全18件 (18件中 1-18件目)
1
約25万件の外交文書を公表したばかりのWikiLeaksだが、早くも次の予定が伝えられている。今月初め、フォーブス誌のアンディ・グリーンバーグに対し、同サイトのジュリアン・アッサンジは来年早々にも巨大金融機関の腐敗を明らかにする数万点の文書を公表すると語ったという。軍事関連の情報の場合、アメリカやその「友好国」政府が否定しても「被害者」はその実態は熟知しているわけで、メディア、特に日本マスコミが沈黙しても、その気になれば、かなりの情報を入手する手段はある。それに比較して金融機関の内部情報は秘密性が高く、銀行関係の情報公開は軍事、あるいは外交関係の情報よりもインパクトが強いかもしれない。民主的プロセスを経て誕生した政権を暴力的に倒し、独裁政権を樹立させるのもカネ儲けのため。カネの集まるところにはあらゆる「犯罪者」(当然、権力犯罪も含まれる)が集まってくる。世界の権力者たちは必死に情報公開を阻止しようとするだろう。
2010.11.30
ジョージ・W・ブッシュ政権が始めたアフガニスタンやイラクでの戦争では住民が占領軍によって虐殺されている。そんな虐殺を気にしていないのが日本のマスコミ。アメリカ軍のアパッチ・ヘリコプターに乗った兵士が戦闘行為と関係のない十数名の人々(通信社ロイターのスタッフ2名も含む)を殺害している映像をWikiLeaksが公開した際には無視していた。そのマスコミが今回の外交文書公開は大きく扱っている。しかも、注目しているテーマといえば、各国政府の首脳に対する「評価」のような問題だ。 ブッシュ政権の政策からチェンジできないバラク・オバマ大統領だが、ブッシュ政権を支えていたネオコン(親イスラエル派)やキリスト教系カルト集団(シアコン)、また環境規制を批判し、軍事増強を求めるコッチ兄弟のような富豪たちは今でも反オバマの姿勢を崩していない。戦争ビジネスへの参入を目論み、「京都議定書」の延長に反対している日本の支配層がブッシュ政権を支えていたグループと結びついくのは自然の流れなのだろう。 イランに対する揺さぶり工作や軍事的な攻撃、つまり「体制転覆」の話にしろ、また国連でのスパイ活動にしろ、すでに報道されている情報ではある。ただ、今回の公開でアメリカ政府や関係者はシラを切ることができなくなった。 東アジア関連では、中国が暴力的な朝鮮に愛想を尽かしているという話も伝えられている。中国では若手エリート、特にアメリカからの留学帰り組は親米色が鮮明で、アメリカに同調しても不思議ではない。が、だからといってアメリカと韓国の内部で検討されている軍事侵攻による「体制転覆」を容認しているわけではないだろう。問題が多すぎる。 歴史を振り返ると、朝鮮の指導部は「挑発」に弱いことがわかる。元特務機関員で戦後はアメリカの情報機関で活動していた情報源によると、朝鮮戦争が始まる半年ほど前からアメリカは挑発工作を始めていた。「投降兵」を装って朝鮮軍の内部へ入り込み、銃を乱射して将校を殺すというようなことを繰り返し、朝鮮戦争の勃発が近づいてくる頃になると、南北両軍が対峙している付近では頻繁に軍事的な小競り合いが起こっている。そうした中、朝鮮軍が南下してきたのだという。アメリカから見ると、「先制攻撃させる」ことに成功したわけだ。 大延坪島への砲撃でも「挑発にのった」という側面がある。朝鮮軍が唐突に攻撃したのではないことは本コラムで何度か指摘した通り。この交戦を「朝鮮の事情」だけで解説する日本のマスコミは話にならない。だが、朝鮮側が感情をコントロールできなかったことは確かだろう。 好戦的な雰囲気を広めている日本のマスコミと挑発にのりやすい朝鮮。一歩間違えると状況は暴走する危険性がある。勿論、東アジアを潰したいネオコン、カネ儲けのためには軍事的な緊張を高める必要がある戦争ビジネスなどにとって、そうした暴走は望ましい状況だろうが。
2010.11.30
告発支援サイト「WikiLeaks」は11月28日、アメリカ国務省の機密文書25万1287件を公表した。その中にはアメリカと韓国の高官が「朝鮮半島統一」する計画について話し合ったことを示す文書も含まれているようだ。原文は読んでいないので詳しい内容は不明だが、このシナリオはアメリカの戦争計画を思い起こさせる。つまり、1998年に作成された「OPLAN 5027-98」や翌年の「CONPLAN 5029」、あるいは2003年に仕上げられた「CONPLAN 8022」だ。「8022」では核攻撃も想定されていた。計画の概略は本コラムで何度か触れているので、それを参照してもらうとして、この統一計画に国務省も噛んでいた可能性が出てきた。 言うまでもなく、この「統一」はアメリカの権力者にとって都合の良い統一だ。第2次世界大戦が終わった直後、朝鮮半島では自主統一の動きがあった。その中で中心的な役割を果たしていたのが金九。「右派」の政治家とされているが、アメリカと緊密な関係にあった李承晩と対立し、暗殺されている。
2010.11.29
