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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2016.02.11
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カテゴリ: 文芸

 舞台となっているのは、戴、漣、芳、慶、雁、才、柳など。
 泰麒、月渓、陽子、楽俊、利広、尚隆など、お馴染みのキャラクターに加え、
 廉王・鴨世卓など、興味深い新たなキャラクターも登場する。

 「冬栄」は 『風の海 迷宮の岸』 後の泰麒を描いたお話。
 驍宗の登極後、泰麒は蓬莱から帰還する際にお世話になった漣国を、使節として訪れる。
 その後宮で、畑を管理している廉王・鴨世卓から
 「お役目」と「お仕事」の違いについて等の話を聞き、迷える泰麒は一歩前進する。

『風の万里 黎明の空』 で、祥瓊の父である芳極国・仲韃を討った月渓が主人公。
 周囲から仮王となることを期待されながら、それを拒み続けてきた月渓が、
 慶国からの使者・青辛の諌言と、彼が携えて来た祥瓊からの手紙とによって、
 仮王となる決意を固めるまでを描く。

「書簡」は、陽子と楽俊が鸞を使ってやり取りした内容を描くお話。
それぞれが、日々の苦労を全く述べることなく、
互いに励ましあう内容が、健気でとても好感が持てる。
それぞれの「らしさ」がよく出た作品。

「華胥」は、5話の中で最も長く、本著のタイトルにもなっているお話。
枕辺に挿して眠ると、国のあるべき姿が見えるという「華胥華朶」。
この才国の宝重を巡るお話。


自分の見る国と砥尚の作ろうとする国が一度も近づかないことに苦しみ、病に伏す。
才の国土は荒廃し、民は困窮する。
そして、朱夏の夫・栄祝の陰謀によって弟を誤解し、
父と共に手にかけてしまった砥尚は、遺言を残し禅譲したのだった。

  「人を責めることは容易いことなんですよね。

   でも私たちは、その理想が本当に実現可能なのか、
   真にあるべき姿なのかをゆっくり腰を据えて考えてみたことがなかった気がするんです。
   扶王が重くしているのを見て、軽いほうがいいのにって、
   すごく単純にそう思っていたような感じがする……」(中略)

  「税は軽いほうがいい、それはきっと間違いなく理想なんでしょう。
   でも、本当に税を軽くすれば、民を潤すこともできなくなります。
   重ければ民は苦しい、軽くても民は苦しい。
   それを弁えて十分に吟味したうえでの結論こそが、
   答えでないといけなかったんじゃないかな。
   私たちはそういう意味で、答えを探したことがなかったと思うんです」(p.291)

これは、このお話の主人公となっている朱夏の弟・青喜の言葉。
小野さんらしい、現在の政治にも通じる、とても深みのある一言です。

「帰山」は 『図南の翼』 で、珠晶が供王となるまでの道中を色々とサポートした利広と、
風漢(明記されていないが、延王・尚隆)が、
傾きつつある柳国の首都・芝草で30年ぶりに再会し、
酒を酌み交わしながら、国の盛衰について語り合うというお話。

とても短いお話だが、長く続く両大国を支える者同士の会話には深みがある。
一方、柳国の衰えた姿は 『丕緒の鳥』 に収められている「落照の獄」に記されていた通り。

   ***

これで、文庫化されている9作は読了。
あとは「漂舶」だけだが、これは『ドラマCD 東の海神 西の滄海』の付録なので、
今でも入手できるものなのかどうか、調べるつもり。
あとは、小野さんが続編を出してくれるのを待つのみです。





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Last updated  2016.02.11 18:31:28
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