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教室で、机の上の無数の落書きと花瓶を前に、涙する伊桜里。 そして、こちらを視界の端に留める、グループのリーダー格らしい肥満体男子。 瑠那は、その指紋を確認すると血祭りにあげ始めるが、蓮實が途中でそれを制止。 その後、男子の両親が激怒して駆け付けるが、優莉匡太の声を聞き震えあがる。 亜樹凪は瑠那に、饗庭窅一(あえばよういち)が嫉妬心から殺しに来ると警告。 饗庭は初代死ね死ね団の生き残りで、今は優莉匡太の親衛隊・悍馬団のひとりだという。 しかし、瑠那はNPO法人・少年少女ソーシャルワーク・サポート東京の坂井美鳥らに請われ、 家出少年少女らを救出すべく、匡太の半グレ同盟の総本山・山梨県臥龍岡連峰に入山する。一行は、敵の襲撃を受けつつも、かつて寺蜜神教会清心衆本部があった芥切山を目指す。が、瑠那は閻魔棒に山裾まで追い出され、そこで「伊桜里は貰った」というメッセージを受取る。そして、饗庭の襲撃を受けながらも、何とか伊桜里の暮らす児童養護施設まで辿り着くが、そこには、共に夕食の調理をすることで、父・優莉匡太に心を許してしまった伊桜里がいた。 ***死ね死ね隊の八牧哲英ことチョン・スンウは、かつてパグェに身を置いていた。凜香に恋愛感情を抱いていたスンウは、凜香が閻魔棒の拠点の一つで監禁・洗脳を受けた際、D5の一員に化けてこっそりと監禁場所に近付き、薬物欲求を緩和させる薬物を注射していた。それによって、凜香は洗脳は解けなくとも、禁断症状は長引かなかったのだった。 ***瑠那は、NPO法人の負債を取立てに来た唱道会系鳴澤組の伊場安郎らと再び臥龍岡連峰へ向かう。瑠那を欠いたNPO法人一行は、少年兵らに捕らえられ、円形闘技場で辱めを受けていた。そして、そこに侵入した鳴澤組一行も捕らえられ、処刑が行われようとした時、瑠那登場。さらに、凜香、結衣、瀧島らが現れ、八牧も加勢、巨大建造物は瓦礫の山と化したのだった。 ***巻末の広告ページには、 次巻より最終三部作!! 『高校事変22』 松岡圭祐 2024年9月25日発売予定の文字が掲げられており、既に22巻は刊行されています。いよいよ、父と娘がそれぞれの支援グループを率いて争うことで、シリーズも終幕を迎えるのでしょうか?
2024.10.26
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前巻ラストの衝撃シーンを受けての最新刊。 半年間、ずっと楽しみにしながら待っていました。 葵の言葉を、小野塚はどのように受け止めるのでしょうか? ドキドキしながら、読書開始です! ***第61話「春秋に富む」では、葵の「私にとっても特別です!」の言葉に対し、小野塚は「そういう知り合い 大事にしなきゃって気付かされました」と返すのみ……。激しく落ち込んだ葵は槙本に電話をかけ、薬剤師の恋愛や結婚について語り合うことに。そして、ADHDと診断された南奏太(14)が、母親と共に萬津病院にやって来る。第62話「助ける、支える」では、奏太に処方されたインチュニブの効果に疑問を抱いた母親が、コンサータへの変更を希望していると担当医・久保山から聞いた葵が、奏太と母親に聞き取り。眠気が続いているのは寝不足が原因ではと問われ、奏太は夜中に絵を描いていると告白する。メラトベルが追加処方されるも、奏太の将来を心配する母親は、父親に強い言葉を発してしまう。第63話「あふれてる」では、「小児薬物療法認定薬剤師」に応募した葵が、小野塚を飲みに誘う。そして、「小野塚さんのこと好きです」に対し、返ってきた言葉は「酔ってます…?」。さらなる「今は仕事のことで頭がいっぱいで…」には、逃げ帰るしかなかった葵。そして、相原くるみも泌尿器科と腎臓内科の4Bに配属されてから疲労困憊しきっていた。