韓国の李明博大統領は1992年まで現代グループの一社、現代建設で社長を務めていた。同グループはアメリカのロッキード・マーチンが設計した弾道弾迎撃ミサイル(ABM)とレーダーシステムを搭載した駆逐艦を建造している。今年末までに2隻目が納品される予定だという。そうした中、李政権は済州島での基地建設を強行する姿勢を見せていた。李大統領は戦争ビジネスと結びついているということである。ちなみに、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官はロッキード・マーチンをスポンサーにしている。 こうした韓国の戦争ビジネスは、「ミサイル防衛」によってアメリカや日本とも関係している。アメリカ企業の下に日本や韓国の会社がいるという構図だ。沖縄の基地問題にはさまざまな要素が絡んでいるが、こうした「戦争ビジネスの事情」も無視できない。 金大中が韓国の大統領に就任した1998年、アメリカでは朝鮮の金正日体制を倒し、韓国が主導する形で新しい国を作るという「OPLAN 5027-98」が作成された。翌1999年には、朝鮮の国内が混乱して金体制が崩壊した場合を想定した「CONPLAN 5029」も計画している。そして2003年、金大中の政策を継承する盧武鉉が大統領に就任すると、アメリカは核攻撃も含む攻撃計画「CONPLAN 8022」を仕上げた。 2004年に盧武鉉は国民議会の弾劾訴追を受け、2008年に退任した後には在任中の収賄疑惑で捜査の対象となり、その最中に死亡した。一応、「自殺」ということになっているが、疑問を持っている人もいる。 2008年から大統領を務めているのが李明博で、「CEO(最高経営責任者)大統領を目指す」と公言、親米反朝鮮の政策を明確にしていく。朝鮮との和解を目指した前二政権の「太陽政策」を止め、盧武鉉のメディア自由化改革も廃止した。そうした流れの中、警察は社会運動を行っている組織の事務所を捜索、天安号事件についての公式発表を疑う人々の逮捕を命じている。 一方、経済面ではアメリカ産牛肉の輸出禁止措置の解除を打ち出し、この政策に反対する平和的なデモに対して治安部隊を投入した。番組で牛肉問題を取り上げたテレビ局のプロデューサーは深夜、自宅で取り調べを受けたうえで逮捕/起訴されている。こうしたことを見ても李政権の性格がわかるだろう。 天安号事件にしろ、今回のケースにしろ、日本の偏った報道、要するに、日本やアメリカの権力者におもねったプロパガンダに踊らされると、大変なことになることを日本人は自覚すべきである。
2010.11.28
日曜日から予定されている米韓合同の軍事演習に対し、朝鮮政府は激しく反発して「戦争の瀬戸際」と表現、中国政府も批判している。予定されている演習には横須賀を出港した空母「ジョージ・ワシントン」も加わる。 そもそも、11月22日から領海問題で微妙な地域で韓国軍が始めた軍事演習にもアメリカの海軍や海兵隊が参加する予定だった。これに反発していたのが中国。韓国の報道によると、沖縄に司令部をおいている第31MEU(海兵隊遠征隊)が韓国駐留の第7空軍と一緒に参加したようだが、当初計画のような形での参加は見送られていた。 少なくとも第2次世界大戦以後、アメリカの朝鮮半島での行動は中国を睨んでのものであった。アメリカの破壊工作機関OPC(後にCIAの計画局/作戦局を設置する際の中心的な存在になる)は中国での破壊活動(要人暗殺やクーデター計画を含む)や国民党軍を使った軍事侵攻を試みている。その最中に朝鮮戦争は起こった。中国側から見るならば、朝鮮戦争もアメリカによる対中国戦争の一環ということになる。今回も、米韓の矛先が自分たちに向いていると中国が感じても不思議ではない歴史的な経緯がある。 アメリカや日本にとって朝鮮は「脅威」と呼べるような存在ではない。ネオコンや戦争ビジネスなど軍事強硬派に担がれていたジョージ・W・ブッシュは、大統領就任の直後から「中国脅威論」を叫び、当時の太平洋軍司令官デニス・ブレア提督から批判されている。経済成長が著しい東アジアをネオコンは1990年代から「潜在的脅威」と位置づけ、潰すべきだと公言していた。 ネオコンと親密な関係にあるイスラエルの外務大臣が朝鮮への強硬策を主張するのも、こうした流れを考えると、当然のことだ。こうした強硬策の手先になる道を選んだのが日本の「一部エリート」。現在、主導権を握っている勢力だ。 明治以降、朝鮮半島を侵略し、「満州国」を建国して大儲けした「成功体験」が影響しているのかもしれないが、その先に何が待ち受けていたかを思い出すべきだ。東アジアの混乱は日本の破滅を早める。アジア侵略で中心的な役割を果たした人々は戦後、アメリカの保護を受けることになった。今回もいざとなったらアメリカに助けを求める気かもしれないが、そのアメリカが今は崩壊への道を歩いている。
2010.11.27
朝鮮軍と韓国軍との交戦に関する日本のマスコミ報道を見ていると、50年前の「共同宣言」を思い出す。「6月15日夜の国会内外における流血事件は、その事のよってきたるゆえんを別として、議会主義を危機に陥れる痛恨時であった。」 ひとつの出来事には原因があるわけで、その原因を分析することなしに結果を理解することはできない。原因を突き詰めていくと、自分たち、つまり自分たちが仕える「権力者」にとって都合の悪い話が出てきてしまうということなのだろう。 今回の交戦では延坪(ヨンビョン)を朝鮮軍が砲撃し、家屋が破壊されるだけでなく兵士や民間人に死者が出ている。こうした被害をもたらした直接的責任は間違いなく朝鮮側にあるのだが、そうした事態を招いた責任は韓国軍やアメリカ軍にもある。 本コラムではすでに指摘していることだが、領海問題で軍事的な緊張が高まっていた延坪近くの海域で韓国軍は軍事演習「護国(ホグク)」を11月22日から30日の予定で行っていた。