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ミケを守りたい ―――
珠子お嬢さまを守りたい ―――
二つの思いが、重なり合ったのがはっきり感じられたとき、同時に、その二つの思いが、目には見えない、けれど、明確な流動となって、ブーン、とやわらかな唸りをあげながら二人を押し包んだのが感じられた。
強力な磁場のようなものが、バリアーとなって二人をすっぽりと蔽う。
次の瞬間、生白く不気味に光って飛んでくるうろこの刃が、たまこの目の前で、カン、と、高い金属音をたててはじき返された。
続いて飛んできたうろこも、カン、と、はじき返された。
次々と飛んでくる恨みのうろこを、たまことミケの、互いを思いやる慈愛のバリアーが、カン、カン、と、小気味よい音を立ててはじき返していく。
それは、どんな鋭い刃が束になって襲いかかってこようとびくとも揺るがない、強靭なバリアーだった。
数限りない恨みのうろこ、憎しみのうろこが、二人の前に空しく舞い散り、地に堕ちていく。
龍の体から、うろこの数が徐々に減り、ところどころうろこのはげおちたその体が、しだいに強い光を失いはじめた。
あと一息 ――― たまこがそう思ったとき、バリアーに気づいた龍が、怒りに全身を膨らませ、雷鳴のような咆哮を上げた。
「おのれ! どこまでも俺の邪魔をする、こしゃくな三毛猫! お前から先に地獄へ送ってやるわ!」
龍の怒声が、大気を震わせ、冥界の空に暴風を呼ぶ。
二人の頭上でゆっくりと渦を巻きはじめた暴風が、みるみるうちに勢いを増し、巨大な竜巻に成長した。
真っ黒な竜巻が空を蔽い、重い地響きを立てながらたまことミケに迫ってくる。
二人を守るバリアーが、竜巻のおこす激しい風圧を受けて、ゆらゆら、危うく揺れ始めた。