書評日記  パペッティア通信

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Mar 1, 2005
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カテゴリ: 経済



あまりに有名すぎて、胡散臭かったからだ。

しかし、新書愛好者にとっての集英社新書は、凋落した感のある中公新書にかわって、講談社現代新書やちくま新書と並んで、まず最初に目をとおす存在(岩波は企画の当たりはずれが多すぎる)である。良質な本を出す、あの出版社だから、とおもって読んでみた。

失敗だった。
読むんじゃなかった。

なんといっても、「アメリカ権力構造の深層」という帯からして、胡散臭い。広瀬隆のやっていることは、ただの「アメリカ・ユダヤ閨閥の深層」にすぎない。伝統的に保守本流を構成する、鉄道・石炭産業の利権を指摘する所までは、指摘の斬新さからまだ我慢できた。ところが、これ以降はまったく妄想の塊。ネオコンとシオニズム右派をむすびつけるべく、あらゆる新保守主義の動向をユダヤ人の「閨閥」関係とユダヤ「民族意識」で説明する無茶苦茶さ。

そこには、肝心のユダヤ人個人にとって、「閨閥」関係と「民族」意識が、生業上どれくらい重要であるのかという、議論を進めていく上で根本的な検討を欠いている。ひどいときだと、ある政権関係者の閨閥関係を4世代以上も溯ってユダヤ人人脈として説明するのだ。広瀬隆は、母親や奥さんなどを含めて4世代溯ると、関係者がどれくらいに膨れ上がるか検討したことがないのだろうか?。友人関係・シンクタンクの雇用関係まで、陰謀組織に加算するから、なにからなにまで「ユダヤ人閨閥」に組み入れられてしまう。

「第三章 保守派のマーチャント・バンカー」では、ユダヤ人金融機関の人脈は、どれくらいウォール街とワシントンを汚染し、国際金融はどれほどネオコンに汚染されているか、くどいように描かれている。

しかし、標題にもついた「マーチャント・バンカー」って、もともとイギリスの、委託荷見返前貸をおこなっていた、国際商業金融機関である。当時国境を越えた組織をもっていたユダヤ人が、このマーチャント・バンカー業務に参入することになるのは、あまりにもあたりまえの成り行きであろう。やがて19世紀後半から、「マーチャント・バンカー」は、各種政府証券・社債・株式や手形の引受信用をあたえる組織になる。最初からアメリカにとって【マーチャント・バンカーは外国資本】であったことがまるで理解されていない。国際金融のユダヤ人支配って、そりゃ同義反復だろ。いや、そもそも20世紀初まで、アメリカはイギリスの金融植民地であったということが分かっていないから、記述自体が滅茶苦茶になる。本書の底流である、「シオニストに支配された国際金融」という論調と、「アメリカ金融はウォール街だけ見ていては分からない」と断りを入れざるを得ない矛盾に、彼はなんで気づかないのだろうか?。はっきりいって、アメリカ金融史は、反ウォール街という立場をとる地方の州法・国法銀行と、ウォール街の対抗関係史なんだけど、要するにアメリカ金融をまるでご存じないのである。ロスチャイルド一派によるド・ゴール追放、ボンピドー大統領誕生の下りには爆笑を禁じえない。



価格: ¥735 (税込)
評価  ★





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Last updated  Nov 4, 2006 02:59:47 PM
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