書評日記  パペッティア通信

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Sep 15, 2005
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カテゴリ: 政治



それをうけて、小選挙区導入と2大政党制は欺瞞だったとする、かつての「政治改革」反対論者たちの怨念が、党派的偏向をおびて、噴出してきた感があるようです。分りやすいのは、佐々木毅、山口二郎、後房雄などを名指しで批判する 世に倦む日々 などが挙げられるでしょう。

自民と民主の議席比は、「5:2」以上。2大政党制という約束だったのに、なんだ!! ファビョる人たちが出現するのは、無理もありません。また、自民党信者の人たちは、このファビョる人たちをみると溜飲を下げてしまう。 そのため、お互いに「2大政党制の試みは終わった」と騒ぎ立てるようなシノジー効果が生まれているようです 。お互いがお互いをみて確認しあう、自己言及的コミュニケーション。ひたすらこだまするエコー。外部が存在しないものですから、フレームアップは避けられそうにもありません。こうして「虚報」が形つくられてゆく。


しかし。
こうした議論は、根本的な選挙制度への無知による中傷でしかありません。
日本にしかない、異質な選挙制度理解によるもの なのです。このブログをごらんの方々は、「2大政党制」という日本語訳が<間違っている>とする指摘が、しばしば政治学者たちから出されていることをご存知でしょうか。

まず、 正しくは、「2党制」

そもそも「2党制」は、選挙結果が伯仲する体制のことではなく、 2大政党の競り勝ったほうが、明確な多数をしめる体制 をいいます。

政治学者サルトーリの定義では、「2つの政党が過半数を目指して競合すること」「いずれかが実際に過半数をとること」「実際に単独政権を形成すること」「政権交代の可能性が確実に存在すること」であって、 「伯仲しなければならない」なんてどこにもない のです。とくに、2番目と3番目の条件をごらんください。公明党の存在と参議院によって、いまだに実現されていません。

「1党優位」に見えますが、なんと、多党乱立の状態から「2党制」へのハザマにあるのです。達成されていない「2党制」。「一党優位体制」なる造語でもって、警鐘を鳴らす現在の日本の政治議論。いかにイビツなものであるか、理解できるのではないでしょうか。


そもそもこうした極論は、「小選挙区=2党制」の前提となる、デュヴェルジェの法則の誤解によるものです。

1 比例代表制は多くの政党を形成する傾向がある
2 相対多数代表制は、2党制をもたらす傾向がある
3 2回投票制は、政党の連合をもたらす傾向がある


いずれも、「傾向」ではありますが、「選挙制度」のもつ、政党への「強力な効果」を主張するものでした。 1980年代後半から1990年代初めに吹き荒れた「政治改革」は、選挙制度のもつ「強力な効果」によって、日本政治の「刷新」を主張するものだったのです 。他方、政治学者ロッカンは、「比例代表で2大政党制」だったオーストリアやドイツを例にあげて、選挙制度の「限定効果」を主張しました。

これらを統合したのは、サルトーリです。
サルトーリは、2つの軸を準備します。

組織的な大衆政党を主流とする「構造化の強い政党制」  A
議員政党的、名望家政党が主流「構造化の弱い政党制」  B
選挙制度の拘束性が強い(小選挙区)国         C
選挙制度の拘束性が弱い(比例代表)国         D


     C    D
 A   イ    ロ
 B   ハ   二


イは、政党が社会に根をおろす国で、小選挙区制を採用する場合です。


ロは、政党が社会に根をおろしている国での比例代表制。
そこでは、デュヴェルジェの「政党増殖効果」=第1法則は
あまり見られないらしい。今回のドイツなどはその代表です。

二は、社会に根をおろしていない国での比例代表制採用。
選挙制度は関係なく、その社会固有の政党制が永続するようです。



その場合、2名の候補者は、 選挙区でこそ激しく競り合いますが、全国レベルでは2党制になる保証がありません 。選挙制度は、ストレートには反映されにくい。ケベックをかかえるカナダや、日本などがあたるようです。またアメリカも、「構造化の弱い」国にあたります。


とはいえ、そんな日本でも、民主と自由の合併によって、ほぼ地域的な偏差なく、全国レベルでの2党制が進行していることが分かるでしょう。今選挙での紅林刑事・横光克彦社民党議員の移籍によって、それはますます進んでいます。例外ともいえる現象がみられるのは、沖縄だけにすぎません。むしろ、公明党の強い大阪、共産党の強い京都、などの地域的な特殊事情を斟酌してさえ、 2党制が達成の寸前まで来ていることを、我々は見なければならない のです。

