曲《アドニスの庭》Op.245 1.Largo 2.Allegro 3.Adadio,Like a Solemn Dance 4.Allegro 5.Grave 6.Allegretto 7.Andante molto espressivo6.ゴーベール ギリシア風ディベルティメント後半7.モルナール 日本民謡の主題によるファンタジー 炭杭節~草津節~よさこい節~子守唄~ソーラン節8.モーツァルト オペラ「魔笛」による2重奏 1.私は鳥刺し 13.復讐の炎は地獄のようにわが心に燃え9.ジュナン 「椿姫」によるファンタジー10.ラヴランド ユー・レイズ・ミー・アップ11.メンケン ア・ホール・ニュー・ワールド12.ベルリオーズ オラトリオ「キリストの幼時」より3重奏アンコール13.中島みゆき 糸レポート愛の挨拶演奏会のオープニングの定番曲の1つと思いますが、フルートとハープのすてきなコラボにこれから始まるコンサートへの期待感が高まるところでした。組曲「アルルの女」よりメヌエットゲストの八倉巻杏菜氏が登場し、紹介がありました。八倉巻氏は渡辺氏のお弟子さんということで、念願の師弟コラボが実現する運びとなりました。ハープの竹内氏よりアルルの女のメヌエットは、オーケストラで吹いていても、ここだけフルートとハープでの演奏になるので緊張するとのことで、このあたりは作曲者の想い入れが感じられるところかなと思いました。もののけ姫ハープ独奏による演奏となりました。ハープ特有のやさしい音色もあいまってとても癒される感じがありました、もののけ姫の世界は、祟りを題材にしていることもありドロドロした部分も多いのですが、その対極にあるのがこちらの楽曲という印象です。シランクスフルート独奏ではおそらく一番有名な曲だとのことで、ギリシア神話の世界をフルートで表現したとてもすてきな曲と思いました。シランクスは、別名パンの笛と呼ばれており、牧神であるパンが精霊のシランクスに恋して追いかけるが、シランクスは逃れて葦になってしまい、悲しみに暮れたパンはその葦で笛を作り奏でるという物語な訳ですが、悲しみはもちろんですが、とまどいのような感情も織り込まれているのかなと感じたところです。ホヴァネス 組曲《アドニスの庭》Op.245こちらもギリシア神話を題材にした楽曲で7楽章におよぶ大曲です。またテーマとして輪廻転生を取り上げていることから、じつに壮大な雰囲気が感じられました。またクラシック時代には、タブーとされていた悪魔の音程(不協和音の中でも最も不快な音)が効果的に使われているとのことで、そのあたりにも注目しながら楽しませていただきました。ギリシア風ディベルティメント竹内氏想い入れの曲で、学生時代にフルート2本とのコラボで感動した曲とのことで、ある意味デュオ・パステルの原点でもあったかもしれません。響きとすれば、フルートのアンサンブルが雲の上にいてハープがそれを導いてゆく・・・そんな感じがしました。日本民謡の主題によるファンタジー西洋生まれの楽器であるフルートとグランドハープで日本民謡を奏でるというのもなかなか乙なものだなと感じました。新鮮だったのはハープを叩いて太鼓のような効果を出す奏法がけっこうでてきており、じつはハープは中が空洞になっているので叩くと良い音が出るとので竹内氏もこの奏法は、けっこうお気に入りとのことでした。オペラ「魔笛」による2重奏渡辺氏と八倉巻氏の師弟コラボによるフルート2重奏となりました。魔笛から2曲抜粋でしたが、13番の「復讐の炎は地獄のようにわが心に燃え」は、夜の女王のアリアとして演奏したことがあったので、とても親しみが持てました。演奏前の解説で、オペラの曲がどうしてフルート二重奏のような小さい編成の楽譜で存在しているのか?ということについて話がありました。これは、モーツァルト自身がオペラの宣伝のために作っていたそうで、当時はテレビもラジオも無いので、あちこちで演奏してもらうために編成を小さくした楽譜を書いたとのことでした。そう考えると、昭和のカラオケが無い時代に生バンドがダンスホールで演奏していたのと似たシチュエーションなのかな・・・。というところで、今は生が贅沢な時代になっているので、モーツァルトが活躍していた頃は常に生演奏が聴けるということで、古きよき時代だなと感じました。「椿姫」によるファンタジーよく知られた有名なフレーズで始まる楽曲ですが、フルートの華のある音色が前に出て、落ち着いた音色のハープが包み込むように追いかける感じの大変心地が良いコラボでした。もちろんハープのソロも用意されており、じつに聴き所の多い楽曲でした。ちなみに演奏後の解説で、じつはこの譜面はフルートとピアノのもので、無理やりピアノのパートをハープで弾いているので、足のペダルを多用しなくてはならずかなり忙しいとのことでした。このあたり、グランドハープならではの豪快なところかなという印象です。ユー・レイズ・ミー・アップこんなに綺麗なユー・レズ・ミー・アップは聴いたことがないという印象がありました。上品な中にもやさしさが感じられるフルートの音色とハープのコラボの素晴らしさに感動した次第です。ア・ホール・ニュー・ワールドアラジンとジャスミンをそれぞれフルートの渡辺氏と八倉巻氏が演じて、ハープの竹内氏が支えるというアンサンブルでしたが、アラジンの一場面が目の前に広がるようなステキな演奏でした。余談ながらホール・ニュー・ワールドといえば新妻聖子氏の歌唱がとても印象深く、自分の中ではそのイメージと重なるところがあったように感じました。オラトリオ「キリストの幼時」より3重奏解説によれば、聖母マリア、父ヨセフが幼いイエスをつれてヘロデ王の虐殺から逃れエジプトへ向かう途中の一行を迎え入れてくれた家の子供たちが、もてなしとして演奏した曲とされていますが、神々しいほどの雰囲気を持った曲で、ある意味子供は未来という宝物を持って入るから眩い輝きを放つ・・・そんなことを感じつつ楽しませていただきました。糸アンコール曲として演奏されたのは、中島みゆきの名曲中の名曲ですが、アンコールとしてしみじみ聴くのもとてもステキだなと感じたところです。まとめデュオ・パステルは、2018年に結成されたハープの竹内遥香氏とフルートの渡辺幸絵氏のグループですが、コンセプトの1つとしてあまり知られていない隠れた名曲を世の中に出してゆきたいということがあるとのことです。今回の公演は昨年の9月に行われた初めてのコンサートのアラカルト Vol.1(当時はVol.1とは明記されてはいなかった)に続くものとのことですが、お二人のデュオや独奏だけでかなりのクオリティーでしたが、ゲストの八倉巻氏が加わることで演奏のバリエーションが広がって、コンサートとしてより聴き所が増えてグレードアップした感が大いにありました。
November 20, 2021
開催日:2021.11.18(木) 19:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)塚越慎子 マリンバ・リサイタル関連プログラムのアナリーゼワークショップに行ってきました。プログラムアナリーゼ演奏トルコ行進曲~白鳥(抜粋)~デルタ・リブラ(抜粋)~チャルダッシュレポートまずは、オープニングで1曲ということでトルコ行進曲が演奏されました。そして、そこからは塚越氏のマリンバ入門講座が始まり、かなり詳細に紹介が行われました。マリンバは偶数倍音の楽器であり、オーケストラとよく溶け込むのはそのせいであり、対してシロフォンは奇数倍音なので音が引き立つとのことでした。そしてカメラでマリンバの鍵盤を大スクリーンに投影しながら、どこを叩くとどんな音がするかを実演しながら見てゆきました。ちょっと意外だったのは、本当は共鳴管の真上を叩くのが基本だが、特に黒鍵を叩くとき、早い動きだとなかなかそれが叶わないことが多く、その場合は鍵盤の手前を叩く(ただし紐の上は避ける)と真上に近い音がするのだそうです。その後は、マレットの4本持ち、6本持ち、8本持ちの話題となりました。いわゆる芸術的な演奏をするには、8本は現実的ではなく、6本も難しい(しかし塚越氏はマスターしている)、4本が一般的であるとのことでした。その後は、トレモロ奏法についての解説があり、トレモロは早ければ良いというものではなく、曲にあった早さがあるとのことで、白鳥で叩き比べ(1回目はとにかく早くトレモロする、2回目は曲にあった早さで)をしました。アナリーゼ後半は、ピアニストの武本氏から調性についての解説に入りました。♭と♯が1つもついていないハ長調を基準に、♭→♭♭→♭♭♭→♭♭♭♭→♭♭♭♭♭→♭♭♭♭♭♭→♯♯♯♯♯♯→♯♯♯♯♯→♯♯♯♯→♯♯♯→♯♯→♯の調を短い曲を演奏しながら1つ1つ追ってゆき、この調はこんな曲でよく使われているといった例もあり、とてもわかりやすいところでした。♭が増えるほど温かい音楽に。そして♯♯♯♯♯♯は死を連想させる調、その後は♯が減るごとにどんどん明るくなってゆくとのことでした。調性によって世界観が変わるということで、これはとても勉強になりました。また改めて吹奏楽などでは楽器的に♯の多い楽譜は演奏しずらいので、移調して♭系でアレンジしてしまうことが多いですが、安易な移調がタブー視される理由はここにあるのかと改めて確認した次第です。そして、塚越氏がリサイタルで演奏する曲で最も想い入れがあるデルタ・リブラについての解説に入りました。こちらは、あえて旋律を拍頭ではなく16分休符を入れてずらした拍にすることで、緊張感を出しているとのことで、抜粋での演奏も披露されました。そして、アンコールとしてチャルダッシュが演奏されアナリーゼワークショップの締めくくりとなりました。まとめ塚越氏も武本氏もとても話し上手で、もっと話したいことはあったとのことですが、マリンバの基本的なこと。調性のこと。本当に勉強になるアナリーゼワークショップとなりました。
November 18, 2021
