《櫻井ジャーナル》

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2014.02.17
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 シリアの体制転覆を目指す動きは続いている。アメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO諸国、またサウジアラビアやカタールといったペルシャ湾岸の産油国は反シリア政府軍を編成、資金や武器を提供し、戦闘員を雇って軍事訓練を続けてきた。トルコ、サウジアラビア、カタールなどが送り込んでいる傭兵はアル・カイダと呼ばれている。

 そのサウジアラビアは最近、ロシア製の対戦車ミサイルや中国製の携帯防空システムを反政府軍に供給、現在はヨルダンやトルコの兵器庫にあるという。NATO軍の直接的な軍事介入は実行されていないが、傭兵を使った戦闘は続けられている。

 NATOの直接的な軍事介入を正当化するために作られたシナリオが「政府軍による化学兵器の使用」という話だった。ダマスカス郊外のゴータで8月21日未明に政府軍が化学兵器のサリンを使ったという情報が流されて軍事攻撃は時間の問題だとされたのだが、流れはすぐに変わる。

 まず、 ロシアのビタリー・チュルキン国連大使は文書と衛星写真に基づき、反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを国連の臨時会合で示した という。この話が伝えられた後、シリア攻撃を主張する声は急速に小さくなる。

 8月29日には、 サウジアラビアが反政府軍に化学兵器を提供したと報道 され、その直後に筆者のひとりが記事を否定するのだが、掲載したメディアの 編集長は原稿を持ち込んだのはその記者であり、ふたりの遣り取りは記録に残っていると主張 、記者からはそれ以上の反論はなかったようだ。

 何らかの事情でアメリカがシリアへの直接的な攻撃を中止した後、 10月になって「ロシア外交筋」から、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れてくる

 調査ジャーナリストの シーモア・ハーシュも化学兵器と反シリア政府軍を結びつけるレポート を書いている。反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるという趣旨の記事だ。

 さらに、国連で兵器査察官を務めた経験のあるリチャード・ロイド、そしてマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も、シリア政府軍が化学兵器を発射したとする アメリカ政府の主張は、ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たない とする報告を明らかにしている。

 シリアへの直接的な攻撃を実行しなかったアメリカのバラク・オバマ米大統領に対し、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)は怒っている。何しろ、彼らは遅くとも1991年の段階でイランやイラクと伴にシリアを殲滅するとしていた。

 イスラエルと緊密な関係にあったイランのパーレビ体制が倒れた後、イスラエルやネオコンはイラクのサダム・フセインを倒して親イスラエル体制を樹立、ヨルダン、イラク、トルコという親イスラエル国帯を作り、イランとシリアを分断させようとしている。

 そうした中、ペルシャ湾岸の産油国、クウェートはイラクを挑発しはじめる。両国の国境付近にある油田でクウェートは盗掘、OPEC(石油輸出国機構)で決められた価格より安い値段で石油を販売していた可能性が高い。両国の関係は緊張し、イラン・イラク戦争が停戦になった1988年の段階でアメリカは軍事衝突を予想していた。

 にもかかわらず、アメリカは緊張緩和を図ろうとしていない。例えば、1990年に国務省はクウェートを守る義務はないと主張、イラク駐在大使はアラブ諸国間の問題には口を出さないとイラク側に伝えている。クウェートなどペルシャ湾岸の産油国はイラクの軍事力が増強されたことを懸念、アメリカに相談していたとも言われている。

 イラクがクウェートを攻める前、PLOのヤセル・アラファト議長はイラク政府に対し、アメリカ政府の内部に不審な動きがあるので挑発に乗らないように警告、その一方でクウェートに対して緊張感亜のための提案をするが、クウェート側は聞く耳を持たなかったと言われている。

 詳しい話は割愛するが、ともかく1990年8月にイラクはクウェートへ軍事侵攻、91年1月にアメリカ軍はいくつかの国を引き連れてイラクを攻撃する。イスラエル/ネオコンはアメリカ軍がそのままフセインを排除すると期待していたのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領はその前に停戦してしまう。

 その決定に起こったネオコンのひとりがポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)で、その直後にシリア、イラン、イラクを殲滅すると語っていたという。これは1997年から2000年まで欧州連合軍の最高司令官を務めた ウェズリー・クラーク大将の話

 そうした経緯を経て始まったシリア攻撃であり、バシャール・アル・アサド体制を転覆させようというプロジェクト。ネオコンは執拗だ。そのパートナーがサウジアラビアなど湾岸の産油国で、武器の提供だけでなく、傭兵を送り込み続けている。21世紀になり、地中海の東側、エジプトからギリシャにかけての地域に膨大な量の天然ガスが存在することが判明し、この地域を侵略したいという「西側」や湾岸産油国の欲望は強くなった。勿論、その中にイスラエルも含まれている。

 最近では、そうした中にカフカスや欧米諸国からも戦闘員としてシリアへ入っている。ヨーロッパ全体では1800名程度、アメリカからも50名以上がシリアへ渡り、戦闘訓練を受け、実際に戦闘を経験しているようだ。

 シリア攻撃に積極的だった フランスのフランソワ・オランド大統領は自国から約700名が戦闘員としてシリアへ向かった と語っているが、対テロ判事のマルク・トレビディクによると約2000名だという。この2000名という数字が正しいなら、ヨーロッパ全域からシリアへ渡った人数もかなり増える。

 また、 イギリス検察庁で対テロリズム部門を率いているスー・ヘミングは、戦闘を目的にシリアへ渡った場合、帰国したなら終身刑を求めると発言 イギリスから「人道支援」だとしてシリア入りした若者は自爆攻撃を実行 している。

 欧米から中東/北アフリカへ渡って軍事訓練を受け、戦闘に参加した人びとも出身国へ戻るときが来る。そうした人びとを欧米の支配層はコントロール、例えばイタリアで実行されたような「緊張戦略」に使うのか、あるいはコントロール不能になるのか、いずれにしろ血の臭いがする。





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最終更新日  2014.02.17 18:37:43


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