参加した将兵は約7万人で、アメリカの第31MEU(海兵隊遠征隊)や第7空軍が参加している。第7空軍は韓国に駐留しているが、第31MEUの司令部は沖縄にある。 ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の副大統領、リチャード・チェイニーは、1%でも起こる可能性があれば必ず起こると想定して行動するという「教義」、いわゆる「チェイニー・ドクトリン」を振りかざしていた。このドクトリンが今でも生きているならば、朝鮮に1%でも脅威を感じれば、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラクなどのように先制攻撃するということになる。つまり、沖縄の海兵隊が朝鮮に対する先制攻撃の切り込み部隊になる可能性がある。当然、菅直人首相はこうした事情を把握した上で沖縄の基地問題に対処しているのだろう。
2010.11.26
朝鮮軍と韓国軍との交戦にアメリカの「第2次朝鮮戦争計画」が深く関係し、11月22日から30日の予定で行われていた韓国軍の約7万人が参加した軍事演習「護国(ホグク)」が引き金になった可能性はきわめて高い。この演習は朝鮮への軍事侵攻をシミュレートしたもので、朝鮮で金体制が崩壊した場合を想定した計画「CONPLAN 5029」(前のコラムを参照)を念頭に置いていたとも言われている。 今回の軍事衝突でどちらが最初に砲撃したかは今のところ明確でない。朝鮮が正直な国だとは言わないが、アメリカは嘘八百を並べ、アフガニスタンに続いてイラクを攻撃した「嘘つき国家」である。ユーゴスラビアを攻撃したときも偽情報を撒き散らしていた。哨戒艦の沈没事件を見ても、韓国政府が誠実だとは到底言えない。 イラク侵攻の際、アメリカや日本のメディアはひたすら開戦ムードを盛り上げ、偽情報を広めることに熱心だった。ヨセフ・ゲッベルスのプロパガンダ、日本の大本営発表を彷彿とさせるものだったが、今回も似たようなことを行っている。すでに「ジャーナリスト」を装おうという気持ちすらなくしているようだ。 そうした中、WikiLeaksが内部告発された情報を公開し続けている。アメリカ政府が隠したい醜悪な事実が明るみに出ているが、来週にも新たな秘密文書の公表があると噂されている。今回はアメリカ国務省の文書が含まれているようで、ロシア、アフガニスタン、中央アジア、あるいは東アジアの国々との遣り取りが明らかになるかもしれない。日本が含まれている可能性もあるということだ。 日本とアメリカとの隠された関係が表面化すれば、日本の状況も少しは良くなるかもしれない。情報公開が形だけの日本にあって、WikiLeaksに期待するところは大きい。
2010.11.25
朝鮮半島で軍事的な緊張が高まる中、イスラエルやアメリカの新保守(ネオコン)は戦争を煽る発言を始めている。前回のコラムでも書いたように、今回の出来事を単純に「朝鮮軍の砲撃」で片づけることはできないのだが、メディアは好戦的な雰囲気を広めることに集中して事実には無頓着のようだ。1990年代から東アジアを破壊すべき潜在的ライバルと位置づけていたネオコンにとっては好ましい環境になってきたのだろうが、東アジアの人々にとっては悪い方向へ向かいつつある。 ネオコンなど軍事強硬派に操られていたジョージ・W・ブッシュ(所謂ブッシュ・ジュニア)は戦争を「経済活性化」の手段だと信じ込んでいた。オリバー・ストーンが監督したドキュメンタリー映画「国境の南」の中に登場したアルゼンチンの元大統領は、現役時代にアメリカ大統領だったブッシュがそのように力説するのを聞いたと証言している。 ネオコンと親密な関係にあるイスラエルは、1980年代に大量のカチューシャ・ロケット弾を朝鮮から購入、イランへ転売して儲けたが、2004年には物騒な出来事で名前が出てきた。この年の4月、朝鮮の龍川(リョンチョン)で大爆発が起こっている。 貨車から硝酸アンモニウムが漏れたことが原因だとされているが、事件当時、金正日を狙った暗殺計画があったのではないかとも噂されていた。そうした話が流れた一因は、爆発の2週間前にインターネットのイスラエル系サイトで北京訪問の際の金正日暗殺が話題になっていたことにある。ただ、この「暗殺未遂説」は可能性が小さいと見られているが。 ジョン・ボルトンやナイ・レポートで有名になったマイケル・グリーンも朝鮮に対する強硬策を主張、イスラエルのアビグドール・リーバーマン外相も「国際社会」の弱腰を批判している。朝鮮を止められないなら、イランを止めることもできないというわけだ。ということは、人権も国際法も無視しているイスラエルに対しても「国際社会」は強く出なければならなくなるのだが。 水曜日には空母「ジョージ・ワシントン」が日本を離れて問題の海域に向かい、日曜日から韓国軍と合同軍事演習を行うという。とりあえずデモンストレーションをしようということかもしれないが、状況が暴走することもありえる。日本の破滅を避けたいなら、アメリカが「ならず者国家」だということを忘れてはならない。
2010.11.24