開催日:2021.11.17(水) 19:00開演場所 :丸子文化会館 小ホールサントミューゼのアーティスト・イン・レジデンス 地域ふれあいコンサートVol.67 塚越慎子マリンバ・コンサート(ピアノ:武本和大)へ行ってきました。プログラム1.ハチャトゥリアン:剣の舞2.サン=サーンス:動物の謝肉祭より白鳥3.アンダーソン:タイプライター4.ステンスガード:サルサ・メキシカーナ(マリンバ・ソロ)5.ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー6.納所弁次郎(佐久間あすか編曲):うさぎとかめ7.ピアソラ:エブリビオン8.モンティ:チャルダッシュ9.(アンコール)トルコ行進曲レポート剣の舞オープニングは、まずピアノの武本氏が入場し、剣の舞の前奏を始めると塚越氏が会場後方からマーチング木琴を背負って演奏しながらの登場となりました。こちらはとても斬新な演出と言え、ここでいっきに聴衆の注目を掴んでお二人の音楽の世界へ取り込まれた感がありました。ちなみにこのマーチング木琴はとても重いのだそうで、演奏しこなすにはけっこう慣れが必要なのだとのことでした。動物の謝肉祭より白鳥白鳥といえばチェロの代表的な楽曲ですが、塚越氏からマリンバはチェロの音域と似通っているとのお話がありました。マリンバというと大きなものでは5オクターブもの音域を持つとても音域の広い楽器ですが、そういえばチェロも低い音から高い音までよく出ていたなと想い出した次第です。タイプライタータイプライターを演奏するようになっきっかけとして塚越氏がNHKの番組でタイプライターを演奏する機会を得て、その反響が大変良好だったことから、以後リサイタルで演奏するようになったとのことで、やっていくうちにマイタイプラターが欲しくなり調べてみたら、もう使っている人がとても少ないので手に入らない・・・。でもアンティークで買うとだいぶ高くなってしまうので、1年ほどあちこち探してやっと不用品譲ります的なサイトを見つけ、やっと入手したとのことでした。そして購入した1台目は良い音はするが重たい・・・。その後3台買い、本日持ってきたタイプライターこそが、コンパクトなのに歯切れの良い音がしてマイク無しでもいけるところがお気に入りとのことでした。演奏はその通り、とても歯切れ良く気持ちの良い演奏のひとときになりました。サルサ・メキシカーナ2020年はコロナ渦で予定されていた海外公演がごっそりなくなったりして時間ができたので、マレット6本持ちを習得したとのお話がありました。一般的には6本持ちはしっかり持ってしまうため、白鍵または黒鍵のどちらかしか演奏しかできないため、特殊な曲でないと演奏できないという不便さがあるとのことですが、カナダのマリンバ奏者が6本持ちで自由自在に演奏する様を見て、その奏者からメソードを得ることができたから実現したということもあったそうです。そしてこの曲では、左右の足首に鈴と実(カラカラと乾いた音がする)をそれぞれ巻きつけており、手は6本持ちでマリンバを叩き、さらに足を踏みならして鈴や実の音を入れるという、まさに全身を使った充実の演奏となりました。ラプソディ・イン・ブルーこの日の公演のためにリハーサルを繰り返してきたとのことで、どうやったらオーケストラの迫力を2人で出せるかということを、ぎりぎりのところで決めてきたとのことで、まさにこれが限界という感がある素晴らしい演奏でした。演奏後は、あまりの熱演に二人とも息が上がってしまい、落ち着くまでMCができないという状況で、その演奏がいかに過酷なものであったかということが伺われました。うさぎとかめもしもしかめよ~のおなじみの曲ですが、佐久間あすか氏によって編曲されたジャズバージョンで、うさぎもかめもずいぶんとお洒落になった!という感じで、すてきな演奏と感じました。エブリビオンうさぎとかめを演奏後に続けての演奏になりました。この曲は、塚越氏がとても好きな楽曲ということで、1音1音とても大切に叩いているように感じました。武本氏との息の合ったコラボもとても素晴らしく、聴き手も至高の瞬間という印象がありました。チャルダッシュもともと酒場の音楽ということで、ノリが良いということもあるとのことでしたが、有名曲だけに今年もいくつかの演奏会で何度か聴いてきたこともあり、マリンバではどんなふうに演奏するか興味津々なところがありました。演奏は、マレットをだんだんと硬いものに変えているようでしたが、最も驚いたのは一番の弱奏部でマレットの持ち手の部分を使って鍵盤を叩いていたことで、とても繊細な音なので耳をすまして音を聴くような感じになりますが、この雰囲気がたまらなく良かったです。トルコ行進曲熱のこもったコンサートですが、チャルダッシュの時点で時間を超過していたため、アンコールは打ち切りか?と思われましたが、最後はしっかりとジャズ風トルコ行進曲で締めくくりとなりました。こういった歯切れの良い曲は、やはり鍵盤楽器にはよく合うなと改めて感じた次第です。まとめ1ヶ月前に行われた地域ふれあいコンサートの初回公演がとても良かったので、もう一度聴きたいと思い、こちらの公演にも足を運びましたが、同じプログラムとは思えないくらい熟成度が上がっていたように感じました。それは10月・11月とアウトリーチ公演をたくさんこなしてお二人の息がますます合ってきたということだったり、期間中にリハーサルを繰り返して音楽的なこだわりをつきつめた結果だったのかもしれません。改めて音楽は成長するものということを肌で感じたひとときになりました。今後、アナリーゼワークシッョプ、そして最後にリサイタルがあるので、大いに楽しみなところです。
November 17, 2021
開催日:2021.11.13(土)14:00開演場所 :長野県松本文化会館大ホール(2,000名収容)信州大学交響楽団の定期演奏会に行ってきました。プログラム前半1.ボロディン/歌劇「イーゴリ公」序曲2.グラズノフ/組曲「バレエの情景」より抜粋後半3.チャイコフスキー/交響曲第4番 ヘ短調 作品36アンコール4.眠れる森の美女よりワルツレポート歌劇「イーゴリ公」序曲イーゴリ公といえば、ダッタン人の踊りですが、今回演奏されるのは序曲ということで、まったく別の曲という印象がありました。改めて聴いてみると、とてもさわやかだが、ロシア音楽の重みもあって、演奏会のオープニングにふさわしい風格を感じました。組曲「バレエの情景」より抜粋解説によれば、この曲はバレエ音楽ではなく、あくまでもバレエの情景を表現したものであるとのことで、ある意味聴き手が自由な解釈をして楽しむ曲なのかなと思いました。そしてバレエについては、つい数日前に白鳥の湖を見たばかりということもあって、その時の光景も想い出しつつ自分なりのバレエの情景を想像した次第です。交響曲第4番 ヘ短調 作品36解説によれば、バレエ音楽の三大作品である「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」のすべてをチャイコフスキーが作曲しており、世界的に見てもバレエ音楽の第一人者という印象がありますが、チャイコフスキーは1877年から、フォン・メック夫人という女性が14年に渡り資金援助を受けており、彼女とのやりとりは文通のみであったものの、経済的にも精神的にも大きな支えとなっていたそうです。こちらの曲は、フォン・メック夫人への感謝の気持ちを込めて捧げた曲とのことで、チャイコフスキーは、楽章ごとにフォン・メック夫人に解説を書き記して手紙を送っており、その本気度が伺えます。演奏的には、弦楽器のピッチカートが多い印象がありました。このあたり、弦楽器は弓で弾いて音を出すという先入観がありますが、ピッチカートだとギターのような雰囲気もあって、とても新鮮な感じを受けました。眠れる森の美女よりワルツロシア特集ということで、アンコールもこちらの楽曲になりました。まさにロシアに始まりロシアに終わるという終始一貫の徹底ぶりに、たっぷりとロシア音楽を堪能したひとときになりました。まとめ108回を数える歴史もさることながら、信州大学交響楽団は、編成的にもとても充実していると感じました。弦楽器のアンサンブルはもちろん、今回は管楽器が活躍する場面も多く、そのあたりの活躍も素晴らしかったです。またコロナ渦ということで、全席指定でチケットを販売していましたが、ソーシャルディスタンスのための一律に一個飛ばしで座席を設定するのではなく、複数人で購入した場合は臨席になるような工夫もされていたようで、これはよく考えた運営だなと思いました。
November 13, 2021
開催日:2021.11.12(金) 19:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)ショパン・ザ・シリーズVol.3~《ショパンコンクールの心》~ショパンを愛しショパンのために~へ行ってきました。プログラムオール・ショパン・プログラム1.ノクターン 第18番 ホ長調 作品62-22.マズルカ 変ロ長調 作品24-43.即興曲 第2番 嬰ヘ長調 作品364.ソナタ 第3番 ロ短調 作品58より 第1楽章 アレグロ・マエストーソ 第4楽章 フィナーレ:プレスト・マ・ノン・タントレポートノクターン 第18番 ホ長調 作品62-2ショパンの生涯を追ってゆくショパン・ザ・シリーズの締めくくりとして、ノクターン最終作品のこちらが取り上げられました。スクリーンでは、ショパンの最晩年の37歳頃から振り返り、最後は39年の短い生涯の臨終シーンがスクリーンに投影され、あたかもレクイエムのような趣での演奏となりました。マズルカ 変ロ長調 作品24-4ここからは、話題をショパンコンクールに移し、特別ゲストのピアニスト、音楽評論家。そして高橋氏の夫でもある下田幸二氏が登場し、高橋氏と対話する形で、高橋氏が出場した第12回ショパンコンクールの想い出が語られました。スクリーンには、当時の写真が投影され、お話からもその時の緊張感がよく伝わってきて、臨場感がありました。時間が1時間とタイトなため少しせかされる形で次の演奏へと進むことになり、こちらの楽曲は高橋氏が3次予選で弾いた中の1曲とのことです。即興曲 第2番 嬰ヘ長調 作品36ここからは、下田氏がお話のメインとなって今年開催されたショパンコンクールに話題が移りました。2020年に第1次予選が行われたまでは良かったが、直後に新型コロナが世界でパンデミックに・・・2次予選が1年延期されたものの、その日程も再延期されたりと綱渡りでの開催となったそうです。そしてコンクールについて日本人のエントリーの話題や下田氏がこれまでコンクールをずっと聴いてきた中でショパンコンクールを勝ち抜いたきたピアニストたちの傾向として、ショパンを真正面から捉えた正統的な演奏が評価される傾向があったそうですが、今回のコンクールではそれが通用せず多くのピアニストが予選で落ちたこと。それに変わって独創性や自己主張が強く面白い演奏をするピアニストが進んだこと。このあたりは、審査をするのも人間なのでコロナ渦という時代で何か現状を打破したいというようなことを求めたということなのかもしれません。