その4 シャルロット・コルデー (3)
夕方再び辻馬車に乗ったシャルロットは、コルドリエ街20番地のマ
ラーのアパルトマンに向います。応対に出た小間使いは取り次ぐ意
志を見せませんでしたが、夫人のシモーヌは今朝方の娘である事を
認め、温浴中のマラーに知らせます。マラーは会う事にします。病状の悪化してしているマラーを、静かに休ませたいシモーヌは難色を示しますが、死期を悟ったマラーは、存命中に出来るだけ多くの革命の障害物を取り除いておきたいと考えていたのでしょう。自分がどれだけ疲れるかを、考慮しようとはしませんでした。シャルロットは首尾良くマラーに会えたのです。
全身を疥癬に侵され、さらに偏頭痛に悩まされていたマラーにとっ
て、苦痛をやわらげてくれる唯一の方法が温浴だったのです。そし
て6月以降、その温浴時間は次第に長くなり、遂には、浴槽に板を
渡して、その上で何時間も書き物をするようになっていました。
シャルロットが通されたのは、その浴室でした。
彼女は、カンにおけるジロンド派の策謀についてマラーに語りはじ
めます。途中1度シモーヌ夫人が薬を持って入ってきます。薬の服
用が終り、シモーヌが退出すると、マラーは先を急がせます。
「カンへ逃げ込んだ議員は何人かね」
「18人です」
「18人の謀反人共の名は分かるかね」
しばし、ためらった後、シャルロットはその名を口にします。この
マラーの書き込みは、絶対に世に出ることがないと確信しているか
らです。
「やつらはギロチン送りになるだろうよ」と、マラーが口にした時、シャルロットがさっと椅子から立ちあがり、隠し持ったナイフ
を取り出し、懸命に書き物をしているマラーの正面に回り、力いっ
ぱい彼の胸にナイフを突き刺したのでした。
「誰か来てくれ」の叫び声を発して、マラーは浴槽にくずれおち
ます。呆然と立ち尽くしていたシャルロットは、かけつけたシモー
ヌや小間使いを見ると我に帰り、リビングまで脱出しますが、そこで
居合せた人達に捕まります。
家の中からの悲鳴に、何毎かと群衆も駆けつけ、彼女は憎悪に燃えた人達にこずかれながら、がんじがらめに縛られます。血に飢えた殺
人鬼を退治したのだから、民衆には感謝されるはずだと思い込んで
いたシャルロットはあてが外れますが、それでも「愚かな民衆に
は、すぐには分からないのだ」という答えを見つけて、自分を納得
させます。駆けつけた刑事に、彼女の身柄は渡されます。こうして
彼女は牢獄に放りこまれますが、マラーの死に興奮した群衆のリン
チで殺されずに済んだのは、当時の雰囲気の中では、奇跡に
近いことでした。
4日後の17日、シャルロットは革命裁判所の法廷に引き出されま
す。判事は、彼女にこの反抗を唆した人物の名を明かにするよう、
執拗に彼女に問い掛けます。彼女は、自分1人で考えたことだと強
調しますが、信じてもらえません。こうして、その夕、シャルロッ
トはギロチンの露と消えたのです。(完)
続く
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Sent: Tuesday, August 28, 2007 10:26 AM
Subject: 28日の日記
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