昨日(14日)は天理から奈良まで銀輪散歩して参りました。
午前11時20分。愛車トレンクルを組み立て、天理駅を出発。先ず、石上神宮に立ち寄ることとする。今回の銀輪の目的は和邇下神社と柿本寺址、歌塚・人麻呂像を訪ねることにあるが、寄り道、道草はお決まりのことゆゑ、回り道である。
(天理駅前)
天理市は天理教の町、至る処に天理教関係の建物がある。独特の景観である。
(このような感じの建物があちこちにある。)
上の建物の前の広い道を東に進むと、石上神宮の参道の南側に突き当る。そこを左に入ると万葉歌碑が先ず出迎えてくれるのである。
(万葉歌碑)
石上
布留
の
神
杉
神
びにし
我
やさらさら 恋にあひにける (巻10-1927)
(歌意)石上の布留の社の年ふりて神々しい神杉のように、年老い
た私が、今更思いもかけず、恋にとりつかれてしまったよ。
本日の銀輪散歩は「いい年をした恋」の歌からの出発でありますが、人間いくつになっても恋を忘れてはいけませぬ(笑)。
もう一首似た歌がありますので、それも記して置きましょう。
石上 布留の神杉 神さぶる
恋をも我は 更にするかも (巻11-2417)
歌碑から直ぐ北の処が石上神宮の参道入口である。
(石上神宮参道)
(石上神宮鳥居)
鳥居から先は自転車を肩に担いで行く。「自転車は押してお通り下さい。」とありましたが、トレンクルは肩に乗せた方が楽なのである。
石上神宮は、わが地元の石切神社と同じ物部系の神社。物部氏の祖ニギハヤヒを祀る。この神社にある、国宝「七枝刀」は有名。この刀のことを「布都御魂
(ふつみたま)
」(古事記)と呼び、石上神宮は、布都御魂神社とも呼ばれていたらしい。刀と言えば東大阪市の石切神社も同じ。石切さんは石切剣箭
(つるぎや)
神社というのが正式な名前である。
また、石上振
(ふる)
神社、石上坐布留御魂
(いそのかみにいますふるみたま)
神社(延喜式神名帳)とも呼ばれていたよう。布都
(ふつ)
は、「ぷっつり切れる」「ふっ切る」「ぶつ切り」などの言葉にあるように、物を絶ち切ることを意味する言葉であったよう。布都(ぶつ・打つ?)と布留(振る・古)が同根の言葉なのかどうか知らないが、布留は布都から転化したような気もする。
万葉では「石上振」と表記されるが、地名としての石上布留は、「石上」の地域の中の一部地区が「布留」という関係と考えられているようだ。神社の北側には布留川が流れている。
(拝殿前の門)
(拝殿)
(境内は鶏が闊歩している。)
拝殿の奥にある本殿は写真に撮れるアングルがない。屋根が辛うじて見える程度である。まあ、神社とはそうしたものであるが。
神社を出て、北へと坂道を下って行くと布留川に出る。右手を見ると布留の山である。
娘子
らが 袖 布留
山の 瑞垣
の
久しき時ゆ 思ひき我は (巻4-501 柿本人麻呂)
娘子
らを 袖
布留
山の
瑞垣
の
久しき時ゆ 思ひけり我は (巻11-2415)
上の歌では娘子らが袖を振り、下の歌では娘子らに「我」が袖を振っている。またまた恋の歌でありますが、人麻呂の歌でもあればお許しを(笑)。この「布留山」は石上神宮を指す、神宮東方にある「布留山」を指すなどの説もあるが、特定の山を指すのではなく、布留の地の山というほどの意味というのが一般的である。
(布留山。手前の木々のある処を布留川が流れている。)
布留川と来ると「布留の高橋」であるが、河原に降りることが出来ないので「高々」とはゆかない(笑)。
(布留川) (高橋のつもり)
石上 布留の高橋 高々に
妹が待つらむ 夜そふけにける (巻12-2997)
しかし、ヤカモチは和邇下神社へ行かねばならないので、夜が更けるまで待ってはいられないのである。布留(古)妹にパスを告げて先へと進もう(笑)。
布留大橋を渡った先で小さな神社があった。厳島神社とある。
この神社の境内に小野小町と遍昭が交わした歌の歌碑があった。
(厳島神社)
(小町と遍昭の歌碑)
いそのかみ 旅寝をすれば いと寒し
苔の衣を われにかさなむ (小町)
世をそむく 苔の衣は ただ一重
かさねばうとし いざふたり寝む (遍昭)
ヤカモチも追和して、
世をそむく 我の衣も 一重のみ
こがねば寒し 冬の銀輪 (偐家持)
(厳島神社拝殿の隣に建っている薬師堂)
遍昭が開いた良因寺が焼失した際、本尊が無事であったので、明治になってこの地にこれを再建したのがこの薬師堂だという。
西へと下る。国道169号(上つ道)に出る手前で道路脇の食堂に入り、昼食。昼食後は、上つ道に平行しつつ村中、畑中の脇道をジグザグに走ったりして、北へ、北へ。上つ道に出た処で、ほどなく和邇下神社の鳥居の前に出た。ここに来るのは2006年3月11日以来のことであるが、本日はこれまで
。字数制限です。続きは(その2)をご覧下さい。
<追記・注>
写真2枚(「布留川」「高橋のつもり」)
が横倒しの歪んだ画像になっていたので、2020年11月12日これらを復元修正しました。
●
過去記事の写真が歪んでいたりすること
2020.10.12.
飛鳥川銀輪散歩(下) 2024.11.11 コメント(4)
飛鳥川銀輪散歩(上) 2024.11.10 コメント(2)
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