音楽日記　～ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言～

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2013年09月28日

キャロル・キング　『つづれおり（Tapestry）』（2／2）

テーマ：セヴンティーズ！70年代ロック＆ポップス(251)

カテゴリ：洋ロック・ポップス

前編はアルバム全般の話で終わってしまったので、今回はアルバム収録曲の中からいくつかお気に入りや注目曲を挙げてみたい。

　インパクトという点で申し分ないのは冒頭の1.「空が落ちてくる（アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ）」。同じアルバムに収録の3.「イッツ・トゥー・レイト」と両A面のシングルとしてヒットした。当時はよりスロウな曲調の「イッツ・トゥー・レイト」の方がラジオなどでも好まれることが多かったとのことだが、インパクトの強さで聴き手を引き込むという意味では、こちらの方が個人的にはかなりのお気に入り曲だったりする。

　名曲度という点で一押しなのは、2.「去りゆく恋人（ソー・ファー・アウェイ）」。本盤収録曲の中では、上記の3.「イッツ・トゥー・レイト」と並ぶ名曲と言っていいように思う。ちなみに「去りゆく恋人」のアコギ演奏はジェームズ・テイラーによるもので、テイラー自身も後にこの曲をカバーしている（それとは別にロッド・スチュワートによるカバーも存在して、なかなかいい歌唱を披露している）。

　比較的シンプルなピアノ弾き語り風演奏の表題曲11.「つづれおり（タペストリー）」で、キャロル・キングは“私の人生は豊かで壮大な色彩のタペストリー”と独白的に歌っているが、それまでの彼女の人生を織り成してきた縦糸と横糸が交錯して収録曲の総体が出来上がっているように感じられるのもこのアルバムの興味深いところ（その意味で『つづれおり』はコンセプト・アルバムだとの言い方がなされることもある）。その例としてよく挙げられるのは、元夫のジェリー・ゴフィンとの共作の3曲（9.，10.，12.）だろう。ふつう別れた夫との過去は消そうとするのではと思う向きもあるだろうけれど、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンの関係に関しては、ミュージシャンとしての共同作業は離婚後も続いた。キャロル・キングの本盤のコンセプトからすれば、それもまた“縦糸と横糸のつづれおり”の一部ということなのだろうか。

　これらのうち、9.「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」は、シュレルズ（The Shirelles）に提供して1960年にヒットした曲、12.「ナチュラル・ウーマン」はアレサ・フランクリンが1967年にシングルとしてヒットさせた曲で、かつての提供曲をセルフカバーした形になっている。特に12.の熱唱は本盤の聴きどころの一つになっている。

　まだまだ漏れたお気に入り曲はあるのだけれど、最後にもう2つだけ。7.「君の友だち（ユーヴ・ゴット・ア・フレンド）」はとにかく詞がシンプルながら美しい。じっくり耳を傾けるか、歌詞カードとにらめっこするなどして堪能いただきたい1曲。それから、5.「ビューティフル」の曲調は、（シャレでもなんでもなく）本当にビューティフルだと思う。この表題は詞の中ではパートナーを形容する語としてでてくるのだけれど、1.や3.と通じ合うキャロル・キング独自の曲世界がよくでていて、本盤の中での特にお薦め曲の一つに挙げられてしかるべきではないかと思ったりする。

［収録曲］

2. So Far Away
3. It's Too Late
4. Home Again
5. Beautiful
6. Way Over Yonder
7. You've Got a Friend
8. Where You Lead
9. Will You Love Me Tomorrow?
10. Smackwater Jack
11. Tapestry
12. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman