Over The Moon.

Over The Moon.

2010年09月21日
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カテゴリ: *能関係の日記*
<→ その2 のつづき。>

舞台で数番の仕舞がある間
楽屋の奥で、イヤホンから流れるお囃子を聞きながら
『鶴亀』最後のおさらい。

ちょっと気が緩むと
ヒラキなのかヒラキカケなのか
右足から出るのか左足から出るのか
足拍子より、そういうところの方が危うく感じる。


苦手なところを洗い出す作業は
受験勉強にちょっと似ている。


終わってイヤホンを取ると

「菊水の流れ・・・」

舞台から聞えるのは『枕慈童』の一節。
ちょうど次が出番だ。


切戸に行くと、
地謡を謡ってくださる女の先生がいらっしゃった。
師匠と、女性お2人の混声3人地。

女の先生「扇どれにするー?もう決めたー?」

私「いえ、まだ・・・どれが良いでしょうか」



扇を決めたと同時、拍手が聞え
切戸口をあけて正座をする。

「「ありがとうございました」」

仕舞の人が去っていき、向こうを見ると
お世話になるお囃子方が4名。




私「はい」

「「よろしくお願いいたします」」


切戸が開く。


師匠「とにかく楽しくね」


そうだ。

“楽”は、楽しくなくちゃ。




舞台に上がると
意外に見所の人の入りは良いようだ。
眼鏡がないのでさっぱりだけど。


目の端で、お囃子方が座られるのを感じる。
腰から抜いた扇を
前に回し

  師匠「鶴亀は一句しかないから
     この一句に集中して、低くはって」

師匠の指導を念頭において
扇を手に取り
息を吸う。


「千代のためしの 数々に」


申し合わせのときよりは

地「千代のためしの数々に・・・」

しっかり謡えた気がする。


ちょっと緊張してる。
でも、恐れおののく度合いではない。
だって

地「緑の亀も舞い遊べば
  丹頂の鶴も一千年の
  齢を君に授け奉り」

亀も鶴も私(皇帝)の御代を喜んでくれている!のだ(笑)。
やれ嬉しや。

地「庭上に参向申しければ」

袴の中から手を出して、扇を取り

地「御門も御感のあまりにや」

立ち上がる。

そりゃもう、これだけ祝ってくれてたら

地「舞楽の秘曲は おもしろや」

舞うしかないでしょう。


笛の音。高く。
タッパイ の型。
“楽”の始まり。


“楽”は、最初はすごくゆっくりだ。

  師匠「しばらくは序破急もまったくつけないんだ」

この“ゆっくり”っていうのが難しいんだけれど
緊張気味の私にとっては、一足一足、踏みしめて運べるので
ちょっと有り難くもある。

太鼓のゆっくりとしたテンポに合わせて
かなりの時間をかけて、舞台をぐるりと一周して
タッパイをした場所、大小前に戻る。

そして最初の足拍子。

三つ踏んで、四つ踏んで、二つ、四つ、四つ。

この最初の足拍子が一番多いのだ。
大切な拍子、うまくは踏めなかったけれど
しょうがない。一瞬の勝負である。

そして扇を開く。
おめでたい柄が、眼前にくる。


ここから徐々に加速する。

申し合わせで外した足拍子も
もう外しはしない。


なんだか、苦手だった足拍子が
実は一番好きになっている。
ムスビと呼ばれる、足拍子を細かく三連打する部分も
外さなくなったらもう、踏めるのがなんだか楽しくてしょうがない。


型の順番も覚えている。
だから後は丁寧に、ただ丁寧に
お囃子方のリズムに合わせて、
型をなぞっていくだけだ。


“楽”の音色がとても好き。
それに合わせて舞えることが嬉しい。

お顔は見えないけれど、たくさんの方が見てくださっていて
それもまた、嬉しい。

『鶴亀』の皇帝も、祝いの席なんて慣れっこだろうけど
きっと祝ってもらえて、嬉しかっただろう。


そんな気持ちと同時に
「ありがたいなぁ」という気持ちも湧いて
何に対する感謝か、何かいろいろあり過ぎて分からないんだけれど
感謝を示すのに一番なのは
今、この舞、この型を
ただただ丁寧に舞い
つつがなく舞いおさめることことそが
感謝を示すことにつながるんだろうと、思う。


そうして気がつけば
“楽”の舞が終わる。

15分以上舞っていたはずだが
舞っている身としては、早いものだ。


地「月宮殿の白衣の袂・・・」


キリの部分。
“楽”の序破急が一転し、またゆっくりと
ゆったりと舞う。


キリになると目が覚めるというか。
なんか私めっちゃ汗だくやんけ、とか
ここまできたら終わりも近い、名残惜しいなぁとか
そんな雑念も入る(いかん)。

しかし何ともまぁ
無事にキリまできたもんだ。


地「君の齢も長生殿に」


良かったなぁ。

舞えて良かった。


地「還御なるこそ めでたけれ」


ゆっくりと下に居、
扇を閉じる。


拍手。


ふぅーーーー(息)




「「ありがとうございました」」


師匠「えーあれー五月さん、
   こんな上手かったっけ」

ちょっ(笑)。
いや完全に師匠のおかげなんですけれど。

女の先生「完璧だったねー」

私「ありがとうございます」


本気で汗だくのまま、楽屋に転がりこんで
汗をぬぐい、お茶を飲む。
そこへ

師匠の母「おめでとうございました」

私「あっ、はっ、ありがとうございます」

師匠のお母様が(能楽師)。


師匠の母「とても良かったです。
   でも1つ言うなら」

私「はい」

師匠の母「 着付けが。

恥。

師匠の母「この襟元ね、もう少しつめて着付けられた方が
   美しくなりますよ。後で写真見られたら分かると思います。
   次回から気をつけられた方が」

私「はい。気をつけます・・・」

とほほ。

師匠の母「でもね。素晴らしかったですよ」


ちゃんと舞えたな、と思った舞を
こうしてお褒めいただけるのは
また格別に、嬉しきことなり。
(着付けはまだまだだけど・・・)


いやー、無事に舞えて良かった。
もーそれだけ。

あとは舞台を楽しむばかり!
楽しい楽しい能『夜討曽我』が待っている!


その4 につづく。>





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Last updated  2010年10月02日 18時06分04秒コメント(0) | コメントを書く
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