《櫻井ジャーナル》

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2015.01.27
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 西側では巨大資本の損失を「大きすぎて潰せない」という名目で救済、その経営者の犯罪行為は「大きすぎて処罰できない」ということで許してきた。徹底した捜査を行えば、収拾がつかなくなるのかもしれないが、これが西側の自称「民主主義国家」の実態。巨大資本や富豪を擁護、その尻ぬぐいを強制されているのが庶民だ。現在、アメリカでは富が0.01%に集中しているというが、当然だろう。

 そうした仕組みに対する怒りが1月25日に行われたギリシャの総選挙で爆発、急進左翼進歩連合が勝利したが、巨大資本は資金を止めるなどあらゆる手段を講じて新政権を潰しにかかるだろう。

 これまでも公務員給与の削減、年金のカット、増税、私有化などを強要してきたIMF、欧州委員会、欧州中央銀行などが代理人として動くはずで、前途多難だということは否定できないが、希望がないわけではない。例えば、天然ガスを運ぶパイプラインをトルコからギリシャへ伸ばし、EUへ運ぶというルートができれば経済的な問題を解決する大きな一歩になる。

 すでにロシアから黒海を通ってトルコへ運ぶ「ブルー・ストリーム」は存在するが、ロシアとEUが計画していた天然ガス輸送用のパイプライン、「サウス・ストリーム」がアメリカの圧力でブルガリアが建設の許可を出さずに御破算、トルコ経由に切り替える方針をロシアは打ち出しているので、新たなパイプライン建設にギリシャが食い込むチャンスは十分にある。

 サウス・ストリームはロシアから黒海を横断、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニアを経由してイタリアへ至るルートだったが、ロシアは見切りをつけた。替わってトルコへ輸送する新ブルー・ストリームを建設する。このルートにEUが対応しなければ、天然ガスは東アジアへ運ばれる。そこには中国、朝鮮、韓国、そして日本がある。ロシアにとって中国が最重要国だろうが、朝鮮や韓国も加わろうとするだろう。そうした時、日本がアメリカの顔色を伺って取り引きに参加しなかったら、相対的に大きなダメージを受けることになる。

 勿論、ギリシャにも圧力が加わるだろうが、債務問題の交渉に利用できることは確か。EUからの離脱という選択肢もあり、簡単にギリシャの新政権を倒すことはできないだろう。イタリアやスペインなどEUにはギリシャと同じ問題を掲げた国もあり、西側支配層の対応によってはEUが崩壊する可能性もある。

 ロシアへの「制裁」をアメリカから強要されたEUは大きなダメージを受け、アメリカへ従属することに反発する声は支配層の内部からも聞こえてくる。ドミニク・ストロス-カーン前IMF専務理事もそうしたひとり。

 失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねず、不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと主張、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語り、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だと2011年4月、 ブルッキングス研究所で主張 してる。ストロス-カーンがレイプ容疑で逮捕されたのはその翌月だった。

クリストフ・ド・マルジェリはロシアの天然ガスへの依存を減らすという考え方を批判 、そうした行為はロシアを中国へ接近させると語っていたが、その通りの展開になった。彼は 石油取引をドルで決済する必要はない とも言っている。

 そうした発言をした3カ月後、ド・マルジェリはモスクワの空港で事故のために死亡しているが、そうした意見はフランスから消えていないだろう。実際、12月6日にはフランソワ・オランド仏大統領がカザフスタンからの帰路、ロシアを突然訪問してプーチン大統領とモスクワの空港ビルで会談、年明け後には西側のロシアに対する「制裁」を辞めるべきだと語っている。フランスの週刊紙、シャルリー・エブドが襲撃されたのはその直後のことだった。

 アメリカ政府の「制裁」はEUを窮地に陥らせただけでなく、ロシアと中国を接近させてドルを基軸通貨とする貿易システムを崩壊させようとしている。ロシアや中国はすでに決済をゴールドで始めているようで、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やSCO(中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)へ波及する可能性がある。スイスもアメリカと一線を画すようになってきた。

 ロシア、イラン、ベネズエラといったアメリカへの従属を拒否している産油国を攻撃するためにアメリカは原油価格を引き下げていると言われている。アメリカは先物相場を操作しているのだろうが、サウジアラビアは生産を維持するという形で支援した。

 ところが、相場下落でサウジアラビアもダメージを受け、アメリカではシェール・オイルやシェール・ガスの産業が壊滅的な影響を受け、労働者を大量解雇せざるをえなくなり、アラスカでは州の財政が悪化している。産油国の利益が減少すれば投機市場への資金流入が細り、場合によっては引き揚げが始まる。ギリシャよりもアメリカが苦境に立っている。





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最終更新日  2015.01.29 11:52:22


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