偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2011.01.15
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カテゴリ: 銀輪万葉

 昨日(14日)は天理から奈良まで銀輪散歩して参りました。

 午前11時20分。愛車トレンクルを組み立て、天理駅を出発。先ず、石上神宮に立ち寄ることとする。今回の銀輪の目的は和邇下神社と柿本寺址、歌塚・人麻呂像を訪ねることにあるが、寄り道、道草はお決まりのことゆゑ、回り道である。

001t天理駅.JPG
​(天理駅前)​

 天理市は天理教の町、至る処に天理教関係の建物がある。独特の景観である。

002天理教の建物.JPG
​(このような感じの建物があちこちにある。)​

 上の建物の前の広い道を東に進むと、石上神宮の参道の南側に突き当る。そこを左に入ると万葉歌碑が先ず出迎えてくれるのである。

004布留の神杉・万葉歌碑 B.JPG
​(万葉歌碑)​

石上 ( いそのかみ )   布留 ( ふる ) ( かむ ) ( すぎ ) ( かむ ) びにし
            
( あれ ) やさらさら 恋にあひにける (巻10-1927)

  (歌意)石上の布留の社の年ふりて神々しい神杉のように、年老い
      た私が、今更思いもかけず、恋にとりつかれてしまったよ。

 本日の銀輪散歩は「いい年をした恋」の歌からの出発でありますが、人間いくつになっても恋を忘れてはいけませぬ(笑)。
 もう一首似た歌がありますので、それも記して置きましょう。

石上 布留の神杉 神さぶる
        恋をも我は 更にするかも (巻11-2417)

 歌碑から直ぐ北の処が石上神宮の参道入口である。

006石上神宮.JPG
(石上神宮参道)
006石上神宮 (2) B.JPG
​(石上神宮鳥居)​​

 鳥居から先は自転車を肩に担いで行く。「自転車は押してお通り下さい。」とありましたが、トレンクルは肩に乗せた方が楽なのである。
 石上神宮は、わが地元の石切神社と同じ物部系の神社。物部氏の祖ニギハヤヒを祀る。この神社にある、国宝「七枝刀」は有名。この刀のことを「布都御魂
(ふつみたま) 」(古事記)と呼び、石上神宮は、布都御魂神社とも呼ばれていたらしい。刀と言えば東大阪市の石切神社も同じ。石切さんは石切剣箭 (つるぎや) 神社というのが正式な名前である。
 また、石上振
(ふる) 神社、石上坐布留御魂 (いそのかみにいますふるみたま) 神社(延喜式神名帳)とも呼ばれていたよう。布都 (ふつ) は、「ぷっつり切れる」「ふっ切る」「ぶつ切り」などの言葉にあるように、物を絶ち切ることを意味する言葉であったよう。布都(ぶつ・打つ?)と布留(振る・古)が同根の言葉なのかどうか知らないが、布留は布都から転化したような気もする。
 万葉では「石上振」と表記されるが、地名としての石上布留は、「石上」の地域の中の一部地区が「布留」という関係と考えられているようだ。神社の北側には布留川が流れている。

​​​006石上神宮 (3) B.JPG
(拝殿前の門)
006石上神宮 (4) B.JPG
(拝殿)
005鶏 - コピー.JPG005鶏 (3) - コピー.JPG
(境内は鶏が闊歩している。) ​​​

 拝殿の奥にある本殿は写真に撮れるアングルがない。屋根が辛うじて見える程度である。まあ、神社とはそうしたものであるが。
 神社を出て、北へと坂道を下って行くと布留川に出る。右手を見ると布留の山である。

娘子 ( をとめ ) らが 袖 布留 ( ふる ) 山の  瑞垣 ( みづかき )
         久しき時ゆ 思ひき我は (巻4-501 柿本人麻呂)

娘子 ( をとめ ) らを 袖 布留 ( ふる ) 山の  瑞垣 ( みづがき )
         久しき時ゆ 思ひけり我は (巻11-2415)

 上の歌では娘子らが袖を振り、下の歌では娘子らに「我」が袖を振っている。またまた恋の歌でありますが、人麻呂の歌でもあればお許しを(笑)。この「布留山」は石上神宮を指す、神宮東方にある「布留山」を指すなどの説もあるが、特定の山を指すのではなく、布留の地の山というほどの意味というのが一般的である。

006布留の山々 (2)B.JPG
​(布留山。手前の木々のある処を布留川が流れている。)​

 布留川と来ると「布留の高橋」であるが、河原に降りることが出来ないので「高々」とはゆかない(笑)。


​(布留川)          (高橋のつもり)​

石上 布留の高橋 高々に
 妹が待つらむ 夜そふけにける (巻12-2997)

 しかし、ヤカモチは和邇下神社へ行かねばならないので、夜が更けるまで待ってはいられないのである。布留(古)妹にパスを告げて先へと進もう(笑)。
 布留大橋を渡った先で小さな神社があった。厳島神社とある。
 この神社の境内に小野小町と遍昭が交わした歌の歌碑があった。

009厳島神社 (3)B.JPG (厳島神社)
009小町と遍昭の歌碑 B.JPG
(小町と遍昭の歌碑)

いそのかみ 旅寝をすれば いと寒し
           苔の衣を われにかさなむ (小町)
世をそむく 苔の衣は ただ一重
          かさねばうとし いざふたり寝む (遍昭)

ヤカモチも追和して、

世をそむく 我の衣も 一重のみ
          こがねば寒し 冬の銀輪 (偐家持)

010良因寺の薬師堂 (2) B.JPG
(厳島神社拝殿の隣に建っている薬師堂)

 遍昭が開いた良因寺が焼失した際、本尊が無事であったので、明治になってこの地にこれを再建したのがこの薬師堂だという。

 西へと下る。国道169号(上つ道)に出る手前で道路脇の食堂に入り、昼食。昼食後は、上つ道に平行しつつ村中、畑中の脇道をジグザグに走ったりして、北へ、北へ。上つ道に出た処で、ほどなく和邇下神社の鳥居の前に出た。ここに来るのは2006年3月11日以来のことであるが、本日はこれまで 。字数制限です。続きは(その2)をご覧下さい。
<追記・注>
写真2枚(「布留川」「高橋のつもり」) が横倒しの歪んだ画像になっていたので、2020年11月12日これらを復元修正しました。
過去記事の写真が歪んでいたりすること ​  2020.10.12.






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最終更新日  2020.11.12 21:22:42
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