突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2011.07.10
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カテゴリ: カテゴリ未分類


 リシャーナの秘術、“透明”と“隠遁”を駆使して、ここまで難なくたどり着いたミラだったが、この暗闇には、少し躊躇を覚えた。

 “エタ”の中には、深い眠りについて、かすかに息はしているんだけれども自力では決して目覚めることのない、そういう人たちが、大勢いることが感じられた。
 その中に、アンタレスがいることも、ミラにははっきりと感じられた。

 アンタレスの、花のように甘やかな、鮮やかな香りが、確かに、この冷たい闇の奥から、ミラの鼻腔に流れこんでくる。 
 それから、アンタレスだけが持つ、一種独特魔術的な、あの、力強い命の息吹き、血の鼓動。 
 殺されても死なない、殺しても死なせない、灰になっても蘇る、思いだけで、死んだ人さえ再びこの世に再生できる、秘石“血の石”の霊力だ。
 その、驚異の力が、確かに、感じられる。


 その使い方も、リシャーナの魔法の書で、暗記するくらい何度も何度も、繰り返し読んだ。
 必ず、アンタレスを目覚めさせ、この冷たい死の牢獄から、本来の居場所、リシャーナの森に連れ帰るのだ。

 足もとで小さく身じろぎした、“エタ”の出入り口を守る黒い顔のヤックシャーに、もう一度、注意深く“眠り”の魔法をかけると、ミラは、覚悟を決めて、凍りつくようなその冷たい部屋の中へと、足を踏み入れた。

 石のベッドがどこまでも奥まで並ぶ、気味の悪い部屋の中を、アンタレスのかすかな体温と匂いをたどるようにして、手探りで進んでいくと、途中で何度も、猿みたいな顔の小さなジャムルビーたちとすれ違った。 石のベッドで眠る人たちを見て回り、世話する役目なのだろう、ときどき、足を止めてベッドの上の人の顔を覗き込んだり、額や胸に触ってみたり、手を取って脈を調べたりしている。 そうしたジャムルビー同士が、すれ違うときにちょっと足を止めて、顔を付き合わせて低い声で何か言葉をかわす様子は、食べ物を探して地面を這い回る蟻たちそっくりに見えた。 何をしゃべっているのか、早口で全然聞き取れないところもそっくりだ。 どれも忙しそうに、ベッドからベッドへ早足で歩き回り、ときおり、不思議そうに顔を上げてあたりを見回してみたりはするものの、“透明”と“隠遁”で守られたミラに気がつく者は一人もいなかった。

 ようやく、目指すベッドを探し当てた。
 背伸びして、ベッドの上のアンタレスの顔を覗き込む。

 ――― こんな、蟻の巣のような不快な暗がりの中でも、アンタレスの顔はやっぱり、闇に咲く白い花のように美しかった。

 どこにも傷はなかった。
 ただ、ぐっすりと眠っているだけのように見えた。
 楽しい夢の中で遊んでいるように、穏やかな顔をしていた。

 しなやかで、さらさらしていた。
 血の気のない、白い頬に触れてみた。
 冷たくて、痛々しくて、胸が締めつけられるような気がした。
 そっと唇を押し当ててみた。
 甘い、花の香りがした。


 小声で、耳にささやいてみた。

 ――― 何の反応も返ってこなかった。

 小さく吐息をついた、そのとき、ミラの後ろで、しわがれた、気味の悪い笑い声が響いた。

 「・・・お待ちしておりましたよ。 ゴルギアスの黒豹を取り戻しに来るのはいったい誰かと、首を長くしておりましたら、ミラ、あなたでしたか」





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最終更新日  2011.07.10 20:43:12
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