ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2008.06.28
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カテゴリ: 民衆の歴史
時間と時計 (20)

さて、ガリバーの話に戻りましょう。遭難地点はこう書かれています。

「我々の船は、ブリストルから東インド(当時インドは東インド、アメリカ大陸とその周辺は西インドと記述されていました)とへの航海中、ひどい暴風雨に遭って、バン・ディーマンズ・ランド(これはタスマニア島の当時の呼称だったと考えられています)の北西方まで流された。天体観測の結果、我々の位置は、南緯30度2分にあることが分かった。」と。

現在の地図で、タスマニア島の北西、南緯30度2分を見れば、これは海上ではなく、オーストラリア大陸の上になります。ですから、実際にはそんなことはありえないのですが、何しろ18世紀初頭では、クックによるオーストラリアの「発見」や領有宣言は、まだ行なわれていないのです。それゆえ、空想冒険小説では、こういうことが起きるのは、不思議でも何でもないのです。

ここでは、ガリバーが船の位置を示すのに、緯度だけを記し、経度を記していないことに注目して欲しいのです。緯度だけでは船の位置は決められません。船の位置が決まらないとすれば、当然危険も増えます。

何故緯度があって、経度がないのか。それは古来からの天体観測の発達によって、緯度は早くから比較的正確に測定できたのですが、経度の測定が難しかったからなのです。未知の大陸や島々が沢山あった時代に、不正確な地図や海図で航海することが、いかに危険をともなうものであったかが、ここから理解できます。

ガリバーや、これも皆さんご存知のロビンソン・クルーソーが出会ったような海難事故は、当時は日常茶飯な事柄だったのです。それは海軍の軍船でも、起こりうることでした。

西洋史でお馴染みのスペイン継承戦争(1701~1713年)の最中、1707年のことです。ジブラルタルを通って、帰国途上にあったイギリスの地中海艦隊が、11月22日夜に英仏海峡を通過中に、西からの強風にあおられて進路を誤って座礁、軍艦4艘を失い、2千人の乗組員が全員死亡するという、大事故を起こしたのです。

この事故はイギリスのみでなく、ライバルのフランスやオランダにも強いショックを与えました。いつ我が艦隊にも、同じ事が起こるかもしれないからです。事故は、正確な経度の測定が出来ないが故に起こったことは、間違いのないところでしたから、この時から経度の測定への関心は、いっそう高まったのです。



早くに経度の測定法を入手した国が、世界の海を支配できる。当時の海洋国家は、競って経度の測定法の取得を目指したのです。

理論的には経度の測定法は分かっていました。標準経線を設定して、それと船が位置する地点の、ローカルな時間との時差から割り出すことが出来るからです。問題はそうした時差を測る誤差の少ない正確な時計がなかったことです。

また、仮にそうした時計が開発できたとしても、その時計を常に揺れていて、動揺の激しい船の上でも、正確に時を刻んでくれるかは、難しい問題でした。時差の誤差が仮に1分だとしても、それは地図上では大きな差になるからです。こうして、まずは時報の外に、15分単位で時を打つ時計が開発され、さらに、掛け時計でも、置き時計でもない、人が身につけている懐中時計が製造されたのです。
                   続く





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最終更新日  2008.06.28 14:20:58
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