第64話「ないものねだり」では、7年前から慢性腎不全で通院している城島克也(66)が、初期の胃がんが発覚し2か月前に部分摘出、その後再発予防でTS-1を服用していた。また、幡野絵美(24)は、2年ほど頭痛外来に通院し、デパゲンが処方されていたが、60錠程飲んで救急搬送、胃洗浄後に活性炭とナロキソンを投与するも意識障害で問診出来ない。一方、くるみは羽倉や葵の姿を見て、自分の不甲斐なさを感じ、最近ずっと気を落としていたが、逆に対人スキルにくるみとの差を感じていた羽倉から、補い合っていこうと語りかけられる。第65話「踏みしめて」では、羽倉の提案したバルプロ酸中毒の解毒法が功を奏し、意識レベルが改善した絵美は、精神科の診察を受けた後、退院することに。また、副作用で口内炎が酷くなった城島は、TS-1の投与を中止、シャント造設手術も延期に。これまでの治療に疑問を抱く城島に、くるみは「うがい薬」を一緒に作ろうと誘いかける。 ***第62話に登場する奏太の父親は、常に冷静に理性を働かせながら、決して感情的にならず、妻に対しても、子供に対しても、包み込むように優しく接していて、驚愕もの。こんなにも、様々な視点から物事をとらえ、子供の将来を展望出来る人は、そうそういません。ましてや、身内に対しての対応は、仕事として他人に対するよりも、ずっとずっと難しいのに。そして、第65話でくるみが城島や絵美の母親に語りかける場面は、強く胸に迫るものがありました。また、次の一人語りには心が震えました。 羽倉くんへの嫉妬も 四門先生への苦手意識も 全部自分の自身のなさからきてた 仕事ができないとジャッジされることに怯えて… 人の目を気にして努力しても 焦るばかりで視野が狭くなってた でも 私はもう解決策を知ってる まだまだ躓くだろうけど 目の前の仕事にひとつひとつ向き合って 積み重ねていくしかない …ここが 私の仕事場これに続く「今日も お疲れさま」は、働く人たち皆へのエールですね。『アンサングシンデレラ』は、やっぱり良い!第61話の薬剤師の恋愛・結婚事情も面白かった!!
2024.10.25
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恩河日登美は雲英亜樹凪と共に、自らが殺害した捜査1課・坂東志郎の家へ。 亜樹凪は娘・満里奈に「あなたとはつながりたい」と連絡先を記したメモを渡す。 以後、日登美は雲英秀玄を殺害すると、出版社やテレビ局を次々に占拠していく。 そして、マスコミやネット上で優莉匡太を非難する声は全く聞かれなくなった。 一方、夏休みに登校した凜香、瑠那、伊桜里は、蓮實に誘われヘリで志渡澤島へ。 やがて、そこに結衣も姿を現すが、翌日には瀧島直貴ら7人の閻魔棒や、 匡太の半グレ同盟から離脱した者たちと共に、満里奈もやって来た。 そして、海上自衛隊の潜水艦・てんりゅうを奪った日登美までもが現れる。日登美は、矢幡総理が日本の国益のため、優莉4姉妹と裏切り者の元半グレをこの離島に隔離し、匡太が送り込むだろう現役の死ね死ね隊精鋭も含め、全て抹殺しようとしていると結衣に告げる。すると、イージス艦から発射されたミサイルで、結衣たちがいたビルは跡形もなく消失。てんりゅう艦内で日登美の言葉が真実であると確信した結衣は、瑠那をそこに残し島へと戻る。自衛隊のP3CとC2編隊8機を、てんりゅうから発射された対空ミサイルが撃墜。結衣は、上陸してくる自衛隊に備え、トラップの種類と設置場所を日登美に示すと共に、手に負えないぐらい敵の数が増えた場合は、島の中央の丘に集合するよう皆に指示。一方、瑠那は輸送艦・おにざきの撃沈に成功するが、楊陸艇2隻は取り逃がしてしまう。290名の上陸掃討部隊、さらには何百何千の空挺要員に包囲され、丘に追い詰められた結衣たち。