11月23日に大延坪島が朝鮮軍に砲撃され、少なくとも韓国軍の兵士2名が死亡、民間の家屋も破壊されたと報道されている。朝鮮側は韓国が最初に攻撃したと主張しているが、いずれにしろ、この海域は境界線が確定していないため、軍事的な緊張度が高い。こうした海域で韓国軍は22日から軍事演習を実施していた。約7万人が参加し、朝鮮攻撃を想定した演習だったという。つまり、朝鮮側から見れば、金正日体制から金正恩体制への移行期に韓国が仕掛けた挑発行為というようにも見える。 韓国と朝鮮の軍事衝突という点に限れば、昨年11月にも両国は交戦、韓国軍の艦船が朝鮮の艦船を攻撃して炎上させている。韓国側に言わせると、衝突の原因は朝鮮の艦船が領海を侵犯したことにあるのだが、朝鮮側に言わせると、「国籍不明」の艦船が朝鮮の領海を侵犯したので押し返そうとしていたということになる。その前の月に朝鮮側は、韓国の艦船が1日に10回も領海を侵犯していると非難していた。なお、この海域では1999年6月、2002年6月にも両国の艦船が交戦している。 そして3月、韓国軍の哨戒艦が問題の海域で沈没した。その直後、韓国国防相は爆発の原因を不明としていたが、政府内には朝鮮が魚雷で攻撃したという話をメディアにリークする人物もいた。その一方、事件の当日、韓国軍とアメリカ軍は近くの海域で、合同軍事演習「フォール・イーグル」を行っていたことも韓国のメディアは報じている。 韓国政府が沈没の原因を朝鮮軍の魚雷攻撃にあると主張し始めたのは5月、選挙を直前に控えたときだった。アメリカのロサンゼルス・タイムズ紙はこの発表に疑問を投げかける記事を掲載している。例えば、(1) なぜ「朝鮮犯行説」を沈没から2カ月後、選挙の直前に発表したのか、(2) 米韓両軍が警戒態勢にある中、朝鮮の潜水艦が侵入して哨戒艦を撃沈させたうえ、姿を見られずに現場から離れることができるのか、(3) 犠牲になった兵士の死因は溺死で、死体には爆破の影響が見られないのはなぜか、(4) 爆発があったにもかかわらず近くに死んだ魚を発見できないのはなぜか、(5) 調査団の内部で座礁説を唱えていた人物を追放したのはなぜかといった具合だ。 現場から「発見」された物体にハングルが書かれていたことを「朝鮮犯行説」の証拠だとする主張を、iPhoneにハングルを書き込んで「朝鮮製だ」というようなものだと一笑に付したバージニア大学のイ・セウングン教授の発言をロサンゼルス・タイムズ紙は紹介している。 昨年11月の一件があるため、報復のために天安号は攻撃されたと思っても不思議ではないのだが、それでも韓国の国内では、約20%の人が「朝鮮犯行説」を信じていないと言われている。 しかも、8月31日には、CIAの「元高官」で駐韓大使も務めたドナルド・グレッグも韓国政府の「公式見解」に疑問を投げかけた。6月に調査団を派遣したロシアからの情報として、天安号が沈没した原因は魚雷でなく、機雷が原因だった可能性が高いとグレッグは語っている。ハンギョレ新聞のインタビューでは、韓国政府がロシアの調査を妨害したとも話している。 グレッグはジョージ・H・W・ブッシュ(いわゆるブッシュ・シニア)の側近で、「旧保守」に属すと見られている人物。1990年代から新保守(ネオコン)など軍事強硬派は東アジアを「潜在的脅威」と位置づけ、軍事的に混乱させ、破壊することを計画していた。そうした目論見を阻止してきたのがアメリカの旧保守や韓国の金大中大統領や盧武鉉大統領だ。この盧武鉉は2003年に就任しているが、その在任中、訴追/スキャンダル攻勢で職務を全うできたとは言えないが。 アメリカには朝鮮半島における戦争計画が存在する。1998年には金正日体制を倒し、韓国が主導する形で新しい国を作るという「OPLAN 5027-98」が作成され、日本はそうした事態が生じた際、アメリカ軍が日本を攻撃拠点として使うことを認めると約束してあるという。この合意は沖縄問題にも深く関係しているはずだ。 また、1999年になると、朝鮮の国内が混乱して金体制が崩壊した場合を想定した計画「CONPLAN 5029」も作成、さらに2003年には核攻撃も含む攻撃計画「CONPLAN 8022」も仕上げられている。 つまり、アメリカの少なくとも一部勢力は1998年から自分たちに対する攻撃準備を始めている・・・そのように朝鮮政府には感じられるはずで、最高度の警戒態勢に入っていても不思議ではない。その攻撃計画に日本政府も関与しているとする情報も流れていることを日本人は忘れるべきでない。相手の動きばかりに気をとられていると、取り返しのつかない「災難」が降りかかってくる可能性が高い。 要するに、「知彼知己者、百戦不殆(彼を知りて、おのれを知れば、百戦して危うからず)」(孫子 謀攻篇)ということである。
2010.11.24
日本の技術者が国外の企業へ流れる一方、日本企業が中国などで理系の学生を「エンジニア要員」として採用しはじめているようだ。企業は研究開発、あるいは製造現場のスタッフを冷遇し、国は教育への予算を削っているのが日本。教育は他国に任せ、その果実をいただこうという虫の良いことを日本の経営者は考えているのかもしれないが、思惑通りにはならないだろう。 世界を見渡して、日本人のように従順な人間を探し出そうとしても簡単ではない。大学を卒業して日本企業に入った外国の若者は、力がつけばキャリア・アップを求めて外へ飛び出していく。その一方、外国へ渡った日本人エンジニアは現地の企業に技術をしっかり伝える。日本企業は労働者に適切な対価を支払わず、自分たちへの忠誠だけを求めているようだが、それは身勝手すぎる。 結局、日本の大企業は日本社会を破壊した挙げ句、自らも衰退していくしかない。