続いて演奏された即興曲第2番はコンクールで全員が弾かなくてはならない曲とのことで、下降系のフレーズがとても難しいとのことで、下田氏が笑い話的に「まともに弾けていない参加者もいた。」とのことで、演奏後に高橋氏も「難しい!」とつい言葉出てしまった程でした。ソナタ 第3番 ロ短調 作品58より今年のショパンコンクールで入賞した反田恭平氏と小林愛実氏は、下田氏が大学で受け持っているショパンの講義を1年違いで受講していたエピソードから、当時の反田氏の様子などが語られました。またショパンコンクール直後の下田氏と反田氏が写っている写真とともに2位入賞直後の反田氏の様子も語られました。また下田氏は18日頃のNHKのクローズアップ現代に出演してショパンコンクールについて語るとのことで、これも注目とのことです。語りたいことが山ほどというところですが、時間の制約のため、ソナタ第3番の演奏へと進みました。まさにショパン・ザ・シリーズを締めくくる最後の演奏としていつにも増して熱の入った演奏となりました。まとめショパン・ザ・シリーズは、8月20日の第1回。9月11日の第2回とショパンの誕生から臨終までを演奏をはさみながらアナリーゼしてゆくものでしたが、ポーランドで長いこと研鑽を積み、ショパン弾きとして定評のある高橋氏をもってして「このシリーズはとも勉強になりました。」との感想があったように、このシリーズを開催するにあたってショパンについて改めて調べたり、スクリーンに投影するスライドを準備したりと演奏することとは違う頭を使うことがあったのかもしれません。また、聴き手にとっても曲だけを聴くより、より深くその作品を理解できることも大変良いと思いました。
November 12, 2021
開催日:2021.11.11(木) 19:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)大萩康司 ギター・リサイタル関連プログラムのアナリーゼワークショップに行ってきました。プログラムアナリーゼレポートまずは、クラシックギターについて詳しい楽器紹介が行われました。まずは歴史からということで、現在のクラシックギターの形が決まったのは20世紀に入ってからだったこと、その前はひとまわり小ぶりで19世紀ギターと呼ばれていたことを紹介。続いて楽器の基本的な構造ということで、弦を弾く位置によって音色が変わることを実演してゆきました。(弦の中央ほど柔らかい音、弦の端は硬い音が出るなど)続いて演奏家としてどんなことを考えながら音楽をしているかということを、詳しく話してゆきました。このあたりは、とても共感できるところで大萩氏の見識の高さに恐れ入るところでした。そして後半では、11月19日のリサイタルの予習へと入りました。リサイタルでは、ピアノの河野紘子氏との共演があるということで、そのやりとり(アンサンブル)をどのようにしてゆくのか・・・ということにも踏み込んでゆきました。さらには、ギターを使いながらどうやって曲を弾いてゆくかということを丁寧に説明され、これはギターのレッスンを受けているような感覚がありました。さらには演奏を聴くにあたってどんなことに着目してゆけば楽しいのか?ということにも触れ、これは今後、演奏会の旅を続けてゆくのにもとてもためになるお話でした。最後は質問コーナーということで、来場者数人の質問に大萩氏が応えるという内容で、こちらの答弁も大変丁寧でわかりやすかったです。まとめ昨日の地域ふれあいコンサートと合わせて、クラシックギターについての基礎知識と大萩氏についていろいろ知ることができました。これまでのアナリーゼワークショップは、比較的リサイタルの楽曲の話題が多かったのですが、今回は、リサイタルの楽曲についての説明よりも、大萩氏が音楽について語る!という感じになっていました。
November 11, 2021
開催日:2021.11.10(水) 19:00開演場所 :真田中央公民館 大ホールサントミューゼのアーティスト・イン・レジデンス 地域ふれあいコンサートVol.66 大萩康司ギター・コンサートへ行ってきました。プログラム1.ローラン・ディアンス:サウダージ第3番2.レオ・ブローウェル:11月のある日3.フェルナンド・ソル:「月光」Op.35-224.フランシスコ・タルレガ:アルハンブラの想い出5.藤井敬吾:羽衣伝説 -昼間にそよぐ優しい風 -追憶 -遠くからの声 -踊り -疑惑 -鎮魂 -羽衣の唄 -踊り -遠くからの声 -解放 -復活への飛翔アンコール6.星にまつわる曲7.キューバでの集中レッスンの後に教官からプレゼントされた曲8.ローラン・ディアンス:タンゴ アン スカイ (なめし皮のタンゴ) ※アンコールの1曲目と2曲目が曲名がよく聴き取れなかったので曲紹介でのコメントになります。レポート登場してすぐのオープニング曲でサウダージ第3番、そして2曲目では大萩氏のCDデビュー曲でもある11月のある日、そして月光、アルハンブラの想い出までが前半という構成でした。そして早いもので最後の曲ですが・・・とはいうものの羽衣伝説は20分にも及ぶ大曲ということで、物語を追う形で想像の翼を広げるといろいろな情景が見えてきて聴き応えが相当にありました。このあたり、大萩氏がサントミューゼレジデントアーティストとして行った小学校でのアウトリーチ演奏で、小学生からの質問で「演奏する時にどんなことを考えているのですか?」という質問があったそうですが、大萩氏は曲のことももちろん考えているが、演奏しながら色のようなものが見えてくることがあるのだそうで、このあたりは共感できるものがありました。まとめギターについての説明も少し入りましたが、コンサートはあくまでも曲主体という感じで、1つ1つ丁寧に解説が入り、エピソードがあるものは、そちらも交えながらとなり、とても親しみを感じさせる内容と感じました。またギターの音色について、改めて聴いてみると本当にやさしくて癒されると感じた次第です
November 10, 2021
開催日:2021.11.7(日) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容→半減)新国立劇場バレエ団 白鳥の湖<新制作>に行ってきました。プログラム第1幕/城の中庭第2幕/月明かりの湖畔第3幕/舞踏会第4幕/湖にてキャストオデット/オディール 米沢 唯ジークフリード王子 福岡 雄大ロットバルト男爵 中塚 正博レポート第1幕公演リーフレットよりあらすじ先王である父の死後、王子ジークフリードは新たな王として戴冠し、結婚することが求められていた。彼はそれまでの自由を失うことを恐れ、愛してもいない結婚相手を選ぶことにためらいを感じていた。ジークフリード21歳の誕生日の夜、彼に弓矢のプレゼントを贈るために宮廷の友人たちが集った。友人でもある侍従ベンノがジークフリードの気晴らしのために催した宴の真最中に、王妃である母が現れる。宮廷がまだ喪に服している中での大騒ぎにショックを受けた、翌日には花嫁を選ばなくてはいけないと王子に告げ、意気消沈した彼をその場に残して立ち去る。ベンノはジークフリードを元気づけようと、友人たちと未来の王位継承を祝って祝杯のダンスを踊る。友人たちが帰っていった後、白鳥の一群が空を渡っていく。ベンノはジークフリードにプレゼントの弓矢を試すように促し、二人は白鳥たちを追っていく。→宮廷の中庭での様子が描かれたステージですが、あらすじに従って展開される演奏とバレエが見事と感じました。第1幕の終わりに、あの有名な部分が演奏され、これが白鳥の湖なのだなととても感慨深かったです。第2幕湖岸に着いたジークフリード王子は、ベンノに白鳥を探しに行かせる。一人残った王子は、そこに魔術師ロットバルト男爵の邪悪な存在を感じとる。突然一羽の白鳥が舞い降りてくる。そして王子が驚き見つめるなか、美しい乙女に姿を変える。その若い娘こそオデット姫であった。オデットと彼女の仲間たちはロットバルトによって白鳥の姿に変えられ、夜の間だけは人間の姿に戻れるのた。オデットにかけられた魔法は、まだ恋をしたことのない者が彼女に永遠の愛を誓い、結婚の約束をすることで、解くことができるという。ジークフリードはオデットへの永遠に続く真実の愛を誓う。姿を現したロックバルトにジークフリードが矢を向けるが、オデットはそれを遮り、魔術師が死ぬと、魔法の呪いは永久に解けなくなると話す。さらにオデットは、もしジークフリードが愛の誓いを破るようなことがあったら、彼女は永遠に白鳥の姿でいなくてはならないと伝える。やがて夜明けが訪れ、オデットと仲間たちは白鳥の姿に戻り、湖へと帰っていく。→2幕の始まりは、スタートから白鳥の湖の有名な調べがじっくりと演奏されてから、しばらくしてオデットが颯爽と登場。オデットとジークフリード王子との幸せなひとときが描かれるという感じがありました。第3幕翌日、壮麗なレセプションには、ジークフリード王子の結婚相手の候補として3人の王女が招かれていた。3人の王女たちはそれぞれジークフリードのために踊りを披露するが、彼は心ここにあらずの様子で、花嫁を選ぶことを断わってしまう。ファンファーレが鳴り響き、予定されていなかった客人の到来を告げる。それは使節に身を扮したロットバルトと、魔法でオデットそっくりに姿を変えた、彼の娘オディールだった。王子は驚くほどオデットに似たこの見知らぬ客人に心奪われ、やがてこの女性が白鳥の姫だと信じ込んでしまう。王子がオディールと踊っているところへオデットの幻影が現れ、彼の誓いを忘れないでと懇願するが、魔法にさえぎられて王子は気がつかない。オディールにすっかり心を奪われた王子は、彼女に結婚を申し込み、ロットバルトはその愛を誓わせる。オディールへの愛を誓った、その瞬間にオデットが窓の外に姿を現す。しかし時すでに遅く、ジークフリードはオディールに誓いを立ててしまった後だった。宮廷は混乱に陥り、王子は絶望にかられ恋人のもとへ走り出て行く。→3人の王女の舞いが披露された後、黒装束をまとったオディールが登場。白鳥の湖では、オデットとオディールは同一人物が演じることになっており、プリンシバルの米沢唯氏のその見事な演技分けにも釘付けとなりました。またオデットの幻影が現れる場面もとても効果的に演出されていました。第4幕打ちひしがれた思いで白鳥の娘たちの処へ戻ったオデットは、自分が人間の姿でいられるうちに湖に身を投げてしまいたい、と願うのであった。ジークフリードがオデットを追っていったことを知り、ロックバルトは嵐を起こすが、王子を止めることはできない。