PR
フリーページ
コメント新着
サイド自由欄
たとえ話をひとつしてみよう。寿司の起源は種々の説にまかせるが、ともかく寿司がこれだけ普及し、確立したのは日本が水産国だったからにちがいない。ここまでは気候風土や産業が文化を決定したといえる。
しかし、最近のように日本近海の魚をとりつくしてもなお寿司を食いつづけようと、世界の涯までマグロやエビをとりにいくとなれば、これは文化が産業を創造し、維持していくことになる。
アメリカの大西洋岸では、人々がマグロを釣るのはレジャーであって、魚体は砂浜に埋めて捨てていたのを、日本人が高値で買い上げそれを空輸すると聞いて、レジャーが産業に変化してしまったというエピソードがある。
いまや寿司という「文化」がすたれれば、日本の遠洋水産会社のみならず、世界各国にも困る人が出るようになった。
川上産業のボーナスや交際費のおかげで寿司屋が栄えるだけでなく、寿司屋の営業努力や商品開発のおかげで、 水産会社、倉庫会社、輸送会社などの川上産業が栄えている。そして最近は、ニューヨークやパリなどにたくさんの寿司屋ができて、アメリカ人もヨーロッパ人も寿司を食べるようになった。 生魚は食べないはずの中国人の町、 北京にも上海にも台北にもある。
日本人も寿司を売っていれば、外国に反発されることはない。
日本が自慢のハイテクが寿司に応用されると回転寿司になる。高価で新しいものにチャレンジするのは知識人、 芸能人で、ヨーロッパではそうした人と同席できると喜ぶ大衆への伝播がはじまっている。アーリー・アダプター からフォロワーヘ、である。
回転寿司には無限の神秘が感じられるとか、東洋的な永遠を味わえるとか言いながら味わっている人がいる。回転寿司の特許はもう切れているが、周辺特許が約 1000 件あって、日本のメーカーはそれで利益を得ている。
魚は北大西洋産で漁師はノルウェー人で、トラックの連転手はトルコ人、板前はベトナム人で客はフランス人だが、それでも日本寿司とはこれ如何に―――である。
日本は文化をつくり、特許使用料の形でそれを売っている。これは最先進国の姿である。
『すぐに未来予測ができるようになる 62 の法則』(日下公人氏著、 PHP 出版)より