日本の経営者には世界の経営者と遣り合うだけの能力はなく、日本という拠点がなくなれば競争に勝ち残ることもできない。 大企業を優遇する政策とは、日本を破滅させる政策にほかならない。大企業/富豪を儲けさせれば、その恩恵が庶民にも及ぶというような「モデル」は存在しない。これは「妄想」にすぎないのだ。資本主義システムでは、大企業/富豪へカネが集まる仕組みになっている。強制的に庶民へ富を還流させル何らかの仕組みを作らないかぎり富は偏在し、貧困と「カネ余り」が同時に生じる。通常、「余ったカネ」は投機市場で運用されることになるが、これは単なる博奕にすぎず、経済活動とは呼べない。 投機市場が肥大化する中、技術者や研究者が冷遇され、職人たちは切り捨てられている日本で技術力が急速に弱まっているのは当然のことだ。日本を支えてきたのは、こうした現場の有能な人々だったのだが、そこが崩壊し始めている。
2010.11.22
沖縄の新しい知事が11月28日の投票で決まる。知事選で最大の争点は言うまでもなく基地問題である。どの候補者も「基地受け入れ」を口にすることはできないようだが、伊波洋一候補が勝てばカネを餌にした「話し合い」の余地もなくなり、仲井真弘多候補が勝てば基地受け入れへの道が開かれる可能性が高い。日米両政府が仲井真候補の当選を望んでいることは間違いないだろう。 選挙の「予想屋」によると、両候補は競り合っているらしく、どちらが当選しても不思議ではないという。過去を振り返ると、自らが望む候補を当選させるため、アメリカはメディアを使ったプロパガンダを展開し、労働組合を使って揺さぶりをかけてきた。多くの国でメディアと労働組合はアメリカの手先になっている。 しかし、沖縄の場合、現地のメディアをプロパガンダ機関として利用しきれず、労働組合もアメリカの人形にはなっていないようだ。あとは「本土」の巨大メディアを最大限利用したり、カネで揺さぶりをかけるしかない。沖縄周辺の軍事的な緊張が高まっても沖縄では大きな影響がなかったようだ。 沖縄の人々を怒らせる切っ掛けは1995年に発表された「ナイ・レポート」だと言われている。10万人規模の駐留アメリカ軍を維持するなどと言われては、人々が怒るのも当然だ。 このレポートのベースを作成したのはマイケル・グリーンとパトリック・クローニンだというが、当時、二人は国防大学の若手スタッフにすぎなかった。自分たちの主張をジョセフ・ナイとエズラ・ボーゲルに売り込んだとされているが、グリーンたちのバックに誰もいなかったのだろうか? 1990年頃、つまりジョージ・H・W・ブッシュ政権の時代になると、武器/兵器の技術的な進歩などの結果、アメリカ軍は沖縄を必要としなくなったと言われている。農業を売り渡し、基地を提供することでアメリカにゴマをすり、自分たちのカネ儲けを続けたいと思っている日本の大企業/財界としては由々しき事態である。 そうした状況の中、「在日米軍駐留経費(思いやり予算)」が急増している。1978年には62億円(歳出ベース)だったものが、80年には374億円、85年には807億円、90年には1680億円、95年には2714億円、2000年には2567億円、2005年には2378億円というように推移している。「基地提供」に魅力がなくなったため、「資金提供」を始めたようにも見える。国民の税金を投入し、大企業/財界が儲けるという構図だ。 しかし、資金提供では不十分だとアメリカから言われているようで、自衛隊/日本軍を全世界に派兵にしようという動きが見られる。日本の将兵をアメリカの「下請け部隊」に使おうとしている可能性が高い。アメリカへ沖縄を提供した日本政府/財界は、日本全体をアメリカへ「献上」して自分たちのカネ儲けを続けようとしているようだ。
2010.11.21
菅直人政権の外交を上出来だと言うことはできない。それ以前の自民党を中心とした政権に「外交」が存在したわけでもないが、他国との協定を無視した事実は重い。国際的な信頼度は大きく下がったはずだ。自立への道を曲がりなりにも模索していた鳩山由紀夫政権が崩壊、その後に登場した菅政権は対米従属路線へ慌てて戻ろうとしたのだろうが、そこで日中漁業協定を破るという好戦的なことを行ったのである。 アメリカの傀儡国家、あるいは属国と認識されてきた日本はこれまで、どの国からも重要な交渉相手として扱われてこなかったのだが、それでも今回の一件は日本をそれ以下の存在に貶めることになった。アメリカの支配層から見ると好ましい展開なのかもしれないが、日本にとっては大きなダメージだ。 勿論、政府が愚かなことをしても議会やメディアのチェックが働くか、国民から批判が出てくれば問題は小さい。ところが、今回は議会もメディアも沈黙するどころか、好戦的な環境作りに一役も二役も買っている。国民も好戦的な感情の高ぶりに陶酔しているように見える。マスコミ業界の中では一部の媒体が「右」だ「左」だと敵対関係を演出しているが、今回の一件はマスコミ、つまり新聞も雑誌もテレビも「同じ穴の狢」にすぎないことを再確認させた。 現在、アメリカでは中間選挙の結果を受けてイラン攻撃を求める声が議会で高まっている。ティー・パーティーを使い、ネオコンが政界での影響力を復活させているようだ。戦争ビジネスも軍事的な緊張は望むところ。そうした好戦派に従っている人物が日本の支配層には多いようだが、その果てに何が待ち受けているのかを考えているのだろうか?
2010.11.13
ジョージ・W・ブッシュ前大統領は自身の回顧録で、捕虜に対する「水責め」を自分が認めたと自白している。第2次世界大戦で捕虜を「水責め」にした日本の将兵が戦争犯罪人として絞首刑になったことを考えると、ブッシュを逮捕/起訴し、法廷で裁く必要がある。そうでなければ、如何なる国の人権侵害も問えなくなる・・・こうした主張を鼻で笑う人に「人権」を語る資格はなく、自らの人権を主張することもできない。 このブッシュが好意を感じている人物のひとりが小泉純一郎元首相だという。そういえば、2006年6月に小泉はブッシュらの前で、エルビス・プレスリーの「アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラブ・ユー」という曲を歌い、ご満悦だった。そんな小泉をブッシュは「上級曹長」と呼んでいたという。将官でも佐官でも尉官でもなく、一国の総理大臣を下士官扱いしていたのだが、それで怒るどころがプレスリーの歌を歌って聴かせ(それをブッシュが喜んだかどうかは知らないが)ていたわけだ。「日米同盟」とはそんな関係だということなのだろう。 ブッシュ前大統領から見て、菅直人首相が小泉よりも階級が上だということはないだろうし、バラク・オバマ大統領が日本を格上げしたとも思えない。菅首相は日本の財界やアメリカの支配層の従って行動、少なくともそうした勢力が喜ぶような政策を連発しているのが実態だ。 アメリカでは1980年代から権力抗争が激しくなっている。長年、アメリカを支配してきた「旧保守」とイスラエルを第一と考える「新保守」、また軍事力を軸にすべき時代は終わったと考える「デタント派」と戦争を続けたい「好戦派」、それらが重層的に対立している。日本の支配層は「新保守」や「好戦派」と手を組み、マスコミもスポンサーである支配者たちに同調している。 新保守/好戦派に支えられたジョージ・W・ブッシュ政権は東アジアの成長を押さえ込むために「第2次朝鮮戦争」を計画したが、これは旧保守に阻止された。自分たちの投資が回収できなることを恐れたわけだが、その旧保守も日本と中国が手を組むことは嫌っているはずだ。そうした意味で、尖閣諸島の問題はアメリカにとって好都合。旧保守にしても、戦争に発展しないかぎり、日本と中国はいがみ合って欲しいはずだ。そうした意向を感じてか、政府もマスコミも「日中漁業協定」の話をしようとしない。 日本と中国との対立がどこまで発展するか、日本や中国で始まった「愛国者ゲーム」の果てに何が待ち受けているのか、誰にもわからない。日本の歴史を振り返ると、戦争へ突き進んだ原動力は庶民の好戦的な感情だった。「庶民は騙されただけ」というのは、日本と友好関係を結ぶために考え出された「おとぎ話」にすぎない。現在、日本では「好戦ギア」へシフトしかかっている。早い段階でシフトダウンする必要がある。
2010.11.12
案の定と言うべきか、アメリカ政府はイラクからの「完全撤退」を取り消すような発言を始めた。イラク政府がアメリカを必要としているならば、駐留、つまり占領を継続する容易があると11月9日、ロバート・ゲーツ国防長官がマレーシアで言明したのである。今回の中間選挙を見ても明らかなように、アメリカの支配層の多数派は戦争の継続を望んでいる。何しろ、戦争は儲かるからだ。人の死や国の破綻など意に介していない。 今年8月、バラク・オバマ大統領はイラクからアメリカ軍を完全に撤退させると発言したが、見せかけの撤退宣言だと考える人は少なくなかった。同月末には「最後の戦闘部隊がイラクを離れた」と宣伝されたものの、その時点で約5万名のアメリカ兵が残り、事実上、戦闘は続いている。その間もアメリカ軍上層部の一部は公然とイラクからの「完全撤退」は困難だと主張していた。 巨大企業/富豪層のために戦争を継続するとしても、アメリカはすでに戦費負担で潰れそうである。当然、日本にも負担をするように求めてくると考えねばならない。そうした中、読売新聞によると、日本政府は自衛隊の医官や看護官ら約10名を年内にもアフガニスタンへ派遣する検討を始めたという。孫崎享氏がTwitterで指摘しているように、まず国民の反対が少ないであろう医療で自衛官を派遣し、次に医療チームを護衛する自衛官を派遣、そして戦闘分野に足を踏み入れるという流れが見える。 こうしたプロセスを順調に進めるためにも、日本に好戦的な雰囲気を蔓延させる必要があるわけで、そうした意味からも韓国の「天安号事件」や尖閣諸島の逮捕劇は「仕組まれた」と言われても仕方がないようなタイミングで引き起こされ、有効に利用されている。 中東を見ると、アメリカのネオコンと緊密な関係にあるイスラエルの軍事強硬派も好戦的な姿勢を強めている。それだけ追い詰められているということなのだが、「窮鼠猫をかむ」ということもある。イスラエルは世界有数の核兵器保有国であり、核兵器を使用する可能性が最も高い国でもある。何しろ第4次中東戦争では核攻撃を閣議決定したと言われている。アメリカの中間選挙では、イスラエルの軍事強硬派に近い勢力が勝利したことも忘れてはならない。菅直人政権やその背後の勢力はこうした好戦派の手先になっているように見える。
2010.11.10
このところ、日本と韓国で似たような事態が進行している。両国の政府はアメリカによる農業支配を促進、東アジアの緊張を高めて軍需産業のカネ儲けに適した環境を作りつつある。こうした流れを象徴する出来事が、韓国の場合は「天安号事件」であり、日本の場合は尖閣諸島の近くで展開された中国漁船の逮捕劇である。 天安号事件の場合、当初、国防大臣も国家情報院長も朝鮮が関与した証拠はないと発表していたのだが、途中から李明博大統領が「朝鮮犯行説」を主張し始め、「国際軍民合同調査団」は「北朝鮮の小型潜水艦艇による発射以外に説明がつかない」という結論を公表、ヒラリー・クリントン米国務長官は7月、朝鮮に対して韓国の哨戒艦に魚雷を発射したことを認めるように迫っている。 クリントン長官がこうした発言をするのは当然のこと。何しろアメリカの巨大軍事企業、ロッキード・マーチンをスポンサーにしている人物で、その親密度は共和党の「好戦派議員」も及ばない。2005年にロッキード社のPAC(政治活動委員会)は5000ドルをクリントン議員に献金したというが、それだけではない。裏のカネはともかく、2001年から議員や彼女の側近であるヒューマ・アデリンはロッキードが所有するプライベート・ジェットをタダで利用している関係だ。 さて、昨年11月に韓国軍の艦船から攻撃を受けた朝鮮軍の艦船が応戦するという事件があり、朝鮮側の船は炎上したという。交戦の前月、朝鮮側は韓国の艦船が1日に10回も領海を侵犯していると非難していた。唐突に起こった軍事衝突ではなかったということである。 こうした経緯があるため、報復のために天安号は攻撃されたという見方をする人が少なくなかったのだが、時間が経つにつれて「朝鮮犯行説」を疑う声が広がる。こうした主張を封印するために李大統領は露骨な圧力を加えているのだが、8月31日には韓国駐在のアメリカ大使を務めたことのあるCIAのドナルド・グレッグは天安号事件に対する韓国政府の公式見解に疑問を投げかけた。6月に調査団を派遣したロシアからの情報として、天安号が沈没した原因は魚雷でなく、機雷が原因だった可能性が高いと語っている。ハンギョレ新聞のインタビューでは、韓国政府がロシアの調査を妨害したと話している。 こうした証言が出てきた直後、石垣海上保安部の巡視船が尖閣諸島の久場島沖で中国のトロール漁船の船長を「公務執行妨害」の容疑で逮捕したのである。この逮捕劇にも疑問が投げかけられている。2000年6月に発効した「日中漁業協定」によると、「事件」が起こった海域では「自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行う」(河野太郎公式サイト)ことになっていて、この水域で漁をする中国船は数百隻に達するという。 要するに、石垣海上保安部は漁業協定を無視する形で中国の漁船を取り締まり、船長を逮捕したことになる。石垣海上保安部がこの協定を知らなかったとは思えない。つまり、確信犯的に、つまり日本と中国との関係を悪化させる目的で逮捕した可能性がきわめて高いということだ。韓国の李大統領も中国への敵対的な姿勢を強めている。日本と韓国、両国政府を操っている勢力が同じだと考えても論理の飛躍とは言えないだろう。
2010.11.09
尖閣諸島の久場島沖で中国のトロール漁船の船長を石垣海上保安部の巡視船は9月8日に「公務執行妨害」の容疑で逮捕、この時の様子を巡視船は撮影していたのだが、日本政府は公開しようとしなかった。前にも書いたように、両国が領有を主張している海域であることを考えれば、逮捕するなら、すみやかに映像を公開し、逮捕せざるをえなかったということをアピールする必要があったのだ。非公開は問題外として、時間を経てからの公開ではガザ支援船を襲撃したイスラエル軍のケースのように、映像を編集したと言われかねないわけで、編集する時間的な余裕がないほど即座に公開しなければ意味がないのだ。 基本的に映像を公開しないという姿勢を菅直人政権は今でも崩していないのだが、映像のうち44分間だけがインターネット上にアップされ、ちょっとした騒ぎになっている。映像が外部に出たことは一歩前進、と言えるかもしれないが、問題もある。全体が公開されていない、つまり「編集」された映像だということである。ビデオを外に出した人物の真意は不明だが、この際、日本政府は全体を明らかにするべきだ。 今回の出来事で最大の問題は、巡視船と漁船が接近するまでの過程にある。「衝突の瞬間」にあるわけではない。これも前に書いたことだが、捕鯨船がシー・シェパードと衝突したケースの場合、日本で公開された映像は最初の部分が削られ、「衝突の瞬間」が強調されていた。ところがオリジナルの映像を見ると、先ず捕鯨船が止まっていたシー・シェパードの船に向かって直進している。衝突寸前のところで左へ舵を切っているので、「脅し」のつもりだったのだろうが、その直前にシー・シェパードの船は前へ逃げようとしたため、ぶつかっている。 問題の事件が起こる直前、東アジアでは軍事強硬派、この地域での緊張を高めたい勢力にとって都合の悪い流れになっていたことを忘れてはならない。すでに指摘されていることだが、沖縄の知事選と無関係だと言うこともできない。今回のビデオ騒動に閣僚、あるいは与党の大物が関与している可能性すらある。アメリカではネオコンに乗っ取られたとも言われている「ティー・パーティー」が猛威を振るっている。民主党にネオコン的な政治家が少なくないことも事実だ。小沢一郎が守勢になるのと反対に、ネオコン派は攻勢に出ている。
2010.11.05
今回の中間選挙でアメリカの有権者は「政府の肥大化」を選択した。アフガニスタンやイラクに続き、イラン、パキスタン、そしてイエメンに対する軍事行動を「ティー・パーティー」を含む共和党は視野に入れているわけで、戦費負担を減らすつもりはない。 ティー・パーティーの始まりは「ロン・ポール運動」だと言われている。ロン・ポール下院議員を大統領に、という草の根運動だ。当初は反戦活動にも力を入れていたのだが、今ではネオコンを含む勢力、つまりジョージ・W・ブッシュ政権を担いでいた人たちに乗っ取られ、好戦派と環境規制反対派の巣窟になっている。 WikiLeaksが公開した機密文書を見てもわかるように、アメリカ軍をはじめとする占領軍はイラクやアフガニスタンで「無法行為」を繰り返してきた。略奪、破壊、そして殺戮で現地の住民はアメリカに対する憎しみを募らせている。こうしたアメリカによる「テロ行為」がアメリカへの攻撃につながることは否定できない。 ここ10年ほどの間、アメリカが「秘密戦争」を続けてきたイエメンでも反米感情は高まっている。