ジークフリードはオデットに許しを乞う。オデットは彼を許すが、誓いが破られてしまった今は、もうどうすることもできないと悲しげに言う。オデットとジークフリードは、離れ離れに生きてゆくことはできないので、死んで一緒になるしかない、と決心する。オデットは湖に身を投げ、彼女に続こうとするジークフリードを阻もうと、ロックバルトが立ちはだかる。夜が明ける。恋人たちは死によって永遠の愛で結ばれる。→悲劇の第4幕とも言うべきですが、ハッピーエンドで終わらないからこそ輝くものもあるというところなのかなと感じました。先にオデットが湖に身を投げ、そしてジークフリード王子が身を投げる。そのシーンは涙を誘わずにはいられないシーンでした。そして終幕後は、圧巻のカーテンコールがありました。演奏を担当した東京フィルハーモニー交響楽団を指揮した冨田実里氏をダンサーの列に加えて数度に渡る挨拶。さらに幕を下ろしたところからメインキャストの米沢氏、福岡市、中塚氏が数度の挨拶。いつまでも余韻に浸っていたいような素晴らしいフィナーレとなりました。まとめ地方ではなかなか見ることができない新国立劇場バレエ団の公演ですが、上田にバレエ衣装を作っているチャコットの工場があることから、故郷に錦を飾るという意味合いもあったのかもしれませんが、生のバレエを東京フィルハーモニー交響楽団の生の演奏で鑑賞できるというとても贅沢なひとときを過ごさせていただきました。また昨年の宮川彬良まつり舞台音楽ワンダーランド公演でバレエの所作を少しだけ拝見し、興味を持ち、どこかでバレエを見るチャンスがあったらいいなと思っていたので、その夢も叶った次第です。白鳥の湖という楽曲という視点から見ると、これまで白鳥の踊りだけをアンサンブルで演奏したり、白鳥の湖のハイライト的な演奏を聴いたり、白鳥の湖ブラスロックを演奏する機会を得たりしましたが、バレエと演奏であらすじを踏まえて最初から最後まで聴けたことはとても良い体験になりました。これまでバレエ音楽をなんとなく聴いたり演奏したりしてきましたが、これからはそこに踊るバレエがイメージ付けされることとなり、次にバレエ音楽にふれるときにどれだけ想像の翼が広がるか大いに楽しみなところです。
November 7, 2021
開催日:2021.10.31(日)13:00開演場所 :戸倉創造館大ホール(390名収容→半減) 千曲市を拠点に活動する髙橋真樹子先生の生徒たちによる発表会リトルコンサート2021に行ってきました。また今回は先生とウィローウインドオーケストラのクラリネット団員さんの縁でクラリネットアンサンブルの一員としての出場もありました。プログラムOP.「天空の城ラピュタ」より天空の城ラピュタ(久石譲)1.キラキラぼし(フランス民謡)2.ピアノのおけいこ(バイエル)3.「となりのトトロ」よりさんぽ(久石譲)4.小さな世界(シャーマン)5.ミッキー・マウス・マーチ(ジミー・ドット)6.ドレミのうた(リチャード・ロジャーズ)7.おたんじょう日マーチ(ケーラー)8.スパニッシュダンサー(パスティン)9.星明りのワルツ(プレイナルド)10.アラベスク(プルグミュラー)11.紡ぎ歌(エルメンライヒ)12.かっこう鳥の歌(ポップ)13.マリオネット(ローデ)14.すみれ(ストリーボッグ)15.ティロリアンヌ(ルンメル)16.ドナウ河のさざ波(イバノビッチ)17.朝の祈り(ストリーボッグ)18.バラード(ブルグミュラー)19.「アルルの女」第1組曲よりファランドール(ヒゼー) 「白鳥の湖」より情景(チャイコフスキー)19.大雷雨20.さよなら(小田和正)21.「ハウルの動く城」より人生のメリーゴーランド(久石譲)22.「塔の上のラプンツェル」より輝く未来(アラン・メンケン)23.ピアノソナタ「月光」より第1楽章(ベートーヴェン)24.「お菓子の世界」より バースデー・ケーキ バウムクーヘン(湯山昭)25.<クラリネットアンサンブル> 美女と野獣(アラン・メンケン) 「となりのトトロ」メドレー(久石譲)26.「無言歌集」よりプレストアジタート(メンデルスゾーン)27.即興曲作品90-2(シューベルト)28.月の光(ドビュッシー)29.マスカラード(斎藤圭土)講師陣による演奏<ソプラノ独唱>30.竈門炭治郎のうた(椎名豪)31.いのちの歌(村松崇断)32.ネッラ・ファンタジア(E.モリコーネ)<ピアノ連弾>33.パプリカ(米津玄師)34.交響曲第9番ニ短調「合唱付」第4楽章より(ベートーヴェン)レポート出演順の関係で全ての演奏を聴くことはできませんでしたが、舞台の中央に配されたピアノで親子による連弾や生徒さん単独の演奏まで、じつにいろいろな演奏を聴いてとてもよい耳の保養になりました。また発表会30周年記念としてソプラノ歌手の小島美穂子氏が講師陣の演奏に加わり、その素晴らしい美声を拝聴することもできました。その中で特に印象に残ったものについて少々レポートしたいと思います。スパニッシュダンサー情熱の国スペインのダンスをイメージした楽曲ですが、演奏者の方がダンスも習っているとのことで、そのあたりの経験が音楽に生きているように感じました。「白鳥の湖」より情景髙橋先生と生徒さんによる連弾となりましたが、いわゆる白鳥の湖の最も有名なあの曲を情景たっぷりに演奏し、バレエを彷彿とさせる雰囲気がありました。<クラリネットアンサンブル> 美女と野獣、「となりのトトロ」メドレー我々の演奏の2曲ですが、ディズニーとジブリといういわばアニメ界の双璧ともいえる王道からの選曲ということもあり、メジャーなだけに間違えられないというプレッシャーもありました。美女と野獣はハーモニー重視の曲ですが、バスクラを有効的に使って温かい雰囲気を表現している感じがあり、トトロは、旋律がおなじみな分、伴奏が凝っている傾向があり、そこに面白さを見出す部分もあるのかなと思いました。月の光ピアノのコンサートではアンコールの定番曲という印象がありますが、今年は、年初から金子三勇士氏や高橋多佳子氏など何人ものピアニストが奏でる月の光を聴く機会に恵まれたことから、この曲が自分にとってかなりメジャーなものになってきた感がありました。そんなことから、耳馴染みもあり、この楽曲の優雅な演奏を静かに、そして心豊かに楽しませていただきました。マスカラードジャズピアニストを思わせるアップテンポな演奏でしたが、テンポ感にドライブがかかって早くなったり、また元に戻ったりとダイナミックに変化する感じがとても楽しくて、それが何度が繰り返されたので楽しさ数倍というところでした。ネッラ・ファンタジアピアノの高橋先生にソプラノの小島氏、そしてクラリネットの丸山氏の三人による演奏でしたが、楽曲はいわゆる「ガブリエルのオーボエ」です。この曲に魅せられたサラ・フライトマンが作曲者のモリコーネに頼み込んで歌詞をつけてもらったという曲ですが、ソプラノの歌と管楽器のクラリネットが交代でメロディーを奏でるといったアレンジになっており、それぞれの良さを感じることができました。交響曲第9番ニ短調「合唱付」第4楽章よりいわゆるベートーヴェンの第9(ダイク)ですが、髙橋先生との大学時代からの友人の夏目氏との連弾になりました。第9はイメージとして千人合唱のような派手な演出がありますが、お二人によるピアノ連弾の第9もまたよい味があると感じました。まとめピアノ界で旬な話題と言えば、つい先日開かれたショパンコンクールで日本人が2人も入賞したという快挙だと思いますが、入賞したお二人は同じピアノ教室で学んでいたという話もあり、いわばピアノ教室が大ピアニストへの入り口であることは間違いないということで、そういった意味では将来の大ピアニストから今日ここで演奏した生徒さんから輩出される可能性もあり、未来がとても楽しみに感じました。その一方で、大ピアニストにはならなかったけれど、ピアノを生涯の趣味として楽しんでゆくということも、とても人生を豊かにしてくれるのでは感じました。それは親子の連弾だったり、出産などで一時ピアノを離れてもまた戻ってきて弾いたり、そしてこの発表会を聴いて子供の頃ピアノを習っていたけれど、また弾いてみようかな・・・など無限の広がりがあることを感じました。
October 31, 2021
開催日:2021.10.30(土) 15:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容→半減)オーケストラ・キャラバン ~オーケストラと心に響くひとときを~ 広島交響楽団 上田公演に行ってきました。プログラム前半1.ウェーバー/歌劇<オベロン>序曲2.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64 第1楽章 アレグロ・モルト・アパッシオナート 第2楽章 アンダンテ 第3楽章 アレグレット・ノン・トロッポ~アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ ソリストアンコール バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調BWV1006 VI.「ジーグ」後半3.メンデルスゾーン/交響曲 第4番 イ長調<イタリア>作品90 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ 第2楽章 アンダンテ・コン・モート 第3楽章 コン・モート・モデラート 第4楽章 サルタレロ、プレストアンコール4.モーツァルト/ディベルティメント ニ短調 K.136より第2楽章レポート歌劇<オベロン>序曲コンサートのオープニングといえば序曲ですが、こちらの楽曲は、数年前に初めてクラリネットクワイアーで演奏し、とても想い出に残っている曲なので、そのオーケストラ版を聴くにあたり、あえてCDなどを聴かずまっさらな状態で楽しませていただきました。そもそもオーケストラ版が元祖でクワイアー版は、アレンジ曲になるのだとは思いますが、先にクワイアー版を知ったことから、いわば川を上るような形でその違いを聴き比べてみると冒頭のアルトクラのソロはホルンで演奏、中盤のクラリネットのソロはやはりクラリネットだった・・・などと思いながら聴くのが面白く、こういった楽しみ方もあるのだなと思った次第です。ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64ソリストを務めるのは、南紫音氏。2020年度のサントミューゼレジデントアーティストで、信州国際音楽村での地域ふれあいコンサート、小ホールでのアナリーゼワークショップ、リサイタルの三公演でその素晴らしい演奏を楽しませていただいた経緯から、是非ともまたその演奏を聴きたいという想いもありました。そして今度はオーケストラと共演する南氏のソリストとしての輝きを間近で感じることができました。いきなりの冒頭の曲始まりで指揮者とコンタクトするところでのすごい集中力・・・それ以上のオーラのようなもの感じたり、弱奏部でのとても繊細な演奏。あとはスピード感に満ちたダイナミックな演奏。言葉に表すのが難しいところではありますが、ひとときも目を離させないような聴衆をひきつけるものがあるのかなと感じました。メンデルスゾーン/交響曲 第4番 イ長調<イタリア>作品90偶然ではありますが、こちらも数年前にクラリネットクワイアーで演奏した楽曲だったので、聴くにあたりオベロン序曲と同様の楽しみがありました。また今回、演奏会パンフレットのプログラムノートがとても充実しており、それこそメンデルスゾーンの生い立ちから、イタリアの作られた背景。そして楽章ごとの解説と至れり尽くせりでした。そして演奏を楽しむにあたってオーケストラは1ステージ1曲ということが珍しくなく、そうなると拍手は最初と最後に1回。楽章の途中では拍手はしないのがマナーなので、落ち着いて聴けるというのも醍醐味なのかなと感じた次第です。ディベルティメント ニ短調 K.136より第2楽章アンコールはこの爽やかなモーツァルトの調べ。聴いた感じや演奏後のスタンドの状況からどうやら弦楽器チームだけで演奏していたようでした。まとめ本来このオーケストラ・キャラバンは、2020年3月に予定されていた企画だったそうで、コロナ渦で1年半延期となり、ようやく公演にこぎつけたとのことでした。また最近のトレンドであるWebアンケートを実施しており、ちょっとうれしいプレゼントとして3日以内に回答すると、オーケストラの公式写真(コンサートマスターのサイン入り、電子ファイル)がもらえるという特典がありました。このあたりは、デジタル化の推進が呼びかけられる中、webアンケートを促進させる手段として、このような特典をつけるとはよく考えているなと感じた次第です。
October 30, 2021
開催日:2021.10.23(土) 13:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール(1,650名収容→半減)上田ブラスフェスト2021 スペシャルコンサートに行ってきました。プログラムA.「みんなでつなぐアンサンブルリレーコンサート」表彰式B.長野県上田染谷丘高等学校吹奏楽班による演奏<Be oneself ~自分らしく輝け~> ・マイソングス・ノウ・ワット・ユウ・ディデゥ・イン・ザ・ダーク ・ボヘミアン ラプソディー ・学園天国前半1.ファンファーレ・フォー・トウキョウ2.新しい日があける3.コンクールのための独奏曲 クラリネット独奏 粟生田直樹4.ラプソディ・イン・ブルー トランペット独奏 大西敏幸5.威風堂々 第一番後半6.オーメンズ・オブ・ラブ7.ジャパニーズ・グラフィティ2 坂本九メモリアル8.「リズム遊び」コーナー9.恋のカーニバル10.シング・シング・シングアンコール11.信濃の国12.トランペット吹きの休日13.宝島レポート「みんなでつなぐアンサンブルリレーコンサート」表彰式13時から行われたアンサンブルリレーコンサートの聴衆賞の表彰が行われました。結果は、1位:信州サクソフォーンアンサンブル 2位:Trio est(トリオ エスト)となり、上田ブラフェスト2021のグッツや東京吹奏楽団からの記念品が授与されました。また全参加団体への参加賞も贈られました。長野県上田染谷丘高等学校吹奏楽班による演奏<Be oneself ~自分らしく輝け~>つい数時間前に別会場での大会で演奏してから、こちらに移動してきての演奏とのことで、ハードスケジュールながら、切れのあるステージドリルがとても輝いていました。3曲目の学園天国は、スクールバンド御用達とも言える楽曲だけに、演奏者の若々しい動きや表情とあいまってとても素晴らしいと感じました。ファンファーレ・フォー・トウキョウ東京吹奏楽団創立50周年記念委嘱作品ということですが、楽曲のモチーフは隅田川の花火なのだそうです。そしてスパークの楽曲ということで、ちゃんとバスーンの見せ場が作られているというなるほど感がありました。聴きながらふとこの楽曲こそ東京オリンピックで演奏されるべきだったと今更ながら感じた次第です。新しい日があける吹奏楽といえばスウェアリンジェンというくらいおなじみですが、早-遅-早の黄金パターンに、フルートなどの美しいソロなどもあって音楽としてとても親しみやすく安心して聴いていられる、どこか懐かしい。といろいろな想いがでてきるステキな楽曲と感じました。コンクールのための独奏曲東京吹奏楽団コンサートマスターの粟生田直樹氏の独奏による演奏となりました。独奏曲ということで、人数を絞った編成での演奏で、ソリストとの融合感も素晴らしく、ソリストのカデンツァもたくさんあってクラリネットの魅力を120%感じることのできる聴き所満載の演奏でした。ラプソディ・イン・ブルー本日出演メンバーで唯一の上田市出身の大西敏幸氏のソロによる演奏となりました。こちらの楽曲ですが、吹奏楽の花形と言われるトランペットだけに音色がよく通って、芯のしっかりした演奏という印象を受けました。あとは装飾音符の多用にミュートでの効果音、ソリストが自由自在にステージを支配している感がありました。威風堂々 第一番イギリスの第2の国歌としてあまりにも有名な曲ですが、これまで何度も聴いてきたものの、東京吹奏楽団×長野県ゆかりの奏者というスペシャルな編成での演奏は格別なものがありました。特に弱奏部の繊細さからだんだんと盛り上がってゆくシーンなどは鳥肌ものでした。オーメンズ・オブ・ラブ後半ステージは、吹奏楽ポップス特集ということで、その中でもよりメジャーな楽曲を選曲したという印象がありました。オーメンズ・オブ・ラブは、宝島と並んでおなじみの曲ですが、宝島と違ってオープニングでもアンコールでも演奏されるというマルチなところが、選曲として好まれるのかもしれません。ジャパニーズ・グラフィティ2 坂本九メモリアルニューサウンズインブラスのジャパグラシリーズも20作品を越え、日本の誇る音楽文化を吹奏楽で表現するという役割を大いに牽引している感がありますが、この坂本九メモリアルはその中でも草分け的存在としてよく演奏されているものの、やはり今日の演奏はひと味もふた味も違う豪華さが感じられました。「リズム遊び」コーナー東京吹奏楽団の中村祐子氏より次に演奏する恋のカーニバルでの手拍子レクチャーが行われました。リズムを覚えるには、言葉を当てはめると良いとのことで、センターから客席のゾーンを左右に分け「タ・タ・タ」を「うえだ」などで当てはめ。「タ・タッ・タ・タ」を「わらったね」などの言葉をはめてグループで交互に演奏に合わせて手拍子をすることとなりました。そして最後にエンディングは「タ・タ・タ・タ」を「おわった」といった具合でした。恋のカーニバル手拍子レクチャーが終わりに近づくと、フェードインするように前奏がスタート!そのままリズム遊び本番へと突入しました。恋のカーニバルはもともと楽しい曲ではありますが、コロナ渦で声を出せないのに手拍子だけであたかも演奏に参加しているかのような高揚した気持ちになり、とにかく心の底から楽しいひとときになりました。シング・シング・シングレギュラーステージ最後は、スイングジャズの大定番のこちらの楽曲ですが、このアレンジの聴き所はなんといってもクラリネットの2つのソロで、特に後半のソロは粟生田氏の独壇場となる素晴らしい演奏に釘付けとなりました。信濃の国アンコールが信濃の国というのは、長野県の一般バンドでは定番の1つ言えますが、今日の演奏はいわゆる新バージョンの編曲版であるように思いました。新バージョンは、故・藤森章氏が無くなる直前の2019年に県に寄贈したもので、聴く度に藤森氏のことを回想する方も多いのでは思いました。トランペット吹きの休日アンコール2曲目は、4名のトランペット奏者がステージ前に出て、とてもキレのあるアンサンブルを披露しました。そして特筆すべきは、本来3パートのトランペットの休日にスーパーコモロの閏間氏がピッコロトランペットで新しいパートを作って参加していることで、これはまたとない貴重な演奏を聴いたと感じた次第です。宝島もはや説明の必要はない曲ですが、アンコールの一番最後はこれ!というお約束という感じで、聴けないとすっきり帰れない・・・そんなプロもアマも学生もみんなが好きな曲という共通認識が出来ているように思いました。まとめ今回の公演は、上田ブラスフェストの実行委員長である高木夏子氏の司会で進められましたが、その中でブラスフェストについて語られる場面がありました。特に印象深かったのは、設立のエピソードで今回トランペットで出演している大西氏の実家である手打ちそば屋さんに主だったメンバーが集められ、大西氏より上田ブラスフェストの立ち上げが提案され、そこで高木氏が実行委員長を拝命した経緯があったとのことでした。パンフに「上田ブラスフェストとは」という説明書もあり、その趣旨は「音楽を通じて上田市内外の多くの世代の方と交流を深め、音楽をより身近に感じてもらえるような参加型のプログラムコンサートを数多く提供する。」というもので、まさに今日の公演でそれは王道を進んでいるという感じを持ちました。余談ながら、かつての上田市は、長野や松本、伊那などの他の地区と比べて文化芸術活動の拠点となる施設が不十分で、例えば在京オーケストラの地方公演を誘致しにくい等、文化面で後れをとっていた感がありましたが、2014年にサントミューゼが開館してからは、そういったハンディも無くなり、ここ数年は文化芸術活動がずいぶん盛んになってきたと感じます。そんな中で上田ブラスフェストのように若手演奏家が集ってチームを作り、よりよいコンサートを数多く提供することを積極的に進めようとする活動は本当にありがたく、楽しみであり、大いに期待するところです。
October 23, 2021