ミサイルが発射されたものの、丘の上には変わりがなく、周辺だけが黒焦げの大地と化していた。瑠那はてんりゅうで潜水艦・かいりゅうを撃沈した後、かいりゅうを装ってイージス艦に接近、イージス艦を乗っ取ると、丘の周辺に向けミサイルを発射したのだった。 ***全てが結衣の目論見通りに進んだところで、自衛隊との壮絶な闘いは終了。その後、結衣は瑠那に義父母のもとに戻って日暮里高校に通い、伊桜里を護るよう伝えます。瑠那は、立派になった阿宗神社で義父母の本心を思い知らされることになりますが、日暮里高校では、鈴山耕貴淺、有沢兼人、寺園夏美の3人に温かく迎え入れられたのでした。
2024.10.20
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『京都 梅咲菖蒲の嫁ぎ先』の続巻。 副題は、「~百鬼夜行と鵺の声~」。 前巻に比べると、250頁とボリュームは軽め。 <続>ではなく<2>とあるので<3>以降の刊行も期待できそうです。 ***妖たちが列をなして闊歩する『百鬼夜行』。京都市内でその目撃談相次ぐとの記事が、時雨書院が発行する雑誌『時世』に掲載された。審神者・梅咲藤馬は、立夏が笛を吹いて妖を集め、秋成たち白虎班が滅する計画を立てる。しかし、鵺(ぬえ)が現れたことで作戦に乱れが生じ、新斎王・綾小路蓉子が姿を消してしまう。明治時代に百鬼夜行を滅した伝説の斎王・犬童桔梗。斎王は未婚の内親王でなくとも特別な力があれば既婚者でも良いと仕組みを改めた人物。その桔梗の遣いが、かつて鵺を封じた西福寺の薬師如来像を、1か月前にどこかへ移したという。さらに、桔梗は時雨書院社長として菖蒲たちの前に姿を現すと、鵺について語り始める。 「鵺は世の中の『魔』や『膿』を自分の中に溜め込み、 抱えきれない状態になった時に世に現れる。 そして、そんな鵺を討った者は、特別な力を得ることができるそうだ。(中略) 鵜は災厄の化身と言われているが、そうではない。 災厄が起こらないよう、自分の体に悪しき感情を溜め込んで民を護り、 それを抱えきれなくなった時、自分を射てほしいと鳴いて空を飛ぶのだ」(p.177)鵜を放ち、その力を求める妖たちをが集め、百鬼夜行を引き起こす。そして、その鵺を射ることで、自分が力を得ようとしていた者がいる。作戦決行の夜、不自然な動きを見せた者は……犬童家と共に賀茂家を護る八家の二大勢力の一つ、犬居家にも疑惑が生じる。犬居家の新年の宴、菖蒲が箏を立夏が三味線を奏でる中、菖蒲は蓉子の意識と繋がることに成功。蓉子を連れ去った人物が明らかとなり、舞殿上空に現れた鵺を蓉子が放った矢が射止める。そして、幼い頃『神童』と呼ばれた男の悲恋と喪失、そして今回の一件の経緯が記されていく。そんな男に、斎王・蓉子が処分を下すと共に、男の兄からの手紙を手渡したのだった。 ***菖蒲と立夏の関係も進展を見せましたが、それ以上に撫子と玄武の力を持つ冬生との関係が急速に進展しました。次巻は、時雨書院を舞台としたお話が始まり、時雨書院社長・犬童桔梗や『時世』編集長・草壁徹も、また絡んできそうですね。
2024.10.19
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表紙には「2023年 最も売れた小説!」の文字が踊ります。 既に映画化されると共に、続巻も刊行されています。 カスタマーレビューの評価数の多さには驚かされるばかりで、 そこに書かれている内容も好意的なものが大多数です。 ***フリーライターの筆者は、都内に一軒家を購入しようとしている知人・柳岡から相談を受ける。それは、その家の間取りに不可解な点、「謎の空間」があるのが気になるということだった。筆者は、設計士の栗原に協力を求め、二人でこの不可解な間取りの謎に挑むことに。