こうした「2党制」理解を欠き、浮き足だったのが新進党です。
「伯仲状況」にならなかった、96年総選挙。小池百合子などは、結果をみて「失敗だった」と判断、続々と自民党に復帰。小沢一郎も粛清を断行。みごとに空中分解してしまいました。 これこそ、日本的な「2党制」誤解によって生じた、不毛な10年のはじまりだったのです 。これによって、日本における「2党制(2大政党制)」の実現は、10年ほど遅れたといってもよい。あろうことか、 伊藤淳夫『政党崩壊』(新潮新書)では、「新鮮味がないと政権がとれない」珍学説さえ生む 始末(この人、元・新進党の事務員で、民主党の崩壊を予測。前回総選挙で、もう恥ずかしくて出てこれないだろうと思っていたら、今回の総選挙でノコノコと出てまいりました)。日本的な2党制(二大政党制)理解が、どれだけ日本の政治に害をなしてきたか。考えただけでも恐ろしい。

民主党代表選。

大いに議論し、盛んに街頭演説をおこなうなどして、国民の目を集めなければ、ほとんど意味がありません。国民注視の「代表選」。 大キャンペーンを展開できる、政党最大のリソースをムダにして、いったいどうする気なのか 。前原だけでは、菅直人・小沢一郎で、あわせて3名しかいない。それではまったく足りていない。自民党総裁選ですら4名いたから盛り上がったのだ。民主党も4名くらい立てないでどうする。河村たかしが20名集められないというなら、サクラでもいいから、票をまわしてクリアさせよ。衆人環視でマスコミの目を引きつけ、大キャンペーンを展開すること。これくらい民主党のアピールになることが、他にあるとでもいうのでしょうか。


9月17日まで、あと2日。
「2大政党」の一翼をになうはずの民主党。
その本気度がこれくらい問われる選挙はありません。
たとえ両院議員総会であっても、
盛大な選挙がおこなわれることに期待したい。




<追伸>

こうした「日本特有」の
≪間違いだらけの選挙制度議論≫
を丁寧に論駁して、選挙制度の提言をおこなっているものに、
↓この加藤秀治郎『日本の選挙』(中公新書 2003年3月)があげられます。

せんきょ

世界には「中選挙区」という名称はない。比例代表だけでもいろんな方法がある……そんなトリビア的な、世界のさまざまな選挙制度の解説だけには止まりません。本職は、ドイツの選挙制度の研究者ですが、同じ方法でも、施行細目をちょっぴりかえるだけで、まったく異なる選挙結果を生まれることも明らかにされていて、かなり面白い本といえるでしょう。

日本の選挙と選挙議論が、いかにメチャクチャなものなのか。
そのシンボルは、「参議院選挙」と混乱の極みの「制度名称」にあらわれているらしい。

そのメチャクチャさは、選挙制度を「長短」「利害得失」で論じて、選挙制度の裏側にある「理念」を無視してきた、党利党略的な選挙議論・制度設計がまかり通ったためのようです。また、 一貫した理念によって、大統領選(首相公選)、参議院、地方議会、首長選などをデザインしないと、選挙制度の利点を生かすことができない ことが明らかにされていて、なかなか刺激的な論考になっています。

みなさんも、ぜひ、ご一読下さい。
選挙への理解が深まるでしょう。

評価 ★★★★
価格: ¥777 (税込)

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Last updated  Sep 26, 2005 04:35:01 PM
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初めまして  
素人改  さん
いや、全くその通りですよね。選挙のたんびに数議席だけの差で政権政党が決まっていたら議会は紛糾し続けて何の政策も固まらないんじゃないでしょうか。選挙で勝った方が一定期間ある程度独断的に政策を推し進め、その結果を見て次の選挙で信任を得るか政権交代がおこるか、という方が全然健全だと思いますよ。
その本早速読んでみます。 (Sep 15, 2005 10:18:59 PM)

Re:★ 「2大政党制は虚妄」というプロパガンダはやめよ! 加藤秀治郎 『日本の選挙』 中公新書 2003年3月(09/15)  
むにゅう!  さん
源平の合戦以来、日本の政権交代が2大勢力の決戦で形作られたきたことの後遺症かも。 (Sep 15, 2005 10:55:30 PM)

トラックバックありがとうございます。  
遊鬱 さん
こんばんわ、お祭すんで日が暮れてという光景ですが選挙結果(過程含む)に対してくだを巻くならまだ理解できますが、そこから一足跳びにシステム批判にまでいく方々は理解できなかっただけにとても勉強になります。

愚直な政策論争のみでは敵失がない限り政権与党に勝てないということ(これは日本に限ったことではない)を踏まえて、党の顔としてどのような党首が必要か、そのことをじっくり考えてもらいたいものです。 (Sep 16, 2005 12:28:56 AM)

同感  
takeyan さん
党首選は国民を巻き込んだイベントにしなければだめだと思います。
「えっ、もう終わったの?」と思わせる時点で、ね。
センスがないです。
討論をテレビで流したりいろいろやらないと。 (Sep 21, 2005 10:12:37 PM)

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