開催日:2021.10.23(土) 13:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)上田ブラスフェスト2021 みんなでつなぐアンサンブルリレーコンサートに行ってきました。プログラム1.5つの小品より 1,4,5 団体名 Trio est(トリオ エスト)編成 オーボエ、クラリネット、ファゴット2.トリオのための小品より「トルコ行進曲」「ポルカ」団体名 トリオ☆メイプル編成 ファゴット×33.ラテン・メドレー団体名 信州サクソフォーンアンサンブル編成 ソプラノサクソフォーン、アルトサクソフォーン、テナーサクソフォーン、バリトンサクソフォーン4.美女と野獣/スペイン団体名 GWAT’s(ぐわったーず)編成 フルート、アルトサクソフォーン、テナーサクソフォーン、トランペット、チューバ5.3つのモテット団体名 Trombone Ensemble CLIP(トロンボーンアンサンブル クリップ)編成 テナートロンボーン×4、バストロンボーン×1、コントラバストロンボーン×16.【ゲスト演奏】長月絵巻/ユー・レイズ・ミー・アップ団体名:東京吹奏楽団メンバーによる木管トリオ“TTT”編成 フルート、クラリネット(バス)、アルトサクソフォーンレポート5つの小品より 1,4,5団体名の由来は、メンバー全員が東信在住者であるということで、フランス語で東を意味するestにしたそうです。編成からもわかるように、木管系でも落ち着いた音色を持つ楽器群でのアンサンブルはとても上品な感じに仕上がっており、1グループ目からこのリレーコンサートのクオリティーの高さを感じました。トリオのための小品より「トルコ行進曲」「ポルカ」こちらのチームも東信地区在住者のファゴット仲間ということで、息のあった演奏がとても印象的でした。またファゴットという楽器は、一般的にはとぼけた音色が特徴的で魅力的であると言われていますが、吹奏楽では他の楽器の音色に溶け込んで目立たないことから、こういったアンサンブル演奏はファゴットの生の音色を楽しめる貴重な機会であると思いました。ラテン・メドレー県内各地からメンバーが集まる広域型の団体とのことで、コロナ渦以降は移動自粛の勧めが続いたことから、なかなかメンバーが集まれないという状況があったとのことでした。そんな中集結した3名に東京吹奏楽団の西尾氏がバリトサクソフォーンで賛助とした加わり、充実の四重奏が披露され、聴衆を魅了した感がありました。美女と野獣/スペイン管楽器の修理を学べる学校「グローバル管楽器技術学院(通称GWTA)」の同窓生で、今は同じ会社が働く職場の仲間たちで組まれたチームとのことです。コンクールで職場の部が一般の部と統合されてから埋没してしまった印象のある職場の音楽活動に一石を投じるものがあるのかなと思いました。編成が木管金管混成のため、表現の幅も広くなることからとても色彩感のある演奏と思いました。3つのモテットトロンボーンという楽器は根強い愛好者がいる印象があり、こちらの団体はそんな人たちが集まったチームなのかなと感じました。そしてトロンボーンの見せ場といえばやはりハーモニー。今回は珍しいコントラバストロンボーンも加わって、じつに重厚なサウンド感が印象的でした。【ゲスト演奏】長月絵巻/ユー・レイズ・ミー・アップアンサンブルリレーコンサートの目玉であるゲスト演奏は、東京吹奏楽団の木管お三方(フルート林氏、クラリネット粟生田氏、サクソフォーン西尾氏)による演奏となりました。TTTの意味は、東京吹奏楽団、トリオ、楽しいだそうで、わかりやすくゴロの良いネーミングと思いました。長月絵巻は、日本的な文化を感じさせるとても雅な曲でステージに味のある屋敷や庭園が広がる感じ。そしてユー・レイズ・ミー・アップは、バスクラリネットが加わり、とても繊細なアンサンブルが見事と感じました。レポート上田市ゆかりの管楽器アンサンブル団体によるアンサンブルリレーコンサートというのがコンセプトのため、上田にゆかりのあるプロ奏者の方やアマチュア奏者の方々がチームを組んでの演奏になりましたが、それぞれのチームの好演がとても印象的でした。そして新たな試みとして「聴衆賞」が設けられており、聴衆は投票用紙に最も優れたチームを記載して1票を投じる仕組みでこちらの発表は続くスペシャルコンサートの冒頭で行われるとのことです。
October 23, 2021
開催日:2021.10.23(土) 11:00開演場所 :シャトー・メルシャン椀子ワイナリー千曲川ワインバレーに恋する10月・椀子マルシェで行われた上田ウィーンアカデミークラリネットパートによるアンサンブル演奏へ行ってきました。プログラム1.カルテット in F2.アベベルム コルプス 救主の祈り3.喜歌劇こうもり序曲レポートカルテット in Fクラリネット四重奏曲としてはわりとメジャーな曲とのことですが、9人で演奏ということでより重厚感があり、改めて数の力を感じるところがありました。アベベルム コルプス 救主の祈りモーツァルトの作品でもともとは合唱曲とのことですが、クラシックのコンサートではレギュラープログラムはもちろんアンコールでもよく耳にする曲です。こちらも4重奏ですが、バスクラがオクターブ下で重なることで、教会で大合唱しているようなイメージが湧いてきました。喜歌劇こうもり序曲シュトラウス2世の名曲群の中でも特に有名なこうもり序曲ですが、本来はオーケストラで演奏される曲をクラリネットアンサンブルに編曲し、編成的には高音部を担当するE♭クラリネットを加えて、楽器の種類的にはE♭、B♭、バスの三管での9重奏となりました。こういうことができるのも音域が広いクラリネット族ならではの醍醐味かと思います。まとめ千曲川ワインバレーに恋する10月と題して、千曲川沿いに展開する各施設においてワインに関連した催しをパックにした一大イベントの1つとして椀子マルシェが開催されましたが、椀子ワイナリーは近年新設された新しい施設ということもあり、展望室が備えられていたり、機能的な試飲スペース、洗練されたワイン陳列棚、工場見学窓など見どころがたくさんありました。また今回のようなアンサンブル演奏ができるような屋根のあるテラスもあり、音楽活動発表の場としてもよく考えられていると感じました。
October 23, 2021
開催日:2021.10.16(金) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)クラシック音楽に親しむ講座Vol.21 ストーリー・コンサート ロシア その痛みと美へ行ってきました。プログラム前半1.ラフマニノフ/「悲しみの三重奏曲」 レント・ルグブレ(悲しげなレント)に始まり、 アラ・マルチア・フネブレ(葬送の行進曲調)で終わる2.チャイコフスキー/ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50 「偉大な芸術家の想い出」より第1楽章 第1楽章ペッツォ・エレジアーコ(哀歌のように): モデラート アッサイ-アレグロ ジュスト 後半3.ショスタコーヴィチ/ピアノ五重奏曲 第1楽章 プレリュード:レント 第2楽章 フーガ:アダージョ 第3楽章 スケルツォ:アレグレット 第4楽章 インテルメッツォ:レント 第5楽章 フィナーレ:アレグレットレポート「悲しみの三重奏曲」ロシアの音楽は暗い・冷たいという先入観がありましたが、題名からもわかるように悲しみをテーマにした曲ということもあり、終始その雰囲気が続きました。三重奏曲の編成は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロとなります。ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50チャイコフスキーがリスペクトしていたピアニストのニコライ・ルービンシュタインに捧げた曲で、「偉大な芸術家の想い出」というタイトルからニコライが亡くなった後に書かれた追悼の曲という位置づけと思いますが、渡部氏からの曲にまつわるお話の中でチャイコフスキーとニコライとのエピソードとして、名曲と言われるピアノ協奏曲第一番をニコライに相談することなく発表してしまったので、ニコライがいっときへそを曲げたが、曲がヒットすると後日ニコライがチャイコフスキーに「素晴らしい曲だ。」と讃えたとのことでした。そんなことから、この追悼曲は、ニコライに対するチャイコフスキーの想いが汲み取れるのかなと感じました。ピアノ五重奏曲スターリンの独裁による大粛清時代に生きたショスタコーヴィチの作品ですが、演奏前に渡部氏からその背景について詳しいお話がありました。それによれば、ショスタコーヴィチが発表したオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』に共産党政府からクレームがつき、それは当時名声を得ていたショスタコーヴィチであっても死刑宣告にも等しい大きなピンチであり、状況を打開するために政府寄りの作品を作る必要にせまられ、交響曲第5番「革命」を発表。その後に作られたのが、ピアノ五重奏曲とのことでした。そういった背景から、楽章の中にはどこか軍楽曲的なカラーもあり、全5楽章はとても聴き応えのある内容と感じました。こちらは、ピアノ、ヴァイオリン2人、ヴァオラ、チェロという編成で人数も多いことから音楽の厚みもかなり感じられた次第です。まとめクラシック音楽に親しむ講座の21回目の公演になった訳ですが、渡部氏がロシアの音楽を知る上で歴史的なことについてのお話がありました。それによれば、ロシアは隣接するヨーロッパとは違い、いわゆる新興国であったこと。そのため音楽においても、バロックというものが存在せず、時代がくだりヨーロッパ諸国との交流の中から、いきなりチャイコフスキーのような偉大な音楽家が登場したとのことでした。またロシアがソビエト連邦に変わってから、スターリンの独裁によって西側諸国ではちょっと考えられないような規模の大粛清が行われたことなどもあり、そんな不安もあってかロシアの音楽はコンサートの副題にもある「その痛みと美」というものに影響されているのかなと感じた第です。
October 16, 2021
