音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2010年07月16日
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テーマ: musica latina(82)
W杯スペイン優勝記念にスペイン産ロックはいかが ~その2~


 エロエス・デル・シレンシオ(Héroes del Silencio, “沈黙の英雄たち”の意味で、英語に直訳するとHeroes of Silenceに相当するスペイン語のバンド名)は、1984年に結成された、スペインのサラゴサ出身のロック・グループ。7枚のスタジオ・アルバムを残して1996年に解散し、各メンバーはソロ活動などを展開することとなったが、2007年9月~10月に一時的に再結成してスペインやラテンアメリカでツアーを行なった。

 スペインと言えば、東部~南部にかけての地中海側の陽気さ(いわゆる一般的イメージで“太陽と闘牛の国”などという時のスペインのイメージ)と、それとは対照的な北部の陰気さや暗さが同居する不思議なお国柄である。そのことを踏まえた上で、エロエス・デル・シレンシオの音楽性を考えた時、やっぱりスペイン的というべきなのかな、と感じる。というのも、ハード系サウンドを演奏していても、北欧系のHMの様式美みたいな(ある種、能天気な性格の人たちにはできないであろう)境地に全然近づくことはない。しかし、かといって、米国のHRバンドみたいな能天気な明るさが出てくるわけでもない。陰気さと陽気さを少しずつ音の端々に湛え、なおかつ様式美になりきれていない様式美的部分を残した微妙なサウンドがこのエロエス・デル・シレンシオの特徴といっていいだろう。この微妙な音加減は、民族の血やバンドが育ってきた土地柄にやはり関係するのだろうか。人間、育った環境だけでキャラが決まるなどというはずはないとは思いつつも、やはり“お国柄”や“国民性”みたいなものが音楽にも影響を与えるものなのだろうかと考えさせられる。

 のっけから2.「ルエダ・フォルトゥーナ(運命よ、巡れ!)」(1.「デリーバス」は1分足らずのイントロ的な曲)というハードな楽曲でアルバムは幕を開ける。筆者の好みは、一方で、3.「デスアセール・エル・ムンド(世界の破壊)」や5.「アバランチャ(雪崩)」のような様式美ハード志向の楽曲群。しかし、他方で、6.「エン・ブラソス・デ・ラ・フィエブレ」のようなスロー&ややメロウ系の曲もなかなかいいと思う。

 結局のところ、欧州発ロック・バンドとしては、セールス的に明確なカラーが出にくく、日本ではそんな存在と認識されてしまったのだろう。実際のところ、初期には日本盤も出ていた(しかも現在ではプレミアが付いている)ようだが、やがて忘れ去られてしまっていて、現在では国内で探すとなると輸入盤に頼るしかない。でもなお、このバンドは魅力的だったと思う。とりわけ、メインストリーム(欧米ロック)に迎合的な日本のロックシーンから見ると、ロック音楽界では辺境国のスペイン発のエロエス・デル・シレンシオの音楽は、上に述べたような微妙な色彩の混在具合から、“こういうロックのありかたも存在し得る”という、いわばオルターナティヴな姿を表しているように思えてならない。



[収録曲]

1. Derivas
2. Rueda, fortuna!
3. Deshacer el mundo

5. Avalancha
6. En brazos de la fiebre
7. Parasiempre
8. La chispa adecuada
9. Días de borrasca
10. Morir todavía
11. Opio
12. La espuma de Venus

1995年リリース。


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スペイン産ロック ~その1~(ハラベ・デ・パロ)  へ





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