ゆうさんの日記

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2026.05.31
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カテゴリ: まこととかおり
季節は巡り、小田切(おだぎり)家を取り巻く景色は一変した。
香織(18)は高校三年生に進級していた。
あの嵐のような離婚劇の後、2DKのアパートは解約され、香織は父・誠(46)と二人で新しい小さなアパートへ引っ越した。誠が夜勤の給料からやりくりしてくれたおかげで、とりあえず「一人一部屋」が確保されているのが唯一の救いだった。
「私、卒業したら大学には行かない。就職して働くよ」
ある夜、香織は誠にそう告げた。誠は少し寂しそうな、だけど娘の決意を尊重するように静かに頷いた。香織の胸にあるのは、明確な未来のビジョン――アルバイトでコツコツ貯めているお金と、これから就職して稼ぐ給料を合わせ、大好きな紗季(さき)と「二人暮らし」を始めるという瑞々しい夢だった。
幸いにも、紗季とは三年生でも同じクラスになれた。学校での二人は、周囲の目も気にせずいつでもいちゃついており、その距離の近さはもはや公認の仲だった。
一方、家を追い出された母・真琴(43)は、地方にかろうじて残っていた実家へと身を寄せ、身の丈に合わない贅沢や男遊びから強制的に足を洗わされていた。薫(23)もまた、有言実行で史華(25)との同棲をスタートさせ、プロのドラマーとして順調にステップを上り続けている。
家族はバラバラになった。けれど、香織と紗季の「聖域」だけは、何ひとつ変わっていなかった。
じっとりとした暑さが街を包み込む、夏の日の放課後。

部屋に入るなり、エアコンを強めにして制服を脱ぎ捨てる。
まずは二人でシャワーを浴び、火照った身体に冷たい水を浴びせ合ってはしゃいだ。浴室から出ると、大きなベッドの上で、どちらからともなく裸のまま戯れ始める。
お互いの肌の匂い、柔らかさ。もう何度も重ねてきた身体なのに、触れ合うたびに新しい愛おしさが込み上げてくる。
「ねえ、香織……今日は、もっと凄いことしよ?」
紗季がイタズラっぽく微笑み、香織の身体の向きを入れ替えた。
お互いの顔と秘部が上下で向かい合う体位――いわゆる「69(シックスナイン)」の形になり、二人は言葉を失って、互いの最も敏感な場所を同時に弄(いじ)り合い、貪(むさぼ)り合った。
女の子同士だからこそ分かる、甘美な角度と繊細な愛撫。
部屋の中に、二人の高まった吐息と、秘めやかな水音が熱く響き渡る。
やがて訪れた波に、二人は同時に背中を丸めて震え、極上の快楽の余韻に浸りながら、汗ばんだ身体をぴったりと重ね合わせて眠りについた。
ひとしきり満たされた時間を過ごし、ホテルを出たのは、夜の帳(とばり)が下りた頃だった。
「あー、楽しかったね。次はどこのホテル行こっか」

まだ夢見心地のまま、手を繋いで駅へと続く裏路地を歩いていた、その時だった。
「お、見てみろよ。可愛いJK二人組じゃん。こんなとこで何してんの?」
路地裏の影から、見るからに素行の悪そうな二人組の男がヌッと現れ、二人の行く手を塞いだ。アルコールの臭いがぷんと漂ってくる。
「すみません、急いでるので」
香織は紗季を背中に隠すようにして歩調を速めようとしたが、男の一人が香織の手首をガシッと力任せに掴んだ。

下品な笑い声を上げながら、もう一人の男が紗季の肩に手を伸ばす。
「やめて、放してっ……!」
紗季の悲鳴が夜の路地に響いた。男たちの圧倒的な体格差と力に、香織の頭の中が恐怖で真っ白になりかけた、その瞬間。
「おい、その汚ねぇ手を放せよ」
背後から、低く、地を這うような鋭い声が響いた。
重いスティックバッグを肩にかけた男が、路地の暗闇から現れる。スタジオ帰りの薫だった。
「あ? なんだお前、すっこんでろ――」
男が言い切るより先に、薫はバッグを地面に投げ捨て、香織を掴んでいた男の胸ぐらを掴んで引き剥がした。
「俺の妹に触んじゃねぇって言ってんだよ!」
激昂した男が薫の顔面を殴りつけ、薫もまた、ドラムで鍛え上げた拳を男の顎へと叩き込んだ。路地裏で、激しい殴り合いの喧嘩が始まる。
「薫お兄ちゃん!」
香織が叫ぶ。男二人を相手に、薫は一歩も引かずに立ち回った。
その時、タイミングよく遠くから「ウー、ウー」と警察車両のサイレンの音が近づいてくるのが聞こえた。近隣の住民が騒ぎに気づいて通報したのだろう。
「チッ、警察だ! ずらかるぞ!」
サイレンの音にビビった男二人は、薫を突き飛ばすと、夜の街の雑踏へと一目散に逃げていった。
「……ハァ、ハァ……っ。クソが……」
薫は口元の血を親指で拭い、荒い息を吐きながら、へたり込んでいる香織と紗季の前にしゃがみ込んだ。
「香織、大丈夫か? 怪我は?」
「うん、大丈夫……。お兄ちゃん、ごめんなさい、助けてくれてありがとう……」
「紗季ちゃんも、大丈夫だった?」
「はい……ありがとうございます……っ」
すぐにパトカーが数台到着し、あたりは騒然となった。
とりあえず男たちは逃げ去り、香織たちにも身体の怪我はなかったため、事情聴取のあと「今回は災難だったね」ということで、特に大きな沙汰にはならずに済んだ。
警察署からの帰り道、三人で並んで歩く。
「香織。お前が誰と付き合おうが、どこに行こうが俺は文句言わねぇよ。だけどな、自分の身は自分で守れ。お前が傷ついたら……あのクソ真面目なオヤジが、今度こそ本当に死んじまうからな」
ぶっきらぼうに、だけど確かな優しさを込めて言う兄の言葉に、香織は紗季の手をギュッと握り締めながら、深く、深く頷いた。
バラバラになった小田切家。けれど、兄妹の絆と、それぞれの守りたい「愛」は、この青い夏の夜の中で、確かに息づいていた。





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Last updated  2026.05.31 04:47:30
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