開催日:2021.10.13(水) 19:00開演場所 :川西公民館 大ホールサントミューゼのアーティスト・イン・レジデンス 地域ふれあいコンサートVol.64 塚越慎子マリンバ・コンサート(ピアノ:武本和大)へ行ってきました。プログラム1.ハチャトゥリアン:剣の舞2.サン=サーンス:動物の謝肉祭より白鳥3.アンダーソン:タイプライター4.ステンスガード:サルサ・メキシカーナ(マリンバ・ソロ)5.ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー6.納所弁次郎(佐久間あすか編曲):うさぎとかめ7.ピアソラ:エブリビオン8.モンティ:チャルダッシュ9.(アンコール)トルコ行進曲レポート剣の舞オープニングは、塚越氏が会場後方からマーチング木琴を背負って演奏しながらの登場となりました。まさにサプライズというべき演出で、強烈な印象づけになりました。そして演奏後に音楽と距離についてのお話があり、移動で距離が変わるということは、デュオ演奏するにはけっこう大変だとのことで、塚越氏から伴奏のピアニスト武本氏へのリスペクトがありました。動物の謝肉祭より白鳥今年に入ってからサクソフォーン、チェロ、ヴァイオリン、吹奏楽、オーボエといくつかのリサイタル・コンサートで何度も聴いてきた白鳥ですが、ついには打楽器のマリンバで聴くことができました。打楽器だけに弦楽器や管楽器ではない音の切れがあって、とても新鮮な感じがありました。タイプライター突然ステージに運び込まれたタイプライター・・・。何かと思ったら、なんとタイプライターで演奏するとのこと!これには驚きましたが、塚越氏が所有する3台のタイプライターの中で、一番音が大きいものを持ってきたとのことでした。短い曲ではありますが、タイプライターを打ちながらの合いの手のベルもはまっていて、思わず釘付けになりました。サルサ・メキシカーナ2020年の自粛期間中に何かしなくては!とのことから、塚越氏はマレット6本持ちを習得したとのお話がありました。一般的には6本持ちはしっかり持ってしまうため、きまった調の演奏しかできない不便さがあるとのことですが、カナダのマリンバ奏者が6本持ちで自由自在に演奏する様を見て、その奏者からメソードを得ることができたから実現したということもあったそうです。そしてこの曲では、左右の足首に鈴と木の実(カラカラと乾いた音がする)をそれぞれ巻きつけており、手は6本持ちでマリンバを叩き、さらに足を踏みならして鈴や実の音を入れるという、まさに全身を使った充実の演奏となりました。ラプソディ・イン・ブルーピアノの見せ場が3回ほど入る特別アレンジでの演奏となりました。実際この見せ場がかなりボリュームがあり、長いカデンツァがいくつかあるという感じでした。このあたりは、塚越氏が武本氏にロングカデンツァ入れるようにお願いしたそうで、マリンバコンサートと銘打ってはいますが、このピアノソロの瞬間はピアノリサイタルになっているかのようでした。うさぎとかめもしもしかめよ~のおなじみの曲ですが、とてもジャジーな編曲になっていて、先日の宮川彬良氏ではないですが原曲は跡形もありません!といった感じのノリノリのうさぎとかめになっていました。エブリビオン塚越氏は、コロナ渦前はアルゼンチンにまで演奏に出かけていたとのことですが、そこはピアソラの本場だけになるほどという感がありました。そしてピアソラで最も有名なのはリベル・タンゴとのことではありますが、塚越氏がとてもこだわりを持って大事にしているのがこのオプリビオンとのことで、しっとりと聴かせていただきました。チャルダッシュこちらも今年はヴァイオリンでの演奏を何度か聴いてきたので、親しみ感があり、マリンバでどんなふうに演奏するか興味津々なところがありました。演奏は、マレットをだんだんと硬いものに変えているようでしたが、最も驚いたのは一番の弱奏部でマレットの持ち手の部分を使って鍵盤を叩いていたことで、とても繊細な音なので耳をすまして音を聴くような感じになりますが、この雰囲気がたまらなく良かったです。トルコ行進曲ジャズ風トルコ行進曲といった感じですが、最後は賑やかに楽しいアンコール曲の締めとなりました。まとめコンサートのオープニングのサプライズ入場から度肝を抜かれ、タイプライターでの演奏。マレット6本持ちの全身フル活用の演奏。ピアノの充実したカデンツァなど、初めて耳にしたり目にしたものもたくさんあって、1時間があっという間という感がありました。塚越氏は2021年のサントミューゼレジデンスアーティストということで、これから地域ふれあいコンサートがもう一公演とアナリーゼワークシッョプ、そして最後にリサイタルがあるので、大いに楽しみなところです。
October 13, 2021
開催日:2021.10.10(日)11:00開演場所 :長野市芸術館メインホール(1,292名収容)宮川彬良×群馬交響楽団 オケパンⅤ ショウほど素敵な商売はニャー!! 0歳からのパントマイム・オーケストラに行ってきました。プログラム第1部 オケパン1.Willkommen(「キャバレー」より)2.春(Vivardi「四季」より)3.オー・ソレ・ミオ4.雨に唄えば5.クラリネット・ポルカ+クラリネットこわしちゃった6.花祭り7.フニクリ・フニクラ8.トランペット吹きの休日9.ラジオ体操10.マック・ザ・ナイフ11.大脱走マーチ12.ショウほど素敵な商売はない第2部13.アイネ・クライネ・タンゴムジーク14.ベートーヴェン:エリーゼのために15.ディズニー:映画「白雪姫」メドレー16.シンフォニック・マンボNo.5レポートWillkommenパフォーマーの宮川安利氏と吉岡朋子氏のクロネコの無言演出をじっくり楽しませてもらってから曲の演奏に入りました。ようこそ!の演出でほっこりして、あっという間に宮川ワールドに引き込まれてしまいました。春秋に春を聴くのも乙なものだと思いました。打楽器のしっかり効いたアレンジはメリハリがあり、オーケストラらしい華やかで上品なサウンドがとても心地よいものがありました。また曲中ほどに用意されたコンサートマスターの伊藤文乃氏のヴァイオリンソロも大いなる見せ場でした。オー・ソレ・ミオ曲調といいテンポ感といい、まったりと癒し120%といった感じで、夢心地のひとときを感じた次第です。雨に唄えば小物で雨傘を使った演出がありました。雨は心を沈ませることもあれば、こんなふうに楽しいものにできることもあるのだなと感じたところです。クラリネット・ポルカ+クラリネットこわしちゃった群馬交響楽団のクラリネット奏者のお二人がステージの前に出てデュオ演奏を披露しました。その素晴らしい音色に魅了されるとともに掛け合いの妙なども楽しませていただきました。クラリネットを壊しちゃったでは、クロネコたちがクラリネットを綱引きして、上管と下管に分割される際に管体から花が飛び出すというマジックもとびたしてほっこりさせられました。花祭り日本全国がコロナ渦で祭りという祭りがもう1年半以上もできていない訳ですが、せめて音楽で祭りの雰囲気を楽しもうということなのかなと思いましたが、忘れていた祭りの雰囲気が蘇ってきた感じがしました。フニクリ・フニクラ今度は西洋のお祭り!といった雰囲気でしたが、和楽器のような打楽器が日本のフニクリ・フニクラ!と主張しているようでした。日本風に曲名を直すとフニクリ・フナクラ!というところでしょうか。トランペット吹きの休日宮川氏の掛け声とともにステージでちょっとした運動会が繰り広げられました。それにしてもオーケストラの生演奏で運動会というのはこれ以上ない贅沢な企画!と思いました。ラジオ体操おなじみのラジオ体操ですが、ステージでは想い想いの体操が繰り広げられました。それにしても、オーケストラでラジオ体操が聴けるというのは、宮川氏ならでは楽しさなのかなと思いました。マック・ザ・ナイフ宮川氏の鍵盤ハーモニカでのソロが入りました。同じ旋律が繰り返される短調な曲ではありますが、次々とパートが交代しながら流れるように続く演奏はとても心地よいものがありました。大脱走マーチカッコイイ前奏で何の曲かと思ったら。おなじみの大脱走のマーチでした。ショウほど素敵な商売はない50分にもおよぶオケパンステージのグランドフィナーレとして堂々たる演奏という印象でした。アイネ・クライネ・タンゴムジーク原曲は、モーツァルトのあまりにも有名なアイネクライネ・ナハトムジークですが、宮川氏のアレンジで原曲のイメージをうまく残しつつ、見事なタンゴムジークになっていました。エリーゼのために宮川氏よりアレンジについて「もとの曲はもう跡形もありません!」とのことでしたが、聴いてゆくとなるほど確かにいろいろな要素が加えられているが、ベースとなる原曲の枠組みはちゃんと残っている感じで、もうこれは何の曲だかわからない!というふうではなく、原曲を尊重しつつも、さらに発展させた音楽という感じがしていわば新・エリーゼのためにといった趣がありました。映画「白雪姫」メドレー本日の公演は、0歳からのパントマイム・オーケストラと銘打っていることもあり、宮川氏が子供たちを大切にしていることがとてもよく伝わってきましたが、演奏の気迫から子供たちに本気で音楽を伝えたいという想いが込められたのがこの白雪姫ではなかったかと思いました。シンフォニック・マンボNo.5本プログラムの最終曲でありアンコールを兼ねた曲とのことですが、もともとはアンコール曲のはずだったが堂々とチラシに載ってしまったので、本プログラムの中に組み込まれたという経緯があったそうです。ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」とマンボNo5をして、「同じ5番の曲!」と宣言し、これを同時に演奏したらどうなるか?ということで作られたのがこの曲のようです。もちろん同時といっても並行演奏という訳にはいかないので、どちらかの曲が表に出る感じにはなりますが、それでも完全にどちらかに染まってしまう訳ではなく、気がつくと表と裏が変わっていたりととてもうまくつなげてあるなという印象がありました。まとめ昨年10月の宮川彬良まつり舞台音楽ワンダーランドを鑑賞して宮川氏の音楽に魅せられ、今年はパントマイム・オーケストラということで、またまた楽しみにしていた公演でしたが、工夫を凝らした演出で聴衆をあっという間に魅了し、どんな曲でも原曲をはるかに超える「新・○○」にしてしまう宮川氏のアレンジの素晴らしさに感動した次第です。そして今回、6人のキッズスタッフが観客への声がけなどとても頑張っていました。少子高齢化と言われて久しい日本にとっては、こういった若い力の活躍がとても元気づけられるところです。
October 10, 2021