そして、筆者がその家を題材に記事を書くと、宮江柚希という人物からメールが届く。待ち合わせた喫茶店で、柚希は自分の夫・恭一があの家の住人に殺されたかもしれないと告げ、あの家の住人がかつて住んでいた可能性がある、埼玉県の一軒家の間取り図を見せたのだった。行方不明になって3年後、埼玉で発見された宮江恭一の遺体は、左手首を切断されていた。そして、先日東京で発見されたバラバラ遺体は、左手首だけが見つかっていなかった。筆者は、あの都内の一軒家を訪ね、かつての住人「片淵」について隣家の女性から話を聞く。一方、栗原は、宮江恭一には妻がいなかったことを突き止める。そして、筆者は、柚希の本名が片淵柚希で、あの家の住人・片淵綾乃の妹だと知ることに。柚希が10歳の時に突然姿を消し、13年後に再会した2歳年上の姉とは、また音信不通だという。柚希は、筆者と栗原に、父の実家の間取り図を見せながら、そこで起こった事件について語る。それは、父の兄・公彦の息子である洋一が仏壇の前で亡くなっていたというもの。さらに、筆者は、柚希の母親・喜江から、綾乃の夫・慶太が書いた手紙を見せられる。喜江は、手紙に記されていた『左手供養』について語り始める。片淵家を何十年も縛り続けてきた因習、そして、妻を守るため自らの人生を棒に振った夫。しかし、筆者からその話を聞いた栗原は、更なる疑問を投げかけたのだった。 ***1頁に38文字×15行で、図表(間取り図や系図等)は結構多め。さらに、文章も読みやすいもので、サクサクと読み進めることが出来ました。ただ、ホラー色が強いお話で、読後感は私が好むものとはちょっと違ったかな。共感できるキャラクターも見当たらず、心に残るものもそれほどなかったです。
2024.10.19
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本作は、望月麻衣さんが小説投稿サイト「エブリスタ」に投稿した 『花散る桜の園』を改題、大幅に加筆・修正したもので、2023年5月の発行。 『わが家は祇園の拝み屋さん』の世界観を大正時代に移したような感じの作品で、 私は「賀茂家」や「審神者(さにわ)」の言葉に激しく反応してしまいました。 ***八咫烏の子孫と伝えられる賀茂家の右腕と言われた梅咲家と左腕と呼ばれた桜小路家。昔から対立するこの両家、梅咲家は流刑者・規貴が出て失脚、桜小路家も資金難に陥っていた。そこで、梅咲家の娘・菖蒲と桜小路家の三男・立夏の縁談を進めることで、梅咲家は名誉の回復を図り、桜小路家は没落の危機を免れようとしていた。かねてより立夏に思いを寄せていた菖蒲は、予定より早く15歳で桜小路家に入ることに。しかし、20歳の立夏を始め、周囲の人々の言動は辛辣で冷酷なものばかりで、菖蒲を苦しめる。さらに、立夏が使用人の千花に思いを寄せていることが明らかになり、菖蒲は自らが婚約解消されるように仕向けるべく、計画を練るのだった。しかし、菖蒲の付添い・桂子から事情を知らされた立夏は、その計画を事前に阻止。さらに、ピアノの恩師から菖蒲の人となりや辛い過去の傷について聞かされた立夏は、これまでの行動を恥じて菖蒲に謝罪すると共に、自分が千花と駆け落ちしようと決意する。ところが千花は態度を一変、これまでの行動は長男・喜一の妻・蓉子の指示だったと暴露する。蓉子は、結婚後冷たくなった夫や次男・慶二に恨みを持ち、桜小路家に復讐を謀っていた。それは、立夏の縁談を失敗させることで梅咲家から桜小路家への援助を断ち切り没落させること。しかし、自分の部屋に夫が他の女を連れ込んで、戯れているところを目にした途端、そのベッドに向かってランタンランプを投げつける。炎に包まれる桜小路邸の中で、菖蒲は立夏と妹・撫子の母親の肖像画を手に、立夏を探していた。そして、煙に包み込まれる危機に際し、『麒麟』の力を発現させたことで一躍『斎王』候補者に。「審神者」となっていた兄・藤馬は、候補者となった菖蒲の護衛者を募り、白虎の力を持つ秋成、青龍の力を持つ春鷹、玄武の力を持つ冬生、朱雀の力を持つ立夏の4人が選ばれる。『斎王』候補者として4人に護衛されながら、籠に乗って鞍馬寺に到着した菖蒲は、『斎王』に相応しいか、出雲に集う神に問う儀式の中で、兄と蓉子の関係を知る。そして、蓉子こそが斎王の器だと気付き、兄に喜一と離縁した綾小路蓉子を迎えに行かせる。その後、菖蒲と立夏は、それぞれの思いを語り合い、遂に菖蒲の恋が成就する時を迎える。
2024.10.13
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私が手にする高嶋さんの作品は、自然災害を扱ったものが多かったのですが、 最近は『首都感染』『バクテリア・ハザード』と来て、今回も感染症との闘い。 文庫本で446頁と、結構なボリュームがありますが、 いつものようにとても読みやすい文章で、どんどん読み進めることが出来ます。 ***ナショナルバイオ社副社長ニック・ハドソンは、アラスカとシベリアで調査を続け、永久凍土の洞窟の中で、約3万年眠っていたマンモスの遺体を発見する。ニックの大学時代の研究室の後輩であるプリンストン大学のカール・バレンタイン教授は、その細胞から遺伝子を抽出する仕事を頼まれ、そこに未知のウイルスがいると気付く。その後、ニックはニューヨークとサンバレーで入退院を繰り返した後に死亡してしまうが、そのことから、カールは2種類のウイルスが存在すると考える。カールは市長の協力を得て、早々に市をロックダウンすると共に適切な感染症対策を実行、サンバレーにおける感染は終息へと向かって行く。その頃、カールのもとに大学時代の友人であるダン・ウェルチから、第3のウイルスである「パルウイルス」が送られてくる。カールは大学の同級生でCDCメディカルオフィサーのジェニファー・ナッシュビルと共にその宿主を求めて、シベリア、そしてアラスカへと赴き、ニックやダンの足跡を追う。カールは、モスクワ大学院生レオニード・イスヤノフとルドミラ・オスペンスカヤの協力で、ウイルス感染により住民が全滅の危機にあるユリンダ村、そして廃墟の村・ユリュートに到達。さらに、天然ガス採掘民間企業・ガスポルトの敷地内でマンモスの墓場を発見すると、大胆な行動でその爆発に成功したものの、パルウイルスの方の宿主はなかなか見つからない。カールとジェニファーは、その後アラスカへと向かい、チャガック国立森林公園へ。そこで、岩の亀裂の中を進んでいくと、氷の中に閉じ込められた数十体の古代人を発見。さらに、そのそばでダンの遺体とボイスメモが残されたスマホも見つけだす。カールは、ダンが洞窟の至る所に仕掛けた爆薬を起爆させると、ジェニファーと共に脱出した。 ***アメリカ人の主人公が、アメリカとロシアを舞台に活躍するお話で、いつもの高嶋さんとは異なる趣の作品でした。特にシベリアでの主人公の行動はかなり強引で、少々無理がある感じ。問題提起としては、十分に伝わっては来るのですが……
2024.10.13
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副題は「クィア・スタディーズ入門」。 著者は、社会学者で作曲家でもある早稲田大学准教授の森山至貴さん。 レズビアン (Lesbian)、ゲイ (Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、 トランスジェンダー (Transgender)の「LGBT」に「Q」が加わった「LGBTQ」。 近年は、こちらの言葉を目にする機会の方が多くなったように感じますが、 この言葉の「Q」は、クィア (Queer) を意味している場合と、 クエスチョニング (Questioning) を意味している場合があるとのこと。 