《櫻井ジャーナル》

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2014.04.07
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ネオコン(アメリカの親イスラエル派)をはじめとする「西側」の支配層はネオ・ナチのグループを使ってウクライナでクーデターを実行、首都のキエフを制圧した。その前、NATO軍はシリアへ直接的な軍事侵攻を目論み、「西側メディア」も煽っていたのだが、今ではシリアの戦乱を忘れてしまったかのように静かだ。

 シリアでは現在、政府軍が優勢な展開で、トルコが直接、シリアを攻撃するまで追い詰められている。トルコは戦闘が始まった2011年3月の段階から反シリア政府軍の拠点になっていたが、トルコにある米空軍インシルリク基地では、アメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスとフランスの特殊部隊員らが反政府軍の戦闘員を訓練していた。今ではヨルダンなどにも拠点がある。

 訓練するだけでなく、サウジアラビアやカタールが資金や武器/兵器を提供し、傭兵も雇ってきた。その傭兵の相当部分はイスラム教スンニ派の武装勢力(サラフィーヤ/ワッハーブ派、あるいはアル・カイダ)。少なくとも最近10年ほどの間、アル・カイダを動かしてきたのはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官だと言われている。

 しかし、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、 シリアで活動しているアル・カイダ系グループのアル・ヌスラ戦線の場合は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権が支援 しているのだという。

 シリアで政府軍と戦っている主な戦闘集団は3組織あると言われている。アル・ヌスラのほか、イスラム戦線とISIL(ISISやIEILとも表記)。イスラム戦線はスルタン総合情報庁長官が諸団体を再編成して組織、トルコの司法当局や警察によると、ISILはエルドアン首相が秘密裏に創設したのだという。アル・ヌスラ戦線はカタールに近いとされているのだが、カタールとエルドアンはイスラム同胞団に近く、エルドアンと関連があっても不思議ではない。

 昨年3月、シリア政府はアル・カイダ系のカーン・アル・アッサルがアレッポの近くで化学兵器で攻撃したと発表、国連に対し、すみやかに調査するように要求している。着弾地点で採取した試料をロシアが分析した結果、サリンや砲弾は工業的に作られたものではなく、「家内工業的な施設」で製造されたことが判明したとロシア政府は発表、その分析結果は80ページの報告書にまとめられ、国連の潘基文事務総長に提出された。この段階で米英の情報機関も反政府軍が化学兵器の開発を進めていることに気づいていたとハーシュは書いている。

 この件に関し、イスラエルの ハーレツ紙 も反政府軍が化学兵器を使ったと推測する記事を載せている。攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということが根拠だ。国連独立調査委員会メンバーの カーラ・デル・ポンテ

 そして5月、トルコではシリアとの国境近くでアル・ヌスラのメンバー、10名以上が逮捕され、そのとき、約2キログラムのサリンが押収されたと地元警察はメディアに発表している。

 ところが5名はすぐ自由の身になり、懲役25年を求刑されていたリーダーのハイサム・カッサブを含む残りも未決のまま釈放された。エルドアン政権が事件の広がりを恐れ、揉み消しを図ったと推測されている。

 8月になるとダマスカス郊外のゴータで政府軍が化学兵器を使ったアメリカ政府は宣伝し始めるのだが、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使がアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示し、報告書も提出した。

 チュルキン対しが示した情報には、 反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを示す文書や衛星写真 が含まれていたようで、その後、国連内の雰囲気が大きく変化したという。

 ミサイル発射から間もなくして、化学兵器をサウジアラビアを結びつける記事が ミントプレス に掲載された。デイル・ガブラクとヤフヤ・アバブネの名前で書かれたもので、後にガブラクは記事との関係を否定する声明を出すのだが、編集長のムナル・ムハウェシュはその声明を否定する。

編集長によると 、記事を28日に編集部へ持ち込んだのはガブラクであり、同僚のヤフヤ・アバブネがシリアへ入っているとしたうえで、反政府軍、その家族、ゴータの住民、医師をアバブネが取材した結果、サウジアラビアが反政府軍に化学兵器を提供し、それを反政府軍の戦闘員が誤って爆発させたと説明したという。一連の遣り取りを裏付ける電子メールが残っているともしている。その後、カブラクからの再反論はないようだ。

 昨年10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、 ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話 が流れた。アフガニスタンの反政府軍支配地域で「第三国」がアル・ヌスラなどシリアの反政府軍に対し、化学兵器の使い方を訓練しているとする報告があるとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語る。

反政府軍がサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性がある という趣旨の記事を書き、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授は、化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないというのだ。

 その間、アメリカ政府は大規模なシリア攻撃を計画していた。シリア近くの基地にB52爆撃機の2航空団を配備、トマホークミサイルを搭載した艦船も派遣されている。

 5隻の駆逐艦、1隻の揚陸艦、そして紅海にいる空母ニミッツと3隻の軍艦などの艦船をアメリカ軍は地中海に配備したのに対し、ロシア側は「空母キラー」と呼ばれている巡洋艦のモスクワを中心に、フリゲート艦2隻、電子情報収集艦、揚陸艦5隻、コルベット艦2隻がシリアを守る形に配置されたようだ。陸にも高性能ミサイルが配備された可能性がある。

 攻撃予定日が迫る中、ロシアの軍情報機関がゴータでサンプルを採取して分析し、イギリスの軍情報機関へもサンプルを送った。イギリスの分析でもサンプルはシリア軍が保有するサリンとは一致しなかった。この結果はアメリカの統合参謀本部へ知らされ、バラク・オバマ政権としても攻撃を中止せざるを得なくなる。

 そもそも、軍の関係者はシリア軍が化学兵器を使ったという話に懐疑的だった。戦闘は政府軍が優勢で、使えばNATO軍の直接的な介入を招く可能性が高く、使う理由がなかったのである。






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最終更新日  2014.04.08 12:33:48


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