開催日:2021.10.9(土) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)生で聴く「のだめカンタービレ」の音楽会 ピアノ版Vol.5に行ってきました。プログラム第1部1.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13《悲愴》より 第2楽章アダージョ・カンタービレ2.モーツァルト/きらきら星変奏曲 ハ長調 KV2653.ラヴェル/水の戯れ4.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 作品110より 第3楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ第2部 ~オーケストラ版をより楽しむためのミニ講座~5.ショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11 第1楽章アレグロ・マエストーソより6.ブラームス/ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 作品5より 第1楽章 アレグロ・マエストーソ 第2楽章 アンダンテ・エスプレッシーヴォ 第5楽章 アレグロ・ネデラート・マ・ルバートアンコール7.ドビュッシー/ベルガマスク組曲より第3曲「月の光」8.ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番より第3楽章(抜粋)レポートピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13《悲愴》より暗転したステージへ高橋氏が静かに入場して演奏を始めるという夜明けのようなオープニングとなりました。オープニング曲は、のだめが弾いていた悲愴に千秋が引き寄せられるというシーンをプロジェクターで投影しながらの演奏となりました。高橋氏は二人の出会いのきっかけともいうべき大切な曲にこだわりを持っているとのことで、今後も高橋氏が担当するのだめ音楽会では、オープニングの定番にしたいとのことでした。きらきら星変奏曲 ハ長調 KV265今回の音楽会は、のだめがパリに留学した頃の曲を取り上げるというコンセプトで進められていたので、2曲目はのだめがサン・マロのブノワ家に招待されて行った教会での初リサイタルで演奏した曲が取り上げられました。元来のだめは型にとらわれず自由にピアノを弾くという演奏スタイルを持っていたので、モーツァルトのようにこれとこれをしなくてはならない・・・という楽曲は苦手としていましたが、パリ留学によって苦手を克服し、さらに演奏に磨きをかけてゆくという中の1曲という位置づけかなと思いました。水の戯れ3曲目も、のだめが初リサイタルで演奏した楽曲でした。こちらはタイトル通り、水の音=ピアノの音的な感じに見立てており、はっきりとした旋律が見出せないことから、とても幻想的な感じのする楽曲と思いました。ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 作品110より第3楽章高橋氏の解説によれば、ベートーヴェンは生涯で32のピアノソナタを書いていますが、その中の31番は晩年の作品になります。この頃のベートーヴェンは、形式にとらわれないロマン派に近いような楽曲を作っていたそうで、ベートーヴェンが世の中の流れに沿って作風を変えていったことが伺われました。そしてこの曲は、のだめが初めて訪れたミルヒ(シュトレーゼマン)の前で弾き、それをきっかけにのだめがミルヒとの共演へと進む扉が開かれたという楽曲とのことでした。ピアノ協奏曲 第1番ショパンが20歳の時に作られた曲で、ポーランド国歌と同じマズルカで書かれた楽曲とのことで、実際にポーランド国歌を流しての比較もありました。そしてこの曲は、技巧的にもショパンの野心のようなものが詰め込まれていて、それはピアニスト泣かせの難易度であり、もちろんそれは曲を作ったショパン自身にも当てはまり「この曲は難しすぎる。」と嘆くものの、この曲を演奏できるようになるために、練習曲(練習曲とはいえ粒揃いの楽曲群)を作ったというエピソードも紹介されました。またここでは、8月~9月にかけて行われたショパン・ザ・シリーズの内容も照らし合わせつつ、高橋氏自身のショパンコンクールでの想い出なども話されてショパンへの熱い想いがとてもよく伝わってきました。ピアノ・ソナタ 第3番高橋氏は、指が細いことからため端からブラームスは弾けないと思っていたそうですが、今年行われたヴァイオリニストの伊藤文乃氏との共演がきっかけで、ブラームスの楽曲に感銘して弾いてみようと決意したとのことで、デビュー30年を機に新しき道への挑戦ということでした。また本公演で11月に東京文化会館で開かれるデビュー30周年のピアノリサイタルのチラシも配布されており、ショパン、シューマン、ブラームスの三大作曲家の作品を取り上げる紹介がされていました。ベルガマスク組曲より第3曲「月の光」アンコール1曲目は、本プログラム熱量をクールダウンするような、瑞々しい月の光でした。ピアノ協奏曲第2番より第3楽章アンコール2曲目は、元気良くこちらの楽曲の抜粋演奏で華やかにコンサートが締めくくられました。まとめ2017年に誕生した「のだめカンタービレの音楽会ピアノ版」ですが、今回で5回目になり、高橋氏が担当するのは3回目とのことです。こちらは、生で聴くということなので、プロジェクターを用いてのだめカンタービレの世界を視覚で感じるとともに、聴覚で生演奏を楽しむという贅沢な企画だと感じました。そしてピアノ版は、オーケストラ版のプレコンサート的な意味合いもあるとのことで、本日の公演でも、オーケストラ版に向けての予備知識をたくさん得ることができました。
October 9, 2021
開催日:2021.10.3(日) 14:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容→160名)ブラック・ボトム・ブラスバンドのライブに行ってきました。プログラム8月20日にリリースされた24枚目の最新アルバム「激情」の収録曲を「Like the Wind、パピヨン、黄昏ソウル、怪異の森、跳んでブルージェリー、一本節、幽霊のいるカフェ、逆さま男、Hi! High? PECADOSS、YES!OSSAN!、ブギーバック、激情、Be Happy、Pumpkin」を全曲演奏。さらにカバー曲、観客参加型の健康ジャズも加え、アンコール2曲+締めくくりは本番直前「聖者の行進」ワークショップ参加メンバー(パーカッション、トロンボーン、サクソフォーン2名、クラリネット2名)を加えた聖者の行進でした。レポート前日のアナリーゼワークショップ<特別編>BBBBに聞く!ニューオリンズ音楽の魅力とBBBBの音楽でニューオリンズジャズを予習し、またメンバーの生の声もたくさん聴いて、さらに昨年に続いての2回目のBBBBライブの鑑賞ということで、一人一人のメンバーにより親しみを感じた状態で楽しむことができました。またコロナ渦でのライブのルールがしっかりと守られており、そこでどうやって楽しんでゆくかということがだいぶ板についてきた感がありました。楽曲についての印象は、ニューオリンズジャズが基礎にあるけれど、そこに新しい要素を加えてゆくというBBBBのコンセプトが随所に感じられるところがありました。特に演歌とニューオリンズジャズとの融合をした曲などはとてもわかりやすいところでした。このあたりは、ある意味BBBBジャズというオリジナルのものが出来上がっていると考えると自然なのかもしれません。また昨年も感じたことですが、6人でこのド迫力サウンドを実現し、さらにメンバーが常に100%の力で演奏しているように見て取れる、また2時間前後のコンサートではだいたい真ん中に15分くらいの休憩が入るのが一般的な形ですが、BBBBにはそれが無く始まったら最後まで突っ走る!このあたりのパワフルさにも感服した次第です。
October 3, 2021
開催日:2021.10.2(土) 15:00開演場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大スタジオブラック・ボトム・ブラス・バンド ライブ!の関連プログラム・アナリーゼ・ワークショップ<特別編>「BBBBに聞く!ニューオリンズ音楽の魅力のBBBBの音楽」に行ってきました。プログラムアナリーゼレポートまず始めにBBBBを構成する6人(YASSY,ANTON,TAMOTSU,YUTA,SEIYA,IGGY)のメンバー紹介を各々の演奏を交えてが行われました。そしてBBBBの基礎となるグルーヴを表現するということで、リズムセクションを構成するバスドラ・スネア・スーザフォンの3パートでの演奏となりました。続いてニューオリンズジャズ発祥の歴史が詳しく語られてゆきました。このあたり、前週の神津善行氏の話と通づるところもありましたが、どうして黒人がミシシッピー川の港町ニューオリンズにやってきたのか・・・ということから詳しく背景の説明があり、元祖はブルースという音楽であり、もともとは葬式の音楽だったということ。そして時代は下り、第1次世界大戦が始まると、ニューオリンズは軍港になり、ニューオリンズジャズが演奏されていた盛り場は強制退去、演奏者たちはミシシッピ川を遡ってシカゴへ行き、そこで多くの白人の耳にふれて大流行しスウィングジャズとして固まり、ちょうどその頃発明されたレコードに載って瞬く間に全米に広がったとのことです。この頃が、ベニー・グット・マンやグレン・ミラーが活躍していた時代ということで、せっかくなので一番有名なスウィングジャズの曲を演奏!ということで、BBBBによるシング・シング・シングの演奏を聴くことができました。後半では、BBBBの曲作りについて話題が進み、1977年にニューオリンズで結成されたニューオリンズのザ・ダーティー・ダズン・ブラス・バンドをルーツにしていることでした。ただ、BBBBがオリジナルと違うのは、幅広い音楽の要素が取り入れられているとのことでした。それは、J-POPであったりロックであったり・・・ということで、音楽的な話をすればオリジナルはコード進行が3つしかないが、BBBBではコードを複雑化させて成しているものだとのことでした。このあたり、だからどこかで聴いた感があって親しみがあるのか!とも感じました。また多くのバンドでは曲を作るメンバーは限られていることが多いそうですが、BBBBはメンバー全員が曲を作るそうで、それもまたBBBBの多様性の源という感がありました。
October 2, 2021
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