そして、クィアとは、ヘテロセクシュアル(heterosexual)でない人々およびシスジェンダー (cisgender)でない人々を指す総称だそうです。何だか、なかなかにややこしい……。そこで、少しでも頭の中をスッキリさせようと、本著を手にしました。 本書は、大きく準備編(第1章から4章)、基本編(第5章から第6章)、 応用編(第7章)に分けられます。(中略) 第1章では、クイア・スタディーズへの導入として、 セクシュアルマイノリティについての多くの人の知識が いかに危ういものかをいくつか指摘していきました。(中略) 第2章では、さまざまな性のあり方を2017年現在の最新の枠組みを用いて 分類・整理しました。(中略) 第3章と第4章では、第2章で指摘したような枠組みがどのような歴史的経緯によって 成立してきたのかを確認しました。(中略) 第5章と第6章では基本編としてクィア・スタディーズの大枠を提示しました。(中略) 第7章では、クィア・スタディーズの道具立てを使って、 日本においてセクシャルマイノリティをめぐる議論、 具体的には「同性婚」と「性同一性障害」を分析しました。(p.184)これは、『第8章「入門編」の先へ』の「本書を振り返る」から抜粋したものですが、個人的には、『第2章「LGBT」とは何を、誰を指しているのか』から、「第3章 レズビアン/ゲイの歴史」「第4章 トランスジェンダーの誤解をとく」までの記述が、自分の頭の中にあったこれまでの知識を整理するのに、とても役立ちました。また、「第7章 日本社会をクィアに読みとく」では、現在、日本で大きな課題となっている「同性婚」と「性同一性障害」を取り上げています。私は、先日『トランスジェンダーになりたい少女たち』を読み終えたばかりですが、本書に記された「性別違和概念」に関する記述も、とても印象に残るものでした。
2024.10.13
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「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズの第6弾。 2022年12月に発刊された第5弾『薬は毒ほど効かぬ』の後、 漢方薬局てんぐさ堂の事件簿『「舌」は口ほどにものを言う』を挟んだため、 実に1年7か月ぶりの発刊となる、愛読者待望の一冊です。 今回は、6つのお話で構成されていますが、そのボリュームには大きな差が。 第1話が76頁、第2話が12頁、第3話が52頁、第4話が12頁、第5話が86頁、第6話が10頁。 何故かなと思っていたら、巻末に「第1話・第3話・第5話は書き下ろしで、 第2話・第4話・第6話は初出が『3分で読める!……』(宝島社文庫)」とあり、納得。 ***第1話「認知症と株券」では、爽太の後輩・原木くるみが、神楽坂の甘味処で花織に色々と相談。認知症が進む祖母の介護施設入所や、彼女が所有する株券の売買について、さらに、将来海外勤務を希望している自分に、先日交際を申し込んできた男性がいること等々。 その男性とは、以前居酒屋で飲酒強要されているのを花織が救った、作家を目指す影山でした。第2話「眠れない男」は、30年ぶりに医療施設を訪れた星野栄一郎が、花織の名字や故郷に群生するトリカブトについて話すうち、元警察官と見抜かれるお話。第3話「はじめての介護」は、大学生の青柳亮平が、母に代わって祖母の通院に付き添うお話。祖母は以前通っていたクリニックで処方されていた薬に戻して欲しいと言い出しますが、今回担当した医師では分からず、花織が相談を受け、その薬が何であるかを探り当てます。そして、祖母が新しい薬を嫌がったのは、副作用があったからということも判明したのでした。