ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2010.03.22
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カテゴリ: 外国史
ハイチに贈る(63)

さらに、対仏融和派だったトゥサンが囚人扱いでフランスへ護送されたことから、黒人たちの間にフランス人に対する不信は高まり、黒人奴隷制の復活が信じられるにつれて、それまで必ずしもしっくり行かなかった、元黒人奴隷たちとムラート(白人と黒人の混血)たちの、大同団結をも可能にしたのです。

ムラートと黒人の指導者の会談で、黒人のデサリーヌを総司令官とすることで、合意が成立したのです。

こうした黒人勢力の大同団結と、指揮命令系統の一本化は、彼らの神出鬼没なゲリラ闘争の制度を高め、フランス軍を大いに悩ませたのです。20世紀後半の科学の粋を集めた武器を携行した米軍が、ヴェトナムのジャングルで解放戦線の攻撃に脅え、遂には敗退して去った現実を我々は見聞きしています。ハイチの山岳地帯のジャングルで、実はヴェトナムと同じことが起きていたのです。

ハイチに限りませんが、カリブ諸島は1年を通じての平均気温が25℃~29℃の亜熱帯地域です。フランス軍の装備は、軍服を含めていずれも地域特性に適したものではありませんでした。そこへ持ってきて、不慣れなジャングルでのゲリラ戦を強いられたフランス軍は、時間と共に苦境に追い込まれていったのです。

加えて、黄熱病を中心とする伝染性の疾病がフランス軍を悩ませました。黄熱病研究の第一人者は日本の野口英世でしたが、野口自身も黄熱病で帰らぬ人となりました。黄熱病は高熱に黄疸を伴って死に至るウィルス性の肝炎です。病気を仲介するのは、和名で「ネッタイシマカ」と呼ばれる蚊です。

元来は熱帯アフリカの風土病で、カリブ諸島や南北アメリカ大陸では未知の病気でした。それが大西洋奴隷貿易船に乗船して、船と共に海を渡ってきたのです。人の血と共に糖分を好む蚊にとって、砂糖プランテーションの世界は、実に住みよい恰好の繁殖地となったのです。

そして、黄熱病と長い付き合いのある黒人たちは、黄熱病に対する免疫を備える体質に替わっていたのですが、インディオや西洋人には、何の抵抗力もなかったのです。いつ攻撃されるか分からないジャングルでの戦い。そして自分もいつ侵されるかもしれない未知の病に倒れた数多くの仲間たち。フランス遠征軍の戦意は、日1日と落ちていったのです。
                                   続く





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最終更新日  2010.03.22 14:45:52
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