あたしには神さまが見えない

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nipponites @ Re:過去に遡る旅(06/24) お帰りになさい~ユウリィさん(^^) もう…
Ikuho @ げんきなんだ☆ ユゥリィさん、お元気でしたか? なつか…
Ikuho @ Re:Not, it's too late(09/14) わあ、ユゥリイさん! お久しぶりです! …
Marketplace @ Re:Not, it's too late(09/14) 夏はまた来るよ! 今年と同じ夏とは限ら…
nipponites @ Re:Not, it's too late(09/14) ユウリィさん、こんにちわ、お久しぶりの…
2006/02/14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
午前中はたいした仕事が無くて、この分なら久し振りに仕事を早めに切り上げることができるかもしれない。そう思っていた。

お昼ご飯を繁華街の地下二階ににある食堂で食べた。この食堂は繁華街にありながら、繁華街を訪れた人はいない。ここに食べに来るのは、この街で働いている人たちばかりだ。だから、けれん味の無い料理を相応な価格で食べる事ができる。「有機大豆を使ったハンバーグとじゃこご飯の定食」とか「サーモンとたらこのクリームスパゲティ」といった学生の子たちが吸い寄せらけるようなメニュはなにもなくて、ごく普通に「豚の生姜焼定食」や「サバの味噌煮定食」がある。無骨だが、美味しい。だからあたしはこの店に週に一、二度は食べに行く。

食堂から戻る途中で、すぐに携帯電話に着信表示が並び始める。「着信あり」「留守番メッセージあり」「メール着信あり」が同時に携帯電話の画面に並ぶのも最近では珍しくなくなってしまった。優先順位を頭の中で整理してから、上司、部下、同僚、得意先に連絡を取った。あたしの「午後」が始まった。

戸締りをして職場を出ると、あと僅かで日付が変わりそうだったが、なんとなく一杯だけ飲みたくなったので、近くのバーへ向かった。雇われでゲイのバーテンダーがいるのだけれど、そのバー自体は至極真っ当なバーで、彼が作るカクテルはどれも美味しい。彼はいつもと同じようにカウンターに座っていた。退屈を持て余している表情までも、いつもどおりだった。扉を開けたあたしを見て、やっぱり、といった表情で微笑んで、読んでいた本を閉じた。

「今日はカンが冴えてるね。そろそろ、顔出すんじゃないかと思ってた」
「そうなの?」
「そう」

あたしは曖昧に首を振り、スツールに腰掛けた。

「一杯だけ、飲みたくなっちゃった。終電までのあいだだけ。なにか温まるものをちょうだい」

「ヴァンショー? ああ、ホットワインのことね。良いけど、どうせまたどこかの試飲会でくすねてきたタダ酒ならぬタダワインをちょいと加工だけして売りつけるつもりなんでしょう」
「酷いこと言うなァ。素直に飲ませて、って言えば良いのに」

彼はそう言いながら、ミルクパンにワインを注ぎ、ストックから取り出したシナモンスティックを二つに折り、アカシヤのはちみつを取り出した。たちまちにほんわりとした香りに包まれた。彼の作るホットワインは美味しい。なのに、教えてもらったレシピどおりに作ってみても、けして美味しくない。

「どうぞ。飛び切り熱くは無いけど、猫舌な人は気をつけた方が良いかも」

出された厚みのあるガラス製のゴブレットを両手で包むと、悴んでいた手の平がじんわりと温まってきた。

「良かったら、これでもつまむ?」

そう言って差し出されたのは青い紙に包まれたちいさなチョコレートだった。金色のちいさな文字でチョコレート工場のロゴが記されていた。

「ジーン・ポール・ヘヴィン……?」
「いやだね、『ジャン・ポール・エヴァン』。パリの有名なショコラティエ」
「ふうん……どうしたの?」
「いや、さ……今日はヴァレンタインだから」








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Last updated  2006/02/16 01:44:17 AM
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