第4話「誰にも言えない傷の物語」は、アレルギーがあって舌下免疫療法をしている少女が、猫アレルギーを治すために猫の唾液を摂取しようとして、猫に嚙みつかれてしまったというお話。第5話「処方せんとバイト」では、東中野のマンションのエレベータが地震で停止。フードデリバリーのバイト中に、顧客から別の荷物配送を頼まれた影山と、母親が飲まずに溜め込んでいた睡眠導入剤を買い取ってもらおうとしていた海野千夏、患者に薬を届けに来た花織が閉じ込められてしまうお話で、花織の過去の恋愛事情も明らかに。第6話「肝油ドロップとオブラート」は、50年前の夏休み、戸棚にあった肝油ドロップを、兄弟がこっそり食べたことに、どうして母親が気付いたのかについて弟が兄に尋ねるお話。 ***長らく待った甲斐があったと実感させられる面白さ。チュアブル錠の飲み方やオブラートの正しい使い方、薬の転売を目的とする処方箋偽造、ヘロインとコカインの違い、グルタチオンに零売薬局と興味深い話題が満載。特に第5話は、ミステリーとしても、これまでで最高の完成度です。
2024.10.05
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副題は「産経記者受難記」。 著者は、元産経新聞記者で、現在はフリーライターの三枝玄太郎さん。 1991年に産経新聞社入社後、警視庁、国税庁、国土交通省などを担当し、 2019年に退職するまでの記者生活を振り返る一冊。 僕は評論家や学者ではなく、ずっと現場で這いずり回ってきた記者なので、 大所高所から「メディアの左傾化」を論じるつもりはない。 ただ、現場でしか見えてこないメディアの実情というものがある。 産経新聞は往々にして「右翼の新聞」と誤解されている。 しかし、それが不当なものであることは、本書を読んでいただければおわかりになるだろう。 同時に、多くのメディアが左傾化する事情も何となく見えて来るはずだ。(p.6)これは、本著冒頭「まえがき」の一文です。ここに記されているように、本著表題「メディアはなぜ左傾化するのか」については、構えて記述されている部分は、ほぼほぼ見当たりません。あえて言えば、次の部分がそれらしいことが最も伝わってくる部分でしょう。 当時の早稲田は過激派である革マル派の金城湯池と言われていた。(中略) 政経学部の学生委員会も革マル派の影響力が強いといわれていた。(中略) Nくんとはそれなりに仲が良かったが、彼はほどなくして朝日を辞めた。(中略) 何と朝日を辞めて、労組の職員になっていたのだった。 毎日の女性記者はその後も毎日にいて、特派員として活躍している。 彼女がデスククラスにでもなれば、 新入社員を採用する1次試験の面接担当官くらいにはなるだろう。 また左派系の学者のゼミに入っていて、その担当教授から推薦をもらって 朝日や毎日の面接を受けている学生は多いだろう。 こうして左派系のある意味で「色のついた学生」の系譜は 絶えることなく続いていくのだと思う。(p.42)著者と同期の朝日新聞記者・Nくんは、早稲田大学4年生の頃、学生委員会の委員長として、「学費値上げ反対スト」で渉外担当の教授と交渉し、ハンドマイクで怒鳴り散らしていた人物。また、毎日新聞の女性記者は、新人だった頃「私、○○女子大の学生委員会にいたときから尊敬しておりました」と、Nくんに対しあいさつ回りで嬌声をあげた人物です。著者の様々な体験からは、新聞記者の知られざる実態がとてもよく伝わって来て、とても興味深く読み進めることが出来ました。本著からは、新聞記者の活動は、チームで組織的に行われていると言うよりも、個々に一匹狼的に動いて、それらを結集していくものだという印象を受けました。
2024.10.04
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