ゆうさんの日記

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

chai_dhi

chai_dhi

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

コメントに書き込みはありません。

Freepage List

2026.05.28
XML
「明美、お待たせ! 今日もから揚げ弁当、一つちょうだい」
「透! いらっしゃい、本当にこっちに引っ越してきたんだね」
お昼前の少し落ち着いた時間帯、暖簾をくぐって現れたのは、高校時代のクラスメートの透だった。昔からモデルみたいにスレンダーで、どこか中性的な雰囲気をまとった男の子だ。
半年前、私が母の看病で地元と下町を往復していた頃、透から「仕事の都合で明美の店の近くに引っ越すことになった」と連絡をもらっていた。あの時は精神的にもボロボロだったから、こうして地元の友人が近くにいてくれるだけで、心にぽっと灯りがともったように嬉しかったのを覚えている。
「ここ、本当にいいお店だね。明美が頑張ってる姿見たら、僕も仕事頑張らなきゃって思っちゃうよ」
「もう、お世辞言っちゃって。ほら、出来立てだよ」
それからというもの、透は毎日のようにお弁当を買いに来てくれた。カウンター越しに、高校時代のバカバカしい思い出話や、地元の共通の友人の噂話に花を咲かせる。気心の知れた透との会話は楽しくて、ついつい私も身を乗り出して、いつもより距離が近くなってしまっていた。
だけど、これが毎日続くとなると、周りが黙っちゃいない。
「……あの、明美さん」

「彼……毎日来てますよね。ぶっちゃけ、明美さんとはどういう関係なんですか? その、かなり距離が近いっていうか……」
必死に嫉妬を隠しきれない、強めのトーン。私は思わず吹き出しそうになるのをこらえながら、人差し指をチッチッと振った。
「もう、みんなして怖い顔しちゃって。ただの高校時代の仲の良い友達よ?」
「友達って言ったって、あんなイケメンと毎日イチャイチャされたら、俺たち気が気じゃなくて……!」
あまりの食い下がりぶりに困り果て、私は心の中で透に「ごめん!」と謝りながら、声を潜めて本当のことを打ち明けることにした。
「……内緒よ? 彼ね、恋愛対象が『男の人』なの。私とは、完全にただの親友」
「え……ゲイ、ですか!?」
男の子たちの顔が一瞬でパッと明るくなった。なーんだ!と、現場に目に見えて安堵の空気が広がる。「じゃあ、ライバルじゃないんだ!」「驚かせやがって!」と、一同はすっかりホッとした様子で、胸をなでおろして帰っていった。男の子たちって、本当に単純で可愛い。
ところが、事件はここからだった。
安心したのも束の間、なんと透が、私の足腰の救世主であるあの整体師、大吾さんに一目惚れしてしまったのだ。
「明美……僕、見つけちゃったかもしれない。隣の整体院の先生、めちゃくちゃタイプなんだけど……!」

それからの透の行動力は凄まじかった。
毎日買っていたうちのお弁当はそっちのけになり、今や二日に一回は「腰が痛くて」「肩が凝って」と理由をつけて、大吾さんの整体院に足繁く通う毎日に突入したのだ。
(ちょっと透、大吾さんには智恵子さんっていう、ものすごい美魔女の恋人がいるのよ……!)
喉まで出かかったけれど、智恵子さんと大吾さんの秘密をバラすわけにもいかない。
何も知らない透は、「今日も大吾さんの手が優しくてさぁ」とうっとりした顔で私に報告してくる。

うちの弁当屋の周りの人間関係が、なんだかどんどん複雑で、とんでもない方向に転がり始めている気がする。
「……まぁ、私のから揚げ弁当を食べて、みんな元気ならいっか」
私は苦笑いしながら、今日も山盛りのから揚げをフライヤーに投入するのだった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2026.05.28 19:23:19
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: