《櫻井ジャーナル》

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2013.02.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 日本は受験シーズンに入った。最近は受験の方法が増え、従来通りに試験を受ける「一般入試」だけでなく、出身校から推薦された学生を選抜する「推薦入試」や出願者の個性や適性に対して多面的な評価を行って選抜するという「AO入試」など学校側の主観で合格者が左右される方法が多用されている。公正な入試とは言い難い。

 公正さの上でさらに問題なのは、教育を受けるために多額の資金を用意しなければならないという現実。学校の授業料が高騰、塾や予備校へも通うならば、さらに資金が必要。学校制度の変更で「勝負」の年齢が下がり、長期間にわたり、そうしたカネを負担できる富裕層が圧倒的に有利になっている。

 教育水準と資金力が結びついているという点で日本より一歩先を行くアメリカ。そのアメリカのテキサス州で昨年5月、 ある高校生が授業の欠席が多いという理由で、ラニー・モリアティー判事から100ドルの罰金と、24時間の収監が言い渡されて話題 になった。

 この女子生徒は両親が離婚、家計を助けるためにクリーニング店で働くほか、週末にはウェディング・プランナーを助ける仕事をしていた。そのため、疲労などもあって授業に出られないことが多く、「犯罪者」扱いされることになったのである。成績は優秀で生活態度に問題がなかったにもかかわらず・・・。

 このケースの場合、後に「前科」は記録から削除されることになったようだが、アメリカの教育システムに大きな問題がある事実に変化はない。ハーバード大学の教授から上院議員に転身した エリザベス・ワレン によると、アメリカ人が破産に追い込まれる原因の多くは治安と教育の問題だという。

 アメリカの場合、私立の進学校へ子どもを通わせるためには膨大な学費を支払う必要があるのだが、中産階級には困難。公立の学校は荒廃が進んでいるため、少しでもマシな学校へ子どもを通わせるためには不動産価格の高い地域に住む必要がある。つまり、不動産で家計が破綻した人の少なからぬ部分は、教育が真の理由だったというわけだ。

 トルーマン・カポーティは『叶えられた祈り』(川本三郎訳、新潮文庫)の中でウォール街で働いているディック・アンダーソンなる人物に次のようなことを言わせている。



 エクセター校とは「一流大学」を狙う子どもが通う有名な進学校で、授業料も高いようだ。そうしたカネを捻出するため、「ペニスを売り歩く」ようなことをしなければならないとカポーティは書く。アメリカの中では高い給料を得ているはずのウォール街で働く人でも教育の負担は重いということだ。

 こうした状況について ワレン議員は次にように主張 する。

 「G.E.は税金を払わず、大学生には教育を受けるためにもっと借金しろと言い、最上級生には生活を切り詰めろと言う。これは経済の問題ではない。モラルの問題だ。」

 アメリカと同じアングロ・サクソンの国、イギリスも事態は深刻なようだ。昨年11月にイギリスの インディペンデント紙が行った覆面取材 の結果、学費を稼ぐための「思慮深い交際」を紹介する、いわゆる「援助交際」を仲介するビジネスの存在が明らかになったのである。

 手取りはサービスの内容によって違い、年間5000ポンドから1万5000ポンド。(現在の1ポンドは約150円)17歳から24歳までの学生、約1400名が在籍していると仲介業者は主張しているが、ほかにも似た業者がいるようで、これは氷山の一角だという。

 事実上、売春の仲介をしているとして逮捕されたマーク・ランカスターという人物はコンピュータ・コンサルタントで、国防省の仕事をする許可を受けているという。国防省はランカスターが売春の仲介をしていることに気づかなかったのか、その稼業を問題だと思わなかったのか・・・いずれにしろ救いがたい。

 アングロ・サクソンの後を追いかけている日本でも学費の負担が庶民に重くのし掛かっている。低所得層の子どもは教育を受ける権利を奪われているのが実態だ。教育課程審議会の会長を務めた作家の三浦朱門に言わせると、「できん者はできんままで結構。・・・限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです。」(斎藤貴男著『機会不平等』)

 こうした状況を改善するためには法律面からの働きかけも必要になるが、そうした問題に取り組むような弁護士が出てきにくいシステムに変えられている。司法試験を受けるまでに多額の資金が必要になり、試験に受かっても司法修習生に対する給付制が廃止になって新人弁護士の多くは借金まみれ。カネになる仕事、カネを出せる人物や組織の仕事を弁護士になってからせざるを得ない。

 ボリス・エリツィン時代のロシアでは新自由主義経済が徹底され、クレムリンとつながる一部の人間が不公正な取り引きで巨万の富を得る一方、大多数の庶民は極度に貧困化して犯罪者と売春婦が街にあふれたという。アメリカ、イギリス、そして日本の支配層は国を借金漬けにし、庶民を債務奴隷化して国家を支配しようとしているようだ。





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最終更新日  2013.02.06 18:26:08


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