特殊部隊の「秘密戦争」を続け、空爆を実施、最近では無人機での暗殺攻撃を実行していることを考えると、アメリカに対して何らかの敵対的な行動に出ても不思議ではない。 アメリカの介入で無政府状態に陥った国は少なくないが、そのひとつがソマリア。この国に対する作戦/工作の拠点はジブチに置かれている。ここにはペンタゴンのJCTF(統合連合機動部隊)が駐留しているのだ。ここで自衛隊が活動するということの重大性は改めて指摘するまでもないだろう。 何年か前、アフガニスタンやイラクでの戦費は3兆ドルを上回るとハーバード大学のリンダ・ヒルムズやコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツは主張、大げさだと批判されていたが、現実はこの程度の金額では到底、収まらないと見られている。戦前の日本と似たような状況とも言えるだろう。アメリカが戦費負担に耐えられず、崩壊する時期が早まった。 ところが、ティー・パーティーは戦争の継続を望んでいる。環境規制をなくすべきだと考え、気候変動に対する対策に参加する意志など全く持ち合わせていない。あとは富裕層のために税金を減らし、社会保障のレベルを極限まで引き下げようとしているだけだ。いわば、庶民から富を搾り取ることしか考えていない。 今年8月、1963年8月28日にマーチン・ルーサー・キング牧師たちが25万人以上を集めた場所で、ティー・パーティーはワシントンDCで大規模な集会を開いた。この集会を企画したのは、Foxニュースでショーの司会をしているグレン・ベック。キング牧師の理念など微塵を持ち合わせているとは思えない人物で、差別発言を公然と行うことを「売り」にしている。いわば、アメリカのビートたけしだ。 このベックの黒幕が石油で巨万の富を手にしたコッチ家の兄弟、デイビッドとチャールズ。前回にも書いたように、コッチ兄弟は税金を徹底的に減らし、社会福祉を最低限のレベルに引き下げ、企業への規制、特に環境規制をなくすべきだと考え、健康保険制度の改革に反対し、気候温暖化の問題で「否定論者」を支援してきた。
2010.11.04
アメリカでは中間選挙が間近に迫り、民主党と共和党が激しい宣伝合戦を繰り広げているようだが、そうした中で注目されているのが「ティー・パーティー」と称する集団。キリスト教系カルトを背景に持ち、必然的に親イスラエル派が目立っている。支持層は白人の中間層だ。その資金源は、政策を知れば自ずと推測できる。ジョージ・W・ブッシュ政権と同じように、巨大企業/大富豪たちである。 ヨーロッパ系の石油/化学会社は温暖化対策に反対する議員へ24万ドル以上を提供、ティー・パーティーも恩恵に浴している。そのうち総合化学会社のバイエルが10万8100ドル、巨大石油企業のBPは2万5000ドルを提供しているのだが、こうした企業よりも注目されているのが石油で財をなした富豪のデイビッドとチャールズのコッチ兄弟。21万7000ドル以上を出したと報じられている。 2008年の大統領選挙でチャールズ・コッチはジョン・マケイン候補を支援し、プロパガンダの資金を提供している。メディアは大儲けしたということでもある。この同じ年にデイビッド・コッチはリンカーン・センターのニューヨーク州劇場ビルを現代的にするため、1億ドルを寄付したという。 コッチ兄弟の政治的な目的は明確。税金を徹底的に引き下げ、社会福祉を最低限のレベルにして、企業への規制、特に環境規制をなくしていくべきだと考えている。健康保険制度の改革に反対しているほか、大気汚染に対して口うるさい気象学を否定している。気候変動に関する規制に反対する団体への2005年から08年にかけての資金提供では、あのエクソンモービルをも上回っている。2005年とは、京都議定書が発効した年である。 このコッチ兄弟の主張を代弁しているのがティー・パーティーなのだが、このコッチ一族の歴史をさかのぼると奇妙な事実に突き当たる。1920年代に石油産業へ乗り出すのだが、巨大企業からビジネスを妨害される。そして1930年代、兄弟の父親、フレッドはソ連のエンジニアを訓練し、15の近代的な石油精製施設を同国に建設する手助けをしているのだ。 後にヨシフ・スターリンと仲違いしてアメリカへ戻っているが、スターリンと一時期、仕事をしていたことは間違いない。1958年になると、フレッドは「超保守」と形容されているジョン・バーチ・ソサエティの創設に参加することになった。 フレッドが死亡し、チャールズとデイビッドの代になるのは1967年のことだ。1970年代から90年代にかけてメロン財閥のリチャード・メロン・スケイフが情報機関の人脈を活用しながら、軍事強硬派を資金面から支えていたが、コッチ兄弟の立場も似ているようだ。 その後、兄弟は経済学者のフリードリッヒ・フォン・ハイエクに接近する。ハイエクはイギリスの首相となるマーガレット・サッチャーと親しく、このサッチャーにミルトン・フリードマンを紹介して「新自由主義経済」を世界に蔓延させる道筋を作ることになる。 こうしてみると、共和党/ティー・パーティーが資金面で圧倒しているように思えるが、民主党にも有力な資金源が存在している。投機ビジネスの世界に君臨、一時期は旧ソ連圏を乗っ取る作戦の最前線に立ち、「人権擁護団体」のHRW(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)のスポンサーでもあるジョージ・ソロスだ。 現在、地球温暖化を巡り、巨大資本が激突している。欲と欲のぶつかり合いだ。この争いに巻き込まれ、自分を見失っているような人たちも見受けられる。争いの渦の中では、「温室効果ガス」の規制派も、規制反対派も、ともに「体制派」。見方を変えると、この争いに巻き込まれるのも処世術なのかもしれない。
2010.11.01
全18件 (18件中 1-18件目)
1